(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142259
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20230928BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20230928BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H05K5/06 D
H05K5/00 B
H05K7/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049066
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勇志
【テーマコード(参考)】
4E360
5E348
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB14
4E360AB17
4E360AB33
4E360CA02
4E360ED02
4E360GA28
4E360GA29
4E360GB92
5E348AA02
5E348AA32
5E348EF16
(57)【要約】
【課題】使用する封止樹脂の量を削減し、軽量化を図ると共に基板の防振性や防水性の要求にも対応することができる電子装置を得る。
【解決手段】電子装置1のケース部材10は、ケース部材10の内部空間を、第1収容空間S1と第2収容空間S2とに仕切る仕切り壁部12を有する。第1基板30は、仕切り壁部12の一方側の面との間に環状の第1シール部40を挟んだ状態で第1収容空間S1に収容され、第2基板32は、仕切り壁部12の他方側の面との間に環状の第2シール部42を挟んだ状態で第2収容空間S2に収容され、第1シール部40に囲まれた仕切り壁部12と第1基板30との間の空間に、封止樹脂50が入らない第1密閉空間SX1が形成され、第2シール部42に囲まれた仕切り壁部12と第2基板32との間の空間に、封止樹脂50が入らない第2密閉空間SX2が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板と電気的に接続される第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板を収容するケース部材とを備える電子装置であって、
前記ケース部材は、前記ケース部材の内部空間を、前記第1基板が収容される第1収容空間と、前記第2基板が収容される第2収容空間とに仕切る仕切り壁部を有し、
前記仕切り壁部の一方側の面に配置される環状の第1シール部と、
前記仕切り壁部の他方側の面に配置される環状の第2シール部と、
前記第1収容空間と前記第2収容空間に注入される封止樹脂と、を備え、
前記第1基板は、前記仕切り壁部の一方側の面との間に前記第1シール部を挟んだ状態で前記第1収容空間に収容され、
前記第2基板は、前記仕切り壁部の他方側の面との間に前記第2シール部を挟んだ状態で前記第2収容空間に収容され、
前記第1シール部に囲まれた前記仕切り壁部と前記第1基板との間の空間に、前記封止樹脂が入らない第1密閉空間が形成され、
前記第2シール部に囲まれた前記仕切り壁部と前記第2基板との間の空間に、前記封止樹脂が入らない第2密閉空間が形成されている、電子装置。
【請求項2】
前記第1及び第2シール部は、環状のシール部材で構成され、延在方向に所定の間隔を空けて設けられた複数の突出片を有し、
前記複数の突出片は、前記第1及び第2シール部を、前記第1及び第2基板と前記仕切り壁部との間にそれぞれ配置した状態で、各基板の外周側の端部から外側に突出するようになっている、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記仕切り壁部は、前記第1及び第2シール部の内側において貫通形成され、前記第1収容空間と前記第2収容空間とを連通させる貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続させる端子部材が挿通されている、請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
複数のスイッチング素子を含み、直流と交流との間で電力の相互変換を行う電力変換回路部と、
前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態とを制御する制御部と、
直流電力の入出力を可能とする第1電力ポートと、
交流電力の入出力を可能とする第2電力ポートと、を備え、
前記電力変換回路部は、前記第1基板に設けられ、
前記制御部、前記第1電力ポート及び前記第2電力ポートは、前記第2基板に設けられ、前記端子部材を介して前記電力変換回路部と電気的に接続されている、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記ケース部材は、樹脂材料を成形して成り、
前記第1及び第2シール部の外側で前記仕切り壁部に貫通形成された複数のマウント部と、
前記マウント部を介して前記第1及び第2基板を前記ケース部材に固定する複数の締結部材と、を備え、
前記締結部材は、金属材料を成形して成り、前記第1収容空間側から第1基板の取付孔に挿通され、前記マウント部を介して前記第2収容空間側に突出し、前記第2基板の取付孔に挿通されている、請求項1~4のいずれかに記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケースの底面を挟んで一方の側に第1の基板が配置され、他方の側に第2の基板が配置されたコントロールボックスが開示されている。このコントロールボックスでは、第1の基板のみをケース内でポッティング材に埋設し、第2の基板をケースに取り付けて固定することにより、ポッティング材の使用量を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記第2の基板のように基板をポッティング材(封止樹脂)に埋設させずにケースに取り付ける構造では、基板の防振性や防水性の要求に対応できない場合がある。その一方、第2の基板もポッティング材に埋設してケースに固定すると、使用するポッティング材の量が多くなり、装置が重量化するという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、使用する封止樹脂の量を削減し、軽量化を図ると共に基板の防振性や防水性の要求にも対応することができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る電子装置は、第1基板と、前記第1基板と電気的に接続される第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板を収容するケース部材とを備える電子装置であって、前記ケース部材は、前記ケース部材の内部空間を、前記第1基板が収容される第1収容空間と、前記第2基板が収容される第2収容空間とに仕切る仕切り壁部を有し、前記仕切り壁部の一方側の面に配置される環状の第1シール部と、前記仕切り壁部の他方側の面に配置される環状の第2シール部と、前記第1収容空間と前記第2収容空間に注入される封止樹脂と、を備え、前記第1基板は、前記仕切り壁部の一方側の面との間に前記第1シール部を挟んだ状態で前記第1収容空間に収容され、前記第2基板は、前記仕切り壁部の他方側の面との間に前記第2シール部を挟んだ状態で前記第2収容空間に収容され、前記第1シール部に囲まれた前記仕切り壁部と前記第1基板との間の空間に、前記封止樹脂が入らない第1密閉空間が形成され、前記第2シール部に囲まれた前記仕切り壁部と前記第2基板との間の空間に、前記封止樹脂が入らない第2密閉空間が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電子装置では、第1基板と当該第1基板と電気的に接続される第2基板とを収容するケース部材を備えている。第1基板及び第2基板は、ケース部材の内部空間において封止樹脂によって封止されることにより、振動や、水滴の付着から保護されている。また、ケース部材は仕切り壁部を有しており、当該仕切り壁部によってケース部材の内部空間が、第1基板が収容される第1収容空間と、第2基板が収容される第2収容空間とに仕切られている。よって、第1収容空間と第2収容空間のそれぞれには、収容される基板の回路素子構成に応じて最適化された量の封止樹脂が注入される。さらに、第1基板は、仕切り壁部との間に第1シール部を挟んだ状態で収容されるため、仕切り壁部と第1基板との間には、封止樹脂が入らない第1密閉空間が形成される。第2基板も同様に、仕切り壁部との間に第2シール部を挟んだ状態で収容されるため、仕切り壁部と第2基板との間には、封止樹脂が入らない第2密閉空間が形成される。かかる構成により、仕切り壁部と各基板との面の空間は、封止樹脂を注入せずに防水性能が確保されるため、樹脂量を削減することができる。このようにして、ケース部材に注入される封止樹脂の量が最適化されるため、電子装置の軽量化を図ると共に基板の防振性や防水性の要求にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電子装置の分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る電子装置の部分拡大断面図である。
【
図4】実施形態に係るケース部材の第1収容空間と第1シール部との位置関係を示す分解斜視図である。
【
図5】実施形態に係る電子装置の第1収容空間を上方側から見た平面図である。
【
図6】実施形態に係る電子装置を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態について
図1~
図6を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右及び前後の矢印で示す方向を、それぞれ電子装置1の上下方向、左右方向及び前後方向と定義して説明する。
【0010】
本実施形態では、本発明に係る電子装置の一例として、直流と交流との間で電力の相互変換を行う電子装置1について説明する。
図6に示すように、電子装置1は、電力変換回路部2を有する第1基板30と、この第1基板30と電気的に接続される第2基板32とを有している。第2基板32には、電力変換回路部2と電気的に接続され、直流と交流との間の電力の相互変換を制御する制御部3が設けられている。この第2基板32には他にも、電力変換回路部2に供給(入力)される電力と電力変換回路部2から出力される電力のポートを構成する第1電力ポート4と第2電力ポート5が設けられている。第1電力ポート4は、直流電流の入出力を可能とする直流電力用の電力ポートであり、第1電力ポート4を介して、外部の直流電源から供給される直流電力の入力や、電力変換回路部2で直流に変換された電力の出力が行われる。第2電力ポート5は、交流電力の入出力を可能とする交流電力用の電力ポートであり、外部の交流電源から供給される交流電力の入力や電力変換回路部2で交流に変換された電力の出力が行われる。
【0011】
電力変換回路部2は、インバータ回路部2Aとコンバータ回路部2Bを有している。インバータ回路部2Aは、第1電力ポート4から供給される直流電力を交流電力に変換する機能を有しており、MOSFETやIGBTなどで構成された複数のスイッチング素子(後述する半導体素子52)を含む。インバータ回路部2Aは、制御部3から出力される制御信号に基づいて複数のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを制御して直流電力を交流電力に変換する。インバータ回路部2Aによって交流に変換された電力は、第2電力ポート5を介して、外部負荷に供給することができる。コンバータ回路部2Bは、第2電力ポート5から供給される交流電力を直流電力に変換する機能を有しており、整流用のダイオードなどで構成された複数の半導体素子(後述する半導体素子52)を含む。コンバータ回路部2Bは、制御部3から出力される制御信号に基づいて電力を整流することで交流電力を直流電力に変換する。コンバータ回路部2Bによって直流に変換された電力は、第1電力ポート4を介してバッテリや外部負荷に供給することができる。
【0012】
図1~
図3に示されるように、第1基板30と第2基板32は、箱状のケース部材10の内部に収容されている。ケース部材10は、内部空間を仕切る仕切り壁部12と、仕切り壁部12の周縁から一方側(
図1では上方側)に立設された第1側壁部14と、仕切り壁部12の周縁から他方側(
図1では下方側)に立設された第2側壁部16と、を有している。第1基板30は、ケース部材10の内部において、仕切り壁部12と第1側壁部14によって形成される第1収容空間S1に収容されている。第2基板32は、ケース部材10の内部において、仕切り壁部12と第2側壁部16によって形成される第2収容空間S2に収容されている。なお、
図1では、第1基板30及び第2基板32に実装される回路素子を省略して示している。
【0013】
ケース部材10を成形する材料は特に限定されないが、例えば、金属材料や樹脂材料を用いてケース部材10を成形することができる。本実施形態のケース部材10は、一例として、樹脂材料を成形して成る。ケース部材10を樹脂材料で成形することで、ケース部材10の内部空間では、絶縁性を有する仕切り壁部12を隔てて第1基板30と第2基板32が配置される。これにより、第1基板30と第2基板32との間の絶縁を容易に確保することができ、基板間の距離を短縮させることができる。また、ケース部材10の軽量化を図ることができる。
【0014】
ケース部材10の第1収容空間S1において、仕切り壁部12の上面には、当該上面よりも上方に一段高くなっている立上り部18が形成されている。立上り部18は、第1側壁部14の内面に沿って環状に形成されている。この環状の立上り部18に第1基板30が固定されている。立上り部18には、立上り部18の周方向に所定の間隔を空けて設けられた複数のマウント部20と、立上り部18の上面に凹状に形成されたシール溝22とを有している。シール溝22は、立上り部18の全周にわたって環状に形成さている。マウント部20は、立上り部18の上面において、シール溝22よりも外側に設けられている。各マウント部20には、第2収容空間S2側に貫通した貫通孔が形成されている。第1基板30は、基板端部側に貫通形成された取付孔(符号省略)及びマウント部20の貫通孔にボルト24を挿通し、反対側の収容空間に突出したボルト24の先端にナット26を螺合することでケース部材10に固定されている。なお、マウント部20の貫通孔の内周面に雌ねじを形成してもよい。
【0015】
ここで、第1基板30用の締結部材とされたボルト24とナット26は、第2基板32用の締結部材として第2収容空間S2でも共用されている。マウント部20の貫通孔に挿通されたボルト24は、第2収容空間S2においても、第2基板32の基板端部側に貫通形成された取付孔(符号省略)に挿通されている。これにより、第1基板30と第2基板32が共通のボルト24とナット26を用いて共締めされ、締結部材の部品点数や、ケース部材10に設けるマウント部の数を減らすことができる。
【0016】
また、第1基板30と第2基板32をプリント配線板で構成する場合、基板外からのノイズの侵入や、基板内からのノイズの放出を抑制する対策が必要とされる。これらのノイズ対策のために、一般的には、基板の端部にGNDパターンが設けられる。GNDパターンは、基板の端部を囲うように形成される銅パターンと、当該銅パターンに等間隔に設けられたビアとを有している。そして、GNDパターンの内側に制御用の信号ライン(配線パターン)を配置することで基板外からのノイズの侵入や、基板内からのノイズの放出を抑制している。本実施形態では、第1基板30と第2基板32をプリント配線板で構成する場合に、GNDパターンが設けられる基板の端部に沿って金属製の締結部材が配置される。従って、基板のGNDが強化され、耐ノイズ性能を高めることができる。
【0017】
図4に示すように、第1シール部40は、仕切り壁部12の一方側の面(上面)で、立上り部18に形成された環状のシール溝22に挿入されている。第1シール部40はゴム材などの弾性材料で形成されており、シール溝22に挿入される環状部46と環状部46の延在方向に沿って設けられた複数の突出片48を有している。環状部46はOリング状に形成されており、断面が円形状になっている。この円形状の断面の外径は、シール溝22の深さよりも大きく設定されている。従って、環状部46がシール溝22に挿入された状態では、先端側がシール溝22から突出する。複数の突出片48のそれぞれは、環状部46に一体に形成された板状の小片で構成されている。各突出片48は、環状部46に対し外側に突出して設けられており、シール溝22と一体に形成された位置決め用の凹部23に嵌め込まれる構成となっている。この状態では、第1シール部40を囲うようにして第1シール部40の外側に複数のマウント部20が配置される。
【0018】
第1基板30は、仕切り壁部12の上面との間に第1シール部40を挟んだ状態で第1収容空間S1に収容される。
図5に示されるように、このように収容されると、第1シール部40に形成された複数の突出片48は、第1基板30の外周端部から外側に突出するため、第1基板30の上方側から目視することができる。突出片48の位置は、組立を行う作業者にケース部材10に対する第1シール部40の収まりを把握させることができる。従って、突出片48が規定の位置にある場合は、仕切り壁部12と第1基板30との間のシール性が第1シール部40によって満たされていると判断することができる。そのため、第1シール部40がシール溝22から脱落した場合などにシール性が損なわれていることを発見することができる。
【0019】
図2に示すように、第1基板30の端部がマウント部20に固定されると、シール溝22に挿入された第1シール部40が押し潰されて第1基板30の対向面に密着する。これにより、第1シール部40によって囲まれた仕切り壁部12と第1基板30との間に第1密閉空間SX1が形成される。第1基板30は、第1収容空間S1に注入される封止樹脂50に一部又は全部が埋設されて封止されることにより、電子装置1の使用時の振動や、内部に侵入した水滴などから保護されている。
【0020】
仕切り壁部12と第1基板30との間の第1密閉空間SX1は、第1シール部40によって密閉されて、封止樹脂が入らない空間とされている。また、第1密閉空間SX1では、仕切り壁部12に対向する第1基板30の実装面を電子装置1の内部に侵入した水滴などから保護することができる。このようにして、第1収容空間S1では、第1基板30の片側の面を封止するための封止樹脂が不要であるため、第1収容空間S1に注入される樹脂量を削減することができる。
【0021】
ケース部材10の内部空間は、仕切り壁部12を隔てて反対側の第2収容空間S2においても、第1収容空間S1と同様の構成を有している。即ち、第2収容空間S2では、仕切り壁部12の他方側の面(下面)に第1シール部40と同一の構成を有する第2シール部42が配置される。第2基板32は、仕切り壁部12の下面との間に第2シール部42を挟んだ状態で収容され、第2シール部42によって囲まれた仕切り壁部12と第2基板32との間に封止樹脂50が入らない第2密閉空間SX2が形成される。この第2基板32も、第2収容空間S2に注入される封止樹脂50によって一部又は全部が封止されることにより、電子装置1の使用時の振動や、内部に侵入した水滴などから保護されている。
【0022】
ところで、第1基板30において仕切り壁部12と対向する面と反対側の実装面(
図2では上面)には、上述の電力変換回路部2が設けられている。電力変換回路部2を構成する複数の半導体素子52は、作動時の通電により発生する熱を効率良く放出するためにブロック状のヒートシンク54に固定された状態で第1基板30に実装されている。また、同実装面には、平滑用の複数のコンデンサ56も実装されている。かかる構成により、第1基板30の実装面には、比較的、背の高い部品が集約されて配置されている。一方で、第2基板32において仕切り壁部12と対向する面と反対側の実装面(
図2では下面)には、制御部3、第1電力ポート4及び第2電力ポート5が実装されている。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される小型の制御ICで構成されている。かかる構成により、第1基板30の実装面には、比較的、背の低い部品が集約されて配置されている。
【0023】
電力変換回路部2は、第2基板32の制御ICに流れる電流に比べて大電流が流れるため、例えば、半導体素子52のリード部と第1基板30の実装面との絶縁を確保するために、封止樹脂50の厚みを充分に設ける必要がある。従って、
図3に示すように、第1収容空間S1に注入された封止樹脂50の厚みT1は、第2収容空間S2に注入された封止樹脂50の厚みT2よりも大きく設定されている。
【0024】
仕切り壁部12には、第1及び第2シール部40,42の内側に貫通形成され、第1収容空間S1と第2収容空間S2とを連通させる貫通孔60が形成されている。この貫通孔60には、第1基板30の電力変換回路部2と第2基板32の制御部3の信号線を電気的に接続する端子部材62が挿通される。端子部材62の種類は限定されないが、本実施形態では、組付けによる公差の吸収を容易にするフローティングコネクタで端子部材62が構成されている。端子部材62は、例えば、複数の導体ピンを有する雄コネクタ64が第1基板30側に接続され、雄コネクタ64の導体ピンの先端が、第2基板32の対向面に配置された雌コネクタ66に接続されている。
【0025】
(作用並びに効果)
以上、説明したように、本実施形態の電子装置1では、第1基板30と当該第1基板30と電気的に接続される第2基板32とを収容するケース部材10を備えている。第1基板30及び第2基板32は、ケース部材10の内部空間において封止樹脂50によって封止されることにより、振動や、水滴の付着から保護されている。
【0026】
また、電子装置1では、ケース部材10が仕切り壁部12を有しており、仕切り壁部12によってケース部材10の内部空間が、第1基板30が収容される第1収容空間S1と、第2基板32が収容される第2収容空間S2とに仕切られている。よって、第1収容空間S1と第2収容空間S2のそれぞれには、収容される基板の回路素子構成に応じて最適化された量の封止樹脂が注入される。さらに、第1基板30は、仕切り壁部12との間に第1シール部40を挟んだ状態で収容されるため、仕切り壁部12と第1基板30との間には、封止樹脂が入らない第1密閉空間SX1が形成される。第2基板32も同様に、仕切り壁部12との間に第2シール部42を挟んだ状態で収容されるため、仕切り壁部12と第2基板32との間には、封止樹脂が入らない第2密閉空間SX2が形成される。かかる構成により、仕切り壁部12と各基板との間の空間は、封止樹脂50を注入せずに防水性能が確保されるため、樹脂量を削減することができる。このようにして、ケース部材10に注入される封止樹脂50の量が最適化されるため、電子装置1の軽量化を図ると共に基板の防振性や防水性の要求にも対応することができる。
【0027】
第1シール部40及び第2シール部42に設けられた突出片48は、第1シール部40及び第2シール部42を対応する基板の端部側に沿ってそれぞれ配置した状態で、基板の外周端部から外側に突出するように構成されている。これにより、第1シール部40及び第2シール部42の上に基板を重ねた状態でも、突出片48の位置に基づいて第1シール部40及び第2シール部42の収まりを把握することができ、第1密閉空間SX1と第2密閉空間SX2が所望のシール性を満たすか否かを目視で確認することができる。また、突出片48は、複数の突出片48のうち、収容時の位置決めの基準にする一部の突出片48を他の突出片48と異なる形状にして、ケース部材10に収容される際の第1シール部40及び第2シール部42の向きを作業者に直感的に伝える構成としてもよい。
【0028】
仕切り壁部12によって隔たれた第1基板30と第2基板32は、仕切り壁部12の貫通孔60に挿通された端子部材62を介して電気的に接続されているため、基板間の接続線路を短縮し、配線効率を高めることができる。
【0029】
複数のスイッチング素子(半導体素子52)を含む電力変換回路部2を第1基板30に設け、スイッチング素子のオン状態とオフ状態とを制御する制御部3を第2基板32に設ける構成とした。これにより、スイッチング素子で発生した熱は、仕切り壁部12によって遮断され、スイッチング素子の発熱から、制御部3を保護することができる。
【0030】
制御部3と共に直流電力の入出力を可能とする第1電力ポート4と交流電力の入出力を可能とする第2電力ポート5とを第2基板32に設ける構成としたため、電源や外部負荷(電力供給対象)への接続をケース部材10の一方の側面からまとめて行うことができる。従って、組立作業性やメンテナンス性に優れる。
【0031】
ケース部材10は、樹脂成形することにより、仕切り壁部12によって隔たれる基板間の絶縁距離を容易に確保することができる。
【0032】
第1基板30と第2基板32は、仕切り壁部12に形成されたマウント部20を介して共通の締結部材(ボルト24とナット26)によってケース部材10に固定されている。これにより、締結部材の部品点数や、ケース部材10に設けるマウント部の数を減らすことができ、製造コストの削減を図ると共に組立に要する作業時間を短縮させることができる。
【0033】
第1基板30と第2基板32は、金属材料を成形して成る複数の締結部材によって、基板端部側が固定される。従って、第1基板30と第2基板32をプリント配線板で構成する場合に、GNDパターンが設けられる基板の外周端部に沿って金属製の締結部材が配置されるため、基板のGNDが強化され、耐ノイズ性能を高めることができる。また、耐ノイズ性能は、複数の締結部材をより細かい間隔で配置することにより一層高めることができる。
【0034】
[補足説明]
上記実施形態では、第1シール部40がゴム材等の弾性材料で形成される構成について説明したが、これに限らない。第1シール部40は、メタルガスケット、発砲系接着剤、シリコン系液状接着剤(CIPG)等を環状に配置して構成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 電子装置
2 電力変換回路部
3 制御部
4 第1電力ポート
5 第2電力ポート
10 ケース部材
12 仕切り壁部
20 マウント部
24 ボルト(締結部材)
26 ナット(締結部材)
30 第1基板
32 第2基板
40 第1シール部
42 第2シール部
50 封止樹脂
60 貫通孔
62 端子部材
S1 第1収容空間
S2 第2収容空間
SX1 第1密閉空間
SX2 第2密閉空間