(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142350
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】横型焼鈍炉およびその露点制御方法並びに金属帯の焼鈍方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/56 20060101AFI20230928BHJP
C21D 1/76 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C21D9/56 101C
C21D1/76 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049216
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴将
(72)【発明者】
【氏名】杉田 愛
(72)【発明者】
【氏名】菅原 仁
【テーマコード(参考)】
4K043
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043CA02
4K043DA05
4K043EA07
4K043FA07
4K043FA09
4K043FA12
4K043GA03
4K043GA10
4K043HA04
(57)【要約】
【課題】金属帯を水平方向に通板しつつ焼鈍する加湿ガスの導入孔を備える横型焼鈍炉において、横型焼鈍炉内の露点を所定の目標範囲内で均一にする炉および方法を提供する。
【解決手段】加湿ガスの導入孔3、4は、横型焼鈍炉1の側面視で金属帯2から上下対称の位置であって、横型焼鈍炉の断面視で金属帯の幅方向中央部に対し点対称となる相対位置に配置された少なくとも一対の導入孔であって、横型焼鈍炉内の露点を測定し、導入孔からの加湿ガスの投入流量および水蒸気量の少なくともいずれかを制御して露点を所定範囲内にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿ガスの導入孔を備え、金属帯を水平方向に通板しつつ焼鈍する横型焼鈍炉において、
前記加湿ガスの導入孔は、前記横型焼鈍炉の側面視で前記金属帯から上下対称の位置であって、前記横型焼鈍炉の断面視で前記金属帯の幅方向中央部に対し点対称となる相対位置に配置された少なくとも一対の導入孔であることを特徴とする横型焼鈍炉。
【請求項2】
前記導入孔は、前記横型焼鈍炉内に二対以上を備え、前記横型焼鈍炉の断面視で、各対の前記導入孔が前後の対の前記導入孔と上下の相対位置が異なるように配置することを特徴とする請求項1に記載の横型焼鈍炉。
【請求項3】
前記横型焼鈍炉が、加熱処理条件が異なる複数のゾーンから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の横型焼鈍炉。
【請求項4】
前記横型焼鈍炉の露点制御方法であって、
前記横型焼鈍炉内の露点を測定し、前記導入孔からの前記加湿ガスの投入流量および水蒸気量の少なくともいずれかを調整し、前記露点を所定範囲内に制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の横型焼鈍炉の露点制御方法。
【請求項5】
前記露点の所定範囲が、-40~0℃であることを特徴とする請求項4に記載の横型焼鈍炉の露点制御方法。
【請求項6】
前記請求項4または5に記載の横型焼鈍炉の露点制御方法を用いて、金属帯の焼鈍を行うことを特徴とする金属帯の焼鈍方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿ガスの導入孔を備え、金属帯を水平方向に通板しつつ焼鈍する横型焼鈍炉および横型焼鈍炉の露点制御方法並びに金属帯の焼鈍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯の焼鈍方法において、金属帯に含まれる炭素や酸素等の成分を調整して所望の品質を得る目的で、焼鈍炉の雰囲気ガスを加湿し適切な範囲の露点になるように炉内の雰囲気ガスの制御が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、超音波加湿器により加湿された雰囲気ガスを金属帯の上側のみに送り込んで露点を制御することが開示されている。また、特許文献2では、焼鈍炉のゾーン毎に金属帯の下側のみから加湿された雰囲気ガスを供給し、ゾーン毎の露点が一律になるように制御し、さらに、特許文献3では、炉出側近傍より金属帯の上下から1組の加湿器により加湿ガスを供給することで、雰囲気ガスの流れに沿って炉全体の露点を調整することが開示されている。また、特許文献4では、回動角度を変化させられるノズルにより水蒸気を金属帯の上下方向から供給し、かつ上下に稼働する仕切板で水蒸気を雰囲気ガスに混合させることにより、露点を一様にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-69262号公報
【特許文献2】特開平5-247529号公報
【特許文献3】特表2014-525986号公報
【特許文献4】特開2005-264305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横型焼鈍炉(以下、単に「焼鈍炉」または「炉」ともいう。)は、通板される金属帯によって炉内が上下に二分されており、炉内の雰囲気ガスの上下の物質移動は、炉の断面視で金属帯と炉側壁の隙間からは困難で、雰囲気ガスの拡散による混合がしにくい構造である。
【0006】
その結果、前述した従来の特許文献1と特許文献2に記載されるような、加湿された雰囲気ガスを金属帯の上下いずれか一方から炉内に送り込むと、炉内の露点が上下で異なり、金属帯の品質が表裏で異なるという問題が発生する。
【0007】
上記の問題を解決するために、特許文献3および特許文献4では、金属帯の上下に加湿ガスを吹き込んで、雰囲気ガスの露点を目標範囲内に収めている。これらの方法において、後述する実施例に示すとおり、吹き込む加湿ガスの露点が同じであっても、金属帯の上下で露点が異なり、炉内で均一な露点を得ることが困難で、金属帯の表裏面の品質が異なり良好な金属帯にならないという問題が生じる。
【0008】
さらに、特許文献4は、上下に稼働する仕切板を利用して雰囲気ガスに水蒸気を混合させているが、可動する仕切壁を設置するための炉長が必要であり、設備コストが掛かるという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、加湿ガスの導入孔を備える横型焼鈍炉において、横型焼鈍炉内の露点を所定の目標範囲内に、均一に保つ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意検討し、その結果、加湿ガスの炉内におけるガスの流れに注目し、加湿ガスの導入孔を上下左右に互い違いに配置することにより、均一な炉内露点制御が可能になるという知見を得た。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を加えてなされたものであり、その構成は、以下のとおりである。
〔1〕加湿ガスの導入孔を備え、金属帯を水平方向に通板しつつ焼鈍する横型焼鈍炉において、
前記加湿ガスの導入孔は、前記横型焼鈍炉の側面視で前記金属帯から上下対称の位置であって、前記横型焼鈍炉の断面視で前記金属帯の幅方向中央部に対し点対称となる相対位置に配置された少なくとも一対の導入孔であることを特徴とする横型焼鈍炉。
〔2〕前記〔1〕において、前記導入孔は、前記横型焼鈍炉内に二対以上を備え、前記横型焼鈍炉の断面視で、各対の前記導入孔が前後の対の前記導入孔と上下の相対位置が異なるように配置することを特徴とする横型焼鈍炉。
〔3〕前記〔1〕または〔2〕において、前記横型焼鈍炉が、加熱処理条件が異なる複数のゾーンから構成されることを特徴とする横型焼鈍炉。
〔4〕前記〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つに記載の横型焼鈍炉の露点制御方法であって、
前記横型焼鈍炉内の露点を測定し、前記導入孔からの前記加湿ガスの投入流量および水蒸気量の少なくともいずれかを調整し、前記露点を所定範囲内に制御することを特徴とする横型焼鈍炉の露点制御方法。
〔5〕前記〔4〕において、前記露点の所定範囲が、-40~0℃であることを特徴とする横型焼鈍炉の露点制御方法。
〔6〕前記〔4〕または〔5〕に記載の横型焼鈍炉の露点制御方法を用いて、金属帯の焼鈍を行うことを特徴とする金属帯の焼鈍方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来に比べて、横型焼鈍炉内の金属帯の上下の領域に係わらず、露点を均一にすることができ、また、露点を所定の目標範囲に容易に制御することができる。その結果、金属帯の焼鈍処理(脱炭等の反応)を所望するとおり効率的に進めることができ、金属帯の生産性向上や歩留まり向上の効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の横型焼鈍炉の一実施態様(1ゾーンで加湿ガス導入孔一対の例)を示す模式図である。(a)側面図、(b)断面図(A-A矢視図)。
【
図2】従来の横型焼鈍炉の一例を示す模式図である。(a)側面図、(b)断面図(B-B矢視図)。
【
図3】本発明の横型焼鈍炉の他の実施態様(1ゾーンで加湿ガス導入孔二対の例)を示す模式図である。(a)側面図、(b)断面図(C-C矢視図)、(c)上面図(炉出側の一部)。
【
図4】本発明の横型焼鈍炉の他の実施態様(1ゾーンで加湿ガス導入孔二対の例)を示す斜視図である。
【
図5】本発明の横型焼鈍炉の別の実施態様(2ゾーンの例)を示す概略側面図である。
【
図6】本発明および従来の炉内各位置における金属帯上側および下側の露点の変化を示す図である。(a)本発明例、(b)従来例。
【
図7】本発明および従来における加湿ガスによる目標露点との温度差の分布を示す模式図である。(a)本発明例、(b)従来例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[横型焼鈍炉]
本発明に係る横型焼鈍炉の一実施態様を
図1(a)、(b)に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、横型焼鈍炉1は、金属帯2を水平方向に通板(通板方向S)しており、加熱処理条件によっては、条件の異なる複数のゾーンから構成されているものもある。
【0015】
金属帯2は、炉入側から炉出側に向かって通板され、炉内ガスは、金属帯2の通板方向とは逆の方向に流れる。
【0016】
次に、横型焼鈍炉1内の露点を調整するために、加湿ガスWが供給される。この加湿ガスWは、後述する雰囲気ガスFとは別に供給されるものであり、例えば、この雰囲気ガスFを別に設けた加湿装置(図示せず)に通し、ガス中の水蒸気量(水分子量)を増加させて供給する。加湿装置としては、中空糸膜加湿装置などがある。加湿ガスWの供給量(流量)は、5~100Nm3/h程度である。
【0017】
また、上記の雰囲気ガスFは、水素と窒素からなり、炉出側から炉内へ供給されるが、炉内各部から供給されることもある。雰囲気ガスFの供給量(流量)は、50~500Nm3/h程度である。
【0018】
[加湿ガスの導入孔]
前述したように、本発明の課題である焼鈍炉内の露点を所定の範囲内に均一に保つためには、加湿ガスの炉内の流れが重要であるとの知見から、加湿ガスの導入孔(以下、単に「導入孔」ともいう。)の配置に関して、以下のように規定することで、露点が均一で良好にできることが分かった。
【0019】
横型焼鈍炉1を断面視したときの図(A-A矢視図)である
図1(b)を基に説明する。本発明例では、上下一対の導入孔3と4は、金属帯2の幅方向中央部に対し点対称となる相対位置に配置されている。例えば、炉の左側側面であって、金属帯2の上側に導入孔3が配置され、炉の右側側面であって、金属帯2の下側に導入孔4が配置され、これら導入孔3、4は、炉内長手方向に同じ位置に配置されている。なお、導入孔3が下側で、導入孔4が上側にあっても良い。少なくとも一対の導入孔3、4が金属帯2の幅方向中央部に対し点対称となる相対位置に配置されることが重要である。
【0020】
[加湿ガスの流れ]
次に、加湿ガスWの流れの例について説明する。
図1(b)において、導入孔3と4から、加湿ガスWが炉内に送り込まれる。このとき、導入孔3から送り込まれた加湿ガスWは、金属帯2の上側を通過し、導入孔3とは反対側の炉壁に至り、炉壁に沿って金属帯2の下側に拡散する。他方、導入孔4から送り込まれた加湿ガスWは、金属帯2の下側を通過し、導入孔4とは反対側の炉壁に至り、炉壁に沿って金属帯2の上側に拡散する。
【0021】
また、加湿ガスの導入孔3、4におけるそれぞれの加湿ガスWは、渦のような流れとなり、この流れにより雰囲気ガスFと加湿ガスWの混合が促進される。
【0022】
[加湿ガスの導入の違いによる目標露点との差の比較]
図7に、本発明および従来における加湿ガスによる目標露点との差の分布をシミュレーションした図を示す。
図7(a)の本発明の例では、加湿ガスの導入孔が上下かつ幅方向(左右)に点対称の位置にあることから、加湿ガスの流れが金属帯の周りを渦のように循環し、雰囲気ガスと加湿ガスとの混合が促進され、炉内の露点分布の差が小さくて、ほぼ同じ湿度となっていることが分かる。これに対し、
図7(b)の従来の例は、加湿ガスが金属帯の幅方向中央の上下から導入された場合であって、高温になり易い金属帯上側の露点が低くなり、低温になり易い金属帯下側の露点が高くなって、炉内の露点分布に大きな差が生じていることが分かる。
【0023】
ここで、上述のシミュレーションにおける条件の一例を示す。
まず、高さ2m、幅2m、長さ30mの横型焼鈍炉を模擬した。加湿ガス導入孔は、炉の出側から長手方向4mにおける位置に設置し、加湿ガス導入孔の向きは設置した炉壁に対して垂直である。シミュレーションの
図7は、加湿ガス導入孔より炉の入側方向へ1mの炉の断面の目標温度との差を示している。加湿ガスの流量は、2本合わせて30Nm
3/hとした。
【0024】
[複数対の導入孔、複数ゾーンの炉]
露点の目標範囲が狭い場合や焼鈍炉の炉長が長い場合のように、加湿ガスを大量に導入する必要がある場合などは、
図3および4に示すように、炉の左側面上側の導入孔3と炉の右側面下側の導入孔4との対を第1組とし、左右の配置を逆にした炉の右側面上側の導入孔3’と炉の左側面下側の導入孔4’との対を第2組とするような横型焼鈍炉の長手方向に複数対を設置してもよい。ここで、
図3は導入孔を二対有する横型焼鈍炉の例を示す図であり、(a)が側面図、(b)が断面図(C-C矢視図)、(c)が炉出側の一部の上面図である。また、
図4がその斜視図である。また、複数対を設置する場合は、各対の導入孔が前後の対の導入孔と上下の相対位置が反対になるように配置することが好ましい。これらにより、大量の加湿ガスを横型焼鈍炉内に導入できて、しかも、雰囲気ガスと導入した加湿ガスをより均一に混合できる。
【0025】
横型焼鈍炉の構成について、上述したのは炉の構成が1ゾーンの場合であるが、複数のゾーンから構成される横型焼鈍炉の場合もある。この複数ゾーンの炉は、それぞれの加熱処理条件が異なるものである。一例として、連続溶融亜鉛めっきラインにおける横型焼鈍炉は、予熱帯、無酸化帯、加熱帯(ラジアントチューブ)、保持帯、冷却帯などから構成されているが、この中の無酸化帯と加熱帯において、雰囲気制御、特に露点制御が重要となっている。このような横型焼鈍炉において、本発明に係る一対の加湿ガスの導入孔を少なくとも一対以上設置することで最適な露点制御が可能となる。具体的には、
図5に示すような2ゾーンの炉の場合に、雰囲気ガスFは、第2ゾーン(1b)出側から第1ゾーン(1a)入側に向かって通板方向Sとは逆の方向に流れるため、炉入側から第1ゾーン(1a)と第2ゾーン(1b)のそれぞれゾーンの出側近傍に、本発明に係る一対の加湿ガスの導入孔3'、4'、3、4を設置するものである。これにより、複数ゾーンの構成を持つ横型焼鈍炉においても、均一な露点とすることができる。
【0026】
[露点制御と雰囲気ガスの調整方法]
図1(a)に示す制御部9により、金属帯2の上側と下側の露点が目標の範囲内に入るように、加湿ガスの導入孔3、4から送り込まれる加湿ガスWの流量及び露点が制御される。ここで、制御部9は、加湿ガスの導入孔3、4に付随するバルブの開度および加湿ガスを供給するブロワの風量の少なくともいずれかを制御する。また、炉内に送り込まれる雰囲気ガスFの露点を加湿して調整することもある。
【0027】
なお、露点センサ7、8は、制御部9に接続されており、横型焼鈍炉1の入側近傍に金属帯2の上下にそれぞれ設置することが好ましい。また、露点センサ7、8は、2個以上複数設置してもよい。
【0028】
以上のように、本発明に係る横型焼鈍炉の露点制御方法は、横型焼鈍炉内の露点を測定し、導入孔からの加湿ガスの投入流量および水蒸気量の少なくともいずれかを制御し、露点を所定範囲内にするものである。ここで、加湿ガスの投入流量は、5~100Nm3/h程度であり、水蒸気量は、50~500Nm3/h程度である。また、前述の目標とする露点の所定範囲としては、-40~0℃であることが好ましい。
【0029】
[金属帯の焼鈍方法]
さらに、本発明に係る金属帯の焼鈍方法は、上述した横型焼鈍炉の露点制御方法を用いて、金属帯の焼鈍を行うことを特徴とするものである。
【実施例0030】
本発明における横型焼鈍炉の金属帯通板の上下においても加湿ガスが雰囲気ガスに均一に混合され、目標とする範囲内になることを実証するため、高さ2m、幅2m、長さ30mの横型焼鈍炉を用いて、金属帯として板厚1mm、幅1000mmの冷延鋼板を通板し、炉内平均温度750℃で焼鈍した。その際、横型焼鈍炉の出側から、30Nm3/hの雰囲気ガス(水素+窒素ガス)を流した。用いた冷延鋼板としては、一般的なSPCC鋼板である。
【0031】
また、本発明例として、横型焼鈍炉1の出側から長手方向4mにおける金属帯の上下位置に、加湿ガスの導入孔を設置した。加湿ガスの導入孔は、金属帯から上下方向に±0.2mの位置として、
図1(b)に記載するとおり、横型焼鈍炉1の断面視で、一方の加湿ガスの導入孔3は、横型焼鈍炉1の左側面の上側、他方の加湿ガスの導入孔4は、横型焼鈍炉1の右側面の下側とした。
【0032】
さらに、比較として、横型焼鈍炉10の出側から長手方向4mにおける金属帯の幅方向中央の上下位置に、従来の特許文献にも記載されるように、
図2(a)、(b)に示す加湿ガスの導入孔5、6を横型焼鈍炉10の上下から加湿ガスを導入するようにし、その先端を金属帯から上下方向に±0.2mの位置として、本発明例と同じサイズと材質の冷延鋼板について、同じ雰囲気ガス流量と同じ焼鈍条件で焼鈍した。
【0033】
また、炉の長手方向複数位置で金属帯幅方向中央の上側、下側で露点を測定した。
図6(a)および(b)に横型焼鈍炉が定常条件で通板しているときの結果を示す。横軸は入側(左)を起点として出側(右)に向かう炉内位置(m)を示し、縦軸に各炉内位置における露点を示した。また、図中に露点の目標である上限値と下限値も示した。
【0034】
図6(a)は、本発明の結果である。本発明では、加湿ガスが炉出側近傍の導入孔3、4から導入された直後は露点が急に増加するが、さらに炉内から炉入側において露点が安定しており、しかも、露点の目標値の上下限の範囲に入っており、著しく良好であることが分かった。
【0035】
図6(b)は、従来の結果である。従来は、加湿ガスが炉出側近傍の導入孔5、6より導入された後、炉入側に向かって露点の変動が大きくて、炉出側から炉入側に向かって炉長の約1/3において露点が大きく変動しており、露点の目標範囲を大きく外れることが分かった。