(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142299
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ハンドホール
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20230928BHJP
E03B 7/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
E03B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049138
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】久田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】真治 孝
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA00
(57)【要約】
【課題】コンクリート製の枠体と、蓋部とから箱体を構成し、内部に送水管を配置するハンドホールにおいて、内部の耐熱性を向上させる。
【解決手段】ハンドホール(1)は、底部(12)、側部(11)を構成するコンクリート製の枠体(10)と、枠体(10)の上部を塞ぐ蓋部(20)と、枠体(10)と蓋部(20)で構成される箱体の内部に配置される、送水管(40)と、蓋部(20)より下に、蓋部(20)と間隔を置いて配置され、箱体内部の空間(S50)を上の空間(S51)と、送水管(40)を含む下の空間(S52)に仕切る断熱材層(31)を含む中蓋(30)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部、側部、蓋部を有する箱体であって、前記箱体の内部に送水管が収容されるハンドホールであって、
前記底部、前記側部を構成するコンクリート製の枠体と、
前記枠体の上部を塞ぐ前記蓋部と、
前記枠体と前記蓋部で構成される箱体の内部に配置される、前記送水管と、
前記蓋部より下に、前記蓋部と間隔を置いて配置され、前記箱体の内部の空間を上の空間と前記送水管を含む下の空間に仕切る断熱材層を含む中蓋と、
を備えたハンドホール。
【請求項2】
前記蓋部は、金属板と、前記金属板に取り付けられた金属製の取っ手とを備え、
前記取っ手の最も下部分よりも下に、前記中蓋は配置されている、
請求項1に記載のハンドホール。
【請求項3】
前記金属板と前記中蓋の距離は、80mm以上である、
請求項2に記載のハンドホール。
【請求項4】
前記断熱材層は、ロックウールを有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のハンドホール。
【請求項5】
前記中蓋は、さらに、前記断熱材層より下に前記断熱材層を保持する保持部を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のハンドホール。
【請求項6】
前記ハンドホールは、トンネルの下の地中に所定間隔で配置される、
請求項1~5のいずれか1項に記載のハンドホール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンドホールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トンネル内に設置されるハンドホールを開示している。
図5は、特許文献1に開示されるハンドホール107の断面図である。ハンドホール107は、コンクリート製の箱に、鋼板製の蓋部123で蓋をされている。ハンドホール107の内部には、送水配管105、鋼管115、配管の継手111、分岐部109などが配置されている。特許文献1においては、ハンドホール内部をトンネル内部の熱から断熱するため、蓋部123の下面に断熱材125が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル内の火災現場においては、800~1200℃といった相当の高温となる場合がある。このよう場合は、蓋部123を構成する鋼板も相当の高温となる。特許文献1のハンドホールにおいては、内部が80℃以上といった高温となることがある。特に送水配管としてポリエチレン製の配管を用いる場合には、更なる断熱性を有するハンドホールが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1観点のハンドホールは、底部、側部、蓋部を有する箱体であって、前記箱体の内部に送水管が収容される。ハンドホールは、前記底部、前記側部を構成するコンクリート製の枠体と、前記枠体の上部を塞ぐ前記蓋部と、前記枠体と前記蓋部で構成される箱体の内部に配置される、前記送水管と、前記蓋部より下に、前記蓋部と間隔を置いて配置され、前記箱体の内部の空間を上の空間と前記送水管を含む下の空間に仕切る断熱材層を含む中蓋と、を備える。
【0006】
第2観点のハンドホールは、第1観点のハンドホールであって、前記蓋部は、金属板と、前記金属板に取り付けられた金属製の取っ手とを備え、前記取っ手の最も下部分よりも下に、前記中蓋は配置されている。
【0007】
第3観点のハンドホールは、第2観点のハンドホールであって、前記金属板と前記中蓋の距離は、80mm以上である。
【0008】
第4観点のハンドホールは、第1観点~第3観点のいずれかのハンドホールであって、前記断熱材層は、ロックウールを有する。
【0009】
第5観点のハンドホールは、第1観点~第4観点のいずれかのハンドホールであって、前記中蓋は、さらに、前記断熱材層より下に前記断熱材層を保持する保持部を有する。
【0010】
第6観点のハンドホールは、第1観点~第5観点のいずれかのハンドホールであって、前記ハンドホールは、トンネルの下の地中に所定間隔で配置される。
【発明の効果】
【0011】
本開示のハンドホールは、蓋部より下に蓋部と間隔を置いて断熱材層を配置している。蓋部の下の空気層と断熱材層が断熱層となり、ハンドホール内部を簡便に、かつ、高度に断熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のハンドホール1の上面図である。
【
図2】第1実施形態のハンドホール1のAA断面図である。
【
図3】第1実施形態のハンドホール1のBB断面図である。
【
図4】第1実施形態の中蓋30の保持部32の配置を説明する斜視模式図である。
【
図5】特許文献1のハンドホール107の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示のハンドホール1は、トンネルの道路の脇の監視員通路の地下に埋め込んで用いられる。ハンドホールとは、地中管路埋設工事においてケーブルの挿入、撤去を行うための中継用として使用される地中箱である。トンネルは、好ましくは、道路用のトンネルである。より好ましくは、高速道路用のトンネルである。
【0014】
高速道路用のトンネルには、道路の所定間隔ごとにトンネルの側壁に消火栓が配置されている。所定間隔とは、たとえば、50mである。その消火栓にトンネルの外から消火用の水を供給するために、道路の脇の監視員通路に沿って、送水配管が、地中に埋設されている。消火栓に対応した監視員通路の下に、ハンドホール1は設置される。
【0015】
<第1実施形態>
本実施形態のハンドホール1を上から見た上面図を
図1に、
図1のAA面で鉛直に切った断面図を
図2に、
図1のBB面で鉛直に切った断面図を
図3に、ハンドホール1の内部を保持部32を含んで記載した斜視図を
図4に示す。
【0016】
本実施形態のハンドホール1は、枠体10と、蓋部20と、送水管40と、中蓋30と、を備えている。
【0017】
枠体10は、コンクリート製であり、ハンドホール1の底部12と側部11を構成している。
【0018】
蓋部20は、鉄板21と、取っ手22とを含む。鉄板21は、鋼板である。より好ましくは、縞板鋼板である。本実施系形態においては、蓋部20は、
図1より分かるように、3枚の鉄板21を含んでいる。1つの鉄板21には、4つの穴が開けられ、そこに、2つの取っ手22が取り付けられている。取っ手22は、鉄板21と同様の耐熱性が要求される。取っ手22は、鉄製である。取っ手22は、中央部を掴むことにより、鉄板21を上に持ち上げることができる。取っ手22は、鉄板21に対して上下する。取っ手22を把持しない状態では、
図2に示すように、鉄板21に収容され、鉄板21より下に垂れ下がった状態となる。取っ手22は、鉄板21の下面から、下方の空間S51に、約70mm垂れ下がっている。
【0019】
枠体10と、蓋部20を合わせて、箱体を形成している。箱体は、蓋部20が大体地面の高さとなるように地面に埋め込まれている。また、枠体10と蓋部20とで、内部の空間S50を形成し、内部の空間S50を外気から遮断している。
【0020】
ハンドホール1の内部の空間S50には、送水管40が配置されている。送水管40は、さらに、
図2に示すように、枠体10の側部11を貫通し、道路に沿って延びている。ハンドホール1の内部において、送水管40は分岐部41で分岐し、トンネル側面の消火栓まで水を供給できるように配管されている(図示省略)。送水管40は、ポリエチレン管である。送水管40の耐熱性を向上させるために、ポリエチレン管の周りに、断熱層を形成したものを用いてもよい。
【0021】
ハンドホール1の内部の空間S50において、送水管40より上、蓋部20より下に、中蓋30を配置する。中蓋30は、ハンドホール1の内部の空間S50を、中蓋30より上の空間S51と下の空間S52に仕切る。中蓋30は、断熱材層31と、保持部32と、取り付け具33と、を含む。
【0022】
断熱材層31は、断熱材を含む。断熱材は、ロックウール、セラミックファイバー、グラスウール、架橋発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、珪酸カルシウムなどである。より好ましくは、ロックウールである。断熱材の上の表面は、ALGC(アルミガラスクロス)で覆われている。断熱材の上の表面は、ALGC以外の部材であってもよい。断熱材の上の表面がALGCであることにより、断熱性能が向上する。
【0023】
断熱材層31の厚みは、25mm以上である。
【0024】
保持部32は、たとえば金網(など金属製品)である。保持部32は、断熱材層31を保持する。断熱材層31は、保持部32の上に載せられている。断熱材層31は、空間S50を上部の空間S51と下部の空間S52とに仕切る。
【0025】
取り付け具33は、枠体10の側部11の内面に取り付けられている。取り付け具33は、L字状の金具(不燃性の金具)である。取り付け具33によって、保持部32は、所定位置に固定されている。
【0026】
蓋部20の鉄板21と、中蓋30(または断熱材層31)との間の距離Dは、言い換えると、空間S51の高さである。距離Dは、本実施形態では100mmである。距離Dは、取っ手22の下部が断熱材層31と接触しないように、十分長く取るのが好ましい。本実施形態では、距離Dは、80mm以上が好ましい。取っ手22の下部が断熱材層31に当ると、鉄製の取っ手22から熱が伝わり、断熱材層31の温度が上がりやすくなるからである。一方、Dを大きく取りすぎると、送水管40を配置する空間S52が狭くなってしまうので、200mm以下とするのが好ましい。
【0027】
本実施形態のハンドホール1においては、断熱材層31だけでなく、断熱材層31と蓋部20の間の空間S51の空気が断熱層となり、断熱材層31より下の空間S52の送水管40を、蓋部20より上の熱から優れた断熱性能で断熱することができる。
【0028】
(実施例)
次に、本実施形態のハンドホール1を実際に試作して、蓋部20を外から加熱することによって、内部の空間S50がどの程度上昇するかを検討した実験結果について説明する。
【0029】
以下の実施例、比較例では、次の条件は、共通である。
【0030】
ハンドホール1の内部の空間S50の大きさは、高さが750mm、送水管40の送水方向の長さが1200mm、幅方向が535mmである。この外側に、側部11のコンクリートの厚さは150mm、底部12のコンクリートの厚さは、125mmである。鉄板21としては厚みが4.5mmの縞板鋼板を用いた。断熱材層31の断熱材としては、ロックウールのものを用いた。
【0031】
実施例1では、鉄板21と断熱材層31との距離Dを100mmとした。断熱材層31としては、厚み25mmで密度は120kg/m3のロックウールである。
【0032】
実施例2では、鉄板21と断熱材層31との距離Dを162.5mmとした。断熱材層31としては、厚み25mmで密度は70kg/m3のロックウールである。
【0033】
比較例1では、鉄板21と断熱材層31との距離Dを0mmとした。つまり、断熱材層31は、鉄板21の下面に接して配置されている。断熱材層31としては、厚み25mmで密度は70kg/m3のロックウールである。取っ手22は、鉄板21から下に70mm伸びており、断熱材層31を貫通して配置されている。
【0034】
実施例1、実施例2、比較例1の試料に対し、ガスバーナーで、鉄板21の外側の表面を複数個所1000℃以上に加熱し、1時間保持し、送水管40の表面が80℃以下に保持できるかどうかを測定した。
【0035】
この実験では、いずれも、鉄板21の裏面は、900℃以上であった。
【0036】
実施例1の試料では、鉄板21の外側の表面を1000℃以上に加熱し続け、60分後の送水管40の表面の温度は、55.9℃であった。
【0037】
実施例2の試料では、鉄板21の外側の表面を1000℃以上に加熱し続け、60分後の送水管40の表面の温度は、78.8℃であった。
【0038】
比較例1の試料では、鉄板21の外側の表面を1000℃に加熱し続け、24分27秒で送水管40の表面の温度が80℃を越し、さらに時間の経過とともに温度が上昇し続けるため、試験は、30分で終了した。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のハンドホール1は、鉄板21と断熱材層31の間に空間S51が配置され、この空間S51の空気層が断熱層として機能するので、送水管40の配置された空間S52に対して、優れた断熱性能を示す。
【0040】
また、取っ手22は、断熱材層31を貫通しておらず、断熱材層31に接触すらしていない。取っ手22は、一般に金属で構成されており、熱伝達経路となりやすい。本実施形態のハンドホール1は、断熱材層31を取っ手22より下に配置している、送水管40の配置された空間S52を十分断熱することができる。
【0041】
本実施形態のハンドホール1は、断熱材層31の厚みを厚くすることにより、断熱性能をより向上させることができる。断熱性能の制御が容易である。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンドホール
10 枠体
11 側部
12 底部
20 蓋部
21 鉄板
22 取っ手
30 中蓋
31 断熱材層
32 保持部
33 取り付け具
40 送水管
41 分岐部
S50 内部の空間
S51 中蓋より上の空間
S52 中蓋より下の空間