(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142304
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自動内径測定装置の制御方法、および、自動測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/12 20060101AFI20230928BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01B5/12
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049144
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山地 政吏
(72)【発明者】
【氏名】高津 佑平
(72)【発明者】
【氏名】山本 千紘
【テーマコード(参考)】
2F062
3C707
【Fターム(参考)】
2F062AA34
2F062CC23
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE04
2F062FF02
2F062GG11
3C707AS07
3C707AS14
3C707EV20
3C707KS03
3C707KS31
3C707KS33
3C707KS34
3C707KT01
3C707KX06
3C707KX07
3C707LT11
3C707LV05
3C707LV17
3C707MS08
(57)【要約】
【課題】内径測定を自動化できる内径測定ユニットおよび自動内径測定の制御方法を提供する。
【解決手段】内径測定部はフローティング継手部を介して支持フレームに支持されている。フローティング継手部は、内径測定部が支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、内径測定部が支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有する。ロボットアーム部によって内径測定部の測定ヘッド部が穴に挿入される。測定子が穴の内壁を押すときの反力によって内径測定部は自律的に位置および姿勢を調整し、内径測定部の軸線と穴の軸線とが一致する。電動内径測定ユニット(電動内径測定器、ロボットアーム部)によって穴の内径を自動的に測定することができる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒ケース部の筒軸に直交する方向に進退する測定子と、
前記測定子を進退させる電動駆動部と、
前記測定子の変位を検出する変位検出部と、を有する内径測定部と、
前記内径測定部を測定対象物に対して相対移動させて、前記内径測定部を測定対象穴に出し入れさせる移動手段と、
前記内径測定部および移動手段の動作を制御する制御ユニットと、を備える自動内径測定装置の制御方法であって、
前記移動手段によって前記内径測定部を測定対象穴に挿入する穴挿入工程と、
前記穴の内壁に前記測定子を当接させて穴の内径を測定する測定工程と、
前記移動手段によって前記内径測定部を穴から抜き出す穴退避工程と、を備える
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記自動内径測定装置は、
さらに、
前記内径測定部を支持するとともに、前記移動手段に前記内径測定部を連結する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記内径測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記内径測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記穴挿入工程において前記移動手段によって前記内径測定部が測定対象穴に挿入されたあと、前記移動手段の駆動は一旦停止し、
前記測定工程は、
前記電動駆動部が前記測定子を前進させて測定対象穴の内壁に前記測定子を押し当てるとき、前記測定対象穴の内壁から前記内径測定器に掛かる反力によって、前記内径測定部は前記支持フレーム部に対する相対変位をおこしつつ、前記筒ケース部の筒軸と前記測定対象穴の軸線とが一致するように前記内径測定部が自律的に自己の位置および姿勢を調整する自律調整工程を含む
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記自動内径測定装置は、
さらに、前記内径測定部を筒軸に交差する方向から挟む拘束手段を備え、
前記拘束手段は、
前記内径測定部を挟んで拘束するホールド工程と、
前記内径測定部の拘束を解除するリリース工程と、を実行して、
前記内径測定部のホールド状態とリリース状態とを切り替えるものであって、
前記穴挿入工程および前記穴退避工程の実行中は、前記拘束手段は前記内径測定部をホールド状態とし、
前記測定工程において、前記自律調整工程の前に前記拘束手段が前記リリース工程を実行して、前記内径測定部の拘束を解除する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記制御ユニットは前記電動駆動部を制御する駆動制御部を有し、
前記測定工程において、前記駆動制御部が、
前記測定子が測定対象穴の内壁に最初に接触するまで前進させる第一前進工程と、
前記第一前進工程の後、前記測定子をわずかに逆方向に後退させる後退工程と、
前記後退工程の後、再び前記測定子を前進させて前記自律調整工程が実行されるようにする第二前進工程と、を実行する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記リリース工程を、前記第一前進工程の前に実行する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記リリース工程を、前記第一前進工程の後に実行する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記測定対象穴の内壁から前記測定子に掛かる反力の上限を規制する定圧機構が前記電動駆動部から前記測定子への力の伝達経路に設けられており、
前記駆動制御部は、前記定圧機構が作動したとき、前記第二前進工程を終了する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の自動内径測定装置の制御方法において、
前記自動内径測定装置は、さらに、前記内径測定部が物体に衝突したことを検知する衝突検知部を備え、
前記衝突検知部が衝突を検知したとき、前記穴挿入工程を停止する
ことを特徴とする自動内径測定装置の制御方法。
【請求項9】
固定要素に対して進退可能に設けられた測定子と、
前記測定子を進退させる電動駆動部と、
前記測定子の変位を検出する変位検出部と、を有する測定部と、
前記測定部を測定対象物に対して相対移動させて、前記測定部を測定対象物に接近あるいは接触させる移動手段と、
前記測定部および前記移動手段の動作を制御する制御ユニットと、を備える自動測定装置の制御方法であって、
前記移動手段によって前記測定部を測定対象物に接近させるアプローチ工程と、
測定対象物に前記測定子を当接させて測定対象物の寸法を測定する測定工程と、
前記移動手段によって前記測定部を測定対象物から退避させる退避工程と、を備える
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の自動測定装置の制御方法において、
前記自動測定装置は、
さらに、
前記測定部を支持するとともに、前記移動手段に前記測定部を連結する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記アプローチ工程において前記移動手段によって前記測定部が測定対象物に接近あるいは接触したあと、前記移動手段の駆動は一旦停止し、
前記測定工程は、
前記電動駆動部が前記測定子を前進させて測定対象物に前記測定子を押し当てるとき、前記測定対象物から前記測定部に掛かる反力によって、前記測定部は前記支持フレーム部に対する相対変位をおこしつつ、前記測定部が自律的に自己の位置および姿勢を調整する自律調整工程を含む
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動内径測定装置の制御方法、および、自動測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穴の内径を測定する測定器として、ホールテスト、シリンダーゲージ、ボアマチック(登録商標)等の内径測定器が使用されている(例えば、特許文献1参照)。ただ、これら内径測定器の使用にあたっては、測定子を進退させたり、内径測定器を穴に挿入した状態である程度求心したりする作業などが必要になるので、どうしても人手による手動測定ということになる。そのため、このような内径測定器で穴の加工精度を確認するためには人手と時間がかかっていた。
【0003】
手動測定の代替手段として、生産現場において内径測定を自動化する内径測定装置としては、空気マイクロメータがある(例えば、特許文献2参照)。空気マイクロメータは、穴に差し入れて、空気を吹き出すだけであるから、現在の選択肢のなかでいうと、空気マイクロメータは、内径測定の自動化に適した測定装置であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-19783
【特許文献2】特開平8-14871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、空気マイクロメータには次のようなデメリットもある。
まず、空気マイクロメータは、その仕組み上、非常に高価なものになってしまう。また、エアコンプレッサを用意したり整備したりしなければならない。測定能力の面でも、その仕組み上、空気マイクロメータの繰り返し精度には限界があり、また、測定範囲が極めて短い(数100マイクロメートル程度)ものとなってしまう。
【0006】
手動式の測定器を用いる手動測定に共通する問題として、なるべく安価に測定を自動化したいという要求があった。
【0007】
安価で使い勝手がよく、なおかつ、測定を自動化できる測定ユニットおよび自動測定の制御方法が求められている。
例えば、安価で使い勝手がよく、なおかつ、穴径測定を自動測定できる内径測定ユニットおよび自動内径測定の制御方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内径測定ユニットは、
筒ケース部の筒軸に直交する方向に進退する測定子を有し、測定対象である穴の内部に挿入された状態で前記穴の内壁に前記測定子を当接させて穴の内径を測定する内径測定部と、
前記内径測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記内径測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記内径測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記内径測定部が前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記内径測定部が前記支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記内径測定部が傾斜する向きの変形を許容する可撓体を有し、
前記並進許容機構部は、前記内径測定部が前記筒ケース部の筒軸に交差する方向に並進することを許容する並進体を有し、
前記可撓体の一端が前記内径測定部に連結され、
前記可撓体の他端が前記並進体に連結され、
前記並進体が前記支持フレーム部に対して並進可能に支持されている
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記支持フレーム部は、支持台座部を有し、前記支持台座部は、前記内径測定部を挿通させる第一挿通孔を有し、
前記並進体は、前記内径測定部を挿通させる第二挿通孔を有し、
前記内径測定部は、前記第一挿通孔および前記第二挿通孔に挿通した状態で支持されており、
前記フローティング継手部は、
前記並進体と前記支持台座部との間において前記第一挿通孔および前記第二挿通孔の周囲に設けられ、前記並進体が前記支持台座部に対して並進することを許容するベアリングを有する
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記第一挿通孔の直径は前記第二挿通孔の直径より大きく、
前記第一挿通孔の直径は、前記内径測定部が並進することを許容できるサイズの径であり、
前記第二挿通孔の直径は、前記内径測定部の傾斜を許容できるサイズの径である
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記可撓体は、前記内径測定部と前記並進体との間において、前記内径測定部の周囲を囲むように配設された弾性体である
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記弾性体は、前記内径測定部を囲むように配設されたバネである
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
前記支持台座部の上方に前記並進体が配置され、
前記可撓体の下端が前記他端として前記並進体に連結され、
前記可撓体の上端が前記一端として前記内径測定部に連結されている
ことが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、
前記可撓体の一端が前記内径測定部に連結される位置は、前記内径測定部の重心に対応している
ことが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態では、
前記測定子を進退させる電動駆動部を備える
ことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部を筒軸に交差する方向から挟む拘束手段を備え、
前記拘束手段は、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されていないときは、前記内径測定部を挟んでホールドし、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されたとき、前記内径測定部をリリースする
ことが好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部は、前記筒軸が鉛直方向のときを基準姿勢として前記フローティング継手部を介して前記支持フレーム部に支持されている
ことが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態では、
前記支持フレーム部は、前記内径測定部を移動させる移動手段に前記内径測定部を連結する
ことが好ましい。
【0019】
本発明のフローティング継手機構部は、
支持対象物と前記支持対象物を支持する支持フレーム部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記支持対象物の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手機構部であって、
前記フローティング継手機構部は、
前記支持対象物が前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記支持対象物が前記支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記支持対象物が傾斜する向きの変形を許容する可撓体を有し、
前記並進許容機構部は、前記支持対象物が並進することを許容する並進体を有し、
前記可撓体の一端が前記支持対象物に連結され、
前記可撓体の他端が前記並進体に連結され、
前記並進体が前記支持フレーム部に対して並進可能に支持されている
ことを特徴とする。
【0020】
本発明の測定ユニットは、
測定対象物に測定子を当接させて測定対象物の寸法を測定する測定部と、
前記測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記測定部が前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記測定部が前記支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記測定部が傾斜する向きの変形を許容する可撓体を有し、
前記並進許容機構部は、前記測定部が並進することを許容する並進体を有し、
前記可撓体の一端が前記測定部に連結され、
前記可撓体の他端が前記並進体に連結され、
前記並進体が前記支持フレーム部に対して並進可能に支持されている
ことを特徴とする。
【0021】
本発明の内径測定ユニットは、
筒ケース部の筒軸に直交する方向に進退する測定子を有し、測定対象である穴の内部に挿入された状態で前記穴の内壁に前記測定子を当接させて穴の内径を測定する内径測定部と、
前記内径測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記内径測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記内径測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記内径測定部と固定的に連結されて、前記内径測定部と一体的に並進および回転する連結ブロックと、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して前記筒軸に直交する面に平行な方向に並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記連結ブロックと前記支持フレーム部との間に挟まされるように配置された球体を有し、
前記並進許容機構部は、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか一方に設けられていて、前記筒軸に直交する面に平行な方向に延在する案内軸と、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか他方に設けられていて、前記案内軸を受け入れるとともに前記案内軸が前記筒軸に直交する面に平行な方向にスライドすることを許容するガイド孔と、を備える
ことを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施形態では、
前記案内軸は、前記筒軸に直交する面内で、互いに直交する方向に二本設けられている
ことが好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態では、
前記支持フレーム部は、前記筒軸に直交する面内において前記連結ブロックを環囲する支持環部を有し、
前記支持環部には、二本の前記案内軸が設けられ、
前記連結ブロックは、二本の前記案内軸を受け入れつつ、前記連結ブロックが並進および回転することを許容するガイド孔を有する
ことが好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態では、
前記連結ブロックは、前記内径測定部の上端よりも上方側に配設されており、
前記内径測定部は、前記フローティング継手部を介して前記支持フレーム部から垂下する状態で前記支持フレーム部に支持されている
ことが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態では、
前記二本の案内軸が交わる位置は、前記内径測定部の前記筒軸の延長線上にある
ことが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態では、
前記測定子を進退させる電動駆動部を備える
ことが好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部あるいは前記連結ブロックを挟んで前記内径測定部をホールドする拘束手段を備え、
前記拘束手段は、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されていないときは、前記内径測定部をホールドし、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されたとき、前記内径測定部をリリースする
ことが好ましい。
【0028】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部は、前記筒軸が鉛直方向のときを基準姿勢として前記フローティング継手部を介して前記支持フレーム部に支持されている
ことが好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態では、
前記支持フレーム部は、前記内径測定部を移動させる移動手段に前記内径測定部を連結する
ことが好ましい。
【0030】
本発明のフローティング継手機構部は、
支持対象物と前記支持対象物を支持する支持フレーム部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記支持対象物の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手機構部であって、
前記フローティング継手機構部は、
前記支持対象物と固定的に連結されて、前記支持対象物と一体的に並進および回転する連結ブロックと、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記連結ブロックと前記支持フレーム部との間に挟まされるように配置された球体を有し、
前記並進許容機構部は、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか一方に設けられていて、並進を案内する方向に延在する案内軸と、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか他方に設けられていて、前記案内軸を受け入れるとともに前記案内軸がスライドすることを許容するガイド孔と、を備える
ことを特徴とする。
【0031】
本発明の測定ユニットは、
測定対象物に測定子を当接させて測定対象物の寸法を測定する測定部と、
前記測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記測定部と固定的に連結されて、前記測定部と一体的に並進および回転する連結ブロックと、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して回転することを許容する回転許容機構部と、
前記連結ブロックが前記支持フレーム部に対して並進する変位を許容する並進許容機構部と、を有し、
前記回転許容機構部は、前記連結ブロックと前記支持フレーム部との間に挟まされるように配置された球体を有し、
前記並進許容機構部は、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか一方に設けられていて、並進を案内する方向に延在する案内軸と、
前記連結ブロックおよび前記支持フレーム部のいずれか他方に設けられていて、前記案内軸を受け入れるとともに前記案内軸がスライドすることを許容するガイド孔と、を備える
ことを特徴とする。
【0032】
本発明の内径測定ユニットは、
筒ケース部の筒軸に直交する方向に進退する測定子を有し、測定対象である穴の内部に挿入された状態で前記穴の内壁に前記測定子を当接させて穴の内径を測定する内径測定部と、
前記内径測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記内径測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記内径測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記内径測定部と固定的に連結されて、前記内径測定部と一体的に並進および回転する第一浮動連結体と、
前記第一浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第一浮動連結体を支持する第二浮動連結体と、
前記第二浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第二浮動連結体を支持する第三浮動連結体と、を備え、
第三浮動連結体が前記支持フレーム部に固定的に取り付けられている
ことを特徴とする。
【0033】
本発明の一実施形態では、
前記第二浮動連結体は、前記筒軸に直交する面に平行である第一方向に延在する軸であって、軸方向の進退および軸回りの回転を許容する第一連結軸を介して前記第一浮動連結体を支持しており、
前記第三浮動連結体は、前記筒軸に直交する面内において前記第一方向に直交する方向に延在する軸であって、軸方向の進退および軸回りの回転を許容する第二連結軸を介して前記第二浮動連結体を支持している
ことが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態では、
前記第一浮動連結体は、前記筒軸に直交する方向で前記内径測定部の周囲を環囲するように設けられたリング形または筒形であり、
前記第二浮動連結体は、前記筒軸に直交する方向で前記第一浮動連結体の周囲を環囲するように設けられたリング形または筒形である
ことが好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態では、
前記第一連結軸を仮想的に延長した第一仮想直線と、前記第二連結軸を仮想的に延長した第二仮想直線と、が交差する位置は、前記内径測定部の重心にほぼ一致している
ことが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態では、
前記測定子を進退させる電動駆動部を備える
ことが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部を筒軸に交差する方向から挟む拘束手段を備え、
前記拘束手段は、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されていないときは、前記内径測定部を挟んでホールドし、
前記内径測定部が測定対象である孔に挿入されたとき、前記内径測定部をリリースする
ことが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態では、
前記内径測定部は、前記筒軸が鉛直方向のときを基準姿勢として前記フローティング継手部を介して前記支持フレーム部に支持されている
ことが好ましい。
【0039】
本発明のフローティング継手機構部は、
支持対象物と前記支持対象物を支持する支持フレーム部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記支持対象物の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手機構部であって、
前記フローティング継手機構部は、
前記支持対象物と固定的に連結されて、前記支持対象物と一体的に並進および回転する第一浮動連結体と、
前記第一浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第一浮動連結体を支持する第二浮動連結体と、
前記第二浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第二浮動連結体を支持する第三浮動連結体と、を備え、
第三浮動連結体が前記支持フレーム部に固定的に取り付けられている
ことを特徴とする。
【0040】
本発明の測定ユニットは、
測定対象物に測定子を当接させて測定対象物の寸法を測定する測定部と、
前記測定部を支持する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記フローティング継手部は、
前記測定部と固定的に連結されて、前記測定部と一体的に並進および回転する第一浮動連結体と、
前記第一浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第一浮動連結体を支持する第二浮動連結体と、
前記第二浮動連結体の並進および回転を許容するように前記第二浮動連結体を支持する第三浮動連結体と、を備え、
第三浮動連結体が前記支持フレーム部に固定的に取り付けられている
ことを特徴とする。
【0041】
本発明の自動内径測定装置の制御方法は、
筒ケース部の筒軸に直交する方向に進退する測定子と、
前記測定子を進退させる電動駆動部と、
前記測定子の変位を検出する変位検出部と、を有する内径測定部と、
前記内径測定部を測定対象物に対して相対移動させて、前記内径測定部を測定対象穴に出し入れさせる移動手段と、
前記内径測定部および移動手段の動作を制御する制御ユニットと、を備える自動内径測定装置の制御方法であって、
前記移動手段によって前記内径測定部を測定対象穴に挿入する穴挿入工程と、
前記穴の内壁に前記測定子を当接させて穴の内径を測定する測定工程と、
前記移動手段によって前記内径測定部を穴から抜き出す穴退避工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0042】
本発明の一実施形態では、
前記自動内径測定装置は、
さらに、
前記内径測定部を支持するとともに、前記移動手段に前記内径測定部を連結する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記内径測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記内径測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記穴挿入工程において前記移動手段によって前記内径測定部が測定対象穴に挿入されたあと、前記移動手段の駆動は一旦停止し、
前記測定工程は、
前記電動駆動部が前記測定子を前進させて測定対象穴の内壁に前記測定子を押し当てるとき、前記測定対象穴の内壁から前記内径測定器に掛かる反力によって、前記内径測定部は前記支持フレーム部に対する相対変位をおこしつつ、前記筒ケース部の筒軸と前記測定対象穴の軸線とが一致するように前記内径測定部が自律的に自己の位置および姿勢を調整する自律調整工程を含む
ことが好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態では、
前記自動内径測定装置は、
さらに、前記内径測定部を筒軸に交差する方向から挟む拘束手段を備え、
前記拘束手段は、
前記内径測定部を挟んで拘束するホールド工程と、
前記内径測定部の拘束を解除するリリース工程と、を実行して、
前記内径測定部のホールド状態とリリース状態とを切り替えるものであって、
前記穴挿入工程および前記穴退避工程の実行中は、前記拘束手段は前記内径測定部をホールド状態とし、
前記測定工程において、前記自律調整工程の前に前記拘束手段が前記リリース工程を実行して、前記内径測定部の拘束を解除する
ことが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態では、
前記制御ユニットは前記電動駆動部を制御する駆動制御部を有し、
前記測定工程において、前記駆動制御部が、
前記測定子が測定対象穴の内壁に最初に接触するまで前進させる第一前進工程と、
前記第一前進工程の後、前記測定子をわずかに逆方向に後退させる後退工程と、
前記後退工程の後、再び前記測定子を前進させて前記自律調整工程が実行されるようにする第二前進工程と、を実行する
ことが好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態では、
前記リリース工程を、前記第一前進工程の前に実行する
ことが好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態では、
前記リリース工程を、前記第一前進工程の後に実行する
ことが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態では、
前記測定対象穴の内壁から前記測定子に掛かる反力の上限を規制する定圧機構が前記電動駆動部から前記測定子への力の伝達経路に設けられており、
前記駆動制御部は、前記定圧機構が作動したとき、前記第二前進工程を終了する
ことが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態では、
前記自動内径測定装置は、さらに、前記内径測定部が物体に衝突したことを検知する衝突検知部を備え、
前記衝突検知部が衝突を検知したとき、前記穴挿入工程を停止する
ことが好ましい。
【0049】
本発明の自動測定装置の制御方法は、
固定要素に対して進退可能に設けられた測定子と、
前記測定子を進退させる電動駆動部と、
前記測定子の変位を検出する変位検出部と、を有する測定部と、
前記測定部を測定対象物に対して相対移動させて、前記測定部を測定対象物に接近あるいは接触させる移動手段と、
前記測定部および前記移動手段の動作を制御する制御ユニットと、を備える自動測定装置の制御方法であって、
前記移動手段によって前記測定部を測定対象物に接近させるアプローチ工程と、
測定対象物に前記測定子を当接させて測定対象物の寸法を測定する測定工程と、
前記移動手段によって前記測定部を測定対象物から退避させる退避工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0050】
本発明の一実施形態では、
前記自動測定装置は、
さらに、
前記測定部を支持するとともに、前記移動手段に前記測定部を連結する支持フレーム部と、
前記支持フレーム部と前記測定部との間に介装されて、前記支持フレーム部に対する前記測定部の相対的な並進および回転を許容するフローティング継手部と、を備え、
前記アプローチ工程において前記移動手段によって前記測定部が測定対象物に接近あるいは接触したあと、前記移動手段の駆動は一旦停止し、
前記測定工程は、
前記電動駆動部が前記測定子を前進させて測定対象物に前記測定子を押し当てるとき、前記測定対象物から前記測定部に掛かる反力によって、前記測定部は前記支持フレーム部に対する相対変位をおこしつつ、前記測定部が自律的に自己の位置および姿勢を調整する自律調整工程を含む
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】電動内径測定ユニットをやや前方側からみた外観斜視図である。
【
図3】電動内径測定ユニットの側面側をやや後方からみた外観斜視図である。
【
図5】電動内径測定器の内部構造を示すための断面図である。
【
図6】第一実施形態において、フローティング継手部の分解図である。
【
図7】第一実施形態において、フローティング継手部の断面図である。
【
図8】第一実施形態において、フローティング継手部による電動内径測定器の位置および姿勢の調整機能を説明するための図である。
【
図9】第一実施形態において、フローティング継手部による電動内径測定器の位置および姿勢の調整機能を説明するための図である。
【
図10】第一実施形態において、フローティング継手部による電動内径測定器の位置および姿勢の調整機能を説明するための図である。
【
図11】第一実施形態において、フローティング継手部による電動内径測定器の位置および姿勢の調整機能を説明するための図である。
【
図12】第一実施形態において、フローティング継手部による電動内径測定器の位置および姿勢の調整機能を説明するための図である。
【
図14】衝突検知部をやや背面側からみた斜視図である。
【
図16】自動内径測定の全体動作のフローチャートである。
【
図17】穴挿入工程(ST100)の動作手順を示すフローチャートである。
【
図18】測定工程(ST200)の動作手順を示すフローチャートである。
【
図19】穴退避工程(ST300)の動作手順を示すフローチャートである。
【
図20】第二実施形態における測定工程の動作手順を示すフローチャートである。
【
図21】第三実施形態における測定工程の動作手順を示すフローチャートである。
【
図22】第四実施形態において、電動内径測定ユニットの正面図である。
【
図23】第四実施形態において、フローティング継手部の上面図(平面図)である。
【
図25】第四実施形態において、連結ブロックが支持フレーム部(支持台座部)に対して回転変位した状態の斜視図である。
【
図26】第四実施形態において、連結ブロックが支持フレーム部(支持台座部)に対して回転変位した状態における断面図である。
【
図27】第四実施形態において、連結ブロックが水平方向に並進した状態の上面図(平面図)である。
【
図28】第五実施形態において、電動内径測定ユニットの斜視図である。
【
図29】第五実施形態において、電動内径測定ユニットの上面図(平面図)である。
【
図30】第五実施形態において、第一浮動連結カップがX軸回りに回転した状態を例示した図である。
【
図31】第五実施形態において、第一浮動連結カップが水平面内で並進した状態を例示した図である。
【
図33】第六実施形態において、フローティング継手部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態は、測定対象である穴の内径(穴径)の測定を自動化する自動内径測定装置100である。
【0053】
(自動内径測定装置)
図1は、自動内径測定装置100の全体的な外観図である。
自動内径測定装置100は、測定装置本体部110と、全体動作を制御する制御ユニット部140と、を備える。
【0054】
(測定装置本体部110)
測定装置本体部110は、対象の穴径を測定する電動内径測定ユニット120と、電動内径測定ユニット120を移動させる移動手段としての多関節ロボットアーム部(ロボットアーム部)130と、を備える。
【0055】
(電動内径測定ユニット120)
電動内径測定ユニット120は、ロボットアーム部130の先端であるハンド部131に取り付けられて保持される。電動内径測定ユニット120は、測定対象である穴の内側に挿入されて内径の測定値を得るものである。さらに、電動内径測定ユニット120は、測定対象である穴を正確に測定するように自律的に自己の位置および姿勢を自律調整する機能を含んでいる。
【0056】
電動内径測定ユニット120の構成を説明する。
図2は、電動内径測定ユニット120をやや前方側からみた外観斜視図である。
図3は、電動内径測定ユニット120の側面側をやや後方からみた外観斜視図である。
図4は、電動内径測定ユニット120の正面図である。
【0057】
電動内径測定ユニット120は、電動内径測定器(支持対象物)200と、支持フレーム部300と、フローティング継手部(フローティング継手機構部)400と、拘束手段500と、衝突検知部600と、力覚センサ部132と、を備える。
【0058】
(電動内径測定器200)
電動内径測定器200は、既存の手動式の内径測定器(例えばホールテスト)のロッド送りを電動化したものである。
図5は、電動内径測定器200の内部構造を示すための断面図である。
電動内径測定器200は、筒ケース部(固定要素)210と、ロッド230と、シンブル部240と、測定子(可動要素)250と、変位検出部260と、外ケース部270と、表示ユニット部233と、電動駆動部280と、を備える。
【0059】
筒ケース部210は、全体として筒状のケースである。
筒ケース部210の内部をロッド230が軸方向に進退する。
筒ケース部210は、上部パートを構成する上筒ケース部211と、中間パートを構成する中間筒ケース部213と、下部パートを構成する下筒ケース部214と、さらに、測定ヘッド部220を構成するヘッド筒部215と、を有する。
上筒ケース部211の下端に中間筒ケース部213が取り付けられ、中間筒ケース部213の下端に下筒ケース部214が取り付けられ、下筒ケース部214の下端にヘッド筒部215が取り付けられている。
【0060】
ロッド230は、全体としては、長手の棒状体である。ロッド230は、上段ロッド231と、下段ロッド233と、を有する。上段ロッド231は、スピンドルであって、その基端側(上端側)の外側面に送りねじ(雄ネジ)232を有する。上筒ケース部211に雌ネジ212が切られており、前記送りねじ232が前記雌ネジ212に螺合している。
【0061】
シンブル部240は、上段ロッド231の基端(上端側)に設けられている。
シンブル部240は、シンブルスリーブ241と、ラチェットスリーブ242と、コイルバネ243と、を有する。
シンブルスリーブ241は、テーパ面の嵌め合いにより上段ロッド231(ロッド230)の基端に外嵌して、上段ロッド231(ロッド230)の基端に固着されている。
ラチェットスリーブ242は、シンブルスリーブ241のさらに上側に設けられた筒体であり、シンブルスリーブ241とラチェットスリーブ242との間にはコイルバネ243が介装されている。上段ロッド231の基端側の端面に押しネジが螺合され、押しネジの頭部の鍔によってラチェットスリーブ242が押される。このとき、ラチェットスリーブ242とシンブルスリーブ241との間でコイルバネ243が挟まれる。
【0062】
また、ラチェットスリーブ242とシンブルスリーブ241との間にはラチェット機構(不図示)が設けられている。いま、ロッド230を下方に送る方向(測定子250を突き出す方向)のラチェットスリーブ242、シンブルスリーブ241あるいはロッド230の回転方向を正の回転方向とする。それとは反対に、ロッド230を上方に送る方向(測定子250が没入する方向)のラチェットスリーブ242、シンブルスリーブ241あるいはロッド230の回転方向を負の回転方向とする。ラチェット機構は、正方向の回転においてラチェットスリーブ242のシンブルスリーブ241に対する空転を許容し、ラチェットスリーブ242が負の方向に回転するときには空転を許容しない。
【0063】
ラチェットスリーブ242が(正の)回転操作を受けたとき、ラチェットスリーブ242の回転は、コイルバネ243およびシンブルスリーブ241を介してロッド230に伝わる。
ラチェットスリーブ242からロッド230に伝わる力(回転力)には上限がある。すなわち、ラチェットスリーブ242、コイルバネ(負荷規制弾性体)243およびシンブルスリーブ241の間に働く摩擦力(静止摩擦力)を越える力でロッド230を回転させようとすると、ラチェット機構によりラチェットスリーブ242がシンブルスリーブ241に対して空転する。このシンブル部240により、測定対象物と測定子250との間に働く力(測定力)の上限を規制する定圧機構が構成される。逆にいうと、測定対象物と測定子250との間には押しネジの押し込み量で規定できる所定の力(測定力)は発生するのであり、測定子250が所定の力(測定力)を測定対象物に掛けるとき、その反力が測定子250の側、すなわち、電動内径測定器200の側に掛かることになる。
【0064】
下段ロッド233は、ヘッド筒部215の内部に配設されている。
下段ロッド233の上端は、上段ロッド231の下端に当接している。下段ロッド233の下端側は、円錐形になっている。
【0065】
測定子250は、ヘッド筒部215において、ロッド230の軸線方向に直交する方向に進退するように設けられている。
測定子250は、ヘッド筒部215において120°間隔で三つ配設されている。各測定子250は、その外端に超硬で形成された細い丸軸状の丸軸チップ252を有する。各測定子250が突出方向に前進したとき、丸軸チップ252が測定対象の内壁に当接する。
【0066】
各測定子250の内端側にはテーパ面251が形成されており、このテーパ面251は下段ロッド233の円錐面に当接するようになっている。下段ロッド233の円錐面と測定子250のテーパ面251とにより、力および変位の方向を直角に方向転換させる変位方向変換手段となっている。
【0067】
ヘッド筒部215の内部には各測定子250に対応したバネ216(例えば板バネ)が設けられており、各板バネ216の一端はヘッド筒部215の内壁に固定され、各板バネ216の他端は各測定子250に固定されている。
板バネ216により、各測定子250はヘッド筒部215の内側に没入する方向に付勢されている。ロッド230が外力で上方に引き上げられると、板バネ216の力によって測定子250はロッド230に追随してヘッド筒部215に入る方向に移動する。
【0068】
なお、測定子250が出没するヘッド筒部215の部分(内径測定器の先端部分)を測定ヘッド部220と称することがある。
【0069】
変位検出部260は、中間筒ケース部213の内部において上段ロッド231の変位を検出するように設けられている。
変位検出部260は、上段ロッド231と一体回転するように設けられたロータ261と、ロータ261の回転をカウントするステータ262と、信号処理演算部(不図示)と、を有する、いわゆるロータリーエンコーダである。変位検出部260の検出方式は特段限定されず、例えば、光電式エンコーダ、静電容量式エンコーダ、電磁誘導式エンコーダ、磁気式エンコーダなどが例として挙げられる。
【0070】
外ケース部270は、筒ケース部210のさらに外側を覆う外筒部である。外ケース部270は、下筒ケース部214の途中より上側の電動内径測定器200を覆うように設けられている。外ケース部270は、二つのパートからなっていて、すなわち、中間パートを内部に収容する外ケース本体部271と、上部パートを内部に収容する外ケース上部パート272と、を有する。外ケース本体部271は、電動内径測定器200の中間部に相当する中間筒ケース部213の全体に加えて、下筒ケース部214の上端側、および、上筒ケース部211の下端側を覆う筒体である。
【0071】
外ケース上部パート272は、外ケース本体部271の上端側に接続され、電動内径測定器200の上部パートを構成する上筒ケース部211を覆う筒体である。
【0072】
表示ユニット部233は表示部234を有し、中間筒ケース部213および外ケース本体部271の側面の開口部に取り付けられて、前記開口部を閉塞する。表示部234は、表示ユニット部233の中央領域にはめ込まれたデジタル表示式の表示部234(例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネル)である。表示部234には、信号処理演算部(不図示)で求められた測定値などが表示される。
【0073】
さらに、表示ユニット部233にコネクタが設けられ、信号処理演算部(不図示)で求められた測定値は外部出力される。
【0074】
電動駆動部280は、シンブル部240のラチェットスリーブ242を回転させる駆動部である。電動駆動部280は、外ケース上部パート272の上方に取り付けられている。電動駆動部280は、例えば、モータであり、モータの回転出力が動力伝達機構(歯車列や連結ベルト、連結軸、連結リンクなど)を介してラチェットスリーブ242に伝達される。
【0075】
電動内径測定器200は、電動駆動部280でロッド送りをする点を除けば、既存の手動式内径測定器の動作と基本的には同じである。
電動力でロッド230が進退すると、下段ロッド233の動きに応じて測定子250がヘッド筒部215から出没する方向に進退する。三つの測定子250が測定対象穴の内壁に均等に接触したときのロッド230の変位(位置)を検出することにより、測定対象穴の穴径が測定値として得られる。
【0076】
(支持フレーム部300)
支持フレーム部300は、側方視でL字形の部材であり、
支持支柱部310と、支持台座部320と、を有する。鉛直方向の支持支柱部310の下端に直角に支持台座部320が取り付けられている。
【0077】
支持支柱部310は、電動内径測定器200に隣接して平行にある。支持支柱部310のおもて面側に拘束手段500が設けられていて、拘束手段500は電動内径測定器200のホールドとリリースを切り替える。この点は後述する。
【0078】
支持台座部320は、支持支柱部310の下端から電動内径測定器200の側に向けてL字に折れるように設けられている。
支持台座部320は電動内径測定器200のヘッド筒部215を挿通させる第一挿通孔321を有する。電動内径測定器200は、ヘッド筒部215が第一挿通孔321を通った状態で、下筒ケース部214より上側の部分がフローティング継手部400を介して支持台座部320に載せられるように取り付けられている。
【0079】
(フローティング継手部400)
フローティング継手部400を説明する。
図6は、フローティング継手部400の分解図である。
図7は、フローティング継手部400の断面図である。
【0080】
フローティング継手部400は、電動内径測定器200が支持フレーム部300に対して回転することを許容するとともに、電動内径測定器200が支持フレーム部300に対して水平方向に並進することを許容する継手(あるいは連結機構)である。仮に電動内径測定器200と測定対象である穴とに軸ずれ(傾斜および位置ずれ)があった場合でも、フローティング継手部400の回転および並進の許容によって電動内径測定器200が自律的に自己の位置および姿勢を自律調整することを許容するものである。
【0081】
フローティング継手部400は、回転許容機構部410と、並進許容機構部420と、を有する。
【0082】
回転許容機構部410は、第一バネ受け411と、バネ(コイルバネ)412(可撓体、弾性体)と、第二バネ受け413と、を有する。第一バネ受け411および第二バネ受け413は、概略、リング状であり、リングからさらに径外方向にフランジが張り出している。
【0083】
第一バネ受け411は、
図7の断面図に表れるように、下筒ケース部214の上側寄りにおいて下筒ケース部214の外側面に外嵌し、これにより、第一バネ受け411は電動内径測定器200に固定的に取り付けられる。ここでは、外ケース本体部271の下端面と第一バネ受け411とが連続一体的となっていて、第一バネ受け411が電動内径測定器200に取り付く位置は固定的に規制されている。
【0084】
なお、一つの実施例として、第一バネ受け411の高さ(位置)が電動内径測定器200の重心の高さ(位置)に対応するように第一バネ受け411を設置するようにしてもよい。例えば、第一バネ受け411の高さ(位置)が電動内径測定器200の重心の高さ(位置)にほぼ同じになるように第一バネ受け411を設置する。あるいは、第一バネ受け411の高さ(位置)が電動内径測定器200の重心の高さ(位置)から上下に(電動内径測定器の上下方向長さの)20%以内や、15%以内や、10%以内や、5%以内、になるように第一バネ受け411を設置するようにしてもよい。
【0085】
コイルバネ412は、その内側に下筒ケース部214(電動内径測定器200)を受け入れた状態で、コイルバネ412の上端が第一バネ受け411に受けられている。そして、コイルバネ412の下端は、第二バネ受け413に受けられている。
【0086】
なお、一つの実施例として、コイルバネ412を一つとするのではなく、複数の弾性体やバネが電動内径測定器200を(等角度間隔で)囲むように配設されていてもよい。
【0087】
バネの径が大きい方が(バネと電動内径測定器の中心軸との距離が大きい方が)電動内径測定器を支えるにはよいが、バネの径が大き過ぎると(バネと電動内径測定器の中心軸との距離が大き過ぎると)内径測定器の測定圧だけでは電動内径測定器の傾きを穴の軸にならわせるように自律的に姿勢調整できないこととなる。バネの径を大きくするのであれば(バネと電動内径測定器の中心軸との距離を大きくするのであれば)バネ定数(弾性係数)を小さくするのがよい。バネの径を小さくするのであれば(バネと電動内径測定器の中心軸との距離を小さくするのであれば)バネ定数(弾性係数)をやや大きくしてもよい。また、実施形態では、弾性をもつバネとしているが、電動内径測定器の回転方向の姿勢調整を許容できるのであれば、コイルバネ412に代えて、第一バネ受け411と第二バネ受け413との間を繋ぐ部材は、弾性がない可撓性部材であってもよい。
【0088】
第二バネ受け413は並進許容機構部420に連結される。
図7の断面図に表れるように、第二バネ受け413のリング孔414は軸線方向にやや長さ(高さ)を有していて、リング孔414の径は、電動内径測定器200の傾斜を許容する程度に電動内径測定器200の筒ケース部210(下筒ケース部214)より少し大きい。なお、リング孔414は、下方に行くにしたがって、あるいは、上方に行くに従って、リング孔が径大するテーパ孔414になっていてもよい。
【0089】
並進許容機構部420は、水平プレート(並進体)421と、ボールローラ423と、を有する。
水平プレート421は、支持台座部320の上側に配設される板体である。水平プレート421は、電動内径測定器200(下筒ケース部214)を挿通させる第二挿通孔422を有する。第二挿通孔422には、上側から第二バネ受け413が嵌め込まれる。すなわち、水平プレート421の上に回転許容機構部410があり、回転許容機構部410によって電動内径測定器200が支えられている。言葉を代えると、電動内径測定器200は、回転許容機構部410を間にして、水平プレート421の上で支持されている。
【0090】
支持台座部320の上面側にボールローラ423が配置されている。ここでは、第一挿通孔321および第二挿通孔422の周囲で90度間隔で4つのボールローラ423が設置され、このボールローラ423の上に水平プレート421が載せられている。
【0091】
ボールローラ423に載った水平プレート421はほぼ摩擦無しで極めて小さい力で水平方向に移動できる。一方で、回転許容機構部410としてのコイルバネ412(弾性体)を変形させるには、弾性力に抗する力を要する。したがって、本実施形態では、電動内径測定器200に力(回転力や並進力)が作用する場合、どちらかというと、並進許容機構部420の方が優先して変位する。
【0092】
フローティング継手部400の作用による電動内径測定器200の位置および姿勢の調整動作を
図8~
図12を参照して説明する。
例えば
図8に例示するように、測定対象としての穴が設計値からズレをもって加工された結果、鉛直に開けられているはずの穴が傾斜を持っていて、かつ、設計データの位置から図中でやや右側にずれていたとする。電動内径測定ユニット120はロボットアーム部130によって穴まで運ばれ、測定ヘッド部220が穴に挿入される。仮にロボットアーム部130の駆動制御が正確だったとしても、測定対象である穴が設計値からのズレを持っているため、電動内径測定器200の軸線と測定対象穴の軸線とには位置および角度においてズレがある。
【0093】
さて、測定対象穴の内径が正確に測定されるためには、三つの測定子250のすべてが均等に測定対象穴の内壁に当接する必要がある。
まず、電動駆動部280によってロッド230が駆動されて、ロッド230が下方に進む。すると、下段ロッド233の先端(円錐)が測定子250を押し出し、三つの測定子250のうちで測定対象穴の内壁に近いものが測定対象穴の内壁に接触する。
引き続き下段ロッド233が測定子250を押し出すと、穴の内壁から測定子250の方に反力が掛かる。この反力によって電動内径測定器200が逆に押されることになる。反力は、測定子250から下段ロッド233の下端付近を押しているが、回転許容機構部410のコイルバネ412の変形よりも水平プレート421の変位が先に生じるので、
図9および
図10に例示のように、まずは水平プレート421の変位によって電動内径測定器200と測定対象穴との軸ずれが吸収される。
なお、支持台座部320の第一挿通孔321は、この電動内径測定器200の水平移動を許容できる程度の大きさの径を有している。
【0094】
図9(
図10)の時点では、電動内径測定器200と測定対象穴とでは軸の傾きがまだ不一致である。
図9(
図10)の状態から引き続き下段ロッド233が測定子250を押し出すと、測定子250の先端部(丸軸)が穴の内壁に当たり、このとき、(三つの丸軸には長さがあるから)測定対象穴の内壁から電動内径測定器200に掛かる反力は回転のモーメントを持つ。このとき、穴の内壁からの反力を受けて、
図11および
図12に例示のように、回転許容機構部410のコイルバネ412が変形し、電動内径測定器200の軸と測定対象穴の軸とが一致するように電動内径測定器200の傾きが調整される。第二バネ受け413のリング孔414により、電動内径測定器200の傾斜を許容できる。
【0095】
最終的に、三つの測定子250が所定の測定圧で測定対象穴の内壁を押すと、フローティング継手部400(回転許容機構部410、並進許容機構部420)により、電動内径測定器200は測定対象穴の径を正確に測定できるように自律的に自己の位置および姿勢を自律調整する。言い換えると、ロボットアーム部130が電動内径測定器200の測定ヘッド部220を測定対象穴に差し入れることができれば、あとは、人の手による感覚的な調整や高度なフィードバック制御を使わなくても、自動的な姿勢調整により、穴の径を正確に測定できるということである。
【0096】
(拘束手段500)
拘束手段500は、支持フレーム部300(支持支柱部310)に設けられ、電動内径測定器200をホールドして支える。拘束手段500は、例えば
図2および
図3に表れるように、電動内径測定器200を軸線に直交する方向から挟み込む二つの挟持片510を有する。ここでは、挟持片510は、外ケース本体部271を両側から挟む。挟持片510は可動式であって、拘束手段500は、電動内径測定器200のホールド状態と、ホールドを解除したリリース状態と、を切り替えることができる。
【0097】
挟持片510を開いて電動内径測定器200をリリースするとはいっても、例えば、挟持片510と電動内径測定器200との隙間を所定上限値(5mmや10mm程度)に制限しておき、制限を超えて電動内径測定器200が大きく変位(並進、傾き)するようなことは規制しておくのがよい。
【0098】
電動内径測定器200はフローティング継手部400を介して支持台座部320(支持フレーム部300)に載っている。
電動内径測定器200が自己の測定圧によって測定対象穴に合わせて自律的に姿勢調整できるためには、フローティング継手部900には柔らかさ(軟性、フレキシビリティ)が必要である。したがって、電動内径測定器200がフローティング継手部400に載っているだけでは、フローティング継手部400の剛性(軟性)にもよるが、電動内径測定器200がフラフラと揺れたり、大きく傾いたり、倒れたりする可能性がある。
電動内径測定器200が揺れたり倒れたりすることは安全性の観点から望ましくない。また、電動内径測定器200の姿勢が固定されていなければ測定ヘッド部220の位置がふらついてしまうのであり、ロボットアーム部130が電動内径測定器200の測定ヘッド部220を測定対象穴に差し入れることができなくなる。
【0099】
そこで、電動内径測定器200が測定対象穴に挿入されていないときは、拘束手段500が電動内径測定器200を挟んでホールドしておく。そして、電動内径測定器200の測定ヘッド部220が測定対象穴に挿入されたとき、拘束手段500は電動内径測定器200をリリースして、フローティング継手部400により電動内径測定器200が自律的に姿勢を変えて調整(自律調整)できるようにする。
【0100】
(衝突検知部600)
衝突検知部600は、電動内径測定器200が所定以上の力で何かに衝突したことを検知する。
図13は、衝突検知部の分解図である。
図14は、衝突検知部をやや背面側からみた斜視図である。
衝突検知部600は、支持支柱部310の背面側とロボットアーム部130のハンド部131との間に配設されている。ここでは、衝突検知部600は、電動内径測定器200が物体(例えばワーク)の上方からワークにアプローチするときに、電動内径測定器200がワークに衝突して、Z方向(上下方向)の下方から上方に突き上げられる方向に電動内径測定器200に大きな力が掛かったことを検知するものとする。すなわち、衝突検知部600の衝突検知方向は、電動内径測定器200が測定対象穴にアプローチするときの方向にほぼ平行である。
【0101】
衝突検知部600は、固定板601と、取付板602と、リニアガイド610と、付勢手段620と、接点センサ630と、を備える。
【0102】
固定板601は、ロボットのハンド部131に直接又は間接的に取り付けられて、ハンド部131に対して固定的に設けられる。ここでは、ロボットのハンド部131と衝突検知部600との間に力覚センサ部132が配設されている。したがって、衝突検知部600は、力覚センサ部132を介してロボットアーム部130のハンド部131に取り付けられている。
【0103】
取付板602は、支持支柱部310の背面に直接又は間接的に取り付けられて、支持支柱部310(支持フレーム部300)に対して固定的に設けられる。リニアガイド610は、固定板601と取付板602との間に配置され、固定板601に対する取付板602の可動方向を上下方向に案内する。リニアガイド610は、上下方向の溝を持つ溝枠体611と、溝枠体611の溝を上下方向にスライドするスライド体612と、を有する。ここでは、溝枠体611が固定板601に取り付けられ、スライド体612が取付板602に取り付けられている。
【0104】
付勢手段は、二本のコイルバネ620である。
コイルバネ620の一端は固定板601に係止され、コイルバネ620の他端は取付板602に係止されている。コイルバネ620は、固定板601に対して取付板602を引き下げる向きに取付板602を常時付勢している。すなわち、取付板602は、自重および電動内径測定器200の重さと、コイルバネ620の付勢力と、によって、固定板601に対して鉛直下向きに下がった位置が基準位置となる。
【0105】
接点センサ630は、固定板601側に配置される接触検知ブロック631と、取付板602側に設けられたボールプランジャ632と、を有する。
図14に例示のように、取付板602が固定板601に対して基準位置にあるとき、取付板602側のボールプランジャ632が接触検知ブロック631に当たっている(嵌まっている)。
【0106】
ここで、例えばワークに加工された穴の位置が設計値から大きくずれていた場合を想定する。
この状態で、ロボットアーム部130が電動内径測定器200を測定対象穴に上から差し入れようとすると、電動内径測定器200の測定ヘッド部220がワークに当たってしまう。電動内径測定器200(測定ヘッド部220)が穴からズレてワークに当たり、そのままさらに電動内径測定器200(測定ヘッド部220)がワークに押し込まれる。そして、電動内径測定器200の重力および付勢手段(コイルバネ620)の付勢力を越える力が衝突検知部600に掛かったとき、取付板602が上方にスライドし、取付板602のボールプランジャ632が接触検知ブロック631から外れる。接点センサ630は、接触検知ブロック631がボールプランジャ632の分離を検知した(あるいはボールプランジャ632の接触を検知できなくなった)とき、信号(衝突検知信号)を発する。
【0107】
電動内径測定器200が何かに衝突したことを衝突検知部600によって検知された場合、制御ユニット部140は直ちにロボットアーム部130の動作を停止する。
【0108】
(力覚センサ部132)
力覚センサ部132は、例えば6軸(直交3軸方向の力と軸回りの回転力)の力センサである。衝突検知部600は、上下方向(Z方向)の下から押し上げられる力を検知するのに特化したものであったが、力覚センサ部132は電動内径測定器200に掛かる力を全方向において検出するものである。
【0109】
多関節ロボットアーム部130は、いわゆる、ロボットアームであり、鉛直方向の回転駆動軸や水平方向の回転駆動軸でロボットアーム部130の先端であるハンド部131を三次元的に移動させる。ロボットアーム部130のハンド部131は、力覚センサ部132および衝突検知部600を介して支持フレーム部300と連結されている。力覚センサ部132は、衝突検知部600が衝突を検知しない方向(すなわち上下方向(Z方向)以外の方向)においても、電動内径測定器200が予期しない所定以上の力でものに衝突したことを検知する。力覚センサ部132が電動内径測定器200の予期しない衝突を検知した場合、制御ユニット部140は直ちにロボットアーム部130の動作を停止する。これにより、さらなる安全性の確保が可能となる。
【0110】
(制御ユニット部140)
図15は、制御ユニット部140の機能ブロック図である。
制御ユニット部140は、測定動作制御部150と、ロボットアーム駆動制御部160と、中央制御部170と、を備える。
【0111】
測定動作制御部150は、電動内径測定器200の測定動作を制御する。
測定動作制御部150は、拘束制御部151と、駆動制御部152と、測定値取得部153と、を備える。
【0112】
拘束制御部151は、拘束手段500の挟持片510の開閉動作を制御するものであり、電動内径測定器200のホールドとリリースのタイミングを制御する。
駆動制御部152は、電動駆動部280の駆動を制御するものであり、ロッド230の進退、すなわち、測定値の進退を制御する。
測定値取得部153は、電動内径測定器200の測定値を得る。すなわち、測定値取得部153は、変位検出部260のセンサ値を受信し、ロッド230の変位(位置)から測定対象穴の内径の測定値を得る。
【0113】
ロボットアーム駆動制御部160は、ロボットアーム部130の動作を制御する。
中央制御部170は、測定動作制御部150とロボットアーム駆動制御部160とを統合的に制御する。
【0114】
(自動内径測定装置100の制御動作)
制御ユニット部140による制御によって測定装置本体部110(電動内径測定ユニット120、ロボットアーム部130)が測定対象穴の内径を自動的に測定する一連の動作を説明する。
図16は、自動内径測定の全体動作(自動内径測定動作)のフローチャートである。
測定対象である穴(測定対象穴)を有するワーク(測定対象物)が製造ラインのコンベアベルトやレールによって搬送されてきて、測定装置本体部110(電動内径測定ユニット120、ロボットアーム部130)の正面の所定位置に運ばれてくる。
自動内径測定装置100は、運ばれてくるワーク(測定対象物)のなかで測定対象として指定(設定)されている測定対象穴に対し順に自動的に内径測定を実施していく。ワーク(測定対象物)のなかの測定対象穴の位置(座標)は、中央制御部170のなかの測定パートプログラムの一部として設定(記憶)されているとする。あるいは、別途カメラ等の画像認識によって測定対象の穴を探索しながら、順に自動的に内径測定を実施していくとしてもよい。
【0115】
第1実施形態としては、測定対象穴は鉛直方向で上の面が開口するように開けられた穴であって、電動内径測定器200は縦向きの姿勢をほぼ保ちながら穴の上から穴に差し入れられる場合を想定する。
【0116】
自動内径測定動作は、穴挿入工程(アプローチ工程)(ST100)と、測定工程(ST200)と、穴退避工程(退避工程)(ST300)と、を備える。
【0117】
穴挿入工程(ST100)は、ロボットアーム部130によって電動内径測定ユニット120を移動させ、電動内径測定器200の測定ヘッド部220を測定対象穴に挿入(言い換えると、ワークの上方からワークにアプローチ)する工程である。
【0118】
図17は、穴挿入工程(ST100)の動作手順を示すフローチャートである。
穴挿入工程(ST100)では、まず、ロボットアーム部130による電動内径測定器200の移動先(目標座標)を測定対象穴に設定する(ST110)。
続いて、電動内径測定器200が拘束手段500によって拘束されているかを確認する(ST120)。
本実施形態では、拘束手段500が電動内径測定器200を拘束(ホールド)した状態をデフォルト状態(標準状態、基準状態と言い換えてもよい)としている。ただし、メンテナンスや電動内径測定器200の交換をした場合には拘束手段500のホールドが解除されていることもあるので、ホールド状態を確認し、ホールドがされていない場合は(ST120:NO)、拘束制御部151から信号を送って拘束手段500によるホールド工程(ST130)を行う。ロボットアーム部130によって電動内径測定ユニット120を動かす際に電動内径測定器200を拘束(ホールド)しておくことにより、ロボットアーム部130で電動内径測定器200を安定して安全に移動させることができる。
【0119】
ロボットアーム部130の駆動を開始し(ST140)、電動内径測定ユニット120を移動させ、電動内径測定器200の測定へッド部220を測定対象穴に挿入する。
【0120】
このとき、例えば、測定対象穴の加工位置が設計値からずれていたような場合、電動内径測定器200(測定ヘッド部220)が予期せずワークに衝突をすることが有り得る。
この点、ロボットアーム駆動制御部160は、衝突検知部600および力覚センサ部132からの信号をモニタしている(ST150)。そして、電動内径測定器200(測定ヘッド部200)とワークとの衝突が検知された場合には(ST150:YES)、すぐにロボットアーム部130の駆動を停止(緊急停止)する(ST180)。このあと、中央制御部170からオペレータに異常報告がなされるようにしてもよい。
【0121】
電動内径測定器200の測定ヘッド部220が測定対象穴に挿入され、目標座標に達したら、ロボットアーム部130の駆動は一旦停止となる(ST170)。
【0122】
次に測定工程(ST200)に移行する。
図18は、測定工程(ST200)の動作手順を示すフローチャートである。
測定工程(ST200)では、最初に、拘束手段500によるホールドを解除して(ST211)、電動内径測定器200をリリース状態にする。これにより電動内径測定器200がフローティング継手部400を介して支持フレーム部300に支持された状態になるので、電動内径測定器200の自律的な位置・姿勢の調整が可能になる。
【0123】
そして、駆動制御部152から駆動信号を送って電動駆動部280を駆動させる。
まずは、第一前進工程(ST220)を行う。第一前進工程(ST220)は、測定子250が測定対象穴の内壁に最初に接触するまで前進させる工程である。電動駆動部280(例えばモータ)を駆動してロッド230を前進(ここでは下方に移動)させ、測定子250を穴の内壁に向けて前進させる。第一前進工程(ST220)では、測定効率を向上させるため、高速にモータを駆動してロッド230および測定子250をできるだけ速く移動させるのがよい。(例えばロッド230がネジ送りとして、ロッド230の回転速さを100rpm-200rpmとする。ロッド230あるいは測定子250の進む速さでいうと、10μm/s-20μm/sとしてもよい。)
【0124】
測定子250が穴の内壁に向けて前進すると、測定子250が穴の内壁に接触する。
ここで、本実施形態では、測定子250は三つある。もし、電動内径測定器200の軸線と測定対象穴の軸線とが完全に一致していれば、三つの測定子250は同時に穴の内壁に接触できるが、ロボットアーム部130の駆動誤差とワークの加工誤差とがあるので、電動内径測定器200の軸線と測定対象穴の軸線とにはズレがある。この場合、三つの測定子250のうちのどれか一つが最初に穴の内壁に接触することになる。測定子250のうちのどれか一つが穴の内壁に接触した場合(ST213:YES)、第一前進工程(ST212)を即座に停止して、第一後退工程(ST214)に移行する。測定子250が穴の内壁に接触したことは、例えば、モータの印加電流(印加電圧)からモータトルクを求め、トルクが所定値を越えたら測定子250(の一つ)が穴の内壁に接触したとしてもよい。
【0125】
第一後退工程(ST214)では、ロッド230および測定子250をわずかに逆方向に後退させる。これにより、第一前進工程(ST212)で測定子250が穴の内壁に接触した後、その勢いで測定子250が穴の内壁に食い込むのを回避する。
第一後退工程(ST214)で測定子250を後退させる距離は極僅か、例えば0.001mm-0.01mmでよい。
【0126】
第一後退工程(ST214)における測定子250の後退の速さはできる限り速くしてもよい。例えばロッド230がネジ送りとして、ロッド230の回転速さを100rpm-200rpmとする。ロッド230あるいは測定子250の進む速さでいうと、10μm/s-20μm/sとしてもよい。
【0127】
第一後退工程(ST214)で測定子250をわずかに戻した後、第二前進工程(ST215)によって測定子250を再び前進させる。第二前進工程(ST215)ではゆっくりと(低速、微動で)測定子250を前進させる。
【0128】
第二前進工程(ST215)における測定子250の送り速さは、低速(微動)であることが好ましい。例えばロッド230がネジ送りとして、ロッド230の回転速さを10rpm-20rpmとする。ロッド230あるいは測定子250の進む速さでいうと、1μm/s-2μm/sとしてもよい。
【0129】
測定子250が穴の内壁を押すときの反力によって電動内径測定器200の位置および傾きが自律調整される。フローティング継手部400の並進および回転許容によって電動内径測定器200の位置および傾きが自律調整される作用は前述の通りである。
【0130】
三つの測定子250が均等に所定の測定圧で穴の内壁に接触したとき、電動内径測定器200の位置および傾きの自律調整が完了する。三つの測定子250が所定測定圧で穴の内壁に接触したとき、ラチェット機構(定圧機構)が作動する。すなわち、ラチェット機構(定圧機構)が作動するまで電動駆動部280がシンブル部240(ラチェットスリーブ242)を回転駆動することにより、測定子250が穴の内壁に所定測定圧で均等に当たった状態となる。
【0131】
第二前進工程(ST215)を自律調整工程と言い換えてもよい。
【0132】
この状態で変位検出部260がロッド230の変位(位置)を検出する。測定値取得部153は、ロッド230の変位(位置)から穴の内径を得る(ST216)。
【0133】
測定値を取得した後、第二後退工程(ST217)において測定子250を後退させて、測定子250を穴の内壁から離間させる。
【0134】
測定工程(ST200)の後、穴退避工程(ST300)において、電動内径測定器200を測定対象穴から抜き出す。
図19は、穴退避工程(ST300)の動作手順を示すフローチャートである。穴退避工程(ST300)では、まず拘束手段500で電動内径測定器200を拘束(ホールド)し(ST320)、続いて、ロボットアーム部130で電動内径測定ユニット120を穴から退避するように移動させる(ST330)。
【0135】
これで一つの穴の内径の測定が終了した。全ての測定対象穴の測定が完了する(ST400)まで、ST100-ST300を繰り返す。
【0136】
このように本実施形態によれば、人の手で内径測定器を持って操作する必要がなくなり、電動内径測定ユニット(電動内径測定器200、ロボットアーム部130)によって穴の内径を自動的に測定することができる。
【0137】
(第二実施形態)
上記第一実施形態では、測定対象穴が鉛直方向にあけられている場合を想定した。
第二実施形態として、測定対象穴が鉛直方向から傾斜している場合にも自動内径測定装置100によって自動内径測定する場合を説明する。
図20は、第二実施形態における測定工程の動作手順を示すフローチャートである。
【0138】
測定対象穴が鉛直方向に対して傾斜しているので、ロボットアーム部130で電動内径測定器200を穴に挿入する穴挿入工程(ST100)では、穴の傾斜に合わせて電動内径測定器200を傾斜させた状態で穴に挿入することになる。すると、電動内径測定器200が傾斜しているため、拘束手段500による電動内径測定器200のホールドを解除してしまうと、フローティング継手部400の柔軟性により電動内径測定器200は大きく変位(並進および傾斜)してしまう可能性がある。
電動内径測定器200が大きく変位(並進および傾斜)してしまうと、測定ヘッド部220が穴の内壁に衝突する可能性もある。また、電動内径測定器200が重力の向きに一旦大きく変位(並進および傾斜)してしまうと、その変位(並進および傾斜)を測定圧の反力だけで自律的に立て直すには時間が掛かるし、困難な場合も有り得る。
【0139】
そこで、第二実施形態では、測定工程において、リリース工程(ST224)の前に、第一前進工程(ST221)を実行する。すなわち、第一前進工程(ST221)を実行し、測定子250(のうちの一つ)が穴の内壁に接触したことを検知したら(ST222:YES)、測定子250をわずかに戻す(第一後退工程(ST223))。この状態でリリース工程(ST224)を行う。
【0140】
第一前進工程(ST221)を先に実行しておくことで、測定子250と穴の内壁とを接触させておく。測定子250のうちの少なくとも一つと穴の内壁とが接触しているので、拘束手段500のホールドがなくなっても電動内径測定器200は大きく変位(並進および傾斜)することはないと期待できる。これにより、傾斜した測定対象穴に対しても自動内径測定を適切に行うことができる。
【0141】
(第三実施形態)
第二実施形態(
図20のフローチャート)では、リリース工程(ST224)を第一後退工程(ST223)の後に実行するとしたが、リリース工程(ST224)を第一後退工程(ST223)の前に実行するとしてもよい。
図21のフローチャートに例示するように、第一前進工程(ST231)で測定子250が穴の内壁に接触したことを検知したら(ST232:YES)、測定子250の前進を即座に停止する。
この状態でリリース工程(ST233)を行う。そして、測定子250を一旦後退させた後(第一後退工程(ST234))、再び測定子250を前進させて、電動内径測定器200の位置および姿勢の自律調整が働くようにしつつ、測定子250が所定の測定圧で穴の内壁に均等に接触するようにする。この動作順序でも、第二実施形態と同じく、傾斜した測定対象穴に対して自動内径測定を適切に行うことができる。
【0142】
(第四実施形態)
第四実施形態を説明する。
第四実施形態の基本的な構成は第一実施形態と同様であるが、フローティング継手部(フローティング継手機構部)800の構造に特徴を有する。
図22は、第四実施形態において、電動内径測定ユニット120の正面図である。
図23は、第四実施形態において、フローティング継手部800の上面図(平面図)である。
図24は、
図23中のXXIV-XXIV線断面図である。
【0143】
第四実施形態においては、電動内径測定器200は、その軸線(筒軸あるいはロッド軸)が鉛直方向になる姿勢で支持フレーム部300からフローティング継手部800を介して吊り下げられたように支持されている。
第四実施形態において支持フレーム部300は、第一実施形態と同じく、側方視でL字形の部材であり、支持支柱部310と、支持台座部710と、を有する。
【0144】
ここで、支持台座部710は、鉛直方向の孔(筒状の孔)を形成するように、水平方向に直交する壁を有する環状である。
環状の壁は、フローティング継手部800を囲んで支持するものなので、環状の壁を支持環部720と称することにする。支持環部720の下方側の面には、前後方向と左右方向に架け渡され、十字に交差する二本の梁721が設けられている。
図24の断面図に表れるように、梁721の交差部には凹部722が設けられている。
【0145】
第四実施形態のフローティング継手部800は、連結ブロック810を有する。
連結ブロック810は、電動内径測定器200と固定的に連結され、連結ブロック810は電動内径測定器200と一体的に並進および回転する。
連結ブロック810は、支持環部720の内側で、梁721の上で支持環部720の壁に囲まれるように配置されている。連結ブロック810は、四角柱形状(立方体、直方体)である。連結ブロック810の下端面の四隅から四本の吊下棒811が垂下し、吊下棒811が電動内径測定器200の上端に連結されている。すなわち、電動内径測定器200は吊下棒811を介して連結ブロック810から吊り下げられている。
【0146】
フローティング継手部800の回転許容機構部として、球体820が連結ブロック810と支持台座部710との間に挟まれた状態で配設されている。
支持台座部710の凹部722に球体820が配置され、この球体820の上に連結ブロック810が載っている。
球体820に連結ブロック810が載ることによって連結ブロック810の回転が許容される。
図25は、連結ブロック810が支持フレーム部300(支持台座部710)に対して回転変位した状態の斜視図である。
図26は、連結ブロック810が支持フレーム部300(支持台座部710)に対して回転変位した状態における断面図である。
【0147】
なお、連結ブロック810の底面には高台(輪状で凸状の縁)を設け、連結ブロック810が球体820から外れないようになっている。また、連結ブロック810の回転を許容するだけであれば、球体に代えてピンでもよいが、ここでは、連結ブロック810の並進を阻害しないため球体820とすることが好ましい。
【0148】
支持環部720には、水平方向に延在し、十字型に交差する二本の案内軸723が設けられている。連結ブロック810には、十字型に交差する二本の案内軸723を受け入れるように、前後方向と左右方向の二方向にあけられたガイド孔812が設けられている。ガイド孔812は、連結ブロック810が案内軸723に案内されて水平方向に並進することを許容するように長孔に形成されている。
図27は、連結ブロック810が水平方向に並進した状態の上面図(平面図)である。
また、ガイド孔812は、連結ブロック810が回転する際に案内軸723で回転が阻害されないように、高さ方向にもある程度の幅をもつ。
【0149】
連結ブロック810の通常の位置を中心(釣り合いの位置)にするために、連結ブロック810と支持環部720の内壁との間に四本のバネ(コイルバネ)724が介装されている。ここでは、案内軸723のまわりにバネ(コイルバネ)724を巻き回すようにして、連結ブロック810と支持環部720の内壁との間にバネ(コイルバネ)724を配置している。
【0150】
ここに、案内軸723とガイド孔812とにより連結ブロック810の並進を許容する並進許容機構部が構成されている。
【0151】
なお、案内軸を連結ブロック810に設け、ガイド孔を支持環部720に設けるようにして並進許容機構部を構成することとしてもよい。
【0152】
拘束手段500が電動内径測定器200をホールドするにあたっては、第一実施形態と同様に、挟持片510で電動内径測定器200そのものを挟み込んで直接的に拘束してもよいが、例えば、連結ブロック810を拘束することによって間接的に電動内径測定器200をホールドしてもよい。
【0153】
このような第四実施形態のフローティング継手部800によっても支持フレーム部300に対して電動内径測定器200が並進および回転することを許容できる。すなわち、仮に電動内径測定器200と測定対象である穴とに軸ずれ(傾斜および位置ずれ)があった場合でも、フローティング継手部800の回転および並進の許容によって電動内径測定器200が自律的に自己の位置および姿勢を自律調整することを許容することができる。
【0154】
第一実施形態のフローティング継手部400に比較して、第四実施形態のフローティング継手部800では、連結ブロック810が回転と並進とを兼ねるブロックとなっており、構成要素が少ない。
第四実施形態のフローティング継手部800を電動内径測定器200に付設したとしても全体のサイズアップを抑制することができる。例えば、第四実施形態のフローティング継手部800はサイズが小型であるから、電動内径測定器200のさらに上方に第四実施形態のフローティング継手部800が配置されたとしても、電動内径測定ユニット120全体の大きさの増大が抑制されるし、重心の変動にも極端に影響しない。そこで、フローティング継手部を電動内径測定器200の側方に配置するのではなく、フローティング継手部800を電動内径測定器200の上方に配設することにより、第四実施形態の自動内径測定装置100は、深い穴の底面近くの内径を測定するような深穴用の自動内径測定に好適なものとなる。
【0155】
(第五実施形態)
第五実施形態を説明する。
第五実施形態の基本的な構成は第一実施形態と同様であるが、フローティング継手部(フローティング継手機構部)900の構造に特徴を有する。
図28は、第五実施形態において、電動内径測定ユニット120の斜視図である。
図29は、第五実施形態において、電動内径測定ユニット120の上面図(平面図)である。
【0156】
第五実施形態においては、電動内径測定器200は、その軸線(筒軸あるいはロッド230軸)が鉛直方向になる姿勢でフローティング継手部900を介して支持フレーム部300に支持されている。
第五実施形態のフローティング継手部900の構造を説明する。
【0157】
フローティング継手部900は、第一浮動連結体910と、第二浮動連結体920と、第三浮動連結体930と、を備える。
【0158】
第一浮動連結体910は、カップ状であって、第一浮動連結カップ910と称する。カップ状の内側に電動内径測定器200を受け入れており、第一浮動連結カップ910と電動内径測定器200とは固定的に連結されている。第一浮動連結カップ910の底面から電動内径測定器200の下筒ケース部214およびヘッド筒部215に相当する測定ヘッド部220が下方向に突き出ている。また、第一浮動連結カップ910は、前後方向(Y軸)の両側に突き出るように設けられた第一連結軸911を有する。
【0159】
第二浮動連結体920は、リング状の部材であって、第二浮動連結リング920と称する。第二浮動連結リング920は、電動内径測定器200の軸線に直交する方向で第一浮動連結カップ910の周囲を環囲するように設けられている。そして、第二浮動連結リング920は、まず、前後方向(Y軸方向)に設けられた孔を有する。この孔は、第一浮動連結カップ910の第一連結軸911を軸受けする孔であるから、第一連結孔921と称することにする。第一連結孔921は、第一連結軸911が軸回りに回転することと、第一連結軸911が軸方向にスライドすることを許容している。すなわち、電動内径測定器200および第一浮動連結カップ910は、第二浮動連結リング920に対して、前後方向(Y軸方向)に並進でき、かつ、Y軸回りに回転することができる。
【0160】
また、第二浮動連結リング920には、左右方向(X軸)の両側に突き出るように第二連結軸922が設けられている。
【0161】
第三浮動連結体930は、第二浮動連結ブロック810の並進および回転を許容するように第二浮動連結リング920を支持する水平方向に平行な板体の部材であり、第三浮動連結板930と称する。第三浮動連結板930は、水平方向で電動内径測定器200を受け入れるようにコ字状に窪んだ(凹んだ)湾部931を有する。湾部931の両サイドを構成する腕部の先端において、左右方向(X軸)にあけられた孔を有する。
【0162】
この孔は、第二浮動連結カップの第二連結軸922を軸受けする孔であるから、第二連結孔932と称することにする。
第二連結孔932は、第二連結軸922が軸回りに回転することと、第二連結軸922が軸方向にスライドすることを許容している。すなわち、電動内径測定器200、第一浮動連結カップ910および第二浮動連結リング920は、第三浮動連結板930に対して、左右方向(X軸方向)に並進でき、かつ、X軸回りに回転することができる。
【0163】
第三浮動連結板930は、支持フレーム部300の支持台座部710に連結されている。
【0164】
なお、第一連結軸911を仮想的に延長した第一仮想直線と、第二連結軸922を仮想的に延長した第二仮想直線と、を考えたとき、第一仮想直線と第二仮想直線との交点は電動内径測定器200の重心にほぼ一致していることが好ましい。
【0165】
このような第四実施形態のフローティング継手部900によっても支持フレーム部300に対して電動内径測定器200が並進および回転することを許容できる。すなわち、仮に電動内径測定器200と測定対象である穴とに軸ずれ(傾斜および位置ずれ)があった場合でも、フローティング継手部900の回転および並進の許容によって電動内径測定器200が自律的に自己の位置および姿勢を自律調整することを許容することができる。
図30は、第一浮動連結カップ910がX軸回りに回転した状態を例示した図である。
図31は、第一浮動連結カップ910が水平面内で並進した状態を例示した図である。
なお、図が見やすいように、
図30、
図31においては、電動内径測定器200の図示は省略した。
【0166】
第五実施形態のフローティング継手部900の構造であれば、回転軸および並進軸の位置を電動内径測定器200の重心に合わせやすい。これにより、電動内径測定器200の姿勢が安定しやすい。
【0167】
上記に説明のように、本発明によれば、従来手動操作していた内径測定が自動化され、内径測定の全自動化が可能となる。加工工場などに穴径の自動インライン測定を導入することができるようになり、大幅な生産効率の向上が期待できる。
【0168】
(第六実施形態)
第六実施形態を説明する。
図32は、第六実施形態の全体的外観を示す側面図である。
図33は、第六実施形態において、フローティング継手部の断面拡大図である。
第六実施形態の基本的な構成は第一実施形態と同様であるが、第六実施形態では、フローティング継手部400を電動内径測定器200の上方に配置している。すなわち、電動内径測定器200は、支持フレーム部300からフローティング継手部400を介して吊り下げられたように支持されている。電動内径測定器200のほぼ全体が支持フレーム部300よりも下にあって、支持フレーム部300から吊り下げ支持されている他は、ほぼ第一実施形態の構成と同様である。第六実施形態(
図32、
図33)において、第一実施形態と対応する要素に同じ符号を付した。
【0169】
図32、
図33において、電動内径測定器200を吊り下げる吊下棒430が電動内径測定器200の上方に向けて延在している。吊下棒430は、電動内径測定器200の中心軸線上にあり、吊下棒430と電動内径測定器200とは固定的に連結されている。(吊下棒430を含めて電動内径測定器(電動内径測定部)200と解釈されたい。)吊下棒430は、支持台座部320の第一挿通孔321を通り、そして、吊下棒430の上端寄りに第一バネ受け411が連結されている。第一バネ受け411と支持台座部320との間にフローティング継手部400が構成されている。すなわち、フローティング継手部400の構成を概略列挙すると、支持台座部320にボールローラ423を設け、ボールローラ423で並進するように水平プレート(並進体)421を設ける。水平プレート(並進体)421の第二挿通孔422に第二バネ受け413を設け、第一バネ受け411と第二バネ受け413との間にコイルバネ412を配置する。
【0170】
このような構成および配置の第六実施形態によっても第一実施形態と同様に、フローティング継手部400の作用による電動内径測定器200の位置および姿勢の自律的調整動作が可能となる。加えて、第六実施形態によれば、フローティング継手部400が電動内径測定器200の上方にあるので、例えば、深い穴の底面近くの内径を測定するような深穴用の自動内径測定に好適なものとなる。
【0171】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態の説明において、ロッド230を駆動するにあたっては、回転によるネジ送りの他、ロッド230を直動式に引き上げ引き下げしてもよい。
上記実施形態では、移動手段として多関節ロボットアーム部を例示したが、大がかりな装置でなくとも、例えば上下方向の昇降機構がついた一次元駆動装置であってもよい。例えば、一次元駆動装置は、コラムと、コラムに沿ってスライドするスライダと、スライダを駆動させるモータと、モータとスライダとを繋ぐ動力伝達機構(ボールネジやベルト・プーリなど)と、を有するものが例として挙げられる。
【0172】
上記実施形態では、内径測定部の先端の構造として、いわゆるホールテスト(ボアマチック(登録商標))を例示したが、ロッド230に連動して測定子250が進退して内壁に当接する構成の内径測定器であればよい。例えば、シリンダーゲージのヘッド部であれば、一つの進退する測定子250を有するとともに、求心のため、測定子250と同軸上で反対向きのアンビルと、直交方向の両側にガイドヘッドと、を有する。
【0173】
上記実施形態では、測定器(測定部)として内径測定器(内径測定部)を例に説明したが、内径測定器(内径測定部)に代えて、接触式でワーク(測定対象)の寸法(内側寸法、外側寸法)を測定する測定器(測定部)としてもよい。
固定要素に対して可動要素(測定子、測定ジョー、スピンドルなど呼称は種々有り得る)が変位可能に設けられていて、ワークに測定子を接触させる、あるいは、ワークを測定子で挟むようにしてワーク寸法を測定する測定器(測定部)であれば上記実施形態に適用し得る。所定測定圧で測定子がワークに当接するとき、あるいは、所定測定圧で測定子がワークを挟み込むときにワークから測定子に掛かる反力を利用してフローティング継手部(フローティング継手機構部)によって測定器(測定部)が位置あるいは姿勢を自律的に調整し得る。(したがって、並進許容機構部が支持対象物(測定器)の並進を許容する方向というのは、測定子がワークに当たる方向とほぼ平行(あるいは、ワークから測定器に掛かる反力の方向にほぼ平行)と考えてよい。)測定器(測定部)としては、ノギス、マイクロメータヘッド、マイクロメータ、デジタルダイヤルゲージ(インジケータ)、テストインジケータ(てこ式ダイヤルゲージ)などの測定器(測定部)が例として挙げられる。
【0174】
第一実施形態、第四実施形態、第五実施形態において、それぞれ異なるタイプのフローティング継手部400、800、900を説明した。これらはそれぞれ単独で使用されてもよいし、複数を組み合わせて使用されてもよい。
例えば、第一実施形態のフローティング継手部400を電動内径測定器200の側方に設け、これと同時に、第四実施形態のフローティング継手部800を電動内径測定器200の上方に設けるようにしてもよい。
同様に、例えば、第五実施形態のフローティング継手部900を電動内径測定器200の側方に設け、これと同時に、第四実施形態のフローティング継手部800を電動内径測定器200の上方に設けるようにしてもよい。
内径測定器というのは長さがあるので、柔軟性のある継手で支えようとすると、フラフラと揺れたり、大きく傾いたり、前後左右にスライドしたりすることになってなかなか安定しない。
その一方、継手の剛性を強くしてしまうと、弱い測定圧だけでは自律的な位置姿勢調整はできなくなり、高度なフィードバック制御等を導入する必要性がでてくるが、これでは高価なシステムを導入しなければならなくなるし、位置姿勢調整の時間も長くかかるようになってくる。そこで、内径測定器の側方と上方の二箇所で適切なフローティング継手部で連結支持することで、継手の柔軟性は保ちつつ、安定性も両立させることができると期待できる。
【0175】
上記実施形態では、電動内径測定器は縦向きの姿勢をほぼ保ちながら穴の上から穴に差し入れられる場合を想定したが、電動内径測定器は、縦向き姿勢の他、横向き姿勢で使用されてもよいし、上下逆の縦姿勢で、ワークの下から上方に向けて、測定対象(測定対象穴)にアプローチしてもよい。
【符号の説明】
【0176】
100 自動内径測定装置
110 測定装置本体部
120 電動内径測定ユニット
200 電動内径測定器
210 筒ケース部
211 上筒ケース部
212 雌ネジ
213 中間筒ケース部
214 下筒ケース部
215 ヘッド筒部
216 板バネ
220 測定ヘッド部
230 ロッド
231 上段ロッド
232 送りネジ
233 下段ロッド
240 シンブル部
241 シンブルスリーブ
242 ラチェットスリーブ
243 コイルバネ(負荷規制弾性体)
250 測定子
251 テーパ面
252 丸軸チップ
260 変位検出部
261 ロータ
262 ステータ
270 外ケース部
271 外ケース本体部
272 外ケース上部パート
233 表示ユニット部
234 表示部
280 電動駆動部
300 支持フレーム部
310 支持支柱部
320 支持台座部
321 第一挿通孔
400 フローティング継手部(フローティング継手機構部)
410 回転許容機構部
411 第一バネ受け
412 コイルバネ
413 第二バネ受け
414 リング孔
420 並進許容機構部
421 水平プレート
422 第二挿通孔
423 ボールローラ
430 吊下棒
500 拘束手段
510 挟持片
600 衝突検知部
601 固定板
602 取付板
610 リニアガイド
611 溝枠体
612 スライド体
620 コイルバネ
630 接点センサ
631 接触検知ブロック
632 ボールプランジャ
132 力覚センサ部
130 多関節ロボットアーム部(ロボットアーム部)
131 ハンド部
140 制御ユニット部
150 測定動作制御部
151 拘束制御部
152 駆動制御部
153 測定値取得部
160 ロボットアーム駆動制御部
170 中央制御部
710 支持台座部
720 支持環部
721 梁
722 凹部
723 案内軸
724 バネ(コイルバネ)
800 フローティング継手部(フローティング継手機構部)
810 連結ブロック
811 吊下棒
812 ガイド孔
820 球体
900 フローティング継手部(フローティング継手機構部)
910 第一浮動連結カップ(第一浮動連結体)
911 第一連結軸
920 第二浮動連結リング(第二浮動連結体)
921 第一連結孔
922 第二連結軸
930 第三浮動連結板(第三浮動連結体)
931 湾部
932 第二連結孔