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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142356
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】MEMSマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H04R19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049224
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】糸山 寿毅
(72)【発明者】
【氏名】叶 肇
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄喜
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】大尾 光明
(72)【発明者】
【氏名】堀本 恭弘
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021CC02
5D021CC07
(57)【要約】
【課題】MEMSマイクロフォンの回路規模の増大を抑制しつつ、位相が反転された差動信号を生成する。
【解決手段】MEMSマイクロフォンは、導電性を有する振動膜と、振動膜に対向する第1固定電極を有し、振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第1可変キャパシタと、振動膜に対向する第2固定電極を有し、振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第2可変キャパシタと、第1可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第1電圧を出力する第1電圧出力部と、第2可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第2電圧を出力する第2電圧出力部と、を有し、第1固定電極には、第1バイアス電圧が印加され、第2固定電極には、基準電圧が印加され、振動膜には、基準電圧との差が、第1バイアス電圧と基準電圧との差の半分である第2バイアス電圧が印加される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する振動膜と、
前記振動膜に対向する第1固定電極を有し、前記振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第1可変キャパシタと、
前記振動膜に対向する第2固定電極を有し、前記振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第2可変キャパシタと、
前記第1可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第1電圧を出力する第1電圧出力部と、
前記第2可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第2電圧を出力する第2電圧出力部と、を有し、
前記第1固定電極には、第1バイアス電圧が印加され、
前記第2固定電極には、基準電圧が印加され、
前記振動膜には、前記基準電圧との差が、前記第1バイアス電圧と前記基準電圧との差の半分である第2バイアス電圧が印加されること
を特徴とするMEMSマイクロフォン。
【請求項2】
前記第1固定電極および前記第2固定電極は、面積が互いに同じであり、前記振動膜までの対向距離が互いに同じであることを特徴とする請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項3】
前記第2固定電極は、接地線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項4】
前記第1バイアス電圧を生成する第1バイアス生成回路と、
前記第2バイアス電圧を生成する第2バイアス生成回路と、を有し、
前記第1バイアス生成回路は、直列に接続される複数の昇圧回路を有し、前記複数の昇圧回路いずれかから前記第1バイアス電圧を出力し、
前記第2バイアス生成回路は、前記第1バイアス電圧を出力する昇圧回路に対して前段側に位置する前記複数の昇圧回路のいずれかから出力される電圧を前記第2バイアス電圧として出力すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項5】
前記第1固定電極および前記第2固定電極が固定され、電気絶縁性を有し、前記振動膜に対向する固定板を有し、
前記第1固定電極および前記第2固定電極は、前記固定板に対して前記振動膜側に配置されること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項6】
前記固定板は、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間の隙間を埋める突部を有すること
を特徴とする請求項5に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項7】
前記振動膜に対向する位置に貫通孔を有する半導体基板を有し、
前記振動膜、前記第1固定電極、前記第2固定電極および前記固定板は、半導体製造技術を使用して前記半導体基板上に形成されていること
を特徴とする請求項5または請求項6に記載のMEMSマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォンに関し、特にMEMS技術を使用したMEMSマイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
機器の小型化、軽量化とともに、機器に搭載されるマイクロフォンの小型化、軽量化が要求されている。これに伴い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を使用したMEMSマイクロフォンが開発されている。例えば、MEMSマイクロフォンは、半導体基板上に設けられた導電性の振動膜と、振動膜を覆って半導体基板に固定された導電性のバックプレートとにより構成される可変キャパシタを有する。そして、MEMSマイクロフォンは、音圧による振動膜の振動に応じた可変キャパシタの静電容量の変化を電圧として検出することで、音圧を電気信号に変換する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
MEMSマイクロフォンにおいて、互いに逆の極性の電圧が印加される振動膜とバックプレートとのそれぞれをアンプの入力に接続し、音圧に応じて差動信号を生成する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、MEMSマイクロフォンにおいて、振動膜の両面側にバックプレートをそれぞれ配置し、音圧に応じて差動信号を生成する手法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
MEMSマイクロフォンにおいて、振動膜に対向する複数のバックプレートのそれぞれをスイッチを介してアンプの入力に選択的に接続することで、音圧の大きさに合わせて歪みが抑制された信号を生成する手法が知られている(例えば、特許文献4参照)。2つの固定電極のそれぞれに互いに逆の極性の電圧を印加し、音圧に応じて差動信号を生成するコンデンサマイクロフォンが知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-259410号公報
【特許文献2】米国特許第10523162号明細書
【特許文献3】米国特許第10589987号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0266145号明細書
【特許文献5】特開2006-101302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つの固定電極を使用し、音圧に応じて差動信号(正相信号および逆相信号)を生成するマイクロフォンでは、振動膜と2つの固定電極とにより形成される2つの可変キャパシタに正電圧と負電圧とがそれぞれ印加される。しかしながら、正電圧を生成する正電圧生成回路と負電圧を生成する負電圧生成回路とをマイクロフォンに搭載する場合、マイクロフォンの回路規模およびコストが増大してしまう。また、2つの可変キャパシタに印加する正電圧と負電圧とが生成できる場合にも、2つの可変キャパシタの静電容量が互いに等しくない場合、同じ振幅の正相信号および逆相信号を生成することができず、歪みのある差動信号が生成されてしまう。
【0007】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、MEMSマイクロフォンの回路規模の増大を抑制しつつ、振幅や位相が反転された正確な差動信号を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態では、MEMSマイクロフォンは、導電性を有する振動膜と、前記振動膜に対向する第1固定電極を有し、前記振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第1可変キャパシタと、前記振動膜に対向する第2固定電極を有し、前記振動膜の振動に応じて静電容量が変化する第2可変キャパシタと、前記第1可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第1電圧を出力する第1電圧出力部と、前記第2可変キャパシタの静電容量の変化に応じて変化する第2電圧を出力する第2電圧出力部と、を有し、前記第1固定電極には、第1バイアス電圧が印加され、前記第2固定電極には、基準電圧が印加され、前記振動膜には、前記基準電圧との差が、前記第1バイアス電圧と前記基準電圧との差の半分である第2バイアス電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
MEMSマイクロフォンの回路規模の増大を抑制しつつ、位相が反転された差動信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るマイクロフォンの一例を示すブロック図である。
図2図1のMEMS部の構造の一例を示す分解斜視図である。
図3図2のA-A'線に沿う断面図である。
図4図2のB-B'線に沿う断面図である。
図5図1のバイアス生成回路および1/2バイアス生成回路の一例を示す回路ブロック図である。
図6図1のマイクロフォンから出力される出力信号と、固定電極を分割しない他のマイクロフォンから出力される出力信号との一例を示す説明図である。
図7】固定電極を分割する場合と固定電極を分割しない場合とでのマイクロフォンの全高調波歪みを評価するシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。
図8】第2の実施形態に係るマイクロフォンのMEMS部の構造の一例を示す分解斜視図である。
図9】第3の実施形態に係るマイクロフォンの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。以下では、信号が供給される信号線は、信号名と同じ符号が使用され、電圧が供給される電圧線または電源線は、電圧名または電源名と同じ符号が使用される。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係るマイクロフォンの一例を示すブロック図である。図1に示すマイクロフォン100は、例えば、MEMS技術を使用して形成されたMEMS部110と、回路部120とを有する。MEMS部110は、互いに対向する振動膜VPおよび固定電極BP1により形成される可変キャパシタVC1と、互いに対向する振動膜VPと固定電極BP2とにより形成される可変キャパシタVC2とを有する。
【0013】
固定電極BP1は、第1固定電極の一例であり、固定電極BP2は、第2固定電極の一例である。可変キャパシタVC1は、第1可変キャパシタの一例であり、可変キャパシタVC2は、第2可変キャパシタの一例である。
【0014】
固定電極BP1、BP2の面積は、互いに同じであり、固定電極BP1、BP2と振動膜VPとの対向距離は、互いに同じである。これにより、可変キャパシタVC1、VC2の電気的特性を互いに等しくすることができ、振動膜VPが音圧により振動するときの可変キャパシタVC1、VC2の静電容量の変化量を互いに等しくすることができる。
【0015】
振動膜VPは、可変キャパシタVC1、VC2に共通に設けられる。振動膜VPは、導電性を有し、配線W1および端子T1を介して回路部120に接続される。固定電極BP1は、配線W2および端子T2を介して回路部120に接続される。固定電極BP2は、配線W3および端子T3を介して回路部120に接続される。MEMS部110の構造は、図2で説明される。例えば、端子T1、T2、T3は、パッドとして形成されてもよい。
【0016】
回路部120は、バイアス生成回路121、1/2バイアス生成回路122、抵抗素子R1、R2、R3、R4、容量素子C1、C2およびアンプAMP1、AMP2を有する。特に限定されないが、回路部120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の半導体集積回路として設計される。また、抵抗素子R1、R2、R3、R4は高抵抗を実現するためダイオードなどを抵抗素子として使用することができる。
【0017】
容量素子C1の一端は、ノードND1を介して端子T2に接続される。容量素子C1の他端は、ノードND3を介してアンプAMP1の入力に接続される。容量素子C2の一端は、ノードND2を介して端子T3に接続される。容量素子C2の他端は、ノードND4を介してアンプAMP2の入力に接続される。
【0018】
抵抗素子R1は、バイアス生成回路121の出力とノードND1との間に配置される。抵抗素子R2は、ノードND2と基準電圧線Vrefとの間に配置される。このため、固定電極BP2は、端子T3、ノードND2および抵抗素子R2を介して基準電圧Vrefに設定される。抵抗素子R3は、ノードND3とコモン電圧線Vcomとの間に配置される。抵抗素子R4は、ノードND4とコモン電圧線Vcomとの間に配置される。コモン電圧線Vcomの電圧は、アンプAMP1、AMP2の動作電圧に合わせて設定され、例えば、1Vである。
【0019】
ノードND1は、抵抗素子R1を介してバイアス電圧BIASに設定される。ノードND3は、抵抗素子R3を介してコモン電圧Vcomに設定される。ノードND2は、抵抗素子R2を介して基準電圧Vrefに設定される。ノードND4は、抵抗素子R4を介してコモン電圧Vcomに設定される。なお、ノードND1が基準電圧Vrefに設定され、ノードND2がバイアス電圧BIASに設定されてもよい。なお、基準電圧Vrefは、接地電圧GNDに設定されてもよい。
【0020】
容量素子C1および抵抗素子R3は、ハイパスフィルタとして機能し、ノードND1に伝達される電圧信号の低周波成分を除去し、高周波成分をアンプAMP1の入力に伝える。容量素子C2および抵抗素子R4は、ハイパスフィルタとして機能し、ノードND2に伝達される電圧信号の低周波成分を除去し、高周波成分をアンプAMP2の入力に伝える。なお、回路部120は、容量素子C1、C2および抵抗素子R3、R4を持たなくてもよい。この場合、ノードND1がアンプAMP1の入力に接続され、ノードND2がアンプAMP2の入力に接続されてもよい。
【0021】
バイアス生成回路121は、クロック信号CLKに同期して動作し、バイアス電圧BIASを生成する。バイアス電圧BIASは、端子T2を介して固定電極BP1に供給される。バイアス生成回路121は、バイアス電圧BIASを生成する途中の電圧V1を1/2バイアス生成回路122に出力する。
【0022】
1/2バイアス生成回路122は、バイアス生成回路121から受ける電圧V1に基づいて、バイアス電圧BIASの2分の1の値を有するバイアス電圧1/2BIASを生成する。バイアス電圧1/2BIASは、端子T1を介して振動膜VPに供給される。
【0023】
バイアス生成回路121は、第1バイアス生成回路の一例であり、バイアス電圧BIASは、第1バイアス電圧の一例である。1/2バイアス生成回路122は、第2バイアス生成回路の一例であり、バイアス電圧1/2BIASは、第2バイアス電圧の一例である。
【0024】
バイアス電圧1/2BIASは、基準電圧Vrefとの差がバイアス電圧BIASと基準電圧Vrefとの差の約半分の電圧値に設定される。好ましくは、バイアス電圧1/2BIASと基準電圧Vrefとの差は、バイアス電圧BIASと基準電圧Vrefとの差の半分である。このため、例えば、可変キャパシタVC1、VC2には、振動膜VPを基準として絶対値が互いに等しい正電圧と負電圧とがそれぞれ印加される。バイアス生成回路121および1/2バイアス生成回路122の例は、図5に示される。
【0025】
このように、マイクロフォン100は、正の電圧であるバイアス電圧BIAS、1/2BIASを使用して、可変キャパシタVC1、VC2に正電圧と負電圧とをそれぞれ印加することができる。負電圧生成回路をマイクロフォン100に搭載しなくてよいため、マイクロフォン100の回路規模の増大を抑制することができ、マイクロフォン100のコストの増大を抑制することができる。
【0026】
アンプAMP1は、正の電源電圧+Vlimと負の電源電圧-Vlimとを受けて動作し、ノードND3の電圧を増幅して出力電圧VP1として出力する。アンプAMP2は、正の電源電圧+Vlimと負の電源電圧-Vlimとを受けて動作し、ノードND4の電圧を増幅して出力電圧VN1として出力する。例えば、正の電源電圧+Vlimは2Vであり、負の電源電圧-Vlimは0Vである。なお、アンプAMP1、AMP2は、バッファとして動作してもよい。この場合、AMP1は、ノードND3の電圧をそのまま出力電圧VP1として出力し、アンプAMP2は、ノードND4の電圧をそのまま出力電圧VN1として出力する。
【0027】
アンプAMP1は、可変キャパシタVC1の静電容量の変化に応じて変化する出力電圧VP1を出力する第1電圧出力部の一例である。アンプAMP2は、可変キャパシタVC2の静電容量の変化に応じて変化する出力電圧VN1を出力する第2電圧出力部の一例である。出力電圧VP1は、第1電圧の一例であり、出力信号VN1は、第2電圧の一例である。
【0028】
例えば、MEMS部110において、音圧により振動膜VPが振動し、振動膜VPと固定電極BP1、BP2との対向距離がそれぞれ小さくなると、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量値は増大する。これにより、ノードND1の電圧は過渡的に低下し、容量素子C1を介して、ノードND3の電圧も過渡的に低下する。アンプAMP1は、ノードND3の電圧の低下に応じて出力電圧VP1を低下させる。一方、ノードND2の電圧は過渡的に上昇し、容量素子C2を介して、ノードND4の電圧も過渡的に上昇する。アンプAMP2は、ノードND4の電圧の上昇に応じて出力電圧VP1を上昇させる。
【0029】
これに対して、音圧により振動膜VPが振動し、振動膜VPと固定電極BP1、BP2の対向距離が大きくなると、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量値はそれぞれ減少する。これにより、ノードND1の電圧は過渡的に上昇し、容量素子C1を介して、ノードND3の電圧も過渡的に上昇する。アンプAMP1は、ノードND3の電圧の上昇に応じて出力電圧VP1を上昇させる。一方、ノードND2の電圧は過渡的に低下し、容量素子C2を介して、ノードND4の電圧も過渡的に低下する。アンプAMP2は、ノードND4の電圧の低下に応じて出力電圧VN1を低下させる。
【0030】
図2は、図1のMEMS部110の構造の一例を示す分解斜視図である。以下では、分解斜視図の上方向は上側Uと称され、斜視図の下方向は下側Dと称される。MEMS部110は、上側Uと下側Dとを貫通する貫通孔であるキャビティCAVが形成された基板SUBを有する。
【0031】
例えば、基板SUBは、単結晶シリコン等の半導体基板を加工することで形成される。例えば、MEMS部110は、以下に示すように形成される。まず、シリコンウェハ上に、振動膜VP、固定電極BP1、BP2、バックプレートBPおよび端子T1、T2、T3が順次形成される。次に、シリコンウェハにおいて振動膜VPに対向する位置にキャビティCAVが形成され、シリコンウェハをダイシングすることでMEMS部110が形成される。各MEMS部110の基板SUBは、ダイシングにより直方体形状になる。このように、MEMS部110は、半導体製造技術を使用して製造される。なお、MEMS部110の各要素の形成順序は、上述した順序に限定されない。
【0032】
振動膜VP(ダイアフラム)は、キャビティCAVの上側Uに、キャビティCAVを覆う位置に配置される。振動膜VPは、例えば、ほぼ矩形状であり、振動膜VPの周囲の全周または一部が基板SUBに固定される。例えば、振動膜VPの外周部分には、外周に沿って環状のスリットSLTが形成される。振動膜VPの四隅の1つは、突出部PJ1を有する。図1に示した端子T1は、突出部PJ1の先端側の上側Uに設けられる。なお、突出部PJ1および端子T1を形成する位置は、図2に示す例に限定されない。また、振動膜VPは、円形状や三角形状など、矩形状に限らずその他の形状を採用してもよい。
【0033】
固定電極BP1、BP2は、振動膜VPの上側Uに配置され、振動膜VPに対向している。固定電極BP1、BP2は、例えば、端子T2、T3の方向に細長い矩形の板状を有しており、隙間GAPを挟んで並んで配置される。なお、固定電極BP1,BP2は、その面積が互いに等しければ形状は限定されず、細長い矩形以外の形状でもよい。
【0034】
固定電極BP1、BP2の上側Uは、固定電極BP1、BP2を基板SUBに固定するバックプレートBPに固定されている。すなわち、固定電極BP1、BP2は、バックプレートBPに対して振動膜VP側に配置されている。バックプレートBPは、例えば、ほぼ矩形状であり、電気絶縁性を有する。バックプレートBPの周囲は、基板SUBに固定されている。バックプレートBPは、固定電極BP1、BP2が固定される固定板の一例である。なお、バックプレートBPは、円形状や三角形状など、矩形状に限らずその他の形状を採用してもよい。また、固定電極BP1、BP2の上側Uと下側DとにバックプレートBPをそれぞれ配置し、固定電極BP1、BP2をバックプレートBPにより挟み込む形状を採用してもよい。
【0035】
固定電極BP1、BP2をバックプレートBPに対して振動膜VP側(下側D)に配置することで、固定電極BP1、BP2をバックプレートBPに対して振動膜VPと反対側(上側U)に配置する場合に比べて、振動膜VPとの対向距離を小さくすることができる。振動膜VPとの対向距離を小さくすることで、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を大きくすることができ、音圧の検出感度を向上することができる。この結果、マイクロフォン100の性能を向上することができる。
【0036】
固定電極BP1は、バックプレートBPの周囲から突出する突出部PJ2を有する。端子T2は、突出部PJ2の先端側の上側Uに設けられる。同様に、固定電極BP2は、バックプレートBPの周囲から突出する突出部PJ3を有する。端子T3は、突出部PJ3の先端側の上側Uに設けられる。なお、突出部PJ2、PJ3および端子T2、T3を形成する位置は、図2に示す例に限定されない。
【0037】
さらに、固定電極BP1、BP2およびバックプレートBPは、固定電極BP1、BP2およびバックプレートBPを貫通する複数の音響孔AHを有する。音響孔AHの数、大きさ、形成間隔および配列形状は、図2に示す例に限定されない。
【0038】
なお、固定電極BP1、BP2は、導電面の面積が互いに等しければ、形状は相違してもよい。また、導電面の面積を同じにするために、互いに同じ数の音響孔AHが固定電極BP1、BP2に形成されることが好ましい。
【0039】
特に限定されないが、例えば、振動膜VPおよび固定電極BP1、BP2は、ポリシリコンにより形成され、バックプレートBPは、SiN(窒化シリコン)により形成される。例えば、端子T1、T2、T3は、Au(金)により形成される。
【0040】
図3は、図2のA-A'線に沿う断面図である。なお、振動膜VPおよび基板SUBのA-A'線は、図2のバックプレートBPのA-A'線を下側Dに平行移動した位置にあるものとする。
【0041】
振動膜VPは、基板SUB上に環状に形成される支持台ST1上に、四隅が固定される。バックプレートBPは、支持台ST1上に設けられる支持台ST2を覆って形成される。例えば、支持台ST1、ST2は、SiO(二酸化シリコン)により形成される。なお、振動膜VPは、支持台ST1上に固定されるとしたが、バックプレートBPや基板SUBに直接形成して固定されていてもよいし、基板SUB上に形成されている別の積層膜上に形成するようにしてもよい。また、固定される位置は、四隅に限定されず、全周や2辺、中央などを固定するようにしてもよい。また、バックプレートBPは、支持台ST1や支持台ST2上、基板SUB上に直接形成してもよく、形成位置は限定されない。
【0042】
固定電極BP1は、バックプレートBPの下側Dに接触し、バックプレートBPにより支持される。バックプレートBPの突出部PJ2側には、固定電極BP1まで貫通する貫通孔が形成されている。端子T2は、貫通孔に導電部材を埋め込むことで形成される。なお、固定電極BP2および端子T3の断面構造も、図3と同様である。
【0043】
図4は、図2のB-B'線に沿う断面図である。図3と同じ構造については、詳細な説明は省略する。なお、振動膜VPおよび基板SUBのB-B'線は、図2のバックプレートBPのB-B'線を下側Dに平行移動した位置にあるものとする。
【0044】
固定電極BP1、BP2は、バックプレートBPの下側Dに配置され、振動膜VPとの対向距離は互いに等しい。固定電極BP1、BP2を、バックプレートBPに対して同じ側(図4では下側D)に配置することで、MEMS部110の製造工程において、固定電極BP1、BP2を形成するときに、振動膜VPまでの対向距離を自動的に高い精度で等しくすることができる。
【0045】
また、固定電極BP1、BP2は、共通のポリシリコン層を使用して、互いに近接した位置に形成されるため、固定電極BP1、BP2の面積をポリシリコン層のフォトマスクの面積に対応させて容易に互いに等しくすることができる。このように、半導体製造技術を使用してMEMS部110に固定電極BP1、BP2を形成することで、固定電極BP1、BP2の面積、および、固定電極BP1、BP2と振動膜VPとの対向距離のそれぞれを高い精度で等しくすることができる。したがって、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を高い精度で等しくすることができる。この結果、マイクロフォン100は、位相が互いに反転された差動の出力信号VP1、VN1をアンプAMP1、AMP2から出力することができる。
【0046】
これに対して、例えば、振動膜VPの上側Uと下側Dとのそれぞれに対向して固定電極BP1、BP2を形成する場合、固定電極BP1、BP2は、別のポリシリコン層を使用して形成される。このため、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を高い精度で互いに等しくすることは困難であり、位相が互いに反転された差動の出力信号VP1、VN1をアンプAMP1、AMP2から出力することは困難である。
【0047】
また、例えば、金属プレートとスペーサとにより形成される可変キャパシタおよびアンプ等の部品をプリント基板上に搭載するECM(Electret Condenser Microphone)では、2つの可変キャパシタの静電容量を高い精度で互いに等しくすることは困難である。このため、位相が互いに反転された差動の出力信号をアンプから出力することは困難である。
【0048】
振動膜VP上に並べて形成される固定電極BP1、BP2の隣接部分である隙間GAPには、隙間GAPを埋める突部CONVが振動膜VPに向けて形成される。突部CONVは、バックプレートBPと一体に形成され、電気絶縁性を有する。固定電極BP1、BP2の隣接部分を遮って電気絶縁性の突部CONVを形成することで、固定電極BP1、BP2を電気的に確実に分離することができる。なお、図4では、振動膜VPを音圧に応じて振動しやすくするために、隙間GAPに音響孔AHが形成されている。しかしながら、隙間GAPに音響孔AHが形成されなくてもよい。
【0049】
図5は、図1のバイアス生成回路121および1/2バイアス生成回路122の一例を示す回路ブロック図である。バイアス生成回路121は、直列に接続された複数のポンプユニット125と出力フィルタ126とを有する。ポンプユニット125は、昇圧回路の一例である。1/2バイアス生成回路122は、複数のスイッチSW(SW1、SW2、SW3)と出力フィルタ127とを有する。
【0050】
バイアス生成回路121において、各ポンプユニット125は、クロック信号CLKに同期してポンプ動作し、前段から受ける電圧を昇圧し、昇圧した電圧を後段に出力する。そして、バイアス生成回路121は、ポンプユニット125の段数とクロック信号CLKの電圧振幅に応じたバイアス電圧BIASを生成する。なお、図5では、初段のポンプユニット125は、入力で接地電圧GNDを受けているが、入力で基準電圧Vrefを受けてもよい。
【0051】
出力フィルタ126は、最終段のポンプユニット125が出力する電圧に含まれる高周波成分を除去してバイアス電圧BIASとして出力するローパスフィルタの機能を有する。出力フィルタ126に供給される昇圧電圧は、高周波成分を含むが、バイアス電圧BIASと等しい。なお、出力フィルタ126に昇圧電圧を出力するポンプユニット125は、最終段のポンプユニット125に限定されず、後段側のポンプユニット125のいずれかであればよい。
【0052】
1/2バイアス生成回路122は、バイアス生成回路121において後段側のポンプユニット125に対して前段側に位置する複数のポンプユニット125から出力される複数の昇圧電圧をスイッチSW(SW1-SW3)で受ける。スイッチSW1-SW3のいずれかはオンし、バイアス生成回路121から受ける電圧を電圧V1として出力フィルタ127に伝達する。
【0053】
出力フィルタ127は、スイッチSWのいずれかを介して受けた電圧V1に含まれる高周波成分を除去してバイアス電圧1/2BIASとして出力するローパスフィルタの機能を有する。出力フィルタ127に供給される電圧V1は、高周波成分を含むが、バイアス電圧1/2BIASと等しい。
【0054】
各スイッチSW(SW1-SW3)は、例えば、スイッチ制御回路128が生成するスイッチ制御信号SCNT(SCNT1-SCNT3)に応じて動作する。スイッチ制御回路128は、制御信号CNTまたは制御電圧CNTに応じてスイッチ制御信号SCNT1-SCNT3のいずれかを有効レベルに設定し、他を無効レベルに設定する。
【0055】
そして、複数のスイッチSW(SW1-SW3)のうち、有効レベルのスイッチ制御信号SCNTを受けるスイッチSWがオンし、ポンプユニット125のいずれかの出力を出力フィルタ127の入力に接続する。スイッチ制御回路128がスイッチ制御信号SCNT1-SCNT3のいずれを有効レベルに設定するかは、例えば、図1の回路部120の動作試験により決定される。
【0056】
これにより、1/2バイアス生成回路122は、バイアス電圧BIASを生成するバイアス生成回路121の生成途中の電圧V1を利用して、基準電圧Vrefとの差が、バイアス電圧BIASと基準電圧Vrefとの差の半分のバイアス電圧1/2BIASを生成することができる。この結果、1/2バイアス生成回路122にポンプユニット125を形成することなく、バイアス電圧1/2BIASを生成することができ、バイアス電圧BIAS、1/2BIASを生成する回路の回路規模の増加を抑制することができる。
【0057】
なお、スイッチ制御回路128は、回路部120の動作試験に基づいてプログラムされるヒューズ回路等のプログラム回路を有してもよい。この場合、プログラム回路のプログラム状態に応じて、スイッチ制御信号SCNT1-SCNT3のいずれかが有効レベルに設定される。
【0058】
また、スイッチSWの数は3個に限定されない。さらに、1/2バイアス生成回路122は、スイッチSWを持たず、例えば、バイアス生成回路121が有するn個(偶数個)のポンプユニット125のうち、n/2番目のポンプユニット125から出力される電圧を出力フィルタ127で受けてもよい。なお、ポンプユニット125の前段と後段のクロック信号CLKの振幅を変えて調整するなどして、ポンプユニット125を奇数個とすることもできる。
【0059】
また、バイアス生成回路121は、後段側の所定数のポンプユニット125の出力を、出力フィルタ126の入力に選択的に接続する複数のスイッチを有してもよい。これにより、バイアス電圧BIASの値を微調整することができる。
【0060】
図6は、図1のマイクロフォン100から出力される出力信号と、固定電極を分割しない他のマイクロフォンから出力される出力信号との一例を示す説明図である。図1のマイクロフォン100は、位相が互いに反転された差動の出力信号VP1、VN1をアンプAMP1、AMP2から出力する。出力信号VP1、VN1の最大振幅は、2Vlimである。
【0061】
出力信号VP1、VN1の位相は、互いに反転されている。このため、マイクロフォン100から出力信号VP1、VN1を受ける外部回路は、出力信号VP1、VN1を差動信号として扱うことができる。このため、例えば、外部回路は、出力信号VP1、VN1の電圧差を出力信号VOUTとする場合、各出力信号VP1、VN1の最大振幅の2倍の最大振幅4Vlimを有する出力信号VOUTを生成することができる。すなわち、外部回路は、電圧-2Vlimから電圧+2Vlimまで歪まない出力信号VOUTを生成できる。
【0062】
これに対して、単一の固定電極BPを含む可変キャパシタVCを有するマイクロフォン200では、単一のアンプAMPから出力される出力信号VOUT2の最大振幅は、2Vlimになる。アンプAMPが出力可能な最大電圧および最小電圧は、+Vlimおよび-Vlimにそれぞれ制限される。
【0063】
このため、マイクロフォン200が歪みなく出力信号VOUT2を出力できる入力音圧の最大レベルは、出力信号VP1、VN1に基づいて出力信号VOUTを歪みなく出力できる入力音圧の最大レベルの半分になる。例えば、マイクロフォン200に入力される音圧により、出力信号VOUT2の上限および下限が電圧+Vlimおよび電圧-Vlimにそれぞれクランプされる場合、出力信号VOUT2に歪みが発生する。
【0064】
図2に示したように、振動膜VPおよび固定電極BP1、BP2をMEMS技術を使用して形成することで、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を高い精度で互いに等しくすることができる。そして、振動膜VPが振動したときの可変キャパシタVC1、VC2の静電容量の変化量を高い精度で互いに等しくすることができる。したがって、例えば、互いに位相が反転した出力信号VP1、VN1の電圧差により、出力信号VP1、VN1の振幅のほぼ2倍の振幅を有する出力信号を生成することができる。
【0065】
なお、上述したように、金属プレートとスペーサとにより形成される可変キャパシタおよびアンプ等の部品をプリント基板上に搭載するECMでは、2つの可変キャパシタの静電容量を精度よく等しくすることが困難である。このため、振動膜が振動したときに2つの可変キャパシタの静電容量の変化量を等しくすることが困難であり、2つのアンプから出力される出力信号の電圧差の振幅を、各アンプの出力信号の振幅の2倍にすることは困難である。
【0066】
図7は、固定電極を分割する場合と固定電極を分割しない場合とでのマイクロフォンの全高調波歪みTHD(Total Harmonic Distortion)を評価するシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。
【0067】
シミュレーションは、図1に示すマイクロフォン100と、図6に示すマイクロフォン200とを使用して実施された。マイクロフォン100のシミュレーションでは、出力信号VP1、VN1の電圧の差を出力信号VOUTとした。マイクロフォン200は、分割しない固定電極BPを含むMEMS部210と、入力が固定電極BPに接続され、出力信号VOUT2を出力するアンプAMPとを有する。
【0068】
図7に示すシミュレーション結果は、マイクロフォン100に入力される音圧レベルに対する出力信号VOUTと、マイクロフォン200に入力される音圧レベルに対する出力信号VOUT2との全高調波歪みTHDを示す。シミュレーションの結果、出力信号VOUTを歪ませることなくマイクロフォン100に入力可能な音圧レベルを、出力信号VOUT2を歪ませることなくマイクロフォン200に入力可能な音圧レベルに比べて、約6dB(=2倍)大きくできることが分かった。すなわち、分割した固定電極BP1、BP2を有するマイクロフォン100は、分割しない固定電極BPを有するマイクロフォン200に比べて、より広い音圧範囲に対して出力信号を歪みなく出力することができる。
【0069】
以上、この実施形態では、マイクロフォン100は、正の電圧であるバイアス電圧BIAS、1/2BIASを使用して、可変キャパシタVC1、VC2に正電圧と負電圧とをそれぞれ印加することができる。マイクロフォン100に負電圧生成回路を搭載しなくてよいため、マイクロフォン100の回路規模の増大を抑制することができ、マイクロフォン100のコストの増大を抑制することができる。
【0070】
また、可変キャパシタVC1、VC2において、同じ層に形成される固定電極BP1、BP2は、互いに同じ面積に形成され、固定電極BP1、BP2から振動膜VPまでの対向距離は、同じに設定される。これにより、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を互いに等しくすることができ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を精度よく生成することができる。この結果、マイクロフォン100の回路規模の増大を抑制しつつ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を生成することができる。
【0071】
1/2バイアス生成回路122は、バイアス電圧BIASを生成するバイアス生成回路121の生成途中の電圧V1を利用して、基準電圧Vrefとの差が、バイアス電圧BIASと基準電圧Vrefとの差の約半分の値を有するバイアス電圧1/2BIASを生成することができる。この結果、1/2バイアス生成回路122にポンプユニット125を形成することなく、バイアス電圧1/2BIASを生成することができ、バイアス電圧BIAS、1/2BIASを生成する回路の回路規模の増加を抑制することができる。
【0072】
固定電極BP1、BP2をバックプレートBPに対して振動膜VP側に配置することで、固定電極BP1、BP2をバックプレートBPに対して振動膜VPと反対側に配置する場合に比べて、振動膜VPとの対向距離を小さくすることができる。これにより、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を大きくすることができ、音圧の検出感度を向上することができる。この結果、マイクロフォン100の性能を向上することができる。
【0073】
固定電極BP1、BP2の隣接部分を遮って電気絶縁性の突部CONVを形成することで、固定電極BP1、BP2を電気的に確実に分離することができる。この際、突部CONVをバックプレートBPと一体に形成することで、突部CONVを自己整合することができる。
【0074】
MEMS部110を、半導体製造技術を使用して基板SUB上に形成することで、固定電極BP1、BP2の面積、および、固定電極BP1、BP2と振動膜VPとの対向距離を高い精度で等しくすることができる。
【0075】
図8は、第2の実施形態に係るマイクロフォンのMEMS部の構造の一例を示す分解斜視図である。第1の実施形態と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0076】
図8に示すMEMS部110Aは、固定電極BP1、BP2がバックプレートBPの上側Uに形成されることを除き、図2に示したMEMS部110と同じ構造を有する。例えば、固定電極BP1、BP2は、バックプレートBPの上側Uのポリシリコン層を使用して形成される。固定電極BP1、BP2がバックプレートBPの上側Uに形成されるため、端子T2、T3の断面構造は、図3に示した断面構造と異なる。例えば、端子T2、T3は、各固定電極BP1、BP2の上に直接形成される。
【0077】
この実施形態のマイクロフォンは、MEMS部110の代わりにMEMS部110Aを有することを除き、図1に示したマイクロフォン100と同様の構成を有する。すなわち、この実施形態のマイクロフォンは、MEMS部110Aに接続され、出力信号VP1、VN1を出力する回路部120を有する。また、この実施形態のマイクロフォンの全高調波歪みTHDのシミュレーション結果は、図7のマイクロフォン100のシミュレーション結果と同様である。
【0078】
以上、この実施形態においても、第1の実施形態と同一または同様の効果を得ることができる。例えば、マイクロフォンに負電圧生成回路を搭載することなく、可変キャパシタVC1、VC2に正電圧と負電圧とをそれぞれ印加することができるため、マイクロフォンの回路規模およびコストの増大を抑制することができる。同じ層に形成される固定電極BP1、BP2により、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を互いに等しくすることができ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を精度よく生成することができる。この結果、マイクロフォンの回路規模の増大を抑制しつつ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を生成することができる。
【0079】
図9は、第3の実施形態に係るマイクロフォンの一例を示すブロック図である。第1の実施形態と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態のマイクロフォン100Bは、図1の回路部120の代わりに回路部120Bを有することを除き、図1のマイクロフォン100と同様の構成を有する。
【0080】
回路部120Bは、図1の回路部120にADC(Analog-to-Digital Converter)130を追加している。ADC130は、アンプAMP1から出力される出力信号VP1とアンプAMP2から出力される出力信号VN1とを差動入力+VIN、-VINで受け、受けた差動入力+VIN、-VINの電圧差を示す単相のデジタル出力信号DOUTを出力する。
【0081】
デジタル出力信号DOUTの値は、図6に示した出力信号VOUTの電圧値に対応する。すなわち、この実施形態のマイクロフォン100Bの全高調波歪みTHDのシミュレーション結果は、図7のマイクロフォン100のシミュレーション結果と同様である。なお、回路部120Bは、ADC130の代わりに、差動増幅器を有してもよく、出力信号VP1、VN1をそれぞれデジタル値に変換する2つのADCを有してもよい。また、マイクロフォン100Bは、MEMS部110の代わりに図8に示したMEMS部110Aを有してもよい。
【0082】
以上、この実施形態においても、第1の実施形態と同一または同様の効果を得ることができる。例えば、マイクロフォン100Bに負電圧生成回路を搭載することなく、可変キャパシタVC1、VC2に正電圧と負電圧とをそれぞれ印加することができるため、マイクロフォン100Bの回路規模およびコストの増大を抑制することができる。同じ層に形成される固定電極BP1、BP2により、可変キャパシタVC1、VC2の静電容量を互いに等しくすることができ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を精度よく生成することができる。この結果、マイクロフォン110Bの回路規模の増大を抑制しつつ、位相が互いに反転した差動信号である出力信号VP1、VN1を生成することができる。
【0083】
さらに、この実施形態では、マイクロフォン100Bは、差動の出力信号VP1、VN1の電圧差を示す単相のデジタル出力信号DOUTを出力するADC130を有する。これにより、マイクロフォン100Bに接続される外部回路をデジタル回路で構成することができ、音圧の変化に基づいて生成される差動信号の処理を簡易にすることができる。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨をそこなわない範囲で、種々の変形・改良が可能である。
【符号の説明】
【0085】
100、100B…マイクロフォン;110、110A…MEMS部;120、120B…回路部;121…バイアス生成回路;122…1/2バイアス生成回路;123、124…アンプ;125…ポンプユニット;126、127…出力フィルタ;128…スイッチ制御回路;130…ADC;AH…音響孔;BIAS、1/2BIAS…バイアス電圧;BP…バックプレート;BP1、BP2…固定電極;CAV…キャビティ;CLK…クロック信号;GAP…隙間;PJ1、PJ2、PJ3…突出部;ST1、ST2…支持台;SUB…基板;SW(SW1、SW2、SW3)…スイッチ;SCNT(SCNT1、SCNT2、SCNT3)…スイッチ制御信号;T1、T2、T3…端子;VC1、VC2…可変キャパシタ;VN1…出力信号;VP…振動膜;VP1…出力信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9