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特開2023-142322直流配電システムにおける無極性回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142322
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】直流配電システムにおける無極性回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G05F1/56 320G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049175
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390025737
【氏名又は名称】株式会社新陽社
(71)【出願人】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 直哉
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430EE04
5H430EE08
5H430EE09
5H430LA16
(57)【要約】
【課題】電圧降下による損失を抑えた無極性回路を提供する。
【解決手段】一端に電源1が接続され、他端に負荷2が接続される第1電路31及び第3電路33を備え、第1電路31上及び第3電路33上には、第1LED4が設けられ、第1LED4と並列に、第2LED5が設けられ、第1電路13上の第1LED4より電圧が下位の位置に、第1FETNch61が直列に設けられ、第2FETPch71のソースが第1LED4より電圧が下位の位置で第1電路31に接続され、第2FETPch71のドレインが負荷2より電圧が下位の位置で第3電路33に接続され、第3電路33上の負荷より電圧が下位の位置に、第4FETPch91が直列に設けられ、第3FETNch81のソースが第1LED4より電圧が上位の位置で第3電路33に接続され、第3FETNch81のドレインが負荷2より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されている構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源を順接続、あるいは逆接続しても動作する無極性回路であって、
一端に電源の正極が接続され、他端に負荷の一端が接続される第1電路と、
一端に前記電源の負極が接続され、他端に負荷の他端が接続される第3電路を備え、
前記第1電路上には、電圧下位方向にカソードが向くように第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第3電路上には、電圧下位方向にアソードが向くように前記第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第1半導体発光素子と並列に、前記第1半導体発光素子の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子が設けられ、
前記第1電路上の前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNchが、電圧下位方向にドレインが接続され、電圧上位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
第2電界効果トランジスタPchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタPchのドレインが前記負荷より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第1電界効果トランジスタNch及び前記第2電界効果トランジスタPchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第3電路上の前記負荷より電圧が下位の位置に、第4電界効果トランジスタPchが、電圧上位方向にドレインが接続され、電圧下位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
第3電界効果トランジスタNchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第3電界効果トランジスタNchのドレインが前記負荷より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第3電界効果トランジスタNch及び前記第4電界効果トランジスタPchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続されていることを特徴とする、無極性回路。
【請求項2】
電源を順接続、あるいは逆接続しても動作する無極性回路であって、
一端に電源の正極が接続され、他端に負荷の一端が接続される第1電路と、
一端に前記電源の負極が接続され、他端に負荷の他端が接続される第3電路を備え、
前記第1電路上には、電圧下位方向にカソードが向くように第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第3電路上には、電圧下位方向にアソードが向くように前記第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第1半導体発光素子と並列に、前記第1半導体発光素子の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子が設けられ、
前記第1電路上の前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNchが、電圧下位方向にドレインが接続され、電圧上位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
前記第1電界効果トランジスタNchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
第2電界効果トランジスタNchのドレインが前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタNchのソースは、第2電路を通じて、前記負荷より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタNchのゲートは、第5電路を通じて、前記第2電路に接続され、
前記第5電路は、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で、かつ第3電界効果トランジスタNchのドレインより電圧が下位の位置で、前記第3電路に接続され、
前記第5電路上には、前記第2電路方向にアノードが向くように、定電圧半導体素子が直列に設けられ、
前記第3電路上の前記負荷より電圧が下位の位置に、前記第3電界効果トランジスタNchが、電圧上位方向にソースが接続され、電圧下位方向にドレインが接続されて直列に設けられ、
前記第3電界効果トランジスタNchのゲートは、第4電路を通じて、前記第3電路に接続され、
前記第4電路は、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で、かつ前記第1電界効果トランジスタNchのソースより電圧が上位の位置で、前記第1電路に接続され、
前記第4電路上には、前記第3電路方向にアノードが向くように、定電圧半導体素子が直列に設けられ、
第4電界効果トランジスタNchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第4電界効果トランジスタNchのドレインが前記負荷より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第4電界効果トランジスタNchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続されていることを特徴とする、無極性回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源の極性を順接続した場合、あるいは逆接続した場合であっても、回路が動作する無極性回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流配電用LED照明装置等の負荷に電力を供給する電源には、極性があるため、逆接続すると、負荷が破損するおそれがある。
【0003】
そのため、従来から電源の極性を逆に接続した場合に、負荷の破損を防止し、負荷を保護するために、電源の電圧を検出し、適正であれば、ON(=電路を導通)させる、あるいは、不適切であれば、OFF(=電路を遮断)させる、コンパレータ等を用いた電圧検出回路を設ける構成が開示されている。
【0004】
また、電源の極性を逆に接続した場合に、電流が流れないように、電路に直列に、ダイオードを設ける構成が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、従来技術として、正側の電源端子と負側の電源端子との間には、ダイオードと保護対象となる電気回路とが直列に接続される構成が開示されている。この構成では、電源が逆接続されて、負側の電源端子の電位が正側の電源端子の電位よりも高い場合には、ダイオードにより電流が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-314032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電圧検出回路を設ける構成の場合、電圧検出用に別途回路を構成する必要があり、不便である。
【0008】
また、電路に直列にダイオードを設ける構成の場合、一般的なPN接合のダイオードは、電圧降下Vによって、約0.6(V)の電圧降下・電力損失が生じてしまう。回路内を流れる電流量が多い場合や電圧が大きい場合には、0.6(V)程度の電圧降下・電力損失は、あまり問題にならない。しかし、回路内に流れる電流量が少ない場合や電圧が小さい場合には、0.6(V)程度であっても、大きな損失となり、問題となる。
【0009】
ところで、電源を逆接続した場合に、負荷を破損させないための方策として、電源の極性を順接続した場合、あるいは逆接続した場合であっても、回路が動作するように、無極性回路を作るという方策もある。そして、無極性化においては、ダイオードブリッジを回路内に設ける構成が知られている。
【0010】
しかしながら、ダイオードブリッジを回路内に設ける構成の場合、ダイオード分の電圧降下V(V2個分)の損失が発生すること、そして、その熱処理について検討・対処しなければならない
【0011】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するものとして、電圧降下による損失を抑えた無極性回路を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、
電源を順接続、あるいは逆接続しても動作する無極性回路であって、
一端に電源の正極が接続され、他端に負荷の一端が接続される第1電路と、
一端に前記電源の負極が接続され、他端に負荷の他端が接続される第3電路を備え、
前記第1電路上には、電圧下位方向にカソードが向くように第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第3電路上には、電圧下位方向にアソードが向くように前記第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第1半導体発光素子と並列に、前記第1半導体発光素子の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子が設けられ、
前記第1電路上の前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNchが、電圧下位方向にドレインが接続され、電圧上位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
第2電界効果トランジスタPchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタPchのドレインが前記負荷より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第1電界効果トランジスタNch及び前記第2電界効果トランジスタPchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第3電路上の前記負荷より電圧が下位の位置に、第4電界効果トランジスタPchが、電圧上位方向にドレインが接続され、電圧下位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
第3電界効果トランジスタNchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第3電界効果トランジスタNchのドレインが前記負荷より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第3電界効果トランジスタNch及び前記第4電界効果トランジスタPchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続されている、無極性回路とした。
【0013】
また、請求項2の発明は、
電源を順接続、あるいは逆接続しても動作する無極性回路であって、
一端に電源の正極が接続され、他端に負荷の一端が接続される第1電路と、
一端に前記電源の負極が接続され、他端に負荷の他端が接続される第3電路を備え、
前記第1電路上には、電圧下位方向にカソードが向くように第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第3電路上には、電圧下位方向にアソードが向くように前記第1半導体発光素子が直列に設けられ、
前記第1半導体発光素子と並列に、前記第1半導体発光素子の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子が設けられ、
前記第1電路上の前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNchが、電圧下位方向にドレインが接続され、電圧上位方向にソースが接続されて直列に設けられ、
前記第1電界効果トランジスタNchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
第2電界効果トランジスタNchのドレインが前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタNchのソースは、第2電路を通じて、前記負荷より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第2電界効果トランジスタNchのゲートは、第5電路を通じて、前記第2電路に接続され、
前記第5電路は、前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で、かつ第3電界効果トランジスタNchのドレインより電圧が下位の位置で、前記第3電路に接続され、
前記第5電路上には、前記第2電路方向にアノードが向くように、定電圧半導体素子が直列に設けられ、
前記第3電路上の前記負荷より電圧が下位の位置に、前記第3電界効果トランジスタNchが、電圧上位方向にソースが接続され、電圧下位方向にドレインが接続されて直列に設けられ、
前記第3電界効果トランジスタNchのゲートは、第4電路を通じて、前記第3電路に接続され、
前記第4電路は、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で、かつ前記第1電界効果トランジスタNchのソースより電圧が上位の位置で、前記第1電路に接続され、
前記第4電路上には、前記第3電路方向にアノードが向くように、定電圧半導体素子が直列に設けられ、
第4電界効果トランジスタNchのソースが前記第1半導体発光素子より電圧が上位の位置で前記第3電路に接続され、
前記第4電界効果トランジスタNchのドレインが前記負荷より電圧が上位の位置で前記第1電路に接続され、
前記第4電界効果トランジスタNchのゲートは、前記第1半導体発光素子より電圧が下位の位置で前記第3電路に接続されている、無極性回路とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る無極性回路を適用・使用することによって、電源を接続する際に、極性に留意する必要がなくなり、便宜である。
【0015】
ダイオードブリッジを回路内に設ける構成ではなく、電界効果トランジスタ(FET)を回路内に設ける構成にすることで、電圧降下・電力損失を最小限に抑えることができる。
【0016】
電界効果トランジスタを「ON」するためには、ゲートの電位がソースの電位より高くならなければならない。本発明に係る無極性回路では、半導体発光素子の順方向電圧(V)・電圧降下を利用して、ソースの電位を下げているため、無極性回路に接続される負荷が半導体発光素子の基板の場合、効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態例1の無極性回路の構成図である。
図2】本発明の実施の形態例1の無極性回路に係る電界効果トランジスタの概念構成図である。
図3】本発明の実施の形態例1の無極性回路に係る電界効果トランジスタの動作を示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態例1の無極性回路に係る電界効果トランジスタの動作を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態例1の無極性回路の動作を示す説明図である。
図6】本発明の実施の形態例1の無極性回路の動作を示す説明図である。
図7】本発明の実施の形態例2の無極性回路の構成図である。
図8】本発明の実施の形態例2の無極性回路の動作を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態例2の無極性回路の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態例1)
まず、本発明の実施の形態例1の無極性回路Aの構成を図1に基づいて説明する。無極性回路Aは、電源の極性を順接続した場合、あるいは逆接続した場合であっても、動作する回路である。
【0019】
<無極性回路Aの構成>
図1に示すように、無極性回路Aは、一端に直流の電源1の正極が接続され、他端に負荷2の一端が接続される第1電路31と、一端に電源1の負極が接続され、他端に負荷2の他端が接続される第3電路33を備えている。なお、図1では、電源1の極性を順接続した場合を示しており、各素子の配置もそれを踏まえて説明する。
【0020】
第1電路31上には、電圧下位方向にカソード(図1では「K」と示されている)が向くように第1半導体発光素子(LED)4が直列に設けられている。そして、第3電路33上には、電圧下位方向にアソード(図1では「A」と示されている)が向くように第1半導体発光素子4が直列に設けられている。また、第1電路31及び第3電路電路33上の第1半導体発光素子4と夫々並列に、第1半導体発光素子4の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子(LED)5が設けられている。
【0021】
第1電路31上の第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNch(Nチャネル)61が、電圧下位方向にドレイン(図1では「D」と示されている)が接続され、電圧上位方向にソース(図1では「S」と示されている)が接続されて直列に設けられている。
【0022】
第2電界効果トランジスタPch(Pチャネル)71のソースが第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第1電路31に接続され、第2電界効果トランジスタPch71のドレインが負荷2より電圧が下位の位置で第3電路33に接続されている。
【0023】
第1電界効果トランジスタNch61及び第2電界効果トランジスタPch71のゲート(図1では「G」と示されている)は、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されている。
【0024】
第3電路33上の前記負荷2より電圧が下位の位置に、第4電界効果トランジスタPch91が、電圧上位方向にドレインが接続され、電圧下位方向にソースが接続されて直列に設けられている。
【0025】
第3電界効果トランジスタNch81のソースが第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第3電路33に接続され、第3電界効果トランジスタNch81のドレインが負荷2より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されている。
【0026】
第3電界効果トランジスタNch81及び第4電界効果トランジスタPch91のゲートは、第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第3電路33に接続されている。
【0027】
<電界効果トランジスタの電流の流れ>
次に、第1~第4電界効果トランジスタの電流の流れについて説明する。本実施の形態例1における、第1電界効果トランジスタNch61及び第3電界効果トランジスタNch81は、nチャネルMOS-FET(絶縁ゲート電界効果トランジスタ)である。また、第2電界効果トランジスタPch71及び第3電界効果トランジスタPch91は、pチャネルMOS-FETである。以下では、nチャネルMOS-FETである第1電界効果トランジスタNch61を例に挙げて、電界効果トランジスタの電流の流れを説明する。なお、第3電界効果トランジスタNch81は、第1電界効果トランジスタNch61と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0028】
図2に示すように、一般的に、第1電界効果トランジスタNch61は、p型半導体611と、n型半導体612が接合して構成されている。詳しくは、ソース(S)-ドレイン(D)間で、「n型半導体612→p型半導体611→n型半導体612」と接合して構成されている。そして、第1電界効果トランジスタNch61は、ドレイン(D)、ソース(S)、ゲート(G)という3つの電極を有している。ドレイン(D)及びソース(S)は夫々、n型半導体612に接続されている。また、ソース(S)は、n型半導体612だけでなく、p型半導体611にも接続されている。ゲート(G)は、例えば金属製であり、酸化絶縁膜613を介して、p型半導体611に接続されている。
【0029】
ドレイン(D)・ソース(S)間に、ドレイン(D)+極性(プラス極性)で電圧を印加し、また、ゲート(G)・ソース(S)間に、ゲート(G)+極性(プラス極性)で電圧を印加する。すると、図3に示すように、酸化絶縁膜613直下のp型半導体611(反転層614)に電子が引き寄せられ、p型半導体611がn型半導体に変化する(反転する)。そして、ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる。
【0030】
一方、pチャネルMOS-FETである第2電界効果トランジスタPch71及び第4電界効果トランジスタPch91では、ソース(S)-ドレイン(D)間で、「p型半導体→n型半導体→p型半導体」と接合して構成されている。ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧を印加し、また、ゲート(G)・ソース(S)間に、ゲート(G)-極性(マイナス極性)で電圧を印加すると、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0031】
ところで、上述したように、第1電界効果トランジスタNch61は、p型半導体611と、n型半導体612が接合して構成されている。また、ソース(S)は、n型半導体612だけでなく、p型半導体611にも接続されている。従って、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧を印加すると、図4に示すように、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。これは、電界効果トランジスタ(FET)が、構造上、p型半導体とn型半導体が接合していることによって、ドレイン(D)・ソース(S)間で形成される、ボディダイオード(寄生ダイオード)のはたらきによるものである。
【0032】
一方、pチャネルMOS-FETである第2電界効果トランジスタPch71及び第4電界効果トランジスタPch91では、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ドレイン(D)+極性(プラス極性)で電圧を印加すると、ボディダイオードのはたきによって、ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる。
【0033】
<無極性回路Aの動作(順接続の場合)>
次に、本発明の実施の形態例1の無極性回路Aの動作について説明する。図5に示すように、電源1を無極性回路Aに順接続した場合、「電源1→第1電路31上の第1半導体発光素子4→第1電界効果トランジスタNch61→負荷2→第4電界効果トランジスタPch91→第2半導体発光素子5→電源1」の経路で、電流が流れる。
【0034】
なお、第1電界効果トランジスタNch61では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0035】
また、第4電界効果トランジスタPch91では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ドレイン(D)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる。
【0036】
<無極性回路Aの動作(逆接続の場合)>
次に、図6に示すように、電源1を無極性回路Aに逆接続した場合、「電源1→第3電路33上の第1半導体発光素子4→第3電界効果トランジスタNch81→負荷2→第2電界効果トランジスタPch71→第2半導体発光素子5→電源1」の経路で、電流が流れる。
【0037】
なお、第3電界効果トランジスタNch81では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0038】
また、第2電界効果トランジスタPch71では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ドレイン(D)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる。
【0039】
なお、上述したように、電源1の極性を順接続した場合、第1電界効果トランジスタNch61のゲート(図1では「G」と示されている)は、第1電路31上の第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されていることとなる。また、第4電界効果トランジスタPch91のゲートは、第3電路33上の第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第3電路33に接続されていることとなる。また、電源1の極性を逆接続した場合、第3電界効果トランジスタNch81のゲートは、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第3電路33に接続されていることとなる。また、第2電界効果トランジスタPch71のゲートは、第1電路31上の第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第1電路31に接続されていることとなる。即ち、電源1が電圧を印加した場合、第1電界効果トランジスタNch61のゲート、あるいは第3電界効果トランジスタNch81のゲートは、対応するソースよりも、第1半導体発光素子4及び第2半導体発光素子5の電圧降下の分、電位が高くなる。一方、第2電界効果トランジスタPch71のゲート、あるいは第4電界効果トランジスタPch91のゲートは、対応するソースよりも、第1半導体発光素子4及び第2半導体発光素子5の電圧降下の分、電位が低くなる。そのため、電源1を順接続した場合、第1電界効果トランジスタNch61及び第4電界効果トランジスタPch91が「ON」となり、ドレイン(D)・ソース(S)間が導通する。また、電源1を逆接続した場合、第2電界効果トランジスタPch71及び第3電界効果トランジスタNch81が「ON」となり、ドレイン(D)・ソース(S)間が導通する。
【0040】
このように本発明の実施の形態例1の無極性回路Aを構成することによって、電源1を接続する際に、極性に留意する必要がなくなり、便宜である。
【0041】
また、ダイオードブリッジを回路内に設ける構成ではなく、電界効果トランジスタを回路内に設ける構成にすることで、電圧降下・電力損失を最小限に抑えることができる。
【0042】
更に、電界効果トランジスタを「ON」させ、ドレイン(D)・ソース(S)間を導通させるためには、ゲートの電位がソースの電位より高くならなければならない。本実施の形態例1に係る無極性回路Aでは、第1半導体発光素子4及び第2半導体発光素子5の順方向電圧(V)・電圧降下を利用して、ソースの電位を下げているため、無極性回路Aに接続される負荷2が半導体発光素子の基板の場合、効率が良い。
【0043】
(本実施の形態例2)
なお、上述した、本発明の実施の形態例1の無極性回路Aでは、Nchの電界効果トランジスタと、Pchの電界効果トランジスタを用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではない。以下の本発明の実施の形態例2では、Nchの電界効果トランジスタのみを用いて構成された無極性回路Bについて説明する。
【0044】
<無極性回路Bの構成>
図7に示すように、無極性回路Bは、一端に電源1の正極が接続され、他端に負荷2の一端が接続される第1電路31と、一端に電源1の負極が接続され、他端に負荷2の他端が接続される第3電路33を備えている。なお、図7では、電源1の極性を順接続した場合を示しており、各素子の配置もそれを踏まえて説明する。
【0045】
第1電路31上には、電圧下位方向にカソード(図7では「K」と示されている)が向くように第1半導体発光素子4が直列に設けられている。そして、第3電路33上には、電圧下位方向にアソード(図7では「A」と示されている)が向くように第1半導体発光素子4が直列に設けられている。また、第1電路31及び第3電路電路33上の第1半導体発光素子4と夫々並列に、第1半導体発光素子4の向きとは逆の向きになるように第2半導体発光素子5が設けられている。
【0046】
第1電路31上の第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置に、第1電界効果トランジスタNch61が、電圧下位方向にドレインが接続され、電圧上位方向にソースが接続されて直列に設けられている。
【0047】
第1電界効果トランジスタNch61のゲートは、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されている。
【0048】
第2電界効果トランジスタNch101のドレインが第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第1電路31に接続され、第2電界効果トランジスタNch101のソースは、第2電路32を通じて、負荷2より電圧が下位の位置で第3電路33に接続されている。
【0049】
第2電界効果トランジスタNch101のゲートは、第5電路35を通じて、第2電路32に接続されている。
【0050】
第5電路35は、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で、かつ後述する第3電界効果トランジスタNch81のドレインより電圧が下位の位置で、第3電路33に接続されている。
【0051】
第5電路35上では、第3電路33に近い順に、抵抗131と、定電圧素子121が直列に設けられている。なお、定電圧素子121は、第2電路32方向にアノード(図7では「A」と示されている)が向くように、設けられている。この第5電路35上の抵抗131の抵抗値は、例えば、1(MΩ)である。そして、第5電路35上に設けられた定電圧素子121は、第2電界効果トランジスタ101のゲートに過度な電圧を印加させることなく、適度な電圧を印加させ、第2電界効果トランジスタ101を「ON」させる役割を果たす。定電圧素子121に定電圧を発生させるためには、定電圧素子121に微弱な電流を流す必要がある。そのため、抵抗131は、第5電路35上に流れる電流を消費させる役割を果たす。
【0052】
第2電路32上の、第2電界効果トランジスタ101のソースと第5電路35の接続点の間の箇所と、第5電路35上の、第2電界効果トランジスタ101のゲートの接続点と定電圧素子121の間の箇所を接続する第6電路36上に、抵抗141が設けられている。この抵抗141の抵抗値は、例えば、1(MΩ)である。この抵抗141は、第2電界効果トランジスタ101に溜まった電荷を消費させる役割を果たす。電荷を消費させておけば、第2電界効果トランジスタ101が誤って「ON」し、ドレイン・ソース間が導通してしまうことを防止できる。
【0053】
第3電路33上の負荷2より電圧が下位の位置に、第3電界効果トランジスタNch81が、電圧上位方向にソースが接続され、電圧下位方向にドレインが接続されて直列に設けられている。
【0054】
第3電界効果トランジスタNch81のゲートは、第4電路34を通じて、第3電路33に接続されている。
【0055】
第4電路34は、第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で、かつ第1電界効果トランジスタNch61のソースより電圧が上位の位置で、第1電路31に接続されている。
【0056】
第4電路34上では、第1電路31に近い順に、抵抗131と、定電圧素子121が直列に設けられている。なお、定電圧素子121は、第3電路33方向にアノード(図7では「A」と示されている)が向くように、設けられている。この第4電路34上の抵抗131の抵抗値は、例えば、1(MΩ)である。そして、第4電路34上に設けられた定電圧素子121は、第3電界効果トランジスタ81のゲートに過度な電圧を印加させることなく、適度な電圧を印加させ、第3電界効果トランジスタ81を「ON」させる役割を果たす。定電圧素子121に定電圧を発生させるためには、定電圧素子121に微弱な電流を流す必要がある。そのため、抵抗131は、第4電路34上に流れる電流を消費させる役割を果たす。
【0057】
第3電路33上の、第3電界効果トランジスタ81のソースと第4電路34の接続点の間の箇所と、第4電路34上の、第3電界効果トランジスタ81のゲートの接続点と定電圧素子121の間の箇所を接続する第7電路37上に、抵抗141が設けられている。この抵抗141の抵抗値は、例えば、1(MΩ)である。この抵抗141は、第3電界効果トランジスタ81に溜まった電荷を消費させる役割を果たす。電荷を消費させておけば、第3電界効果トランジスタ81が誤って「ON」し、ドレイン・ソース間が導通してしまうことを防止できる。
【0058】
第4電界効果トランジスタNch111のソースが第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第3電路33に接続され、第4電界効果トランジスタNch111のドレインが負荷2より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されている。
【0059】
第4電界効果トランジスタNch111のゲートは、第1半導体発光素子4より電圧が下位の位置で第3電路33に接続されている。
【0060】
<無極性回路Bの動作(順接続の場合)>
次に、本発明の実施の形態例2の無極性回路Bの動作について説明する。図8に示すように、電源1を無極性回路Bに順接続した場合、「電源1→第1電路31上の第1半導体発光素子4→第1電界効果トランジスタNch61→負荷2→第3電界効果トランジスタNch81→第2半導体発光素子5→電源1」の経路で、電流が流れる。
【0061】
なお、第1電界効果トランジスタNch61及び第3電界効果トランジスタNch81では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0062】
また、第1電界効果トランジスタNch61のゲートは、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第1電路31に接続されているため、ソースより電位が高くなり、第1電界効果トランジスタNch61は、「ON」する。
【0063】
また、第3電界効果トランジスタNch81は、第4電路34上に電流が流れることで、定電圧ダイオード121が、第3電界効果トランジスタNch81のゲートに電圧を印加し、「ON」する。
【0064】
<無極性回路Bの動作(逆接続の場合)>
次に、図9に示すように、電源1を無極性回路Bに逆接続した場合、「電源1→第3電路33上の第1半導体発光素子4→第4電界効果トランジスタNch111→負荷2→第2電界効果トランジスタNch101→第2半導体発光素子5→電源1」の経路で、電流が流れる。
【0065】
なお、第4電界効果トランジスタNch111では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0066】
また、第2電界効果トランジスタNch101では、電源1によって、ドレイン(D)・ソース(S)間に、ソース(S)+極性(プラス極性)で電圧が印加されるため、ボディダイオードのはたきによって、ソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。
【0067】
また、第4電界効果トランジスタNch111のゲートは、電源1の極性を逆接続した場合、第1半導体発光素子4より電圧が上位の位置で第3電路33に接続されていることになるため、ソースより電位が高くなり、第4電界効果トランジスタNch111は、「ON」する。
【0068】
また、第2電界効果トランジスタNch101は、第5電路35上に電流が流れることで、定電圧ダイオード121が、第2電界効果トランジスタNch101のゲートに電圧を印加し、「ON」する。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態例について述べたが、本発明に係る無極性回路は上述した実施の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1:電源、2:負荷、
31:第1電路、32:第2電路、33:第3電路、34:第4電路、35:第5電路、36:第6電路、37:第7電路、
4:第1半導体発光素子、5:第2半導体発光素子、
61:第1電界効果トランジスタNch、611:p型半導体、612:n型半導体、613:酸化絶縁膜、614:反転層、
71:第2電界効果トランジスタPch、81:第3電界効果トランジスタNch、91:第4電界効果トランジスタPch
101:第2電界効果トランジスタNch、111:第4電界効果トランジスタNch、
121:定電圧半導体素子、
131:抵抗、
141:抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9