(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142198
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】リレーの溶着診断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20230928BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20230928BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H9/54 C
G01R31/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048956
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【テーマコード(参考)】
2G036
5G034
【Fターム(参考)】
2G036AA14
2G036BB07
5G034AC20
(57)【要約】
【課題】電池のエネルギーが無駄に放電されることを防止しつつ、誤診断リスクを低減することが可能となるリレーの溶着診断装置を提供する。
【解決手段】リレーの溶着診断装置は、電池の正極側に一端子が接続される正極側リレーと、電池の負極側に一端子が接続される負極側リレーと、正極側リレーの他端子と負極側リレーの他端子との間に互いに並列に接続されたコンデンサおよび負荷回路と、を備える電源システムにおけるリレーの溶着診断装置において、コンデンサと負荷回路とが接続されることで、コンデンサの強制放電であるアクティブ放電が行われる制御を実行する制御部と、負極側リレーが溶着していない場合、アクティブ放電が行われた後、正極側リレーが溶着しているか否かを判定し、負極側リレーが溶着している場合、コンデンサの自然放電であるパッシブ放電が行われた後、正極側リレーが溶着しているか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の正極側に一端子が接続される正極側リレーと、
前記電池の負極側に一端子が接続される負極側リレーと、
前記正極側リレーの他端子と前記負極側リレーの他端子との間に互いに並列に接続されたコンデンサおよび負荷回路と、
を備える電源システムにおけるリレーの溶着診断装置において、
前記コンデンサと前記負荷回路とが接続されることで、前記コンデンサの強制放電であるアクティブ放電が行われる制御を実行する制御部と、
前記負極側リレーが溶着していない場合、前記アクティブ放電が行われた後、前記正極側リレーが溶着しているか否かを判定し、前記負極側リレーが溶着している場合、前記コンデンサの自然放電であるパッシブ放電が行われた後、前記正極側リレーが溶着しているか否かを判定する判定部と、
を備える、
リレーの溶着診断装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記負極側リレーが溶着しているか否かを判定した後に、前記正極側リレーが溶着しているか否かを判定する、
請求項1に記載のリレーの溶着診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リレーの溶着診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車あるいは電気自動車などは、二次電池などの直流電源からの電力によってモータを駆動する構成を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、直流電源と、負荷回路と、負荷回路に並列に設けられたコンデンサと、直流電源と負荷回路との間の一対の電源ラインにそれぞれ挿入された第1および第2のメインリレーと、第1のメインリレーの接点に並列に設けられたプリチャージリレーとを有する回路における、リレー接点の溶着を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リレー接点が溶着しているか否かの溶着診断を行う際に、事前に回路内に接続されているコンデンサの放電を行う必要がある。コンデンサの放電は、コンデンサの自然放電であるパッシブ放電ではなく、アクティブ放電により行われる。コンデンサの放電がアクティブ放電により行われる理由は、アクティブ放電にかかる時間がパッシブ放電にかかる時間よりも短いため、アクティブ放電により溶着診断が行われる場合の溶着診断時間がパッシブ放電により溶着診断が行われる場合の溶着診断時間よりも短くなるためである。
【0006】
しかし、例えば、リレー接点が溶着している場合、アクティブ放電が行われると、電池のエネルギーが無駄に放電されるおそれがある。また、アクティブ放電が行われず、パッシブ放電が行われる場合、溶着診断時間が長くなるため、リレー接点が溶着しているか否を誤って診断する誤診断リスクが高まるという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、電池のエネルギーが無駄に放電されることを防止しつつ、誤診断リスクを低減することが可能となるリレーの溶着診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示におけるリレーの溶着診断装置は、
電池の正極側に一端子が接続される正極側リレーと、
前記電池の負極側に一端子が接続される負極側リレーと、
前記正極側リレーの他端子と前記負極側リレーの他端子との間に互いに並列に接続されたコンデンサおよび負荷回路と、
を備える電源システムにおけるリレーの溶着診断装置において、
前記コンデンサと前記負荷回路とが接続されることで、前記コンデンサの強制放電であるアクティブ放電が行われる制御を実行する制御部と、
前記負極側リレーが溶着していない場合、前記アクティブ放電が行われた後、前記正極側リレーが溶着しているか否かを判定し、前記負極側リレーが溶着している場合、前記コンデンサの自然放電であるパッシブ放電が行われた後、前記正極側リレーが溶着しているか否かを判定する判定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電池のエネルギーが無駄に放電されることを防止しつつ、誤診断リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係るリレーを含む電源システムを示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係るリレーの溶着診断方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る電源システム1を示す図であり、電源システム1は、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される。
【0012】
電源システム1は、電池10と、正極側リレー11と、負極側リレー12と、抵抗器13,14と、コンデンサ15と、負荷回路20と、制御装置30(本開示の「リレーの診断装置」に対応する)とを備える。
【0013】
電池10は、電気経路を介して電力を負荷回路20に供給する。なお、複数の電池10により構成される組電池において、コンデンサ15の強制放電であるアクティブ放電と、コンデンサ15の自然放電であるパッシブ放電とが行われる。
【0014】
正極側リレー11は、電池10と負荷回路20と間に介在する。正極側リレー11は、接点11a,11bを有する。接点11aは、電池10の正極側端子に接続されている。接点11bは、負荷回路20に接続されている。以下の説明で、正極側リレー11において、その可動接点が固定接点(接点11a,11b)に接触した状態を「クローズ状態」といい、可動接点が固定接点に接触しない状態を「オープン状態」という。
【0015】
負極側リレー12は、電池10と負荷回路20と間に介在する。負極側リレー12は、接点12a,12bを有する。接点12aは、電池10の負極端子に接続されている。接点12bは、負荷回路20に接続されている。以下の説明で、負極側リレー12において、その可動接点が固定接点(接点12a,12b)に接触した状態を「クローズ状態」といい、可動接点が固定接点に接触しない状態を「オープン状態」という。
【0016】
負荷回路20は、正極側リレー11および負極側リレー12を介して、電池10から電力の供給を受ける。
【0017】
コンデンサ15は、負荷回路20と並列に接続されている。コンデンサ15は、本開示の「コンデンサ回路」を構成している。
【0018】
抵抗器13は、接点11aと、接点12bとの間に接続されている。
【0019】
抵抗器14は、接点12aと、接点12bとの間に接続されている。
【0020】
電圧測定部S1は、電池10の正極端子と負極端子との間の電圧を測定する。
【0021】
電圧測定部S2は、接点11bと接点12aとの間の電圧を測定する。
【0022】
電圧測定部S3は、接点12aと接点12bとの間の電圧を測定する。
【0023】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して制御装置30の所定機能を実行する。このとき、記憶部33に格納されている各種データが参照される。記憶部33は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。電池ECU30は、例えば、車両の各部を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)に組み込まれても良く、他の制御ECUと一体的に構成されてもよく、また、車両ECUや他の制御ECUとは別個に設けられても良い。
【0024】
制御装置30は、コンデンサ15と負荷回路20とを接続することで、コンデンサ15の強制放電(アクティブ放電)を行う制御を実行する、また、制御装置30は、コンデンサ15と負荷回路20とを接続することなく、コンデンサ15の自然放電(パッシブ放電)を行う制御を実行する。
【0025】
制御装置30は、所定機能としてリレー制御部31と判定部32とを有する。リレー制御部31は、正極側リレー11および負極側リレー12のそれぞれの状態(クローズ状態、オープン状態)を制御する。
【0026】
判定部32は、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定する。正極側リレー11および負極側リレー12のそれぞれがオープン状態に制御された後に行われる。具体的には、判定部32は、電圧測定部S1の測定結果である測定値V1と電圧測定部S2の測定結果である測定値V2との間の電圧差が所定の閾値以上である場合、正極側リレー11が溶着していないと判定する。一方で、測定値V1と測定値V2との間の電圧差が所定の閾値未満である場合、正極側リレー11が溶着していると判定する。
【0027】
判定部32は、負極側リレー12が溶着しているか否かを判定する。正極側リレー11および負極側リレー12のそれぞれがオープン状態に制御された後に行われる。具体的には、判定部32は、電圧測定部S3の測定結果である測定値V3が所定値以上である場合、負極側リレー12が溶着していないと判定する。測定値V3が所定値未満である場合、負極側リレー12が溶着していると判定する。
【0028】
ところで、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定する場合、コンデンサ15の放電を行う必要がある。コンデンサ15の放電は、アクティブ放電により行われる。しかし、負極側リレー12が溶着している場合、アクティブ放電が行われると、電池10のエネルギーが無駄に放電されるおそれがある。
【0029】
そこで、本実施の形態では、判定部32は、まず負極側リレー12が溶着しているか否かを判定する。負極側リレー12が溶着していない場合、制御装置30は、コンデンサ15と負荷回路20とを接続することで、アクティブ放電が行われる制御を実行する。これにより、コンデンサ15に蓄えられた電荷の放出が開始され、負荷回路20に電流が流れる(コンデンサ15の強制放電)。負極側リレー12が溶着している場合、制御装置30は、コンデンサ15と負荷回路20とを接続することなく、パッシブ放電が行われる制御を実行する。これにより、コンデンサ15の自然放電が行われる。
【0030】
以上により、コンデンサ15の放電が行われる。コンデンサ15の放電が行われた後、判定部32は、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定する。
【0031】
次に、本開示の実施の形態に係るリレーの溶着診断方法について
図2を参照して説明する。
図2は、本開示の実施の形態に係るリレーの溶着診断方法の一例を示すフローチャートである。本フローは、たとえば、キー操作(または、車両終了操作)後に開始される。また、本フローに示す各ステップは、制御装置30の各機能が行うものであるが、ここでは、CPUが行うものとして説明する。
【0032】
先ず、ステップS100において、CPUは、負極側リレー12が溶着しているか否かについて判定する。負極側リレー12が溶着している場合(ステップS100:YES)、処理はステップS110に遷移する。負極側リレー12が溶着していない場合(ステップS100:NO)、処理はステップS130に遷移する。
【0033】
ステップS110において、CPUは、パッシブ放電を行う制御を実行する。
【0034】
次に、ステップS120において、CPUは、正極側リレーが溶着しているか否かを判定する。その後、本フローは終了する。
【0035】
ステップS130において、CPUは、アクティブ放電を行う制御を実行する。その後、処理は、ステップS120に遷移する。
【0036】
本開示の実施の形態に係るリレーの溶着診断装置は、電池10の正極側に一端子が接続される正極側リレー11と、電池10の負極側に一端子が接続される負極側リレー12と、正極側リレー11の他端子と負極側リレー12の他端子との間に互いに並列に接続されたコンデンサ15および負荷回路20と、を備える電源システム1におけるリレーの溶着診断装置において、コンデンサ15と負荷回路20とが接続されることで、コンデンサ15の強制放電であるアクティブ放電が行われる制御を実行する制御部と、負極側リレー12が溶着していない場合、アクティブ放電が行われた後、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定し、負極側リレー12が溶着している場合、コンデンサ15の自然放電であるパッシブ放電が行われた後、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定する判定部32と、を備える。
【0037】
上記構成によれば、リレーの溶着診断時に負極側リレー12が溶着していない場合は、アクティブ放電が行われるため、電池10のエネルギーが無駄に放電されることを防止することが可能となる。また、パッシブ放電により溶着診断が行われる場合の溶着診断時間よりもアクティブ放電により溶着診断が行われる場合の溶着診断時間の方が短くなるため、誤診断リスクを低減することが可能となる。
【0038】
上記判定部32は、負極側リレー12が溶着している否かを判定した後に、正極側リレー11が溶着しているか否かを判定する。負極側リレー12の溶着診断を正極側リレー11の溶着診断よりも優先的に行うことが可能となる。
また、実施の形態では、制御装置30が接続することで、コンデンサ15の強制放電(アクティブ放電)を行う制御を実行するが、コンデンサ15と負荷回路20とを接続する手段や方法には、コンデンサ15に蓄えられた電荷が放出され、負荷回路20に電流が流れるようにすることができる公知の手段や方法が用いられる。
【0039】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、電池のエネルギーが無駄に放電されることを防止しつつ、誤診断リスクを低減することが要求されるリレーの溶着診断装置が搭載された車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0041】
S1,S2,S3 電圧測定部
1 電源システム
10 電池
11 正極側リレー
12 負極側リレー
13,14 抵抗器
15 コンデンサ
20 負荷回路
30 制御装置
31 リレー制御部
32 判定部
33 記憶部