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特開2023-142222ダイカスト用装置およびダイカスト法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142222
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ダイカスト用装置およびダイカスト法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20230928BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B22D17/32 J
B22D17/22 E
B22D17/22 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048988
(22)【出願日】2022-03-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510095651
【氏名又は名称】株式会社ダイレクト21
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】水草 康行
(72)【発明者】
【氏名】中田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】長澤 理
(57)【要約】
【課題】加圧ロッドの動作状態をより詳細に管理して製造されるダイカスト品の品質を一定以上に維持し、仮に加圧ロッドに異常動作が生じた場合であっても、直ちに異常を検知する。
【解決手段】ダイカスト用装置100は、加圧ロッド43における加圧動作の履歴情報を取得する加圧ロッド履歴情報検出部301と、加圧ロッド履歴情報検出部301が取得した加圧ロッド43の履歴情報に基づいて、加圧ロッド43の加圧動作の正常/異常を判定する判定部302と、を備える。履歴情報は、加圧ロッド43が加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間と、当該経過時間に応じた加圧ロッド43の移動量を含む。判定部302は、経過時間を複数の時間帯に分割し、分割された複数の時間帯ごとに加圧ロッド43の移動量の判定条件を設けることで、加圧ロッド43の加圧動作の正常/異常を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、
前記キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、
前記ランナー内の溶湯を加圧する第2加圧手段と、
を備え、
前記第2加圧手段が前記ダイカスト金型の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する加圧ロッドを備え、前記第1加圧手段による前記キャビティ内への溶湯の射出が行われた後に、前記第2加圧手段が備える前記加圧ロッドによる前記ランナー内の溶湯の加圧が行われることで、前記ランナー内で凝固したダイカスト品のランナー部には、前記加圧ロッドの進出によって中空部が形成されるダイカスト用装置であって、
前記加圧ロッドにおける加圧動作の履歴情報を取得する加圧ロッド履歴情報検出部と、
前記加圧ロッド履歴情報検出部が取得した前記加圧ロッドの前記履歴情報に基づいて、前記加圧ロッドの加圧動作の正常/異常を判定する判定部と、
を備え、
前記履歴情報は、前記加圧ロッドが加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間と、当該経過時間に応じた前記加圧ロッドの移動量を含み、
前記判定部は、前記経過時間を複数の時間帯に分割し、分割された複数の時間帯ごとに前記加圧ロッドの移動量の判定条件を設けることで、前記加圧ロッドの加圧動作の正常/異常を判定することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイカスト用装置であって、
前記判定部は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件のうち、任意の時間帯の判定条件に基づき判定を実施し、これら任意の時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、前記加圧ロッドの加圧動作が正常であると判定することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項3】
請求項1に記載のダイカスト用装置であって、
前記判定部は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、全ての判定結果が基準値内であった場合にのみ、前記加圧ロッドの加圧動作が正常であると判定することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項4】
請求項1に記載のダイカスト用装置であって、
前記判定部は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、予め設定された個数以上の時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、前記加圧ロッドの加圧動作が正常であると判定することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカスト用装置であって、
前記判定部が判定を行った際に、加圧ロッドの加圧動作が異常であると判定したときには、当該加圧ロッドが加圧を行ったダイカスト品をNG品として警報信号を出し、正規工程から除外する除外機構を備えることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダイカスト用装置であって、
前記判定部が判定を行う際に用いられる分割された複数の時間帯ごとに設けられた判定条件を入力する入力部と、当該判定条件を表示する判定条件表示部と、前記判定部が行った判定結果を表示する判定結果表示部と、を備える入力表示部を有することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のダイカスト用装置によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用装置およびダイカスト法に係り、特に、ダイカスト金型のランナーを加圧する為の加圧手段を備えたダイカスト用装置と、当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、該キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、該ランナーの溶湯を加圧する第2加圧手段とを備え、該第2加圧手段が該ダイカスト金型の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する加圧ロッドを備えたダイカスト用装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。かかるダイカスト用装置によれば、ランナー内の溶湯を第2加圧手段によって加圧することで、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-224650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のダイカスト用装置では、製造されるダイカスト品の品質を一定に保つために、加圧ロッドの動作管理が行われていたが、従来の管理方法は、加圧ロッドが加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの時間を管理する程度のものであった。しかし、時間のみを管理する従来の管理方法では、例えば、管理対象となった時間の一部区間で加圧ロッドが早期に移動しすぎてしまうことで溶湯の逆流が発生したり、凝固後半での加圧ロッドの移動量が少なくなってしまったりすることで加圧不足が生じてしまうなど、管理対象の時間は全体的に基準値内であっても、時間内での加圧ロッドの動作状態の異常を把握できないといった事象が生じる虞があった。このように、従来の管理技術では、ダイカスト品に対して加圧不足などの製造上の異常が発生したとしても、その異常を容易に把握できず、多くの不良品を発生させてしまうなどの不都合が生じる可能性が存在していた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、ダイカスト用装置が有する加圧ロッドの動作状態をより詳細に管理することで、製造されるダイカスト品の品質を一定以上に維持するとともに、仮に加圧ロッドに異常動作が生じた場合にも、直ちに異常を検知することができるダイカスト用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明に係るダイカスト用装置(100)は、キャビティ(53)と該キャビティ(53)に連通するランナー(50)を画成するダイカスト金型(10)と、前記キャビティ(53)内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段(24,25)と、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する第2加圧手段(40,41,42,43)と、を備え、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が前記ダイカスト金型(10)の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する加圧ロッド(43)を備え、前記第1加圧手段(24,25)による前記キャビティ(53)内への溶湯の射出が行われた後に、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が備える前記加圧ロッド(43)による前記ランナー(50)内の溶湯の加圧が行われることで、前記ランナー(50)内で凝固したダイカスト品(60)のランナー部(63)には、前記加圧ロッド(43)の進出によって中空部(64)が形成されるダイカスト用装置(100)であって、前記加圧ロッド(43)における加圧動作の履歴情報を取得する加圧ロッド履歴情報検出部(301)と、前記加圧ロッド履歴情報検出部(301)が取得した前記加圧ロッド(43)の前記履歴情報に基づいて、前記加圧ロッド(43)の加圧動作の正常/異常を判定する判定部(302)と、を備え、前記履歴情報は、前記加圧ロッド(43)が加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間と、当該経過時間に応じた前記加圧ロッド(43)の移動量を含み、前記判定部(302)は、前記経過時間を複数の時間帯に分割し、分割された複数の時間帯ごとに前記加圧ロッド(43)の移動量の判定条件を設けることで、前記加圧ロッド(43)の加圧動作の正常/異常を判定することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係るダイカスト用装置(100)において、前記判定部(302)は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件のうち、任意の時間帯の判定条件に基づき判定を実施し、これら任意の時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、前記加圧ロッド(43)の加圧動作が正常であると判定することができる。
【0009】
また、本発明に係るダイカスト用装置(100)において、前記判定部(302)は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、全ての判定結果が基準値内であった場合にのみ、前記加圧ロッド(43)の加圧動作が正常であると判定することもできる。
【0010】
また、本発明に係るダイカスト用装置(100)において、前記判定部(302)は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、予め設定された個数以上の時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、前記加圧ロッド(43)の加圧動作が正常であると判定することもできる。
【0011】
さらに、本発明に係るダイカスト用装置(100)では、前記判定部(302)が判定を行った際に、加圧ロッド(43)の加圧動作が異常であると判定したときには、当該加圧ロッド(43)が加圧を行ったダイカスト品(60)をNG品として警報信号を出し、正規工程から除外する除外機構(500)を備えることができる。
【0012】
またさらに、本発明に係るダイカスト用装置(100)では、前記判定部(302)が判定を行う際に用いられる分割された複数の時間帯ごとに設けられた判定条件を入力する入力部(401)と、当該判定条件を表示する判定条件表示部(402)と、前記判定部(302)が行った判定結果を表示する判定結果表示部(403)と、を備える入力表示部(400)を有する構成を採用することができる。
【0013】
なお、本発明は、上記したダイカスト用装置(100)によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイカスト用装置が有する加圧ロッドの動作状態をより詳細に管理することで、製造されるダイカスト品の品質を一定以上に維持することができる。また、仮に加圧ロッドに異常動作が生じた場合であっても、直ちに異常を検知することができるダイカスト用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
図3】本実施形態に係るダイカスト用装置によって製造されたダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部の形状を示す外観斜視図である。
図4】本実施形態に係る判定部が実行する判定の条件を説明するための模式図であり、図中の分図(a)には正常波形が示してあり、分図(b)には異常波形が示してある。
図5】本実施形態に係る入力表示部が表示可能な画面例の一つである設定画面を示す図である。
図6】本実施形態に係る入力表示部が表示可能な別の画面例の一つである波形画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係るダイカスト用装置100の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。また、図2は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
【0018】
図1および図2に示されるように、本実施形態のダイカスト用装置100は、装置部200と、制御部300と、入力表示部400と、除外機構500とを備えて構成されている。
【0019】
本実施形態に係る装置部200は、ダイカスト法を行ってアルミニウム合金等の溶湯からダイカスト品60を製造する機構であり、ダイカスト金型10等の装置を備える。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る装置部200が備えるダイカスト金型10は、固定型20と可動型30とを有している。固定型20は固定ホルダー21および固定ダイス22からなり、固定ホルダー21には射出スリーブ23が配設されている。射出スリーブ23内にはプランジャロッド24の先端に連結されたプランジャチップ25が配設されている。図示せぬ射出シリンダを作動させて該プランジャチップ25を射出スリーブ23内で摺動させることで射出スリーブ23の図示せぬ給湯孔から供給されたアルミニウム合金等の溶湯を、後述のキャビティ53内に充填可能である。プランジャチップ25、プランジャロッド24、および図示せぬ射出シリンダが、本発明に係る第1加圧手段を構成する。
【0021】
可動型30は、可動ホルダー31、可動ダイス32、および分流子33からなり、矢印A←→A’で示される可動型30の移動方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に移動可能である。図1および図2に示す型締め状態においては、ダイカスト金型10の内部にはランナー50、ゲート52、およびキャビティ53が画成され、射出スリーブ23内の空間はランナー50およびゲート52を介してキャビティ53と連通する。ランナー50は、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に対して僅かな傾き角度を持った方向に延びる第1ランナー50Aと、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50Bとを備えている。第1ランナー50Aは、固定型20に配設された射出スリーブ23と可動型30の分流子33とにより画成されている。第2ランナー50Bは、射出スリーブ23と分流子33とにより画成される部分と、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成される部分とを有している。ゲート52およびキャビティ53は、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成されている。
【0022】
分流子33には、図示せぬブラケットを介して油圧シリンダ40が固定されている。油圧シリンダ40のピストンロッド41には、カップリング42を介して加圧ロッド43が連結されている。加圧ロッド43は、分流子33に形成された加圧ロッド進退穴34に挿入され、加圧ロッド43の先端部43Aが加圧ロッド進退穴34の上側開口34Aを塞いでいる。加圧ロッド43は、油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされ、油圧シリンダ40を作動させた場合には、図1に示す後退位置から第2ランナー50B内に進入し、図2に示す前進位置まで進出可能である。したがって、本実施形態に係るダイカスト用装置100では、加圧ロッド43を第2ランナー50B内に進出させることにより、第2ランナー50B内の溶湯を介してキャビティ53内の溶湯を加圧することが可能である。油圧シリンダ40、ピストンロッド41、カップリング42、および加圧ロッド43は、本発明に係る第2加圧手段を構成する。
【0023】
なお、加圧ロッド43の先端部43Aは、円柱形状とされている。そして、第2ランナー50Bは加圧ロッド43の先端部43Aの横断面形状と対応するように円形状に形成された対応形状部51を備え、この対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの周方向の隙間が、例えば、0.5~3.0mmの範囲に設定されている。隙間が0.5mm未満の場合には、隙間で凝固した薄肉部分がダイカスト品の取り出し時に切断されてしまう。また、隙間が3.0mmを超える場合には、加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧した際に溶湯が隙間から逆流することを充分に防ぐことができず、キャビティ53内の溶湯に充分な押湯効果を与えることができない。第2ランナー50B内の溶湯の流動性が良い場合には、隙間から逆流が生じやすいので、キャビティ53内への溶湯の充填完了前に加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧する場合には、第2ランナー50Bの対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間を3.0mm以下とすることが好適である。
【0024】
また、本発明に係る第2加圧手段を構成する油圧シリンダ40、ピストンロッド41、カップリング42、および加圧ロッド43のいずれかの箇所には、センサ45が設置されている。このセンサ45は、加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報を検出するものであり、この履歴情報には、加圧ロッド43が加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間と、当該経過時間に応じた加圧ロッド43の移動量が含まれる。センサ45によって検出された当該履歴情報は、後述する制御部300が備える加圧ロッド履歴情報検出部301に送信される。
【0025】
本実施形態に係る制御部300は、加圧ロッド履歴情報検出部301と、判定部302とを備えて構成される。加圧ロッド履歴情報検出部301は、上述したように、装置部200側に設置されたセンサ45によって検出され送信される履歴情報を受信し、加圧ロッド43の動作状態を検出するために用いられる。
【0026】
一方、判定部302は、加圧ロッド履歴情報検出部301によって検出された加圧ロッド43の履歴情報に基づき、所定の条件に基づき判定を行うことで、装置部200で実行されたダイカスト法が正常なものであったか、あるいは異常なものであったかを判定する。また、判定部302は、判定結果に基づき、除外機構500に対して動作指令を行ったり、入力表示部400との間で信号の受送信を行うことで、操作者に対してダイカスト用装置100の動作条件の設定や動作状況の可視化を行ったりすることができる。
【0027】
なお、本実施形態の制御部300については、装置部200と接続するコンピュータによって構成することができる。また、制御部300と装置部200との接続方法については、有線接続であってもよいし、不図示のインターネット網を介して無線接続するものであってもよい。
【0028】
本実施形態に係る入力表示部400は、入力部401と、判定条件表示部402と、判定結果表示部403とを有する。本実施形態の入力表示部400については、例えば、タッチパネル等の入力と表示の両方が可能な機器を用いることが、操作者に対して良好な操作性を提供する面から好ましい。
【0029】
入力部401は、判定部302が行う判定のための所定の条件を予め入力するために機能する。また、入力部401によって予め入力された所定の判定条件は、判定条件表示部402によって表示され、操作者によって確認できるように構成されている。さらに、所定の判定条件に基づいて判定部302が行った判定結果については、判定結果表示部403が判定部302から送信された信号に基づき、その内容を表示できるようになっている。
【0030】
本実施形態に係る除外機構500には、例えば、ロボットハンドなどといった無人作業のための自動化機械を用いることができる。ロボットハンド等の除外機構500は、装置部200によって実行されたダイカスト法によって製造されたダイカスト品60を、型開きした状態のダイカスト金型10から無人かつ自動で装置部200外に取り出すために用いられる機構である。また、本実施形態の除外機構500は、判定部302からの信号を受けることで、例えば、判定部302が異常であると判定した際に製造されたダイカスト品60をNG品として警報信号を出し、正規工程から除外する動作を実行することが可能となっている。なお、警報信号はマシン停止やパトライト起動などの制御信号だけでなく、生産管理データとしても使うことができる。
【0031】
以上、図1および図2を用いて、本実施形態のダイカスト用装置100の基本的な構成を説明した。次に、図3を用いて、本実施形態に係るダイカスト用装置100によって製造されるダイカスト品60の一部の形状についての説明を行う。ここで、図3は、本実施形態に係るダイカスト用装置によって製造されたダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部の形状を示す外観斜視図である。
【0032】
図3に示すように、本実施形態に係るダイカスト用装置100によって製造されたダイカスト品60は、その一部にビスケット部61、第1ランナー部62、および第2ランナー部63を有している。
【0033】
図2図3を対比参照すれば明らかなように、ビスケット部61は、射出スリーブ23とプランジャチップ25と分流子33とで囲まれた領域に形成される部位である。また、第1ランナー部62は、第1ランナー50A内で形成される部位である。さらに、第2ランナー部63は、第2ランナー50B内で形成される部位である。
【0034】
第2ランナー50Bは、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる領域であり、第1ランナー50Aは、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に対して僅かな傾き角度(例えば、水平面に対して5°~15°程度の角度)を持った方向に延びる領域であるため、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びて形成される第2ランナー部63に対して、第1ランナー部62は、僅かな傾き角度を持った状態で接続している。
【0035】
また、上述したように、本実施形態の加圧ロッド43は、油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされている。したがって、油圧シリンダ40を作動させた場合には、加圧ロッド43が第2ランナー50B内に進入することで、第2ランナー部63には、中空部64が形成されることとなる。
【0036】
以上、図3を用いて、本実施形態に係るダイカスト用装置100によって製造されるダイカスト品60の一部の形状についての説明を行った。次に、図4を参照図面に加えることで、本実施形態の判定部302が行う判定の具体的な内容を説明する。ここで、図4は、本実施形態に係る判定部が実行する判定の条件を説明するための模式図であり、図中の分図(a)には正常波形が示してあり、分図(b)には異常波形が示してある。
【0037】
上述したように、センサ45によって検出された加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報は、加圧ロッド履歴情報検出部301に送信され、さらに、加圧ロッド履歴情報検出部301が検出した当該履歴情報は、加圧ロッド履歴情報検出部301から判定部302に送信されることになる。判定部302では、加圧ロッド履歴情報検出部301から送信された加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報に基づき判定を行うとともに、その判定結果を判定結果表示部403に送信して、タッチパネル等として構成される入力表示部400に表示させることができる。そして、判定部302が取得した加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報は、図4で示されたグラフで横軸として示された、加圧ロッドが加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間と、縦軸として示された、当該経過時間に応じた加圧ロッドの移動量として表示することができる。また、本実施形態の判定部302では、横軸で示された経過時間を複数の時間帯に分割し、分割された複数の時間帯ごとに加圧ロッド43の移動量の判定条件を設けることで、加圧ロッドの加圧動作の正常/異常を判定することを行っている。
【0038】
より具体的には、本実施形態では、横軸で示された経過時間を、次に示すように6つの時間帯(1速目~6速目)に分割することが行われている。
(1速目)0~0.6s
(2速目)0.6~0.9s
(3速目)0.9~1.2s
(4速目)1.2~1.5s
(5速目)1.5~2.0s
(6速目)2.0~23.0s
そして、本実施形態の判定部302は、分割された6つの時間帯のそれぞれで設けられた判定条件のうち、任意の時間帯の判定条件に基づき判定を実施する。例えば、図4で示した例では、「1速目」と「2速目」と「4速目」と「6速目」の4つの時間帯で判定条件を定めて判定を行うように構成している。そして、図4中の分図(a)で示すように、加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報が正常波形を示す場合には、任意に選択設定された4つの時間帯での判定結果が基準値内となるため、判定部302は加圧ロッド43の加圧動作が正常であると判定する。一方、図4中の分図(b)で示すように、加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報が異常波形を示す場合には、任意に選択設定された4つの時間帯のうち2つの時間帯での判定結果が基準値から外れるため、判定部302は加圧ロッド43の加圧動作が異常であると判定する。
【0039】
特に、図4中の分図(b)で示す異常波形の場合、最初の段階の「1速目」と最終段階の「6速目」は基準値内となっているため、従来技術では異常として検出できない状態であった。この状態は、初期段階で加圧ロッド43の加圧ストローク値が極度に増加しており、ランナー50内で溶湯の逆流現象が生じ、ダイカスト品60に表面欠陥や内部欠陥が生じる可能性の高い状態となっている。しかし、図4で示すように、本実施形態では、任意に選択設定された複数(4つ)の時間帯で判定部302が判定を行うので、加圧ロッド43の加圧動作が正常であるか、異常であるかを的確に把握し、判定することが可能となっている。
【0040】
以上、図4を用いることで、本実施形態の判定部302が行う判定の具体的な内容を説明した。次に、図5および図6を参照図面に加えることで、本実施形態に係る入力表示部400の具体例を説明する。ここで、図5は、本実施形態に係る入力表示部が表示可能な画面例の一つである設定画面を示す図である。また、図6は、本実施形態に係る入力表示部が表示可能な別の画面例の一つである波形画面を示す図である。
【0041】
図5で示す設定画面は、本実施形態の入力部401と判定条件表示部402と判定結果表示部403が取り得る画面例を示すものである。すなわち、図5中の符号αで示す画面領域に示された複数のボタンは、本実施形態の入力部401を例示するものであり、具体的には、分割された6つの時間帯のうち、「1速目」と「3速目」と「5速目」と「6速目」が選択された状態が示されている。
【0042】
また、図5中の符号βで示す画面領域に示された表示枠は、本実施形態の判定条件表示部402を例示するものであり、具体的には、「1速目」の判定条件である加圧ストローク値が「20mm~43mm」であり、「3速目」の判定条件である加圧ストローク値が「25mm~46mm」であり、「5速目」の判定条件である加圧ストローク値が「34mm~50mm」であり、「6速目」の判定条件である加圧ストローク値が「46mm~647mm」であることを示している。
【0043】
さらに、図5中の符号γで示す画面領域に示された表示枠は、本実施形態の判定結果表示部403を例示するものであり、具体的には、「1速目」の加圧ストローク値の測定値が「24.2mm」であり、「3速目」の加圧ストローク値の測定値が「31.4mm」であり、「5速目」の加圧ストローク値の測定値が「36.4mm」であり、「6速目」の加圧ストローク値の測定値が「50.7mm」であることを示している。つまり、図5で示す設定画面の例では、「1速目」と「3速目」と「5速目」と「6速目」の全てで加圧ストローク値の判定条件を満たしており、加圧ロッド43の加圧動作が正常に実行されたことを示している。
【0044】
なお、図5で示す設定画面の例では、符号βで示す画面領域に示された表示枠のそれぞれに対して、判定結果が正常であったか、異常であったかを示すための円形をした表示ランプ画像405が配置されている。表示ランプ画像405は、例えば、判定結果が正常の場合は青色ランプを表示させ、判定結果が異常の場合は赤色ランプを表示させることができる。このような表示ランプ画像405を設けることで、操作者は、一見して加圧ロッド43の判定結果を認識することができる。
【0045】
一方、図6で示す波形画面は、本実施形態の判定条件表示部402と判定結果表示部403が取り得る画面例を示すものである。すなわち、図6中の符号δで示す画面領域に示されたグラフ図は、本実施形態の判定結果表示部403を例示するものであり、具体的には、図4で示したグラフ図と同様の判定部302が取得した加圧ロッド43の加圧動作の履歴情報として、横軸には加圧ロッドが加圧動作を開始してから所定のストローク量に到達するまでの経過時間が、縦軸には当該経過時間に応じた加圧ロッドの移動量が設定されたグラフ図として表示されている。
【0046】
また、図6中の符号εで示す画面領域に示された表示枠は、本実施形態の判定条件表示部402を例示するものであり、具体的には、また、図5中の符号βで示す画面領域に示された表示枠と、図5中の符号γで示す画面領域に示された表示枠と同様の内容が表示されている。具体的には、「1速目」の判定条件である加圧ストローク値が「20mm~43mm」であり、「3速目」の判定条件である加圧ストローク値が「25mm~46mm」であり、「5速目」の判定条件である加圧ストローク値が「34mm~50mm」であり、「6速目」の判定条件である加圧ストローク値が「46mm~647mm」であること、および、「1速目」の加圧ストローク値の測定値が「24.2mm」であり、「3速目」の加圧ストローク値の測定値が「31.4mm」であり、「5速目」の加圧ストローク値の測定値が「36.4mm」であり、「6速目」の加圧ストローク値の測定値が「50.7mm」であることを示している。
【0047】
さらに、図6中の符号ζで示す画面領域に示された表示枠は、本実施形態の判定結果表示部403を例示するものであり、図6の例では、センサ45によって取得された加圧ロッド43の加圧ストローク値について、6つの時間帯の全ての測定値が表示される構成となっている。
【0048】
図5および図6を用いて説明した入力表示部400によれば、操作者が画面を見るだけで直感的に操作したり、状態把握したりすることが可能である。したがって、本実施形態によれば、非常に操作性の良いダイカスト用装置100を実現することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、図4を用いて説明したように、本実施形態の判定部302は、分割された複数(6つ)の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件のうち、任意の(4つの)時間帯の判定条件に基づき判定を実施し、これら任意の(4つの)時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、加圧ロッド43の加圧動作が正常であると判定するものであった。しかしながら、本発明の範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、例えば、本発明の判定部は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、全ての判定結果が基準値内であった場合にのみ、加圧ロッド43の加圧動作が正常であると判定するようにしてもよい。さらに、本発明の判定部は、分割された複数の時間帯のそれぞれで設けられた判定条件の全てで判定を実施し、予め設定された個数以上の時間帯での判定結果が基準値内であった場合に、加圧ロッド43の加圧動作が正常であると判定するようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、図1および図2で示したように、本実施形態のダイカスト用装置100は、装置部200と、制御部300と、入力表示部400と、除外機構500とを備えて構成されるものであったが、本発明のダイカスト用装置は図1および図2で示された構成例に限定されるものではなく、上述した本実施形態と同様の作用効果を発揮できる範囲内において種々の変形形態を適用することができる。
【0052】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0053】
100 ダイカスト用装置、200 装置部、10 ダイカスト金型、20 固定型、21 固定ホルダー、22 固定ダイス、23 射出スリーブ、24 プランジャロッド(第1加圧手段)、25 プランジャチップ(第1加圧手段)、30 可動型、31 可動ホルダー、32 可動ダイス、33 分流子、34 加圧ロッド進退穴、34A 上側開口、40 油圧シリンダ(第2加圧手段)、41 ピストンロッド(第2加圧手段)、42 カップリング(第2加圧手段)、43 加圧ロッド(第2加圧手段)、43A (加圧ロッドの)先端部、45 センサ、50 ランナー、50A 第1ランナー、50B 第2ランナー、51 対応形状部、51A (対応形状部を画成する)面、52 ゲート、53 キャビティ、60 ダイカスト品、61 ビスケット部、62 第1ランナー部、63 第2ランナー部、64 中空部、300 制御部、301 加圧ロッド履歴情報検出部、302 判定部、400 入力表示部、401 入力部、402 判定条件表示部、403 判定結果表示部、405 表示ランプ画像、500 除外機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6