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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142203
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/08 20060101AFI20230928BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60R21/08 B
B60R21/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048962
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 将央
(72)【発明者】
【氏名】橋戸 達矢
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】柿本 憲志
(57)【要約】
【課題】簡便な構成として、乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】車両のシート3に着座している乗員MDの頭部MHを保護可能な頭部保護エアバッグ装置M。乗員の側方であって、車両におけるルーフ7の端縁7a側に、折り畳まれて配置されて、車両の側方からの外力の作用時に、下方に向かって展開して乗員の頭部の側方を覆うように構成されるエアバッグ25と、エアバッグを、収納位置から展開位置までの下方への展開をガイドするガイド手段GMと、を備える。エアバッグが、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部27と、車外側に配置される車外側壁部28と、車内側壁部と車外側壁部との端縁相互を連結する連結壁部29と、を有するとともに、連結壁部の領域に、下方への展開時に内部に大気を流入可能な吸気孔35を、配設させている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに着座している乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置であって、
前記乗員の側方であって、前記車両におけるルーフの端縁側に、折り畳まれて配置されて、前記車両の側方からの外力の作用時に、下方に向かって展開して前記乗員の頭部の側方を覆うように構成されるエアバッグと、
該エアバッグを、収納位置から展開位置までの下方への展開をガイドするガイド手段と、
を備える構成とされ、
前記エアバッグが、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部と、車外側に配置される車外側壁部と、前記車内側壁部と前記車外側壁部との端縁相互を連結する連結壁部と、を有するとともに、前記連結壁部の領域に、下方への展開時に内部に大気を流入可能な吸気孔を、配設させていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガイド手段が、
展開完了時の前記エアバッグの後方において、上下方向に略沿うように配置される車体側のガイドポールと、
前記エアバッグ側に配置されて、前記エアバッグの展開時に前記ガイドポールを摺動可能な連結環部と、
前記エアバッグを下方へ展開させる駆動源と、
を備える構成とされ、
前記エアバッグは、前記駆動源として重力を利用し、自由落下により、前記ガイドポールにガイドされつつ、下方に展開するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記吸気孔が、前記連結壁部を開口して形成される穴本体と、該穴本体を閉塞可能な逆止弁機構と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、内外方向側から見た状態の膨張完了形状を、下縁側を前後方向に略沿わせるような略三角形板状として構成され、
前記吸気孔が、膨張完了時の前記エアバッグにおける下面側に、配設されていることを特徴とする請求項3に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグが、内外方向側から見た状態の膨張完了形状を、後縁側を上下方向に略沿わせるような略三角形板状として構成され、
前記吸気孔が、膨張完了時の前記エアバッグにおける後面側に、配設されていることを特徴とする請求項3に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座している乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両のシートに着座している乗員の頭部を保護するための頭部保護エアバッグ装置としては、インフレーターを用いて、エアバッグを膨張させる構成のものがあった。また、昨今では、一人乗り用で、ドアを備えず、乗員の左右の側方が開放された状態の車両もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-83858公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアを備えない構成の車両では、乗員を保護するために搭載する装置も簡便な構成とすることが好ましく、インフレーターを使用せず、簡便な構成として乗員を保護可能な装置が要望されていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両のシートに着座している乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置であって、
乗員の側方であって、車両におけるルーフの端縁側に、折り畳まれて配置されて、車両の側方からの外力の作用時に、下方に向かって展開して乗員の頭部の側方を覆うように構成されるエアバッグと、
エアバッグを、収納位置から展開位置までの下方への展開をガイドするガイド手段と、
を備える構成とされ、
エアバッグが、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部と、車外側に配置される車外側壁部と、車内側壁部と車外側壁部との端縁相互を連結する連結壁部と、を有するとともに、連結壁部の領域に、下方への展開時に内部に大気を流入可能な吸気孔を、配設させていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグは、下方への展開時に、吸気孔を経て、内部に大気を流入させて膨張する構成である。すなわち、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグに膨張用ガスを供給するためのインフレーター等のガス供給部材が不要であり、簡便な構成とすることができる。吸気孔は、エアバッグにおいて、車内側壁部と車外側壁部との端縁相互を連結する連結壁部の領域に形成されていることから、下方への展開時に、安定して開口されて、エアバッグの内部に大気を円滑に流入させることができる。また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグは、ガイド手段によって下方への展開をガイドされる構成であることから、大気を内部に流入させることにより膨張する構成とされても、乗員の頭部の側方を覆うように、迅速に下方に展開させることができる。
【0008】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、簡便な構成として、乗員の頭部を保護することができる。
【0009】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、ガイド手段を、
展開完了時のエアバッグの後方において、上下方向に略沿うように配置される車体側のガイドポールと、
エアバッグ側に配置されて、エアバッグの展開時にガイドポールを摺動可能な連結環部と、
エアバッグを下方へ展開させる駆動源と、
を備える構成とし、
エアバッグを、駆動源として重力を利用し、自由落下により、ガイドポールにガイドされつつ、下方に展開するように構成することが、好ましい。
【0010】
頭部保護エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグを、自重を利用した自由落下により下方に展開させる構成であることから、下方へ展開させるための駆動手段が不要となり、一層構成を簡便にすることができる。
【0011】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、吸気孔を、連結壁部を開口して形成される穴本体と、穴本体を閉塞可能な逆止弁機構と、を備える構成とすれば、一旦エアバッグ内に流入した大気(エア)が、外部に流出されることを抑制できることから、エアバッグの高い内圧を保持させることができ、膨張したエアバッグによって、乗員の頭部を的確に保護することができる。
【0012】
具体的には、エアバッグを、内外方向側から見た状態の膨張完了形状を、下縁側を前後方向に略沿わせるような略三角形板状として構成し、吸気孔を、膨張完了時のエアバッグにおける下面側に配設させる構成とすれば、エアバッグの下方への展開時に、吸気孔から多量の大気を流入させることができ、エアバッグを迅速に膨張させることが可能となって、好ましい。
【0013】
また、エアバッグを、内外方向側から見た状態の膨張完了形状を、後縁側を上下方向に略沿わせるような略三角形板状として構成し、吸気孔を、膨張完了時のエアバッグにおける後面側に、配設させる構成としてもよく、このような構成とすれば、吸気孔を下面側に設ける場合と比較して、迅速な膨張は抑制されるものの、吸気孔周縁に生ずる空気抵抗は抑えられることから、エアバッグを、ばたつきを抑制して、安定して下方に展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を搭載させる車両の概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を搭載させる車両の概略正面図である。
図3】ガイドポールの上端側に配置される係止部材を示す部分拡大概略縦断面図である。
図4】ガイドポールの下端側に配置されるストッパを示す部分拡大概略側面図である。
図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態の概略側面図である。
図6図5のエアバッグの概略底面図である。
図7図5のVII-VII部位の端面図である。
図8図6のVIII-VIII部位の概略断面図である。
図9】吸気孔の開閉状態を示す概略断面図である。
図10】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車両の概略側面図である。
図11】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車両の概略正面図である。
図12】本発明の他の実施形態であるエアバッグの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、一人乗り用の車両Vに搭載されている。この車両Vは、図1に示すように、ドアを備えず、乗員としての運転者MDがシート3に着座している状態において、運転者MDの左右の側方は、開放されている。
【0016】
頭部保護エアバッグ装置Mは、シート3に着座している乗員としての運転者MDの側方に配置されるもので、実施形態では、運転者MDの右方に、配置されている(図2参照)。頭部保護エアバッグ装置Mは、車両Vにおけるルーフ7の右縁7a側に折り畳まれて配置されるエアバッグ25と、エアバッグ25の下方への展開をガイドするガイド手段GMと、を備えている。ガイド手段GMは、車両Vの車体1側に配置されるガイドポール10と、エアバッグ25側に配置される連結環部46と、収納位置に折り畳まれて配置されているエアバッグ25の連結環部46のガイドポール10に対する位置を保持するための保持手段(係止手段12)と、を備えている。
【0017】
ガイド手段GMを構成するガイドポール10は、車体1側において、膨張完了時のエアバッグ25の後方において、上下方向に略沿うように配設されるもので、車両Vにおけるシート3における背もたれ部4の右後方において、上下方向に略沿うように配設されている(図1,2,10,11参照)。具体的には、ガイドポール10は、詳細な図示を省略するが、上端10aを、ルーフ7の右縁7a側に連結させ、下端を、シート3における座部5の右後方となる位置において、車体1側に連結させるように、配設されている。ガイドポール10は、外形形状を円筒状として、実施形態の場合、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる金属パイプから、構成されている。このガイドポール10は、エアバッグ25側に配置される連結環部46を摺動させることにより、エアバッグ25における収納位置から展開位置までの下方への展開をガイドするものである。
【0018】
収納位置に折り畳まれて配置されているエアバッグ25の連結環部46のガイドポール10に対する位置を保持するための保持手段として、ガイドポール10の上端10a側には、図3のA,Bに示すように、収納位置に折り畳まれて配置されるエアバッグ25の連結環部46を、係止させる係止部材12が、配設されている。この係止部材12は、連結環部46の保持状態を維持可能で、かつ、作動時には、連結環部46の保持状態を解除可能に、構成されている。係止部材12としては、実施形態の場合、電磁ソレノイドが、使用されている。具体的には、係止部材12は、図3のAに示すように、ガイドポール10の上端10a側の内部に配置される固定鉄芯部13、可動鉄芯部14、及び、可動鉄芯部14と固定鉄芯部13との外周側に配置されるコイル15、を備えている。可動鉄芯部14は、下面側をガイドポール10の内周面側から延びる支持部10dによって支持されるようにして、固定鉄芯部13の下方に配置されている。可動鉄芯部14における下端側の外周側には、連結環部46を挿入させて係止可能な係止凹溝14aが、全周にわたって凹ませるように形成されている。この係止凹溝14aは、非通電状態(下面側を支持部10dに支持された状態)の可動鉄芯部14において、ガイドポール10における少なくとも後面側を切り欠くようにして形成される挿通孔部10cに対応した位置に、形成されるもので、この挿通孔部10cを経て、内部に連結環部46の内周縁46a側の部位を挿入させることにより、連結環部46を係止可能(連結環部46を保持可能)とされている。コイル15は、非通電状態(下面側を支持部10dに支持された状態)の可動鉄芯部14において、係止凹溝14aよりも上部側の領域の外周側から、上方の固定鉄芯部13の外周側にかけて、配置されている。固定鉄芯部13は、可動鉄芯部14の移動ストロークを確保可能に、可動鉄芯部14の上方側において可動鉄芯部14と離隔して配置されている。そして、実施形態の係止部材12では、コイルへ15の通電時に、可動鉄芯部14を、固定鉄芯部13側となる上方に向かって移動させることとなり(図3のB参照)、この可動鉄芯部14の上方移動に伴って、連結環部46が、係止凹溝14aとの係止状態を解除されることとなる。係止凹溝14aとの係止を解除されれば、連結環部46は、重力により、ガイドポール10を摺動されるようにして落下することとなる。連結環部46と係止凹溝14aの係止状態の解除後に、コイル15への通電を停止すれば、可動鉄芯部14は落下して、下面側を支持部10dに支持されることとなる。この係止部材12は、車両Vの車体1側に設けられる図示しない作動回路と電気的に接続されている。
【0019】
ガイドポール10の下端10b側には、エアバッグ25の展開完了後(下降移動完了後)の連結環部46を係止して、上方への戻りを規制するストッパ18が、形成されている。ストッパ18は、図4に示すように、ガイドポール10の外周面から外方に向かって突出するように形成されるもので、実施形態の場合、下端側にかけて拡径されている。このストッパ18は、下端側の外径寸法を、落下する連結環部46に挿通可能で、かつ、落下完了後の連結環部46の内周縁側に係止されて、連結環部46の上方移動を規制可能な寸法に、設定されている。
【0020】
エアバッグ25は、図5~8に示すように、内部に大気を流入させて膨張するバッグ本体26と、バッグ本体26の上縁側をルーフ7の右縁7a側に連結させる連結タブ42と、展開完了時のバッグ本体の後下端側から後方に延びる連結ベルト部45と、連結ベルト部45の先端45a側に配設されてガイドポール10に挿通される連結環部46と、を備えている。
【0021】
バッグ本体26は、シート3に着座している運転者MDの頭部MHの側方を覆うように膨張する構成とされるもので、内外方向側(左右方向側)から見た状態の膨張完了形状を、前上側に斜辺を配置させたような略直角三角形板状とされている。具体的には、バッグ本体26は、膨張完了時に、内外方向側から見た状態で、前上縁26a側を、湾曲しつつ前下がりに僅かに傾斜して配置されるルーフ7(ルーフ7の右縁7a)に、略沿わせるようにして、配置されるもので、さらに詳細には、下縁26b側を、前後方向に略沿わせ、後縁26c側を、上下方向に略沿わせるように、配置される構成である(図10参照)。さらに具体的には、膨張完了時におけるバッグ本体26の下縁26bは、前後方向に対して前上がりで僅かに傾斜するように、配置され、後縁26cは、鉛直方向に対して前下がりで傾斜するように、配置されている。また、バッグ本体26は、膨張完了時に車内側に配置される車内側壁部27と、車外側に配置される車外側壁部28と、車内側壁部27と車外側壁部28との端縁相互を連結する連結壁部29と、を備える構成とされている。実施形態の場合、連結壁部29は、車内側壁部27,車外側壁部28の周縁の略全周にわたって、配設される構成であり、すなわち、連結壁部29は、膨張完了時の前上面側を構成する前上壁部29aと、膨張完了時の下面側を構成する下壁部29bと、膨張完了時の後面側を構成する後壁部29cと、を備える構成とされている。バッグ本体26は、膨張完了時における後下端側を、背もたれ部4における上下の中央よりもやや上側に位置させるようにして、シート3に着座している運転者MDの頭部MHの右方を、上下前後に広く覆うような構成とされている。バッグ本体26は、可撓性を有したシート体からなるもので、具体的には、ポリエステル糸やポリアミド糸等を織成した織布から、形成されている。バッグ本体26は、この織布からなる所定形状に裁断した基材の周縁相互を縫着させることにより、袋状とされており、実施形態の場合、連結壁部29における下壁部29bの領域のみ、基材26dを三枚重ねとして、構成されている(図7,8参照)。
【0022】
バッグ本体26には、下方への展開時に、内部に大気Aを流入可能な吸気孔35が、配設されている。吸気孔35は、連結壁部29の領域に配設されるものであり、実施形態の場合、具体的には、膨張完了時の下面側となる下壁部29bの領域に、配設されている(図6~8参照)。吸気孔35は、下壁部29bを開口して形成される穴本体36と、穴本体36を閉塞可能な逆止弁機構37と、を備えている。実施形態の場合、穴本体36は、バッグ本体26における前後の略中央となる位置において、前後方向側を幅広とした長孔状に形成されている。逆止弁機構37は、穴本体36を塞ぎ可能な長尺状として、膨張完了時に上下方向側で重ねられるように配置される2枚の弁本体38,39を備える構成とされている。弁本体38,39は、バッグ本体26を構成する基材と同様に可撓性を有したシート体(ポリエステル糸やポリアミド糸等を織成した織布)から形成されるもので、それぞれ、重ねられた状態で相互に対向する長手方向の一端38a,39a側を、下壁部29b側に、結合され、他端38b,39b側を自由端とされている(図8参照)。吸気孔35は、エアバッグ25の収納状態においては、閉塞され、バッグ本体26の下方への展開時に、下壁部29bに作用する空気抵抗を受けて弁本体38,39を浮き上がらせることとなり、弁本体38,39を浮き上がらせるようにして開口された穴本体36から、バッグ本体26内に大気Aを流入させることとなる(図9のA参照)。バッグ本体26の下降移動後(バッグ本体26の膨張完了後)には、吸気孔35の穴本体36は、バッグ本体26の内部に流入した大気Aの圧を受けて、2枚の弁本体38,39に閉塞されることとなり(図9のB参照)、内部に流入した大気Aが外部に逆流することを抑制されて、バッグ本体26が、膨張状態を維持されることとなる。
【0023】
バッグ本体26の上縁側をルーフ7側に連結させる連結タブ42は、詳細な図示は省略するが、ルーフ7の右縁7a側に、取り付けられる構成である。連結タブ42は、バッグ本体26の前上縁26a側から延びるようにして、前後方向に沿った複数箇所に形成されるもので、実施形態の場合、バッグ本体26の前上端側と後上端側とを含めた4箇所に、形成されている。この連結タブ42は、バッグ本体を構成する基材と同様に可撓性を有したシート体(ポリエステル糸やポリアミド糸等を織成した織布)から形成されている。
【0024】
展開完了時のバッグ本体26の後下端側から後方に延びるように配置される連結ベルト部45は、先端45a側に、ガイドポール10に挿通される連結環部46を配設させる構成とされて、この連結環部46を用いて、バッグ本体26の後端側(詳細には、後下端側)を、ガイドポール10側に連結される構成とされている。連結ベルト部45は、実施形態の場合、バッグ本体26を構成する基材と同様に可撓性を有したシート体(ポリエステル糸やポリアミド糸等を織成した織布)から形成されるもので、長さ寸法を、バッグ本体26の下方への展開時における連結環部46のガイドポール10に沿った落下を阻害せず、バッグ本体26の展開完了時(連結環部46の下降移動完了時)に、連結環部46をストッパ18の略直下に位置させるとともに、連結ベルト部45とバッグ本体26の下縁26b側とに、前後方向に略沿ってテンションを発生可能とするような寸法に、設定されている。
【0025】
連結環部46は、実施形態の場合、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる金属製とされるもので、ガイドポール10を挿通可能な円環板状とされている。具体的には、連結環部46は、ガイドポール10に沿った落下時に、ガイドポール10をスムーズに摺動可能で、かつ、ストッパ18を挿通可能な寸法に、設定されている。この連結環部46は、エアバッグ25を折り畳んでルーフ7の右縁7a側に収納させた状態では、上述したごとく、内周縁46a側の部位を、係止部材12における可動鉄芯部14の外周面側に形成される係止凹溝14aに挿入されて、係止部材12に、係止される構成である(図3のA参照)。そして、係止部材12による係止解除後(図3のB参照)には、重力により、ガイドポール10に沿って自由落下することとなり、このとき、バッグ本体26も、重力により、下方に向かって展開することとなる。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ25の下方への展開をガイドするガイド手段GMが、エアバッグ25を下方へ展開させる駆動源として、重力を利用する構成であり、エアバッグ25は、自由落下により、ガイドポール10にガイドされつつ、下方に展開することとなる。
【0026】
実施形態のエアバッグ25は、詳細な図示を省略するが、バッグ本体26を、下壁部29bを平らに展開された状態を維持されつつ、上下方向側の幅寸法を縮められるようにして、略帯状に折り畳み、この折り畳まれた折り完了体50を、バッグ本体26の下方移動時に破断可能な図示しないラッピング材によって、折畳状態を維持させつつ、ルーフ7の右縁7a側に取り付ける構成である。このとき、連結環部46は、ガイドポール10に挿通された状態で、係止部材12に係止されている。
【0027】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、車両Vの側方(右方)からの外力の作用時に、図示しない制御回路からの作動信号を受けて、係止部材12が、連結環部46の係止状態を解除すれば、ルーフ7の端縁(右縁7a)側に折り畳まれて配置されるバッグ本体26が、折りを解消しつつ、下方に向かって展開することとなる。このとき、バッグ本体26は、下壁部29b側に形成される吸気孔35を経て、内部に大気Aを流入させて膨張することとなり、膨張を完了させたエアバッグ25(バッグ本体26)が、運転者MDの頭部MHの側方(右方)を覆うように配置されることとなる(図10,11参照)。
【0028】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ25(バッグ本体26)は、下方への展開時に、吸気孔35を経て、内部に大気を流入させて膨張する構成である。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するためのインフレーター等のガス供給部材が不要であり、簡便な構成とすることができる。吸気孔35は、エアバッグ25(バッグ本体26)において、車内側壁部27と車外側壁部28との端縁相互を連結する連結壁部29の領域に形成されていることから、下方への展開時に、安定して開口されて、エアバッグ25の内部に大気を円滑に流入させることができる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ25は、ガイド手段GMによって下方への展開をガイドされる構成であることから、大気Aを内部に流入させることにより膨張する構成とされても、乗員としての運転者MDの頭部MHの側方を覆うように、迅速に下方に展開させることができる。
【0029】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、乗員としての運転者MDの頭部MHを保護することができる。
【0030】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ガイド手段GMが、展開完了時のエアバッグ25の後方において上下方向に略沿うように配置される車体側のガイドポール10と、エアバッグ25側に配置されてエアバッグ25の展開時にガイドポール10を摺動可能な連結環部46と、を備える構成として、エアバッグ25を下方へ展開させる駆動源として、重力を利用し、エアバッグ25を、自由落下により、ガイドポール10にガイドされつつ、下方に展開するように構成している。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ25を、自重を利用した自由落下により下方に展開させる構成であることから、下方へ展開させるための駆動手段が不要となり、一層構成を簡便にすることができる。特に、実施形態のエアバッグ25では、膨張完了時の下面側に配置される連結壁部29の下壁部29bが、基材27dを三枚重ねた構成とされていることから、展開時に、円滑に下方に展開させることができる。
【0031】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、吸気孔35が、連結壁部29を開口して形成される穴本体36と、穴本体36を閉塞可能な逆止弁機構37と、を備える構成とされている。そのため、一旦エアバッグ25内に流入した大気A(エア)が、外部に流出されることを抑制できることから、エアバッグ25の高い内圧を保持させることができ、膨張したエアバッグ25によって、運転者MDの頭部MHを的確に保護することができる。
【0032】
具体的には、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、吸気孔35が、膨張完了時のエアバッグの下面側となる下壁部29bの領域に、配設される構成である。そのため、エアバッグ25の下方への展開時に、吸気孔35から多量の大気を流入させることができ、エアバッグ25を迅速に膨張させることができる。
【0033】
また、吸気孔35Aは、図12に示すエアバッグ25A(バッグ本体26A)のごとく、連結壁部29Aにおいて、膨張完了時に、上下方向に略沿って配置される後壁部29cの領域(後面側)に、配設させる構成としてもよい。吸気孔35Aは、後壁部29cの上下の中央よりも下方の領域に、形成されている。エアバッグ25Aをこのような構成とすれば、上述したエアバッグ25のごとく、吸気孔を下面側となる下壁部29bの領域に設ける場合と比較して、迅速な膨張は抑制されるものの、吸気孔35A周縁に生ずる空気抵抗は抑えられることから、エアバッグ25Aを、ばたつきを抑制して、安定して下方に展開させることができる。実施形態では、バッグ本体26Aにおける後壁部29cは、エアバッグ25Aの膨張完了時に、鉛直方向に対して前下がりで傾斜して配置される構成であることから、後壁部を上下方向に略沿って配置させる場合と比較して、エアバッグ25Aの下方への展開時に、吸気孔35Aから大気を流入させやすく、エアバッグ25Aを迅速に膨張させることができる。
【0034】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置では、連結環部を保持させる保持手段の駆動源として、電磁ソレノイドを利用しているが、保持手段の駆動源としては、電磁ソレノイドに限定されるものではなく、例えば、作動時に少量の駆動用ガスを発生可能とされるアクチュエータや、ばね等の付勢手段を用いてもよい。
【0035】
なお、実施形態では、ドアを備えないタイプの一人乗り用の車両Vに搭載する頭部保護エアバッグ装置Mを例にとり、説明しているが、本発明の頭部保護エアバッグ装置を搭載可能な車両は、実施形態に限定されるものではなく、ドアを備えて、複数人乗車可能なタイプの車両にも、勿論搭載することができる。
【符号の説明】
【0036】
3…シート、10…ガイドポール、25,25A…エアバッグ、26,26A…バッグ本体、27…車内側壁部、28…車外側壁部、29,29A…連結壁部、29b…下壁部、29c…後壁部、35,35A…吸気孔、36…穴本体、37…逆止弁機構、45…連結ベルト部、46…連結環部、GM…ガイド手段、MD…運転者(乗員)、MH…頭部、M…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
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図5
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図12