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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142226
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048995
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730BB61
5H730BB98
5H730DD04
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】本開示は、突入電流を抑制できる電源装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る電源装置1は、容量素子Cin2~Cin2(接続点:ノードN1)及びスイッチング素子Q1~Q4を有するスイッチトキャパシタ回路2と、スイッチング素子Q1(スイッチトキャパシタ回路2と共用)、容量素子Co、誘導素子Lo及び抵抗素子Roを有する降圧チョッパ回路3と、容量素子Cfly及び誘導素子Lrを有する突入電流抑制回路4とを備える。スイッチトキャパシタ回路2は、入力ノードNin1とドNin2との間に接続され、降圧チョッパ回路3は、共用のスイッチング素子Q1と負荷との間に接続され、突入電流抑制回路4は、ノードN2とノードN3との間に接続されている。スイッチング素子Q2の動作タイミングは、スイッチング素子Q4の動作タイミングより前にずれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される第1の容量素子と、
第2の入力ノードと前記第1のノードとの間に電気的に接続される第2の容量素子と、
前記第1の入力ノードと第2のノードとの間に電気的に接続される第1のスイッチング素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電気的に接続される第2のスイッチング素子と、
前記第1のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される第3のスイッチング素子と、
前記第2の入力ノードと前記第3のノードとの間に電気的に接続される第4のスイッチング素子と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に電気的に接続される第3の容量素子と、
前記第2のノードと第1の出力ノードとの間に電気的に接続される第1の誘導素子と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間で前記第3の容量素子に直列に電気的に接続される第2の誘導素子と、
を備え、
前記第2のスイッチング素子の動作タイミングは、前記第4のスイッチング素子の動作タイミングより前にずれている
電源装置。
【請求項2】
前記第4のスイッチング素子は、第1のタイミングでオフし、
前記第2のスイッチング素子は、前記第1のタイミングより前の第2のタイミングでオフする
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第4のスイッチング素子は、第3のタイミングでオンし、
前記第2のスイッチング素子は、前記第3のタイミングより前の第4のタイミングでオンする
請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
第1の期間に前記第1のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子がオン状態に維持され、前記第1の期間の終了の後に始まる第2の期間に前記第2のスイッチング素子がオン状態に維持され、前記第2の期間の開始と終了の間に始まり前記第2の期間の終了の後に終わる第3の期間に前記第4のスイッチング素子がオン状態に維持される
請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1の容量素子、前記第3の容量素子、前記第2の誘導素子を含むループの共振周波数は、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第3のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子のスイッチング周波数より低く、
前記第2の容量素子、前記第3の容量素子、前記第2の誘導素子を含むループの共振周波数は、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第3のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子のスイッチング周波数より低い
請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、スイッチトキャパシタ回路を用いて構成されることがある(例えば、特許文献1参照)。この電源装置では、スイッチトキャパシタ回路でスイッチング素子及びキャパシタのセットが複数設けられる。スイッチトキャパシタ回路において、偶数番号のスイッチング素子と奇数番号のスイッチング素子とが交互にオンすることで複数のキャパシタの電圧の均一化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-158334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置では、スイッチトキャパシタ回路で偶数番号のスイッチング素子と奇数番号のスイッチング素子とが交互にオンする際に、過渡的にキャパシタへの大きな突入電流が発生する可能性がある。大きな突入電流が発生すると、スイッチング素子などの素子が劣化しやすくなる。
【0005】
本開示は、突入電流を抑制できる電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源装置は、第1の容量素子と第2の容量素子と第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子と第3の容量素子と第1の誘導素子と第2の誘導素子とを有する。第1の容量素子は、第1の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第2の容量素子は、第2の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第1のスイッチング素子は、第1の入力ノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第1のノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第1のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第2の入力ノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第3の容量素子は、第2のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第1の誘導素子は、第2のノードと第1の出力ノードとの間に電気的に接続される。第2の誘導素子は、第2のノードと第3のノードとの間で第3の容量素子に直列に電気的に接続される。第2のスイッチング素子の動作タイミングは、第4のスイッチング素子の動作タイミングより前にずれている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電源装置によれば、突入電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図。
図2】実施形態における電源装置の動作を示す波形図。
図3】実施形態における電源装置の動作を示す波形図。
図4】実施形態における複数のモードの動作を示す波形図。
図5】実施形態における複数のモードの動作を示す回路図。
図6】実施形態の変形例に係る電源装置の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
実施形態にかかる電源装置は、スイッチトキャパシタ回路に降圧チョッパ回路が接続されて構成され、突入電流抑制回路がさらに追加される。突入電流抑制回路は、スイッチトキャパシタ回路における突入電流を抑制するための回路である。例えば、電源装置は、図1に示すように構成され得る。図1は、実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。電源装置1は、外部の電源Vinと負荷回路LDとの間に電気的に接続される。電源装置1は、入力ノードNin1,Nin2を介して電源Vinに接続され、出力ノードNout1,Nout2を介して負荷回路LDに接続される。入力ノードNin1は、グランド電位及び電源Vinの正極側に接続される。入力ノードNin1は、電源Vinの負極側に接続される。すなわち、電源装置1は、負の電源電圧Vinで動作する電源装置である。電源装置1は、電源Vinから電源電圧Vinを受け、電源電圧Vinに応じて、負荷回路LD用の電源電圧Voutを生成する。電源装置1は、電源電圧Voutを負荷回路LDへ供給する。電源装置1は、スイッチトキャパシタ回路2、降圧チョッパ回路3及び突入電流抑制回路4を有する。スイッチトキャパシタ回路2は、入力ノードNin1,Nin2及び降圧チョッパ回路3の間に電気的に接続される。降圧チョッパ回路3は、スイッチトキャパシタ回路2及び出力ノードNout1,Nout2の間に電気的に接続される。突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3にそれぞれ電気的に接続される。スイッチトキャパシタ回路2は、磁気部品を使用せず電圧を昇圧、降圧、極性反転など行うことが可能な回路である。スイッチトキャパシタ回路2は、スイッチング素子及びキャパシタのセットが複数設けられる。スイッチトキャパシタ回路2は、容量素子Cin1、容量素子Cin2、スイッチング素子Q1(第1のスイッチング素子の一例)、スイッチング素子Q2(第2のスイッチング素子の一例)、スイッチング素子Q3(第3のスイッチング素子の一例)、スイッチング素子Q4(第4のスイッチング素子の一例)を有する。容量素子Cin1とスイッチング素子Q1,Q2とが互いに対応し1つのセットを構成する。容量素子Cin2とスイッチング素子Q3,Q4とが互いに対応し1つのセットを構成する。容量素子Cin1は、入力ノードNin1とノードN1との間に電気的に接続される。容量素子Cin1は、一端が入力ノードNin1に接続され、他端がノードN1に接続される。容量素子Cin2は、入力ノードNin2とノードN1との間に電気的に接続される。容量素子Cin2は、一端が入力ノードNin2に接続され、他端がノードN1に接続される。
【0010】
スイッチング素子Q1は、入力ノードNin1とノードN2との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q1は、例えばトランジスタNM1及びダイオードD1を含む。トランジスタNM1は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN2に接続され、ドレインが入力ノードNin1及び出力ノードNout1に接続される。ダイオードD1は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードが入力ノードNin1に接続され、アノードがノードN2に接続される。スイッチング素子Q2は、ノードN1とノードN2との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q2は、例えばトランジスタNM2及びダイオードD2を含む。トランジスタNM2は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN1に接続され、ドレインがノードN2に接続される。ダイオードD2は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN2に接続され、アノードがノードN1に接続される。スイッチング素子Q3は、ノードN1とノードN3との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q3は、例えばトランジスタNM3及びダイオードD3を含む。トランジスタNM3は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN3に接続され、ドレインがノードN1に接続される。ダイオードD3は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN1に接続され、アノードがノードN3に接続される。スイッチング素子Q4は、入力ノードNin2とノードN3との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q4は、例えばトランジスタNM4及びダイオードD4を含む。トランジスタNM4は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースが入力ノードNin2に接続され、ドレインがノードN3に接続される。ダイオードD4は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN3に接続され、アノードが入力ノードNin2に接続される。
【0011】
スイッチトキャパシタ回路2は、電源装置1から出力されるべき電源電圧Voutの大きさをレギュレーションする機能がない。そのため、スイッチトキャパシタ回路2の後段に降圧チョッパ回路3が接続される。降圧チョッパ回路3は、スイッチングのデューティー比(すなわち、オン/オフ時間の比率)に応じて電源電圧Voutの大きさをレギュレーションすることができる。降圧チョッパ回路3は、スイッチング素子Q1、容量素子Co、誘導素子Lo、抵抗素子Roを有する。降圧チョッパ回路3は、スイッチング素子Q1をスイッチトキャパシタ回路2と共有する。容量素子Coは、出力ノードNout1と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。容量素子Coは、一端が出力ノードNout1に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。誘導素子Loは、ノードN2と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。誘導素子Loは、一端がノードN2に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。抵抗素子Roは、出力ノードNout1と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。抵抗素子Roは、一端が出力ノードNout1に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。スイッチトキャパシタ回路2は、スイッチング素子及びキャパシタの複数セット(Q1,Q2,Cin1),(Q3,Q4,Cin2)を含む回路であるため、高負荷、高電圧時に過大な突入電流が流れスイッチ損失が増大する可能性がある。そのため、突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2に電気的に接続される。突入電流抑制回路4は、共振を利用して電流の位相を遅らせることで、突入電流を抑制できる。
【0012】
突入電流抑制回路4は、容量素子Cfly及び誘導素子Lrを有する。容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のスイッチング周波数より低い。これにより、スイッチング時に、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループに流れる電流の位相を遅らせることができる。容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のスイッチング周波数より低い。これにより、スイッチング時に、容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループに流れる電流の位相を遅らせることができる。なお、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数と容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。容量素子Cflyは、ノードN2とノードN3との間に電気的に接続される。容量素子Cflyは、一端がノードN2に接続され、他端がノードN3に接続される。容量素子Cflyは、スイッチング時にフローティング状態になり得ることから、フローティングコンデンサとも呼ばれる。誘導素子Lrは、ノードN2とノードN3との間で容量素子Cflyに直列に電気的に接続される。誘導素子Lrは、ノードN2と容量素子Cflyとの間に電気的に接続されてもよいし、容量素子CflyとノードN3との間に電気的に接続されてもよい。図1では、誘導素子Lrは、一端がノードN2に接続され、他端が容量素子Cflyに接続される。突入電流抑制回路4では、容量素子Cflyに直列に誘導素子Lrを挿入していることにより、突入電流抑制回路4を含むループに共振電流を生成することができる。この際の共振周波数をスイッチング周波数よりも低く設計することでスイッチング素子(Q1、Q3、Q4)のターンオン時におけるソフトスイッチ動作が可能となり、スイッチ損失が低減できる。そのため、高効率の回路動作を実現できる。
【0013】
なお、ソフトスイッチ動作とは、スイッチング過程におけるスイッチング素子の電圧-電流特性平面上の軌跡が最大電圧点、最大電流点および原点を結ぶ三角形の領域(緩やか変化とみなせる領域)内で動くようなスイッチング動作を意味する。スイッチング素子のオン・オフ時に全軌跡が三角形の領域内に収まっておればソフトスイッチング成功、外側に少しでもはみ出すとソフトスイッチング失敗でありハードスイッチングとなる。
例えば、スイッチング素子のターンオフ時に、スイッチング素子の両端電圧が上昇して所定の電圧値に遷移するよりも前に、スイッチング素子に流れる電流が0Aまで減少する場合は、上記の三角形の領域内で動く動作となるため、ソフトスイッチ動作となる。すなわち、スイッチング素子の両端電圧の遷移時間がスイッチング素子に流れる電流の遷移時間よりも長い場合は、ソフトスイッチ動作となる。
ただし、スイッチング素子のターンオフ時に、スイッチング素子の両端電圧が上昇して所定の電圧値に遷移するよりも前に、スイッチング素子に流れる電流が0Aまで減少する場合であっても、サージ電圧の発生により、スイッチング素子の両端電圧が所定の電圧値を超えてオーバーシュートする場合は、ハードスイッチ動作となる。
一方、スイッチング素子のターンオフ時に、スイッチング素子の両端電圧が上昇して所定の電圧値に遷移したにも関わらず、スイッチング素子に流れる電流が0Aまで減少していない場合は、上記の三角形の領域外で動く動作となるため、ハードスイッチ動作になる。すなわち、スイッチング素子の両端電圧の遷移時間がスイッチング素子に流れる電流の遷移時間よりも短い場合は、ハードスイッチ動作となる。
また、スイッチング素子のターンオフ時に、スイッチング素子の両端電圧が上昇して所定の電圧値に遷移する時間と、スイッチング素子に流れる電流が減少して0Aに遷移する時間とが略等しい場合は、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作となる。
スイッチング素子のターンオン時に、スイッチング素子の両端電圧が低下して0Vに遷移したにも関わらず、スイッチング素子に流れる電流が上昇途中の場合は、上記の三角形の領域内で動く動作となるため、ソフトスイッチ動作となる。
一方、スイッチング素子のターンオン時に、スイッチング素子の両端電圧が低下して0Vに遷移するよりも前に、スイッチング素子に流れる電流の上昇が完了する場合は、上記の三角形の領域外で動く動作となるため、ハードスイッチ動作になる。
また、スイッチング素子のターンオン時に、スイッチング素子の両端電圧が低下して0Vに遷移する時間と、スイッチング素子に流れる電流の上昇が完了するまでの時間とが略等しい場合は、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作となる。
【0014】
ここで、スイッチング素子Q1,Q3が同時にオン・オフし、スイッチング素子Q2,Q4が同時にオン・オフする場合、スイッチング素子Q2のオン・オフ時のピーク電流が大きくなる可能性がある。そのため、電源装置1では、スイッチング素子Q2のオン・オフのタイミングをスイッチング素子Q4のオン・オフのタイミングより前にずらす。これにより、スイッチング素子Q2,Q4のオン・オフ時の電流バランスを調整でき、スイッチング素子Q2,Q4の損失を均質化できるので、部品の長寿命化を図ることができる。
【0015】
例えば、電源装置1は、図2及び図3に示すように動作し得る。図2及び図3は、それぞれ、電源装置1の動作を示す波形図である。図2は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2の動作についてシミュレーションを行った結果を示し、図3は、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4についてシミュレーションを行った結果を示す。シミュレーションは、図2及び図3いずれも、次の条件で行った。電源Vinからの入力電圧Vin=1500Vである。容量素子Cin1の容量値Cin1=12μFである。容量素子Cin2の容量値Cin2=12μFである。容量素子Cin3の容量値Cin3=12μFである。誘導素子Lrのインダクタンス値Lr=500nHである。誘導素子Loのインダクタンス値Lo=100μHである。容量素子Coの容量値Co=12μFである。抵抗素子Roの抵抗値Ro=16.66Ωである。スイッチング周波数は100kHzである。デューティー比は、(スイッチング素子Q2のオン期間)/(スイッチング周期)=50%である。スイッチング素子Q1のオン期間とスイッチング素子Q2のオン期間との間隔(デッドタイム)は、120nsである。スイッチング素子Q1,Q3は、オン・オフがそれぞれ互いに同時である。スイッチング素子Q2のオン・オフタイミングは、スイッチング素子Q4のオン・オフタイミングより20ns手前である。この条件では、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数が91.9kHzであり、スイッチング周波数100kHzより小さい。容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数が91.9kHzであり、スイッチング周波数100kHzより小さい。
なお、上記のように、スイッチング素子Q2のオン・オフタイミングは、スイッチング素子Q4のオン・オフタイミングよりも手前にずらすが、ずらせる範囲は、デッドタイムの時間(上記の例では120ns)よりも短い。
【0016】
図2(a)~図2(c)における一点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図2(d)~図2(f)に示す。図2(a)~図2(c)における二点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図2(g)~図2(i)に示す。図2(a)、図2(d)、図2(g)では、スイッチング素子Q1のゲート信号が実線で示され、スイッチング素子Q2のゲート信号が点線で示される。図2(b)、図2(e)、図2(h)では、スイッチング素子Q1の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q1に流れる電流が点線で示される。図2(c)、図2(f)、図2(i)では、スイッチング素子Q2の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q2に流れる電流が点線で示される。
図2(a)に示すように、スイッチング素子Q1は、タイミングt1にオンされ、タイミングt2にオフされ、タイミングt5にオンされ、タイミングt6にオフされる。スイッチング素子Q2は、タイミングt3aにオンされ、タイミングt4aにオフされ、タイミングt7aにオンされる。t2~t3aの期間、t4a~t5の期間、t6~t7aの期間は、それぞれ、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2がいずれもオフ状態であるデッドタイムである。
図2(a)、図2(d)に示すように、タイミングt2にスイッチング素子Q1がオフされると、図2(b)、図2(e)に示すように、スイッチング素子Q1に流れるマイナスの電流が緩やかに変化しゼロになる。すなわち、図2(e)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q1では、オフ時にダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。
図2(a)、図2(g)に示すように、タイミングt5にスイッチング素子Q1がオンされると、図2(b)、図2(h)に示すように、スイッチング素子Q1に略一定のマイナスの電流が流れる。すなわち、図2(h)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q1では、オン時にダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。
【0017】
図2(a)、図2(d)に示すように、タイミングt3aにスイッチング素子Q2がオンされると、図2(c)、図2(f)に示すように、スイッチング素子Q4がオフされているため、スイッチング素子Q2に流れる電流がゲート信号と同様に変化しプラスの電流になる。
すなわち、図2(d)、図2(f)に示すように、スイッチング素子Q2の両端電圧の遷移時間とスイッチング素子Q2に流れる電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。なお、タイミングt3aは、スイッチング素子Q4がオンされるタイミングt3(図3(d)~図3(f)参照)より前にずれている。
図2(a)、図2(g)に示すように、タイミングt4aにスイッチング素子Q2がオフされると、図2(c)、図2(i)に示すように、スイッチング素子Q2にプラスの電流が流れていたのがゲート信号より緩やかに変化しゼロになる。また、突入電流抑制回路4を含むループに共振特性を利用したことにより、スイッチング素子Q2のスイッチング時に流れる電流の一部が突入電流抑制回路4を含むループに流れる。そのため、スイッチング素子Q2に流れる電流は、突入電流抑制回路4を設けない場合に比べて緩やかに低減される。
すなわち、図2(g)、図2(i)に示すように、スイッチング素子Q2の両端電圧の遷移時間とスイッチング素子Q2に流れる電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
なお、タイミングt4aは、スイッチング素子Q4がオフされるタイミングt4(図3(g)~図3(i)参照)より前にずれている。
【0018】
図3(a)~図3(c)における一点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図3(d)~図3(f)に示す。図3(a)~図3(c)における二点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図3(g)~図3(i)に示す。図3(a)、図3(d)、図3(g)では、スイッチング素子Q3のゲート信号が実線で示され、スイッチング素子Q4のゲート信号が点線で示される。図3(b)、図3(e)、図3(h)では、スイッチング素子Q3の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q3に流れる電流が点線で示される。図3(c)、図3(f)、図3(i)では、スイッチング素子Q4の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q4に流れる電流が点線で示される。
図3(a)に示すように、スイッチング素子Q3は、タイミングt1にオンされ、タイミングt2にオフされ、タイミングt5にオンされ、タイミングt6にオフされる。スイッチング素子Q4は、タイミングt3にオンされ、タイミングt4にオフされ、タイミングt7にオンされる。t2~t3の期間、t4~t5の期間、t6~t7の期間は、それぞれ、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4がいずれもオフ状態であるデッドタイムである。
図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt2にスイッチング素子Q3がオフされると、図3(b)、図3(e)に示すように、スイッチング素子Q3に流れる電流の一部が突入電流抑制回路4を含むループに流れる。すなわち、図3(e)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q3では、オフ時に共振により電圧が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。
図3(a)、図3(g)に示すように、タイミングt5にスイッチング素子Q3がオンされると、図3(b)、図3(h)に示すように、スイッチング素子Q3に略一定のマイナスの電流が流れる。すなわち、図3(h)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q3では、オン時にダイオードD3に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。
図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt3にスイッチング素子Q4がオンされると、図3(c)、図3(f)に示すように、手前のタイミングt3aでスイッチング素子Q2がオンされているため、スイッチング素子Q4の寄生ダイオードD4に電流が流れており、ゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化する。これにより、ソフトスイッチ動作になる。
図3(a)、図3(g)に示すように、タイミングt4にスイッチング素子Q4がオフされると、図3(c)、図3(i)に示すように、スイッチング素子Q4にプラスの電流が流れていたのがゲート信号と同様に変化しゼロになる。
すなわち、図3(g)、図3(i)に示すように、スイッチング素子Q4の両端電圧の遷移時間とスイッチング素子Q4に流れる電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。ただし、手前のタイミングt4aでスイッチング素子Q2がオフされている分、タイミングt4のスイッチング素子Q4のオフ時の電流が増加する。
【0019】
次に、電源装置1における電流経路の時間的変化について図4及び図5を用いて説明する。電流経路の時間的変化は、複数のモードに分類することができる。図4は、複数のモードでの動作を示す波形図である。図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)は、それぞれ、容量素子Cfly、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4に流れる電流の時間的変化を示す。図5は、複数のモードでの動作を示す回路図である。図4に示すタイミングt11~t12の期間において、モード(6)の動作が行われる。タイミングt12~t13の期間において、モード(1)の動作が行われる。タイミングt13~t14の期間において、モード(1)’の動作が行われる。タイミングt14~t15の期間において、モード(2)の動作が行われる。タイミングt15~t16の期間において、モード(3)の動作が行われる。タイミングt16~t17の期間において、モード(4)の動作が行われる。タイミングt17~t18の期間において、モード(5)の動作が行われる。タイミングt18~t19の期間において、モード(6)の動作が行われる。図2図3に示すタイミングt3aがタイミングt11に対応し、タイミングt3がタイミングt12に対応し、タイミングt4aがタイミングt14に対応し、タイミングt4がタイミングt15に対応し、タイミングt7aがタイミングt18に対応し、タイミングt7がタイミングt19に対応する。
【0020】
タイミングt11にスイッチング素子Q2がオンし寄生容量Coss分の電流が流れ始めるが、スイッチング素子Q2の両端電圧の遷移時間とスイッチング素子Q2に流れる電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
すなわち、モード(6)の動作では、図5(a)に示すように、スイッチング素子Q2が先にオンするため、スイッチング素子Q2の両端電圧Vdsは750V→0V(図2(f)のタイミングt3a参照)となり、スイッチング素子Q3の両端電圧Vdsが0V→750V(図3(e)のタイミングt3参照)となるため、スイッチング素子Q4の両端電圧Vdsは0V(図3(f)のタイミングt3参照)となりダイオードD4側を流れ始める。
タイミングt12にスイッチング素子Q4がオンすると、手前のタイミングt11でスイッチング素子Q2がオンされているため、スイッチング素子Q4のダイオードD4に電流が流れており、ゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化する。これにより、ソフトスイッチ動作になる。すなわち、モード(1)では、図5(b)に示すように、スイッチング素子Q2はオン状態に維持され、スイッチング素子Q4がずらした分遅れてオンする。このとき、スイッチング素子Q4はダイオードD4側を電流が流れており、スイッチング素子Q4の両端電圧Vdsは0Vのため、そのターンオンはソフトスイッチ動作になる。スイッチング素子Q2には、容量素子Cin1→容量素子Co及び抵抗素子Ro→誘導素子Loの電流と容量素子Cin2→容量素子Cfly→誘導素子Lrの共振電流とが合算された電流が流れる。
タイミングt13では、スイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q4がいずれもオン状態に維持される。すなわち、モード(1)’では、図5(c)に示すように、容量素子Cin2→誘導素子Lr→容量素子Cflyの共振電流がスイッチング素子Q4のトランジスタNM4側を流れる。
タイミングt14にスイッチング素子Q2がオフすると、スイッチング素子Q4がオンされているため、スイッチング素子Q2のオフ時の電流が突入電流抑制回路4を含む共振ループに流れ緩やかに低減され、ソフトスイッチ動作になる。すなわち、モード(2)では、図5(d)に示すように、スイッチング素子Q2が先にオフし、容量素子Cin1→容量素子Co及び抵抗素子Ro→誘導素子Loの電流はスイッチング素子Q4側へ流れる。これにより、スイッチング素子Q4に流れる電流が増加する。一方、スイッチング素子Q2がオフすると、その両端電圧Vdsが0Vから容量素子Cin1の電圧に相当する750Vまで上昇する(図2(i)のタイミングt4a参照)。そのため、スイッチング素子Q1のダイオードD1がオンする。なお、スイッチング素子Q2のオフ時は、上述したようにソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
その後、少し遅れたタイミングt15にスイッチング素子Q4がオフする。このとき、スイッチング素子Q2が先にオフしている分、タイミングt14よりもスイッチング素子Q4に流れる電流が大きくなった状態でオフすることになる。一方、スイッチング素子Q4がオフすると、その両端電圧Vdsが0Vから容量素子Cin2の電圧に相当する750Vまで上昇する(図3(i)のタイミングt4参照)。そのため、スイッチング素子Q3のダイオードD3がオンする。なお、スイッチング素子Q4のオフ時は、上述したようにソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
この状態でデッドタイムが終わると、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q3がオンして、モード(3)に移行する。
モード(3)では、図5(e)に一点鎖線の矢印で示すように、容量素子Cin1→スイッチング素子Q1→誘導素子Lr→容量素子Cfly→ダイオードD3→容量素子Cin1の経路で共振電流が流れる。スイッチング素子Q1,Q3は、ダイオードD1,D3側を電流が流れており、いずれも両端電圧Vdsが0Vである。このとき、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作の共振周波数がスイッチング素子Q1~Q4のスイッチング周波数に比べて低い。上述したように、スイッチング素子Q1,Q3のオン動作はソフトスイッチ動作になる。
タイミングt16に、容量素子Cin1、容量素子Cfly及び誘導素子Lrの共振により、一点鎖線の電流が逆方向に流れ始める。すなわち、モード(4)では、図5(e)に点線で示す容量素子Cin1→スイッチング素子Q3→容量素子Cfly→誘導素子Lr→ダイオードD1の経路の電流と図5(e)に実線で示す容量素子Co及び抵抗素子Ro→誘導素子Lo→ダイオードD1の経路の電流との合算された電流が、スイッチング素子Q1のダイオードD1に流れる。
タイミングt17になると、スイッチング素子Q1,Q3がオフするが、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作によりソフトスイッチ動作になる。すなわち、モード(5)では、図5(f)に示すように、スイッチング素子Q1,Q3がオフする。スイッチング素子Q1はそのままダイオードD1側を流れるため、そのオフ動作がソフトスイッチ動作になる。スイッチング素子Q3側は、オフ後Q3の出力容量(数100pF)、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrの共振となり、スイッチング素子Q3の両端電圧Vdsはデッドタイム(120nsec)中内に半波波形となり、電圧が上昇後0まで下がり、ダイオードD3側に電流が流れ始める。すなわち、スイッチング素子Q1~Q4が全てオフ状態になり、スイッチング素子Q1,Q3はダイオードD1,D3を電流が流れるため、誘導素子Lr及び容量素子Cflyの直列接続の両端に750Vが印加され、スイッチング素子Q2の両断電圧Vdsも750Vになる。
タイミングt18にスイッチング素子Q2はオンし寄生容量Coss分の電流が流れ始めるが、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。すなわち、再び、モード(6)の動作が行われるが、その際のスイッチング素子Q2の両端電圧の遷移時間とスイッチング素子Q2に流れる電流の遷移時間とが略等しくなり、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
【0021】
例えば、スイッチング素子Q2,Q4を同時にオンすると、両者のソース・ドレイン間の寄生容量Cossにたまった電荷による急激な電流変化があり、両者のオン動作がいずれもハードスイッチ動作になる。
一方、スイッチング素子Q2のオンタイミングをスイッチング素子Q4のオンタイミングより前にずらすと、寄生容量Cossによる電流変化がスイッチング素子Q4のオフにより抑制されるので、スイッチング素子Q2のオン動作がソフト・ハードスイッチの境界条件の動作、スイッチング素子Q4のオン動作がソフトスイッチ動作に緩和される。
また、スイッチング素子Q2,Q4を同時にオフすると、スイッチング素子Q2,Q4の寄生容量Cossの比で電流が流れ、両者のオフ動作がいずれもソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。一方、スイッチング素子Q2のオフタイミングをスイッチング素子Q4のオフタイミングより前にずらすと、スイッチング素子Q2のオフ時の電流をスイッチング素子Q4に流せることでスイッチング素子Q2のオフロスを削減でき、スイッチング素子Q2のオフ動作がソフト・ハードスイッチの境界条件の動作に緩和でき、スイッチング素子Q4のオフ動作がソフト・ハードスイッチの境界条件の動作に維持される。
【0022】
以上のように、実施形態では、電源装置1は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3に加えて突入電流抑制回路4を有する。突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3の間に接続され、容量素子Cfly及び誘導素子Lrの直列接続を含む。これにより、突入電流抑制回路4がスイッチトキャパシタ回路2との間で共振回路を過渡的に形成できる。また、スイッチング素子Q2の動作タイミングをスイッチング素子Q4の動作タイミングより前にずらす。これにより、スイッチング素子Q2,Q4間の損失を均質化できるので、部品の長寿命化を図ることができる。したがって、スイッチトキャパシタのメリットである、素子にかかる電圧の緩和と、共振を利用したソフトスイッチングにより突入電流を抑制しつつスイッチストレスを抑えた高効率の回路が実現できる。また、本来ハードスイッチ動作となってしまう降圧チョッパのスイッチに対しても共振を利用することで、導通損失の抑制、スイッチング損失の抑制により、レギュレーションを維持しながら半導体部品のストレスも抑えることができる。これにより、部品のコストアップを抑えかつ低損失となることから電源装置1全体の小型化が容易である。
【0023】
なお、電源装置1iは、図6に示すように、正の電源電圧Vinを受けるように構成されてもよい。図6は、実施形態の変形例に係る電源装置の構成を示す回路図である。電源装置1iは、入力ノードNin1に代えて入力ノードNin2がグランド電位に接続され、正の電源電圧Vinで動作する電源装置である。電源装置1(図1参照)に対して対称な回路構成を有する。電源装置1iは、降圧チョッパ回路3及び突入電流抑制回路4(図1参照)に代えて降圧チョッパ回路3i及び突入電流抑制回路4iを有する。降圧チョッパ回路3iは、図1の構成例におけるスイッチング素子Q1に代えてスイッチング素子Q4(第1のスイッチング素子の一例)を有する。降圧チョッパ回路3iは、スイッチング素子Q4をスイッチトキャパシタ回路2と共有する。降圧チョッパ回路3iは、降圧チョッパ回路3と対称な回路構成を有する。誘導素子Loは、ノードN2iと出力ノードNout1との間に電気的に接続される。誘導素子Loは、一端がノードN2iに接続され、他端が出力ノードNout1に接続される。突入電流抑制回路4iは、突入電流抑制回路4と対称な回路構成を有する。容量素子Cflyは、ノードN2iとノードN3iとの間に電気的に接続される。容量素子Cflyは、一端がノードN2iに接続され、他端がノードN3iに接続される。ノードN2iは、誘導素子Loの一端と容量素子Cflyの一端とスイッチング素子Q3(第2のスイッチング素子の一例)のソースとスイッチング素子Q4のドレインとに接続される。ノードN3iは、スイッチング素子Q1(第4のスイッチング素子の一例)のソースとスイッチング素子Q2(第3のスイッチング素子の一例)のドレインとに接続される。このような構成によっても、突入電流抑制回路4iがスイッチトキャパシタ回路2との間で共振回路を過渡的に形成できる。例えば、過渡的に形成される共振回路の共振周波数をスイッチトキャパシタ回路2におけるスイッチング素子のスイッチング周波数より低くし、共振を利用して電流の位相を遅らせることなどにより、スイッチング動作時の突入電流を抑制できる。
【符号の説明】
【0024】
1,1i 電源装置
2 スイッチトキャパシタ回路
3,3i 降圧チョッパ回路
4,4i 突入電流抑制回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6