(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142290
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光検出装置の校正方法、光検出装置の製造方法、光検出装置及びPCR装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230928BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230928BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 D
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049119
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尊士
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029FA09
4B029FA12
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】光検出装置の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【解決手段】光検出装置の校正方法は、試料を光学的に検出する光検出装置の校正方法であって、試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、対象物からの光であって、シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、受光工程で受光した光の強度に応じて、シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を光学的に検出する光検出装置の校正方法であって、
前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記対象物からの光であって、シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を備える、光検出装置の校正方法。
【請求項2】
前記対象物は、蛍光フィルムである、請求項1に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項3】
前記対象物は、前記試料を保持可能な保持体上に配置される、請求項1又は2に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項4】
前記保持体は、透明な材料で構成されている、請求項3に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項5】
前記保持体は、樹脂材料で構成されている、請求項4に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項6】
前記保持体は、前記試料を保持可能な流路が形成された基板である、請求項3から5のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項7】
前記受光工程において、前記対象物からの反射光を受光する、請求項1から6のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項8】
前記受光工程において、前記対象物の透過光を受光する、請求項1から6のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項9】
前記変更工程において、前記シャッター速度を1秒以下に変更する、請求項1から8のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項10】
前記変更工程において、前記受光工程で受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度に基づいて、前記シャッター速度を変更する、請求項1から9のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項11】
前記変更工程において、前記シャッター速度と前記受光工程で受光する光の強度との比例関係に基づいて、前記シャッター速度を変更する、請求項1から10のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項12】
前記試料は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、前記検体液に含まれる前記核酸と反応する試薬と、を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の光検出装置の校正方法。
【請求項13】
試料を光学的に検出する光検出装置の製造方法であって、
前記試料に光を照射する照射部と、前記試料からの光を受光する受光部と、前記照射部と前記受光部との間に配置されたシャッター部と、を有する光検出装置を準備する準備工程と、
前記光検出装置の校正を行う校正工程と、を備え、
前記校正工程は、
前記照射部により、前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記受光部により、前記対象物からの光であって、前記シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を有する、光検出装置の製造方法。
【請求項14】
試料を光学的に検出する光検出装置であって、
試料に光を照射する照射部と、
前記試料からの光を受光する受光部と、
前記照射部と前記受光部との間に配置されたシャッター部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部により、前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記受光部により、前記対象物からの光であって、前記シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を実行可能に構成されている、光検出装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記シャッター速度と前記受光部で受光する光の強度との比例関係を記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記変更工程において、前記記憶部に記憶された前記比例関係に基づいて、前記シャッター速度を変更する、請求項14に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記試料は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、前記検体液に含まれる前記核酸と反応する試薬と、を含む、請求項14又は15に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記試料の加温及び冷却を行う温度調節装置と、
前記温度調節装置により加温及び冷却が繰り返し行われた前記試料を光学的に検出する、請求項16に記載の光検出装置と、を備える、PCR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置の校正方法、光検出装置の製造方法、光検出装置及びPCR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているようなマイクロチップ等に保持された試料を光学的に検出する光検出装置が知られている。光検出装置は、試料に光を照射する照射部と、試料からの光を受光する受光部と、を有している。光検出装置は、装置の個体差あるいは経時変化により計測結果に差が生じないようにするため、しばしば校正(キャリブレーション)が行われる。光検出装置の校正においては、例えば、照射部により試料のサンプル(標準サンプル)に光を照射し、受光部によりそのサンプルからの光を受光し、受光した光の強度に応じて、照射部の光源の光の強弱を調整することが行われていた。しかしながら、光源の調整は装置の寿命に影響する場合があり、また光源の光は微調整が困難な場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、光検出装置の校正を容易かつ精度良く行うことができる光検出装置の校正方法、光検出装置の製造方法、光検出装置及びPCR装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、
試料を光学的に検出する光検出装置の校正方法であって、
前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記対象物からの光であって、シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を備える、光検出装置の校正方法である。
【0006】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による光検出装置の校正方法において、前記対象物は、蛍光フィルムである、光検出装置の校正方法である。
【0007】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による光検出装置の校正方法において、前記対象物は、前記試料を保持可能な保持体上に配置される、光検出装置の校正方法である。
【0008】
本開示の第4の態様は、上述した第3の態様による光検出装置の校正方法において、前記保持体は、透明な材料で構成されている、光検出装置の校正方法である。
【0009】
本開示の第5の態様は、上述した第4の態様による光検出装置の校正方法において、前記保持体は、樹脂材料で構成されている、光検出装置の校正方法である。
【0010】
本開示の第6の態様は、上述した第3の態様から上述した第5の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記保持体は、前記試料を保持可能な流路が形成された基板である、光検出装置の校正方法である。
【0011】
本開示の第7の態様は、上述した第1の態様から上述した第6の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記受光工程において、前記対象物からの反射光を受光する、光検出装置の校正方法である。
【0012】
本開示の第8の態様は、上述した第1の態様から上述した第6の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記受光工程において、前記対象物の透過光を受光する、光検出装置の校正方法である。
【0013】
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様から上述した第8の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記変更工程において、前記シャッター速度を1秒以下に変更する、光検出装置の校正方法である。
【0014】
本開示の第10の態様は、上述した第1の態様から上述した第9の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記変更工程において、前記受光工程で受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度に基づいて、前記シャッター速度を変更する、光検出装置の校正方法である。
【0015】
本開示の第11の態様は、上述した第1の態様から上述した第10の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記変更工程において、前記シャッター速度と前記受光工程で受光する光の強度との比例関係に基づいて、前記シャッター速度を変更する、光検出装置の校正方法である。
【0016】
本開示の第12の態様は、上述した第1の態様から上述した第11の態様のいずれかによる光検出装置の校正方法において、前記試料は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、前記検体液に含まれる前記核酸と反応する試薬と、を含む、光検出装置の校正方法である。
【0017】
本開示の第13の態様は、
試料を光学的に検出する光検出装置の製造方法であって、
前記試料に光を照射する照射部と、前記試料からの光を受光する受光部と、前記照射部と前記受光部との間に配置されたシャッター部と、を有する光検出装置を準備する準備工程と、
前記光検出装置の校正を行う校正工程と、を備え、
前記校正工程は、
前記照射部により、前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記受光部により、前記対象物からの光であって、前記シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を有する、光検出装置の製造方法である。
【0018】
本開示の第14の態様は、
試料を光学的に検出する光検出装置であって、
試料に光を照射する照射部と、
前記試料からの光を受光する受光部と、
前記照射部と前記受光部との間に配置されたシャッター部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部により、前記試料とは異なる対象物に光を照射する照射工程と、
前記受光部により、前記対象物からの光であって、前記シャッター部を通過した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した光の強度に応じて、前記シャッター部のシャッター速度を変更する変更工程と、を実行可能に構成されている、光検出装置である。
【0019】
本開示の第15の態様は、上述した第14の態様による光検出装置において、前記制御部は、前記シャッター速度と前記受光部で受光する光の強度との比例関係を記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記変更工程において、前記記憶部に記憶された前記比例関係に基づいて、前記シャッター速度を変更する、光検出装置である。
【0020】
本開示の第16の態様は、上述した第14の態様又は上述した第15の態様による光検出装置において、前記試料は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、前記検体液に含まれる前記核酸と反応する試薬と、を含む、光検出装置である。
【0021】
本開示の第17の態様は、
前記試料の加温及び冷却を行う温度調節装置と、
前記温度調節装置により加温及び冷却が繰り返し行われた前記試料を光学的に検出する、上述した第16の態様による光検出装置と、を備える、PCR装置である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、光検出装置の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態によるPCR装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、
図1のマイクロチップの温調部における部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のマイクロチップ及び温度調節装置の温調部における部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の光検出装置の校正方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図1の光検出装置におけるシャッター速度と受光部で受光する光の強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0025】
まず、本実施の形態によるPCR装置1について説明する。PCR装置1は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液から核酸を抽出し、その核酸と反応する試薬を混合させて試料を生成し、その試料の加温及び冷却を繰り返し行うことによって、その核酸を増幅させるPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)を行う装置である。また、PCR装置1は、その増幅した核酸をリアルタイムに検出するリアルタイムPCR装置である。
【0026】
図1に示すように、PCR装置1は、マイクロチップ10と、温度調節装置20と、光検出装置30と、を備えている。PCR装置1は、マイクロチップ10により、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、当該検体液から核酸を抽出する抽出液と、検体液中の不要な成分を除去する洗浄液と、核酸を回収する回収液と、核酸と反応する試薬と、を含む試料を保持する。また、PCR装置1は、温度調節装置20により、マイクロチップ10に保持された試料の加温及び冷却を繰り返し行い、試料中の核酸を増幅させる。また、PCR装置1は、光検出装置30により、試料中の増幅した核酸を検出する。以下、各構成について説明する。
【0027】
まず、
図2及び
図3を用いて、マイクロチップ10について説明する。マイクロチップ10は、試料を保持可能に構成されている。
図2及び
図3に示すように、マイクロチップ10は、板状の基板11(保持体)を含んでいる。基板11には、試料を保持可能な流路12が形成されている。
図2に示すように、流路12は、検体液導入部12aと、試薬保持部12cと、秤量・混合部A12dと、核酸抽出部12eと、秤量・混合部B12fと、温調部12gと、を含んでいる。また、流路12は、試薬導入部12bを含んでいてもよい。
【0028】
検体液導入部12aは、検体液が導入される部分である。検体液は、DNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)及びRNA(ribonucleic acid:リボ核酸)の少なくともいずれか一方の核酸を含んでいる。検体液としては、土壌、海水、河川水、細胞懸濁液、細胞培養液、培養上清液、血液、唾液、鼻咽頭拭い液、その他の体液等、核酸を含むもの全般が挙げられる。検体液導入部12aは、検体液供給路12hを介して、秤量・混合部A12dと接続されている。検体液導入部12aから導入された検体液は、検体液供給路12hを通って、秤量・混合部A12dに供給される。
【0029】
試薬保持部12cは、試薬が保持される部分である。試薬は、検体液から核酸を抽出する抽出液と、検体液中の不要な成分を除去する洗浄液と、核酸を回収する回収液と、核酸と反応するPCR試薬と、を含む。PCR試薬としては、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマー、デオキシヌクレオシド三リン酸及び蛍光プローブ等の混合液が挙げられる。試薬は試薬導入部12bから供給されてもよいし、予め試薬保持部12cに保持・保管されていてもよい。試薬保持部12cは、試薬供給路12iを介して、秤量・混合部A12dと接続されている。試薬保持部12cに保持された試薬の抽出液、洗浄液及び回収液は、試薬供給路12iを通って、秤量・混合部A12dに供給される。また、試薬保持部12cは、試薬供給路12lを介して、秤量・混合部B12fと接続されている。試薬保持部12cに保持された試薬のPCR試薬は、試薬供給路12lを通って、秤量・混合部B12fに供給される。
【0030】
秤量・混合部A12dは、検体液と抽出液とがそれぞれ秤量され混合される部分である。秤量・混合部A12dでは、検体液導入部12aから供給された検体液と、試薬保持部12cから供給された抽出液とが、それぞれ規定量秤量され、混合される。あるいは、検体液を導入する際、検体液と抽出液との混合液が検体液導入部12aから導入されてもよい。秤量・混合部A12dは、混合液供給路12jを介して、核酸抽出部12eと接続されている。検体液と抽出液との混合液、並びに洗浄液及び回収液は、混合液供給路12jを通って、核酸抽出部12eに供給される。
【0031】
核酸抽出部12eは、核酸の抽出が行われる部分である。核酸抽出部12eでは、核酸を吸着体に吸着させることで核酸の抽出が行われる。ここで、吸着体とは、核酸を担持するための担持体であり、膜、フィルタ、多孔質体等、特に形状は限定されない。吸着体の材料としては、ケイ素化合物、リン酸塩鉱物類等が挙げられる。核酸の抽出後、抽出液成分及び検体液の不要部(夾雑物)を除去するために、洗浄液により吸着体の洗浄が行われる。洗浄液は塩基性化合物を有し、かつ、そのpHは塩基性化合物の酸解離定数pKaよりも小さい。そのような洗浄液を用いることで、核酸と吸着体との結合を維持したまま、不要部(夾雑物)を吸着体から洗い流すことができる。吸着体の洗浄後、回収液により核酸を吸着体から回収する。回収液のpHは、塩基性化合物の酸解離定数pKaよりも大きい。そのような回収液を用いることで、吸着体と核酸を分離し、回収液と共に核酸を回収することができる。核酸抽出部12eは、回収液供給路12kを介して、秤量・混合部B12fと接続されている。回収液は、回収液供給路12kを通って、秤量・混合部B12fに供給される。
【0032】
秤量・混合部B12fは、核酸抽出部12eから供給された回収液と、試薬保持部12cから供給されたPCR試薬とが混合される部分である。秤量・混合部B12fでは、回収液とPCR試薬とが混合されることで、上述した試料が生成される。秤量・混合部B12fは、試料供給路12mを介して、温調部12gと接続されている。秤量・混合部B12fで生成された試料は、試料供給路12mを通って、温調部12gに供給される。
【0033】
温調部12gは、後述する温度調節装置20により、試料の加温及び冷却が行われる部分である。また、温調部12gは、後述する光検出装置30により、試料が光学的に検出される部分である。
図3に示す例においては、3つの温調部12gが設けられている。温調部12gでは、秤量・混合部B12fから供給された試料が保持される。温調部12gは、例えば、1μL以上5μL以下の試料を保持可能であってもよい。試料は、この温調部12gに保持された状態で、後述する温度調節装置20により加温及び冷却が行われ、また、後述する光検出装置30により光学的に検出される。
【0034】
マイクロチップ10は、送液のために、ポンプ等と接続されていてもよい。あるいは、マイクロチップ10に光ガス発生テープが設けられ、光ガス発生テープを用いてガスを発生させて、マイクロチップ10内で送液してもよい。ここで、光ガス発生テープとは光照射により気体を発生することができるテープである。
【0035】
また、マイクロチップ10は、送液した不要な液を回収するために、回収部と接続されていてもよい。回収部は、マイクロチップ10内に設けられていてもよい。
【0036】
また、マイクロチップ10の流路12内に、不図示の流路切替バルブが設けられていてもよい。この流路切替バルブを操作することにより、流路12内の送液を制御してもよい。
【0037】
図3に示すように、基板11は、後述する光検出装置30の側に設けられた第1基板面11aと、第1基板面11aとは反対側に設けられた第2基板面11bと、を有している。
【0038】
第2基板面11bには、上述した流路12が形成されている。流路12は、第2基板面11bに凹状に形成されている。
図3に示す例においては、流路12の断面形状は、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、流路12の断面形状は、半円形状や半楕円形状等であってもよい。流路12の幅は、1μm以上10mm以下であってもよい。流路12の深さも、1μm以上10mm以下であってもよい。
【0039】
また、第2基板面11b上には、カバー部材13が配置されている。カバー部材13は、上述した流路12の開口部を覆っている。カバー部材13は、封止テープ、合成樹脂フィルム等の可撓性フィルム、エラストマー等の弾性部材であってもよい。カバー部材13は、第2基板面11bに対向する第1カバー面13aと、第1カバー面13aとは反対側に設けられた第2カバー面13bと、を有している。第2カバー面13bには、後述する温度調節装置20が配置される。カバー部材13の厚みは、0.01mm以上10mm以下であってもよい。
【0040】
基板11は、透明な材料で構成されている。例えば、基板11は、樹脂材料で構成されていてもよい。この場合、基板11は、射出成形により作製されてもよいし、複数枚の樹脂シートを積層することにより作製されてもよい。樹脂材料は、熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、シクロオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリオレフィン等が挙げられる。基板11の厚みは、0.5mm以上10mm以下であってもよい。なお、このことに限られることはなく、基板11は、ガラス材料で構成されていてもよい。ここで、「透明」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。
【0041】
マイクロチップ10は、PCR装置1に着脱可能に構成されている。すなわち、マイクロチップ10は、PCR装置1に装着することができるとともに、PCR装置1から取り外すこともできる。上述した検体液導入部12aからの検体液の導入及び上述した試薬導入部12bからの試薬の導入は、マイクロチップ10がPCR装置1から取り外された状態で行われてもよい。そして、試料のPCRを行う際に、マイクロチップ10がPCR装置1に装着されてもよい。マイクロチップ10をPCR装置1に装着する際、マイクロチップ10は、温度調節装置20上に配置される。より具体的には、マイクロチップ10は、第2カバー面13bが後述する第1伝熱面22aに対向するように配置される。
【0042】
続いて、
図4を用いて、温度調節装置20について説明する。温度調節装置20は、試料の加温及び冷却を行うことができるように構成されている。
図4に示すように、温度調節装置20は、ペルチェ素子21と、伝熱部材22と、を含んでいる。
【0043】
ペルチェ素子21は、ペルチェ効果を実現する板状の半導体熱電素子である。ペルチェ素子21は、発熱及び吸熱を行うように構成されている。ペルチェ素子21は、図示しないペルチェ素子駆動回路に接続されている。ペルチェ素子21は、ペルチェ素子駆動回路により駆動され、ペルチェ素子駆動回路から供給された電流に応じて、発熱あるいは吸熱を行う。
図4に示すように、ペルチェ素子21は、マイクロチップ10の側に設けられた第1素子面21aと、第1素子面21aとは反対側に設けられた第2素子面21bと、を有している。
【0044】
伝熱部材22は、ペルチェ素子21の第1素子面21a上に配置されている。
図4に示すように、伝熱部材22は、第1伝熱面22aと、第1伝熱面22aとは反対側に設けられた第2伝熱面22bと、を有している。第1伝熱面22aは、カバー部材13の第2カバー面13bに対向するとともに接触している。第2伝熱面22bは、ペルチェ素子21の第1素子面21aに対向するとともに接触している。伝熱部材22は、ペルチェ素子21の熱を、カバー部材13を介して基板11に伝える。すなわち、ペルチェ素子21が発熱した場合、伝熱部材22は、その熱を基板11に伝えて、基板11の加温を行う。また、ペルチェ素子21が吸熱した場合、伝熱部材22は、その熱(負の熱量)を基板11に伝えて、基板11の冷却を行う。このようにして、基板11の温調部12gに保持された試料の加温及び冷却が行われる。このような伝熱部材22を設けることにより、第2基板面11bにおける温度の均一性を向上させることができる。
【0045】
伝熱部材22は、熱伝導性の高い材料で構成されている。伝熱部材22の熱伝導率は、50W・m-1・K-1以上500W・m-1・K-1以下であってもよい。例えば、伝熱部材22は、金属材料で構成されていてもよい。金属材料としては、鉄、ニッケル、アルミニウム、金、銅、銀等が挙げられる。また例えば、伝熱部材22は、炭素材料で構成されていてもよい。炭素材料としては、グラファイト等が挙げられる。伝熱部材22の厚みは、0.01mm以上5mm以下であってもよい。伝熱部材22の厚みが0.01mm以上であることにより、第2基板面11bにおける温度の均一性向上の効果を確保することができる。また、伝熱部材22の厚みが5mm以下であることにより、伝熱部材22の熱抵抗の増大を抑制することができ、試料の熱応答性の低下を抑制することができる。
【0046】
次に、
図1を用いて、光検出装置30について説明する。光検出装置30は、試料を光学的に検出するように構成されている。例えば、光検出装置30は、蛍光観察により試料を検出する。
図1に示すように、光検出装置30は、照射部31と、受光部32と、シャッター部33と、制御部Cと、を備えている。
【0047】
照射部31は、マイクロチップ10に保持された試料に光を照射するように構成されている。照射部31は、LED光源、ハロゲンランプ等で構成されていてもよい。
図1に示す例においては、照射部31とマイクロチップ10との間(光路の間)に、集光レンズ34、励起フィルタ35、ダイクロイックミラー36及び対物レンズ37が配置されている。照射部31から照射された光は、集光レンズ34を通って、励起フィルタ35に到達する。励起フィルタ35は、照射部31からの光のうち、試料の蛍光物質に適した特定の波長、例えば蛍光物質が5-カルボキシフルオレセインである場合には470nm以上500nm以下の範囲内の波長の光(励起光)を通過させる。励起フィルタ35を通過した光は、ダイクロイックミラー36に到達する。ダイクロイックミラー36は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を通過させるように構成されており、励起フィルタ35を通過した光を反射する。
図1に示す例においては、励起フィルタ35を通過した光は、ダイクロイックミラー36に対して45度の入射角で入射し45度の反射角で反射する。ダイクロイックミラー36で反射した光は、対物レンズ37を通って、マイクロチップ10に到達する。マイクロチップ10に到達した光は、第1基板面11aから基板11内を透過して、温調部12gに保持された試料に照射される(
図4参照)。このようにして試料に照射部31からの光が照射されると、試料の蛍光物質が光を吸収するとともに蛍光を発する。ここで、試料の蛍光の波長は、例えば500nm以上550nm以下の範囲内の波長である。なお、上述した励起光の波長及び蛍光の波長は蛍光物質により異なる。また、蛍光物質は複数でもよく、その際は励起光の波長及び蛍光の波長も複数の波長領域を励起及び蛍光観察可能なように光学系が設計される。
【0048】
受光部32は、マイクロチップ10に保持された試料からの光を受光するように構成されている。受光部32は、フォトダイオード、CCDセンサ、CMOSセンサ等で構成されていてもよい。
図1に示す例においては、マイクロチップ10と受光部32との間(光路の間)に、上述した対物レンズ37、上述したダイクロイックミラー36、吸収フィルタ38、レンズ39及びシャッター部33が配置されている。試料からの反射光(蛍光)は、基板11内を透過して第1基板面11aから射出する(
図4参照)。光は、対物レンズ37を通って、ダイクロイックミラー36に到達する。光は、更にダイクロイックミラー36を通過して、吸収フィルタ38に到達する。吸収フィルタ38は、試料の蛍光の波長以外の光を除去する。吸収フィルタ38を通過した光は、レンズ39及びシャッター部33を通過して、受光部32に到達する。このようにして、受光部32は、試料からの光(反射光)を受光する。
【0049】
シャッター部33は、照射部31と受光部32との間(光路の間)に配置されている。
図1に示す例においては、シャッター部33は、レンズ39と受光部32との間に配置されているが、照射部31と受光部32との間に配置されていればよく、その配置は任意である。シャッター部33は、光を通過させる開状態と、光を通過させない閉状態とに移行可能に構成されている。シャッター部33は、通常時には閉状態であるが、蛍光観察時に閉状態から開状態に移行し、予め設定された露光時間の経過後に開状態から閉状態に移行する。この露光時間をシャッター速度とも称する。シャッター部33は、このシャッター速度を変更可能に構成されている。シャッター部33は、シャッター速度を、例えば5μ秒以上1秒以下の範囲内で変更可能である。蛍光観察時のシャッター速度の設定方法については、後述する光検出方法の校正方法において説明する。
【0050】
制御部Cは、光検出装置30を制御するように構成されている。すなわち、制御部Cは、照射部31、受光部32及びシャッター部33を制御する。制御部Cは、照射部31により、試料とは異なる対象物40に光を照射する照射工程と、受光部32により、対象物40からの光であって、シャッター部33を通過した光を受光する受光工程と、受光工程で受光した光の強度に応じて、シャッター部33のシャッター速度を変更する変更工程と、を実行可能に構成されている。照射工程、受光工程及び変更工程については、後述する光検出方法の校正方法において説明する。また、制御部Cは、シャッター速度と受光部32で受光する光の強度との比例関係を記憶する記憶部Sを含んでいてもよい。制御部Cは、変更工程において、この比例関係に基づいて、シャッター速度を変更してもよい。
【0051】
次に、このような構成からなる光検出装置30の校正方法について説明する。光検出装置30の校正は、任意のタイミングで行われてもよい。例えば、光検出装置30の校正は、後述するように光検出装置30の製造時に行われてもよいし、前回の校正から所定期間が経過した後、あるいは光検出装置30が所定回数使用された後に行われてもよい。光検出装置30の校正方法は、照射工程と、受光工程と、変更工程と、を備えている。
【0052】
まず、照射工程が行われる。照射工程においては、照射部31により、試料とは異なる対象物40に光を照射する。対象物40は、例えば、蛍光フィルム41であってもよい。蛍光フィルム41は、樹脂材料で構成されている。樹脂材料としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂等が挙げられる。樹脂材料には、蛍光色素が含有されており、蛍光フィルム41は、例えば470nm以上550nm以下の範囲内の波長の光で強く蛍光するようになっている。蛍光フィルム41の厚みは、例えば、10μm以上200μm以下であってもよい。
【0053】
図5に示すように、蛍光フィルム41は、マイクロチップ10の基板11上に配置されてもよい。
図5に示す例においては、蛍光フィルム41は、第1基板面11a上に配置されている。蛍光フィルム41は、マイクロチップ10がPCR装置1から取り外された状態で第1基板面11a上に配置されてもよい。その後、第1基板面11aに蛍光フィルム41が配置されたマイクロチップ10がPCR装置1に装着されてもよい。
【0054】
照射工程においては、まず、照射部31から光が照射される。照射部31から照射された光は、集光レンズ34を通って、励起フィルタ35に到達する。続いて、励起フィルタ35に到達した光のうち、特定の波長、例えば470nm以上500nm以下の範囲内の波長の光(励起光)が、励起フィルタ35を通過して、ダイクロイックミラー36に到達する。次に、ダイクロイックミラー36に到達した光は、ダイクロイックミラー36に対して45度の入射角で入射し45度の反射角で反射する。そして、ダイクロイックミラー36で反射した光は、対物レンズ37を通って、マイクロチップ10上の蛍光フィルム41に照射される(
図5参照)。このようにして蛍光フィルム41に照射部31からの光が照射されると、蛍光フィルム41に含有される蛍光色素が光を吸収するとともに蛍光を発する。
【0055】
照射工程の後、受光工程が行われる。受光工程においては、受光部32により、対象物40からの光であって、シャッター部33を通過した光を受光する。受光工程においては、まず、蛍光フィルム41からの反射光(蛍光)は、対物レンズ37を通って、ダイクロイックミラー36に到達する。続いて、光は、ダイクロイックミラー36を通過して、吸収フィルタ38に到達する。次に、光は、吸収フィルタ38において蛍光フィルム41の蛍光の波長以外の光が除去され、吸収フィルタ38を通過する。そして、吸収フィルタ38を通過した光は、レンズ39及びシャッター部33を通過して、受光部32に到達する。なお、ここでのシャッター部33のシャッター速度は任意であり、5μ秒以上1秒以下の範囲内で適宜設定される。このようにして、受光部32により、試料からの光(反射光)を受光する。
【0056】
受光工程の後、変更工程が行われる。変更工程においては、受光工程で受光した光の強度(蛍光強度)に応じて、シャッター部33のシャッター速度を変更する。変更工程において、シャッター部33のシャッター速度を5μ秒以上1秒以下の範囲内で変更してもよく、5μ秒以上500μ秒以下の範囲内で変更してもよく、5μ秒以上50μ秒以下の範囲内で変更してもよい。また、変更工程において、受光工程で受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度に基づいて、シャッター部33のシャッター速度を変更してもよい。例えば、受光部32により受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度の最大値が所定強度よりも大きい場合、シャッター部33のシャッター速度を現在のシャッター速度よりも小さくなるように変更してもよい。また例えば、受光部32により受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度の最大値が所定強度よりも小さい場合、シャッター部33のシャッター速度を現在のシャッター速度よりも大きくなるように変更してもよい。
【0057】
図6に、シャッター部33のシャッター速度と受光部32で受光する光の強度(蛍光強度)との関係を表すグラフを示す。
図6において、縦軸は、受光部32で受光する光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度(蛍光強度)の最大値を示し、横軸は、シャッター部33のシャッター速度を示す。このようなシャッター速度と受光部32で受光する光の強度との関係は、例えば、シャッター部33のシャッター速度を変更して、上述した照射工程及び受光工程を繰り返し行うことにより取得されてもよい。なお、
図6において、光の強度の値は、マイクロチップ10の流路12の温調部12gに対応する位置における任意の領域の光の強度の平均値である。
図6に示すように、シャッター速度と受光部32で受光する光の強度とは比例関係にある。このため、変更工程においては、シャッター速度と受光部32で受光する光の強度との比例関係に基づいて、シャッター部33のシャッター速度を変更してもよい。例えば、
図6に示すように、受光部32で受光する光の強度が100になるように、シャッター部33のシャッター速度を変更してもよい。
【0058】
上述した照射工程、受光工程及び変更工程は、手動操作により行われてもよいが、上述した制御部Cにより自動的に行われてもよい。すなわち、制御部Cが、照射部31を制御することにより上述した照射工程を実行してもよく、受光部32を制御することにより上述した受光工程を実行してもよく、シャッター部33を制御することにより上述した変更工程を実行してもよい。この場合、記憶部Sは、
図6に示すような、シャッター部33のシャッター速度と受光部32で受光する光の強度との比例関係を記憶してもよい。記憶部Sは、この関係を数式(比例式)として記憶してもよいし、データベースとして記憶してもよい。そして、制御部Cは、変更工程において、記憶部Sに記憶された当該比例関係に基づいて、シャッター部33のシャッター速度を変更してもよい。例えば、制御部Cは、当該比例関係から、受光部32で受光する光の強度が100になるようなシャッター速度を算出して、シャッター部33のシャッター速度をそのシャッター速度に変更してもよい。
【0059】
このようにして、光検出装置30の校正が行われる。
【0060】
次に、光検出装置30の製造方法について説明する。光検出装置30の製造方法は、準備工程と、校正工程と、を備えている。
【0061】
まず、準備工程が行われる。準備工程においては、上述した光検出装置30を準備する。すなわち、上述した照射部31と、上述した受光部32と、上述したシャッター部33と、を備える光検出装置30が準備される。
【0062】
準備工程の後、校正工程が行われる。校正工程においては、光検出装置30の校正を行う。校正工程は、上述した照射工程と、上述した受光工程と、上述した変更工程と、を有している。照射工程、受光工程及び変更工程についての再度の説明は省略する。
【0063】
このようにして、校正が行われた光検出装置30を得ることができる。
【0064】
次に、このようにして校正が行われた光検出装置30を備えるPCR装置1の使用方法について説明する。PCR装置1の使用方法は、保持工程と、温度調節工程と、光検出工程と、を備えている。
【0065】
まず、保持工程が行われる。保持工程においては、マイクロチップ10により試料を保持する。保持工程においては、まず、マイクロチップ10がPCR装置1から取り外された状態で、検体液導入部12aから検体液が導入されるとともに、試薬導入部12bから試薬が導入される。その後、マイクロチップ10がPCR装置1に装着される。この際、マイクロチップ10は、第2カバー面13bが第1伝熱面22aに対向するように、温度調節装置20上に配置される。検体液導入部12aから導入された検体液は、検体液供給路12hを通って、秤量・混合部A12dに供給される。試薬導入部12bから導入された試薬は、試薬保持部12cに保持される。試薬保持部12cに保持された試薬の抽出液、洗浄液及び回収液は、試薬供給路12iを通って、秤量・混合部A12dに供給される。また、試薬保持部12cに保持された試薬のPCR試薬は、試薬供給路12lを通って、秤量・混合部B12fに供給される。秤量・混合部A12dでは、検体液導入部12aから供給された検体液と、試薬保持部12cから供給された抽出液とが、それぞれ規定量秤量され、混合される。検体液と抽出液との混合液、並びに洗浄液及び回収液は、混合液供給路12jを通って、核酸抽出部12eに供給される。核酸抽出部12eでは、核酸を吸着体に吸着させることで核酸の抽出が行われる。核酸の抽出後、抽出液成分及び検体液の不要部(夾雑物)を除去するために、洗浄液により吸着体の洗浄が行われる。吸着体の洗浄後、回収液により核酸が吸着体から回収される。回収液は、回収液供給路12kを通って、秤量・混合部B12fに供給される。秤量・混合部B12fでは、核酸抽出部12eから供給された回収液と、試薬保持部12cから供給されたPCR試薬とが混合されて、試料が生成される。秤量・混合部B12fで生成された試料は、試料供給路12mを通って、温調部12gに供給される。そして、温調部12gにおいて、秤量・混合部B12fから供給された試料が保持される。このようにして、マイクロチップ10により試料が保持される。
【0066】
保持工程の後、温度調節工程が行われる。温度調節工程においては、温度調節装置20により試料の加温及び冷却を行う。温度調節工程においては、まず、ペルチェ素子駆動回路によりペルチェ素子21が駆動されて、ペルチェ素子21が発熱する。ペルチェ素子21の熱は、伝熱部材22及びカバー部材13を介して基板11に伝えられる。こうして、基板11の温調部12gに保持された試料の加温が行われる。ここで、試料は、例えば90℃以上100℃以下の範囲内の温度まで加温される。これにより、例えば試料に含まれるDNAの鎖が分離される(熱変性)。続いて、ペルチェ素子駆動回路によりペルチェ素子21が駆動されて、ペルチェ素子21が吸熱する。ペルチェ素子21の熱(負の熱量)は、伝熱部材22及びカバー部材13を介して基板11に伝えられる。こうして、基板11の温調部12gに保持された試料の冷却が行われる。ここで、試料は、例えば55℃以上65℃以下の範囲内の温度まで冷却される。これにより、例えば試料に含まれるプライマーが、目的とするDNAと結合する(アニーリング)。次に、ペルチェ素子駆動回路によりペルチェ素子21が駆動されて、ペルチェ素子21が発熱する。ペルチェ素子21の熱は、伝熱部材22及びカバー部材13を介して基板11に伝えられる。こうして、基板11の温調部12gに保持された試料の加温が行われる。ここで、試料は、例えば70℃以上80℃以下の範囲内の温度まで加温される。これにより、例えば試料に含まれるDNAポリメラーゼが、プライマーを起点にDNAの相補鎖を生成する(伸長)。なお、PCR試薬によっては、アニーリングと伸長が同じ温度で行われる場合もある。このような温度調節装置20による試料の加温及び冷却が繰り返し行われることにより、例えば目的とするDNAを増幅させるPCRが行われる。
【0067】
温度調節工程の後、あるいは温度調節工程と同時に、光検出工程が行われる。光検出工程においては、温度調節装置20により加温及び冷却が繰り返し行われた試料を光学的に検出する。光検出工程においては、まず、照射部31から光が照射される。照射部31から照射された光は、集光レンズ34を通って、励起フィルタ35に到達する。続いて、励起フィルタ35に到達した光のうち、特定の波長、例えば470nm以上500nm以下の範囲内の波長の光(励起光)が、励起フィルタ35を通過して、ダイクロイックミラー36に到達する。次に、ダイクロイックミラー36に到達した光は、ダイクロイックミラー36に対して45度の入射角で入射し45度の反射角で反射する。そして、ダイクロイックミラー36で反射した光は、対物レンズ37を通って、マイクロチップ10に到達する。マイクロチップ10に到達した光は、第1基板面11aから基板11内を透過し、温調部12gに保持された試料に照射される。試料に照射部31からの光が照射されると、試料の蛍光物質が光を吸収するとともに、例えば500nm以上550nm以下の範囲内の波長の蛍光を発する。続いて、試料からの反射光(蛍光)は、基板11内を透過して第1基板面11aから射出する。次に、光は、対物レンズ37を通って、ダイクロイックミラー36に到達する。続いて、光は、更にダイクロイックミラー36を通過して、吸収フィルタ38に到達する。次に、光は、吸収フィルタ38において試料の蛍光の波長以外の光が除去され、吸収フィルタ38を通過する。そして、吸収フィルタ38を通過した光は、レンズ39及びシャッター部33を通過して、受光部32に到達する。ここでのシャッター部33のシャッター速度は、上述した光検出装置30の校正方法の変更工程において変更されたシャッター速度である。こうして、受光部32は、試料からの光(反射光)を受光する。
【0068】
このようにして、PCR装置1により、試料に含まれる核酸を増幅させるPCRが行われるとともに、その増幅した核酸が光学的に検出される。
【0069】
このように本実施の形態によれば、光検出装置30の校正方法は、試料とは異なる対象物40に光を照射する照射工程と、対象物40からの光であって、シャッター部33を通過した光を受光する受光工程と、受光工程で受光した光の強度に応じて、シャッター部33のシャッター速度を変更する変更工程と、を備えている。このように、光検出装置30の校正をシャッター速度の変更によって行うことにより、照射部31の光源の調整を不要にすることができ、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。また、試料とは異なる対象物40を用いることにより、光検出装置30の校正時に試料のサンプルを用いることを不要にすることができる。試料は、経時劣化し易く、その準備及び管理が困難な場合がある。このため、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、対象物40は、蛍光フィルム41である。蛍光フィルム41は、その準備及び管理が容易である。また、蛍光フィルム41は、特定の範囲内の波長の光で強く蛍光することができ、受光部32によりその蛍光を容易に捉えることができる。このため、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。また、蛍光フィルム41は、フィルム状であるため、校正を行う際の装置レイアウトの制限を抑えることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、対象物40は、試料を保持可能な基板11上に配置される。このことにより、対象物40を基板11上に配置して、対象物40とともにマイクロチップ10をPCR装置1に装着することで、対象物40を光検出装置30の対象位置に容易に配置することできる。また、実際の光検出装置30による試料の検出時に近い環境で光検出装置30の校正を行うことができる。このため、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、基板11は、透明な材料で構成されている。このことにより、光検出装置30による試料の検出時に、照射部31からの光は、基板11内を透過して試料に照射されることができる。また、試料からの光は、基板11内を透過して射出することができる。このため、光検出装置30による試料の検出を容易かつ精度良く行うことができる。
【0073】
とりわけ、本実施の形態によれば、基板11は、樹脂材料で構成されている。この場合、試料だけでなく、試料を保持する基板11も、照射部31からの光により発光する場合がある。このような場合であっても、シャッター部33のシャッター速度を小さくなるように変更することにより、基板11の発光の影響を容易に低減することができる。このため、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、基板11に、試料を保持可能な流路12が形成されている。このことにより、基板11により試料を容易に保持することができる。このため、光検出装置30による試料の検出を容易かつ精度良く行うことができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、変更工程において、シャッター速度を1秒以下に変更する。このようにシャッター速度を1秒以下に制限することで、光検出装置30による試料の検出時間(測定時間)の増大を抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、変更工程において、受光工程で受光した光の500nm以上550nm以下の範囲内における波長の強度に基づいて、シャッター速度を変更する。このように蛍光の波長域に限定して評価を行うことで、光検出装置30の校正をより一層精度良く行うことができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、変更工程において、シャッター速度と受光工程で受光する光の強度との比例関係に基づいて、シャッター速度を変更する。シャッター速度と受光工程で受光する光の強度との間にこのような比例関係が成り立つことにより、受光工程で受光した光の強度に応じたシャッター速度の変更を容易かつ正確に行うことができる。このため、光検出装置30の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、試料は、DNA及びRNAの少なくともいずれか一方の核酸を含む検体液と、検体液に含まれる核酸と反応する試薬と、を含んでいる。このような試料は、PCR装置1により、試料に含まれる核酸を増幅させるPCRを行うことができる。本実施の形態による光検出装置30は、このようなPCR装置1に好適に用いることができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態においては、受光工程において、対象物40からの反射光を受光する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、受光工程において、対象物40の透過光を受光するようにしてもよい。この場合、光検出装置30は、例えば発光観察系や吸光度観察系により、試料を検出してもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態においては、PCR装置に用いられる光検出装置に適用される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、広く、試料を光学的に検出する光検出装置に適用可能である。
【0081】
以上述べた実施の形態によれば、光検出装置の校正を容易かつ精度良く行うことができる。
【0082】
以上において、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 PCR装置
10 マイクロチップ
11 基板
12 流路
20 温度調節装置
30 光検出装置
31 照射部
32 受光部
33 シャッター部
40 対象物
41 蛍光フィルム
C 制御部
S 記憶部