(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142314
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】板金屋根の施工システム及び施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 1/06 20060101AFI20230928BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230928BHJP
【FI】
E04D1/06 Z ESW
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049163
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】518116156
【氏名又は名称】株式会社LIXIL TEPCOスマートパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘男
(72)【発明者】
【氏名】柏木 秀
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】専門の熟練工によらずとも簡単に板金屋根を施工できる板金屋根の施工システム及び施工方法を提供すること。
【解決手段】板金屋根の施工現場における調査結果データ及び/又は施工現場における屋根の設計データを取得するデータ取得部10と、データ取得部10で取得されたデータに基づいて、予め工場で板金屋根の部材をプレ加工するためのプレ加工データを生成するプレ加工データ生成部20と、プレ加工データ生成部20で生成されたプレ加工データに基づいて予め工場でプレ加工された部材を用いて、施工現場で板金屋根を施工するための施工データを生成する施工データ生成部40と、を備える、板金屋根の施工システム1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金屋根の施工システムであって、
前記板金屋根の施工現場における調査結果データ及び/又は前記施工現場における屋根の設計データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得されたデータに基づいて、予め工場で前記板金屋根の部材をプレ加工するためのプレ加工データを生成するプレ加工データ生成部と、
前記プレ加工データ生成部で生成されたプレ加工データに基づいて予め前記工場でプレ加工された部材を用いて、前記施工現場で前記板金屋根を施工するための施工データを生成する施工データ生成部と、を備える、板金屋根の施工システム。
【請求項2】
前記プレ加工データには、前記板金屋根の役物のプレ加工データが含まれる、請求項1に記載の板金屋根の施工システム。
【請求項3】
前記プレ加工データには、前記部材を切断加工するための切断プレ加工データと、前記部材を折り曲げ加工するための折り曲げプレ加工データが含まれる、請求項1又は2に記載の板金屋根の施工システム。
【請求項4】
前記プレ加工データには、前記プレ加工された部材に、前記施工現場における屋根の部位に対応した識別記号を付すための識別記号付与データが含まれる、請求項1から3いずれかに記載の板金屋根の施工システム。
【請求項5】
前記板金屋根は、石付き板金屋根であり、
前記プレ加工データには、前記プレ加工された部材を補修加工するための補修プレ加工データが含まれる、請求項1から4いずれかに記載の板金屋根の施工システム。
【請求項6】
前記施工データには、前記部材に付された識別記号に基づいて前記施工現場で前記部材を組み立てる組立データが含まれる、請求項4又は5に記載の板金屋根の施工システム。
【請求項7】
前記施工データには、太陽光発電機の架台を設置するための太陽光発電架台設置データが含まれる、請求項1から6いずれかに記載の板金屋根の施工システム。
【請求項8】
前記プレ加工された部材を前記施工現場に搬送するための搬送データを生成する搬送データ生成部をさらに備える、請求項1から7いずれかに記載の板金屋根の施工システム。
【請求項9】
前記搬送データ生成部で生成される搬送データに基づいて、前記施工現場で生じた廃棄端材の回収データを作成する回収データ作成部をさらに備える、請求項8に記載の板金屋根の施工システム。
【請求項10】
板金屋根の施工方法であって、
前記板金屋根の施工現場における調査結果データ及び/又は前記施工現場における屋根の設計データを取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で取得されたデータに基づいて、予め工場で前記板金屋根の部材をプレ加工するプレ加工工程と、
前記プレ加工工程でプレ加工された部材を用いて、前記施工現場で前記板金屋根を施工する施工工程と、を備える、板金屋根の施工方法。
【請求項11】
前記プレ加工工程では、前記板金屋根の役物をプレ加工する、請求項10に記載の板金屋根の施工方法。
【請求項12】
前記プレ加工工程では、前記部材を切断プレ加工するとともに、前記部材を折り曲げプレ加工する、請求項10又は11に記載の板金屋根の施工方法。
【請求項13】
前記プレ加工工程では、前記プレ加工された部材に、前記施工現場における屋根の部位に対応した識別記号を付す、請求項10から12いずれかに記載の板金屋根の施工方法。
【請求項14】
前記板金屋根は、石付き板金屋根であり、
前記プレ加工工程では、前記プレ加工された部材を補修加工する、請求項10から13いずれかに記載の板金屋根の施工方法。
【請求項15】
前記施工工程では、前記部材に付された識別記号に基づいて前記施工現場で前記部材を組み立てる、請求項13又は14に記載の板金屋根の施工方法。
【請求項16】
前記施工工程では、太陽光発電機の架台を設置する、請求項10から15いずれかに記載の板金屋根の施工方法。
【請求項17】
前記プレ加工された部材を前記施工現場に搬送する搬送工程をさらに備える、請求項10から16のいずれかに記載の板金屋根の施工方法。
【請求項18】
前記施工工程で生じた廃棄端材を回収する回収工程をさらに備える、請求項10から17のいずれかに記載の板金屋根の施工方法。
【請求項19】
前記搬送工程で生じた搬送データに基づいて、前記施工工程で生じた廃棄端材を回収する回収工程をさらに備える、請求項17に記載の板金屋根の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、板金屋根の施工システム及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板金屋根の施工では、板金屋根の各部材を現場に搬入し、現場にて各部材の切断や折り曲げ等の加工が行われている。特に、屋根の取り合い部等において種々の役物が必要であり、屋根の部位に応じた現場での加工が行われている。そのため、板金屋根の施工には技術の熟練を必要とし、専門の熟練工による施工が必要であった。
【0003】
これに対して、現場で棟役物等を作製しなくても容易に取り付けることが可能な板金棟役物及び屋根の施工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、現場での加工が不要で屋根の施工が容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の技術では、棟役物の構造を工夫することで施工を容易とするものであり、屋根の棟の施工に限定される。また、施工現場の状況というものは現場毎に異なるものであり、特許文献1の技術によっても実際には現場での加工が必要であった。そのため、現場での加工ミスや歩留まり調整により部材不足が発生し、不足部材手配のための現場手待ちや小口発送費用が嵩む等の課題があった。
【0006】
また、近年では屋根への太陽光発電機の設置が増えているところ、この場合には、屋根への太陽光発電機の架台の取付け工事や配電工事についての知識が必要であり、太陽光発電機に関するこれらの知識を有する専門の業者によって太陽光発電機を設置する必要があった。すなわち、太陽光発電機の設置された屋根を施工する場合には、屋根の施工と太陽光発電機の設置を別々の業者によって行う必要があった。そのため、施工前の現場調査等の作業が別々の業者によって二重に行われ、また、屋根の施工と太陽光発電機の設置を並行して行うことができないため、工期が長期化していた。
【0007】
本開示は上記に鑑みてなされたものであり、専門の熟練工によらずとも簡単に板金屋根を施工できる板金屋根の施工システム及び施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、板金屋根の施工システムであって、前記板金屋根の施工現場における調査結果データ及び/又は前記施工現場における屋根の設計データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得されたデータに基づいて、予め工場で前記板金屋根の部材をプレ加工するためのプレ加工データを生成するプレ加工データ生成部と、前記プレ加工データ生成部で生成されたプレ加工データに基づいて予め前記工場でプレ加工された部材を用いて、前記施工現場で前記板金屋根を施工するための施工データを生成する施工データ生成部と、を備える、板金屋根の施工システムに関する。
【0009】
また本開示は、板金屋根の施工方法であって、前記板金屋根の施工現場における調査結果データ及び/又は前記施工現場における屋根の設計データを取得するデータ取得工程と、前記データ取得工程で取得されたデータに基づいて、予め工場で前記板金屋根の部材をプレ加工するプレ加工工程と、前記プレ加工工程でプレ加工された部材を用いて、前記施工現場で前記板金屋根を施工する施工工程と、を備える、板金屋根の施工方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、専門の熟練工によらずとも簡単に板金屋根を施工できる板金屋根の施工システム及び施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る板金屋根の施工システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る板金屋根の施工フローを示す図である。
【
図3】従来の板金屋根の施工フローを示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る板金屋根の施工において部材に識別記号を付す屋根の部位の一例を示す図である。
【
図5】屋根に太陽光発電機を設置する場合の作業工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本実施形態の施工システムを板金屋根のカバー工法によるリフォームの場合に適用した例について説明するが、新築の場合においても適用可能であることはいうまでもない。また、本実施形態の板金屋根の施工方法は、本実施形態の板金屋根の施工システムにより実現可能である。
【0013】
図1は、本実施形態の板金屋根の施工システムを表すブロック線図である。本実施形態の板金屋根の施工システム1は、データ取得部10、プレ加工データ生成部20、搬送データ生成部30、施工データ生成部40を備える。
【0014】
データ取得部10では、板金屋根のカバー工法によるリフォームに際して、現場で既設屋根の調査をした結果、取得したデータをコンピュータに入力することにより取得される。現場での既設屋根の調査としては、屋根の下地の確認、現状の屋根の劣化状況の確認、屋根面の採寸、付帯設備の確認等が挙げられる。なお、新築の場合においては、現場調査が省略されることがある。これらの調査の結果得られた、既設屋根やその付帯設備の必要材料や必要な加工に関するデータは、屋根の設計図面等の設計データとともに、キーボード等のインターフェースからコンピュータに入力されてRAM等のメモリに保存され、入力されたデータは、プレ加工データ生成部20に引き継がれ、処理装置CPUによって順次必要な処理がなされる。
【0015】
プレ加工データ生成部20では、データ取得部10で取得されたデータを用いて、工場で板金屋根の部材のプレ加工を行うためのプレ加工方法、プレ加工手順を策定し、これらをプレ加工データとして生成する。プレ加工データには、部材を切断加工するための切断プレ加工データと、部材を折り曲げ加工するための折り曲げプレ加工データが含まれる。プレ加工データの具体的な加工内容の例としては、例えば、組み立て時に接合が必要となる屋根と付帯設備の接合部に、組み立て時に熟練を必要としない簡易な曲げ加工等によって接合を可能とするために施す加工等がある。
【0016】
板金屋根として、石付き板金屋根が採用されることもあり、その場合のプレ加工データには、石付き板金屋根に特有なプレ加工データとして、プレ加工された部材を補修加工するための補修プレ加工データも含まれる。すなわち、石付き板金屋根とは、板金の表面に細かな石を付着させた屋根材のことであり、この補修プレ加工データは、プレ加工によって石が剥がれた場合に、接着剤や石を用いて補修するための加工方法、加工手順を含むものである。このような石付き板金屋根は、錆に強いガルバリウム鋼板(登録商標)に天然石を吹き付けることで、耐久性がさらに向上し、表面が天然石で装飾されるため色塗りの費用を抑えることができるという効果がある。
【0017】
プレ加工データ生成部20で生成されるプレ加工データには、例えば、ケラバ部分の部材のプレ加工データが含まれる。「ケラバ」とは屋根の外壁から出っ張っている屋根部分の中で、雨樋が付いていない側の部分の名称である。ケラバ部分は、屋根内部への水の侵入を防ぎ、雨漏りを防止する機能を有し、重要な役割を有しているから、従来においては、現場での屋根部材の組み立て作業時にもその加工に注意を必要としていた。屋根材部が屋根の現場に搬送される前に工場での加工(プレ加工)で処理が施されることにより、現場での屋根部材の組み立て作業に神経を使う必要がなくなり、その熟練を不要とする効果がある。
【0018】
このように、プレ加工データ生成部20で生成されるプレ加工データには、屋根の役物のプレ加工データが含まれる。「役物」とは、屋根の先端部や棟(勾配の頂部)等の特殊な場所に使う部材で、一般的には屋根と同じ材料で作られている。役物は現場での加工の難易度が高く、現場でその加工に特に熟練を必要とされているといえるが、現場に持ち込まれる前に加工(プレ加工)されることにより、現場での組み立て作業の熟練を不要とする効果がある。
【0019】
また、プレ加工データ生成部20で生成されるプレ加工データには、板金屋根の部材の各部位に識別記号を付す方法、手順についてのプレ加工データが含まれる。工場での屋根部材の加工時に付された識別記号に基づいて、現場で屋根部材の組み立て作業が行われるため、組み立て時に部材の取付間違いが生じることを防ぐことができるという効果を奏する。この識別記号の具体的内容については、後で詳述する。
【0020】
搬送データ生成部30では、プレ加工データ生成部20で生成されたプレ加工データに基づいて加工された板金屋根の部材を現場に搬送するための搬送計画等の搬送データを生成する。具体的には、加工された板金屋根の部材の梱包、搬送の日程・時間のスケジュール、搬送手段の手配等についての計画を設定する。搬送データ生成部30は、板金屋根の部材のプレ加工が、板金屋根の施工現場と離れた工場で行われるために必要となるシステム構成部である。なお、搬送データには、プレ加工済みの役物についての搬送データも含まれる。加工(プレ加工)済みの役物については、リターナブル梱包に入れて施工業者へ送付される。
【0021】
なお、前記搬送データに基づいて屋根の施工現場で生じた廃棄端材を回収する回収データを作成する回収データ作成部を設けても良い。屋根の施工現場で生じた廃棄端材は、リターナブル梱包に入れて工場へ返送される。端材は、屋根材のサンプル見本として再利用されるなどして活用された後、最終的に工場で廃棄される。これは、環境に配慮した取組みであり、施工工数の削減にも寄与し、さらに、(必要部材の)搬送と(廃棄材の)返却がパッケージされていることで、施工に不慣れな業者でも廃棄までも対応できるようにしているものであるといえる。
【0022】
施工データ生成部40では、搬送データ生成部30で設定された搬送計画に従い搬送された板金屋根の部材を、現場において組み立てるための施工データを生成する。プレ加工データ生成部20で生成されたプレ加工データに基づいて板金屋根の部材に接合部等の加工が施されているため、現場における屋根の組み立てには熟練を要せず、専門の熟練工によってなされる必要はない。
【0023】
施工データ生成部40で生成される施工データに基づいてなされる屋根部材の組立ては、プレ加工データ生成部20で生成されたプレ加工データに基づいてなされたプレ加工時に、板金屋根の部材の各部位に付された識別記号に基づいて行われるため、部材の取付け間違いが生じることを防ぐことができる。
【0024】
また、板金屋根に太陽光発電機を設置する場合には、施工データ生成部40で生成される施工データには、太陽光発電機の架台を板金屋根に設置する方法、手順についての施工データが含まれる。この場合、後に太陽光発電機の配線の工事等の工程が必要となるが、板金屋根部材の組立て作業に熟練を要さないことから、板金屋根部材の組立ての工程、太陽光発電機の架台を屋根に設置する工程及び太陽光発電機の配線の工事等の工程を同一の事業者によって行うことができる。
【0025】
次に、本実施形態の板金屋根の施工方法(施工フロー)について、
図2のフロー図を用いて説明する。一方で、
図3には、従来の施工方法(施工フロー)を説明し、両者を比較する。なお、本実施形態は板金屋根のリフォームについての施工であるが、ここでは、本実施形態の施工フローと従来の施工フローの違いを分かり易くするため、単純化して、板金屋根を含めた一般の屋根のリフォームについての施工フローとして説明する。
【0026】
初めに、
図3を参照して従来の施工フローについて説明する。従来の施工フローにおいては、まず、屋根の施工現場において、屋根に関する調査を行い(ステップS11)、調査結果により得たデータを所定の媒体に入力して保存しておく(ステップS12)。この屋根の現場での調査は、屋根に太陽光発電機を設置する場合には、太陽光発電機の設置の事業者と屋根の施工の事業者の双方で別々に行う必要がある。
【0027】
次に、ステップS12で保存されたデータに基づいて、屋根のリフォーム等に必要となる材料を算定し、その発注を行う(ステップS13)。ステップS13において必要となる材料が揃ったところで、従来の施工フローにおいては、次に、それらの材料を屋根の現場に直接搬送し、屋根部材の組立ての施工を開始することになる(ステップS15)。従来の施工フローにおける屋根の組立て作業には熟練を要し、ここでの組立ての作業は熟練工によってなされる必要がある。
【0028】
組立ての作業は熟練工によってなされるものの、屋根の現場での加工は難易度が高く、部材に凹凸や反りが生じたり加工誤差が生じたりして形状が歪む等の加工ミスが生じることも多く、その場での修復ができない程度の加工ミスとなれば、その度に再度の材料の発注が必要になる。
【0029】
フローにおいてはステップS16で、加工ミス等による材料不足が発生したかを判断し、YESの場合、すなわち、材料不足が発生した場合には、ステップS17に移行し、不足材料の発注を行う。その後、ステップS15に戻り、屋根部材の組立てを再開し、ステップS16の加工ミス等による材料不足が発生したかの判断でNOの回答となるまで、すなわち、材料不足の発生がなく組立作業を完了することができると判断されるまで、ステップS15、ステップS16、ステップS17、ステップS15・・・・のループを繰り返す。
【0030】
そして、ステップS16の加工ミス等による材料不足が発生したかの判断でNOの回答となったときに、初めて、ステップS18の工事の完了へと進むことができる。このように、従来の屋根のリフォームの施工フローにおいては、屋根の組立ての作業は熟練工によってなされる必要がある上、その作業の難易度の高さから、熟練工によってなされたとしても、加工ミスが生じて、材料の再度の発注を必要とし、歩留まりが悪くて非効率的なものであった。
【0031】
次に、
図2を参照して、本実施形態の施工フローについて説明する。本実施形態の施工フローにおいては、まず、屋根の現場において、屋根に関する調査を行い(ステップS21)、調査結果により得たデータを所定の媒体に入力して保存しておく(ステップS22)。ここでのデータは、後のプレ加工の工程における加工部位を踏まえてのデータとなる。また、この屋根の現場での調査は、屋根に太陽光発電機を設置する場合であっても、本実施形態の施工においては、屋根の組立ての施工を専門の熟練工によって行う必要がないため、太陽光発電機の設置と屋根の組立ての施工の双方を同じ事業者によって行うことも可能となる。
【0032】
次に、ステップS22で保存されたデータに基づいて、屋根のリフォーム等に必要となる材料を算定し、その発注を行う(ステップS23)。ステップS23において必要となる材料が揃ったところで、本実施形態の施工フローにおいては、次に、それらの材料を工場に搬送し、屋根部材に、後工程の屋根の組立作業を簡易にするための必要な加工、いわゆるプレ加工、を行う(ステップS24)。工場でのプレ加工は、最先端の精密加工機械を使用することも可能であり、加工ミスを生じる可能性も極めて低く、再度の不足材料を発注する必要もほとんどない。
【0033】
ステップS24でプレ加工が行われた屋根の部材は、屋根の現場へと搬送され、屋根の組立作業の施工が開始される(ステップS25)。本実施形態の屋根の組立作業は、屋根の各部材に組立てを簡易にするための加工が施されているため、熟練を要することなく、かつ、熟練工でなくとも加工ミスを生じる可能性は低く、不足材料を再度発注する必要が生じることもほとんどない。組立作業の施工後には、施工で生じた廃棄端材を回収して組立作業は終了する。廃棄端材の回収においては、プレ加工で形成された屋根の部材を屋根の現場へと搬送したときの搬送データに基づいて行う場合と、そのような搬送データと関係なく行われる場合がある。
【0034】
このように、本実施形態の屋根の施工フローと従来の屋根の施工フローを並べて比較すると、本実施形態の屋根の施工フローにおいては、現場での屋根の組立作業前にプレ加工の工程を加入したことにより、現場での屋根の組立作業において、従来に生じていた、加工ミスによって生じた不足材料の発注を繰り返すような歩留まりの悪さや非効率性を改善できるという顕著な効果を奏することは一目瞭然である。
【0035】
次に、屋根の組立作業の施工において取付け間違いを防止するため、プレ加工時に屋根の各部材の各部位に付する識別記号について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態の屋根100の施工において屋根の各部材に識別記号を付す屋根の部位101~118を示す図である。
【0036】
図4において、屋根の各部位に対応して各部材に識別記号を付す箇所を、組立て後の屋根において丸印で示したものである。
図4からもわかるように、識別記号は、屋根部材の角部であって接合部となる箇所等の、組立て時の重要ポイントとなる箇所に対応する各屋根部材の各箇所に付される。
【0037】
識別記号の具体的内容(ルール)については、事業者毎に決められているものであるが、例えば、「部位記号」―「部材番号」―「軒側から棟側に向かってみたときの左右(位置関係)」をセットにして、「C-5-左」等と付すものがある。
【0038】
屋根の組立作業においては、この識別記号を目印として、各屋根部材を組み立てることができるため、作業を効率的に行うことができ、かつ、各屋根部材の取付の間違いを防ぐことができるという顕著な効果を奏する。
【0039】
次に、屋根に太陽光発電を設置する場合の各事業者の作業工程について、
図5を用いて説明する。
図5は、屋根に太陽光発電を設置する場合の各事業者の作業工程を、従来の施工と本実施形態の施工とで比較できるように両者を並べて示す図である。
【0040】
図5の左側には、従来の施工の作業工程が記載されている。従来の作業工程においては、
図5からもわかるように、屋根組立の施工をする事業者(屋根工事店)と、屋根に太陽光発電機の設置を行う事業者(太陽光発電機工事店)が、それぞれ別個に作業を行う。
【0041】
実際に屋根の組立作業や太陽光発電機の設置の作業を行う前には、現場での調査が必要となり、その具体的内容としては、屋根下地の確認、屋根劣化状況の確認、屋根面の採寸(又は太陽光発電機設置面の採寸)、付帯設備の確認等の作業が挙げられるが、それらは、同じ内容の作業を、屋根組立の施工をする事業者(屋根工事店)と屋根に太陽光発電機の設置を行う事業者(太陽光発電機工事店)の両者で別個に行わなければならない。すなわち、従来の施工においては、1つの同じ内容の作業を2度行わなければならず、非効率であった。
【0042】
現場での調査の終了後には、まず、屋根組立の施工をする事業者(屋根工事店)によって屋根部材の組立ての作業が開始される。屋根部材の組立ての作業としては、ルーフィング加工、水切り板金取付、屋根本体取付、屋根仕上げ加工、化粧処理等の作業が順次行われるが、これらの作業の全てが終了するまで、太陽光発電機の設置を行う事業者(太陽光発電機工事店)は太陽光発電機の設置の作業を開始することができない。屋根部材の組立ての作業の工程期間は、太陽光発電機の設置を行う事業者(太陽光発電機工事店)にとっては待機の期間となる。
【0043】
屋根部材の組立ての作業の終了後に、初めて、太陽光発電機の設置を行う事業者(太陽光発電機工事店)は太陽光発電機の設置の作業を開始することができる。太陽光発電機の設置の作業としては、太陽光発電機架台設置、太陽光発電機設置、電気工事、竣工検査等の作業が順次行われる。これらの作業は、屋根部材の組立ての作業と並行して行うことは一切できない。このため作業全体の工期は長くなり、しかも非効率であった。
【0044】
一方で、
図4の右側には、本実施形態の施工の工程の作業が記載されている。本実施形態の施工の工程の作業においては、屋根部材の組立ての作業に熟練が不要となったため、例えば、屋根組立の施工と屋根への太陽光発電機の設置の両方を行う事業者(屋根工事・太陽光発電機工事協力店)を創設して、単独の事業者によって行うことができる。
【0045】
これにより、屋根の組立作業や太陽光発電機の設置の作業を行う前の現場での調査の作業、その具体的内容としては、屋根下地の確認、屋根劣化状況の確認、屋根面の採寸(又は太陽光発電機設置面の採寸)、付帯設備の確認等の作業は、1つの事業者(屋根工事・太陽光発電機工事協力店)によって1度行われるだけで良くなり、効率化が進んだといえる。
【0046】
現場での調査の終了後には、屋根組立の施工の作業と、太陽光発電機の屋根への設置の作業が順次行われるが、これらは1つの事業者(屋根工事・太陽光発電機工事協力店)によって行われるため、事業者に待機の期間は存在しない。また、それぞれの一部の作業(具体的には、屋根組立の施工における屋根仕上げ加工の作業と太陽光発電機の屋根への設置における電気工事の作業、並びに、屋根組立の施工における化粧処理の作業と太陽光発電機の屋根への設置における竣工検査の作業)は、並行して行うことも可能となるから、工程の工期を短縮することができ、また、作業効率も改善される。
【0047】
以上説明したように、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、現場で板金屋根の部材を組み立てる前に板金屋根の部材の加工がなされることにより、従来においては熟練が必要であった現場での組み立て時の板金の加工が不要になり、現場で板金屋根の部材の組立てを熟練工によらずとも容易に行うことが可能となる。
【0048】
石付き板金屋根は意匠性が高い反面、現場での加工が困難で、特に熟練を必要とするとされているが、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、石付き板金屋根であっても現場での部材の組立てを熟練工によらずともなすことができる。
【0049】
屋根のケラバ部分は、現場での屋根部材の組み立て作業時にもその加工に注意を必要としていたが、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、ケラバ部分の部材の加工においても現場での部材の組み立て時に神経を使う必要がなくなる。
【0050】
屋根の役物は現場での加工の難易度が高く、現場でのその加工に特に熟練を必要とするとされているが、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、現場での部材の組立て時の加工を必要としない。
【0051】
また、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、上述のように、現場で板金屋根の部材の組立てを熟練工によらずともなすことができるから、現場での板金屋根の部材の組立てを、太陽光発電機を設置する事業者が行うこともできる。すなわち、現場での板金屋根の部材の組立てと太陽光発電機の設置を同一の事業者によって行うことが可能となり、同じ作業が別々の事業者によって二重に行わる必要があるというコスト面でのデメリットが解消されるとともに、異なる一連の作業を並行して行うことができるため工期を短縮することができる。
【0052】
本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、工場での屋根部材の加工時に付された識別記号に基づいて、現場で屋根部材の組み立て作業が行われるため、組み立て時に部材の取付間違いが生じることを防ぐことができる。
【0053】
さらに、本開示の板金屋根の施工システム及び施工方法によれば、廃棄端材の工場での再利用等、環境に配慮した取組みをなすことができるとともに、施工工数の削減にも寄与し、さらに、(必要部材の)搬送と(廃棄材の)返却がパッケージされていることで、施工に不慣れな業者でも廃棄までも対応することができるという副次的効果も生ずる。
【0054】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良は本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 板金屋根の施工システム
10 データ取得部
20 プレ加工データ生成部
30 搬送データ生成部
40 施工データ生成部
100 屋根
101~118 部材に識別記号を付す屋根の部位