(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142207
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】基板アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/46 20060101AFI20230928BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20230928BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01Q1/46
H01Q1/38
H01Q1/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048970
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 宏明
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA12
5J046PA07
5J046TA00
5J047AA12
5J047FD06
(57)【要約】
【課題】受信効率、放射効率に優れた新規な基板アンテナを提供する。
【解決手段】基板アンテナは、プリント基板上に、電波を送信、受信又は送受信する通信回路と、通信回路に接続されている電源線と、通信回路に接続されているGND線とが設けられている。通信回路は、電源線及びGND線から高周波的に分離されている。また、通信回路の入力、出力又は入出力部が、高周波信号を受信、送信又は送受信可能な状態で、電源線又はGND線の通信回路を高周波的に分離している部分に接続されている。さらに、電源線及びGND線の通信回路を高周波的に分離している部分が、コンデンサによって接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に、電波を送信、受信又は送受信する通信回路と、通信回路に接続されている電源線と、通信回路に接続されているGND線と、が設けられており、
通信回路は、電源線及びGND線から高周波的に分離されており、
通信回路の入力、出力又は入出力部が、高周波信号を受信、送信又は送受信可能な状態で、電源線又はGND線の通信回路を高周波的に分離している部分に接続されており、
電源線及びGND線の通信回路を高周波的に分離している部分が、コンデンサによって接続されている、基板アンテナ。
【請求項2】
通信回路に電力を供給する電源と電源線との間を高周波的に分離するための第1インダクタと、
通信回路のGNDとGND線との間を高周波的に分離するための第2インダクタと、
を備えている請求項1に記載の基板アンテナ。
【請求項3】
通信回路のGNDが、プリント基板を搭載する筐体に接続されている請求項1または2に記載の基板アンテナ。
【請求項4】
GND線の通信回路を高周波的に分離している部分が、プリント基板を搭載する筐体に接続されている請求項1から3のいずれか一項に記載の基板アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、基板アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、送受信回路を備えた無線装置が開示されている。特許文献1では、回路基板上に、送受信回路と電源ラインを形成している。そして、電源ラインの一部の範囲について、一端を高周波的に接地し、他端をグランドから高周波的に浮かしている。そして、送受信回路のためのアンテナ接続ポイントを、電源ラインの一部の範囲内に接続している。特許文献1は、電源ラインの一部をアンテナとして利用し、専らアンテナとして機能させる構造を省略している。その結果、回路基板のサイズが小さくなり、小型の無線装置を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、回路基板上の電源ラインをアンテナとして利用すれば、回路基板のサイズを小さくすることができる。しかしながら、さらなる回路基板の小型化が要求されており、電源ラインをアンテナとして利用しただけでは、電波の受信効率、放射効率が不十分である。そのため、回路基板上にアンテナを形成する技術は、さらなる改善が必要とされる。本明細書は、受信効率、放射効率に優れた新規な基板アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する基板アンテナは、プリント基板上に、電波を送信、受信又は送受信する通信回路と、通信回路に接続されている電源線と、通信回路に接続されているGND線とが設けられている。通信回路は、電源線及びGND線から高周波的に分離されている。また、通信回路の入力、出力又は入出力部が、高周波信号を受信、送信又は送受信可能な状態で、電源線又はGND線の通信回路を高周波的に分離している部分に接続されている。さらに、電源線及びGND線の通信回路を高周波的に分離している部分が、コンデンサによって接続されている。
【0006】
上記基板アンテナは、電源線の通信回路から高周波的に分離されている部分と、GND線の通信回路から高周波的に分離されている部分の双方をアンテナとして利用することができる。典型的に、プリント基板(回路基板)上に形成されるパターンのうち、電源線及びGND線が占める割合(面積)は大きい。そのため、電源線とGND線の双方をアンテナとして利用すれば、プリント基板のサイズを小さくしても、アンテナ面積を確保することができる。そのため、上記基板アンテナは、小型でありながらアンテナ受信効率又は放射効率の高いプリント基板を実現することができる。
【0007】
基板アンテナは、通信回路に電力を供給する電源と電源線との間を高周波的に分離するための第1インダクタと、通信回路のGNDとGND線との間を高周波的に分離するための第2インダクタを備えていてもよい。第1インダクタが設けられていることにより、電源線の通信回路を高周波的に分離している部分を、電源から高周波的に分離することができる。これにより、電源線の通信回路から高周波的に分離されている部分に、電源の高周波を重畳させることができる。また、第2インダクタが設けられていることにより、GND線の通信回路を高周波的に分離している部分を、GNDから高周波的に分離することができる。これにより、GND線の通信回路から高周波的に分離されている部分に、GND高周波を重畳させることができる。
【0008】
上記基板アンテナでは、通信回路のGNDが、プリント基板を搭載する筐体に接続されていてもよい。筐体自体がGNDとして機能し、筐体の開口部分より電波の放射/受信を行うことができる。
【0009】
また、上記基板アンテナでは、GND線の通信回路を高周波的に分離している部分が、プリント基板を搭載する筐体に接続されていてもよい。これにより、筐体自体がアンテナとして機能し、筐体からも電波の放射/受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】第1実施例の基板アンテナが形成されたプリント基板を示す(第5実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)
図1を参照し、基板アンテナ50について説明する。基板アンテナ50は、プリント基板(図示省略)上に形成されている。基板アンテナ50は、外部機器と電波を送受信する通信回路12と、複数の回路26,32を備えている。各回路12,26,32は、電源線2とGND線30に接続されている。電源線2は、第1インダクタ8を介して、基板アンテナ(プリント基板)50の外部の電源6に接続されている。第1インダクタ8は、電源6と電源線2の間を高周波的に分離する。また、GND線30は、第2インダクタ16を介して、基板アンテナ50の外部のGNDに接続されている。第2インダクタ16は、GNDとGND線30の間を高周波的に分離する。なお、電源線2とGND線30の合計の長さは、通信回路12で使用する電波の周波数の波長の1/10から1/4の長さに調整されている。
【0012】
通信回路12は、第3インダクタ10を介して電源線2に接続されている。第3インダクタ10は、通信回路12と電源線2を高周波的に分離する。電源6から通信回路12に至る配線12a上には、第1インダクタ8と第3インダクタ10が直列に接続されており、その中間点9に電源線2が接続されている。また、通信回路12の入出力は、コンデンサ4を介して電源線2に接続されている。コンデンサ4は、通信回路12の入出力と電源線2が電界結合する容量に調整されている。そのため、通信回路12の入出力は、電界結合により電源線2に接続されているといえる。電源線2は、通信回路12(配線12a)から高周波的に分離されているので、高周波信号が重畳される。
【0013】
また、通信回路12は、第4インダクタ14を介してGND線30に接続されている。第4インダクタ14は、通信回路12とGND線30を高周波的に分離する。通信回路12からGNDに至る配線12b上には、第4インダクタ14と第2インダクタ16が直列に接続されており、その中間点15にGND線30が接続されている。電源線2とGND線30の間には、バイパスコンデンサ20が接続されている。バイパスコンデンサ20は、通信回路12と回路26の間に設けられている。典型的に、バイパスコンデンサ20は、電波で使用される高周波信号を通過させる。そのため、GND線30も、高周波信号が重畳される。
【0014】
上記したように、回路26,32は、電源線2とGND線30に接続されている。回路26の入力部は、インダクタ24を介して入力端子22に接続されている。また、回路32の出力部は、インダクタ36を介して出力端子34に接続されている。なお、回路26,32の間にはバイパスコンデンサ28が設けられており、バイパスコンデンサ28も、電源線2とGND線30に接続されている。バイパスコンデンサ28も、電波で使用される高周波信号を通過させる。なお、バイパスコンデンサ20,28は、回路12,26,32のノイズ除去のため、各回路12,26,32の近傍に設けられている。
【0015】
上記したように、基板アンテナ50では、電源線2とGND線30の双方が、通信回路12に対して高周波的に分離されている。そのため、電源線2とGND線30の双方が、通信回路12のアンテナとして機能する。典型的に、電源線2及びGND線30は、回路基板上で比較的大きな面積を占める。そのため、基板アンテナ50は、電源線2及びGND線30の双方を通信回路12のアンテナとして利用することにより、専らアンテナとして機能するための構造を設けていない。そのため、基板アンテナ50は、アンテナ機能を持ちながら、プリント基板のサイズを小さくすることができる。また、基板アンテナ50は、電源線2及びGND線30の双方をアンテナとして利用しているので、例えばプリント基板上の一部の構造をアンテナとして利用する形態と比較して、アンテナ受信効率又は放射効率を向上させることができる。
【0016】
また、上記したように、通信回路12以外の回路(回路26,32)も、高周波的に分離されている電源線2及びGND線30に接続されている。回路26,32は、重畳された高周波信号の振幅の変化を行うので、回路26,32を構成している信号線等にも高周波信号が重畳される。その結果、基板アンテナ50では、回路26,32の構成部品も通信回路12のアンテナとして機能する。
【0017】
なお、上記実施例では、外部機器と電波を送受信する通信回路12について説明した。しかしながら、通信回路12は、外部機器に電波を放射する送信回路、あるいは、外部機器から電波を受信する受信回路であってもよい。また、上記実施例では、通信回路12の入出力がコンデンサ4を介して電源線2に接続されている例について説明した。通信回路12の種類、コンデンサに接続する通信回路12の部位に関する変形例は、以下に説明する第2~第7実施例においても共通である。
【0018】
以下、第2~第7実施例について説明する。第2~第5実施例は基板アンテナ50の変形例、第6及び第7実施例は基板アンテナの具体的な形態を示すものである。そのため、以下の説明において、基板アンテナ50と共通する特徴については、基板アンテナ50に付した参照番号と同一の参照番号を付すことにより、重複説明を省略することがある。
【0019】
(第2実施例)
図2は、基板アンテナ150を示している。基板アンテナ150では、通信回路12の入出力は、コンデンサ4を介してGND線30に接続されている。基板アンテナ150では、GND線30は、通信回路12(配線12b)から高周波的に分離されているので、高周波信号が重畳される。そして、バイパスコンデンサ20,28を高周波信号が通過し、電源線2にも高周波信号が重畳される。基板アンテナ150も、電源線2とGND線30の双方が、通信回路12のアンテナとして機能する。
【0020】
(第3実施例)
図3は、基板アンテナ250を示している。基板アンテナ250では、通信回路12の入出力は、トランス204を介して電源線2に結合している。トランス204は、通信回路12の入出力と電源線2が磁気結合するように、一次コイルと二次コイルの巻数が調整されている。そのため、通信回路12の入出力は、磁気結合により電源線2に接続されているといえる。基板アンテナ250では、トランス204によって電源線2に高周波信号が給電され、電源線2に高周波信号が重畳される。基板アンテナ250も、電源線2とGND線30の双方が、通信回路12のアンテナとして機能する。
【0021】
(第4実施例)
図4は、基板アンテナ350を示している。基板アンテナ350では、基板アンテナ50(
図1を参照)を搭載する(基板アンテナ50が形成されているプリン基板を搭載する)筐体40に、通信回路12からGNDに至る配線12b(通信回路12のGND線)が接続されている。基板アンテナ350では、筐体40は、通信回路12のための安定したGNDとして機能し、このGNDを基準に、筐体40の開口部(図示省略)より電波を送受信することができる。なお、基板アンテナ350では、筐体40の外縁より外側への電波の送受信は抑制される。
【0022】
(第5実施例)
図5は、基板アンテナ450を示している。基板アンテナ450では、基板アンテナ50(
図1を参照)を搭載する筐体40に、GND線30が接続されている。なお、電源線2、GND線30及び筐体40の外縁の合計の長さは、通信回路12で使用する電波の周波数の波長の1/10から1/4の長さに調整されている。そのため、筐体40は、外縁長さが長くなり過ぎないように、比較的小さな筐体が選択される。基板アンテナ450では、筐体40も通信回路12のアンテナとして利用することができる。
【0023】
上記第4及び第5実施例では、筐体40に基板アンテナ50が搭載されている例について説明したが、基板アンテナ50に代えて、基板アンテナ150(
図2を参照)、あるいは、基板アンテナ250を筐体40に搭載してもよい。
【0024】
(第6実施例)
図6は、プリント基板60上に形成された基板アンテナ50を模式的に示している。プリント基板60に形成されている電源線21の長さL21と、GND線31の長さL31の合計の長さは、通信回路12で使用する電波の周波数の波長の1/4より長い。そのため、基板アンテナ50では、電源線21の一部を細線化し、電源線21の途中にインダクタンスが大きい部分を形成する。電源線21の途中に形成されたインダクタンスが大きい部分が、第1インダクタ8となる(
図1も参照)。第1インダクタ8を形成することにより、通信回路12に接続している部分の電源線2を、電源6に接続している部分の電源線3から高周波的に分離することができる。
【0025】
同様に、GND線31の一部も細線化し、GND線31の途中にインダクタンスが大きい部分を形成する。GND線31の途中に形成されたインダクタンスが大きい部分が、第2インダクタ16となる。第2インダクタ16を形成することにより、通信回路12に接続している部分のGND線30を、GNDに接続している部分のGND線33から高周波的に分離することができる。
【0026】
第1インダクタ8及び第2インダクタ16を形成する位置は、電源線2の長さL2と、GND線30の長さL30の合計の長さが通信回路12で使用する電波の周波数の波長のおよそ1/4になるように調整されている。これにより、電源線2とGND線30を、通信回路12のアンテナとして機能させることができる。
【0027】
(第7実施例)
図7は、プリント基板60上に形成された基板アンテナ550を模式的に示している。基板アンテナ550は、接続されている部品の接続位置が基板アンテナ50と異なる(
図6を比較参照)。回路26は、第3インダクタ10と第4インダクタ14の間で通信回路12と並列に接続されており、電源線2とGND線30から高周波的に分離されている。また、回路32は、電源線21のうちの電源線2から高周波的に分離された部分(電源線3)に接続しているとともに、インダクタ46を介してGND線30に接続されている。そのため、回路32も電源線2とGND線30から高周波的に分離されている。基板アンテナ550では、回路26,32に印加される電圧に高周波信号が重畳せず、一定電圧となる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
12:通信回路
2:電源線
GND:GND線
20:コンデンサ
50:基板アンテナ