(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142248
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230928BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20230928BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/165 205
B41J2/175 501
B41J2/19
B41J2/18
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049049
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB21
2C056EB34
2C056EB50
2C056EC07
2C056EC16
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC32
2C056EC49
2C056EC56
2C056FA13
2C056HA46
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB09
2C056KB14
2C056KB16
2C056KB35
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】記録媒体への記録時にインク流路内の気泡が記録ヘッドに移動することを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、記録ヘッド52と、インクコンテナ81と、サブタンク83と、供給ポンプ84と、循環ポンプ85と、シリンジ86と、第1流路87と、制御部と、を備える。シリンジ86は、インクが供給ポンプ84から流入し、記録ヘッド52に向かって流出するとともに、インクに対して供給ポンプ84によってかかる記録圧力よりも高い保守圧力をかけることが可能である。制御部は、非画像記録時に、シリンジ86によってインクに保守圧力をかけてインクをシリンジ86のインク流通方向下流側に向けて強制的に流通させる強制流通モードを実行可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを記録媒体上に吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給される前記インクを収容するインクコンテナと、
前記インクコンテナから供給される前記インクを一時的に貯留するサブタンクと、
前記インクを前記サブタンクから前記記録ヘッドに供給する供給ポンプと、
前記インクを前記記録ヘッドから前記サブタンクに循環させる循環ポンプと、
前記インクが前記供給ポンプから流入し、前記記録ヘッドに向かって流出するとともに、前記インクに対して前記供給ポンプによってかかる記録圧力よりも高い保守圧力をかけることが可能なシリンジと、
前記サブタンクから前記供給ポンプ、前記シリンジ、前記記録ヘッド、及び前記循環ポンプを経て前記サブタンクまで前記インクが循環する第1流路と、
前記記録ヘッド、前記供給ポンプ、前記循環ポンプ、及び前記シリンジの動作を制御し、前記記録媒体への画像の記録を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、非画像記録時に、前記シリンジによって前記インクに前記保守圧力をかけて前記インクを前記シリンジのインク流通方向下流側に向けて強制的に流通させる強制流通モードを実行可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、非画像記録時に、前記インクを前記ノズルから強制的に押し出して前記記録ヘッドをクリーニングするクリーニングモードを実行可能であり、当該クリーニングモードの実行時に、前記強制流通モードを実行することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記供給ポンプと前記シリンジとの間の前記第1流路を開閉する第1開閉弁と、
前記シリンジと前記記録ヘッドとの間の前記第1流路を開閉する第2開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、前記強制流通モードの実行時に、前記第1開閉弁を閉鎖し、前記第2開閉弁を開放することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記供給ポンプと前記シリンジとの間及び前記記録ヘッドと前記循環ポンプとの間のそれぞれに配置され、前記第1流路内の前記インクの圧力変動を緩和するダンパーを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記シリンジから前記サブタンクまで延び、前記シリンジ内の空気を前記サブタンクまで排出する第2流路と、
前記第2流路を開閉する第3開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、前記強制流通モードの実行時に前記第3開閉弁を閉鎖し、前記シリンジ内の前記空気の排出時に前記第3開閉弁を開放することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1流路の前記供給ポンプよりもインク流通方向下流側と、前記第2流路の前記第3開閉弁よりも空気流通方向下流側とを連結する第3流路と、
前記第3流路に配置され、前記第1流路側の流路内圧が所定圧力に達した場合に開放されるリリーフ弁と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第1流路の、前記記録ヘッドのインク流通方向上流側と下流側とを連結する第4流路と、
前記第4流路を開閉する開閉機構と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、用紙等の記録媒体上にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドを備える。インクジェット記録装置では、インクを記録媒体上に吐出するノズルで気泡が生じると、吐出性能に影響を与え、インクの飛翔曲がりや不吐出といった不具合が発生して画像不良が起こす虞があった。そこで、インクジェット記録装置では、記録ヘッドやインク流路における気泡の発生を抑制する必要があった。
【0003】
特許文献1で開示された従来の液体循環装置は、液体吐出ヘッドを介して液体が循環する循環経路を有する。この循環経路は、複数の液体吐出ヘッドの供給口にそれぞれ通じるマニホールドと、マニホールドに通じ、内部が加圧される加圧サブタンクと、を含む。そして、加圧サブタンクは、液体吐出ヘッドの供給口が配置される位置よりも高い位置に配置される。これにより、循環型ヘッドを使用する場合において、ノズルメニスカス圧力を適切に設定でき、ノズルからの液垂れや気泡巻き込みを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット記録装置において、従来技術のようにインクを循環させる場合に、気泡がインク流路の継ぎ目に滞留したり、流路内の壁面に固着したりすることがあった。循環時のインクの流速は、意図的にインク流路内の気泡を記録ヘッドから遠ざけるのに十分ではなく、記録媒体への記録時に気泡が記録ヘッドに移動して画像不良が生じることに課題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、記録媒体への記録時にインク流路内の気泡が記録ヘッドに移動することを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドと、インクコンテナと、サブタンクと、供給ポンプと、循環ポンプと、シリンジと、第1流路と、制御部と、を備える。前記記録ヘッドは、インクを記録媒体上に吐出する複数のノズルを有する。前記インクコンテナは、前記記録ヘッドに供給される前記インクを収容する。前記サブタンクは、前記インクコンテナから供給される前記インクを一時的に貯留する。前記供給ポンプは、前記インクを前記サブタンクから前記記録ヘッドに供給する。前記循環ポンプは、前記インクを前記記録ヘッドから前記サブタンクに循環させる。前記シリンジは、前記インクが前記供給ポンプから流入し、前記記録ヘッドに向かって流出するとともに、前記インクに対して前記供給ポンプによってかかる記録圧力よりも高い保守圧力をかけることが可能である。前記第1流路は、前記サブタンクから前記供給ポンプ、前記シリンジ、前記記録ヘッド、及び前記循環ポンプを経て前記サブタンクまで前記インクが循環する。前記制御部は、前記記録ヘッド、前記供給ポンプ、前記循環ポンプ、及び前記シリンジの動作を制御し、前記記録媒体への画像の記録を行う。前記制御部は、非画像記録時に、前記シリンジによって前記インクに前記保守圧力をかけて前記インクを前記シリンジのインク流通方向下流側に向けて強制的に流通させる強制流通モードを実行可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、非画像記録時に、第1流路内の気泡を移動させ、記録ヘッドから遠ざけることができる。すなわち、記録媒体への記録時に、インク流路内の気泡が記録ヘッドに移動することを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の概略断面正面図である。
【
図2】
図1のインクジェット記録装置の記録部周辺の平面図である。
【
図3】
図1のインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1のインクジェット記録装置のインク供給部の構成を示す説明図である。
【
図5】
図4のインク供給部のシリンジの断面図である。
【
図6】
図4のインク供給部の開閉弁の説明図である。
【
図7】
図4のインク供給部のダンパーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態のインクジェット記録装置1の概略断面正面図である。
図2は、
図1のインクジェット記録装置1の記録部5周辺の平面図である。
図3は、
図1のインクジェット記録装置1の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1は、例えばインクジェット記録式のプリンターである。インクジェット記録装置1は、
図1、
図2及び
図3に示すように、装置本体2と、用紙供給部3と、用紙搬送部4と、記録部5と、乾燥部6と、制御部7と、を備える。
【0012】
用紙供給部3は、例えば装置本体2の下部に配置される。用紙供給部3は、複数枚の用紙(記録媒体)Sを収容し、記録時に用紙Sを1枚ずつ分離して送り出す。
【0013】
用紙搬送部4は、用紙供給部3の用紙搬送方向下流側に配置され、用紙供給部3から送り出された用紙Sを搬送する。用紙搬送部4は、用紙Sを記録部5及び乾燥部6へと搬送し、さらに記録、乾燥後の用紙Sを用紙排出部21に排出する。用紙搬送部4は、例えば反転搬送部4rを有する。両面記録が行われる場合、用紙搬送部4は、第1面の記録、乾燥後の用紙Sを反転搬送部4rに振り分け、さらに搬送方向を切り替えて表裏を反転させた用紙Sを再度、記録部5及び乾燥部6へと搬送する。
【0014】
用紙搬送部4は、第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42を含む。第1ベルト搬送部41は、無端状に形成された第1搬送ベルト411を有する。第2ベルト搬送部42は、無端状に形成された第2搬送ベルト421を有する。第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42は、第1搬送ベルト411及び第2搬送ベルト421それぞれの上側の外面(上面)に用紙Sを吸着保持して搬送する。第1ベルト搬送部41は、記録部5の下方に配置されて用紙Sを搬送する。第2ベルト搬送部42は、第1ベルト搬送部41に対して用紙搬送方向の下流側に位置し、乾燥部6に配置されて用紙Sを搬送する。
【0015】
記録部5は、用紙供給部3の用紙搬送方向下流側に位置し、第1ベルト搬送部41と対向配置される。記録部5は、第1搬送ベルト411の上面に吸着保持されて搬送される用紙Sに対向し、所定の間隔を空けて第1搬送ベルト411の上方に配置される。すなわち、記録部5は、用紙搬送部4によって搬送される用紙Sと対向する。
【0016】
記録部5は、
図2に示すように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色それぞれに対応したヘッドユニット51B、51C、51M、51Yを保持する。ヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは、長手方向が用紙搬送方向Dcと直交する用紙幅方向Dwと平行になるように用紙搬送方向Dcに沿って並置される。なお、4つのヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは基本的な構成が同じであるので、以下の説明では、特に限定する必要がある場合を除き、各色を表す「B」、「C」、「M」、「Y」の識別記号は省略することがある。
【0017】
各色のヘッドユニット51それぞれは、ライン型インクジェット方式の記録ヘッド52を有する。記録ヘッド52は、各色のヘッドユニット51それぞれにおいて、用紙幅方向Dwに沿って複数(例えば3つ(52a、52b、52c))が千鳥状に配列される。
【0018】
記録ヘッド52は、その底部に複数のインク吐出ノズル521を有する。複数のインク吐出ノズル521は、用紙幅方向Dwに沿って並べて配置され、用紙S上の記録領域の全域にわたってインクを吐出することができる。すなわち、記録ヘッド52は、インクを用紙S上に吐出する複数のインク吐出ノズル521を有する。記録部5は、第1搬送ベルト411によって搬送される用紙Sに向かって4色のヘッドユニット51B、51C、51M、51Yそれぞれの記録ヘッド52から順次インクを吐出し、フルカラー画像またはモノクロ画像を用紙Sに記録する。
【0019】
乾燥部6は、記録部5に対して用紙搬送方向の下流側に配置され、第2ベルト搬送部42が設けられる。記録部5でインク画像が記録された用紙Sは、乾燥部6において第2搬送ベルト421に吸着保持されて搬送される間に、インクが乾燥される。
【0020】
制御部7は、CPU、記憶部、その他の電子回路及び電子部品を含む(いずれも不図示)。CPUは、記憶部に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、インクジェット記録装置1に設けられた各構成要素の動作を制御してインクジェット記録装置1の機能に係る処理を行う。用紙供給部3、用紙搬送部4、記録部5及び乾燥部6それぞれは、制御部7から個別に指令を受け、連動して用紙Sへの記録を行う。記憶部は、例えばプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置との組み合わせで構成される。
【0021】
続いて、インクジェット記録装置1のインク供給部8の構成について、
図4から
図7を用いて説明する。
図4は、
図1のインクジェット記録装置1のインク供給部8の構成を示す説明図である。
図5は、
図4のインク供給部8のシリンジの断面図である。
図6は、
図4のインク供給部8の開閉弁の説明図である。
図7は、
図4のインク供給部8のダンパーの断面図である。
【0022】
インクジェット記録装置1は、インク供給部8を備える。インク供給部8は、4色のヘッドユニット51ごとに個別に設けられる。以下の説明では、各色を表す識別記号の記載を省略する。インク供給部8とヘッドユニット51との間は、着脱可能なカップリング11によって連結される。カップリング11内には、接続状態においてインク流路を開放し、分離状態においてインク流路を閉鎖する弁部材(不図示)が内蔵されている。
【0023】
インク供給部8は、インクコンテナ81と、コンテナポンプ82と、サブタンク83と、供給ポンプ84と、循環ポンプ85と、シリンジ86と、第1流路87と、を備える。
【0024】
インクコンテナ81は、装置本体2に対して着脱可能に設けられる。インクコンテナ81は、記録ヘッド52に供給されるインクを収容する。
【0025】
コンテナポンプ82は、インクコンテナ81のインク流通方向下流側に配置される。コンテナポンプ82は、インクコンテナ81内のインクを吸引し、サブタンク83に向かって吐出する。コンテナポンプ82の動作は、制御部7によって制御される。
【0026】
サブタンク83は、コンテナポンプ82のインク流通方向下流側に配置される。サブタンク83は、インクコンテナ81から供給されるインクを一時的に貯留する。サブタンク83には、インク量センサー(不図示)が設けられる。インク量センサーは、例えば光学式、静電容量式、電極式、差圧式、フロート式などのセンサーを含み、サブタンク83内のインク量を検出する。
【0027】
制御部7は、インク量センサーの検出信号を受信する。インク量センサーによって検出されたサブタンク83内のインク量が所定値より低くなると、制御部7は、コンテナポンプ82を制御し、インクコンテナ81からサブタンク83にインクを供給する。インクコンテナ81からサブタンク83へのインクの供給量は、例えばコンテナポンプ82の駆動時間によって制御される。コンテナポンプ82の駆動時間が一定時間経過しても、インク量センサーによって検出されたサブタンク83内のインク量が所定値より高くならない場合、制御部7は、インクコンテナ81内のインク量が空であると判定する。
【0028】
供給ポンプ84は、サブタンク83のインク流通方向下流側に配置される。供給ポンプ84は、インクをサブタンク83から記録ヘッド52に供給する。供給ポンプ84としては、例えばチューブポンプ、ダイヤフラムポンプなどの液体用のポンプから選択することができる。供給ポンプ84の動作は、制御部7によって制御される。
【0029】
循環ポンプ85は、記録ヘッド52のインク流通方向下流側に配置される。循環ポンプ85は、インクを記録ヘッド52からサブタンク83に循環させる。循環ポンプ85としては、例えばチューブポンプ、ダイヤフラムポンプなどの液体用のポンプから選択することができる。循環ポンプ85の動作は、制御部7によって制御される。
【0030】
記録ヘッド52へのインクの供給、及びインクの循環に関して、後述する第1流路87には、インクにかかる圧力を検出する圧力センサーS1、S2が設けられる。圧力センサーS1は、記録ヘッド52のインク流通方向上流側に配置される。圧力センサーS2は、記録ヘッド52のインク流通方向下流側に配置される。制御部7は、圧力センサーS1、S2の検出信号に基づき、供給ポンプ84及び循環ポンプ85の動作をアナログ的にリアルタイムで制御する。
【0031】
シリンジ86は、供給ポンプ84のインク流通方向下流側であって、記録ヘッド52のインク流通方向上流側に配置される。シリンジ86は、インクが供給ポンプ84から流入し、記録ヘッド52に向かって流出する。
図5に示すように、シリンジ86は、筒部861と、プランジャ862と、を有する。
【0032】
筒部861は、軸線が上下方向に延びるように配置された円筒形状である。筒部861の上端は開口している。筒部861下端は閉塞されており、後述する第1流路87の、供給ポンプ84側から延びる第1導管871と、記録ヘッド52に向かって延びる第2導管872とが接続される。第1導管871及び第2導管872は、筒部861内と連通している。
【0033】
プランジャ862は、筒部861の上端開口から筒部861の内部に差し込まれている。プランジャ862は、軸部862aと、ガスケット部862bと、を有する。軸部862aは、軸線が上下方向に延びるように形成される。ガスケット部862bは、軸部862aの下端に配置される。ガスケット部862bは、筒部861の内周面に沿って延びる円筒形状であり、外周面が筒部861の内周面に密着する。これにより、筒部861内のインクは、ガスケット部862bよりも上側に漏れ出さない。
【0034】
プランジャ862の径方向中心部には、後述する第2流路94の第4導管941が挿入されている。第4導管941は、筒部861内と連通している。筒部861内、すなわちシリンジ86内のインクよりも上方、且つガスケット部862bよりも下方に滞留する空気は、第4導管941を介して上方に排出される。なお、第2流路94は、サブタンク83まで延びる。
【0035】
軸部862aの側面には、ラック862cが形成される。ラック862cは、上下方向に沿って複数の歯が並置され、シリンジ駆動ギヤ863が噛み合う。シリンジ駆動ギヤ863は、シリンジモーター864(
図3参照)に接続され、シリンジモーター864から動力を得て正逆両方向に回転される。シリンジ駆動ギヤ863が正逆両方向に回転することで、プランジャ862は、上下方向に沿って往復移動が可能である。シリンジモーター864の動作は、制御部7によって制御される。
【0036】
用紙Sへの画像記録時には、インクに対して供給ポンプ84によって記録圧力がかかっている。これに対し、例えばメンテナンス時等に、制御部7は、シリンジモーター864によってプランジャ862を下方に高速で移動させ、シリンジ86内からインクを押し出すことで、記録圧力よりも高い保守圧力をインクにかけることができる。すなわち、シリンジ86は、インクに対して供給ポンプ84によってかかる記録圧力よりも高い保守圧力をかけることが可能である。
【0037】
第1流路87は、サブタンク83から供給ポンプ84、シリンジ86、記録ヘッド52、及び循環ポンプ85を経てサブタンク83までインクが循環するインク流路である。第1流路87は、供給ポンプ84からシリンジ86まで延びる第1導管871と、シリンジ86から記録ヘッド52まで延びる第2導管872と、記録ヘッド52から循環ポンプ85まで延びる第3導管873と、を含む。第1導管871上と、第3導管873上には、逆止弁CV1、CV2が配置される。逆止弁CV1、CV2は、第1流路87のインク流通方向に対し、下流側から上流側へのインクの逆流を防止する。
【0038】
そして、制御部7は、非画像記録時に、シリンジ86によってインクに保守圧力をかけ、インクをシリンジ86のインク流通方向下流側に向けて強制的に流通させる強制流通モードを実行可能である。これにより、非画像記録時に、インク流路である第1流路87内の気泡を移動させ、記録ヘッド52から遠ざけることができる。すなわち、用紙Sへの記録時に、第1流路87内の気泡が記録ヘッド52に移動することを抑制することが可能になる。
【0039】
また、制御部7は、非画像記録時に、インクをインク吐出ノズル521から強制的に押し出して記録ヘッド52をクリーニングするクリーニングモードを実行可能である。クリーニングモードにおいて、記録ヘッド52のインク吐出面(不図示)には、インク吐出ノズル521からインクが吐出される。吐出されたインクは、例えばインク吐出ノズル521内の粘度が高くなったインク、異物等を含み、表面張力によってインク吐出面の下側に保持される。その後、ワイパー(不図示)等によって、インク吐出面のインクが拭き取られる。
【0040】
そして、制御部7は、当該クリーニングモードの実行時に、強制流通モードを実行する。これにより、クリーニングモードの実行時に、インク流路である第1流路87内の気泡を移動させ、記録ヘッド52から遠ざける、或いはインク吐出ノズル521から吐出させることができる。インク吐出ノズル521からのインクの強制吐出に、定容量型のシリンジ86を使用することで、インクの消費量を最低限に抑制することが可能である。なお、インク吐出ノズル521からのインクの強制吐出時には、供給ポンプ84及び循環ポンプ85の動作状態にかかわらず、強制流通モードを実行することができる。
【0041】
さらに、インク供給部8は、第1開閉弁91と、第2開閉弁92と、ダンパー93と、第2流路94と、第3開閉弁95と、第3流路96と、リリーフ弁97と、第4流路98と、開閉機構99と、を備える。
【0042】
第1開閉弁91は、第1流路87の第1導管871上の、逆止弁CV1よりもインク流通方向下流側に配置される。なお、第1導管871は、例えばゴム製等のチューブであって、曲げたり、撓ませたりして、変形させることができる。
図6に示すように、第1開閉弁91は、開閉カム91aと、開閉モーター(不図示)と、を有する。
【0043】
開閉カム91aは、第1導管871に隣接する。開閉カム91aは、第1導管871の軸線方向から見て楔形状に形成される。開閉カム91aは、第1導管871の軸線と平行な回転軸線を中心として回転可能に支持される。開閉カム91aは、開閉モーターによって回転されて揺動し、楔形状の先端側が第1導管871に対して接触、離間する。
【0044】
第1開閉弁91を開放状態にする場合、制御部7は、開閉モーターを制御して開閉カム91aを回転させ、開閉カム91aを第1導管871と接触しない、若しくは第1導管871を変形させない角度にする。これにより、第1開閉弁91の箇所において、第1導管871内をインクが流通する。第1開閉弁91を閉鎖状態にする場合、制御部7は、開閉モーターを制御して開閉カム91aを回転させ、開閉カム91aを第1導管871と接触させ、第1導管871を押し潰す角度にする。これにより、第1開閉弁91の箇所において、第1導管871内のインクの流通が阻止される。
【0045】
第1開閉弁91は、供給ポンプ84とシリンジ86との間の第1流路87を開閉する。第1開閉弁91は、例えば電磁弁で構成され、制御部7によって開閉が制御される。
【0046】
第2開閉弁92は、第1流路87の第2導管872上に配置される。第2開閉弁92の構成及び動作は、上で説明した第1開閉弁91と同様であり、ここでは説明を省略する。第2開閉弁92は、シリンジ86と記録ヘッド52との間の第1流路87を開閉する。第2開閉弁92は、例えば電磁弁で構成され、制御部7によって開閉が制御される。
【0047】
そして、制御部7は、強制流通モードの実行時に、第1開閉弁91を閉鎖し、第2開閉弁92を開放する。これにより、強制流通モードの実行時に、記録ヘッド52に対してインク流通方向上流側のインクを、記録ヘッド52に向かって押し出すことができる。したがって、第1流路87内の気泡を移動させ、記録ヘッド52から遠ざける作用を高めることが可能である。
【0048】
ダンパー93は、供給ポンプ84とシリンジ86との間、及び記録ヘッド52と循環ポンプ85との間のそれぞれに配置される。詳細に言えば、第1のダンパー93は、第1流路87の第1導管871上の、供給ポンプ84よりもインク流通方向下流側、且つ逆止弁CV1よりもインク流通方向上流側に配置される。また詳細に言えば、第2のダンパー93は、第1流路87の第3導管873上の、逆止弁CV2よりもインク流通方向下流側、且つ循環ポンプ85よりもインク流通方向上流側に配置される。
【0049】
ダンパー93は、
図7に示すように、ダンパー室931と、フィルム932と、を有する。ダンパー室931は、例えば水平方向にインクが流通する第1流路87に対し、上方に向かって凸となる空隙部を有する。ダンパー室931と上下方向に対向する第1流路87の下側壁部は開口している。フィルム932は、第1流路87の開口87aを覆うように第1流路87の下側壁部に配置される。フィルム932は、可撓性を有し、弾性変形が可能である。フィルム932は、ダンパー室931内のインクの圧力変動に応じて変形し、ダンパー室931の容積を変化させる。
【0050】
ダンパー93は、第1流路87内のインクの圧力変動を緩和する。これにより、インクの脈動による記録ヘッド52への負荷を抑制することができる。なお、ポンプの振幅周期に追従するために、ばね等の弾性部材を利用した構成となっていることが望ましい。
【0051】
第2流路94は、シリンジ86からサブタンク83まで延びる。シリンジ86内には、第2流路94の第4導管941が挿入される(
図5参照)。第2流路94は、シリンジ86内の空気をサブタンク83まで排出する空気流路である。第4導管941上には、逆止弁CV3が配置される。逆止弁CV3は、第2流路94の空気流通方向に対し、下流側から上流側への空気の逆流を防止する。
【0052】
第3開閉弁95は、第2流路94の第4導管941上の、逆止弁CV3よりも空気流通方向下流側に配置される。第3開閉弁95の構成及び動作は、上で説明した第1開閉弁91と同様であり、ここでは説明を省略する。第3開閉弁95は、第2流路94を開閉する。第3開閉弁95は、例えば電磁弁で構成され、制御部7によって開閉が制御される。
【0053】
そして、制御部7は、強制流通モードの実行時に第3開閉弁95を閉鎖し、シリンジ86内の空気の排出時に第3開閉弁95を開放する。これにより、強制流通モードの実行時に、記録ヘッド52に対してインク流通方向上流側のインクを、記録ヘッド52に向かって押し出すことができる。さらに、シリンジ86内の空気の排出時には、シリンジ86内の空気をサブタンク83まで排出することができる。
【0054】
第3流路96は、第1流路87の供給ポンプ84よりもインク流通方向下流側と、第2流路94の第3開閉弁95よりも空気流通方向下流側とを連結する。
【0055】
リリーフ弁97は、第3流路96に配置される。リリーフ弁97は、第1流路87側の流路内圧が所定圧力に達した場合に開放される。これにより、インク流路に異常が発生した場合に、導管に過剰な圧力がかからないようにすることができる。そして、装置内へのインクの漏洩を防止することが可能である。
【0056】
第4流路98は、第1流路87の、記録ヘッド52のインク流通方向上流側と下流側とを連結する。詳細に言えば、第4流路98は、インク供給部8内の、カップリング11の近傍において、第1流路87の第2導管872と、第3導管873とを連結する。
【0057】
開閉機構99は、第4流路98上に配置される。開閉機構99は、例えば手動で第4流路98の開閉が可能なクランプ等で構成される。開閉機構99は、第4流路98を開閉する。
【0058】
インクジェット記録装置1の工場からの出荷時、インク供給部8は、サブタンク83において大気開放になっている。これにより、インク供給部8側は、輸送による液漏れが懸念されるため、インクや輸送液等は入っていない。一方、記録ヘッド52側は、流路の品質を担保したり、初期充填性を考慮したりするために輸送液が充填されている。これにより、着荷時に、まずインク供給部8にインクを充填せずに、記録ヘッド52を接続すると、記録ヘッド52から輸送液が漏洩し、装置内を汚してしまうことが懸念される。したがって、インク供給部8とヘッドユニット51との間のカップリング11を外した状態でインク供給部8側の流路をインクで満たすために、第4流路98が設けられ、開閉機構99が開放される。開閉機構99は、装置の通常稼働時に閉鎖される。
【0059】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、インクジェット記録装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェット記録装置
5 記録部
7 制御部
8 インク供給部
11 カップリング
52 記録ヘッド
81 インクコンテナ
82 コンテナポンプ
83 サブタンク
84 供給ポンプ
85 循環ポンプ
86 シリンジ
87 第1流路
91 第1開閉弁
92 第2開閉弁
93 ダンパー
94 第2流路
95 第3開閉弁
96 第3流路
97 リリーフ弁
98 第4流路
99 開閉機構
521 インク吐出ノズル
S 用紙(記録媒体)