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特開2023-142326プレキャストコンクリート基礎梁構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142326
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート基礎梁構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049180
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】松浦 恒久
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA24
(57)【要約】
【課題】 プレキャスト基礎梁の所定位置に貫通孔を効率良く形成することができる基礎梁構造を提供する。
【解決手段】 梁幅方向に貫通孔50,60,70が形成された基礎梁5と杭頭部基礎8との基礎梁構造であって、貫通孔50の形成が予定された位置あるいは貫通孔50を含むように予定された範囲に先行開孔が形成された、梁幅方向に対向する1対のプレキャスト梁部材10が、梁幅方向に第1の接合空間S1を、杭頭部基礎8との間に第2の接合空間S2を有するように底盤上に載置され、先行開孔のうち、形成位置が確定した1対のプレキャスト梁部材10の先行開孔同士間を連通する管部材40が第1の接合空間S1内に設けられ、管部材位置を除く第1の接合空間S1と第2の接合空間S2に現場打ちコンクリート20が打設され、貫通孔50,60,70が基礎梁5の梁幅方向に形成された。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁幅方向に貫通孔が形成された基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、
前記貫通孔の形成が予定された位置あるいは前記貫通孔を含むように予定された範囲に先行開孔が形成された、前記梁幅方向に対向する1対のプレキャストコンクリート梁部材が、前記梁幅方向に第1の接合空間を、前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を有するように底盤上に載置され、
前記先行開孔のうち、形成位置が確定した前記1対のプレキャストコンクリート梁部材の先行開孔同士間を連通する管部材が前記第1の接合空間内に設けられ、
前記管部材部分を除く前記第1の接合空間および前記第2の接合空間に現場打ちコンクリートが打設され、前記貫通孔が前記基礎梁の梁幅方向に形成されたことを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項2】
前記管部材は、基礎梁構築後に除去されるボイド管である請求項1に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項3】
梁幅方向に貫通孔が形成された基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、
前記貫通孔の形成が予定される位置あるいは前記貫通孔を含むように予定された範囲を示す目印手段が、梁幅方向に対向する1対のプレキャストコンクリート梁部材の外側面に形成され、
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材が、前記梁幅方向に第1の接合空間を、前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を有するように底盤上に載置され、
前記第1の接合空間および前記第2の接合空間に現場打ちコンクリートが打設され、前記1対のプレキャストコンクリート梁部材が一体化された後に、形成位置として確定した前記目印手段をもとに前記貫通孔が前記基礎梁の梁幅方向に削孔形成されたことを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項4】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材には、前記貫通孔を周方向に囲む開口補強筋が配筋された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項5】
前記開口補強筋は、前記貫通孔の位置を梁成方向に変更可能になるように配筋された請求項4に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項6】
前記貫通孔の上下には、梁上部または梁下部に配筋された梁主筋と開口上部または開口下部に配筋された横筋とを囲む開口上部補強筋および開口下部補強筋が配筋された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項7】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材には、前記貫通孔の上下を避けてスターラップ筋が配筋された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート基礎梁構造に係り、特に梁幅方向に貫通孔を有するプレキャストコンクリート基礎梁を、複数のハーフプレキャストコンクリート部材を用いて効率よく構築するようにした基礎梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎梁構造物は、在来工法で施工されることが多い。しかし、在来工法によると、施工手間や工期が増大するので、プレキャストコンクリートを上部構造だけでなく下部構造である基礎梁構造にも採用する場合がある。
【0003】
ここで、基礎梁構造にプレキャストコンクリートを使用する場合、上部構造の梁に比べて基礎梁の梁成が大きくなるので、プレキャストコンクリート製の基礎梁はプレキャストコンクリート製の柱、梁に比べてかなり質量が大きくなる。このため、現地で使用する揚重機は基礎梁の質量に対応した大型のものが必要になり、建設コスト増などの要因になってしまう。
【0004】
これらの問題に対応するために、特許文献1では、端面から主筋が突出した中空構造のプレキャスト鉄筋コンクリートの基礎梁構築方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-350501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の基礎梁では、プレキャスト鉄筋コンクリート基礎梁の工場における製造は、設備配管等のための貫通孔の位置の決定を待たなければならず、工期の長期化や工期の長期化を考慮すると基礎梁にプレキャスト工法を選択しない(できない)等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁において、貫通孔に対応した、施工効率の良い基礎梁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、梁幅方向に貫通孔が形成された基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、前記貫通孔の形成が予定された位置あるいは前記貫通孔を含むように予定された範囲に先行開孔が形成された、前記梁幅方向に対向する1対のプレキャストコンクリート梁部材が、前記梁幅方向に第1の接合空間を、前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を有するように底盤上に載置され、前記先行開孔のうち、形成位置が確定した前記1対のプレキャストコンクリート梁部材の先行開孔同士間を連通する管部材が前記第1の接合空間内に設けられ、前記管部材部分を除く前記第1の接合空間および前記第2の接合空間に現場打ちコンクリートが打設され、前記貫通孔が前記基礎梁の梁幅方向に形成されたことを特徴とする。
【0009】
前記管部材は、基礎梁構築後に除去されるボイド管であることが好ましい。
【0010】
梁幅方向に貫通孔が形成された基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、前記貫通孔の形成が予定される位置あるいは前記貫通孔を含むように予定された範囲を示す目印手段が、梁幅方向に対向する1対のプレキャストコンクリート梁部材の外側面に形成され、前記1対のプレキャストコンクリート梁部材が、前記梁幅方向に第1の接合空間を、前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を有するように底盤上に載置され、前記第1の接合空間および前記第2の接合空間に現場打ちコンクリートが打設され、前記1対のプレキャストコンクリート梁部材が一体化された後に、形成位置として確定した前記目印手段をもとに前記貫通孔が前記基礎梁の梁幅方向に削孔形成されたことを特徴とする。
【0011】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材には、前記貫通孔を周方向に囲む開口補強筋が配筋されていることが好ましい。
【0012】
前記開口補強筋は、前記貫通孔の位置を梁成方向に変更可能になるように配筋されていることが好ましい。
【0013】
前記貫通孔の上下には、梁上部または梁下部に配筋された梁主筋と開口上部または開口下部に配筋された横筋とを囲む開口上部補強筋および開口下部補強筋が配筋されていることが好ましい。
【0014】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材には、前記貫通孔の上下を避けてスターラップ筋が配筋されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁において、貫通孔に対応した、施工効率の良い基礎梁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート基礎梁の構造を示す正面図、(b)は、(a)の平面図、(c)は、Ic-Ic断面線で示した貫通孔60を含む接合空間S1での梁断面図、(d)は、Id-Id断面線で示した接合空間S2での梁断面図である。
図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係るハーフプレキャストコンクリート梁部材の背面図、(b)は、(a)の側面断面図、(c)は、IIc-IIc断面線で示したプレキャスト孔での断面図、(d)は、(a)の梁コンクリートを除いた背面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る基礎梁構造に用いる開口補強筋ユニットの正面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る基礎梁構造にボイド管が設けられた状態の梁断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート基礎梁の構造を示す正面図である。
図6】(a)は、図5のVI-VI断面線で示した貫通孔穿孔前の基礎梁の断面図、(b)は、(a)の貫通孔穿孔後の基礎梁の断面図である。
図7】(a)は、図5のVII-VII断面線で示した貫通孔穿孔前の基礎梁の断面図、(b)は、(a)の貫通孔穿孔後の基礎梁の断面図である。
図8】(a)は、本発明の第2実施形態に係るハーフプレキャストコンクリート梁部材の背面図、(b)は、(a)の梁コンクリートを除いた背面図、(c)は、(a)の正面図である。
図9】(a)は、本発明の第2実施形態に係る開口用目印部材の平面図、(b)は、(a)の正面図である。
図10】本発明の変形例に係る開口補強の配筋を示す正面図である。
図11】本発明の変形例に係る開口補強筋ユニットを示す図である。
図12】(a)は、本発明の変形例に係る開口用目印部材の側面図、(b)は、(a)の正面図である。
図13】本発明の他の変形例に係る開口用目印部材の側面図である。
図14】本発明の変形例に係る基礎梁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の基礎梁構造について、以下、添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素には、同一の符号を付す。
【0018】
[第1実施形態]
図1(a)-(d)は、本発明の第1実施形態に係る基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造1を示している。基礎梁構造1は、所定の間隔を空けて互いの主面が対向するように設置されたハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材10,10(以下、プレキャスト梁部材10とする。)の間の接合空間S1および基礎梁5と杭頭部基礎8との間の接合空間S2に現場打ちコンクリート20を打設することで基礎梁5と杭頭部基礎8とが一体化され、基礎梁5の梁幅方向に貫通孔50,60,70が形成されている。本実施形態では、大型物流倉庫において、柱スパンS=10m、柱6を構成するプレキャストコンクリート柱部材7(以下、プレキャスト柱部材7とする。)1本あたりの質量は約12t、断面は1100mm×1100mm、長さ4000mmである。また、既製杭Pとして、φ=1000mmの外殻鋼管コンクリート杭(SC杭)が打設されている。
【0019】
基礎梁5は、梁成H=2000mm、長さL=5250mm、梁幅W1=370mm、質量約9.7tのプレキャスト梁部材10,10を構成要素として備えた梁幅W=1000mmの梁である。図2(a)-(d)に示すように、プレキャスト梁部材10は、梁コンクリート11の長軸方向の端面12,13から、梁主筋14が突出するように配筋され、プレキャスト孔51,61,71が貫通孔50,60,70の形成が予定された位置あるいは貫通孔50,60,70を含むように予定された範囲に先行開孔として梁幅方向に貫通している。
【0020】
梁主筋14は、梁コンクリート11内部および外部において、梁コンクリート11の内面16から梁幅方向に一部が突出するように配筋されたスターラップ筋15に囲まれている。一部の梁主筋14は、梁コンクリート11内ではなく、突出したスターラップ筋15に結束されて配筋されている。プレキャスト梁部材10の、他方のプレキャスト梁部材10と対向する内面16は、プレキャスト版製造時のコンクリート打設面に相当する面であり、製造時の表面の凹凸がそのまま残されており、現場打ちコンクリート20に対する付着力を高めている。
【0021】
プレキャスト孔51は、基礎梁5の人通口50を構成するφ=600mの貫通孔であり、開口補強筋ユニット53に囲まれている。プレキャスト孔51の上下にはスターラップ筋15は配筋されておらず、孔の上部には梁主筋14と上部横筋56とを囲むように開口上部補強筋58が配筋されており、孔の下部には梁主筋14と下部横筋57とを囲むように開口下部補強筋59が配筋されている。開口補強筋ユニット53は、略八角形状の外周補強筋54とその内部に結束されて配筋された略正方形状の内周補強筋55とから構成されている。開口上部補強筋58および開口下部補強筋59は、スターラップ筋15と同等、或いは狭いピッチで配筋されている。
【0022】
プレキャスト孔61は、基礎梁5の設備配管用の貫通孔を構成しており、φ=250mmである。図3に示すように、プレキャスト孔61は、梁成方向については、内周補強筋65内部の移動可能範囲M1の範囲内の任意の位置に設けることができ、例えば、設備配管の水勾配にあわせて高さを調整することができる。プレキャスト孔61の上下にはスターラップ筋15は配筋されておらず、プレキャスト孔61の左右の際にピッチをずらしてスターラップ筋15が配筋されている。このとき、図2(a)、(d)の左端付近の開口際補強筋66のようにプレキャスト孔61の左右に等しい間隔を空けて開口際を補強してもよい。プレキャスト孔61は、円形の開口でもよいし、図3に二点鎖線で示すような移動可能範囲M1に納まる長円形の開口であってもよい。
【0023】
プレキャスト孔71は、基礎梁5の電気配線用の貫通孔を構成しており、φ=100mmである。プレキャスト孔71の上下にはスターラップ筋15は配筋されておらず、プレキャスト孔71の左右の際に等しい間隔を空けてスターラップ筋15が2本隣接して開口際補強筋73を構成して配筋されている。プレキャスト孔71には、開口補強筋ユニットは配筋されていない。
【0024】
(梁幅方向の接合構造)
基礎梁5は、地盤を掘削して形成されたトレンチ(図示せず)の底盤の均しコンクリート上の所定位置に、プレキャスト梁部材10,10を、図1(c)に示すように、突出したスターラップ筋15を内面16側(互いのプレキャスト梁部材10側)に向けるようにして260mm(図1(c)のW2)の間隔の接合空間S1を空けて対向させて載置され、接合空間S1に現場打ちコンクリート20を打設されていることにより、プレキャスト梁部材10,10と現場打ちコンクリート20とを一体化させて形成されている。現場打ちコンクリート20打設時には、プレキャスト孔51,61,71にそれぞれ対向する孔同士間を連通するように接合空間S1内にボイド管(管部材)40(図4)を設置し、接合空間S1に現場打ちコンクリート20を打設する。現場打ちコンクリート20の硬化後にボイド管40を除去することにより、コンクリート孔52,62,72が形成されて貫通孔50,60,70が基礎梁5の梁幅方向に貫通するように形成される。
【0025】
(材軸方向(梁長手方向)の接合構造)
図1(a)、(b)に示すように、接合空間S2では、プレキャスト梁部材10の軸方向の両端面12,13から突出している梁主筋14と杭頭部基礎8の側面から突出するように配筋された梁主筋接合筋9とが機械式継手30を介して接合されている。さらにその接合部位において、梁主筋14および梁主筋接合筋9を囲むように幅の異なる2つのスターラップ筋21,22を1組として(図1(d))、材軸方向(梁長手方向)に所定の配筋ピッチで配筋されている。接合空間S2に現場打ちコンクリート20が打設され、基礎梁5と杭頭部基礎8とが一体化されている。また、杭頭部基礎8の上面から突出するように配筋された柱主筋(図示無し)とプレキャスト柱部材7の下端の機械式継手(図示無し)とが接合されている。なお、プレキャスト柱部材7および杭頭部基礎8には、図示しない所定の構造筋、組立筋が配筋されており、必要な強度および耐力が保持されている。
【0026】
以上のように、基礎梁5と杭頭部基礎8とが一体化され、基礎梁構造1が形成されている。
【0027】
第1実施形態の基礎梁構造1によれば、貫通孔50,60,70の形成が予定された位置あるいは貫通孔60,70を含むように予定された範囲に先行開孔が形成され、貫通孔50,60,70同士間を連通するボイド管40が接合空間S1内に設けられ、接合空間S1に現場打ちコンクリート20が打設される。このため、貫通孔50,60,70の位置の確定を待たずにプレキャスト梁部材10の製作に取り掛かることができるので、工期の長期化を抑制できる。また、基礎梁構造を在来工法で構築する場合と同様に基礎梁5の好適な位置に貫通孔50,60,70を形成することができ、貫通孔50,60を周方向に囲む開口補強筋ユニット53,63が配筋されている。従って、基礎梁構造1を、貫通孔50,60,70に対応しつつ効率よく構築することができる。また、基礎梁5を構成するプレキャスト梁部材10の1本当たりの質量を、柱6を構成するプレキャスト柱部材7の1本当たりの質量以下におさえることができ、基礎梁構造にプレキャスト基礎梁を採用しながらも、上部構造のプレキャスト部材の質量から決定された揚重機で施工することができる。さらに、プレキャスト梁部材10,10間(接合空間S1)には、鉄筋の配筋が不要である。また、プレキャスト梁部材10は面外方向の曲げモーメントに抵抗できるため、プレキャスト梁部材10の背面の型枠支保工および、セパレータ等を在来工法に比べて大幅に削減することが可能である。従って、工期、施工手間や施工コストを削減でき、好適な位置に貫通孔50,60,70が形成された基礎梁構造1を容易に施工できる。なお、使用しない貫通孔には、ボイド管を設置しないことにより、現場打ちコンクリート20を打設できるので、基礎梁5の強度を高く保つことができる。
【0028】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る基礎梁構造2を示している。図6(a)、(b)、図7(a)、(b)は、基礎梁構造2を構成する基礎梁5Aの梁幅方向の断面において、貫通孔60,70が形成される方法を示している。本実施形態では、プレキャスト梁部材10Aの製造時には、プレキャスト孔61,71は形成されておらず、開口が必要な箇所のみに現場打ちコンクリート20打設後に孔開けを行い、プレキャスト孔61,71、コンクリート孔62,72、貫通孔60,70を形成して基礎梁5Aを構成する点が第1実施形態と異なっている。なお、必要な開口が多い場合、孔開け後には基礎梁5Aに第1実施形態と同数の貫通孔が形成されている場合もある。
【0029】
図8(a)-(c)に示すように、プレキャスト梁部材10Aには、プレキャスト孔51が形成されており、プレキャスト孔51の開口補強として開口補強筋ユニット53、開口上部補強筋58および開口下部補強筋59も第1実施形態同様に配筋されている。また、プレキャスト梁部材10Aには、プレキャスト孔61,71は形成されていないが、梁コンクリート11内部に、第1実施形態同様にプレキャスト孔61,71の開口補強のための開口補強筋ユニット53、開口際補強筋73が配筋され、プレキャスト孔61,71に重ならない位置にスターラップ筋15が配筋されている。
【0030】
図8(c)に示すように、プレキャスト梁部材10Aには、プレキャスト孔61,71が形成可能な位置に、図9(a)、(b)に示すコ字状の開口用目印部材(目印手段)80が外面17と面一に設置されている。開口用目印部材80は、例えば樹脂製であり、プレキャスト孔61,71の径と等しい長さに形成された基部81と、基部81の両端から延設された埋込部82と、を有する。基部81は、外面17と面一に材軸方向に沿って延設されている。基部81の中央には、孔の中心位置を示す中心印83が形成されている。埋込部82は、プレキャスト梁部材10の運搬時や保管時等に開口用目印部材80がプレキャスト梁部材10から脱落しないように、両端部を梁コンクリート11内部に向けて埋め込まれている。
【0031】
(梁幅方向の接合構造)
基礎梁5Aは、プレキャスト孔51以外のプレキャスト孔にはスリーブを設置しないこと以外は、第1実施形態と同様に施工される。現場打ちコンクリート20打設後に、貫通孔60,70のうち、使用する孔に対して、コアドリルを用いて開口用目印部材80を目標にして湿式穿孔を行う。これにより、プレキャスト孔61,71、コンクリート孔62,72が形成されて貫通孔60,70が基礎梁5Aの梁幅方向に形成される。材軸方向の接合構造は、第1実施形態と同様である。
【0032】
以上のように、基礎梁5Aと杭頭部基礎8とが一体化され、基礎梁構造2が形成されている。
【0033】
第2実施形態の基礎梁構造2によれば、第1実施形態同様の効果を得ることができる上に、使用しない貫通孔60,70の部分には梁コンクリート11および現場打ちコンクリート20が打設されているので、基礎梁5Aの耐力を高く保つことができる。また、使用しなかった貫通孔60,70については、開口用目印部材80が設置されているので、建物の改修時等の配管の増設に使用することができる。
【0034】
[変形例]
上記各実施形態では、貫通孔50,60には、周方向に開口補強筋ユニット53,63が配筋されていたが、例えば、図10に示すような斜め筋等による一般的な開口補強に用いる配筋を行ってもよいし、ダイヤレン(登録商標)、スーパーハリー、ウエブレン(登録商標)、リンブレン(登録商標)等の既製品を配筋して開口補強を行ってもよい。
【0035】
また、上記各実施形態では、開口補強筋ユニット53,63は、内周補強筋55,65の内側で、スリーブを自由に移動させることができたが、図11に示すように、内周補強筋55,65の内側に支持部材98を形成して、プレキャスト版製造時に、プレキャスト孔51の設置位置を明確にする、或いはプレキャスト孔61の移動可能範囲を規制するとよい。
【0036】
上記第2実施形態では、コ字状の開口用目印部材80を使用したが、図12(a)、(b)に示す開口用目印部材85や図13に示す開口用目印部材80A等を使用してもよい。開口用目印部材85は、P型セパレータのカップ87に、開口の梁成方向に移動可能な範囲を示す可動範囲表示材88と、開口の径を示す孔径表示材89と、を取り付けた部材である。棒状の開口用目印部材80Aは、梁コンクリート11の厚さ方向に長軸方向を沿わせて開口の中心位置に配置する、或いは、長軸の長さを開口の梁成方向に移動可能な長さと等しく延設し、開口の中心位置の梁成方向の移動可能範囲を表示する。
【0037】
また、上記各実施形態では、プレキャスト梁部材10,10Aは、スターラップ筋15が梁コンクリート11から突出するように配筋されていたが、例えば、梁コンクリート内にスターラップ筋全体が配筋され、接合空間内に鉄筋籠を配筋するようにしてもよいし、図14に示すように、基礎梁5Bを構成する1対のプレキャスト梁部材10Bがスターラップ筋15Aで一体的に形成されていてもよい。
【0038】
上記各実施形態では、杭は、外殻鋼管コンクリート杭であったが、鋼管杭やコンクリート杭、既製コンクリート杭等であってもよい。
【0039】
上記各実施形態では、基礎梁5は、構成要素としてプレキャスト梁部材10を2枚備えていたが、例えば、プレキャスト梁部材1つあたりの質量に応じて、プレキャスト梁部材の枚数を増やしてもよい。
【0040】
また、上記各実施形態では、プレキャスト梁部材10の内面16には、表面に凹凸が残されていたが、例えば、溝やコッターを形成してもよいし、何も形成されていなくてもよい。
【0041】
上記第1実施形態では、基礎梁構築後に除去されるボイド管を使用したが、例えば、ワインディングパイプ等を埋め殺し使用してもよい。
【0042】
上記第2実施形態では、コアドリルを用いた湿式穿孔による孔開けを行ったが、他の工具等を用いてもよい。
【0043】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 基礎梁構造
5,5A,5B 基礎梁
6 柱
7 プレキャストコンクリート柱部材(プレキャスト柱部材)
8 杭頭部基礎
9 梁主筋接合筋
10,10A,10B,10C ハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材(プレキャスト梁部材)
11 梁コンクリート
14 梁主筋
20 現場打ちコンクリート
40 ボイド管
50 人通口(貫通孔)
51,61,71 プレキャスト孔
52,62,72 コンクリート孔
53,63 開口補強筋ユニット
54,64 外周補強筋
55,65 内周補強筋
56 上部横筋
57 下部横筋
58 開口上部補強筋
59 開口下部補強筋
60,70 貫通孔
66,73 開口際補強筋
80,80A,85 開口用目印部材
P 既製杭
S1,S2 接合空間
図1
図2
図3
図4
図5
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