(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142241
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/108 20060101AFI20230928BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20230928BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230928BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L31/10 C
H01L31/10 B
H01L27/146 A
G01J1/02 B
G01J1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049038
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】安田 健介
【テーマコード(参考)】
2G065
4M118
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065BA02
2G065BA09
2G065BA34
4M118AA05
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5F149AA05
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(57)【要約】
【課題】ノイズの抑制が可能な光検出装置を提供する。
【解決手段】実施形態の光検出装置は、アレイ状に配置された複数のセル領域と、セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、セル領域は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域に接する電極と、一部が第1の半導体領域に囲まれ、別の一部が第2の半導体領域に囲まれる複数の金属領域と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配置された複数のセル領域と、前記セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、
前記セル領域は、
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、
前記半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域に接する電極と、
一部が前記第1の半導体領域に囲まれ、別の一部が前記第2の半導体領域に囲まれる複数の金属領域と、
を含む、光検出装置。
【請求項2】
前記金属領域は前記第1の半導体領域に接し、前記金属領域は前記第2の半導体領域に接する請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記金属領域と前記第1の半導体領域との間の接合、及び、前記金属領域と前記第2の半導体領域との間の接合は、ショットキー接合である請求項2記載の光検出装置。
【請求項4】
前記セル領域は、前記金属領域に囲まれる絶縁領域を、更に含む請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の光検出装置。
【請求項5】
前記セル領域は、前記金属領域と前記第1の半導体領域との間、及び、前記金属領域と前記第2の半導体領域との間に設けられた絶縁膜を、更に含む請求項1記載の光検出装置。
【請求項6】
前記素子分離領域は、
前記半導体層と、
前記半導体層に対し前記第1の面の側に設けられた絶縁層と、
前記半導体層との間に前記絶縁層が設けられ、前記電極に電気的に接続された抵抗層とを、含む請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の光検出装置。
【請求項7】
アレイ状に配置された複数のセル領域と、前記セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、
前記セル領域は、
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、
前記半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域に接する電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域との間に、前記第2の半導体領域が設けられる複数の金属領域と、
を含む、光検出装置。
【請求項8】
前記金属領域は前記第2の半導体領域に接する請求項7記載の光検出装置。
【請求項9】
前記セル領域は、前記金属領域と前記第2の半導体領域との間に設けられた絶縁膜を、更に含む請求項7記載の光検出装置。
【請求項10】
前記素子分離領域は、
前記半導体層と、
前記半導体層に対し前記第1の面の側に設けられた絶縁層と、
前記半導体層との間に前記絶縁層が設けられ、前記電極に電気的に接続された抵抗層とを、含む請求項7ないし請求項9いずれか一項記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微弱な光を検出する光検出装置として、複数のセル領域がアレイ状に配置され、各セル領域にアバランシェフォトダイオード(APD)が設けられたSiPM(Silicon Photomultiplier)が開発されている。SiPMは、入射される一個の光子を検出することが可能な高い検出感度を備える。
【0003】
一方、SiPMは、高い検出感度を備えるがゆえに、ノイズの発生を抑制することが課題となる。抑制すべきノイズには、クロストークノイズと遅延ノイズがある。
【0004】
クロストークノイズは、例えば、電子雪崩で生じた二次光子が、隣接するセル領域に入射されることで生じる。遅延ノイズは、セル領域に生じたキャリアが時間を経てから電子雪崩を引き起こすことで生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズの抑制が可能な光検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の光検出装置は、アレイ状に配置された複数のセル領域と、前記セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、前記セル領域は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、前記半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域に接する電極と、一部が前記第1の半導体領域に囲まれ、別の一部が前記第2の半導体領域に囲まれる複数の金属領域と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第1の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図。
【
図4】第1の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図。
【
図5】第1の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図。
【
図8】第1の実施形態の光検出装置の作用及び効果の説明図。
【
図9】第1の実施形態の変形例の光検出装置の拡大模式断面図。
【
図10】第1の実施形態の変形例の光検出装置の拡大模式上面図。
【
図11】第2の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図。
【
図12】第2の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図。
【
図13】第3の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図。
【
図14】第3の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図。
【
図15】第4の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0010】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する場合がある。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0011】
本明細書中、n+形、n形、n-形との表記がある場合、n+形、n形、n-形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+形、p形、p-形の表記がある場合、p+形、p形、p-形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0012】
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。
【0013】
本明細書中の光検出装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、SIMS、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)により行うことが可能である。また、光検出装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、光検出装置を構成する部材の物質の同定には、例えば、X線回折分析(X-rayDiffraction:XRD)、電子線回折分析(Electron Beam Diffraction:EBD)、X線光電分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いることが可能である。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の光検出装置は、アレイ状に配置された複数のセル領域と、セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、セル領域は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域に接する電極と、一部が第1の半導体領域に囲まれ、別の一部が第2の半導体領域に囲まれる複数の金属領域と、を含む。
【0015】
以下、第1導電形がp形、第2の導電形がn形の場合を例に説明する。
【0016】
図1は、第1の実施形態の光検出装置の模式上面図である。
【0017】
図1に示すように、光検出装置100は、セル領域100aと素子分離領域100bを含む。複数のセル領域100aが、アレイ状に配置される。各セル領域100aに1個のAPDが設けられる。
【0018】
図1では、アレイ状に配置されるセル領域100aの数は49個であるが、セル領域100aの数は特に限定されるものではない。セル領域100aの数は例えば、10個以上1000個以下である。
【0019】
セル領域100aの形状は、例えば、上面から見て矩形である。セル領域100aの形状は、例えば、上面から見て正方形である。セル領域100aの1辺の長さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0020】
素子分離領域100bは、セル領域100aの間に設けられる。素子分離領域100bは、各セル領域100aを囲む。素子分離領域100bは、隣り合うセル領域100aとセル領域100aとの間を電気的に分離する機能を有する。
【0021】
図2は、第1の実施形態の光検出装置の模式断面図である。
図2は、
図1のAA’断面である。
【0022】
光検出装置100は、半導体層10を備える。半導体層10は、p形半導体領域11(第1の半導体領域)及びn形半導体領域12(第2の半導体領域)を含む。p形半導体領域11は、基板部分11a(第1の部分)、低不純物濃度部分11b(第2の部分)、高不純物濃度部分11c(第3の部分)を含む。
【0023】
光検出装置100は、表面電極16(電極)、金属領域18、素子分離絶縁層22(絶縁層)、抵抗層24、第1のコンタクト部26、第2のコンタクト部28、第1の配線層30、第2の配線層32を、備える。
【0024】
半導体層10は、第1の面(
図2中のF1)と第2の面(
図2中のF2)とを有する。以下、第1の面F1を表面とも称する。また、第2の面F2を裏面とも称する。
【0025】
半導体層10は、例えば、シリコンである。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。
【0026】
セル領域100aは、半導体層10を含む。セル領域100aの半導体層10は、p形半導体領域11及びn形半導体領域12を含む。
【0027】
セル領域100aのp形半導体領域11は、基板部分11a、低不純物濃度部分11b、及び高不純物濃度部分11cを含む。
【0028】
基板部分11aは、p+形の半導体である。基板部分11aは、第2の面F2の側に設けられる。
【0029】
基板部分11aには、例えば、接地電位(GND)が印加される。
【0030】
低不純物濃度部分11bは、p-形の半導体である。低不純物濃度部分11bは、基板部分11aと第1の面F1との間に設けられる。
【0031】
低不純物濃度部分11bは、例えば、基板部分11aの上にエピタキシャル成長法によって形成されたエピタキシャル成長層である。低不純物濃度部分11bのp形不純物濃度は、基板部分11aのp形不純物濃度よりも低い。
【0032】
低不純物濃度部分11bの第1の面F1から第2の面F2に向かう方向の厚さは、例えば、1μm以上5μm以下である。
【0033】
高不純物濃度部分11cは、p形の半導体である。高不純物濃度部分11cは、低不純物濃度部分11bと第1の面F1との間に設けられる。高不純物濃度部分11cは、低不純物濃度部分11bとn形半導体領域12との間に設けられる。
【0034】
高不純物濃度部分11cは、例えば、p形不純物を半導体層10の表面からイオン注入することにより形成される。高不純物濃度部分11cのp形不純物濃度は、低不純物濃度部分11bのp形不純物濃度よりも高い。
【0035】
n形半導体領域12は、n+形の半導体である。n形半導体領域12は、p形半導体領域11と第1の面F1との間に設けられる。n形半導体領域12は、高不純物濃度部分11cと第1の面F1との間に設けられる。
【0036】
n形半導体領域12の第1の面F1から第2の面F2に向かう方向の厚さは、例えば、100nm以上1μm以下である。
【0037】
セル領域100aにおいて、p形半導体領域11とn形半導体領域12によりAPDが形成される。セル領域100aにおいて、基板部分11a、低不純物濃度部分11b、高不純物濃度部分11c、及びn形半導体領域12によりAPDが形成される。
【0038】
セル領域100aは、表面電極16を含む。表面電極16は、n形半導体領域12に電気的に接続される。表面電極16は、n形半導体領域12に接する。
【0039】
表面電極16は、導電体である。表面電極16は、例えば、金属である。
【0040】
図3は、第1の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図である。
図3は、セル領域100aの断面図である。
図3は、
図4のCC’断面である。
【0041】
図4は、第1の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図である。
図4は、セル領域100aの第1の面F1の上面図である。
図4は、
図3の上面図である。
【0042】
図5は、第1の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図である。
図5は、
図3のBB’断面である。
図5は、第1の面F1に平行な断面である。
【0043】
セル領域100aは、半導体層10の表面側に複数の金属領域18を含む。複数の金属領域18は、半導体層10の表面において、所定の間隔で配置される。
【0044】
金属領域18は、例えば、半導体層10の表面に設けられたトレンチ17の中に位置する。金属領域18は、例えば、半導体層10の表面に設けられたトレンチ17を金属で埋め込むことにより形成される。
【0045】
金属領域18の一部は、p形半導体領域11に囲まれる。金属領域18の別の一部は、n形半導体領域12に囲まれる。
【0046】
金属領域18の一部は、第1の面F1に平行な断面において、p形半導体領域11に囲まれる。金属領域18の別の一部は、第1の面F1に平行な断面において、n形半導体領域12に囲まれる。
【0047】
例えば、
図5に示すように、金属領域18の下部18aは、p形半導体領域11に囲まれる。金属領域18の下部18aは、高不純物濃度部分11cに囲まれる。
【0048】
例えば、
図4に示すように、金属領域18の上部18bは、n形半導体領域12に囲まれる。
【0049】
金属領域18は、n形半導体領域12を貫通して、p形半導体領域11に達する。金属領域18は、n形半導体領域12を貫通して、高不純物濃度部分11cに達する。
【0050】
金属領域18は、p形半導体領域11に接する。金属領域18は、高不純物濃度部分11cに接する。金属領域18は、n形半導体領域12に接する。
【0051】
金属領域18とp形半導体領域11との間の接合は、例えば、ショットキー接合である。金属領域18と高不純物濃度部分11cとの間の接合は、例えば、ショットキー接合である。金属領域18とn形半導体領域12との間の接合は、例えば、ショットキー接合である。
【0052】
金属領域18の間の第1の面F1における最大幅は、例えば、1nm以上1μm以下である。隣り合う2つの金属領域18の間の第1の面F1における距離は、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0053】
金属領域18は、金属である。金属領域18は、例えば、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、チタン(Ti)、又はコバルト(Co)である。
【0054】
なお、セル領域100aの第1の面F1において、n形半導体領域12はp形半導体領域11に囲まれる。セル領域100aの第1の面F1において、n形半導体領域12は、例えば、低不純物濃度部分11bに囲まれる。
【0055】
素子分離領域100bは、半導体層10と、素子分離絶縁層22と、抵抗層24とを含む。
【0056】
素子分離領域100bは、p形半導体領域11を含む。素子分離領域は、n形半導体領域12を含まない。
【0057】
素子分離領域100bにおいて、p形半導体領域11は第1の面F1に接する。素子分離領域100bにおいて、例えば、低不純物濃度部分11bは第1の面F1に接する。
【0058】
素子分離絶縁層22は、半導体層10の第1の面F1側に設けられる。素子分離絶縁層22は、半導体層10の表面上に設けられる。素子分離絶縁層22は、例えば、酸化シリコンである。
【0059】
抵抗層24は、素子分離絶縁層22の上に設けられる。半導体層10と抵抗層24との間に、素子分離絶縁層22が設けられる。
【0060】
抵抗層24の抵抗率は、表面電極16の抵抗率よりも高い。
【0061】
抵抗層24は、金属又は半導体である。抵抗層24は、例えば、多結晶シリコンである。
【0062】
抵抗層24は、表面電極16に電気的に接続される。抵抗層24の一端は、第1のコンタクト部26、及び、第1の配線層30を経由して、表面電極16に電気的に接続される。
【0063】
また、抵抗層24の他端は、第2のコンタクト部28を経由して第2の配線層32に電気的に接続される。
【0064】
抵抗層24の抵抗率は、例えば、第1のコンタクト部26の抵抗率よりも高い。抵抗層24の抵抗率は、例えば、第2のコンタクト部28の抵抗率よりも高い。抵抗層24の抵抗率は、例えば、第1の配線層30の抵抗率よりも高い。抵抗層24の抵抗率は、例えば、第2の配線層32の抵抗率よりも高い。
【0065】
第2の配線層32には、例えば、正の電源電位Vrが印加される。表面電極16には、例えば、正の電源電位Vrが印加される。
【0066】
次に、第1の実施形態の光検出装置100の作用及び効果について説明する。
【0067】
図6は、比較例の光検出装置の模式断面図である。比較例の光検出装置900は、複数のAPDが設けられたSiPMである点で、第1の実施形態の光検出装置900と同様である。
図6は、第1の実施形態の
図2に対応する図である。
【0068】
比較例の光検出装置900は、セル領域100aに金属領域18を含まない点で、第1の実施形態の光検出装置100と異なる。また、比較例の光検出装置900は、低不純物濃度部分11bの厚さが厚い点で、第1の実施形態の光検出装置100と異なる。
【0069】
以下、比較例の光検出装置900を参照して、複数のAPDが設けられたSiPMの動作について説明する。
【0070】
図7は、比較例の光検出装置の等価回路図である。
図7は、第1の実施形態の光検出装置の等価回路図でもある。
【0071】
各セル領域100aは1個のAPDである。また、各セル領域100aのAPDには、1個の抵抗層24が直列に接続されている。光検出装置900では、それぞれに抵抗層24が直列接続された複数のAPDが、並列に接続されてている。
【0072】
図6に示すように、基板部分11aに接地電位(GND)が印加され、第2の配線層32に正の電源電圧(Vr)が印加されることで、APDには逆バイアス電圧が印加されていることになる。
【0073】
APDのn形半導体領域12とp形半導体領域11のpn接合を挟んで、空乏層が半導体層10に広がる。特に、p形不純物濃度の低い低不純物濃度部分11bに空乏層が広がる。低不純物濃度部分11bは、光子を吸収する光吸収層として機能する。
【0074】
例えば、セル領域100aの空乏層に光子が入射すると、電子正孔対が発生する。例えば、発生した電子及び正孔は、pn接合に向かって流れ、pn接合界面の急峻な電位勾配を有する増幅層で加速され、電子雪崩(アバランシェ)が引き起こされる。電子雪崩が引き起こされることによりAPDに流れる電流が増幅されるため、例えば、一個の光子の入射を一つのセル領域100aで検知できる。
【0075】
光検出装置900は、
図7に示すように、複数のセル領域100aが並列に接続されるため、同時に入射された光子の個数をカウントすることができる。
【0076】
各セル領域100aに接続される抵抗層24は、いわゆるクエンチング抵抗として機能する。クエンチング抵抗は、APDで生じた電子雪崩を、その電圧降下によって終息させる機能を有する。
【0077】
光検出装置900は、高い検出感度を備えるがゆえに、ノイズの発生を抑制することが要求される。抑制すべきノイズには、クロストークノイズと遅延ノイズがある。
【0078】
クロストークノイズは、例えば、電子雪崩で生じた二次光子が、隣接するセル領域100aに入射されることで生じる。光検出装置900の検出感度を向上する観点から、空乏層が形成され、光吸収層として機能する低不純物濃度部分11bの厚さは厚いことが好ましい。しかし、低不純物濃度部分11bの厚さを厚くすると、隣接するセル領域100aに二次光子が入射しやすくなり、クロストークノイズが大きくなるおそれがある。
【0079】
また、遅延ノイズは、低不純物濃度部分11bに残存するキャリアが時間が経ってから電子雪崩を引き起こすことで生じる。低不純物濃度部分11bの厚さを厚くすると残存するキャリアも多くなるため、遅延ノイズが大きくなるおそれがある。
【0080】
したがって、光検出装置900の高い検出感度を維持したまま、光吸収層として機能する低不純物濃度部分11bの厚さを薄くすることが、ノイズを抑制する観点から望ましい。
【0081】
第1の実施形態の光検出装置100は、セル領域100aが金属領域18を備える。光検出装置100は、セル領域100aが金属領域18を備えることで、高い検出感度を実現することが可能となる。
【0082】
したがって、高い検出感度を維持したまま、低不純物濃度部分11bの厚さを薄くすることが可能となる。よって、光検出装置100のノイズを抑制することが可能となる。以下、詳述する。
【0083】
図8は、第1の実施形態の光検出装置の作用及び効果の説明図である。
図8(a)は金属領域18を含む部分の断面図である。
図8(b)は、
図8(a)の点線枠で囲った領域のバンド図である。
【0084】
数nm~数百nmオーダーの金属構造は、その金属種、大きさ、形状等に応じた波長の光に対して、極めて大きな吸光特性を示す。これは金属内の自由電子と入射光の共鳴によって、金属構造における光の局在化が生じるためである。この共鳴状態をプラズモンと呼ぶ。
【0085】
近接した金属と半導体は、大きく以下の2種の過程で相互作用する。
【0086】
一つ目の過程は、PIRET(plasmon-induced resonance energy transfer)である。プラズモンによって金属構造の近傍に発生する増強電場は、入射光が金属構造に閉じ込められ局在化するように振る舞う。局在化した光は、近接する半導体内でのバンドキャップ間の光励起を誘起する。
【0087】
金属構造に局在化した光によって、pn接合部における光励起確率を顕著に向上させることが可能となる。
図8(b)に示すように、PIERTにより増幅層で生成されたキャリアは、電子・正孔の両方が電位勾配に従って加速され、電子雪崩に寄与する。
【0088】
二つ目の過程は、DET(direct energy transfer)である。金属構造に局在化した光は、その失活過程で金属内で電子正孔対を形成する。この時、金属構造と半導体がショットキー接合を形成している場合、キャリアが一定の確率で半導体へ注入される。
【0089】
図8(b)に示すように、金属構造中で励起した電子正孔対が、ショットキー障壁を超えて半導体層に注入される。半導体層に注入された電子・正孔は、電位勾配に従って加速され、電子雪崩に寄与する。
【0090】
以上説明した原理により、金属領域18と半導体層10との相互作用により、光検出装置100の光吸収感度が顕著に向上する。このため、光検出装置100の検出感度が顕著に向上する。したがって、高い検出感度を維持したまま、低不純物濃度部分11bの厚さを薄くすることが可能となる。よって、光検出装置100のノイズを抑制することが可能となる。
【0091】
DETによる効果を実現する観点から、金属領域18とp形半導体領域11との間の接合は、ショットキー接合であることが好ましい。また、金属領域18とn形半導体領域12との間の接合は、ショットキー接合であることが好ましい。
【0092】
ショットキー接合を実現する観点から、半導体層10がシリコンの場合、金属領域18の金属が、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、又は金(Au)であることが好ましい。
【0093】
(変形例)
図9は、第1の実施形態の変形例の光検出装置の拡大模式断面図である。
図9は、第1の実施形態の
図3に対応する図である。
図9は、
図10のCC’断面である。
【0094】
図10は、第1の実施形態の変形例の光検出装置の拡大模式上面図である。
図10は、セル領域100aの第1の面F1の上面図である。
図10は、
図9の上面図である。
【0095】
第1の実施形態の変形例の光検出装置は、セル領域100aは、金属領域18に囲まれる絶縁領域19を、更に含む点で、第1の実施形態の光検出装置100と異なる。
【0096】
第1の面F1に平行な断面において、絶縁領域19は、金属領域18に囲まれる。絶縁領域19は、例えば、酸化シリコンである。
【0097】
金属領域18は、例えば、金属薄膜で形成される。例えば、半導体層10に設けられたトレンチ17を金属薄膜で埋め込み、その後、金属薄膜の内側を、絶縁物で埋め込むことで、
図9、
図10に示すセル領域100aの構造が形成できる。
【0098】
第1の実施形態の変形例の光検出装置においても、第1の実施形態の光検出装置100と同様の効果が得られる。
【0099】
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、ノイズの抑制が可能な光検出装置が実現できる。
【0100】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の光検出装置は、セル領域は、金属領域と第1の半導体領域との間、及び、金属領域と第2の半導体領域との間に設けられた絶縁膜を、更に含む点で、第1の実施形態の光検出装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0101】
第2の実施形態の光検出装置は、第1の実施形態と同様、複数のAPDが設けられたSiPMである。
【0102】
図11は、第2の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図である。
図11は、第1の実施形態の
図3に対応する図である。
図11は、
図12のCC’断面である。
【0103】
図12は、第2の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図である。
図12は、セル領域100aの第1の面F1の上面図である。
図12は、
図11の上面図である。
【0104】
第2の実施形態の光検出装置は、セル領域100aは、絶縁膜20を含む。絶縁膜20は、金属領域18とp形半導体領域11との間、及び、金属領域18とn形半導体領域12との間に設けられる。絶縁膜20は、例えば、酸化シリコンである。
【0105】
例えば、半導体層10に設けられたトレンチ17に絶縁膜20を熱酸化で形成する。その後、絶縁膜20の内側を、金属で埋め込むことで、
図11、
図12に示すセル領域100aの構造が形成できる。
【0106】
第2の実施形態の光検出装置は、金属領域18が半導体層10と接しないため、DETによる効果は得られない。しかしながら、PIRETによる効果は、第1の実施形態の光検出装置100と同様に得られる。よって、光検出装置のノイズを抑制することが可能となる。
【0107】
以上、第2の実施形態によれば、ノイズの抑制が可能な光検出装置が実現できる。
【0108】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の光検出装置は、アレイ状に配置された複数のセル領域と、セル領域の間に設けられた素子分離領域と、を備えた光検出装置であって、セル領域は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を有する半導体層と、半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域に接する電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1の半導体領域との間に、第2の半導体領域が設けられる複数の金属領域と、を含む。
【0109】
第3の実施形態の光検出装置は、金属領域と第1の半導体領域との間に、第2の半導体領域が設けられる点で、第1の実施形態の光検出装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0110】
第3の実施形態の光検出装置は、第1の実施形態と同様、複数のAPDが設けられたSiPMである。
【0111】
図13は、第3の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図である。
図13は、第1の実施形態の
図3に対応する図である。
図13は、
図14のCC’断面である。
【0112】
図14は、第3の実施形態の光検出装置の拡大模式上面図である。
図14は、セル領域100aの第1の面F1の上面図である。
図14は、
図13の上面図である。
【0113】
第3の実施形態の光検出装置は、金属領域18は、半導体層10の第1の面F1の側に設けられる。金属領域18は第1の面F1の上に設けられる。金属領域18はn形半導体領域12の上に設けられる。金属領域18はn形半導体領域12に接する。
【0114】
金属領域18とp形半導体領域11との間に、n形半導体領域12が設けられる。金属領域18とp形半導体領域11は、第2の面F2から第1の面F1に向かう方向に離間する。
【0115】
金属領域18とn形半導体領域12との間の接合は、例えば、ショットキー接合である。
【0116】
第3の実施形態の光検出装置は、DET及びPIRETによる効果が得られる。したがって、高い検出感度を維持したまま、低不純物濃度部分11bの厚さを薄くすることが可能となる。よって、光検出装置のノイズを抑制することが可能となる。
【0117】
以上、第3の実施形態によれば、ノイズの抑制が可能な光検出装置が実現できる。
【0118】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の光検出装置は、金属領域と第2の半導体領域との間に設けられた絶縁膜を、更に含む点で、第3の実施形態の光検出装置と異なる。以下、第1の実施形態又は第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0119】
第4の実施形態の光検出装置は、第3の実施形態と同様、複数のAPDが設けられたSiPMである。
【0120】
図15は、第4の実施形態の光検出装置の拡大模式断面図である。
図15は、第3の実施形態の
図13に対応する図である。
【0121】
第4の実施形態の光検出装置は、セル領域100aは、絶縁膜20を含む。絶縁膜20は、金属領域18とn形半導体領域12との間に設けられる。絶縁膜20は、例えば、酸化シリコンである。
【0122】
第4の実施形態の光検出装置は、金属領域18が半導体層10と接しないため、DETによる効果は得られない。しかしながら、PIRETによる効果は、第3の実施形態の光検出装置と同様に得られる。よって、光検出装置のノイズを抑制することが可能となる。
【0123】
以上、第4の実施形態によれば、ノイズの抑制が可能な光検出装置が実現できる。
【0124】
第1ないし第4の実施形態では、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明したが、第1導電形がn形、第2導電形をp形とすることも可能である。その場合、例えば、基板部分11aには、正の電源電位Vrが印加される。また、例えば、第2の配線層32には、接地電位(GND)が印加される。
【0125】
第1ないし第4の実施形態では、半導体層10がシリコンである場合を例に説明したが、半導体層10は、例えば、炭化珪素(SiC)等、シリコン以外の半導体であっても構わない。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10 半導体層
11 p形半導体領域(第1の半導体領域)
12 n形半導体領域(第2の半導体領域)
16 表面電極(電極)
18 金属領域
18a 下部(一部)
18b 上部(別の一部)
19 絶縁領域
20 絶縁膜
22 素子分離絶縁層(絶縁層)
24 抵抗層
100a セル領域
100b 素子分離領域
100 光検出装置
F1 第1の面
F2 第2の面