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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142392
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】含水率計測装置及び含水率計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3554 20140101AFI20230928BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N21/3554 ZAB
C02F11/121
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049283
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 新平
(72)【発明者】
【氏名】加賀 祐介
(72)【発明者】
【氏名】菓子 未映子
(72)【発明者】
【氏名】神林 琢也
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 万規子
【テーマコード(参考)】
2G059
4D059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB20
2G059CC09
2G059DD01
2G059EE02
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM12
2G059NN02
2G059NN10
4D059AA03
4D059BB01
4D059BE10
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE27
4D059BE37
4D059BE43
4D059EA01
(57)【要約】
【課題】計測環境の変動にかかわらず脱水汚泥の含水率を高精度で計測することを目的とする。
【解決手段】プロセッサとメモリを有して汚泥の含水率を計測する含水率計測装置であって、前記汚泥に光を照射して光学情報を計測する光学センサと、温度情報を計測する温度センサと、湿度情報を計測する湿度センサと、前記光学情報と前記温度情報及び湿度情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出する回帰演算部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリを有して汚泥の含水率を計測する含水率計測装置であって、
前記汚泥に光を照射して光学情報を計測する光学センサと、
温度情報を計測する温度センサと、
湿度情報を計測する湿度センサと、
前記前記光学情報と温度情報及び湿度情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出する回帰演算部と、
を有することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正部は、
前記回帰演算部が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部と、
前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部と、をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度補正部で補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正部は、
前記回帰演算部が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記光学情報を補正する第2湿度補正部と、
前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部と、をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度補正部と前記第2湿度補正部で補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の含水率計測装置であって、
前記光学センサと前記汚泥の距離又は前記汚泥の色を計測してセンサ情報として出力するセンサをさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記光学情報と温度情報及び湿度情報に加えて前記センサ情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項6】
請求項5に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度情報とセンサ情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正部は、
前記回帰演算部が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項7】
請求項5に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部と、
前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部と、をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度補正部で補正された前記光学情報と前記センサ情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正部は、
前記回帰演算部が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項8】
請求項5に記載の含水率計測装置であって、
前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記光学情報を補正する第2湿度補正部と、
前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部と、をさらに有し、
前記回帰演算部は、
前記温度補正部と前記第2湿度補正部で補正された前記光学情報及びセンサ情報を用いて前記含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【請求項9】
プロセッサとメモリを有する計算機が汚泥の含水率を計測する含水率計測方法であって、
前記計算機が、光学センサから前記汚泥に照射した光学情報を取得し、温度センサから温度情報を取得し、湿度センサから湿度情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記光学情報と温度情報及び湿度情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出する回帰演算ステップと、
を含むことを特徴とする含水率計測方法。
【請求項10】
請求項9に記載の含水率計測方法であって、
前記計算機が、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正ステップをさらに含み、
前記回帰演算ステップでは、
前記温度情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正ステップでは、
前記回帰演算ステップで算出された含水率を補正することを特徴とする含水率計測方法。
【請求項11】
請求項9に記載の含水率計測方法であって、
前記計算機が、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正ステップと、
前記計算機が、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正ステップと、をさらに含み、
前記回帰演算ステップでは、
前記温度補正ステップで補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正ステップでは、
前記回帰演算ステップで算出された含水率を補正することを特徴とする含水率計測方法。
【請求項12】
請求項9に記載の含水率計測方法であって、
前記計算機が、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記光学情報を補正する第2湿度補正ステップと、
前記計算機が、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正ステップと、をさらに含み、
前記回帰演算ステップでは、
前記温度補正ステップと前記第2湿度補正ステップで補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出することを特徴とする含水率計測方法。
【請求項13】
請求項9に記載の含水率計測方法であって、
前記センサ情報取得ステップでは、
前記光学センサと前記汚泥の距離又は前記汚泥の色を計測するセンサからセンサ情報をさらに取得し、
前記回帰演算ステップでは、
前記光学情報と温度情報及び湿度情報に加えて前記センサ情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出することを特徴とする含水率計測方法。
【請求項14】
請求項13に記載の含水率計測方法であって、
前記計算機が、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正ステップをさらに含み、
前記回帰演算ステップでは、
前記温度情報とセンサ情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正ステップでは、
前記回帰演算ステップが算出された含水率を補正することを特徴とする含水率計測方法。
【請求項15】
請求項13に記載の含水率計測方法であって、
前記計算機が、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正ステップと、
前記計算機が、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正ステップと、をさらに含み、
前記回帰演算ステップでは、
前記温度補正ステップで補正された前記光学情報と前記センサ情報を用いて前記含水率を算出し、
前記第1湿度補正ステップでは、
前記回帰演算ステップで算出された含水率を補正することを特徴とする含水率計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水又は排水処理施設から排出される汚泥の含水率を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設などで排出される汚泥は、焼却等の後処理のために含水率を一定に保持するため汚泥脱水機で水分を低減する脱水処理を行っている。汚泥脱水機から排出される脱水汚泥の含水率を計測する技術としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1には、ベルトプレス型脱水機で脱水された汚泥である脱水ケーキ(脱水汚泥)の出口に赤外線水分計を配置して、脱水汚泥の含水率を赤外線水分計で計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-281570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、赤外線水分計の計測結果をそのまま利用しているため、湿度や温度の変化に応じて計測精度が低下する、という問題があった。例えば、温度の変化と湿度の変化に応じて脱水汚泥の吸光度(又は反射率)は変化するため、赤外線水分計の計測結果をそのまま利用する場合は温度や湿度等の計測環境の変動によって計測精度が低下する場合があった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、計測環境の変動にかかわらず脱水汚泥の含水率を高精度で計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プロセッサとメモリを有して汚泥の含水率を計測する含水率計測装置であって、前記汚泥に光を照射して光学情報を計測する光学センサと、温度情報を計測する温度センサと、湿度情報を計測する湿度センサと、前記前記光学情報と温度情報及び湿度情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出する回帰演算部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明は、温度や湿度を補正する回帰モデルや補正演算部を用いて脱水汚泥の含水率を算出することで計測環境の変動にかかわらず含水率を高精度で計測することが可能となる。
【0008】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1を示し、含水率計測システムの一例を示す構成図である。
図2】本発明の実施例1を示し、赤外線計測部の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施例1を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例1を示し、演算処理部の構成の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例1を示し、入出力装置に表示される画面の一例を示す図である。
図6】本発明の実施例2を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施例2を示し、湿度補正演算部の相対湿度と含水量補正値の関係の一例を示すグラフである。
図8】本発明の実施例3を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図9】本発明の実施例3を示し、温度による補正前後の周波数と吸収率の関係を示すグラフである。
図10】本発明の実施例4を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図11】本発明の実施例4を示し、湿度による補正前後の周波数と吸収率の関係を示すグラフである。
図12】本発明の実施例5を示し、含水率計測システムの一例を示す構成図である。
図13】本発明の実施例5を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図14】本発明の実施例5を示し、入出力装置に表示される画面の一例を示す図である。
図15】本発明の実施例6を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図16】本発明の実施例7を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
図17】本発明の実施例8を示し、演算処理部の機能の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1を示し、含水率計測システムの一例を示す構成図である。本実施例の含水率計測システムは、下水又は排水処理施設から排出される汚泥の水分を低減する汚泥脱水機6に装着されて、脱水後の汚泥(以下、脱水汚泥)の含水率をリアルタイムで測定する。なお、含水率は、脱水汚泥の中に含まれる水分の重量比を百分率で示す。
【0012】
汚泥脱水機6は汚泥を受け入れて水分を排出する脱水部61と、水分が低減された脱水汚泥を出力する汚泥排出部62を含む。本実施例の含水率計測システムは、汚泥排出部62に温度計3と湿度計4及び脱水汚泥の表面に光を照射して含水率を計測する赤外線計測部2を配置する。
【0013】
赤外線計測部2が出力する赤外線計測信号は、赤外線信号処理装置5へ入力されて赤外線反射率情報に変換されて演算処理部1へ入力される。赤外線信号処理装置5は、例えば、分光器などで構成される。温度計3の温度計測信号と、湿度計4の湿度計測信号は演算処理部1へ入力される。
【0014】
演算処理部1は、入力された赤外線反射率情報と温度計測信号及び湿度計測信号から計測環境の影響を抑制した含水率情報を算出して含水率表示部7に出力する。含水率表示部7は、汚泥排出部62の脱水汚泥の含水率をリアルタイムで表示する。赤外線計測部2は汚泥排出部62から排出される脱水汚泥に対向して配置され、温度計3及び湿度計4は赤外線計測部2の近傍に配置される。
【0015】
なお、汚泥脱水機としては、フィルタープレス、遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、多重円板脱水機、電気浸透式脱水機等を採用することができる。
【0016】
図2は、赤外線計測部2の一例を示す図である。赤外線計測部2は、赤外線を脱水汚泥の表面に照射する照射光プローブ21と、脱水汚泥の表面で反射された赤外線を受光する受光プローブ22を含む。受光プローブ22は、照射光プローブ21の光軸に対して所定の角度θだけ傾斜して配置される。
【0017】
照射光プローブ21の端面は、基準位置(例えば、脱水汚泥の表面)から所定の距離L1に配置され、受光プローブ22の端面は、上記基準位置から所定の距離L2に配置される。
【0018】
図3は、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。演算処理部1は、赤外線信号処理装置5からの赤外線反射率情報を赤外線情報として入力し、赤外線情報に所定の前処理を実施する前処理部32と、前処理部32が出力した前処理済の赤外線情報と、温度計3の温度計測信号である温度情報と、湿度計4の湿度計測信号である湿度情報を入力し、予め設定された回帰式を回帰式格納部41から取得して、前処理済の赤外線情報と温度情報と湿度情報のうちの少なくとも1以上の入力から脱水汚泥の含水率を算出して含水率情報として出力する回帰演算部33を含む。
【0019】
前処理部32は、入力された赤外線情報のノイズを除去するために平滑化を行い、さらに、脱水汚泥の赤外線吸収率のピークを検出するためにベースとなるスペクトルの強度を補正するオフセット補正など、予め設定された処理を実施して前処理済の赤外線情報を出力する。
【0020】
回帰式格納部41は、赤外線情報や温度情報や湿度情報を説明変数とし、含水率を目的変数とする回帰式(又は回帰モデル)を格納する。回帰式は予め設定されたものであり、例えば、赤外線情報と温度情報及び湿度情報を説明変数とした回帰式42-1と、赤外線情報及び温度情報を説明変数とした回帰式42-2と、赤外線情報及び湿度情報を説明変数とした回帰式42-3が格納される。なお、以下の説明では回帰式42-1~42-1を特定しない場合には、「-」以降を省略した符号「42」を用いる。
【0021】
説明変数が異なるこれらの回帰式42は後述するように含水率計測システムの利用者(又は管理者)によって何れか一つが選択される。回帰演算部33は選択された回帰式42-1~42-3を回帰式格納部41から読み込んで説明変数から含水率を算出し、含水率情報として含水率表示部7に出力する。
【0022】
図4は、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。演算処理部1は、プロセッサ11と、メモリ12と、記憶装置13と、入出力装置14と、インターフェース15を含む計算機である。
【0023】
インターフェース15には、温度計3と、湿度計4と、赤外線信号処理装置5と、含水率表示部7が接続される。入出力装置14は図示しないキーボードやマウスやディスプレイやタッチパネルで構成される。記憶装置13は、不揮発性の記憶媒体で構成されて、回帰式格納部41等のデータを保持する。
【0024】
メモリ12には、制御部31と、前処理部32と、回帰演算部33がプログラムとしてロードされてプロセッサ11によって実行される。制御部31は、入出力装置14から情報の入出力を行って演算処理を制御する。例えば、制御部31が入出力装置14から回帰式42の選択結果を受け付けると回帰演算部33に使用する回帰式42を指令する。
【0025】
前処理部32は、上述したように入力された赤外線反射率情報に対して平滑化やオフセット補正を実施して前処理済の赤外線情報を出力する。回帰演算部33は指定された回帰式42の説明変数を用いて含水率を算出する。
【0026】
プロセッサ11は、各機能部のプログラムに従って処理することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、プロセッサ11は、回帰演算プログラムに従って処理することで回帰演算部33として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、プロセッサ11は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。計算機及び計算機システムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0027】
図5は、入出力装置14に表示される画面の一例を示す図である。入出力装置14を構成するディスプレイには、測定開始ボタン51と、測定停止ボタン52と、補正パラメータ53と、含水率54と、測定結果55が表示される。
【0028】
測定開始ボタン51は、当該ボタンを操作(例えば、クリック)することで含水率の算出処理を開始する。また、測定停止ボタン52を操作することで含水率の算出処理を停止する。
【0029】
補正パラメータ53は、温度チェックボックス531と、湿度チェックボックス532を含み、チェックされたパラメータが回帰演算部33の説明変数として指定される。本実施例では、温度又は湿度がパラメータとして指定可能な例を示す。
【0030】
含水率54は、回帰演算部33で算出された含水率を時系列で表示する。測定結果55は、測定日時と含水率の値を表示する。なお、入出力装置14のディスプレイを含水率表示部7としてもよい。
【0031】
以上の構成により、演算処理部1は、赤外線計測部2で計測された赤外線反射率情報(赤外線情報)を前処理部32で所定の前処理を行った後、赤外線情報と温度情報又は湿度情報を説明変数とする回帰式42によって脱水汚泥の含水率を算出する。
【0032】
湿度が増大すると脱水汚泥の表面へ吸着する水蒸気が増大することで赤外線反射率情報に影響を与え、温度の変動は赤外線計測部2が計測する赤外線のスペクトルの強度が変化する。このため、温度情報と湿度情報の回帰式42を予め生成しておくことで、回帰演算部33は温度と湿度の変動を抑制して含水率の算出を実現できる。これにより、季節変動や地域の違いによる含水率の誤差を抑制して高精度の含水率計測システムを提供することができる。
【0033】
なお、補正パラメータ53は、温度チェックボックス531と湿度チェックボックス532の双方をチェックすることで回帰演算部33が回帰式42-1を選択して温度と湿度の影響を抑制した含水率を算出することができる。
【0034】
また、補正パラメータ53では、温度チェックボックス531と湿度チェックボックス532の少なくとも一方をチェックすることで、温度又は湿度の影響を低減した含水率を算出することができる。
【0035】
すなわち、温度チェックボックス531と湿度チェックボックス532の双方をチェックして温度と湿度の影響を抑制した含水率を測定した後、温度チェックボックス531と湿度チェックボックス532の何れか一方のチェックを外して含水率を測定することにより、温度と湿度の影響を抑制した含水率と比較することで、温度と湿度の何れが脱水汚泥の現在の含水率に影響を与えているのかを把握することができる。
【0036】
なお、上記実施例1では回帰式格納部41に回帰式42を格納する例を示したが、上記に限定されるものではなく、回帰式格納部41が予め設定されたモデルを格納して回帰演算部33がこれらのモデルで含水率の演算を行うようにしてもよい。なお、以下の実施例についても同様である。
【0037】
また、上記実施例1では赤外線計測部2が赤外線を照射して汚泥の含水率を測定する例を示したが、赤外線以外の波長の光で含水率を測定してもよく、汚泥に照射した光学情報に基づいて汚泥の含水率を測定すればよい。
【実施例0038】
図6は、本発明の実施例2を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例1では、湿度情報を回帰式42-1、42-3の説明変数とした例を示したが、本実施例では回帰演算部33で算出された含水率を湿度情報で補正する湿度補正演算部A35を追加した例を示す。なお、湿度補正演算部A35は、プログラムとしてメモリ12に格納される。
【0039】
回帰演算部33は、赤外線情報と温度情報が入力され、回帰式格納部41の回帰式42-2で赤外線情報と温度情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度の影響を抑制した含水率を出力する。
【0040】
湿度補正演算部A35は湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部A43に予め設定された湿度補正式Aを読み込んで湿度補正値(湿度補正情報)を算出する。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33から入力された温度の影響を抑制した含水率を湿度補正値で補正し、補正後の値を含水率表示部7に出力する。
【0041】
これにより、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度の影響を抑制した含水率を湿度情報に基づいて補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【0042】
図7は、湿度補正演算部A35の相対湿度と含水量補正値の関係の一例を示す湿度補正式Aのグラフである。湿度補正式Aは、相対湿度に応じた含水率の補正値が予め設定されている。
【0043】
湿度補正演算部A35は、湿度情報に応じた含水率補正値を湿度補正式Aから算出し、入力された回帰演算部33の含水率から含水率補正値を減算(又は加算)することで補正後の含水率情報を算出する。
【0044】
以上のように、本実施例では、演算処理部1が回帰式42-2によって赤外線情報と温度情報を説明変数として含水率を算出し、その後、湿度情報に応じた含水率補正値で回帰演算部33が出力した含水率を補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【実施例0045】
図8は、本発明の実施例3を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例2では、回帰演算部33が温度情報と赤外線情報から算出した含水率を、湿度補正演算部A35で補正する例を示したが、本実施例では前記実施例2の構成に温度補正演算部34を回帰演算部33の前段に加えた例を示す。その他の構成は前記実施例2と同様である。なお、温度補正演算部34は、プログラムとしてメモリ12に格納される。
【0046】
温度補正演算部34は、温度計3からの温度情報を入力して温度補正式格納部43に予め設定された温度補正式で温度補正情報(補正係数行列)を算出する。そして、温度補正演算部34は、前処理部32から入力された前処理済の赤外線情報を温度補正情報で補正した赤外線情報を出力する。温度補正演算部34から出力される補正後の赤外線情報は、温度の影響を抑制した赤外線スペクトルとなる。
【0047】
回帰演算部33は、温度補正情報で補正後の赤外線情報が入力され、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42-0で補正後の赤外線情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度の影響を抑制した赤外線情報から含水率を出力する。
【0048】
湿度補正演算部A35は湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部A43に予め設定された湿度補正式Aで湿度情報値を算出する。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33から入力された温度の影響を抑制した含水率を上記湿度情報値で補正して含水率を出力し、補正後の値を含水率情報として含水率表示部7に出力する。
【0049】
これにより、回帰演算部33は、温度補正演算部34で温度に応じた温度補正情報で補正された赤外線情報を入力として含水率を算出し、前記実施例2と同様に、温度の影響を抑制した含水率を算出することができる。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度の影響を抑制した含水率を湿度情報で補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【0050】
図9は、温度補正演算部34で行われる温度に応じた赤外線情報(スペクトル)の補正の一例を示すグラフである。図示のグラフは横軸を周波数、縦軸を吸収率(又は放射率)とし、10度の例を実線で示し、40度の例を破線で示す。
【0051】
図中左側の補正前の赤外線情報は、40度の例に比して10度の方が吸収率は高く、赤外線計測部2が計測する赤外線情報(スペクトル)は温度の影響を受けて変動する。温度補正演算部34は温度補正式格納部43から温度補正式を取得して温度情報に応じた係数行列を算出し、赤外線情報の吸収率を係数行列で補正する。図中右側のグラフのように、補正後の赤外線情報は温度の影響が排除された赤外線スペクトルとなる。
【0052】
以上のように、本実施例では、演算処理部1では回帰演算部33の前段に温度補正演算部34を設けて赤外線情報の温度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出する。その後、湿度補正演算部A35が湿度に応じて含水率を補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【実施例0053】
図10は、本発明の実施例4を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例2、3では、湿度補正演算部A35が湿度に応じて含水率を補正する例を示したが、本実施例では、湿度に応じて赤外線情報を補正する例を示す。
【0054】
本実施例では、前記実施例3の湿度補正演算部A35に代わって、回帰演算部33の前段に湿度情報に応じて赤外線情報を補正する湿度補正演算部B36を設けた例を示す。なお、湿度補正演算部B36は、プログラムとしてメモリ12に格納される。
【0055】
前処理部32の後段には前記実施例3と同様に温度補正演算部34が配置され、温度補正演算部34の後段には回帰演算部33との間に湿度補正演算部B36が配置される。湿度補正演算部B36は、温度情報で補正された赤外線情報と湿度情報が入力されて、湿度に応じて赤外線情報を補正して回帰演算部33へ出力する。
【0056】
湿度補正演算部B36は、湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部44に予め設定された湿度補正式で湿度補正情報(補正係数行列)を算出する。そして、湿度補正演算部B36は、温度補正演算部34で温度によって補正された赤外線情報を湿度情報で補正して出力する。湿度補正演算部B36から出力される補正後の赤外線情報は、温度と湿度の双方の影響を抑制した赤外線スペクトルとなる。
【0057】
回帰演算部33は、温度と湿度で補正された赤外線情報が入力され、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42-0で補正後の赤外線情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度と湿度の双方の影響を抑制した赤外線情報から含水率を出力する。
【0058】
図11は、湿度補正演算部B36で行われる温度に応じた赤外線情報(スペクトル)の補正の一例を示すグラフである。図示のグラフは横軸を周波数、縦軸を吸収率(又は放射率)とし、相対湿度が40%の例を実線で示し、95%の例を破線で示す。
【0059】
図中左側の補正前の赤外線情報は、40%の場合に比して95%の方が吸収率は高く、赤外線計測部2が計測する赤外線情報(スペクトル)は湿度の影響を受けて変動する。湿度補正演算部B36は湿度補正式格納部B44から予め設定された湿度補正式Bを取得して湿度情報に応じた係数行列を算出し、赤外線情報の吸収率を係数行列で補正する。図中右側のグラフのように、補正後の赤外線情報は湿度の影響が排除された赤外線スペクトルとなる。
【0060】
以上のように、本実施例の演算処理部1は、回帰演算部33の前段に温度補正演算部34と湿度補正演算部B36を設けて赤外線情報の温度と湿度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0061】
なお、上記では温度補正演算部34の後段に湿度補正演算部B36を設けたが、図示はしないが湿度補正演算部B36の後段に温度補正演算部34を設けてもよい。
【実施例0062】
図12は、本発明の実施例5を示し、含水率計測システムの一例を示す構成図である。実施例5の含水率計測システムは、前記実施例1の構成にセンサ8を追加したものであり、その他の構成は前記実施例1と同様である。
【0063】
センサ8は、赤外線計測部2と同様に汚泥排出部62で脱水汚泥と対向して配置され、赤外線計測部2と脱水汚泥の表面の距離を計測する距離センサや、脱水汚泥の色彩を検出する色センサの少なくとも一方で構成される。
【0064】
赤外線計測部2は、計測対象である脱水汚泥の表面までの距離に応じて反射光の強度が変化するため、距離の変動はノイズ=誤差要因となる。このため、センサ8で赤外線計測部2と脱水汚泥の距離を計測して、距離の変化に応じて赤外線情報の強度を補正することで脱水汚泥の含水率の算出精度を向上させることができる。
【0065】
また、脱水汚泥の色合いは常時一定ではない場合があり、脱水汚泥の表面の色に応じて反射強度が変化する。このため演算処理部1は、センサ8に色センサを採用することで、脱水汚泥の色の変化に応じて赤外線情報の強度を補正することで、脱水汚泥の含水率の算出精度を向上させることができる。
【0066】
図13は、本発明の実施例5を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。本実施例では、前記実施例1の回帰式格納部41にセンサ8の情報(センサ情報)を説明変数に加えた回帰式42を予め設定し、回帰演算部33がセンサ8からのセンサ情報と温度情報と湿度情報及び赤外線情報を説明変数として目的変数の含水率を算出する。
【0067】
回帰式格納部41には、赤外線情報と温度情報と湿度情報及びセンサ情報を説明変数とした回帰式42-4と、赤外線情報と温度情報及びセンサ情報を説明変数とした回帰式42-5と、赤外線情報と湿度情報及びセンサ情報を説明変数とした回帰式42-6と、赤外線情報及びセンサ情報を説明変数とした回帰式42-7を格納する。
【0068】
説明変数が異なるこれらの回帰式42は後述するように含水率計測システムの利用者によって何れか一つが選択される。回帰演算部33は選択された回帰式42-4~42-7を回帰式格納部41から読み込んで説明変数から含水率を算出し、含水率情報として含水率表示部7に出力する。
【0069】
本実施例の演算処理部1は、前記実施例1のような温度や湿度の影響を抑制するのに加え、センサ8が計測した距離や色の影響を抑制した含水率を算出することができる。
【0070】
図14は、入出力装置14に表示される画面の一例を示す図である。入出力装置14を構成するディスプレイには、前記実施例1の構成要素に対して、補正パラメータ53の距離チェックボックス533と色素チェックボックス534を追加したものであり、その他の構成は前記実施例1と同様である。なお、距離チェックボックス533と色素チェックボックス534はセンサ8の機能に応じて何れか一方を表示すればよい。
【0071】
補正パラメータ53は、温度チェックボックス531と、湿度チェックボックス532、距離チェックボックス533と色素チェックボックス534を含み、チェックされたパラメータが回帰演算部33の説明変数として指定される。本実施例では、温度、湿度又はセンサ情報の距離と色素がパラメータとして指定可能な例を示す。
【0072】
以上の構成により、演算処理部1は、赤外線計測部2で計測された赤外線反射率情報(赤外線情報)は前処理部32で所定の前処理を行った後、赤外線情報と温度情報と湿度情報又はセンサ情報を説明変数とする回帰式42によって脱水汚泥の含水率を算出する。
【0073】
回帰演算部33は、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42によって湿度や湿度の影響を抑制するのに加えて、センサ8が計測する距離や色の影響を抑制して含水率の精度を向上させることができる。
【0074】
なお、センサ8が距離を計測する場合、汚泥脱水機6の経年劣化等による赤外線計測部2の取り付け位置のずれや装置のゆがみ等にかかわらず含水率の計測精度を確保することができる。また、赤外線計測部2の組み付け精度が低い場合でも、距離の変動に応じて赤外線情報の強度を補正するので高い計測精度を確保することができる。
【実施例0075】
図15は、本発明の実施例6を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例5では、湿度情報を回帰式42-4、42-6の説明変数とした例を示したが、本実施例では回帰演算部33で算出された含水率を湿度情報で補正する湿度補正演算部A35を追加した例を示す。演算処理部1は、前記実施例5の構成に、湿度補正演算部A35を加えたものであり、その他の構成は前記実施例5と同様である。
【0076】
回帰演算部33は、赤外線情報と温度情報とセンサ情報が入力され、回帰式格納部41の回帰式42-5で赤外線情報と温度情報及びセンサ情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度とセンサ情報の影響を抑制した含水率を出力する。
【0077】
湿度補正演算部A35は前記実施例2と同様であり、湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部A43に予め設定された湿度補正式Aで湿度補正値(湿度補正情報)を算出する。
【0078】
そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33から入力された温度とセンサ情報の影響を抑制した含水率を湿度補正値で補正し、補正後の値を含水率表示部7に出力する。
【0079】
これにより、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度とセンサ情報の影響を抑制した含水率を湿度情報に基づいて補正することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【実施例0080】
図16は、本発明の実施例7を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例6では、回帰演算部33が温度情報とセンサ情報及び赤外線情報から算出した含水率を、湿度補正演算部A35で補正する例を示したが、本実施例では前記実施例6の構成に温度補正演算部34を回帰演算部33の前段に加えた例を示す。その他の構成は前記実施例6と同様である。
【0081】
温度補正演算部34は、前記実施例3と同様であり、温度計3からの温度情報を入力して温度補正式格納部43に予め設定された温度補正式で温度補正情報(補正係数行列)を算出する。そして、温度補正演算部34は、前処理部32から入力された前処理済の赤外線情報を温度補正情報で補正した赤外線情報を出力する。温度補正演算部34から出力される補正後の赤外線情報は、温度の影響を抑制した赤外線スペクトルとなる。
【0082】
回帰演算部33は、センサ情報と温度補正情報で補正後の赤外線情報が入力され、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42-7で補正後の赤外線情報とセンサ情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度とセンサ情報の影響を抑制した赤外線情報から含水率を出力する。
【0083】
湿度補正演算部A35は湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部A43に予め設定された湿度補正式Aで湿度情報値を算出する。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33から入力された温度の影響を抑制した含水率を湿度情報値で補正して含水率を出力し、補正後の値を含水率表示部7に出力する。
【0084】
これにより、回帰演算部33は、温度補正演算部34で温度に応じた温度補正情報で補正された赤外線情報とセンサ情報を入力として含水率を算出し、前記実施例6と同様に、温度の影響を抑制した含水率を算出することができる。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度の影響を抑制した含水率を湿度情報で補正することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【実施例0085】
図17は、本発明の実施例8を示し、演算処理部1の機能の一例を示すブロック図である。前記実施例6、7では、湿度補正演算部A35が湿度に応じて含水率を補正する例を示したが、本実施例では、湿度に応じて赤外線情報を補正する例を示す。
【0086】
本実施例では、前記実施例7の湿度補正演算部A35に代わって、回帰演算部33の前段に湿度情報に応じて赤外線情報を補正する湿度補正演算部B36を設けた例を示す。湿度補正演算部B36は前記実施例4と同様の構成である。
【0087】
前処理部32の後段には前記実施例7と同様に温度補正演算部34が配置され、温度補正演算部34の後段には回帰演算部33との間に湿度補正演算部B36が配置される。湿度補正演算部B36は、温度情報で補正された赤外線情報と湿度情報が入力されて、湿度に応じて赤外線情報を補正して回帰演算部33へ出力する。
【0088】
湿度補正演算部B36は、湿度計4からの湿度情報を入力して湿度補正式格納部44に予め設定された湿度補正式で湿度補正情報(補正係数行列)を算出する。そして、湿度補正演算部B36は、温度補正演算部34で補正された赤外線情報を湿度情報で補正して出力する。温度補正演算部34から出力される補正後の赤外線情報は、温度と湿度の双方の影響を抑制した赤外線スペクトルとなる。
【0089】
回帰演算部33は、温度と湿度で補正された赤外線情報とセンサ情報が入力され、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42-7で補正後の赤外線情報とセンサ情報を説明変数として含水率を算出する。回帰演算部33は、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した赤外線情報から含水率を出力する。
【0090】
以上のように、本実施例の演算処理部1は、回帰演算部33の前段に温度補正演算部34と湿度補正演算部B36を設けて赤外線情報の温度と湿度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0091】
なお、上記では温度補正演算部34の後段に湿度補正演算部B36を設けたが、図示はしないが湿度補正演算部B36の後段に温度補正演算部34を設けてもよい。
【0092】
<結び>
以上のように、上記実施例1~8の含水率計測システムは以下のような構成とすることができる。
【0093】
(1)プロセッサ(11)とメモリ(12)を有して汚泥の含水率を計測する含水率計測装置であって、前記汚泥に光を照射して光学情報を計測する光学センサ(赤外線計測部2)と、温度情報を計測する温度センサ(温度計3)と、湿度情報を計測する湿度センサ(湿度計4)と、前記前記光学情報と温度情報及び湿度情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデル(回帰式42)から前記汚泥の含水率を算出する回帰演算部(32)と、を有することを特徴とする含水率計測装置。
【0094】
上記構成により、含水率計測システムの演算処理部1は、赤外線情報と温度情報又は湿度情報を説明変数とする回帰式42によって温度や湿度の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【0095】
また、演算処理部1は、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率を測定した後、温度チェックボックス531と湿度チェックボックス532の何れか一方のチェックを外して含水率を測定することにより、温度と湿度の影響を抑制した含水率と比較することで、温度と湿度の何れが脱水汚泥の現在の含水率に影響を与えているのかを把握することができる。
【0096】
(2)上記(1)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部(35)をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、前記第1湿度補正部(35)は、前記回帰演算部(32)が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【0097】
上記構成により、演算処理部1が回帰式42-2によって赤外線情報と温度情報を説明変数として含水率を算出し、その後、湿度情報に応じた含水率補正値で回帰演算部33が出力した含水率を補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0098】
(3)上記(1)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部(35)と、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部(34)と、をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度補正部(34)で補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、前記第1湿度補正部(35)は、前記回帰演算部(32)が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【0099】
上記構成により、演算処理部1では回帰演算部33の前段に温度補正演算部34を設けて赤外線情報の温度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出する。その後、湿度補正演算部A35が湿度に応じて含水率を補正することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0100】
(4)上記(1)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記光学情報を補正する第2湿度補正部(36)と、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部(34)と、をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度補正部(34)と前記第2湿度補正部(36)で補正された前記光学情報を用いて前記含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【0101】
上記構成により、演算処理部1は、回帰演算部33の前段に温度補正演算部34と湿度補正演算部B36を設けて赤外線情報の温度と湿度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出することで、温度と湿度の双方の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0102】
(5)上記(1)に記載の含水率計測装置であって、前記光学センサと前記汚泥の距離又は前記汚泥の色を計測してセンサ情報として出力するセンサ(8)をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記光学情報と温度情報及び湿度情報に加えて前記センサ情報のうちの少なくとも1以上を用いて予め設定された回帰モデルから前記汚泥の含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【0103】
上記構成により、演算処理部1は、赤外線計測部2で計測された赤外線反射率情報(赤外線情報)は前処理部32で所定の前処理を行った後、赤外線情報と温度情報と湿度情報又はセンサ情報を説明変数とする回帰式42によって脱水汚泥の含水率を算出する。
【0104】
回帰演算部33は、回帰式格納部41に予め設定された回帰式42によって湿度や湿度の影響を抑制するのに加えて、センサ8が計測する距離や色の影響を抑制して含水率の精度を向上させることができる。なお、センサ8が距離を計測する場合、汚泥脱水機6の経年劣化等による赤外線計測部2の取り付け位置のずれや装置のゆがみ等にかかわらず含水率の計測精度を確保することができる。また、赤外線計測部2の組み付け精度が低い場合でも、距離の変動に応じて赤外線情報の強度を補正するので高い計測精度を確保することができる。
【0105】
(6)上記(5)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部(35)をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度情報とセンサ情報及び前記光学情報を用いて前記含水率を算出し、前記第1湿度補正部(35)は、前記回帰演算部(32)が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【0106】
上記構成により、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度とセンサ情報の影響を抑制した含水率を湿度情報に基づいて補正することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【0107】
(7)上記(5)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記含水率を補正する第1湿度補正部(35)と、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部(34)と、をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度補正部(34)で補正された前記光学情報と前記センサ情報を用いて前記含水率を算出し、前記第1湿度補正部(35)は、前記回帰演算部(32)が算出した含水率を補正することを特徴とする含水率計測装置。
【0108】
上記構成により、回帰演算部33は、温度補正演算部34で温度に応じた温度補正情報で補正された赤外線情報とセンサ情報を入力として含水率を算出し、前記実施例6と同様に、温度の影響を抑制した含水率を算出することができる。そして、湿度補正演算部A35は、回帰演算部33が出力した温度の影響を抑制した含水率を湿度情報で補正することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した脱水汚泥の含水率を算出することができる。
【0109】
(8)上記(5)に記載の含水率計測装置であって、前記湿度情報を入力して湿度に応じて前記光学情報を補正する第2湿度補正部(36)と、前記温度情報を入力して温度に応じて前記光学情報を補正する温度補正部(34)と、をさらに有し、前記回帰演算部(32)は、前記温度補正部(34)と前記第2湿度補正部(36)で補正された前記光学情報及びセンサ情報を用いて前記含水率を算出することを特徴とする含水率計測装置。
【0110】
上記構成により、演算処理部1は、回帰演算部33の前段に温度補正演算部34と湿度補正演算部B36を設けて赤外線情報の温度と湿度に対する変動を補正してから回帰演算部33で含水率を算出することで、温度と湿度とセンサ情報の影響を抑制した含水率情報を算出することが可能となる。
【0111】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を含むものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換の何れもが、単独で、又は組み合わせても適用可能である。
【0112】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0113】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 演算処理部
2 赤外線計測部
3 温度計
4 湿度計
5 赤外線信号処理装置
6 汚泥脱水機
11 プロセッサ
12 メモリ
14 入出力装置
32 前処理部
33 回帰演算部
34 温度補正演算部
35 湿度補正演算部A
36 湿度補正演算部B
41 回帰式格納部
42 温度補正式格納部
43 湿度補正式格納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17