IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

特開2023-142225センスタイミング生成回路および半導体記憶装置
<>
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図1
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図2
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図3
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図4
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図5
  • 特開-センスタイミング生成回路および半導体記憶装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142225
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】センスタイミング生成回路および半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 7/22 20060101AFI20230928BHJP
   G11C 16/32 20060101ALI20230928BHJP
   G11C 7/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G11C7/22 100
G11C16/32
G11C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048991
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 修
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225CA21
5B225DA09
5B225EA01
5B225EE09
5B225EJ04
5B225FA02
(57)【要約】
【課題】温度による影響を低減して読出マージンを大きくして信頼性の高い動作を行えるセンスタイミングを生成可能なセンスタイミング生成回路および半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態のセンスタイミング生成回路は、入力端子から入力されたクロック信号に基づいてセンスアンプをイネーブル状態とするセンスアンプイネーブル信号を出力端子から出力するセンスタイミング生成回路であって、温度上昇に伴って遅延量が少なくなる温度特性を有し、かつ、温度特性の異なる複数種類の遅延回路を複数有し、クロック信号を遅延してセンスアンプイネーブル信号として出力する遅延回路部と、入力端子から出力端子に至る遅延回路部における複数の遅延回路の接続状態を切り替える接続切替部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から入力されたクロック信号に基づいてセンスアンプをイネーブル状態とするセンスアンプイネーブル信号を出力端子から出力するセンスタイミング生成回路であって、
温度上昇に伴って遅延量が少なくなる温度特性を有し、かつ、前記温度特性の異なる複数種類の遅延回路を複数有し、前記クロック信号を遅延して前記センスアンプイネーブル信号として出力する遅延回路部と、
前記入力端子から前記出力端子に至る前記遅延回路部における複数の遅延回路の接続状態を切り替える接続切替部と、
を備えた、センスタイミング生成回路。
【請求項2】
前記複数種類の遅延回路は、それぞれ正の温度特性を有するインバータと、負の温度特性を有するインバータとが複数組合わされて直列接続されており、
前記接続切替部は、前記遅延回路部として、所定の温度で所定の遅延量となるように前記接続状態を切り替える、
請求項1記載のセンスタイミング生成回路。
【請求項3】
前記遅延回路部は、一又は複数の遅延回路が直列接続された直列接続部と、前記直列接続部に接続され、遅延回路が複数系統並列接続された並列接続部と、を備え、
前記接続切替部は、前記複数系統並列接続された前記遅延回路のいずれか一つの系統を選択した状態で前記直列接続部と前記並列接続部とを接続する、
を備えた請求項1又は請求項2記載のセンスタイミング生成回路。
【請求項4】
前記接続切替部は、前記直列接続部と前記並列接続部との間あるいは前記並列接続部の後段に設けられている、
請求項3記載のセンスタイミング生成回路。
【請求項5】
データを記憶するメモリセルと、
前記メモリセルから読み出された信号を伝送するビット線と、
前記ビット線にて伝送された信号に基づいて前記メモリセルに記憶されているデータを検出するセンスアンプと、
入力端子から入力されたクロック信号に基づいて、前記センスアンプをイネーブル状態とするセンスアンプイネーブル信号を出力端子から出力するタイミングを制御するセンスタイミング生成回路とを備え、
前記センスタイミング生成回路は、温度上昇に伴って遅延量が少なくなる温度特性を有し、かつ、前記温度特性の異なる複数種類の遅延回路を複数有し、前記クロック信号を遅延して前記センスアンプイネーブル信号として出力する遅延回路部と、前記入力端子から前記出力端子に至る前記遅延回路部における複数の遅延回路の接続状態を切り替える接続切替部と、を備える、
半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、センスタイミング生成回路および半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置では、データ読み出し時にビット線がセンスアンプの出力を確定させるのに十分な電位になってから、センスアンプが活性化される。この時、センスアンプに用いられるトランジスタの特性ばらつきを吸収し、読出信号のレベルを確実に判定できるように、センスアンプが活性化されるタイミング(以下、センスタイミングという)が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-055673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、読出信号の電位の変化は、周囲温度等の温度によって異なり、センスアンプが活性化されるタイミング(以下、センスタイミング)が同一であるとすると、メモリセルの値が“0”である場合は、温度が高いほど読出マージン(読み出される信号のレベルと、判定用の基準信号のレベルとの差)が少なくなり、メモリセルの値が“1”である場合は、温度が低いほどデータ読出マージンが少なくなることとなっていた。
【0005】
本発明の一つの実施形態は、温度による影響を低減して読出マージンを大きくして信頼性の高い動作を行えるセンスタイミングを生成可能なセンスタイミング生成回路および半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のセンスタイミング生成回路は、入力端子から入力されたクロック信号に基づいてセンスアンプをイネーブル状態とするセンスアンプイネーブル信号を出力端子から出力するセンスタイミング生成回路であって、温度上昇に伴って遅延量が少なくなる温度特性を有し、かつ、温度特性の異なる複数種類の遅延回路を複数有し、クロック信号を遅延してセンスアンプイネーブル信号として出力する遅延回路部と、入力端子から出力端子に至る遅延回路部における複数の遅延回路の接続状態を切り替える接続切替部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る半導体記憶装置の概要構成の説明図である。
図2図2は、センスアンプ回路の要部構成例の説明図である。
図3図3は、センスタイミング生成回路の一例の説明図である。
図4図4は、遅延回路の構成例の説明図である。
図5図5は、従来の問題点の説明図である。
図6図6は、実施形態の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、実施形態の半導体記憶装置について詳細に説明する。
なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体記憶装置の概要構成の説明図である。
半導体装置10は、NOR型フラッシュメモリとして構成されており、図1に示すように、メモリセルアレイ11、ロウデコーダ12、カラムデコーダ13、リファレンス電位生成回路14、センスアンプ回路15、データ出力回路16及び制御回路17を備えている。
【0010】
メモリセルアレイ11は、碁盤の目状に配置された複数のメモリセルMCを備えている。
また、メモリセルアレイは、複数のワード線WLと、複数のソース線SLと、複数のビット線BLと、を備えている。
【0011】
図1においては、理解の容易のため、選択状態にあるメモリセルMCを一つのみ表示し、当該メモリセルに対応するワード線WL、ソース線SL及びビット線BLのみを表示している。
【0012】
ここで、メモリセルMCは、ソース線SLにソース端子が接続され、ワード線WLがゲート端子に接続され、ビット線BLにドレイン端子が接続されたメモリセルトランジスタTRを備えている。
【0013】
ロウデコーダ12は、制御回路17の制御下で、読出対象のメモリセルMCに対応するワード線WLをイネーブル状態とする。
カラムデコーダ13は、制御回路17の制御下で、読出対象のメモリセルMCに対応するソース線SL及びビット線BLをイネーブル状態とする。
【0014】
リファレンス電位生成回路14は、センスアンプ回路15に対してリファレンス電位を生成して供給する。
センスアンプ回路15は、所定のタイミングで選択状態にあるメモリセルMCに対応するビット線の電位と、リファレンス電位とを比較して、メモリセルMCのデータを判定して、判定結果をデータ出力回路16に出力する。
【0015】
データ出力回路16は、センスアンプ回路15の出力に基づいて、読出データDOUTを出力する。
制御回路17は、図示しないホスト装置(例えば、MPU)からのクロック信号CLK、コマンドデータCMD及びアドレスデータADDに基づいて、対応するメモリセルMCに対するデータの書き込み、読み出しあるいは消去を行うようにロウデコーダ12、カラムデコーダ13及びセンスアンプ回路15を制御する。
【0016】
図2は、センスアンプ回路の要部構成例の説明図である。
次にセンスアンプ回路15の構成について説明する。
センスアンプ回路15は、ビット線BLに対応して、複数のセンスアンプ151と、複数のセンスタイミング生成回路152と、を備えている。
この場合において、センスタイミング生成回路152は、複数のセンスアンプ151で共有することも可能である。
【0017】
センスアンプ151は、非反転入力端子に各ブロックBLKのソース線SLからの入力信号INが入力され、反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、センスタイミング生成回路152からのセンスアンプイネーブル信号SAEがイネーブル状態である場合に、入力信号INが基準電圧Vref以上高い電圧である場合に、“H”レベルの出力信号OUTを出力する。
【0018】
また、センスタイミング生成回路152からのセンスアンプイネーブル信号SAEがイネーブル状態である場合に、入力信号INが基準電圧Vref未満の電圧である場合に、“L”レベルの出力信号OUTを出力する。
【0019】
ここで、センスタイミング生成回路152の構成例について説明する。
図3は、センスタイミング生成回路の一例の説明図である。
センスタイミング生成回路152は、複数(図4の例では、6個)の第1遅延回路DL1と、複数(図4の例では、6個)の第2遅延回路DL2と、セレクタSELと、を備えている。
【0020】
ここで、第1遅延回路DL1と、第2遅延回路DL2とは、後に詳述するように、温度特性及び遅延時間が異なっている。
【0021】
センスタイミング生成回路152は、より詳細には、入力端には、クロック信号CLKが入力される直列接続された3個の第1遅延回路DL1が設けられている。
この3個の第1遅延回路DL1の後段には、3個の第2遅延回路DL2が設けられている。
これらの6個の遅延回路は、複数の遅延回路が直列接続された直列接続部として機能している。
【0022】
さらにこの3個の第2遅延回路DL2の後段には、直列接続された3個の第1遅延回路DL1と、直列接続された3個の第2遅延回路DL2と、が並列接続されている。
これらの6個の遅延回路は、前記直列部に接続され、遅延回路が複数系統(図3の例では、2系統)接続された並列接続部として機能している。
【0023】
そして、並列接続部の後段には、接続切換部として機能するセレクタSELが接続され、セレクタSELの各入力端子には、各系統が接続されて、いずれか一方の入力端子の入力信号をセンスアンプイネーブル信号SAEとして出力する。
【0024】
以上の説明においては、接続切換部として機能するセレクタSELが並列接続部の後段に接続されていたが、並列接続部の各系統の出力端を共通接続し、接続切換部としてのセレクタSELを直列接続部と並列接続部との間に設けるようにすることも可能である。
あるいは、並列接続部の後段に接続切換部を接続し、さらに接続切換部の後段に直列接続部を接続するように構成することも可能である。
【0025】
ここで、第1遅延回路DL1及び第2遅延回路DL2の構成例について詳細に説明する。
図4は、遅延回路の構成例の説明図である。
図4(A)は、第1遅延回路DL1の回路構成の一例の説明図である。
図4(B)は、第2遅延回路DL2の回路構成の一例の説明図である。
図において、同様の部分については、同一の符号を付すものとする。
【0026】
第1遅延回路DL1は、大別すると、図4(A)に示すように、駆動力を調整可能、かつ、負の温度係数(負の温度特性)を有する第1インバータINV1と、第1インバータINV1の出力端子に入力端子が接続され、且つ、正の温度係数(正の温度特性)を有する第2インバータINV21と、第2インバータINV21の出力端子に入力端子が接続され、且つ、正の温度係数(正の温度特性)を有する第2インバータINV22と、を備えている。
【0027】
この場合において、正の温度特性とは、温度が高くなるほど遅延時間が長くなることを意味し、負の温度特性とは、温度が低くなるほど遅延時間が長くなることを意味するものとする。
また、第2インバータINV21と、第2インバータINV22とは、同一構成であり、同一温度特性を有している。
【0028】
第1インバータINV1は、ゲート端子が入力端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP11と、ドレイン端子がPチャネルMOSトランジスタP11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Pが入力され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続されたPチャネルMOSトランジスタP12と、を備えている。
【0029】
さらに第1インバータINV1は、ゲート端子が第1遅延回路DL1の入力端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたNチャネルMOSトランジスタN11と、ドレイン端子がNチャネルMOSトランジスタN11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Nが入力され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN12とを備えている。
【0030】
第2インバータINV21は、ゲート端子が第1インバータINV1の出力端子に接続され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP21と、ゲート端子が入力端子に接続され、ドレイン端子が第1遅延回路DL1の出力端子に接続され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN21と、を備えている。
【0031】
同様に、第2インバータINV22は、ゲート端子が第2インバータINV22の入力端子に接続され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP21と、ゲート端子が入力端子に接続され、ドレイン端子が第1遅延回路DL1の出力端子に接続され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN21と、を備えている。
【0032】
第2遅延回路DL2は、大別すると、図4(B)に示すように、駆動力を調整可能、かつ、負の温度係数(負の温度特性)を有する第1インバータINV11と、第1インバータINV12の出力端子に入力端子が接続され、駆動力を調整可能、かつ、負の温度係数(負の温度特性)を有する第1インバータINV12と、第1インバータINV12の出力端子に入力端子が接続され、且つ、正の温度係数(正の温度特性)を有する第2インバータINV2と、を備えている。
【0033】
この場合において、第1インバータINV11と、第1インバータINV12とは、同一構成であり、同一温度特性を有している。
【0034】
第1インバータINV11は、ゲート端子が第2遅延回路DL2の入力端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP11と、ドレイン端子がPチャネルMOSトランジスタP11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Pが入力され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続されたPチャネルMOSトランジスタP12と、を備えている。
【0035】
さらに第1インバータINV11は、ゲート端子が第2遅延回路DL2の入力端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたNチャネルMOSトランジスタN11と、ドレイン端子がNチャネルMOSトランジスタN11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Nが入力され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN12とを備えている。
【0036】
第1インバータINV12は、ゲート端子が第1インバータINV11の出力端子に接続され、ドレイン端子が第1インバータINV12の出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP11と、ドレイン端子がPチャネルMOSトランジスタP11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Pが入力され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続されたPチャネルMOSトランジスタP12と、を備えている。
【0037】
さらに第1インバータINV12は、ゲート端子が第1インバータINV11の出力端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたNチャネルMOSトランジスタN11と、ドレイン端子がNチャネルMOSトランジスタN11のソース端子に接続され、ゲート端子に駆動力制御信号IREF_Nが入力され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN12とを備えている。
【0038】
第2インバータINV2は、ゲート端子が第1インバータINV12の出力端子に接続され、ソース端子が高電位側電源VDDに接続され、ドレイン端子が出力端子に接続されたPチャネルMOSトランジスタP21と、ゲート端子が第1インバータINV12の出力端子に接続され、ドレイン端子が第1遅延回路DL1の出力端子に接続され、ソース端子が低電位側電源VSSに接続されたNチャネルMOSトランジスタN21と、を備えている。
【0039】
本実施形態において、第1遅延回路DL1及び第2遅延回路DL2は、共に負の温度係数を有する遅延回路となっているが、第2遅延回路DL2の方が、第1遅延回路DL1よりもより負の温度係数が大きい遅延回路となっている。
【0040】
すなわち、第1遅延回路DL1の温度係数をP1とし、第2遅延回路DL2の温度係数をP2とすると、
0>P1>P2
となっている。
【0041】
換言すれば、温度が一定量高くなった場合には、第1遅延回路DL1の遅延量の減少が第2遅延回路DL2の遅延量の減少よりも少なくなるということとなる。
したがって、センスタイミング生成回路152を構成する遅延回路として、第2遅延回路DL2を多く用いた場合には、第1遅延回路DL1を多く用いた場合と比較して、温度上昇に対してより遅延量の減少が大きくなる、すなわち、センスアンプイネーブル状態により早く移行することとなる。
【0042】
以上の説明においては、第1インバータINV1、INV11、INV12が、負の温度係数(負の温度特性)を有し、第2インバータINV2、INV21、INV22が正の度係数(正の温度特性)を有している場合について説明したが、逆であってもよい。
この場合には、当然に第1遅延回路DL1の温度特性と、第2遅延回路DL2の温度特性とは、逆の状態となる。
【0043】
次に実施形態の動作を説明する。
まず、実施形態の動作に先立ち、従来の問題点について説明する。
図5は、従来の問題点の説明図である。
従来のセンスタイミング生成回路は、センスアンプアンプイネーブル信号の出力タイミングが一定とされていた。
【0044】
ところで、ワイド温度レンジ(例えば、-40~175℃)対応のフラッシュメモリにおいて読み出しを行う場合には、メモリセルに格納されている値及び温度によって、読み出し電圧の変動状態が異なっている。
【0045】
より詳細には、メモリセルMCを構成しているメモリセルトランジスタTRの閾値電圧Vthが高い状態の場合は、ワード線WLが“H”レベルとなってもメモリセルトランジスタTRは、オフ状態のままとなり、ビット線BLの電位はほぼ電源電位のままとなる。
【0046】
しかしながら、メモリセルトランジスタTRのリーク電流により、わずかながら次第にビット線BLの電位が下がる。
一般にメモリセルトランジスタTRのリーク電流は、高温になるほど増加する傾向がある。このため、高温になるほど図5に示すように、メモリセルMCに格納されている値=0を読み出す場合のビット線BLの電位の低下が速くなる。
【0047】
したがって、動作温度範囲がより高温になるほど、リファレンス電位Vrefに対するデータ読出マージンMG0が十分でなくなる可能性があり、読み出したデータが誤りになる虞があった。
【0048】
一方、メメモリセルMCを構成しているメモリセルトランジスタTRの閾値電圧Vthが低い状態の場合、ワード線WLがハイレベルとなるとメモリセルトランジスタTRがオン状態となり、ビット線BLからソース線SLへのオン電流が流れ、ビット線BLの電位が次第に低下する。
【0049】
一般にメモリセルトランジスタTRのオン電流は低温になるほど減少する傾向があるため、低温になるほど図5に示すようにメモリセルMCに格納されている値=1を読み出す場合にビット線BLの電位の低下が遅くなる。
【0050】
したがって、動作温度範囲がより低温になるほど、リファレンス電位Vrefに対するのデータ読出マージンMG1が十分でなくなる可能性があり、読み出したデータが誤りになる虞があった。
【0051】
次に実施形態の動作を再び図3を参照して説明する。
センスタイミング生成回路152において、セレクタSELは、予め並列接続部を構成している3個の直列接続された第1遅延回路DL1あるいは並列接続部を構成している3個の直列接続された第2遅延回路DL2のいずれか一方を選択するようにされている。
【0052】
したがって、セレクタSELにおいて、予め並列接続部を構成している上列の3個の直列接続された第1遅延回路DL1を選択した場合には、センスタイミング生成回路152は、実効的に6個の第1遅延回路DL1及び3個の第2遅延回路DL2が直列接続された構成となる。
【0053】
セレクタSELにおいて、予め並列接続部を構成している下列の3個の直列接続された第2遅延回路DL2を選択した場合には、センスタイミング生成回路152は、実効的に3個の第1遅延回路DL1及び6個の第2遅延回路DL2が直列接続された構成となる。
【0054】
図6は、実施形態の動作説明図である。
この場合において、上列の3個の直列接続された第1遅延回路DL1あるいは下列の3個の直列接続された第2遅延回路DL2を選択した場合のいずれであっても温度係数は負であるので、図6に示すように、センスタイミング生成回路152において出力されるセンスアンプイネーブル信号SAEがイネーブルとなるタイミングは、所定の高温の場合と、所定の低温の場合では、異なることととなっていた。
【0055】
例えば、高温の場合には、センスアンプイネーブル信号SAE(HT)で示すタイミングとなり、低温の場合には、センスアンプイネーブル信号SAE(LT)で示すタイミングとなる。
【0056】
したがって、メモリセルに格納されている値=0を読み出す場合において図6の信号波形HT0に示すように、温度が高く、読出対象のメモリセルを構成しているトランジスタのドレイン-ソース間を流れる電流による読出電圧の低下が大きい場合であっても、センスアンプイネーブル信号SAEがイネーブル状態となるセンスアンプイネーブル信号SAE(HT)タイミングでは、基準電圧Vrefからのデータ読出マージンMGHを十分に大きく確保することができ、読み出したデータが誤りになることはない。
【0057】
また、メモリセルMCに格納されている値=1を読み出す場合において図6の信号波形LT1に示すように、温度が低く、読出対象のメモリセルMCを構成しているメモリセルトランジスタTRのドレイン-ソース間を流れる電流による読出電圧の低下が小さくなっても、図6に示すように、基準電圧Vrefからのデータ読出マージンMGLを十分に大きく確保することができ、読み出したデータが誤りになることはない。
【0058】
しかしながら、温度特性が負に大きすぎた場合、高温時のメモリセルに格納されている値=1を読み出す場合に、データ読出マージンMGH1が減少し、読み出したデータが誤りになる虞がある。
【0059】
このため、本実施形態では、セレクタSELを適切に設定することで、データ読出マージンMGH1がデータ読出マージンMGL1を下回ることがないように、適切な温度特性の遅延回路を選択するようにしている。
【0060】
換言すれば、メモリセルMCに格納されている値=1を読み出す場合の温度特性と遅延回路の温度特性が一致するよう、セレクタSELを設定することで、データ読出マージンMGH1がデータ読出マージンMGL1を下回ることがないようにすることができる。
【0061】
以上の説明のように、本実施形態によれば、周囲温度に応じて、温度が高くなった場合には、センスアンプイネーブル信号SAEがイネーブル状態となるタイミングを早くシフトし、温度が低くなった場合には、センスアンプイネーブル信号SAEがイネーブル状態となるタイミングを遅くシフトするとともに、タイミングのシフト量をセレクタにより選択可能となっているので、実際のセンスタイミング生成回路152の動作をより好適なものとすることができる。
【0062】
以上の説明においては、並列接続部として、2系統の遅延回路群を設ける場合について説明したが、3系統以上の遅延回路群を設けるようにすることも可能である。
【0063】
以上の説明においては、接続切換部としてセレクタを設けていずれかの系統を選択可能に切り替える構成としていたが、並列接続部を構成する複数系統の遅延回路群の入力端子を共通接続し、さらに出力端子を共通接続しておき、いずれかの系統の遅延回路群のみが接続状態を維持するように、他の遅延回路群の信号伝送回路上のヒューズを切断したり、あるいは、レーザにより物理的に遅延回路群を切り離したりするようにすることも可能である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 半導体記憶装置
11 メモリセルアレイ
12 ロウデコーダ
13 カラムデコーダ
14 リファレンス電位生成回路
15 センスアンプ回路
16 データ出力回路
17 制御回路
151 センスアンプ
152 センスタイミング生成回路(遅延回路部)
INV1、INV11、INV12 第1インバータ
INV2,INV21、INV22 第2インバータ
N11、N12、N21 NチャネルMOSトランジスタ
P11、P12、P21 PチャネルMOSトランジスタ
BL ビット線
CLK クロック信号
DL1 第1遅延回路(遅延回路部)
DL2 第2遅延回路(遅延回路部)
IN 入力信号
IREF_P、IREF_N 駆動力制御信号
HT0、HT1 信号波形(高温時)
LT0、LT1 信号波形(低温時)
MGL データ読出マージン(低温時)
MGH データ読出マージン(高温時)
TR メモリセルトランジスタ
OUT 出力信号
SAE センスアンプイネーブル信号
SEL セレクタ(接続切替部)
SL ソース線
VDD 高電位側電源
VSS 低電位側電源
Vref 基準電圧
WL ワード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6