(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142394
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】災害対策計画立案システム及び災害対策計画立案方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230928BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230928BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049288
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池本 悠
(72)【発明者】
【氏名】中野 道樹
(72)【発明者】
【氏名】弓部 良樹
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】需要家の停電による損失を、需要家種別や対応時間に基づいて評価し、かつ送配電事業者の対策コスト、経済的損失を効果的に評価するコンティンジェンシープランを提供する。
【解決手段】
災害対策計画立案システムであって、演算処理を実行する演算部と、前記演算部がアクセス可能な記憶部とを備え、前記演算部が所定の災害に備える対策の計画を立案する計画立案部を有し、前記計画立案部は、前記災害により停電が予測されるエリアにおける停電時間及び停電量について、それぞれの予測値と、前記エリアにおいて対策を講じた場合における停電時間及び停電量について、それぞれの予測値と、前記エリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む第一の情報と、前記災害に伴う損失に関する第二の情報と、に基づき前記対策の少なくとも便益を評価する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害対策計画立案システムであって、
演算処理を実行する演算部と、前記演算部がアクセス可能な記憶部とを備え、
前記演算部が所定の災害に備える対策の計画を立案する計画立案部を有し、
前記計画立案部は、
前記災害により停電が予測されるエリアにおける停電時間及び停電量について、それぞれの第一の予測値を生成し、
前記エリアにおいて対策を講じた場合における停電時間及び停電量について、それぞれの第二の予測値を生成し、
前記第一の予測値と、前記第二の予測値と、前記エリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む第一の情報と、前記災害に伴う損失に関する第二の情報と、に基づき前記対策の少なくとも便益を評価する、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項2】
請求項1に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記第二の情報は、送配電事業者の売上損失と、前記対策に要するコストと、電力需要家の停電損失と、を含む情報である、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項3】
請求項2に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記送配電事業者の売上損失は、託送収入の減少額又は停電ペナルティ額を含み、
前記コストは、電源稼働に要する費用又は分散電源稼働費用を含む、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項4】
請求項2に記載の災害対策計画立案システムであって、
電力需要家の停電損失は、前記停電量と前記第一の情報に基づき算出される
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項5】
請求項2に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記第一の情報は、電力需要家の種別を含み、
前記事前対策に要する時間は、前記電力需要家の種別に依存するものである、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記第一の情報は、前記電力需要家の種別に依存する単位時間当りの損失額の情報を含む、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項7】
請求項1に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記計画立案部は、設定された条件に基づき複数の対策を評価して、それらの中から便益の評価値が高い対策を生成する、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項8】
請求項1に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記計画立案部は、前記電力需要家の停電損失を、電力需要家の平時の経済規模に基づいて算出する、
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項9】
請求項1に記載の災害対策計画立案システムであって、
前記計画立案部は、送配電事業者の対策に要するコストと、前記電力需要家の停電損失との比率が規定の範囲に収まる対策を生成する
ことを特徴とする災害対策計画立案システム。
【請求項10】
災害対策計画立案システムが実行し、所定の災害に備える対策の計画を立案する災害対策計画立案方法であって、
前記災害対策計画立案システムは、演算処理を実行する演算部と、前記演算部がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記災害対策計画立案方法は、
前記演算装置が、前記災害により停電が予測されるエリアにおける停電時間及び停電量について、それぞれの第一の予測値を生成するステップと、
前記演算装置が、前記エリアにおいて対策を講じた場合における停電時間及び停電量について、それぞれの第二の予測値を生成するステップと、
前記演算装置が、前記第一の予測値と、前記第二の予測値と、前記エリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む第一の情報と、前記災害に伴う損失に関する第二の情報と、に基づき前記対策の少なくとも便益を評価するステップと、を含む、
ことを特徴とする災害対策計画立案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時の停電を抑制するための事前対策を支援する災害対策計画立案システム及び災害対策計画立案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動などに伴い、洪水や暴風雨など自然災害の発生が世界的に増加している。日本は、諸外国と比較して台風、大雨、地震など自然災害の発生頻度が高い国土有していて、災害対策は重要な課題となっている。特に近年、台風による停電被害が拡大しており、電力分野では自然災害リスクの甚大化に対する停電頻度・規模・時間の低減が求められている。台風による被害を抑制する手段としては、気象予報や台風の進路予測を踏まえ、被害を最小限に抑えるための計画(コンティンジェンシープラン)を事前に策定しておくことが考えられる。送配電事業者によるコンティンジェンシープランとしては、停電により発生する被害想定をもとに、送配電事業者が管轄する各エリアに電力供給を行う発電プラントを一時的に変更(発電機持替)する、また、電源車、蓄電池、電気自動車などの分散エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resource)にて電力供給を代替することで停電抑制が可能である。
【0003】
このためには、停電による電力の供給停止が社会に与える影響を定量的に把握する手法の確立が重要である。こうした災害時の停電の社会への影響を考慮した災害対策方法に関する各種の従来技術として、特許文献1及び2などに開示された技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、自然災害データ記憶手段、電力線データ記憶手段及び停電事故原因データ記憶手段に記憶されているデータを参照して、入力手段によって入力された立地条件、電力線の引込方式及び受電方式における停電発生原因毎の停電事故件数を算出する手段と、電力線データ記憶手段に記憶されているデータを参照して、1回の停電の影響範囲を求める手段と、算出した停電発生原因毎の停電事故件数と、求めた影響範囲とから入力された立地条件、電力線の引込方式及び受電方式における停電発生原因毎の需要家当たりの停電数を算出する手段と、停電発生原因毎の需要家当たりの停電数と、停電時間データ記憶手段に記憶されているデータに基づいて、停電時間毎の需要家当たりの停電数を算出する手段と、停電時間毎の需要家当たりの停電数から平均停電時間を算出する手段とを備えた停電評価装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、入力部、表示部、処理部、記憶部を備える配電系統評価装置が開示されている。入力部は、事故区間や停電時間を入力する。処理部の停電区間特定部は、入力部からの事故区間と記憶部の配電系統データとから停電区間を特定する。電力量算出部は、停電区間特定部が特定した停電区間と配電設備データとから停電区間内の需要家を特定し、需要家データの各需要家の電力使用量と入力部が入力した停電時間とから供給支障電力量を算出する。損失料金算出部は、需要家データの単位電力あたりの電気料金と電力量算出部が算出した供給支障電力量とから需要家ごとに電気料金の損失額を算出し、その損失額を合計した値を損失料金とする。表示部は、損失料金算出部が計算した損失料金を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-020434号公報
【特許文献2】特開2007-221975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、特許文献1には、需要家の生産機器の停止による時間当りの固定の損失額などを仮定することで停電による需要家の工場生産などの損失額を見積もる方法が記載されている。
【0008】
しかしながら、実際には停電による時間当りの損失額は固定ではなく、一般家庭、事業者などの需要家の種別やその事業規模によって異なり、同一の需要家であっても停電が発生する時期や、停電の継続時間によってその損失額の値が変化する。例えば、BCP(Business continuity plan)対策として蓄電池を備えている事業者の場合、ある程度の期間は損失を抑制できるが、停電が長期化し蓄電池残量がゼロになった時点からの時間当たりの損失額は上昇する。また停電の予告がない場合、需要家側では停電に備えた応急対策も実施できないため、事前予告がある場合に比べ、時間あたりの損失額が飛躍的に高くなる可能性がある。
【0009】
また特許文献2は、停電による送配電事業者の託送収入減少額に基づいて、停電の影響を定量的に見積もる方法であるが、送配電事業者の対策コストや、日本において導入予定の託送料金制度(レベニューキャップ制度)における停電へのペナルティ、停電回避のインセンティブといった託送収入以外の損失については考慮されていない。
【0010】
よって特許文献1、特許文献2にある先行技術では、送配電事業者のコンティンジェンシープランに係る対策コスト(発電機持替、電源車、DERの利用コスト) や経時で変化する需要家の事前対策可能時間まで含めた停電損失については考慮されていない。そのため、需要家や送配電事業者の損失を正確に見積もることができず、結果として、十分な対策を行えず損失が増大してしまう、又は、逆に過度な対策を施し対策コストが増大してしまう可能性があるという問題がある。
【0011】
本発明では、送配電事業者が管轄するエリアについて、各エリアの需要家の種別と、需要家の事前対策可能時間をもとに、送配電事業者の売上損失(託送収入減少、停電ペナルティなど)、対策コスト(電源持替、分散電源稼働費など)、需要家の停電損失に基づくコンティンジェンシープランのトータルの便益を評価し、評価値に基づき最適化を行う事でトータルの便益を改善するコンティンジェンシープランを立案することができる災害対策計画立案システム及び災害対策計画立案方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題を解決するための手段について代表的な一例は、次のとおりである。すなわち、災害対策計画立案システムであって、演算処理を実行する演算部と、前記演算部がアクセス可能な記憶部とを備え、前記演算部が所定の災害に備える対策の計画を立案する計画立案部を有し、前記計画立案部は、前記災害により停電が予測されるエリアにおける停電時間及び停電量について、それぞれの予測値と、前記エリアにおいて対策を講じた場合における停電時間及び停電量について、それぞれの予測値と、前記エリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む第一の情報と、前記災害に伴う損失に関する第二の情報と、に基づき前記対策の少なくとも便益を評価する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、送配電事業者の費用対効果を向上できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】送配電事業者への台風進路情報の提示の画面イメージ
【
図5】災害対策計画立案部による全体の処理手順を示すフローチャート
【
図6】未対策時費用便益評価の処理手順を示すフローチャート
【
図7】初期コンテプランの費用便益評価の処理手順を示すフローチャート
【
図8】暫定コンテプラン仮定の処理手順を示すフローチャート
【
図9】暫定コンテプランの費用便益評価の処理手順を示すフローチャート
【
図10】需要家損失推定の処理手順を示すフローチャート
【
図11】エリア内再エネ電源導入量のデータテーブル例
【
図20】初期コンテプラン評価結果のデータテーブル例
【
図21】コンテプラン最適化結果のデータテーブル例
【
図22】停電時間・停電量推定結果のデータテーブル例
【
図23】需要家別必要事前対策時間のデータテーブル例
【
図24】ケース別停電コスト想定単価のデータテーブル例
【
図29】需要家損失及び送配電事業者の対策費の比較イメージ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施例に開示するシステムでは、台風の襲来が気象予報によって予測された際に、気象予報データに基づき予測される系統故障や発電機脱落による停電被害予想額の大きさと、発電機持替、電源車による臨時供給、蓄電池などのDERを用いた臨時供給など複数手段による対策コストの観点から経済的に合理的なコンティンジェンシープランを立案する。
【0017】
図1は、本実施例における台風到来予測時に、送配電事業者が確認する台風進路情報の画面イメージの例であってよい。送配電事業者は、自社が管轄するエリアである担当エリア(本明細書において「エリア」は、特に断らない場合は、送配電事業者が管轄するエリアを意味してよい。)の中で台風飛来が予測されるエリア、及び影響を受ける可能性のある発電所を確認し、これらの情報をもとにコンティンジェンシープランを立案することができる。各発電所から各エリアへは
図1において電力供給線を介して電力が供給されてよい。
【0018】
(1)災害対策計画立案システムの構成
図2は、本実施例に係る災害対策計画立案システム10の構成例を示す図である。災害対策計画立案システム10は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される後述する演算部21がアクセス可能な記憶部26を備えてよく。更に、RAMなど揮発性記憶素子で構成されるメモリ22、記憶部26に保持されるプログラムをメモリ22に読み出すなどして実行しシステム自体の統括制御を行なうと共に各種判定、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理及び制御処理を行なう演算部21を備えてよく。更に、ユーザの入力を受け付ける、例えばキーボードやマウス等の入力部23、処理結果を出力するディスプレイ等の出力部24、及び通信ネットワーク11と接続し、外部の利用端末12などといった他の装置との通信処理を担うネットワークインターフェイス等の通信部25を備えていてよい。
【0019】
記憶部26の各機能部は、演算部21がプログラムを実行することで実装され、コンテプラン仮定部31、停電時間・停電量推定部32、便益改善部33、費用便益評価部34、からなる計画立案部であるところの災害対策計画立案部30を含む。計画立案部は、所定の災害に備える対策の計画を立案するものである。災害対策計画立案部30は、後述する災害対策計画立案機能を実現する機能部であってよい。なお、コンテプラン仮定部との名称については、コンテプランとあるものはコンティンジェンシープランを簡略化したものである。以下においても、コンテプランとあるものはコンティンジェンシープランを簡略化したものである。したがって、コンテプランとあるものをコンティンジェンシープランと置き換えても意味する内容は同じである。
【0020】
費用便益評価部34は、需要家損失算出部35、トータル損失算出部36、トータルコスト算出部37、トータル便益評価部38を備えていてよい。
【0021】
また記憶部26は、電源リスト100、エリア需要予測値101、電源別稼働費単価102、需要家別必要事前対策時間104、ケース別停電コスト想定単価105などの情報をデータベースとして保持することができる。
【0022】
この災害対策計画立案システム10は、特定の場所に設置されたローカルサーバでもよいし、クラウドサーバとしてSaaS(Software as a Service)形態などで提供されてもよい。
【0023】
通信ネットワーク11には、送配電事業者の利用端末12などが接続している。利用端末12は、送配電事業者から対象エリアの発電機情報、電源車情報などの入力を受け付けることができる。
【0024】
(2)災害対策計画立案機能
次に、災害対策計画立案システム10の災害対策計画立案機能について説明する。この災害対策計画立案機能は、災害発生時に災害により停電が予測されるエリアを含む各エリアの停電時間・量について、それぞれの予測値と、仮定したコンティンジェンシープランを講じた場合の停電時間・量の予測値、すなわち前記エリアにおいて対策を講じた場合における停電時間及び停電量について、それぞれについての予測値と、各エリアの需要家の種別と、需要家の事前対策可能時間とを含んでいてよい情報、すなわち、前記エリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む第一の情報と、送配電事業者の売上損失、対策コスト、需要家の停電損失に関する情報などを含んでもよい情報、すなわち、前記災害に伴う損失に関する第二の情報と、に基づき前記対策の少なくとも便益を評価する評価部を備えてよい。
【0025】
このように構成することにより、災害に伴う損失に関する情報に加え、需要家に関する情報も踏まえて災害対策計画を立案できる。
【0026】
更に、前述の評価部では、仮定したコンティンジェンシープランのトータルの便益を評価するものであってよく、その評価結果に基づき便益が改善するコンティンジェンシープランを特定していく機能を有してよい。なお、便益とは、不利益まで含めた上での利益を意味している。
【0027】
このように構成することにより、災害に伴う損失に関する情報に加え、需要家に関する情報も考慮して、より良い災害対策計画を立案できる。
【0028】
図3は、災害対策計画立案機能に係る災害対策計画立案システム10のソフトウェア構成図である。このような災害対策計画立案機能を実現するため、災害対策計画立案システム10の記憶部26は、プログラムとして、設備故障予測部39、再エネ発電量予測部43、コンテプラン仮定部31、停電時間・停電量推定部32、費用便益評価部34及び便益改善部33を備える災害対策計画立案部30を保持してよい。
図3において、構成要素の間をつなぐ線について、実線は処理の流れを示し、破線はデータの流れを目安として示していてよい。
図3を含めて図面において、構成要素の間をつなぐ線は、必要なすべての線が表されているものではなく、省略されているものもある。構成要素の間の処理の流れ及びデータの流れは図に線が表示されていなくとも適切に行われるものである。
【0029】
以下にこれら各機能の詳細を説明する。
【0030】
コンテプラン仮定部31は、コンティンジェンシープランを仮定する処理部であり、電源割当仮定部40、電源車派遣エリア仮定部41、蓄電池稼働エリア仮定部42を有してよい。
【0031】
電源割当仮定部40は、電源リスト100を用いて、各発電所が電力供給を行うエリアの割当を仮定する処理部であってよい。
【0032】
電源車派遣エリア仮定部41は、電源車情報106を用いて、各電源車が電力供給を行うエリアの割当を仮定する処理部であってよい。
【0033】
蓄電池稼働エリア仮定部42は、エリア別蓄電池情報107を用いて、各蓄電池が電力供給を行うエリアの割当を仮定する処理部であってよい。
【0034】
再エネ発電量予測部43は、エリア内再エネ電源導入量108と気象予測値109を用いて、各エリアの再エネ発電量を予測する処理を行うことができる。
【0035】
設備故障予測部39は、電源リスト100及び気象予測値109を用いて、各エリアの発電所や電力供給線などの故障を予測する処理を行うことができる。
【0036】
停電時間・停電量推定部32は、仮定したコンティンジェンシープランと、エリア需要予測値101、再エネ発電量予測部43が予測した各エリアの再エネ発電量の値である再エネ発電量予測値、設備故障予測部39が予測した結果である設備故障予測結果を用いて、各エリアの停電時間・停電量を推定する処理を行う処理部であり、その処理結果は
図4に示す停電時間・停電量推定結果111に格納できる。
【0037】
費用便益評価部34は、託送収入減少額算出部44、停電ペナルティ算出部45、需要家損失算出部35、トータル損失算出部36、電源稼働費算出部46、電源持替・系統再構成コスト算出部47、電源車稼働費算出部48、トータルコスト算出部37、トータル便益評価部38を有してよい。
【0038】
託送収入減少額算出部44は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、託送収入減少額を算出する処理を行うことができる。
【0039】
停電ペナルティ算出部45は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、停電のペナルティを踏まえた損失を算出する処理を行うことができる。
【0040】
需要家損失算出部35は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、需要家の損害を算出する処理を行う処理部であってよい。
【0041】
電源稼働費算出部46は、仮定したコンティンジェンシープランの電源割当と電源リスト100、エリア需要予測値101及び電源別稼働費単価102とを用いて、各電源の稼働費を算出する処理部であってよい。なお、
図3において、電源稼働費算出部46には、電源リスト100及びエリア需要予測値101からのデータ伝送を示す線は省略されている。
【0042】
電源持替・系統再構成コスト算出部47は、仮定したコンティンジェンシープランの電源割当、電源持替費単価110を用いて、電源持替にかかる費用を算出する処理部であってよい。
【0043】
電源車稼働費算出部48は、仮定したコンティンジェンシープランの電源車派遣割当及び電源車稼働単価114を用いて、電源車派遣・稼働にかかる費用を算出する処理部であってよい。
【0044】
トータル損失算出部36は、前述の託送収入減少額算出部44の処理の結果である託送収入減少額算出結果、停電ペナルティ算出結果、需要家損失算出結果、に基づきトータル損失を算出する処理部であってよい。
【0045】
トータルコスト算出部37は、電源稼働費算出部46によって電源稼働費が算出された結果である電源稼働費算出結果、電源持替・系統再構成コスト算出部47によって電源持替費が算出された結果である電源持替費算出結果及び電源車稼働費算出部48によって電源車稼働費が算出された結果である電源車稼働費算出結果、に基づきトータルコストを算出する処理部であってよい。
【0046】
トータル便益評価部38は、トータル損失算出部36で算出したトータル損失及びトータルコスト算出部37で算出したトータルコストに基づき、トータル便益を評価する処理部である。初期のコンティンジェンシープランを評価する場合、評価結果は初期コンテプラン評価結果116に格納されてよい。すなわち、前述した災害に伴う損失に関する第二の情報は、送配電事業者の売上損失と、前記対策に要するコストと、電力需要家の停電損失と、を含む情報であってよい。
【0047】
このように構成することにより、送配電事業者の売上損失、対策に要するコストに加え、電力需要家の停電損失も考慮した災害対策計画を立案することができる。
【0048】
また、送配電事業者の売上損失は、託送収入の減少額及び/又は、停電ペナルティ額を含んでよい。前述の対策に要するコストは、電源稼働に要する費用及び/又は分散電源稼働費用を含んでよい。
【0049】
このように構成することにより、停電に係る損失をより良く考慮した災害対策計画を立案することができる。
【0050】
便益改善部33は、トータル便益評価部38で評価したトータル便益の評価結果を元に、トータル便益が改善する新たなコンティンジェンシープランを探索する処理を行う処理部であり、処理結果はコンテプラン最適化結果112に格納されてよい。
【0051】
図4は、需要家損失算出部35のソフトウェア構成図である。需要家損失算出のため、需要家災害対策準備時間算出部50、事前対策可否判定部51、停電コスト算出部52、全需要家総停電コスト算出部53を保持してよい。
【0052】
需要家災害対策準備時間算出部50は、停電時間・停電量推定結果111、を用いて、需要家の災害対策の準備時間を算出できる。
【0053】
事前対策可否判定部51は、需要家災害対策準備時間算出部50において算出した需要家の災害対策準備時間と需要家別必要事前対策時間104を用いて、各需要家の事前対策の可否を判定できる。
【0054】
停電コスト算出部52は、事前対策可否判定部51において判定した結果である需要家の事前対策可否、ケース別停電コスト想定単価105のデータを用いて、需要家の停電による損失を算出する。
【0055】
全需要家総停電コスト算出部53は、停電コスト算出部52において算出した各需要家の停電による損失を合計し、全需要家の総停電コストを算出し、処理結果は需要家損失算出結果113に格納されてよい。
【0056】
(3)災害対策計画立案機能に関する各種処理
次に、係る本実施の形態による災害対策計画立案機能に関連して、災害対策計画立案システム10により実行される各種処理の処理内容について説明する。なお、以下においては、各種処理の処理主体をプログラム又はモジュールとして説明するが、実際上は、そのプログラム又はモジュールに基づいて演算部がその処理を実行してよいことは言うまでもない。
【0057】
3-1節「災害対策計画立案の各種処理」にて災害対策計画立案の全体の処理手順を示す。3-2節「需要家損失算出の各種処理」にて需要家損失算出の詳細な処理手順を示す。
【0058】
(3-1)災害対策計画立案の各種処理
図5は、災害対策計画立案システム10による災害対策計画立案部による全体の処理手順を示すフローチャートである。災害対策計画立案システム10の災害対策計画立案部30は、未対策時費用便益評価(ステップS100)、暫定コンテプラン仮定(ステップS101)、エリア毎の停電時間・停電量推定(ステップS102)、暫定コンテプランの費用便益評価(ステップS103)、改善度算出(ステップS104)、既定の終了条件チェック(ステップS105)及び、最も改善度が高いコンテプランを最良プランとして採用(ステップS106)、を順に実行してよい。
【0059】
図6は、未対策時費用便益評価(ステップS100)の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
未対策時費用便益評価処理が開始されると、まず、再エネ発電量予測部43は、エリア内再エネ電源導入量108及び気象予測値109を用いて、エリア別の太陽光発電電力量を予測する処理を行うことができる(ステップS200)。
【0061】
エリア内再エネ電源導入量108は、例えば
図11に示す形式で、「エリア」として表示されるエリア及びそのエリア毎の太陽光発電導入量である「PV導入量」が設定されていてよい。気象予測値109は、例えば、
図12に示す形式でエリア毎の各時刻における平均気温、平均降水量、平均日射量、風速及び、天気などの気象予測値が格納されている。
図12の気象予測値109において、「タイムスタンプ」に対応する「予測値」には、予測をしたタイミングが時系列に配列されている。「項目」欄に上げられた「平均気温」などの気象要素に対応する「予測値」欄には、前述の予測をしたタイミングに対応してそれぞれの気象要素の予測値が配列されている。なお、「天気」について「雨」のように、見かけは数値ではないものもあるが、これは処理においては数値で扱われてよいので、予測値と呼んでいる。エリア別の太陽光発電電力量の予測は、例えば当該エリアにおける前記日射量予測値と前記太陽光発電導入量を所定の係数重みをつけて掛け合わせることで時間帯ごとの再エネ発電量予測値を算出することができる。ここで時間帯とはある時刻からある時刻の間の時間範囲であり、再エネ発電量予測値は当該時間帯の発電量の合計値として算出する。
【0062】
次に、設備故障予測部39は、電源リスト100及び気象予測値109を用いて、各エリアの発電所や電力供給線などの故障を予測する処理を行うことができる(ステップS201)。
【0063】
電源リスト100は、例えば、
図13に示す形式で、発電所を特定する符号を示す「発電所ID」、発電所ごとにその発電所が存在するエリアである「エリア」、災害等が派生していない平常時において発電所が電力を供給するエリアである「平常時供給先エリア」、発電に用いるエネルギー源を示す「種別」、その発電所の最大出力である「最大出力」、「災害時脆弱度」(災害時における当該発電所の脆弱度であってよい。)などが格納されていてよい。設備故障予測は、電源リスト100の各発電所のエリア、災害時脆弱度と、気象予測値109の各エリアの時間帯ごとの風速に基づいて、例えば以下の数式(1)にて各設備のそれぞれの時間ごとの故障確率を算出し、故障確率が閾値以上であれば「故障」、以下であれば「故障無し」と判定することができる。なお、気象予測値109に項目として上げる気象要素は、
図12に示したものの他に、降水量、降雪量など種々の要素が採用できる。なお、記号tは、本数式の範囲において用いているものでもよい。
【0064】
図13に示す電源リスト100には、発電所IDなどの項目が含まれているが、この図に例として挙げたものである。電源リスト100を含め本発明の説明について上げた様々なデータの表は、例示した項目に限らず、必要な種々の項目を含むことができる。
【0065】
【0066】
次に、コンテプラン仮定部31は、電源割当仮定部40、電源車派遣エリア仮定部41及び蓄電池稼働エリア仮定部42にてそれぞれのエリアごとのそれぞれのアセットの割当を仮定することで、初期のコンティンジェンシープランを仮定することができる(ステップS202)。
【0067】
初期のコンティンジェンシープランの仮定は、まず電源割当仮定部40にて、各発電所が初期において電力供給を行うエリアを示す初期エリアの割当を仮定する。具体的に、電源リスト100における平常時供給先エリアを各発電所の供給先として割当てればよい。次に電源車派遣エリア仮定部41にて、電源車情報106をもとに各電源車が電力供給を行う初期エリアの割当を仮定する。
図14は、電源車情報106の例であり、電源車を特定する符号を示す「電源車ID」、電源車ごとにその電源車を初期において派遣するエリアを示す「初期派遣エリア」、その電源車の最大出力を示す「最大出力」、その電源車が供給できる電力の容量である「供給可能容量」などの情報が格納されている。初期の電源車派遣エリアの仮定は、例えば、電源車情報106の初期派遣エリアの情報を参照し、決定すればよい。次に蓄電池稼働エリア仮定部42にて、エリア別蓄電池情報107をもとに各蓄電池の稼働・非稼働を仮定する。
図15はエリア別蓄電池情報107の例であり、蓄電池を特定する符号を示す「蓄電池ID」、蓄電池ごとにその蓄電池が配置されているエリアである「エリア」、その蓄電池の最大出力である「最大出力」及び、その蓄電池の容量である「容量」などの情報が格納されている。初期の蓄電池稼働・非稼働の仮定は、例えば、エリア別蓄電池情報107に上げられたすべての蓄電池が稼働するとして仮定すればよい。以上の処理により、それぞれのエリアごとに割り当てる発電所、電源車、蓄電池をコンティンジェンシープランとして仮定することができる。
【0068】
次に、停電時間・停電量推定部32は、仮定したコンティンジェンシープランと、エリア需要予測値101、再エネ発電量予測値及び、設備故障予測結果を用いて、設定した電力供給計画を行う将来の時間帯ごとの各エリアの停電有無・停電量を推定する処理を行うことができる(ステップS203)。
【0069】
具体的にそれぞれのエリアごとに仮定したコンティンジェンシープラン、再エネ発電量予測値、設備故障予測結果に基づき、当該エリアの電力供給量を算出し、エリア需要予測値と比較することでそれぞれの時間帯ごとの停電有無、停電量を推定することができる。
【0070】
例えば、仮定したコンティンジェンシープランにおけるエリアに割当てた発電所の情報と、設備故障予測結果をもとに割当てた発電所の稼働の可否を判定し、稼働可能であれば、「
図13の電源リスト100の最大出力×時間」を当該時間帯に発電所が当該エリアに供給できる電力量として算出できる。例えば、最大電力27(GW)を1時間供給する場合、当該時間帯の電力供給量は27(GWh)となる。
【0071】
また、仮定したコンティンジェンシープランにおける割当てた電源車の情報と「
図14の電源車情報106の最大出力×時間」とを、電源車が当該時間帯に供給できる電力量として算出できる。このとき設定した電力供給を行う時間帯が、電力供給開始時間からの何時間経過しているかに基づいて、供給の可否を判定してもよい。例えば、電力供給開始時間から経過時間をTとすると、「前記電源車の最大出力×T」により当該時間帯までの総電力供給量を算出し、この値と電源車情報106における供給可能容量を比較し、当該時間帯までの「総電力供給量≧供給可能容量」であれば電力供給不可、「総電力供給量<供給可能容量」であれば電力供給可能を判定することができる。なお、記号Tは、本数式の範囲において用いているものである。
【0072】
また、仮定したコンティンジェンシープランにおける割当てた蓄電池の情報と、「
図15のエリア別蓄電池情報107の最大出力×時間」を蓄電池が当該時間帯に供給できる電力量として算出する。このとき設定した電力供給を行う時間帯が、電力供給開始時間からの何時間経過しているかに基づいて、供給の可否を判定してもよい。例えば、電力供給開始時間から経過時間をTとすると、「前記蓄電池の最大出力×T」により当該時間帯までの総電力供給量を算出し、この値とエリア別蓄電池情報107における容量を比較し、「当該時間帯までの総電力供給量≧容量」であれば電力供給不可、「当該時間帯までの総電力供給量<容量」であれば電力供給可能を判定することができる。なお、記号Tは、本数式の範囲において用いているものである。
【0073】
このようにして算出した各時間帯の発電機、電源車、蓄電池の電力供給量の合算値と、各時間帯の再エネ発電量予測値を合算することで当該エリアの各時間帯の電力供給量を算出できる。
図16はエリア需要予測値101の例であり、各エリアのそれぞれの時間帯ごとに、需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの需要予測値、総需要量が格納されていてよい。前記当該エリアの各時間帯の電力供給量と、エリア需要予測値101の当該エリアの総需要量を比較し、「電力供給量≧総需要量」であれば停電無し、「電力供給量<総需要量」であれば停電有り、と判定すればよい。また停電有りの場合、前記総需要量を当該時間帯の停電量として推定することができる。またエリア需要予測値101の需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの需要予測値を参照することで需要家種別ごとの停電量を推定できる。このようにして推定した各エリアの停電有無・停電量の推定結果は、
図22に示す形式で停電時間・停電量推定結果111に格納されてよい。
【0074】
次に、費用便益評価部34は、前記仮定した初期コンティンジェンシープランと、前記停電時間・停電量推定結果111に基づいて、発生する費用と便益の評価を行うことができる(ステップS204)。
【0075】
図7は、初期コンテプランの費用便益評価(ステップS204)の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0076】
初期コンテプランの費用便益評価が開始されると、まず、託送収入減少額算出部44は、各エリアの停電時間・停電量の推定結果に基づいて、託送収入減少額を算出する処理を行うことができる(ステップS300)。具体的には、まず需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの託送料金単価(円/kWh)を設定してよい。次に数式(2)に示すように、停電時間・停電量推定結果111の需要家種別ごとの停電量との積を取ることで各需要家種別の託送収入減少額を算出できる。なお、記号tは本数式の範囲において用いているものである。
【0077】
【0078】
ここで、incomeLoss_transaは、エリアaの託送収入減少額であり、PLossa,c,tは、エリアaの需要家種別cの時間帯tの総停電量(MWh)であり、unitPricecは、需要家種別cの平均託送料単価(円/kWh)である。
【0079】
例として、託送収入減少額は以下の式で算出することができる。なお、記号tは本数式において用いているものである。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
各需要家種別の託送収入減少額を合算することで需要家全体の託送収入減少額を算出できる。
【0084】
次に、停電ペナルティ算出部45は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、停電のペナルティを踏まえた損失を算出する処理を行うことができる(ステップS301)。具体的には、まずペナルティ単価(円/kWh)と、許容停電量(MWh)のそれぞれの値を設定する。これらの値は、0以上の任意の値を設定してよい。次に数式(6)に示すように、対象時間帯全体の総停電量の許容停電量からの逸脱量にペナルティ単価を掛けることで停電ペナルティを算出することができる。
【0085】
【0086】
ここで、penaltyaは、エリアaの停電ペナルティであり、Loss_allowableは、レベニューキャップにおける許容停電量(MWh)であり、unitPenaltyは、ペナルティ単価(円/MWh)である。
【0087】
次に、需要家損失算出部35は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、需要家の損害を算出する処理を行うことができる(ステップS302)。需要家損失算出処理の詳細は、3-2節「需要家損失算出の各種処理」にて後述する。
【0088】
次に、電源稼働費算出部46は、電源割当仮定部40にて仮定したコンティンジェンシープランの電源割当と電源リスト100及び、エリア需要予測値101を用いて、各電源の稼働費を算出できる(ステップS303)。具体的には、まずエリアに割当てられ、かつステップS201で判定した稼電所を抽出できる。一エリアに割当てられる発電機が一つである場合は、当該エリアのエリア需要予測値の総需要量を各時間帯における発電所の発電電力量とすることができる。1エリアに割当てられる発電機が複数である場合、電源リスト100を参照し、割り当てられた発電所の最大出力の比率で総需要量を按分することで各発電所の発電電力量を算出できる。次に、電源リスト100を参照し、割当てられた発電所のコスト関数の係数ag、bg、cg、をそれぞれ抽出してよい。コスト関数は、発電機の発電電力量と発電機の特性に応じて発電にかかるコストを算出する関数である。そして発電機コスト関数の係数(ag,bg,cg)を用いて、次式により各時間帯の稼働にかかるコストを算出できる。
【0089】
【0090】
ここで、cost_geneaは、電源aの稼働コスト(円)であり、Paは、発電機aの発電電力量である。
【0091】
次に、電源車稼働費算出部48は、電源車派遣エリア仮定部41にて仮定したコンティンジェンシープランの電源車派遣エリアの割当及び電源車稼働単価114を用いて、電源車派遣・稼働にかかる費用を算出できる(ステップS304)。具体的には、まずエリアに割当てられた電源車を抽出してよく。そして、
図19の電源車稼働単価114を参照し、割当てられた電源車のコスト関数の係数a
Veh、b
Veh、c
Veh、をそれぞれ抽出してよい。そしてコスト関数の係数(a
Veh,b
Veh,c
Veh)を用いて、次式により各時間帯の稼働にかかるコストを算出できる。
【0092】
【0093】
ここで、cost_p_vehiclevは、電源車vのコストであり、PVeh,vは、電源車vの発電電力量である。
【0094】
次に、トータル損失算出部36は、託送収入減少額算出結果、停電ペナルティ算出部45の算出結果である停電ペナルティ算出結果、需要家損失算出結果113、に基づきトータル損失を以下の式にて算出できる。
【0095】
【0096】
ここで、TotalLossは、トータル損失であり、incomeLoss_transaは、エリアaの託送収入減少額であり、penaltyaは、エリアaの停電ペナルティであり、consumerLossaは、エリアaの需要家損失であり、w1及びw2は任意に設定される重み係数であってよい。
【0097】
トータルコスト算出部37は、電源稼働費算出結果、電源車稼働費算出結果、に基づきトータルコストを以下の式にて算出できる。
【0098】
【0099】
ここで、TotalCostは、トータルコストであり、cost_genegは、電源aの稼働コスト(円)であり、cost_reconstgは、電源aの電源持替コスト(円)である。なお、cost_reconstgは発電所を平常時とは異なるエリアに割り当てる場合に発生する運用コストであるが、初期計画の場合は0とすればよい。
【0100】
そしてトータル便益評価部38は、前述の算出したトータル損失及びトータルコストに基づき、総合評価値、すなわち初期コンテプランの総合評価値を以下の式にて算出できる(ステップS305)。
【0101】
【0102】
ここで、TotalBenefitは、トータル便益である。
【0103】
そして、前述の結果を初期コンテプラン評価結果116に格納してよく(ステップS305)、処理を終了してよい。
【0104】
図20は初期コンテプラン評価結果116の例であり、それぞれのエリア毎にコンティンジェンシープランである供給元発電所を表す「供給元発電所ID」、割当電源車を表す「割当電源車ID」、割当蓄電池の情報を表す「割当蓄電池ID」及び、費用便益評価における各値の算出結果が格納されていてよい。
【0105】
費用便益評価部34は、初期コンテプランの費用便益評価(ステップS204)処理の終了後、未対策時費用便益評価の処理を終了してよい。
【0106】
災害対策計画立案システム10は、未対策時費用便益評価(ステップS100)の処理が終了すると、暫定コンテプラン仮定の処理を実施してよい(ステップS101)。
【0107】
図8はS101の暫定コンテプラン仮定についての処理手順を示すフローチャートである。コンテプラン仮定部31は、電源割当仮定部40、電源車派遣エリア仮定部41、蓄電池稼働エリア仮定部42にてそれぞれのエリアごとの各アセットの割当を仮定することで、暫定のコンティンジェンシープランを仮定することができる。
【0108】
暫定のコンティンジェンシープランの仮定は、まず電源割当仮定部40にて、各発電所が電力供給を行うエリアの割当を仮定してよい(ステップS400)。具体的には、電源リスト100における平常時供給先エリアとは異なる単一又は複数の供給先エリアをランダムに各発電所の供給先として割当てることができる。ここで、ランダムに割り当てる、というのは、送電事業者等のユーザが適宜割り当てるということである。次に、電源車派遣エリア仮定部41にて、電源車情報106をもとに各電源車が電力供給を行うエリアの割当を仮定する(ステップS401)。電源車派遣エリアの仮定は、例えば、電源車情報106の初期派遣エリアとは異なる単一又は複数の供給先エリアをランダムに各電源車の供給先として割当てることができる。ここで、ランダムに割り当てる、というのは、送電事業者等のユーザが適宜割り当てるということである。次に蓄電池稼働エリア仮定部42にて、エリア別蓄電池情報107をもとに各蓄電池の稼働・非稼働を仮定する(ステップS402)。蓄電池稼働・非稼働の仮定は、例えば、エリア別蓄電池情報107の蓄電池ごとにランダムに稼働又は非稼働を設定することができる。
【0109】
以上の処理により、それぞれのエリアごとに割り当てる発電所、電源車、蓄電池を暫定のコンティンジェンシープランとして仮定し、暫定コンテプラン仮定の処理を終了してよい。
【0110】
次に、停電時間・停電量推定部32は、仮定したコンティンジェンシープランと、エリア需要予測値101、再エネ発電量予測値、前記設備故障予測結果を用いて、設定した電力供給計画を行う将来の時間帯ごとの各エリアの停電有無・停電量を推定する処理を行うことができる(ステップS102)。
【0111】
それぞれのエリアごとに具体的に仮定したコンティンジェンシープラン、再エネ発電量予測値、設備故障予測結果に基づき、当該エリアの電力供給量を算出し、エリア需要予測値と比較することでそれぞれの時間帯ごとの停電有無、停電量を推定することができる。
【0112】
例えば、仮定したコンティンジェンシープランにおけるエリアに割当てた発電所の情報と、設備故障予測結果をもとに割当てた発電所の稼働の可否を判定し、稼働可能であれば、「
図13の電源リスト100にある最大出力×時間」を当該時間帯に発電所が当該エリアに供給できる電力量として算出することができる。
【0113】
また、仮定したコンティンジェンシープランにおける割当てた電源車の情報と「
図14の電源車情報106の最大出力×時間」を電源車が当該時間帯に供給できる電力量として算出することができる。このとき設定した電力供給を行う時間帯が、電力供給開始時間からの何時間経過しているかに基づいて、供給の可否を判定してもよい。例えば、電力供給開始時間からの経過時間をTとすると、「前記電源車の最大出力×T」により当該時間帯までの総電力供給量を算出し、この値と電源車情報106における供給可能容量を比較し、「当該時間帯までの総電力供給量≧供給可能容量」であれば電力供給不可、「当該時間帯までの総電力供給量<供給可能容量」であれば電力供給可能を判定することができる。なお、記号Tは、本数式の範囲において用いているものである。
【0114】
また、仮定したコンティンジェンシープランにおける割当てた蓄電池の情報と「
図15のエリア別蓄電池情報107の最大出力×時間」を蓄電池が当該時間帯に供給できる電力量として算出できる。このとき設定した電力供給を行う時間帯が、電力供給開始時間からの何時間経過しているかに基づいて、供給の可否を判定してもよい。例えば、電力供給開始時間から経過時間をTとすると、「前記蓄電池の最大出力×T」により当該時間帯までの総電力供給量を算出し、この値とエリア別蓄電池情報107における容量を比較し、「当該時間帯までの総電力供給量≧当該容量」であれば電力供給不可、「総電力供給量<当該容量」であれば電力供給可能を判定することができる。なお、記号Tは、本数式の範囲において用いているものでもよい。
【0115】
このようにして算出した各時間帯の発電機、電源車、蓄電池の電力供給量の合算値と、各時間帯の再エネ発電量予測値を合算することで当該エリアの各時間帯の電力供給量を算出できる。
図16はエリア需要予測値101の例であり、各エリアのそれぞれの時間帯ごとに、需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの需要予測値、総需要量が格納されている。前記当該エリアの各時間帯の電力供給量と、エリア需要予測値101の当該エリアの総需要量を比較し、「当該電力供給量≧当該総需要量」であれば停電無し、「当該電力供給量<当該総需要量」であれば停電有り、と判定することができる。また停電有りの場合、前記総需要量を当該時間帯の停電量として推定することができる。またエリア需要予測値101の需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの需要予測値を参照することで需要家種別ごとの停電量を推定できる。このようにして推定した各エリアの停電有無・停電量の推定結果は、
図22に示す形式で停電時間・停電量推定結果111に格納することができる。
【0116】
次に、費用便益評価部34は、前記仮定した暫定コンティンジェンシープランと、前記停電量推定結果に基づいて、発生する費用と便益の評価を行うことができる(ステップS103)。
【0117】
図9は、暫定コンティンジェンシープランの費用便益評価の処理手順(ステップS103)の詳細を示すフローチャートである。
【0118】
暫定コンテプランの費用便益評価が開始されると、まず、託送収入減少額算出部44は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、託送収入減少額を算出する処理を行う(ステップS500)。具体的には、まず需要家種別(一般家庭、事業者(高圧)、事業者(低圧))ごとの託送料金単価(円/kWh)を設定する。次に数式(2)に示すように、停電時間・停電量推定結果111の需要家種別ごとの停電量との積を取ることで各需要家種別の託送収入減少額を算出することができる。
【0119】
各需要家種別の託送収入減少額を合算することで需要家全体の託送収入減少額を算出することができる。
【0120】
次に、停電ペナルティ算出部45は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、停電のペナルティを踏まえた損失を算出する処理を行うことができる(ステップS501)。具体的には、まずペナルティ単価(円/kWh)と、許容停電量(MWh) を任意の値に設定することができる。この任意の値は、電力会社自身が適宜選択した任意の値であってよい。次に数式(6)に示すように、対象時間帯全体の総停電量の許容停電量からの逸脱量にペナルティ単価を掛けることで停電ペナルティを算出することができる。
【0121】
次に、需要家損失算出部35は、各エリアの停電量の推定結果に基づいて、需要家の損失を算出する処理を行うことができる(ステップS502)。需要家損失算出処理の詳細は、3-2節「需要家損失算出の各種処理」にて後述する。
【0122】
次に、電源稼働費算出部46は、仮定したコンティンジェンシープランの電源割当と電源リスト100、エリア需要予測値101を用いて、各電源の稼働費を算出することができる(ステップS503)。具体的には、まずエリアに割当てられ、かつステップS201で判定した稼働する発電所を抽出することができる。一エリアに割当てられる発電機が一つである場合は、当該エリアのエリア需要予測値の総需要量を各時間帯における発電所の発電電力量とすることができる。一エリアに割当てられる発電機が複数である場合、電源リスト100を参照し、割り当てられた発電所の最大出力の比率で総需要量を按分することで各発電所の発電電力量を算出することができる。次に、電源リスト100を参照し、割当てられた発電所のコスト関数の係数ag、コスト関数の係数bg、コスト関数の係数cg、を抽出する。そして発電機コスト関数の係数(ag,bg,cg)を用いて、数式(7)により各時間帯の稼働にかかるコストを算出することができる。
【0123】
次に、電源車稼働費算出部48は、ステップS401において仮定したコンティンジェンシープランの電源車派遣についての割当及び電源車稼働単価114を用いて、電源車派遣・稼働にかかる費用を算出する(ステップS504)。具体的には、まずエリアに割当てられた電源車を抽出することができる。次いで、
図19の電源車稼働単価114を参照し、割当てられた電源車のコスト関数の係数a
Veh、コスト関数の係数b
Veh、コスト関数の係数c
Veh、を抽出することができる。次いで、そしてコスト関数の係数(a
Veh,b
Veh,c
Veh)を用いて、数式(8)により各時間帯の稼働にかかるコストを算出することができる。
【0124】
次に電源持替・系統再構成コスト算出部47は、電源持替・系統再構成にかかるコストを算出することができる(ステップS505)。具体的には、まずエリアに割当てられた発電所を抽出することができる。次いで、
図18の電源持替費単価110を参照し、供給エリア変更にかかる運用費を抽出することができる。そして仮定したコンティンジェンシープランの電源割当が平常時供給先のエリアと異なる場合、当該発電機については、供給エリア変更にかかる運用費が追加で発生するものと判定することができる。
【0125】
次に、トータル損失算出部36は、託送収入減少額算出結果、停電ペナルティ算出結果、需要家損失算出結果、に基づきトータル損失を、数式(9)を用いて算出することができる。
【0126】
トータルコスト算出部37は、電源稼働費算出結果、電源車稼働費算出結果及び、電源
持替・系統再構成コスト算出部47における処理から得られた電源持替費算出結果、に基づきトータルコストを数式(10)にて算出することができる。
【0127】
そしてトータル便益評価部38は、トータル損失算出部36において算出したトータル損失、トータルコスト算出部37において算出したトータルコストに基づき、総合評価値、すなわち暫定コンテプランの総合評価値を、数式(11)にて算出することができる(ステップS506)。
【0128】
その後、暫定コンテプランの費用便益評価処理(S103)を終了することができる。
【0129】
災害対策計画立案システム10は、暫定コンテプランの費用便益評価処理(S103)の処理が終了すると、改善度算出の処理を実施することができる(ステップS104)。
【0130】
具体的には、改善度算出は、S103にて算出した暫定コンテプランの総合評価値(トータル便益)と、S101にて算出した初期コンテプランの総合評価値(トータル便益)の差分を算出することで総合評価値の改善度を算出することができる。
【0131】
そして前記ステップS101~ステップS104を規定の終了条件に達するまで繰り返すことで総合評価値が高いコンティンジェンシープランを探索することができる(ステップS105)。この探索は便益改善部33を経由することで行ってよい。この探索は例えば欲張り法や遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティック手法を用いて改善度を評価関数として、評価関数が改善されるように新たな暫定コンテプランを生成するなどして改善度を増加させる処理が行われてもよい。このように、災害対策計画立案部30は、設定された条件に基づき複数の対策を評価して、それらの中から便益の評価値が高い対策を生成することができ、その対策を出力することもできる。この出力は、出力部24により行うことができ、また通信部25を介して通信ネットワーク11を経由して配送電事業者の利用端末12に表示するなどの出力を行うこともできる。なお、本災害対策計画立案システムは、複数の対策を評価するものである。
【0132】
このような構成は、最適化処理を行うものであって、与えられた条件のもとで、最適な計画案を求めることができる。
【0133】
またこのとき、前記算出した電源稼働費、電源車稼働費、電源持替費の合算値を送配電事業者の対策費をαとして算出し、前期算出した需要家損失をβとした場合に、αとβとの割合が既定の範囲、例えば、「任意の最小値<α/β<任意の最大値」となっているコンティンジェンシープランのみ採用することができる。ここで、任意の最小値及び任意の最大値は、送配電事業者が適当であるとして定めた任意の値であってよく、「任意の最小値<任意の最大値」となるよう定めることは言うまでもない。また、既定の範囲を逸脱したコンティンジェンシープランの評価値に逸脱分のペナルティを与えるなどしてもよい。
【0134】
このように、計画立案部は、送配電事業者の対策に要するコストと、電力需要家の停電損失との比率が規定の範囲に収まる対策を生成するもの及び/又は、出力するものであってよい。
【0135】
前述のように、αとβとの割合が既定の範囲に収まるようにすることで、電力需要家と送配電事業間で費用負担の公平性を担保するメリットがある。また、この処理により、災害により発生する需要家の支出と送配電事業者の支出のバランスを既定の範囲に保持し、需要家損失に比べて送配電事業者が過度な対策を行うケースを防止する事が期待できる。
【0136】
また初期のコンティンジェンシープランの需要家損失と暫定コンティンジェンシープランの需要家損失との差分であるΘが、任意に定めた閾値以上となるコンティンジェンシープランのみ採用するものでよく、又はその閾値以下になるコンティンジェンシープランの評価値に逸脱分のペナルティを与えるなどしてもよい。このような処理により、需要家への最低限の損失補償を踏まえた計画の立案が期待できる。前述の任意に定めた閾値は、送配電事業者が適当であるとして任意に定めた閾値であってよい。
【0137】
図29は、需要家損失及び送配電事業者の対策費の比較イメージである。この図では、送配電事業者の対策費αを、「送配電対策費」と、需要家損失βを、「需要家損失影響度(合計)」と表記してある。対策時として提示してある「送配電対策費」及び「需要家損失影響度(合計)」は、暫定コンティンジェンシープランのものである。未対策時として提示してある「需要家損失影響度(合計)」は、初期のコンティンジェンシープランのものである。初期のコンティンジェンシープランの需要家損失と暫定コンティンジェンシープランの需要家損失との差分がΘとして示してある。
【0138】
ステップS105にて規定の終了条件に達した場合、探索の過程で最も改善度が高いコンティンジェンシープランを最良プランとして採用することができる(ステップS106)。そして、結果をコンテプラン最適化結果112に格納し、処理を終了することができる。
【0139】
図21はコンテプラン最適化結果112の例であり、それぞれのエリア毎にコンティンジェンシープランである供給元発電所、割当電源車、割当蓄電池の情報と、費用便益評価における各値の算出結果が格納されていてよい。
【0140】
そして前述の最適化結果を送配電事業者へ通知する具体的な方法として、例えば、
図27に示す画面を送配電事業者の利用端末に表示することができる。表示方法として、例えば指定した日時における各エリアの停電量予測値、推定した各発電所の稼働・停止ステータス及び、コンティンジェンシープランにおける供給先、を視覚的に示してもよい。また、コンティンジェンシープランにおけるトータル便益、初期コンテプランと比較した便益改善額及び、需要家損失、をその内訳と共に表示してもよい。
【0141】
(3-2)需要家損失算出の各種処理
図10は、災害対策計画立案システム10による需要家損失算出の処理手順を示すフローチャートである。災害対策計画立案システム10の需要家損失算出部35は、需要家停電推定結果読込処理(ステップS600)、需要家災害対策準備時間算出処理(ステップS601)、事前対策可否判定処理(ステップS602)、停電コスト算出処理(ステップS603)、「全ての需要家を処理したか?」に関する条件分岐処理(ステップS604)及び、全需要家の総停電コスト算出処理(ステップS605)、を順に実行することができる。
【0142】
需要家損失算出処理が開始されると、まず、
図4に記載の需要家災害対策準備時間算出部50は、停電時間・停電量推定結果111のデータを読み込む(ステップS600)。
【0143】
次にその読み込んだデータを用いて、需要家災害対策準備時間算出部50は、それぞれの需要家種別ごとの災害対策の準備時間を算出することができる(ステップS601)。具体的には、停電時間・停電量推定結果111における停電発生有無の情報を参照し、停電が最初に発生する時刻、すなわち停電発生開始時刻を抽出することができる。そして停電発生開始時刻と現在時刻の差分をとることで災害対策の準備時間を算出することができる。
【0144】
次に事前対策可否判定部51は、需要家災害対策準備時間算出部50が算出した各需要家の災害対策準備時間及び需要家別必要事前対策時間104を用いて、各需要家の事前対策の可否を判定する(ステップS602)。
図23は、需要家別必要事前対策時間104の例であり、需要家種別ごとにそれぞれの需要家の必要事前対策時間が設定されている。具体的には、「需要家の災害対策準備時間≧当該需要家の必要事前対策時間」であれば、当該需要家種別に係る需要家は事前対策可能と、「需要家の災害対策準備時間<当該需要家の必要事前対策時間」であれば、当該需要家種別の需要家は事前対策が不可能と判定することができる。
【0145】
次に停電コスト算出部52は、前述の停電時間・停電量推定結果111から求められる需要家の各時間帯の停電量、前述の事前対策可否判定部51が判定した事前対策可否判定結果及び、ケース別停電コスト想定単価105を用いて、需要家の停電によるコスト、すなわち停電コストを算出することができる(ステップS603)。
図24は、ケース別停電コスト想定単価105の例であり、それぞれの需要家種別ごと及び、事前対策の可否ごとに停電時間長に応じた損失額単価が設定されていてよい。事前対策可否に加えて、平日、土日・祝などの日種別に応じた損失額単価を設定してもよい。
図26はケース別停電コスト想定単価の時間長に応じた変化のイメージである。
【0146】
前述のように、電力需要家の停電損失、すなわち電力需要家が停電によって受ける停電コストを含む損失は、前述の停電量と、停電が予測されるエリアの停電により影響を受ける電力需要家が事前対策に要する時間を含む情報、すなわち前述の第一の情報に基づき算出されるものであってよい。このように構成することによって、需要家の停電損失を良く評価することができ、より精度が良く、送電事業者と需要家との公平を担保でき、より良い災害対策計画を立案できる。
【0147】
また、前述の事前対策に要する時間は、電力需要家の種別に依存するものであってよく、電力需要家の種別毎に異なるものであってもよい。また、前述の第一の情報は、電力需要家の種別を含むものであってよい。このように構成することによって、需要家の種別を考慮したより高精度の災害対策計画を立案できる。
【0148】
更に、前述の第一の情報は、電力需要家の種別に依存する単位時間当りの損失額の情報を含むものであってよく、電力需要家の種別毎に異なる単位時間当りの損失額の情報を含むものであってもよい。このように構成することによって、需要家の種別を踏まえた事前対策に係る損失額を考慮したより高精度の災害対策計画を立案できる。
【0149】
具体的な停電コスト算出の方法として、まず前述のように抽出した停電発生開始時刻から各時間帯までの経過時間を、当該時間帯における停電時間長とする。そしてそれぞれの需要家種別ごとに各時間帯の、時期(日種別)、停電時間長、事前対策可否に応じた停電コスト想定単価及び、当該時間帯の当該需要家種別の停電量の積を求めることで、それぞれの需要家種別ごとの損失額を算出し、すべての需要家種別を合算することで、全需要家の停電によるコストを算出できる。
【0150】
このとき、例えば、需要家種別ごとの平時の経済規模を0以上の任意の値で設定し、各需要家種別の損失額をこの値で割ることで、損失の平時の経済活動への影響度を算出し、需要家の損失としてもよい。経済規模は、工場に対する小規模な商店や一般家庭のような経済的な規模であってよい。ここではそれら規模を数値で表現して用いてよい。この処理により、例えば、需要家の種別に依存する経済規模の違いを踏まえた損失の評価が期待できる。この経済規模の違いを踏まえた損失の評価のイメージを
図28に例示する。
図28にあるグラフについて、左のグラフは、需要家A、B及びCについて停電損失の額と平時経済規模を表したイメージであって、その縦軸は損失額であると共に、平時経済規模を表すものでよい。
図28の左のグラフは、需要家A、B及びCについて、それぞれの需要家の損失額をそれぞれの平時経済規模で割った値を損失影響度として、正規化したものである。
図28の場合は、例えば、需要家Aは損失影響度が比較的に小さく、需要家Cでは損失影響度が比較的に大きいことが把握できる。このように、需要家に応じた損失の影響を見積もることができる効果を有する。
【0151】
需要家のコストの算出方法の例を数式(12)に示す。
【0152】
【0153】
ここで、consumerLossaは、エリアaの需要家のコストであり、Plossa,c,t1は、エリアaにおける需要家種別cの時間帯t1での総停電量(MWh)であり、unitLoss(c,s,t2,pr)は、需要家種別c、時期s、停電時間長t2及び、事前対策可否prに依存する停電コスト単価(円/kWh)であり、ECcは需要家種別cの平時の経済規模でもよい。なお、記号t1及びt2は、本数式の範囲において用いるものでもよい。
【0154】
前述のように、計画立案部は、電力需要家の停電損失を、電力需要家の平時の経済規模に基づいて算出するものであってよい。
【0155】
次に前述のステップS600~ステップS604をすべての需要家種別を処理するまで繰り返し(ステップS604)、すべての需要家を処理したら、全需要家総停電コスト算出部53は、それぞれの需要家の停電による損失を合計し、全需要家の総停電コストを算出し、処理結果は需要家損失算出結果113に格納し処理を終了することができる(ステップS605)。需要家損失算出結果113の例を
図25に示す。
【0156】
送配電事業者は、こうして決定されたコンティンジェンシープランに基づき、発電所、電源車、蓄電池の制御を直接行ってもよいし、制御の情報を他の事業者、例えば発電事業者や外部の電源車、蓄電池の運用事業者に送信する事で、間接的にコンティンジェンシープランの運用を行ってもよい。
【0157】
また本実施例では分散電源として電源車、蓄電池を利用する例を挙げたが、電気自動車、非常用発電機、といったその他の分散電源を利用する場合でも同様の方法でコンティンジェンシープランを立案できることは言うまでもない。
【0158】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の災害対策計画立案システムでは、災害発生時の各エリアの停電時間・量の予測値と、電源持替や、系統切替、分散電源に対応するコンティンジェンシープランを講じた場合の停電時間・量の予測値と、各エリアの需要家の種別と、需要家の事前対策可能時間をもとに、託送収入減少や停電ペナルティのような送配電事業者の売上損失、発電機持替や分散電源稼働費のような対策コスト、需要家の停電による経済的損失を正確に評価し、当該経済的損失に基づくコンティンジェンシープランのトータルの便益を評価しトータルの便益を改善するコンティンジェンシープランを立案することができ、送配電事業者の費用対効果を向上できる。
【0159】
かかる構成により、需要家の停電による経済損失を正確に評価しつつ、停電からの復旧時間を短縮し、送配電事業者の対策の費用対効果を向上できる災害対策計画立案システム、方法を提供することができる。また対策による効果を評価値として計算機により自動的に算出し、かつ評価値を向上させる計画を計算機により自動的に立案できるため、災害発生時の対策立案にかかる計算時間を短縮することができる。
【0160】
なお、本発明は前記実施形態だけに限定されることなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化できる。
【0161】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0162】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0163】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0164】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0165】
10…災害対策計画立案システム、11…通信ネットワーク、12…利用端末、21…演算部、22…メモリ、23…入力部、24…出力部、25…通信部、26…記憶装置、30…災害対策計画立案部、31…コンテプラン仮定部、32…停電時間・停電量推定部、33…便益改善部、34…費用便益評価部、35…需要家損失算出部、36…トータル損失算出部、37…トータルコスト算出部、38…トータル便益評価部、39…設備故障予測部、40…電源割当仮定部、41…電源車派遣エリア仮定部、42…蓄電池稼働エリア仮定部、43…再エネ発電量予測部、44…託送収入減少額算出部、45…停電ペナルティ算出部、46…電源稼働費算出部、47…電源持替・系統再構成コスト算出部、48…電源車稼働費算出部、50…需要家災害対策準備時間算出部、51…事前対策可否判定部、52…停電コスト算出部、53…全需要家総停電コスト算出部