(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142339
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20230928BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20230928BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C22B7/00 B
C22B11/00
C22B23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049200
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 達彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 学
(72)【発明者】
【氏名】曽田 剛一
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001AA41
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法に関するものである。
【解決手段】導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法において、0.1%以上の塩化水素ガス雰囲気下、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極と塩化水素ガスを接触させる工程(塩化水素ガス処理工程)を含む、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法において、
0.1%以上の塩化水素ガス雰囲気下、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を塩化水素ガスと接触させる工程(塩化水素ガス処理工程)を含む、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法。
【請求項2】
さらに、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極において、導電性基体から、触媒層を分離する工程(分離工程)を含む、請求項1に記載の触媒層の回収方法。
【請求項3】
前記導電性基体が、ニッケルを含む導電性基体である請求項1または、2に記載の触媒層の回収方法。
【請求項4】
前記触媒層が、白金族金属を含むものである、請求項1または2に記載の触媒層の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、チタン、ニッケル等の電極材の導電性基体上に、酸化イリジウムや酸化ルテニウム等の白金族金属酸化物を含む触媒層を被覆した電極が、電気化学の分野において大量に使用されている。白金族金属は貴重な資源であることから、使用済みとなった電極から白金族金属を回収し再利用することは重要である。
【0003】
これまでも、使用済みとなった電極から白金族金属を回収する方法はいくつか提案されており、例えば、水素還元等による化学的な回収方法、グラインダーやブラスト機による機械的な回収方法が挙げられる。
【0004】
水素還元による化学的な回収方法とは、水素ガス雰囲気中で500℃~1000℃に加熱して酸化イリジウムや酸化ルテニウム等の白金族金属酸化物を金属に還元しチタンやニッケル等の導電性基体から剥離する方法である。チタン、ニッケル等の導電性基体は加熱しても還元されず酸化物として存在する性質を利用した分離回収方法である(特許文献1、2参照)。しかしながら、この方法は導電性基体からの触媒層の具体的な分離方法は記載されていない。
【0005】
また、化学的に剥離する方法としては、導電性基体と触媒層との基体被覆界面を、酸浸漬溶解させる方法等が挙げられる。しかしながら、酸浸漬によって剥離する方法では、導電性基体の消耗が大きく再利用することが難しい。また、多量の酸廃液が発生するという問題を抱えていた。
【0006】
一方、機械的な回収方法とは、電極を砥石にアルミナ粉やガラス粉を用いたサンドブラストで処理することにより、白金族酸化物からなる触媒層を物理的に剥離する方法である。しかしながら、この方法では、導電性基体からの触媒層の完全剥離は可能であるが、剥離された白金族酸化物は砥石中に低濃度で分散してしまい、その結果、精製工程のコストが高くなり、回収率も低くなるという問題点を抱えていた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-194581号公報
【特許文献2】特開2002-212650号公報
【特許文献3】特開平5-212297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来技術は、導電性基体から触媒層を完全に剥離することが困難であることや、白金族金属酸化物を捕集する際の不具合により精製工程のコストが高くなる等の問題点を抱えていた。そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、触媒層と導電性基体とを容易に分離することを可能とする、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、上記目的を達成するために、下記の導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法を提供することにある。
【0010】
項1. 導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法において、
0.1%以上の塩化水素ガス雰囲気下、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極と塩化水素ガスを接触させる工程(塩化水素ガス処理工程)を含む、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法。
項2. さらに、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極において、導電性基体から、触媒層を分離する工程(分離工程)を含む、項1に記載の触媒層の回収方法。
項3. 前記導電性基体が、ニッケルを含む導電性基体である項1または、2に記載の触媒層の回収方法。
項4. 前記触媒層が、白金族金属を含むものである、項1または2に記載の触媒層の回収方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法によれば、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を一定濃度の塩化水素ガス雰囲気で、塩化水素ガスと接触させること(塩化水素ガス処理工程に付する)で、導電性基体から触媒層を簡便に分離、回収することができる。更に、導電性基体の消耗が少ないため導電性基体を有価で再利用することが可能である。本発明によれば、特殊な試薬や装置を用いることなく、触媒層と導電性基体とを容易に分離可能となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に用いた実験装置の一例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの触媒層の回収方法において、
0.1%以上の塩化水素ガス雰囲気下、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極と塩化水素ガスを接触させる工程(塩化水素ガス処理工程)を含む、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極からの、触媒層の回収方法である。
【0015】
本発明の回収方法において、0.1%以上の塩化水素ガス雰囲気下、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触させる工程(塩化水素ガス処理工程)を含むものである。塩化水素ガス雰囲気下で、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極と塩化水素ガスとを接触させることで、導電性基体と触媒層との界面の腐食反応が進行し、導電性基体と触媒層を簡便に分離することが可能となる。
【0016】
本発明の塩化水素ガス処理工程は、所定濃度の塩化水素ガス雰囲気下で、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触させればよい。塩化水素ガスの濃度としては、0.1%以上あればよく、0.3%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1.0%以上が特に好ましい。また、塩化水素ガスの上限は特に限定されないが、例えば、20%以下であればよく、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。上記範囲であれば、問題なく、導電性基体と触媒層の接触界面の腐食反応が進行し、導電性基体と触媒層を簡便に分離することができる。なお、塩化水素ガス雰囲気中の塩化水素ガス濃度は、通常用いられる方法で測定することができる。例えば、ガス検知管で測定することができる。
【0017】
塩化水素ガス処理工程において、所定濃度の塩化水素ガス雰囲気とは、目的とする濃度の塩化水素ガスを吹き込んだ後、密閉した容器や反応槽中において、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触させる態様であってもよく、目的とする濃度の塩化水素ガスを容器や反応槽に吹込みながら、容器や反応槽中において、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触させる態様であってよい。また、所定濃度の塩酸水溶液を添加し、密閉した容器や反応槽中において、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を気化した塩化水素ガスと接触させる態様であってもよい。
【0018】
本発明の塩化水素ガス処理工程における接触の態様の一例をしめす。
図1に示すように、セパラブルフラスコ3中に所定量の塩酸水溶液7を添加し、電極を設置する台座6を配置し、台座上に電極を設置する。ゴム2を通貫した温度計1を備える蓋3をクランプ4で固定し、電極5を塩化水素ガス雰囲気下で接触させる。
【0019】
本発明の回収方法における塩化水素ガス処理工程に用いる塩化水素ガスは、塩化水素ガスを直接用いてもよく、塩酸水溶液から発生する塩化水素ガスを用いてもよい。
【0020】
塩酸水溶液を用いる場合、塩酸水溶液濃度は特に限定されず、所定の塩化水素ガスの濃度とすることができるものであれば、問題なく用いることができる。例えば、1~50%の塩酸水溶液であればよく、5~45%の塩酸水溶液が好ましく、10~40%の塩酸水溶液がより好ましく、15~38%の塩酸水溶液がさらに好ましい。上記濃度の塩酸水溶液であれば、問題なく、所定の塩化水素ガス濃度に調整することができる。
【0021】
本発明の回収方法における塩化水素ガス処理工程において、塩化水素ガスと導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触時間は、特に限定させず、導電性基体と触媒層の接触界面の腐食反応が進行する時間であれば問題ない。例えば、1分~500時間の範囲であり、好ましくは30分~300時間の範囲であり、より好ましく60分から200時間の範囲である。
【0022】
本発明の回収方法における塩化水素ガス処理工程において、塩化水素ガス雰囲気の温度は特に限定されないが、例えば、0℃から80℃であればよく、15℃~70℃が好ましく、室温から60℃がより好ましい。
【0023】
塩化水素ガス処理工程において、塩化水素ガスを接触した導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極は、通常用いられる物理的な方法(分離工程)に付することにより、導電性基体と触媒層を分離することができる。
【0024】
本発明における分離工程として、例えば、5~100メガパスカル程度の圧力の高圧水を電極表面に吹き付けて導電性基体と触媒層を分離してもよく、電極表面をブラシや刷毛等を用いて研磨(ブラッシング)を行うことで導電性基体と触媒層を分離してもよく、電極表面を砥石にアルミナ粉やガラス粉を用いたサンドブラストで導電性基体と触媒層を分離してもよく、超音波洗浄にて導電性基体と触媒層を分離してもよい。塩化水素ガス処理工程にした導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極は、分離工程に付することで、導電性基体と触媒層を簡便に分離することができる。
【0025】
導電性基体から分離した触媒層は通常の条件で回収ができ、たとえば、水素還元により触媒層中の白金族金属分を還元し、金属化した後、ルテニウムであれば次亜塩素酸中で加熱酸化することによってRuO4として揮散させ塩酸にトラップすることによって塩化ルテニウム酸として回収することができる。また、イリジウムであれば塩化アルカリと共に塩素ガスを通じて塩化イリジウム酸塩とし、それからアルカリを分離して塩化イリジウム酸や塩化イリジウムとして回収することができる。またその他では王水に溶解して回収することもできる。もちろん電解的に回収することも可能である。この時に同じ触媒層中に含まれる酸化チタンや酸化タンタルは水素で還元されないので塩素化することも無く溶解もしないので白金族金属とは完全に分離することができる。触媒層中の一部が酸に溶解することがあるが、これについては使用済みの酸にアンモニアを加えて中和することにより、白金族金属のアンモニウム塩として沈殿させそれを濾過分離することによってほぼ完全に回収することができる。
【0026】
本発明の回収方法に用いる電極は、電解に用いられる電極であれば、陽極、または陰極のいずれの電極も製造することができる。好ましくは、食塩電解用電極である。
【0027】
電極の導電性基体としては、導電性を備えており、かつ、電極の基体としての機能を発揮する限りにおいて、特に制限されず、公知の電極に使用されている導電性基体を使用することができる。
【0028】
導電性基体は、金属を含むことが好ましく、金属により構成されていることがより好ましい。また、金属としては、好ましくはニッケル、ステンレス鋼、鉄、銅、鋼、チタン等が挙げられ、これらの中でも、ニッケルがより好ましい。ニッケルを含む導電性基体としては、ニッケルにより構成されたものの他、例えばステンレス鋼の表面がニッケルで被覆されたもの等も好適である。導電性基体としては、ニッケルを20質量%以上含むものであればよく、50質量%以上含むものが好ましく。75質量%以上含むものがより好ましく、90質量%以上含むものが特に好ましい。
【0029】
また、導電性基体の形状についても、特に制限されず、板状、棒状、多孔状(エキスパンドメタル、パンチングメタル、すだれ状、平織り、マイクロメッシュ等)等が挙げられる。導電性基体の上に設けられる被膜の表面積を大きくする観点からは、多孔状等が好ましい。
【0030】
導電性基体のサイズは、特に制限されず、電解槽の大きさ、電極のサイズ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、長さは300mm~2,500mm程度、幅は200mm~1,500mm程度、厚みは0.1mm~6mm程度が挙げられる。
【0031】
導電性基体の表面は、触媒層の密着性を向上させる観点等から、粗面化されていてもよい。導電性基体の表面粗さRaとしては、例えば1~10μm程度に設定することができる。導電性基体の表面を粗面化する方法としては、ブラスト処理等が挙げられる。
【0032】
また、導電性基体の表面は、触媒層の密着性を向上させる観点等から、エッチング処理が施されていてもよい。エッチング処理の方法としては、例えば、塩酸等の酸に導電性基体を浸漬する方法等が挙げられる。また、エッチング処理後には、導電性基体の表面が中性になるまで水洗し、乾燥させることが好ましい。
【0033】
本発明の回収方法に用いる電極の触媒層は、導電性基体の上に形成されている。より具体的には、触媒層は、導電性基体の表面に形成されていることが好ましい。
【0034】
触媒層に用いられる物質は、金属単体、または金属酸化物から適宜選択することができ、一般的には遷移金属から選択することできる。また、電解時における過電圧低減の観点から白金族金属を少なくとも含んでいることが好ましい。触媒層に用いることのできる金属としては、例えば、白金金属、パラジウム系の酸化物、ルテニウム系の酸化物、イリジウム系の酸化物等が挙げられる。触媒層に含まれる金属は、1種類のみでもよく、複数の金属を組み合わせたものでもよい。なお、複数の金属を組み合わせて用いる場合、比率を適宜調整することが可能である。
【0035】
触媒層における金属の状態は、特に制限されない。例えば、白金は、少なくとも一部は白金金属として含まれていることが好ましく、白金酸化物、白金水酸化物等が含まれていてもよい。また、パラジウムは、少なくとも一部がパラジウム酸化物として含まれており、パラジウム金属、パラジウム水酸化物等がさらに含まれていてもよい。また、ルテニウムは、少なくとも一部がルテニウム酸化物として含まれており、ルテニウム金属、ルテニウム水酸化物等がさらに含まれていてもよい。また、ニッケルは、少なくとも一部がニッケル酸化物として含まれており、ニッケル金属、ニッケル水酸化物等がさらに含まれていてもよい。ままた、イリジウムについても、少なくとも一部がイリジウム酸化物として含まれており、イリジウム金属、イリジウム水酸化物等がさらに含まれていてもよい。また、上述した各金属の合金、若しくはアモルファス金属の状態となっていてもよい。
【0036】
また、電解時の水素発生電位を低下させつつ、電解停止時の逆電流に起因する白金族金属の有効表面積の減少を効果的に抑制する観点から、触媒層における白金族金属の含有量(すなわち、白金族金属の担持量)は、好ましくは2g/m2以上、より好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは4g/m2以上が挙げられる。白金族金属の担持量は、多ければ多いほど効果を発揮するが、経済的な観点から、白金族金属の担持量の上限は、例えば20g/m2が挙げられる。
【0037】
また、同様の観点から、触媒層の厚みとしては、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに1μm以上が挙げられる。触媒層の厚みは、厚ければ厚いほど効果を発揮するが、経済的な観点から、触媒層の厚みの上限は、例えば20μmが挙げられる。
【0038】
本発明の回収方法において、導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極から触媒層を簡便に分離することができる。
【実施例0039】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(実施例)
8年間食塩電解に用いたMD-C50(ダイソーエンジニアリング株式会社製;導電性基体;ニッケル、基体形状;エキスパンドメタル、触媒層;白金)を25cm×25cmに切断した電極切片を試験に用いた。2Lのセパラブルフラスコ中に、所定濃度(実施例1:36重量%、実施例2:30重量%、実施例3及び比較例1:20重量%)の塩酸水溶液を500ml添加し、その中に台座を接し、台座上に25cm×25cmに切断した電極切片を配置した。温度計を備えた蓋をクランプで固定して、25cm×25cmに切断した電極切片を塩酸水溶液から気化した塩化水素ガスと接触させた。この時の接触時間は60分、温度は25℃(実施例1、2)、50℃(実施例3、比較例1)であった。
【0041】
触媒層の分離試験
塩化水素ガスと接触した電極断片を取り出し、ブラシで電極表面をブラッシングし、導電性基体と触媒層の分離状態を目視で確認した。導電性基体から触媒層が分離しているものを〇、導電性基体から触媒層が分離していないものを×とした。表1に各塩化水素ガス濃度における導電性基体からの触媒層の分離状態を示す。
【0042】
塩化水素ガス濃度の測定方法
塩化水素ガス雰囲気中の塩化水素ガス濃度は、塩酸の塩化水素ガス分圧の表より計算した。
【0043】
【0044】
表1に示すように、雰囲気中の塩化水素ガス濃度が0.32%~10.5%の範囲(実施例1~3)で接触させた電極は、導電性基体と触媒層を容易に分離することができた。一方で。0.04%の塩化水素ガス雰囲気中(比較例1)で接触させた電極は、導電性基体と触媒層が分離できていなかった。すなわち、0.1%以上の塩化水素ガスと導電性基体と、導電性基体上に設けられた触媒層を備える電極を接触させる工程に付することで、導電性基体から触媒層を容易に分離する方法であると言える。