(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142309
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光学部材の検査方法、検査装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/958 20060101AFI20230928BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N21/958
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049149
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊介
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051AB10
2G051BB03
2G051CA04
2G051CB02
2G051DA06
2G051EA09
2G051EA11
2G051EA16
2G051EB01
2G051ED08
(57)【要約】
【課題】照明装置用の光学部材の一方の表面に設けられた凹部の異常を判定可能な光学部材の検査方法等を提供する。
【解決手段】一方の表面10aに凹部11を有する照明装置用の光学部材10を検査する方法であって、光学部材10の他方の表面10b側に配置され、凹部の傾斜部11aと同じ方向に傾斜し、他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜した光軸1Aを有する照明部1から、傾斜部に対して光を照射し、一方の表面側に配置され、一方の表面の法線方向に沿った視軸2Aを有する撮像部2によって、傾斜部に対して照射され、光学部材を透過した光を撮像することで、撮像画像を生成するステップと、撮像画像を画像処理することで、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出し、画素領域の面積の大小に基づき、凹部の異常を判定するステップと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に凹部を有する、照明装置用の光学部材を検査する方法であって、
前記凹部は、前記光学部材の厚み方向に沿った断面において、前記光学部材の表面に対して所定の傾斜角度で傾斜した傾斜部を有し、
前記光学部材の他方の表面側に配置され、前記傾斜部と同じ方向に傾斜し、前記他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した光軸を有する照明部から、前記凹部の前記傾斜部に対して光を照射し、前記一方の表面側に配置され、前記一方の表面の法線方向に沿った視軸を有する撮像部によって、前記傾斜部に対して照射され、前記光学部材を透過した光を撮像することで、撮像画像を生成する撮像画像生成ステップと、
前記撮像画像を画像処理することで、前記撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出し、前記画素領域の面積の大小に基づき、前記凹部の異常を判定する異常判定ステップと、を有する、
光学部材の検査方法。
【請求項2】
前記照明部は、平行光を出射する、
請求項1に記載の光学部材の検査方法。
【請求項3】
前記撮像部は、その焦点が、前記一方の表面から前記光学部材の厚み方向に離隔した位置に設定される、
請求項1又は2に記載の光学部材の検査方法。
【請求項4】
前記照明部の前記光軸の傾斜角度は、前記凹部が正常な場合に生成される前記撮像画像の前記画素領域の面積が所定のしきい値以上となるように、前記凹部の前記傾斜部の傾斜角度に応じて設定される、
請求項1から3の何れかに記載の光学部材の検査方法。
【請求項5】
前記異常判定ステップにおいて、前記撮像画像における所定の第1しきい値以上の画素値を有する第1画素領域を抽出すると共に、前記撮像画像における前記第1しきい値より大きな所定の第2しきい値以上の画素値を有する第2画素領域を抽出し、前記第1画素領域の重心座標と前記第2画素領域の重心座標との差に基づき、前記傾斜部の前記傾斜角度の基準角度からのずれ方向を判定する、
請求項1から4の何れかに記載の光学部材の検査方法。
【請求項6】
一方の表面に凹部を有する、照明装置用の光学部材を検査する装置であって、
前記凹部は、前記光学部材の厚み方向に沿った断面において、前記光学部材の表面に対して所定の傾斜角度で傾斜した傾斜部を有し、
前記光学部材の他方の表面側に配置され、前記傾斜部と同じ方向に傾斜し、前記他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した光軸を有する照明部と、
前記一方の表面側に配置され、前記一方の表面の法線方向に沿った視軸を有する撮像部と、
前記照明部が前記凹部の前記傾斜部に対して光を照射し、前記撮像部が前記光学部材を透過した光を撮像することで生成される撮像画像を画像処理することで、前記撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出し、前記画素領域の面積の大小に基づき、前記凹部の異常を判定する画像処理部と、を備える、
光学部材の検査装置。
【請求項7】
前記光学部材を製造する製造工程と、
前記製造工程で製造した前記光学部材を請求項1から5の何れかに記載の検査方法で検査する検査工程と、を有する、
光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置用の光学部材の検査方法、検査装置及び製造方法に関する。特に、本発明は、照明装置用の光学部材の一方の表面に設けられた凹部の異常を判定可能な、光学部材の検査方法、検査装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置用の光学部材(例えば、導光板に入射した光を導光板の外部に取出すために用いられる光学部材)として、樹脂製やガラス製のシート状基材の一方の表面に凹部を設けた光学部材が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明基材(導光板)12の一方の表面に凹部14aが設けられた光学部材(片面照明兼用窓10)が開示されている(例えば、特許文献1の
図1等)。
また、特許文献2には、一般照明、ウィンドウ/ファサードの照明、反射型/透過型ディスプレイの照明、街頭の看板、交通標識等の照明装置に用いられる光学部材として、導光板(例えば、特許文献2の
図19の窓200)に入射した光を導光板の外部に取り出すために用いられる、一方の表面に凹部(例えば、特許文献2の
図21Aのパターン214)が形成されたフィルム(例えば、特許文献2の
図21Aの第2フィルム212)が開示されている。
【0004】
上記のような光学部材は、エンボス加工によって基材の表面に凹部を形成したり、凸部を有するモールドで樹脂製の基材の表面に凹部を形成して硬化させる等の種々の方法によって形成される。凹部は、光源からの入射光を全反射させるための傾斜部を有している。傾斜部は、光学部材の表面に対して所定の傾斜角度で傾斜している。
ここで、光学部材の凹部に異物が混入したり、加工精度不足で凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値から大きく外れると、光学部材の光学特性に悪影響を及ぼす。このため、異物の混入や、傾斜角度のずれ等の凹部の異常を判定可能な検査技術が求められている。なお、異物としては、光学部材を製造する設備の金属片、雰囲気中に浮遊する塵や埃、モールドの転写不良によって凹部に残存するモールドの一部などを例示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/102959号
【特許文献2】国際公開第2019/182091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、照明装置用の光学部材の一方の表面に設けられた凹部の異常を判定可能な、光学部材の検査方法、検査装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、一方の表面に凹部を有する、照明装置用の光学部材を検査する方法であって、前記凹部は、前記光学部材の厚み方向に沿った断面において、前記光学部材の表面に対して所定の傾斜角度で傾斜した傾斜部を有し、前記光学部材の他方の表面側に配置され、前記傾斜部と同じ方向に傾斜し、前記他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した光軸を有する照明部から、前記凹部の前記傾斜部に対して光を照射し、前記一方の表面側に配置され、前記一方の表面の法線方向に沿った視軸を有する撮像部によって、前記傾斜部に対して照射され、前記光学部材を透過した光を撮像することで、撮像画像を生成する撮像画像生成ステップと、前記撮像画像を画像処理することで、前記撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出し、前記画素領域の面積の大小に基づき、前記凹部の異常を判定する異常判定ステップと、を有する、光学部材の検査方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、撮像画像生成ステップにおいて、光学部材の凹部の傾斜部と同じ方向に傾斜し、光学部材の他方の表面側(凹部が設けられた一方の表面側と反対の表面側)に配置され、他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した光軸を有する照明部から、凹部の傾斜部に対して光が照射され、一方の表面側に配置され、一方の表面の法線方向に沿った視軸を有する撮像部によって、傾斜部に対して照射され、光学部材を透過した光が撮像され、撮像画像が生成される。
ここで、凹部に異物が混入している場合、凹部の傾斜部に対して照射された光は、異物によって遮光されるため、撮像画像における凹部に相当する画素領域の画素値(輝度値)は小さく(暗く)なると考えられる。このため、異常判定ステップにおいて、撮像画像を画像処理することで、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出すれば、凹部に異物が混入している場合には、混入していない場合に比べて、抽出される画素領域の面積が小さくなると考えられる。このため、画素領域の面積の大小に基づき凹部の異常を判定(具体的には、画素領域の面積が所定値以下となれば、凹部に異物が混入している可能性があると判定)することが可能である。
また、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値から外れている場合、凹部の傾斜部に対して照射された光は、前記設計値に対して想定される方向とは異なる方向に屈折して進行することになる。このため、例えば、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値通りである場合に、この傾斜部に対して照射された光が光学部材の一方の表面の法線方向に進行するように(すなわち、撮像部の視軸に沿って進行するように)、照明部の光軸の傾斜角度が設定されていれば、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値から外れている場合、この傾斜部に対して照射された光は、撮像部の視軸から外れた方向に進行するため、撮像画像における凹部に相当する画素領域の画素値(輝度値)は小さく(暗く)なると考えられる。このため、異常判定ステップにおいて、撮像画像を画像処理することで、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出すれば、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値から外れている場合には、設計値通りである場合に比べて、抽出される画素領域の面積が小さくなると考えられる。したがって、画素領域の面積の大小に基づき凹部の異常を判定(具体的には、画素領域の面積が所定値以下となれば、凹部の傾斜部の傾斜角度に設計値からのずれが生じている可能性があると判定)することが可能である。
以上のように、本発明によれば、照明装置用の光学部材の一方の表面に設けられた凹部に異物が混入している状態、及び、凹部の傾斜部の傾斜角度に設計値からのずれが生じている状態のうち、少なくとも何れか一方の異常が発生していることを判定可能である。
【0009】
好ましくは、前記照明部は、平行光を出射する。
上記の好ましい方法によれば、凹部の傾斜部に対して一定の方向から光が照射されるため、凹部の異常(特に、凹部の傾斜部の傾斜角度のずれ)を精度良く判定可能である。
なお、平行光を出射する照明部は、光源と、光源から出射された光を平行光に変換するコリメートレンズや放物面ミラー等からなる光学系とを組み合わせることで構成可能である。
【0010】
好ましくは、前記撮像部は、その焦点が、前記一方の表面から前記光学部材の厚み方向に離隔した位置に設定される。
本発明においては、撮像部の焦点を光学部材の一方の表面に設定することも可能である。
しかしながら、本発明者の知見によれば、上記の好ましい方法によって、凹部が正常である場合(凹部に異物が混入しておらず、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値に近い場合)に抽出される画素領域の面積と、凹部が異常である場合に抽出される画素領域の面積との差が強調されることになる。このため、上記の好ましい方法によれば、凹部の異常を精度良く判定可能である。
【0011】
好ましくは、前記照明部の前記光軸の傾斜角度は、前記凹部が正常な場合に生成される前記撮像画像の前記画素領域の面積が所定のしきい値以上となるように(より好ましくは、最大値となるように)、前記凹部の前記傾斜部の傾斜角度に応じて設定される。
上記の好ましい方法によれば、照明部から出射し、正常な凹部の傾斜部に対して照射された光が、光学部材の一方の表面の法線方向に近い方向に進行する(すなわち、撮像部の視軸に近い方向に進行するように)ことが期待できる。このため、凹部の傾斜部の傾斜角度が設計値から外れている場合、この凹部の傾斜部に対して照射された光は、撮像部の視軸から外れた方向に進行し、抽出される画素領域の面積が小さくなり易いと考えられる。このため、上記の好ましい方法によれば、凹部の異常(特に、凹部の傾斜部の傾斜角度のずれ)を精度良く判定可能である。
【0012】
好ましくは、前記異常判定ステップにおいて、前記撮像画像における所定の第1しきい値以上の画素値を有する第1画素領域を抽出すると共に、前記撮像画像における前記第1しきい値より大きな所定の第2しきい値以上の画素値を有する第2画素領域を抽出し、前記第1画素領域の重心座標と前記第2画素領域の重心座標との差に基づき、前記傾斜部の前記傾斜角度の基準角度からのずれ方向を判定する。
上記の好ましい方法において、「重心座標」とは、凹部の傾斜部の傾斜方向(照明部の光軸の傾斜方向)についての重心座標を意味する。
本発明者の知見によれば、凹部の傾斜部の傾斜角度が基準角度(設計値)よりも大きな角度になっている場合には、上記の好ましい方法によって抽出される第1画素領域の重心座標と第2画素領域の重心座標との差は正の値となり、凹部の傾斜部の傾斜角度が基準角度(設計値)よりも小さな角度になっている場合には、第1画素領域の重心座標と第2画素領域の重心座標との差は負の値となる。このため、上記の好ましい方法によれば、第1画素領域の重心座標と第2画素領域の重心座標との差に基づき、傾斜部の傾斜角度の基準角度からのずれ方向(基準角度よりも大きな角度となる方向にずれているか、或いは、基準角度よりも小さな角度となる方向にずれているか)を判定することができる。
【0013】
また、前記課題を解決するため、本発明は、一方の表面に凹部を有する、照明装置用の光学部材を検査する装置であって、前記凹部は、前記光学部材の厚み方向に沿った断面において、前記光学部材の表面に対して所定の傾斜角度で傾斜した傾斜部を有し、前記光学部材の他方の表面側に配置され、前記傾斜部と同じ方向に傾斜し、前記他方の表面の法線方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した光軸を有する照明部と、前記一方の表面側に配置され、前記一方の表面の法線方向に沿った視軸を有する撮像部と、前記照明部が前記凹部の前記傾斜部に対して光を照射し、前記撮像部が前記光学部材を透過した光を撮像することで生成される撮像画像を画像処理することで、前記撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域を抽出し、前記画素領域の面積の大小に基づき、前記凹部の異常を判定する画像処理部と、を備える、光学部材の検査装置としても提供される。
【0014】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記光学部材を製造する製造工程と、前記製造工程で製造した前記光学部材を前記検査方法で検査する検査工程と、を有する、光学部材の製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、照明装置用の光学部材の一方の表面に設けられた凹部の異常を判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の検査対象である光学部材を用いた照明装置の概略構成例を模式的に示す図である。
【
図4】光学部材の凹部の異常を模式的に示す断面図である。
【
図5】一部の凹部に異物が混入している場合に生成される撮像画像(撮像画像の一部)の例を示す図である。
【
図6】撮像部の焦点を光学部材の表面から離隔した位置に設定する(すなわち、デフォーカスする)ことの効果を示す図である。
【
図7】照明部の光軸の傾斜角度と、凹部が正常な場合に生成される撮像画像における明部の面積との関係の一例を示す図である。
【
図8】凹部の傾斜部の傾斜角度と、生成される撮像画像(撮像画像の一部)の平均画素値との関係の一例を示す図である。
【
図9】画像処理部が実行する傾斜角度のずれ方向の判定手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学部材の検査方法及び検査装置について、ロールツーロール方式で長手方向に搬送される長尺の光学部材を検査する場合を例に挙げて説明する。なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る検査装置の概略構成を模式的に示す図である。
図1(a)は、検査装置の全体構成を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す破線Aに沿った断面図である。
図1(b)では、
図1(a)に示す画像処理部3の図示を省略している。
図1では、光学部材10の長手方向(搬送方向)をX方向とし、光学部材10の幅方向(長手方向に直交する水平方向)をY方向とし、光学部材10の厚み方向(上下方向)をZ方向としている。
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置100は、一方の表面(
図1に示す例では上側の表面)10aに複数の凹部11を有する、照明装置用の光学部材10を検査する装置である。本実施形態では、長尺の光学部材10が、搬送ロールRによってロールツーロール方式で長手方向(X方向)に搬送されながら検査される。
図1では、図示の便宜上、比較的大きな寸法の凹部11が少数設けられた光学部材10として図示しているが、実際には、光学部材10には、100mm四方当たり約30万個の多数の凹部11が設けられている。
検査装置100は、光学部材10の他方の表面(
図1に示す例では下側の表面)10b側に配置された照明部1と、一方の表面10a側に配置された撮像部2と、照明部1が凹部11に対して光を照射し、撮像部2が光学部材10を透過した光を撮像することで生成される撮像画像を画像処理する画像処理部3と、を備える。
以下、光学部材10及び検査装置100の具体的な構成について、順に説明する。
【0019】
<光学部材10>
光学部材10は、照明装置に用いられる部材であり、照明装置が出射する光(例えば、波長が380nm以上780nm以下の可視光)の波長に対して透明性の高い材料から形成される。光学部材10は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ガラス(例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス)等から形成される。
一方の表面10aに凹部11を有する光学部材10は、例えば、特表2013-524288号公報に記載の方法等の公知の方法によって製造可能である。具体的には、例えば、基材フィルム(例えば、PMMAフィルム)の表面をラッカー(例えば、三洋化成工業社製ファインキュアー「RM-64」)でコーティングし、このラッカーを含む基材フィルムの表面上に凹部11に応じた光学パターンをエンボス加工した後、ラッカーを硬化させることによって製造可能である。
上記のようにして、一方の表面10aに凹部11を有する長尺の光学部材10が製造され(本実施形態では、更に検査装置100によって検査された後)、用途に応じた寸法に切断され、照明装置に用いられる。
【0020】
図2は、検査装置100の検査対象である光学部材10を用いた照明装置の概略構成例を模式的に示す図である。
図2(a)は光学部材10の厚み方向(Z方向)に沿った断面図であり、
図2(b)は光学部材10の厚み方向から見た平面図である。なお、図示の便宜上、
図2(a)と
図2(b)とでは、凹部11のX方向の大きさや個数が異なるように図示しているが、実際には同じである。
図2に示す照明装置200は、互いに反対方向に光を出射する2つの出射面を有するシート状の照明装置である。照明装置200は、第1の光L1を出射する第1出射面(
図2(a)の下側の面)と第2の光L2を出射する第2出射面(
図2(a)の上側の面)とを有する。第1の光L1は
図2(a)の下側に出射され、第2の光L2は
図2(a)の上側に出射される。
【0021】
照明装置200は、導光部材201と、光源202と、を有する。導光部材201は、光源202から出射された光を受ける受光部と、第1出射面側の第1主面及び第2出射面側の第2主面を有する導光層20と、複数の凹部11を有する本実施形態の光学部材10と、を有する。導光部材201は、導光層20の第2主面に接着剤層40によって光学部材10が接着されており、接着剤層50によって基材層30と光学部材10とが接着されている。導光層20及び基材層30は、透明な基板又はフィルムであってよい。
導光部材201の受光部は、例えば、導光層20の光源202側の側面である。
複数の凹部11のそれぞれは、導光層20内を伝搬する光の一部を全反射させて第1出射面側に向ける第1傾斜部11aと、第1傾斜部11aと反対側の第2傾斜部11bと、を有する断面三角形状である。第2出射面から出射される第2の光L2は、第1傾斜部11aから凹部11内に侵入し、凹部11を通過した光である。第2の光L2は、凹部11と接着剤層50との界面又は第2傾斜部11bを透過する。第1の光L1及び第2の光L2は、界面を通過する際に、界面を構成する物質の屈折率に応じて屈折され得る。
【0022】
導光部材201は、光学部材10を有することで、第1出射面から第1の配光分布を有する第1の光L1を出射し、第2出射面から第2の配光分布を有する第2の光L2を出射するように構成されている。
第1の配光分布及び第2の配光分布は、例えば、凹部11の断面形状、平面形状、大きさ、配置密度、分布を調整することによって制御することができる。
図3(a)を参照して後述するように、例えば、第1傾斜部11aの傾斜角度θaは10°以上70°以下である。また、第2傾斜部11bの傾斜角度θbは50°以上100°以下である。凹部11の断面形状は、ここで例示したように、三角形であるが、これに限られず、台形等であってもよい。
【0023】
導光部材201は、例えば、可視光透過率が60%以上であり、ヘイズ値が30%未満である。可視光透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。ヘイズ値は10%未満であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。導光部材201が高い可視光透過率と低いヘイズ値を有するように構成すれば、導光部材201を介して物(表示)を見ることができる。可視光透過率及びヘイズ値は、例えば、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製:商品名HM-150)を用いて測定することができる。
【0024】
複数の凹部11は、導光層20を主面の法線方向から見たときに、導光層20の面積に占める複数の凹部11の面積の割合(占有面積率)は、1%以上80%以下が好ましく、上限値は、50%以下がより好ましく、45%以下がさらに好ましく、高い透過率及び/又は低いヘイズ値を得るためには、30%以下が好ましく、10%以下が更に好ましく、5%以下が特に好ましい。例えば、凹部11の占有面積率が50%のとき、ヘイズ値30%を得ることができる。なお、凹部11の占有面積率は、均一であっても良いし、光源202からの距離が大きくなっても輝度が低下しないように、距離が大きくなるにつれて、占有面積率が大きくなるようにしてもよい。ロールツーロール方式で光学部材10を量産するには、凹部11の占有面積率は均一であることが好ましい。
【0025】
図2(b)に示すように、複数の凹部11は、例えば、導光部材201の導光方向(X方向、光学部材10の長手方向に相当)及び導光方向に直交する水平方向(Y方向、光学部材10の幅方向に相当)に離散的に配置されている。凹部11の大きさ(長さL、幅W:後述の
図3(a)、
図3(b)参照)については、例えば、長さLは10μm以上500μm以下であることが好ましく、幅Wは1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、光の取り出し効率の観点から、高さH(後述の
図3(a)参照)は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0026】
図2(b)に示す例では、複数の凹部11が、導光部材201の導光方向(X方向)及び導光方向に直交する方向(Y方向)に離散的に配置されている例を示したが、これに限られず、複数の凹部11は、導光部材201の導光方向(X方向)及び導光方向と交差する方向に離散的に配置されてもよい。凹部11の離散的な配置は、導光層20の形状や求められる配光分布等に応じて適宜設定される。
複数の凹部11の離散的な配置は、少なくとも1つの方向において周期性(規則性)を有してもよいし、規則性を有しなくてもよい。ただし、量産性の観点からは、複数の凹部11が一様に配置されることが好ましい。例えば、
図2(b)に示した例では、実質的に同一の形状で同一の方向に平面視凸状の曲面を有する複数の凹部11が、導光部材201の導光方向(X方向)及び導光方向に直交する方向(Y方向)に離散的に、周期的に全領域に配置されている。このとき、X方向の配置ピッチPxは、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましく、Y方向の配置ピッチPyは、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましい。
図2(b)に示した例では、光学部材10は、X方向及びY方向のそれぞれに2分の1ピッチずれて配置された凹部11を更に有している。
【0027】
図2(b)に示したように、導光層20の第1主面に対する法線方向から見たとき、第1傾斜部11aは光源202側に凸状の曲面を形成している。光源202は、例えばLED装置であり、複数のLED装置がY方向に配列されている。複数のLED装置のそれぞれからX方向に出射される光はY方向に対して広がりを有するので、第1傾斜部11aが光源202側に凸状の曲面を形成している方が、第1傾斜部11aが光に対して均一に作用する。なお、光源202と導光部材201の受光部との間に結合光学系を設け、平行度の高い光(Y方向に対する広がりが小さい光)を入射させるようにした場合には、第1傾斜部11aはY方向に平行であってもよい。また、離散的な凹部11に代えて、例えば、Y方向に延びる溝(例えば三角柱)のような凹部11であってもよい。
【0028】
次に、
図3を参照して、凹部11の形状について、より具体的に説明する。
図3は、凹部11の形状を説明する図である。
図3(a)は、凹部11の模式的な断面図である。具体的には、
図3(a)は、光学部材10の厚み方向に沿った凹部11の断面のうち、幅Wの方向(X方向)の寸法が最も大きくなる凹部11の中心を通る断面の断面図である。
図3(b)は、凹部11の模式的な平面図であり、
図3(c)は、凹部11の変形例を示す模式的な平面図である。
図3(d)は、凹部11の第1傾斜部11aの曲面の平面視形状の例を示す図である。
図3(a)に示すように、凹部11の断面は、例えば、三角形状である。光源202側の第1傾斜部θaの傾斜角度(光学部材10の表面10aに対する傾斜角度)θaは、例えば、10°以上70°以下である。傾斜角度θaが10°よりも小さいと配光の制御性が低下し、光取り出し効率も低下することがある。一方、傾斜角度θaが70°を超えると、例えば光学部材10の加工が困難になることがある。また、第2傾斜部11bの傾斜角度θb(光学部材10の表面10aに対する傾斜角度)は、例えば、50°以上100°以下である。傾斜角度θbが50°より小さいと、意図しない方向に迷光が発生することがある。一方、傾斜角度θbが100°を超えると、例えば光学部材10の加工が困難になることがある。
図3(b)及び
図3(c)に示すように、凹部11の長さLは10μm以上500μm以下であることが好ましく、凹部11の幅Wは1μm以上100μm以下であることが好ましい。長さLは、例えば、幅Wの2倍以上である。凹部11の高さH(
図3(a)参照)は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、
図3(b)に示す平面視形状を有する凹部11を有する光学部材10を製造する際の加工精度によって、
図3(c)に示すような平面視形状を有する凹部11が形成されることがある。そのような場合であっても、長さL及び幅Wによって、凹部11の平面視形状を特徴づけることができる。
【0029】
第1傾斜部11aの光源202側に凸状の曲面の平面視形状は、例えば、
図3(d)で表される。
図3(d)に示す例は、凹部11の長さLが60μmで、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが30°、40°、49°の場合の第1傾斜部11aの平面視形状の例である。
図3(d)に示す例では、傾斜角度θaが30°、40°、49°のときの凹部11の幅Wは、それぞれ、約13.9μm、約9.5μm、約7.0μmになっている。
図3(d)に示す曲面は、例えば、4次曲線で近似できる。
【0030】
<検査装置100>
本実施形態に係る検査装置100は、以上に説明した構成を有する光学部材10を検査する装置である。
図4は、凹部11の異常を模式的に示す断面図である。
図4(a)は正常な凹部11の断面図であり、
図4(b)は凹部11に異物Mが混入している異常が発生している状態を示す断面図であり、
図4(c)は凹部11の傾斜部の傾斜角度が設計値から外れている異常が発生している状態を示す断面図である。
図4(c)では、破線で示す傾斜部の設計形状が実線で示すようにずれている状態を示している。
本実施形態に係る検査装置100は、凹部11の傾斜部の傾斜角度の異常については、特に、第1傾斜部11aの傾斜角度θaの異常を検査する装置である。
前述のように、検査装置100は、照明部1と、撮像部2と、画像処理部3と、を備えている。以下、各部について、具体的に説明する。
【0031】
[照明部1]
図1(b)に示すように、照明部1は、光学部材10の凹部11の第1傾斜部11aと同じ方向に傾斜し、光学部材10の他方の表面10bの法線方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜した光軸1Aを有する。
図1(b)に示す例では、第1傾斜部11aはX方向に傾斜(Y方向周りに傾斜)しているため、照明部1の光軸1AもX方向に傾斜(Y方向周りに傾斜)している。照明部1の光軸1Aが第1傾斜部11aと同じ方向に傾斜していることで、照明部1から出射した光は、第1傾斜部11aに対して照射されることになる。
本実施形態の照明部1は、光学部材10の少なくとも幅方向全体(凹部11が設けられてる箇所の幅方向全体)を照明可能な構成を有し、好ましい態様として、平行光を出射するように構成されている。
また、後述のように、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θは、凹部11が正常な場合に生成される撮像画像の画素領域(所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域であり、本明細書では「明部」と称する)の面積が所定のしきい値以上となるように(より好ましくは、最大値となるように)、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θaに応じて(傾斜角度θaの設計値に応じて)設定されている。例えば、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θは、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θa(傾斜角度θaの設計値)よりも小さく設定される。傾斜角度θaの設計値が49°である場合、傾斜角度θは約27°に設定される。照明部1の光軸1Aの傾斜角度θは、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θa(傾斜角度θaの設計値)に対して、10°~35°小さいことが好ましく、15°~30°小さいことがより好ましく、17°~27°小さいことが更に好ましい。
【0032】
本実施形態の照明部1としては、例えば、LED光源とコリメートレンズとの組み合わせを用いることができる。具体的には、例えば、CCS社製スポット照明「HLV3-22BL-4S」を光源とし、これに、CCS社製光源絞りアダプター「SB-HL-05」を介して、CCS社製レンズ「HL2-50-P」を取り付けたものを、光学部材10の幅方向全体を照明できるように、Y方向に複数台並べたものを照明部1として用いることができる。
【0033】
[撮像部2]
撮像部2は、光学部材10の一方の表面10aの法線方向(Z方向)に沿った視軸2Aを有する。
本実施形態では、前述のように、ロールツーロール方式で長手方向(X方向)に搬送される光学部材10を検査するため、撮像部2として、光学部材10の幅方向(Y方向)に沿って複数の撮像素子が直線状に配列され、光学部材10の幅方向に延びる直線状の視野を有するラインセンサが用いられる。また、本実施形態の撮像部2は、視軸2A方向の光のみを撮像して異常の判定精度を高めるために、テレセントリックレンズを具備する。撮像部2のY方向の分解能は、例えば数μm/画素に設定される。撮像部2によって、照明部1によって光学部材10に照射され、光学部材10を透過した光が撮像され、光学部材10が長手方向に搬送されることで、2次元(XY平面)の撮像画像が生成される。
なお、本実施形態では、撮像部2としてラインセンサを用いているが、これに限るものではなく、撮像部2として、高速シャッター付きの2次元エリアカメラを用い、所定のタイミング毎に撮像することで、撮像画像を生成することも可能である。また、
図1では、単一の撮像部2を設ける例を図示しているが、分解能を高めるために、複数の撮像部2を光学部材10の幅方向(Y方向)に並設する構成を採用し、各撮像部2で得られた撮像画像を合成して光学部材10の幅方向全体の撮像画像を生成することも可能である。
【0034】
本実施形態の撮像部2は、好ましい態様として、
図1(b)に示すように、その焦点Fが、光学部材10の一方の表面10aから光学部材10の厚み方向(Z方向)に離隔距離FLだけ離隔した位置に設定される。
図1(b)に示す例では、撮像部2の焦点Fは、光学部材10の表面10aから撮像部2に近づく方向に離隔しているが、撮像部2から離れる方向に離隔した位置に設定することも可能である。撮像部2の焦点Fを光学部材10の表面10aから離隔した位置に設定することで、後述のように、凹部11が正常である場合に抽出される画素領域(明部)の面積と、凹部が異常である場合に抽出される画素領域(明部)の面積との差が強調され、凹部11の異常を精度良く判定可能である。
なお、好ましい態様しては、焦点Fが光学部材10の表面10aから離隔した位置に設定されるが、必ずしもこれに限るものではなく、焦点Fを光学部材10の表面10aに設定する(すなわち、離隔距離FL=0にする)ことも可能である。
【0035】
[画像処理部3]
画像処理部3は、撮像部2に電気的に接続されており、照明部1が凹部11の第1傾斜部11aに対して光を照射し、撮像部2が光学部材10を透過した光を撮像することで生成される撮像画像を画像処理する。画像処理部3は、例えば、汎用のコンピュータに、後述の画像処理や判定処理を実行するためのプログラムがインストールされた構成を有する。
画像処理部3は、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域(明部)を抽出し、この明部の面積の大小に基づき、凹部の異常を判定する。
【0036】
図5は、一部の凹部11に異物が混入している場合に生成される撮像画像(撮像画像の一部)の例を示す図である。
図5(a)は、撮像部2の焦点Fの離隔距離FL=0mmのときに生成される撮像画像の例であり、
図5(b)は、撮像部2の焦点Fの離隔距離FL=0.5mmのときに生成される撮像画像の例である。
図5(a)及び
図5(b)に示す撮像画像は、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θが約27°に設定されている場合に得られたものである。また、
図5(c)は、従来の通常の透過検査を行ったときに生成される撮像画像の例である。具体的には、
図5(c)は、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θを0°に設定し、撮像部2の焦点Fの離隔距離FLを0mmに設定したときに生成される撮像画像に相当する。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、凹部11の第1傾斜部11aに対して照射された光は、凹部11に異物が混入している場合、異物によって遮光されるため、撮像画像において異物が混入している凹部11に相当する画素領域(
図5において「異常部」で示す画素領域)の画素値(輝度値)は小さく(暗く)なると考えられる。このため、画像処理部3において、撮像画像を画像処理することで、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する明部を抽出すれば、凹部11に異物が混入している場合には、混入していない場合(
図5において「正常部」で示す画素領域)に比べて、抽出される明部の面積が小さくなると考えられる。このため、画像処理部3は、明部の面積の大小に基づき凹部11の異常を判定(具体的には、明部の面積が所定値以下となれば、凹部11に異物が混入している可能性があると判定)することが可能である。なお、明部を抽出する際には、所定のしきい値を基準にした2値化処理の他、必要に応じて、小面積除去処理や、膨張収縮処理など、撮像画像を用いた検査において公知の各種画像処理を適用すればよい。
なお、
図5(c)に示すように、従来の通常の透過検査では、異物が混入している凹部11に相当する画素領域(異常部)と、異物が混入していない凹部11に相当する画素領域(正常部)との間に、画素値の顕著な差が生じない(双方共に画素値が小さく暗い)場合がある。これは、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θが0°であるため、正常な凹部11であっても、照明部1から出射した光が第1傾斜部11aで全反射し、撮像部2で検出されない場合のあることが原因であると考えられる。
【0037】
図6は、撮像部2の焦点Fを光学部材10の表面10aから離隔した位置に設定する(すなわち、デフォーカスする)ことの効果を示す図である。
図6(a)は、デフォーカスしなかった(離隔距離FL=0mmに設定した)場合に生成される撮像画像において抽出される正常部及び異常部(異物混入)の明部の面積を示す。
図6(b)は、デフォーカスした(離隔距離FL=0.5mmに設定した)場合に生成される撮像画像において抽出される正常部及び異常部の明部の面積を示す。なお、
図6に示す結果は、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θが約27°に設定されている場合に得られたものである。また、
図6に示す結果は、撮像画像を8ビット(画素値:0(最も暗い)~255(最も明るい))で量子化し、しきい値250以上の画素値を有する画素領域を明部として抽出した結果である。後述の
図7についても同様である。
図6の縦軸は、それぞれ10箇所の正常部及び異常部について面積を算出し、その平均値をそれぞれプロットしたものである。
図6(a)に示す結果と、
図6(b)に示す結果とを比較すれば分かるように、撮像部2をデフォーカスすることにより、凹部11が正常である場合に抽出される明部の面積(
図6において「〇」でプロットしたデータ)と、凹部11が異常である場合に抽出される明部の面積(
図6において「●」でプロットしたデータ)との差が強調される。このため、撮像部2をデフォーカスすることで、明部の面積の大小に基づき、凹部11の異常を精度良く判定可能であるといえる。
【0038】
図7は、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θと、凹部11が正常な場合(第1傾斜部11aの傾斜角度θaが設計値通り(θa=49°)である場合)に生成される撮像画像における明部の面積との関係の一例を示す図である。
図7に示すように、明部の面積は、傾斜角度θが27°付近で最大値となっている。このため、前述のように、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが49°である場合、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θは約27°に設定されるのが好ましい。
【0039】
図8は、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θaと、生成される撮像画像(撮像画像の一部)の平均画素値との関係の一例を示す図である。
図8に示す関係は、第1傾斜部11aの傾斜角度θaの設計値がθa=49°であり、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θが約27°に設定されている場合に得られたものである。
図8の縦軸は、
図8中に記載の撮像画像の一部の全画素領域についての平均画素値をプロットしたものである。
第1傾斜部11aの傾斜角度θaが、設計値(θa=49°)から外れるほど、設計値に対して想定される方向(Z方向、撮像部2の視軸2Aの方向)とは異なる方向に屈折して進行することになる。このため、
図8に示すように、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが設計値から外れるほど、撮像画像における凹部に相当する画素領域の画素値は小さくなると考えられる。このため、画像処理部3が撮像画像を画像処理することで、撮像画像における明部を抽出すれば、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θaが設計値から外れるほど、設計値通りである場合に比べて、抽出される明部の面積が小さくなると考えられる。したがって、画像処理部3は、画素領域の面積の大小に基づき凹部11の異常を判定(具体的には、明部の面積が所定値以下となれば、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜角度θaに設計値からのずれが生じている可能性があると判定)することが可能である。
図8に示す例では、上記の設定値を適宜設定することで、例えば、「●」でプロットしたデータを異常と判定し、「〇」でプロットしたデータを正常と判定することができる。
【0040】
以上に説明したように、画像処理部3は、撮像画像における所定のしきい値以上の画素値を有する画素領域(明部)を抽出し、この明部の面積の大小に基づき、凹部11の異常(異物の混入や傾斜角度θaのずれ)を判定することが可能である。
ただし、画像処理部3が実行する判定はこれに限るものではなく、第1傾斜部11aの傾斜角度θaの基準角度(設計値)からのずれ方向を判定するように構成することも可能である。
【0041】
図9は、画像処理部3が実行する傾斜角度θaのずれ方向の判定手順を説明する図である。
図9に示すように、画像処理部3は、撮像画像における所定の第1しきい値以上の画素値を有する第1画素領域を抽出すると共に、撮像画像における第1しきい値より大きな所定の第2しきい値以上の画素値を有する第2画素領域を抽出する。第1しきい値は、撮像画像を8ビットで量子化する場合、例えば、60~128の範囲内の値に設定される。なお、
図9では、便宜上、抽出される第1画素領域の輪郭のみを図示している。また、第2しきい値は、撮像画像を8ビットで量子化する場合、例えば、250に設定される。前述の異常判定に用いる明部は、第2画素領域に相当する。
【0042】
そして、画像処理部3は、第1画素領域の重心座標と第2画素領域の重心座標とを算出する。この重心座標は、凹部11の第1傾斜部11aの傾斜方向(照明部1の光軸1Aの傾斜方向)についての重心座標を意味するため、本実施形態では、X方向の重心座標である。より具体的には、画像処理部3は、撮像画像から抽出された、第1画素領域全体の重心座標の平均値Gx1及び第2画素領域全体の重心座標の平均値Gx2を算出する。そして、画像処理部3は、Gx1とGx2との差(Gx1-Gx2)に基づき(Gx1とGx2との差の正負に基づき)、第1傾斜部11aの傾斜角度θaの基準角度(設計値)からのずれ方向を判定する。
図9に示す例では、傾斜角度θa=45.2°、傾斜角度θa=44.7°のとき、Gx1とGx2との差は負の値となっている。
図9に示す例では、傾斜角度θaの基準角度(設計値)はθa=49 °であるため、Gx1とGx2との差が負の値のときには、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが基準角度(設計値)よりも小さな角度になっていると正しく判定できることが分かる。なお、結果の図示を省略するが、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが基準角度(設計値)よりも大きな角度になっている場合には、Gx1とGx2との差が正の値になることが確認できている。このため、Gx1とGx2との差が正の値のときには、第1傾斜部11aの傾斜角度θaが基準角度(設計値)よりも大きな角度になっていると正しく判定できるといえる。
【0043】
なお、本実施形態では、ロールツーロール方式で長手方向に搬送される長尺の光学部材10を検査する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、所定の長さに切断した光学部材10を静止させた状態で、撮像部2として2次元エリアカメラを用いて検査することも可能である。
【0044】
また、本実施形態では、光学部材10に設けられた凹部11の長さLの方向(
図3(b)参照)が、光学部材10の長手方向に直交する方向(Y方向)に合致する(
図2(b)参照)場合を例に挙げて説明したが、凹部11の長さLの方向が光学部材10の長手方向(X方向)に合致する場合もある。この場合には、凹部11の第1傾斜部11aがY方向に傾斜(X方向周りに傾斜)することになるため、照明部1の光軸1AもY方向に傾斜(X方向周りに傾斜)するように配置すればよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、凹部11の傾斜部の傾斜角度の異常については、第1傾斜部11aの傾斜角度θaの異常を検査する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。第2傾斜部11bの傾斜角度θbの異常を検査する場合には、第2傾斜部11bに対して光が照射されるように、照明部1の光軸1Aの傾斜角度θを設定すればよい。また、第1傾斜部11aの傾斜角度θa及び第2傾斜部11bの傾斜角度θbの双方の異常を検査する場合には、例えば、第1傾斜部11aに対して光が照射されるように光軸の傾斜角度が設定された照明部と、第2傾斜部11bに対して光が照射されるように光軸の傾斜角度が設定された照明部とを別個に設け、各照明部から一定の周期毎に交互に切り替えて光を出射し、各照明部から出射された光を共通する撮像部2で撮像する態様を採用可能である。或いは、照明部毎に用いる撮像部を別個に設ける態様を採用することも考えられる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・照明部
1A・・・光軸
2・・・撮像部
2A・・・視軸
3・・・画像処理部
10・・・光学部材
10a・・・一方の表面
10b・・・他方の表面
11・・・凹部
11a・・・第1傾斜部(傾斜部)
100・・・検査装置
θ・・・傾斜角度
θa・・・傾斜角度