(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142288
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】撹拌装置及び反応槽
(51)【国際特許分類】
B01F 35/31 20220101AFI20230928BHJP
B01F 35/41 20220101ALI20230928BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20230928BHJP
B01F 27/213 20220101ALI20230928BHJP
【FI】
B01F35/31
B01F35/41
B01F35/10
B01F27/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049116
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】新井 康祐
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直幸
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037DA04
4G037EA04
4G078AA13
4G078BA05
4G078CA01
4G078CA05
4G078CA15
4G078CA17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、軸封構造を備える撹拌装置及びこの撹拌装置が配設される反応槽において、軸封状態を常に維持することが可能な撹拌装置及び反応槽を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、回転軸を備える撹拌部と、撹拌部を駆動する駆動部と、回転軸の軸封を行う軸封部と、を備え、軸封部による軸封状態を維持しつつ、撹拌部と駆動部の分割が可能である撹拌装置及びこの撹拌装置を備える反応槽を提供する。
本発明によれば、撹拌装置としてのメンテナンスにおいて、軸封状態を維持したまま、駆動部のみを取り外した作業が可能となる。これにより、メンテナンス時においても、反応槽が関与する処理全体を止める必要がなくなるという利点を奏する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に配設される撹拌装置であって、
回転軸を備える撹拌部と、
前記撹拌部を駆動する駆動部と、
前記回転軸の軸封を行う軸封部と、を備え、
前記軸封部による軸封状態を維持しつつ、前記撹拌部と前記駆動部の分割が可能であることを特徴とする、撹拌装置。
【請求項2】
前記回転軸及び前記駆動部は、一体として引き上げることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記軸封部の軸封距離は、前記反応槽の内圧に応じて設定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の撹拌装置を備えることを特徴とする、反応槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置及び反応槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反応槽内に収容された被処理物に対する処理手段の一つとして、混合、分散、均質化等に係る処理を行うための撹拌装置が設けられている。
特に、処理に伴い被処理物から発生する霧状物質(ミスト)やガスが反応槽の外部に排出されることを抑制する必要がある場合においては、反応槽に設けられる撹拌装置には軸封(シール)構造が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、タンクあるいは地下槽などの容器に使用する竪型撹拌装置として、容器の撹拌機取付ベースと回転軸との間に流体槽とシールプレートからなる水封構造を設け、この水封構造が撹拌装置の回転軸に固定されて回転するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された撹拌装置のように、反応槽(容器)に対する水封構造(シール構造)を撹拌装置の回転軸と固定した場合、撹拌装置の駆動部に関するメンテナンス等により、反応槽から撹拌装置を分離する際に、軸封状態も切れることになってしまう。そのため、反応槽からのミスト及びガス漏出を抑制するためには、撹拌装置のメンテナンス時に反応槽への被処理物の供給も含め、反応槽を用いる処理全体を停止する必要があった。
したがって、反応槽を用いる処理全体を止めることなく、撹拌装置のメンテナンスを可能とする手段が求められている。
【0006】
本発明の課題は、軸封構造を備える撹拌装置及びこの撹拌装置が配設される反応槽において、軸封状態を常に維持することが可能な撹拌装置及び反応槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、撹拌装置として、軸封状態を維持しつつ、撹拌部と駆動部とを分割可能とすることで、メンテナンス時においても軸封状態を維持することが可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の撹拌装置及び反応槽である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の撹拌装置は、反応槽に配設される撹拌装置であって、回転軸を備える撹拌部と、撹拌部を駆動する駆動部と、回転軸の軸封を行う軸封部と、を備え、軸封部による軸封状態を維持しつつ、撹拌部と駆動部の分割が可能であることを特徴とするものである。
本発明の撹拌装置によれば、撹拌部の回転軸に対する軸封状態を形成する軸封部を備える撹拌装置において、この軸封状態を維持しつつ、撹拌部と、この撹拌部を駆動させる駆動部とを分割可能とすることで、撹拌装置としてのメンテナンスにおいて、駆動部のみを取り外した作業が可能となる。これにより、メンテナンス時においても軸封(シール)状態が維持され、反応槽が関与する処理全体を止める必要がなくなるという利点を奏する。
【0009】
また、本発明の撹拌装置の一実施態様としては、回転軸及び駆動部は、一体として引き上げることが可能であるという特徴を有する。
この特徴によれば、この撹拌装置を反応槽に配設するに当たり、省スペース化のために軸封部を含めた撹拌装置の大部分が反応槽内に挿入される形とした場合においても、軸封状態を維持しつつ、回転軸と駆動部を一体として引き上げることで、撹拌部と駆動部の分割に係る作業を容易に行うことが可能となる。これにより、撹拌装置のメンテナンス作業に係る負担軽減を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の撹拌装置の一実施態様としては、軸封部の軸封距離は、反応槽の内圧に応じて設定するという特徴を有する。
この特徴によれば、反応槽内で発生するガスによる内圧上昇分を考慮し、軸封部の軸封距離を設定することで、軸封状態の維持をより確実に行うことが可能となる。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明の反応槽は、上述した撹拌装置を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、上述した撹拌装置を備えることで、撹拌装置のメンテナンス時においても常に軸封(シール)状態が維持される反応槽とすることができ、ミストやガスの漏出を常に抑制し、処理全体を止める必要がなくなるという利点を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸封構造を備える撹拌装置及びこの撹拌装置が配設される反応槽において、軸封状態を常に維持することが可能な撹拌装置及び反応槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る撹拌装置及び反応槽を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様に係る撹拌装置における軸封部の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施態様に係る撹拌装置及び反応槽を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施態様に係る撹拌装置における軸封部の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る撹拌装置及び反応槽の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する撹拌装置及び反応槽の構造については、本発明に係る撹拌装置及び反応槽を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0015】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の撹拌装置及び反応槽の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る反応槽100Aは、
図1に示すように、被処理物を貯留する槽本体110に対し、本実施態様に係る撹拌装置10Aが配設されたものである。
また、本実施態様に係る撹拌装置10Aは、
図1に示すように、撹拌部20と、駆動部30と、軸封部40とを備えるものである。
【0016】
(反応槽)
本実施態様に係る反応槽100Aは、被処理物を貯留し、撹拌装置10Aによる撹拌処理を行うものであればよく、構造及び材質については特に限定されない。
また、反応槽100Aに貯留される被処理物についても特に限定されず、液体、固体分を含む液体のいずれであってもよい。本実施態様に係る被処理物としては、例えば、水処理施設における処理対象物である被処理水や汚泥等のほか、産業上有用な分散体や水溶液を調製するための原料などが挙げられる。
特に、本実施態様に係る反応槽100Aとしては、密閉可能な構造を有し、反応槽100A内で発生するミストやガスが外部漏出することを抑制する必要がある処理、あるいは外気との接触を回避する必要がある処理を行うものであることが好ましい。これにより、常に軸封状態を維持することができるという本発明の効果がより好適に発揮される。
【0017】
本実施態様に係る反応槽100Aの具体例としては、汚泥の嫌気性処理を行う消化槽、被処理水と各種薬品を混合する調整槽、汚泥と凝集剤を撹拌混合する凝集装置(汚泥調質装置)、産業上有用な分散体や水溶液の調製槽等が挙げられる。
特に、本実施態様に係る反応槽100Aとしては、消化槽や調製槽の構造を有するものが好ましい。例えば、消化槽では、槽内部で可燃性のメタンガスが発生するため、このガスが外部に漏出することを抑制する必要があるが、本実施態様に係る反応槽100A及び撹拌装置10Aでは、軸封状態が維持されることから、ガス漏出を抑制することが可能となる。また、産業上有用な分散体や水溶液の調製においては、酸素との反応性が高い原料を使用する場合、空気中の成分(酸素等)との接触により、調製に支障が生じる場合がある。このような場合においても、本実施態様に係る反応槽100A及び撹拌装置10Aにより、安定した調製が可能となる。
【0018】
(撹拌装置)
本実施態様に係る撹拌装置10Aは、反応槽100Aに配設されるものであり、反応槽100A内の被処理物の撹拌を行うものである。
撹拌装置10Aは、回転軸21を備える撹拌部20と、撹拌部20を駆動する駆動部30と、回転軸21の軸封を行う軸封部40とを備えるものであり、撹拌部20と駆動部30は分割が可能となるように接合されている。
【0019】
本実施態様に係る撹拌装置10Aは、主に反応槽100Aへの配設及び回転軸21の軸封に係る構造に特徴を有するものであり、被処理物と接触する箇所については公知の構造を用いることができ、特に限定されない。より具体的には、撹拌部20の回転軸21に設けられる撹拌羽根(不図示)の構造については特に限定されず、被処理物の性質に応じた撹拌羽根の形状を適宜選択することが可能である。
【0020】
撹拌部20は、被処理物の撹拌を行うためのものであり、回転軸21と、撹拌羽根を有するものである。なお、上述したとおり、撹拌部20における撹拌羽根については、構造及び材質については特に限定されず、被処理物に応じ、公知の構造から適宜選択することができる。
回転軸21は、撹拌羽根を回転駆動させることで、撹拌処理を行うためのものである。本実施態様における回転軸21は、反応槽100Aの槽本体110上部に設けられた貫通孔110aを介し、反応槽100A内部に対し垂直下方に延びているとともに、槽本体110の外部まで延伸しているものである。なお、回転軸21の下端部については、特に限定されず、反応槽100A内で支持されているものであってもよく、反応槽100A内に懸下されている状態であってもよい。
【0021】
また、回転軸21の上端は、駆動部30と分割可能に接合されている。駆動部30と分割可能に接合する手段としては特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、回転軸21の上端部に接合部22を設け、この接合部22を介して駆動部30(出力軸32)と接合することが挙げられる。なお、接合部22の具体的な構造については後述する。
【0022】
駆動部30は、撹拌部20を駆動させるためのものであり、より具体的には、回転軸21を回転駆動させるためのものである。
駆動部30としては、回転軸21に対し、回転駆動するための力を付与することができるものであればよく、例えば、出力軸32を備えるモーター31が挙げられる。このとき、モーター31としては、出力軸32を回転駆動させることができるものであればよく、特に限定されない。また、モーター31には減速機を設けるものとしてもよい。
また、駆動部30の出力軸32には、出力軸32及び回転軸21の回転駆動を円滑に行うための軸受33を設けることが好ましい。軸受33の種類については特に限定されず、軸方向に対する垂直の荷重(ラジアル荷重)に対応するラジアル軸受や、軸方向の荷重(スラスト荷重)に対応するスラスト軸受、あるいはこの両荷重に対応する組み合わせ軸受などが挙げられる。また、このとき、軸受33の数や配置については特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、接合部22より上方に複数の軸受33を設けることが挙げられる。
【0023】
駆動部30は、撹拌部20よりも上方に設けられる。例えば、
図1に示すように、駆動部30のモーター31を、槽本体110の貫通孔110a上方に設けられた架台50上に載置し、架台50を貫通した出力軸32の下端部と、回転軸21の上端部を接合部22により接合する。また、
図1に示すように、出力軸32に対して軸受33を設置するための構造体(スカート34)を設けるものとしてもよい。
【0024】
ここで、接合部22としては、出力軸32の下端部及び回転軸21の上端部を接合し、必要に応じて分割が可能である構造を有するものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、出力軸32の下端部及び回転軸21の上端部のそれぞれにフランジ構造を設け、このフランジ同士をボルト・ナットやクランプのような係止機構を用いて接合することが挙げられる。また、接合部22の他の例としては、出力軸32の下端部及び回転軸21の上端部自体に、互いが嵌合可能となる嵌合構造を設けるとともに、これら嵌合構造による嵌合状態の維持・解除を行うことができる補助部材を含め、本実施態様に係る接合部22とすることが挙げられる。
【0025】
接合部22を設けることによって、撹拌装置10Aとしてのメンテナンスが必要になった場合に、撹拌部20(回転軸21)と駆動部30とを分割することが可能となる。例えば、駆動部30のモーター31や軸受33に係る点検や不具合対応において必要となる箇所のみを分離することが容易となるため、メンテナンス作業に係る負荷を低減させることが可能となる。
なお、撹拌部20と駆動部30の分割において、駆動部30と分離した回転軸21を支持するための支持体51を、反応槽100Aあるいは架台50に設けることが好ましい。支持体51としては、例えば、
図1に示すように、回転軸21の両側面から挟み込むことができる構造を有する治具を用いることや、架台50上部から回転軸21を吊り下げることのできる吊り治具を用いることなどが挙げられる。
【0026】
軸封部40は、回転軸21の軸封を行うためのものであり、反応槽100Aの外部にミストやガスなどが漏出することを抑制するものである。
本実施態様に係る軸封部40は、撹拌部20と駆動部30の分割においても軸封状態を維持することができる構造を有するものであればよい。このような軸封部40の構造としては、例えば、反応槽100Aに取り付ける部分と、回転軸21に取り付ける部分と、を備えるものが挙げられる。
【0027】
本実施態様に係る軸封部40の具体例としては、
図1に示すように、回転軸21を覆う軸カバー部材41と、回転軸21の外周に設けられる水封室42と、水封室42に軸封用の水を供給する水供給部43と、を備えるものが挙げられる。
ここで、軸カバー部材41が、反応槽100Aに取り付ける部分に相当し、水封室42が回転軸21に取り付ける部分に相当するものとなる。
【0028】
図2は、本実施態様に係る撹拌装置10Aの軸封部40における拡大概略図である。なお、
図2は、軸封部40のうち、特に反応槽100Aに取り付ける部分(軸カバー部材41)に係る拡大概略図であり、その他の構造については省略している。
軸カバー部材41は、
図2に示すように、槽本体110内部で回転軸21を覆うとともに、槽本体110内側の貫通孔110a外周に対し、固定部41aによって固定されるものが挙げられる。そして、軸カバー部材41は、水封室42内まで延伸して設けられる。
【0029】
水封室42は、
図1に示すように、反応槽100A内部に配置された回転軸21の外周に設けられる。水封室42は、回転軸21に取り付けられ、かつ内部に水を貯留することができる構造を有するものであればよく、上部が開口した有底の筒状部材とすることが挙げられる。
また、水供給部43は、水封室42に対して水封のための水を供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、反応槽100A外部と連通し、通水可能なラインを設け、このラインの端部を水封室42内に配設することで、水封室42内に水を供給するものとすることが挙げられる。
なお、水封室42は、軸封状態を維持するために、常に水が貯留されている必要がある。このため、水供給部43を介して定期的に水封室42内に水を供給することや、水封室42内に水位センサ等の水位を測定する手段を設け、水封状態の維持に必要な水位となるように水供給部43からの供給制御を行うことにより、水封室42による軸封状態の維持を行うことが好ましい。
【0030】
本実施態様に係る軸封部40では、水封室42内部に延伸した軸カバー部材41によって、軸カバー部材41と回転軸21の隙間は封止(水封)される。これにより、貫通孔110aから反応槽100A内のミストやガスが漏出することがない。また、上述したとおり、撹拌部20と駆動部30は、槽本体110の上部で分割されるため、撹拌部20と駆動部30の分割は軸封部40の軸封状態に影響しない。したがって、特に撹拌装置10Aの駆動部30に係るメンテナンス時においても、軸封状態を維持することが可能となり、反応槽100Aが関与する処理全体を止める必要がなくなる。
【0031】
軸封部40における水封室42の配置箇所やサイズなど、軸封距離に係る構造設定手段については特に限定されない。例えば、本実施態様の撹拌装置10Aを配設する反応槽100Aにおける設計上の最高水位や、反応槽100A内で発生するガスによる内圧上昇分等を考慮した設計を行うことが挙げられる。これにより、軸封状態の維持をより確実に行うことが可能となる。
【0032】
以上のように、本実施態様の撹拌装置10Aは、撹拌部20の回転軸21に対する軸封状態を形成する軸封部40の軸封状態を維持しつつ、撹拌部20と、この撹拌部20を駆動させる駆動部30とを分割可能とすることで、撹拌装置としてのメンテナンスにおいて、駆動部30のみを取り外した作業が可能となる。これにより、メンテナンス時においても常に軸封(シール)状態を維持することが可能となる。
また、本実施態様の反応槽100Aは、この撹拌装置10Aを備えることで、撹拌装置のメンテナンス時においても常に軸封(シール)状態が維持される反応槽とすることができる。これにより、反応槽100Aからミストやガスが漏出することを常に抑制することが可能となり、反応槽が関与する処理全体を止める必要がなくなるという利点を奏する。
特に、従来の撹拌装置及び反応槽では、撹拌部20の軸封状態を維持したまま、軸受33等(軸受33及びスカート34)の取り外しを伴うメンテナンスを行うことは困難であったが、本実施態様の撹拌装置1A及び反応槽100Aにより、軸受33等の取り外しを伴うメンテナンス作業と撹拌部20の軸封状態の維持の両立が可能となる。
【0033】
[第2の実施態様]
図3は、本発明の第2の実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bの構造を示す概略説明図である。
本実施態様の反応槽100Bは、第1の実施態様の反応槽100Aにおいて、槽本体110の上部から更に上方に突出したセンタードーム120を設けるものである。また、本実施態様の撹拌装置10Bは、接合部22がセンタードーム120内に設けられ、軸封部40のうち、軸カバー部材41を固定する箇所がセンタードーム120に設けられた支持台121となるものである。さらに、本実施態様の撹拌装置10Bは、撹拌部20(回転軸21)と駆動部30とを一体として引き上げることが可能な引上機構60を備える。
なお、本実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bの構成のうち、第1の実施態様の撹拌装置10A及び反応槽100Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0034】
本実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bは、撹拌装置10Bを反応槽100Bに配設するに当たり、省スペース化を図るために、撹拌装置10Bの大部分を反応槽100B内に挿入した形とするものである。これにより、反応槽100B外に突出する撹拌装置10Bの高さを低くすることが可能となり、反応槽100B全体としての装置構造を小型化することができる。また、撹拌装置10Bにおける駆動部30(特にモーター31)を高所に配置する必要がなくなるため、省スペース化とともに、反応槽100Bへの撹拌装置10Bの配設作業に係る安全性を高めることが可能となる。
【0035】
また、本実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bは、反応槽100B外に突出する撹拌装置10Bの高さを低くするものである。このため、接合部22の部分について、通常時はセンタードーム120内に配置し、メンテナンス時のみセンタードーム120外に引き上げる形とすることが好ましい。より具体的には、軸封状態を維持しつつ、撹拌部20(回転軸21)と駆動部30とを一体とした引上げを可能とすることで、センタードーム120内にある接合部22をセンタードーム120外に取り出すことが挙げられる。これにより、撹拌部20と駆動部30の分割に係る作業が容易となり、撹拌装置のメンテナンス作業に係る負担軽減を図ることが可能となる。
なお、センタードーム120上部には、駆動部30の出力軸32が挿入可能な貫通孔が設けられるとともに、接合部22の取り出しが可能な開口部を設けるものとする。この開口部には、通常時は密閉可能に閉じられ、メンテナンス時など、接合部22をセンタードーム120外に取り出す必要がある際には開放可能となるような機構(蓋体等)が設けられる。
【0036】
本実施態様の撹拌装置10Bは、引上機構60によって、反応槽100Bから回転軸21及び駆動部30を一体とした引上げを行うものである。
引上機構60は、駆動部30を上方に引き上げることで、接合部22で接続された回転軸21ごと上方移動させることができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、モーター31に対して取り付けた吊り治具を上方に引き上げる機構とすることや、上下駆動可能な機器(例えば、リフトやジャッキ(扛重機))上にモーター31を載置することなどが挙げられる。このとき、引上機構60は、接合部22がセンタードーム120外に取り出されるまで駆動部30(及び回転軸21)を引き上げるとともに、接合部22の分割時においては駆動部30を支持するように作動することが好ましい。
【0037】
また、本実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bは、接合部22の分割時において、分割後の回転軸21を支持する支持体を設けることが好ましい。このような支持体としては、第1の実施態様に示した支持体51と同様の構造を有するものをセンタードーム120の上方に設けることが挙げられる。また、回転軸21の支持に係る他の手段としては、引上機構60を用い、回転軸21についても支持することなどが挙げられる。
【0038】
引上機構60による回転軸21及び駆動部30の引上げに対応する軸封部40の構造の一例として、軸封部40における水封室42と軸カバー部材41との位置関係について、
図4に基づき、以下説明する。
【0039】
図4は、本実施態様の撹拌装置10Bにおける軸封部40を示す概略説明図である。なお、
図4(A)は通常時、
図4(B)は回転軸21及び駆動部30の引上げ時を示すものである。
図4(A)に示すように、通常時においては、水封室42の底部と軸カバー部材41の下端部との間に距離Hを設けるものとする。そして、
図4(B)に示すように、回転軸21及び駆動部30の引上げ時には、回転軸21の引上げ距離に伴い、水封室42も同じ距離だけ引き上げられることになる。一方、センタードーム120の支持台121に固定された軸カバー部材41の位置は変わらない。
このとき、接合部22がセンタードーム120外に取り出されるまでに必要な引上げ距離よりも大きい数値となるように距離Hを設定することで、水封状態への影響を与えることなく、水封室42を含む回転軸21及び駆動部30の引上げが可能となる。
なお、距離Hは、想定される回転軸21の引上げ距離よりも大きい数値とする一方で、通常時の水封状態を確実に維持するためには、距離Hの数値はできるだけ小さくすることが好ましい。したがって、例えば、本実施態様の撹拌装置10Bを配設する反応槽100Bにおける設計上の最高水位や、反応槽100B内で発生するガスによる内圧上昇分等を考慮し、水封室42の配置箇所やサイズの設計を行うとともに、距離Hの最適化を図ることが好ましい。
【0040】
以上のように、本実施態様の撹拌装置10B及び反応槽100Bは、省スペース化のために撹拌装置10Bの大部分(軸封部40及び接合部22を含む)が反応槽100B内に挿入される形とした場合においても、軸封状態を維持しつつ、回転軸21と駆動部30を一体とした引上げを可能とすることで、撹拌部20と駆動部30の分割に係る作業を容易に行うことが可能となる。これにより、反応槽100B全体としての小型化及び撹拌装置のメンテナンス作業に係る負担軽減を図ることが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施態様は撹拌装置及び反応槽の一例を示すものである。本発明に係る撹拌装置及び反応槽は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る撹拌装置及び反応槽を変形してもよい。
【0042】
例えば、本発明の第2の実施態様として示した撹拌装置10B及び反応槽100Bにおいては、作業者が接合部22の分割を安全かつ確実に行うことができるものであればよく、引上機構60による引上げによって、接合部22をセンタードーム120外に完全に取り出すことに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の撹拌装置及び反応槽は、被処理物の撹拌処理に利用することができる。特に、本発明の撹拌装置及び反応槽は、処理に伴い発生するミストやガスの外部漏出を抑制する必要がある撹拌処理や、外気との接触を抑制する必要がある撹拌処理に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0044】
10A,10B 撹拌装置、20 撹拌部、21 回転軸、22 接合部、30 駆動部、31 モーター、32 出力軸、33 軸受、34 スカート、40 軸封部、41 軸カバー部材、41a 固定部、42 水封室、43 水供給部、50 架台、51 支持体、60 引上機構、100A,100B 反応槽、110 槽本体、110a 貫通孔、120 センタードーム、121 支持台、H 距離