(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142401
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】牽引式作業装置及び作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 7/12 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A01C7/12 Z
A01C7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049303
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597041747
【氏名又は名称】アグリテクノサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】土井 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】有吉 映明
【テーマコード(参考)】
2B054
【Fターム(参考)】
2B054AA14
2B054BA01
2B054BB01
2B054CA04
2B054CB02
2B054CB03
2B054DA09
2B054DC03
2B054DC09
2B054DD07
2B054DD22
2B054DD28
2B054DD29
(57)【要約】
【課題】装置本体のメンテナンス性の向上を図ることができる牽引式作業装置及び作業車両を提供する。
【解決手段】牽引式作業装置1は、装置本体3を備える。装置本体3は、作業車両の車両本体に連結されて車両本体に牽引される。装置本体3は、作業ユニット(播種ユニット5)と、作業ユニットを支持する支持部7と、を有する。支持部7は、作業ユニットの対象面50を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、対象面50を水平よりも下方に向けた第2姿勢と、の間で作業ユニットを回転可能に支持する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の車両本体に連結されて前記車両本体に牽引される装置本体を備え、
前記装置本体は、作業ユニットと、前記作業ユニットを支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記作業ユニットの対象面を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、前記対象面を水平よりも下方に向けた第2姿勢と、の間で前記作業ユニットを回転可能に支持する、
牽引式作業装置。
【請求項2】
前記作業ユニットは、散布物の散布作業を行う散布ユニットを含み、
前記対象面は、前記散布物を収容する容器の一面である、
請求項1に記載の牽引式作業装置。
【請求項3】
前記装置本体は、作業ユニットを複数有し、
前記複数の作業ユニットは、個別に上下方向に移動可能な状態で前記支持部に支持される、
請求項1又は2に記載の牽引式作業装置。
【請求項4】
前記装置本体は、作業ユニットを複数有し、
前記複数の作業ユニットは、個別に前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で回転可能な状態で前記支持部に支持される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の牽引式作業装置。
【請求項5】
前記作業ユニットは、前記車両本体の走行に伴って転動する駆動輪を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の牽引式作業装置。
【請求項6】
前記作業ユニットは、前記駆動輪の転動に伴って回転する一対の繰出ロールと、前記一対の繰出ロールの回転に同期するタイミングでそれぞれ排出物を排出する一対の排出部と、を含み、
前記一対の繰出ロールは互いに同期して回転する、
請求項5に記載の牽引式作業装置。
【請求項7】
前記作業ユニットが前記第2姿勢にあれば、前記一対の繰出ロールは上方に露出する、
請求項6に記載の牽引式作業装置。
【請求項8】
前記作業ユニットは、前記駆動輪として同一の駆動軸にて連結された第1駆動輪及び第2駆動輪を含み、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪の各々の外周には、周方向における互いに異なる位置に複数の開穴部が設けられている、
請求項5~7のいずれか1項に記載の牽引式作業装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の牽引式作業装置と、
前記車両本体と、を備える、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の車両本体に連結されて車両本体に牽引される装置本体を備える牽引式作業装置及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、作業車両の後方側に連結される車輪跡消し装置及び作業ユニット(直播装置)等の装置本体を備える牽引式作業装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術において、作業車両の車両本体(車体部)の後方側には、装置本体(車輪跡消し装置等)を連結自在な3点リンク機構等の連結機構が設けられており、連結機構を用いることで、装置本体(車輪跡消し装置等)が作業車両に装備される。
【0003】
関連技術に係る牽引式作業装置の装置本体(車輪跡消し装置)は、左右一対の土寄せ体を装置本体に備えている。左右一対の土寄せ体は、後方側部位ほど左右方向で互いに接近する傾斜姿勢に構成されている。この牽引式作業装置によれば、トラクタ等の作業車両の車輪が通過した箇所に左右一対の土寄せ体にて土を寄せることで、車輪跡を消すことが可能である。また、作業ユニットは、車両本体の前進に伴って、ホッパに収容された種子を少量ずつ排出し、圃場に種子を直播する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術の構成では、車両本体に対する装置本体の姿勢が固定されているため、例えば作業終了後に、ホッパに残った種子を全て排出してメンテナンスを行うような場合、種子の排出に手間が掛かり、装置本体のメンテナンスに手間が掛かることがある。
【0006】
本発明の目的は、装置本体のメンテナンス性の向上を図ることができる牽引式作業装置及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る牽引式作業装置は、装置本体を備える。前記装置本体は、作業車両の車両本体に連結されて前記車両本体に牽引される。前記装置本体は、作業ユニットと、前記作業ユニットを支持する支持部と、を有する。前記支持部は、前記作業ユニットの対象面を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、前記対象面を水平よりも下方に向けた第2姿勢と、の間で前記作業ユニットを回転可能に支持する。
【0008】
本発明の他の局面に係る作業車両は、前記牽引式作業装置と、前記車両本体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置本体のメンテナンス性の向上を図ることができる牽引式作業装置及び作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る作業車両全体の概略左側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る牽引式作業装置の左後上方から見た概略斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る牽引式作業装置の右前下方から見た概略斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る牽引式作業装置の概略平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る牽引式作業装置の概略下面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る牽引式作業装置の前方側部位の概略左側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る牽引式作業装置の後方側部位の概略左側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る牽引式作業装置の1つの播種ユニットの概略背面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る牽引式作業装置が通過した後の圃場を示す概略平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る牽引式作業装置における装置本体の下降動作を示す概略左側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る牽引式作業装置における装置本体の上昇動作を示す概略左側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る牽引式作業装置における1つの播種ユニットが第2姿勢にある状態を示す概略斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態1に係る牽引式作業装置における1つの播種ユニットが第2姿勢にある状態を示す概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。また、添付図面においては、例えば、ねじ、ボルト又はナット等の締結具、各種カバー部材、及び各部の詳細形状等の図示を適宜省略する。
【0012】
(実施形態1)
[1]全体構成
まず、本実施形態に係る作業車両10の全体構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態に係る牽引式作業装置1は、作業車両10の車両本体2と共に作業車両10を構成する。すなわち、作業車両10は、牽引式作業装置1(以下、単に「作業装置1」ともいう)と、車両本体2と、を備える。
【0013】
作業装置1は、装置本体3と、連結装置4と、を備える。装置本体3は、作業車両10の車両本体2に連結されて車両本体2に牽引される。連結装置4は、装置本体3と車両本体2とを連結する。ここで、連結装置4は車両本体2の後方側(車両本体2の前進方向とは反対側)に、装置本体3を連結する。つまり、(牽引式)作業装置1は、車両本体2の後方側に連結され、車両本体2の前進時に車両本体2に牽引されるようにして車両本体2と共に前進する装置である。本実施形態では特に、作業装置1は、それ自体に動力を発生する動力源を有しておらず、車両本体2にて牽引される力を利用して作業を実行する。
【0014】
本開示でいう「作業車両」は、例えば圃場G1等の作業領域において各種の作業を行う車両を意味し、一例として、トラクタ、播種機、田植機、散布機、噴霧機、移植機及び収穫機等の農業機械(農機)である。作業車両10は、例えば、建設機械(建機)等であってもよい。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業車両10が播種機を装備した乗用タイプのトラクタである場合を例に挙げて説明する。つまり、車両本体2としてのトラクタに、播種機としての作業装置1が牽引可能な状態で連結されることにより、作業車両10が構成される。この作業車両10では、圃場G1等の作業領域を車両本体2が走行することで、作業領域における車両本体2の軌跡上に作物の種子を播く播種作業が可能となる。また、本実施形態では一例として、作業車両10は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)により動作することとするが、これに限らず、作業車両10は、自動運転により動作する無人機であってもよい。
【0015】
本開示でいう「圃場」は、作業車両10が移動しながら、例えば、播種、施肥、農薬散布、植付け(田植え)又は収穫等の各種の作業を行う作業領域であって、育成する水田、畑、果樹園及び牧草地等を含む。例えば、稲、麦、大豆又はそば等の作物(農産物)を生育する水田又は畑が圃場G1である場合、圃場G1で育成される作物は農産物である。さらに、植木畑で植木を生育している場合には植木畑が圃場G1となり、林業のように森林にて木材となる樹木を生育する場合には森林が圃場G1となる。この場合、圃場G1で生育される作物は植木又は樹木等である。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業車両10は種籾(稲種)の播種作業に用いられ、圃場G1が稲の生育用の水田である場合を例に挙げて説明する。また、作業領域は圃場G1に限らず、例えば作業車両10が建設機械であれば、建設機械が作業を行う現場が作業領域となる。
【0016】
本実施形態では、説明の便宜上、作業車両10が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。作業車両10の車両本体2(の運転部21)に乗っている人(オペレータ)から見た方向を基準として、前後方向D2及び左右方向D3(
図2参照)を定義する。左右方向D3の左側は、車両本体2を前方に走行(前進)させる場合の左側を指し、左右方向D3の右側は、車両本体2を前方に走行(前進)させる場合の右側を指す。左右方向D3の外方側は、左右方向D3で作業車両10の外方側を指し、左右方向D3の内方側は、左右方向D3で作業車両10の内方側を指す。ただし、これらの方向は、作業車両10及び作業装置1の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0017】
車両本体2は、運転部21と、前輪22と、後輪23と、を有している。車両本体2は、動力源(エンジン、モータ等)及び制御装置等を更に有している。運転部21は、人(オペレータ)が搭乗可能である。運転部21には、操舵装置、変速装置及び操作装置等が配置されている。前輪22及び後輪23は、例えば、それぞれ左右一対ずつ設けられている。そして、車両本体2は、動力源で発生する動力で後輪23が駆動されることにより、走行可能に構成されている。ここで、前輪22は操舵輪として機能し、左右方向D3への旋回を可能とする。これにより、車両本体2は、運転部21に搭乗した人の操作に従って、圃場G1内を前後方向D2及び左右方向D3に移動するよう走行可能となる。例えば、車両本体2は、圃場G1内を蛇行しながら播種作業を実施する。
【0018】
作業装置1は、上述したように車両本体2の後方側に連結される。本実施形態では、作業装置1は、車両本体2に対して取外し可能に連結されており、作業装置1とは別の装置を車両本体2に連結することも可能である。
【0019】
本実施形態では、作業車両10は、水田からなる圃場G1に種子(種籾)を播く播種作業を実行可能であるので、作業装置1の装置本体3は、少なくとも播種作業に対応した播種ユニット5を有している。さらに、装置本体3は、車両本体2の車輪(前輪22及び後輪23)の跡を消す車輪跡消し装置6を有している。つまり、作業装置1の装置本体3は、車輪跡を消す機能と、播種作業と、を有している。これら播種ユニット5及び車輪跡消し装置6は、車両本体2に連結された状態で、前方側から車輪跡消し装置6、播種ユニット5の順に配置されている。
【0020】
図1に示すように、作業車両10の車両本体2の後部には、左右一対のロアリンク24とアッパリンク25とからなる3点リンク機構が設けられており、3点リンク機構に作業装置1の連結装置4を連結可能に構成されている。アッパリンク25は、一対のロアリンク24に対して左右方向D3の中央、かつ上方に位置する。連結装置4は、3点リンク機構(一対のロアリンク24及びアッパリンク25)に対して装置本体3を連結することで、車両本体2への作業装置1の連結を実現する。3点リンク機構(一対のロアリンク24及びアッパリンク25)には、本実施形態に係る作業装置1とは別の装置も連結可能である。この構成により、専用の播種機を用いなくても、汎用の車両本体2を利用して、水田からなる圃場G1に対して種子(種籾)を直接的に播く湛水直播作業を行うことが可能となる。
【0021】
本実施形態では、作業車両10は、直播作業の中でも特に、圃場G1に設定される条に沿って、かつ所定間隔で適量の種子を播く「点播」を実行する。つまり、車両本体2が圃場G1内を条に沿って走行しながら、作業装置1にて播種(点播)作業を行うことにより、前後方向D2に所定間隔、かつ左右方向D3に条間距離だけ離れた位置に種子を播くことが可能となる。ここで、車両本体2の後部に油圧シリンダ等を有する昇降装置を設け、昇降装置により3点リンク機構を昇降させることで、作業装置1の上下方向D1の位置を調節可能に構成されていてもよい。
【0022】
[2]作業装置の構成
次に、本実施形態に係る(牽引式)作業装置1の構成について
図2~
図8を参照して詳しく説明する。
【0023】
本実施形態に係る作業装置1は、装置本体3と、装置本体3及び車両本体2を連結する連結装置4と、を備えている。装置本体3は、上述したように車輪跡消し装置6と、播種ユニット5と、を有している。ここで、播種ユニット5は、播種作業を実行するためのユニットであるので、何らかの作業を実行する「作業ユニット」の一例である。また、播種作業は、散布物としての種子を散布する散布作業の一例であるので、播種ユニット5は、散布物(ここでは種子)の散布作業を行う「散布ユニット」の一例でもある。本実施形態では、装置本体3は、1つの車輪跡消し装置6と、複数(一例として5つ)の播種ユニット5(複数の作業ユニット)と、を有している。
【0024】
ところで、複数の播種ユニット5(複数の作業ユニット)は、左右方向D3に並べて配置されており、支持部7にて車輪跡消し装置6に連結されている。ここで、支持部7は複数の播種ユニット5に対応して複数(一例として5つ)設けられており、1つの播種ユニット5が1つの支持部7にて連結装置4に連結される。すなわち、装置本体3は、車輪跡消し装置6、及び作業ユニットとしての播種ユニット5に加えて、支持部7を有している。支持部7は、作業ユニット(播種ユニット5)を支持する。そして、詳しくは後述するが、支持部7は、作業ユニット(播種ユニット5)の対象面50(
図2参照)を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、対象面50を水平よりも下方に向けた第2姿勢と、の間で作業ユニット(播種ユニット5)を回転可能に支持する。
【0025】
[2.1]連結装置の構成
連結装置4は、作業車両10の車両本体2の後部に設けられた3点リンク機構(一対のロアリンク24及びアッパリンク25)に結合されることで、車両本体2の後方側に装置本体3を連結する。
図2及び
図3では、一対のロアリンク24及びアッパリンク25を想像線(二点鎖線)で示している。本実施形態では、連結装置4の構成要素は、基本的に金属製であって、必要な強度及び対候性等に応じて材質が選択される。ただし、連結装置4の構成要素は金属製に限らず、例えば、樹脂又は木材等が適宜用いられてもよい。
【0026】
連結装置4は、支持機構41を有する。支持機構41は、装置本体3の上下方向D1以外の移動を規制しつつ、外力に応じて装置本体3が上下方向D1に移動可能な状態で装置本体3を支持する。本実施形態では、支持機構41は装置本体3のうちの車輪跡消し装置6(整地体62)を支持することで、車輪跡消し装置6に連結された複数の播種ユニット5ごと車輪跡消し装置6を上下方向D1に移動とする。このようにして、連結装置4は外力に応じて装置本体3が上下方向D1に移動可能な状態で、装置本体3(車輪跡消し装置6及び複数の播種ユニット5)を支持する。
【0027】
支持機構41は、アーム部材42と、昇降部材43と、を有している。また、連結装置4は、付勢部44と、ガイド部材45と、を更に有している。
【0028】
アーム部材42は、車両本体2の後部に設けられた(一対の)ロアリンク24に第1支点421にて回転可能に連結される。支持機構41は、第1支点421を中心とするアーム部材42の回転に伴って装置本体3を上下方向D1に移動させる。具体的に、支持機構41は、左右一対のロアリンク24に対応するように、左右方向D3に離間した一対のアーム部材42を有している。各アーム部材42は、一方向に長さを有する長尺状の部材であって、その長手方向の一端部(ここでは前端部)に第1支点421を有している。さらに、各アーム部材42は、第1支点421とは反対側の端部(ここでは後端部)に第2支点422を有している。
【0029】
昇降部材43は、第2支点422にてアーム部材42と回転可能に連結される部材であって、アーム部材42の回転に伴って上下方向D1に移動する。ここで、昇降部材43は、車両本体2の後部に設けられたアッパリンク25に第4支点434にて回転可能に連結されている。これにより、昇降部材43の昇降時においても、水平面に対する昇降部材43の姿勢を維持したまま、昇降部材43は(平行)移動する。このような昇降部材43に装置本体3が結合されることにより、装置本体3においても、水平面に対する装置本体3の姿勢を維持したまま、上下方向D1に移動可能となる。
【0030】
すなわち、本実施形態では、支持機構41は、第1支点421を中心とするアーム部材42の回転に伴って昇降部材43が昇降することにより、昇降部材43に固定された装置本体3が昇降部材43と共に昇降する。このように、本実施形態では、昇降部材43は、アーム部材42における第1支点421とは反対側の端部に設けられた第2支点422にてアーム部材42と回転可能に連結される。支持機構41は、昇降部材43に装置本体3が固定されている。
【0031】
より詳細には、昇降部材43は、(一対の)土台部431と、(一対の)ばね押え部432と、上結合部433と、第1フレームF1と、第2フレームF2と、(一対の)第3フレームF3と、第4フレームF4と、を有している。これら昇降部材43の構成要素は、例えば、溶接、接着若しくはボルトナット等の締結具、又はこれらの組み合わせにより互いに固定(接合)されている。そのため、昇降部材43は、これらの構成要素が一体となって昇降する。
【0032】
一対の土台部431は、左右方向D3に一定の間隔を空けて配置されており、装置本体3のうちの車輪跡消し装置6(整地体62)に固定される。一対のばね押え部432は、一対の土台部431の上方に配置され、一対の土台部431に対して固定されている。第1フレームF1は、左右方向D3に長さを有する角筒状のフレームであって、一対のばね押え部432間を結合する。第2フレームF2は、上下方向D1に長さを有する角筒状のフレームであって、第1フレームF1の上面中央部から上方に突出するように第1フレームF1に固定されている。
【0033】
上結合部433は、第2フレームF2の上端部に固定されている。上結合部433は、第4支点434を有しており、車両本体2の後部に設けられたアッパリンク25に第4支点434にて回転可能に連結される。一対の第3フレームF3は、それぞれ上結合部433から左右方向D3の両側に向けて斜め下方に突出する円筒状のフレームである。ここでは、第3フレームF3は、側面視において下端側ほど後方に位置する傾斜部を含んでいる。各第3フレームF3の先端部(下端部)は、装置本体3のうちの車輪跡消し装置6(整地体62)に固定される。第4フレームF4は、左右方向D3に長さを有する角筒状のフレームであって、左右方向D3において車輪跡消し装置6(整地体62)の全長よりも長く形成されている。第4フレームF4は、一対の土台部431の上面側に固定され、かつ一対の第3フレームF3にも固定されている。
【0034】
ここで、支持機構41は、アーム部材42の第1支点421においてロアリンク24に、昇降部材43における上結合部433の第4支点434においてアッパリンク25に、それぞれ左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で連結されている。これにより、アーム部材42及び上結合部433は、それぞれロアリンク24及びアッパリンク25に対して、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されることになる。
【0035】
付勢部44は、装置本体3を上方に向けて付勢する。本実施形態では、連結装置4は、左右方向D3に一定の間隔を空けて配置された一対の付勢部44を有している。各付勢部44は、伸縮可能なコイルばね(コイルスプリング)であって、上下方向D1に伸縮可能な姿勢で配置されている。ここで、一対の付勢部44は、それぞれ一対のアーム部材42と一対のばね押え部432との間に配置されている。具体的に、各アーム部材42は、第2支点422において各ばね押え部432に対して、左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で連結されている。これにより、各アーム部材42は、各ばね押え部432に対して、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されることになる。そして、付勢部44は、アーム部材42の上面における第1支点421の上方位置と、ばね押え部432の下面との間に配置されている。
【0036】
これにより、付勢部44は、アーム部材42の第1支点421に対してばね押え部432を上方に付勢する向きの付勢力を、ばね押え部432に作用させることになる。そのため、付勢部44としてのコイルばねが圧縮されると、各アーム部材42と各ばね押え部432との間には、両者間の隙間を広げる向きの付勢力が作用する。ばね押え部432は昇降部材43の一部であるので、付勢部44からの付勢力は昇降部材43全体を上方に押し上げるように、昇降部材43に作用する。すなわち、本実施形態では、連結装置4は、アーム部材42の第1支点421に対して昇降部材43を上方に付勢することで、装置本体3を上方に向けて付勢する付勢部44を有している。これにより、装置本体3等の自重に抗して昇降部材43を上昇させる動作を、付勢部44からの付勢力にてアシストすることができる。
【0037】
ガイド部材45は、付勢部44(ここではコイルばね)による付勢力の方向を制御する部材である。具体的に、ガイド部材45は、一方向に長さを有し、付勢部44としてのコイルばねの内側に挿入される棒状の部材である。付勢部44は、ガイド部材45の長手方向に沿って伸縮する。ガイド部材45は、その基端部(下端部)が第3支点にてアーム部材42に回転可能に支持される。本実施形態では、第3支点は第1支点421と同軸(共通)であって、ガイド部材45は、第1支点421においてアーム部材42に対して、ロアリンク24と共に、左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で連結されている。これにより、ガイド部材45は、アーム部材42に対して、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されることになる。
【0038】
ガイド部材45の先端部(上端部)は、ばね押え部432を貫通している。そのため、アーム部材42がばね押え部432に対して相対的に回転すると、ガイド部材45は第3支点(第1支点421)を中心に回転し、アーム部材42に対するガイド部材45の傾斜角度が変化する。すなわち、本実施形態では、連結装置4は、第3支点にてアーム部材42に回転可能に連結され、第1支点421を中心とするアーム部材42の回転に伴って第3支点を中心に回転するガイド部材45を有する。付勢部44は、ガイド部材45に沿って付勢力を発生する。これにより、付勢部44としてのコイルばねの座屈を防止し、付勢部44の付勢力を効率的に昇降部材43に作用させることができる。
【0039】
[2.2]車輪跡消し装置の構成
車輪跡消し装置6は、複数の土寄せ体61と、整地体62と、を有している。複数の土寄せ体61は、車両本体2の走行(前進)時において車両本体2にて装置本体3が牽引されることにより、圃場G1の表層部の土を、左右方向D3において車両本体2の車輪(主として後輪23)の通過位置側に寄せるように構成されている。整地体62は、車両本体2の走行(前進)時において車両本体2にて装置本体3が牽引されることにより、複数の土寄せ体61で寄せた土を均すように構成されている。
【0040】
すなわち、車輪跡消し装置6は、車輪の通過位置側に複数の土寄せ体61にて土を寄せ、寄せた土を整地体62にて均すことにより、車両本体2の走行時に圃場G1の表層部に生じる車輪の跡を消す。ここで、土寄せ体61で寄せたり、整地体62で均したりされる「土」には、泥、砂又は粘土等を含む。また、車輪跡消し装置6は、車輪跡を完全に消す構成のみならず、車輪跡(つまり溝)に土をかけることにより車輪跡を目立たなくする構成も含む。
【0041】
本実施形態では、整地体62は、一枚の金属板にて構成されているが、この例に限らず、複数の部材を組み合わせて整地体62が構成されてもよい。例えば、前後方向D2又は左右方向D3において複数に分割された部材を組み合わせて、整地体62が構成されてもよい。
【0042】
整地体62は、前後方向D2及び左右方向D3の両方向に長さを有し、かつ平面視矩形状の金属製の板状体である。整地体62は、その上面側にて連結装置4の支持機構41と接合されている。具体的に、支持機構41における一対の土台部431及び一対の第3フレームF3が、整地体62の上面に接合されている。整地体62と支持機構41との接合は、例えば、溶接、接着若しくはボルトナット等の締結具、又はこれらの組み合わせにより実現される。
【0043】
整地体62は、左右方向D3において、作業車両10の全幅よりも長い全長(幅)を有している。整地体62は、後端側ほど下方に位置するように水平面に対して傾斜して後方に延びる傾斜部位621と、傾斜部位621の後端部から水平面に沿って後方に延びる水平部位622と、を含んでいる。整地体62は、傾斜部位621を含むことで、整地体62の前端部がより高い位置に位置することになり、整地体62よりも上方に土が移動するのを抑制しながら、傾斜部位621の傾斜に沿って土を後方に案内することができる。水平部位622は、傾斜部位621にて後方に案内された土を上方から押圧して、土を均すことができる。
【0044】
複数(ここでは12個)の土寄せ体61は、
図3、
図5及び
図6に示すように、整地体62の下面側(裏面側)に配置されており、それぞれ前方側から後方側に延びる金属製の板状体である。ここで、複数の土寄せ体61は、車両本体2の右側の後輪23に対応する右側車輪用の複数(ここでは6つ)の土寄せ体61と、左側の後輪23に対応する左側車輪用の複数(ここでは6つ)の土寄せ体61と、を含む。右側車輪用の複数の土寄せ体61と左側車輪用の複数の土寄せ体61とは、同様の構成であるので、以下では、特に断りが無い限り、左側車輪用の複数の土寄せ体61に着目して説明し、右側車輪用の複数の土寄せ体61についての説明は省略する。
【0045】
本実施形態では、左側車輪用の複数(ここでは6つ)の土寄せ体61は、左右一対(2つ)の土寄せ体61を一組の土寄せ体61として、3組の土寄せ体61を有している。つまり、本実施形態では、複数の土寄せ体61は、第1組の一対の土寄せ体61aと、第2組の一対の土寄せ体61bと、第3組の一対の土寄せ体61cと、を含んでいる。ここで、左右方向D3において(左側の)後輪23が通過する部分の中心位置を基準位置K1(
図5参照)と定義する。この場合、第1~3組の各組における左右一対の土寄せ体61は、基準位置K1を中心として左右方向D3に対称な位置及び姿勢(向き)で配置されている。そして、これら3組(計6つ)の土寄せ体61は、基準位置K1に近い側から、第1組の土寄せ体61a、第2組の土寄せ体61b、第3組の土寄せ体61cの順で並ぶように配置されている。
【0046】
また、これら3組(計6つ)の土寄せ体61は、左右方向D3において一定の間隔を空けて並ぶように配置されている。第1~3組の各組における左右一対の土寄せ体61は、後方側ほど互いに接近するように、車両本体2の進行方向(前後方向D2)に対して傾斜している。つまり、第1~3組の各組における左右一対の土寄せ体61は、左右方向D3における間隔が後方側ほど幅狭になる。第1~3組の各組における左右いずれかの土寄せ体61の後端部同士は、接触することなく、後端部同士の間の間隔が所定間隔(一例として後輪23の幅)以上確保されている。
【0047】
複数の土寄せ体61の各々は、
図6に示すように、前後方向D2において、整地体62の傾斜部位621と水平部位622とにわたって配置されている。各土寄せ体61は、その底部(下端部)に、後方側ほど下方に位置するように水平面に対して傾斜して後方側に延びる前方側部位611と、水平面に沿って後方に延びる後方側部位612と、を含んでいる。後方側部位612は、前後方向D2における長さが前方側部位611よりも長くなるように形成されている。ここで、前方側部位611の後端部が、前後方向D2で整地体62の傾斜部位621の後端部と同じ位置又は略同じ位置にある。そのため、各土寄せ体61の前方側部位611と整地体62の傾斜部位621とは上下方向D1に重複し、かつ、各土寄せ体61の後方側部位612と整地体62の水平部位622とが上下方向D1に重複する。
【0048】
3組(計6つ)の土寄せ体61の前端部は、前後方向D2において同じ位置にある。一方、3組(計6つ)の土寄せ体61は、前後方向D2における長さが互いに異なるように構成されている。第1~3組の各組における左右一対の土寄せ体61は、少なくとも後輪23が通過する部分に至るだけの前後方向D2における長さを有している。そのため、3組(計6つ)の土寄せ体61の前後方向D2における長さは、基準位置K1に近い第1組の土寄せ体61aで最も短く、第2組の土寄せ体61b、第3組の土寄せ体61cの順で長くなる。
【0049】
複数の土寄せ体61と整地体62との接合は、例えば、溶接、接着若しくはボルトナット等の締結具、又はこれらの組み合わせにより実現される。さらに、複数の土寄せ体61の各々は、その前端部を支点として、平面視において回転(揺動)可能に構成されていてもよい。これにより、車両本体2の進行方向(前後方向D2)に対する各土寄せ体61の傾斜角度が可変となる。この場合、3組の土寄せ体61同士の左右方向D3の間隔が一定に維持されるように、第1組の土寄せ体61a、第2組の土寄せ体61b及び第3組の土寄せ体61cが連動して回転することが好ましい。
【0050】
[2.3]支持部及び播種ユニットの構成
複数(ここでは5つ)の作業ユニットとしての播種ユニット5は、上述したように複数ここでは5つ)の支持部7にて支持されている。本実施形態では、播種ユニット5はそれぞれ支持部7にて、連結装置4の昇降部材43に連結されている。より詳細には、複数の支持部7は、昇降部材43の第4フレームF4に対して、複数の播種ユニット5(作用ユニット)を連結するようにして、複数の播種ユニット5を支持する。複数の播種ユニット5は、左右方向D3において間隔を空けて並ぶように配置されている。
【0051】
各支持部7は、取付部71と、支持バー72と、を有している。取付部71は、第4フレームF4に固定されており、揺動支点711を有している。取付部71と第4フレームF4との接合は、例えば、溶接、接着若しくはボルトナット等の締結具、又はこれらの組み合わせにより実現される。支持バー72は、前後方向D2に長さを有する円筒状の部材であって、その中間部が取付部71に連結され、その後端部に播種ユニット5が連結されている。すなわち、播種ユニット5は、支持部7としての支持バー72及び取付部71を介して、連結装置4(第4フレームF4)に連結される。
【0052】
ここで、支持バー72は、取付部71に対して揺動支点711にて回転可能に支持される。具体的に、支持バー72の中間部は、揺動支点711において左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で取付部71に連結されている。これにより、支持バー72は、第4フレームF4に対して、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されることになる。そして、支持バー72が揺動支点711を中心に後端部を上下動させるように回転(揺動)することで、支持バー72の後端部に連結されている播種ユニット5は上下方向D1に移動する。さらに、支持バー72の前端部は、取付部71に対して下方から接触することにより、支持バー72の後端部が下がる向きの回転範囲を制限し、結果的に、播種ユニット5の上下方向D1の移動範囲における下死点を設定する。
【0053】
本実施形態では特に、それぞれ播種ユニット5に連結されている複数の支持部7の支持バー72が個別に回転(揺動)可能である。そして、各支持部7の回転に伴って、各播種ユニット5が個別に上下方向D1に移動することになる。すなわち、装置本体3は、作業ユニット(播種ユニット5)及び支持部7を複数ずつ有する。複数の支持部7は、複数の作業ユニット(播種ユニット5)を個別に上下方向D1に移動可能な状態で支持する。言い換えれば、複数の作業ユニット(播種ユニット5)は、個別に上下方向D1に移動可能な状態で支持されている。
【0054】
このようにして、複数(ここでは5つ)の作業ユニットとしての播種ユニット5は、車輪跡消し装置6の後方に配置される。つまり、装置本体3は、平面視において、整地体62に対して車両本体2とは反対側(後方側)に配置される播種ユニット5を有する。複数の播種ユニット5は、同様の構成を採用しているので、以下では、特に断りが無い限り、1つの播種ユニット5に着目して説明し、他の播種ユニット5についての説明は省略する。
【0055】
播種ユニット5は、
図7及び
図8に示すように、フロート51と、駆動輪52と、ホッパ53と、繰出部54と、カバー55と、複数の開穴部56と、回転力伝達機構57と、を備えている。
【0056】
フロート51は、播種ユニット5が沈まないように播種ユニット5を支持する。フロート51は、前後方向D2に長さを有しており、播種ユニット5の下端部に配置されている。フロート51は、前方側部位511及び後方側部位512を有し、平面視において前後方向D2の前方側から、前方側部位511、後方側部位512の順に並ぶように配置される。前方側部位511は平面視において半円形状(
図5参照)に形成され、後方側部位512は左右方向D3において前方側部位511よりも幅狭な矩形状に形成されている。フロート51における後方側部位512が、支持バー72に対して、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されている。これにより、フロート51は、支持バー72の後端部に連結される。
【0057】
フロート51の前方側部位511は、側面視において、その前端部が上方に向けて反り返る形状に形成されている。さらに、フロート51の前方側部位511の第1引掛部513と、取付部71の第2引掛部712との間には、フロート51を上方に付勢するための弾性体(図示せず)が設けられる。これにより、フロート51は上方に付勢されており、フロート51の前方側部位511が圃場G1に埋まる等の不都合の発生を防止している。
【0058】
フロート51の下面側(裏面側)には、圃場G1に溝を形成する第1作溝器514が設けられている。第1作溝器514は、1つのフロート51に対して一対設けられており、これら一対の第1作溝器514は、後方側部位512の左右方向D3の両側に配置されている。各第1作溝器514は、金属板を下方に凸となる山折り形状に折り曲げ加工して形成されており、左右方向D3の中央側かつ前後方向D2の後方側ほど、フロート51の下面からの突出量が大きくなるように形成されている。各第1作溝器514は、車両本体2の走行時に、車両本体2の進行方向(前後方向D2)に沿って播種溝G11(
図9参照)を形成する。本実施形態では、1つの播種ユニット5に一対の第1作溝器514が設けられているため、左右方向D3に間隔を空けて2本の播種溝G11が形成される。
【0059】
また、フロート51の下面側(裏面側)には、圃場G1に溝を形成する第2作溝器515が設けられている。第2作溝器515は、フロート51の左右方向D3の中央部に配置されている。第2作溝器515は、金属板を下方に凸となる山折り形状に折り曲げ加工して形成されており、左右方向D3の中央側かつ前後方向D2の後方側ほど、フロート51の下面からの突出量が大きくなるように形成されている。第2作溝器515は、車両本体2の走行時に、車両本体2の進行方向(前後方向D2)に沿って排水溝G12(
図9参照)を形成する。
【0060】
ここで、
図7及び
図8に示すように、第2作溝器515は、前後方向D2においては一対の第1作溝器514の後方であって、かつ左右方向D3においては一対の第1作溝器514の間となる位置に配置されている。すなわち、播種ユニット5は、車両本体2の進行方向に沿って播種溝G11を形成する第1作溝器514と、播種溝G11の側方に車両本体2の進行方向に沿って排水溝G12を形成する第2作溝器515と、を含む。ここで、第2作溝器515のフロート51の下面からの高さH2(
図7参照)は、第1作溝器514のフロート51の下面からの高さH1(
図7参照)に比べて大きい(高い)。つまり、第2作溝器515は第1作溝器514に比べて、フロート51の下面からの突出量が大きく設定されている。そのため、排水溝G12は播種溝G11よりも深く形成されることになる。
【0061】
ホッパ53は、散布物を収容する容器の一例である。本実施形態では、作業装置1は、種子を散布物とする散布作業(つまり播種作業)を行うので、ホッパ53は種子を収容((貯留)する容器の一例である。そして、本実施形態では、容器であるホッパ53の一面が、播種ユニット5(作業ユニット)の対象面50を構成することとする。つまり、対象面50は、散布物(ここでは種子)を収容する容器(ここではホッパ53)の一面である。具体的には、播種ユニット5が第1姿勢にある状態でのホッパ53の上面が、対象面50であることとする。以下、特に断りが無い限り、播種ユニット5が第1姿勢にある状態を想定して説明する。
【0062】
ホッパ53は、平面視において矩形状となる形状を有しており、播種ユニット5の上端部に配置されている。ホッパ53は、ホッパ本体531と、蓋体532と、を有している。ホッパ本体531は、その上面を開口面とする一面開放された箱体である。蓋体532は、ホッパ本体531に対して開閉可能に構成されており、閉状態においてはホッパ本体531の開口面(上面)を覆い、開状態においてはホッパ本体531の開口面(上面)を開放する。そのため、蓋体532が開状態にあるときに、ホッパ本体531の上面からホッパ本体531内に散布物としての種子を補充することが可能である。
【0063】
繰出部54は、ホッパ53に貯留されている種子を順次繰り出して圃場G1に直播する。繰出部54は、ホッパ53の下方に配置され、ホッパ53と一体化されている。本実施形態では、繰出部54は、
図8に示すように、左側繰出部541と、右側繰出部542と、を含んでおり、左右方向D3に分岐した二股状に構成されている。左側繰出部541と右側繰出部542とは、カバー55の上面を貫通するようにしてカバー55に固定されている。
【0064】
ホッパ53の内部空間と繰出部54(左側繰出部541及び右側繰出部542)の内部空間とは連通(連続)しており、ホッパ53に貯留されている種子が自重等により繰出部54に供給可能となっている。ここで、繰出部54は、繰出ロール543と、排出部544と、を更に有している。繰出ロール543及び排出部544は、カバー55内に配置されている。本実施形態では、左側繰出部541及び右側繰出部542に対応するように、繰出ロール543及び排出部544は1つの播種ユニット5に一対ずつ設けられている。つまり、一対の繰出ロール543は、左右方向D3に間隔を空けて配置されており、それぞれ左側繰出部541及び右側繰出部542の下方に位置する。一対の排出部544は、左右方向D3に間隔を空けて配置されており、それぞれ左側繰出部541及び右側繰出部542の下方に位置する。
【0065】
各繰出ロール543は、ホッパ53から左側繰出部541又は右側繰出部542を通して供給される種子を、所定のタイミングにて繰り出す排出部544から排出する。各繰出ロール543は、左右方向D3に沿った軸を有する円柱状に形成されており、その周面には周方向に一定の間隔で複数の凹部を有している。これにより、各繰出ロール543は、上方側に位置する凹部内に種子を取り込み、下方側に位置する凹部から排出部544に種子を排出する。さらに、カバー55には、左右方向D3に延びる従動軸545が回転可能に保持されており、一対の繰出ロール543は、従動軸545と共に回転可能な状態でカバー55に保持されている。そのため、各繰出ロール543が従動軸545を中心に回転することで、ホッパ53内の種子が適量ずつ排出部544から排出されることになる。排出部544は、下方に向けて開放されており、排出部544から排出される種子は、圃場G1に直播される。
【0066】
作業装置1は、駆動輪52を回転駆動するための回転駆動部(動力源)を備えておらず、駆動輪52は、車両本体2の走行に伴って圃場G1上を転がるようにして回転する。つまり、本実施形態では、作業ユニット(播種ユニット5)は、車両本体2の走行に伴って転動する駆動輪52を含む。本実施形態では、駆動輪52は、円形状の外枠部位521と、円環状の内枠部位522と、を有している。外枠部位521及び内枠部位522は、左右方向D3において間隔を空けて配置されており、互いに連結されている。駆動輪52は、左右方向D3に延びる駆動軸523を更に有しており、駆動軸523を中心に回転可能に構成されている。駆動軸523は、従動軸545と同様に、カバー55に対して回転可能に保持されている。
【0067】
本実施形態では、左側繰出部541及び右側繰出部542に対応するように、駆動輪52についても1つの播種ユニット5に一対設けられている。一対の駆動輪52は、左右方向D3に間隔を空けて配置されており、それぞれ左側繰出部541及び右側繰出部542の下端部に対応する位置に配置されている。一対の排出部544は、それぞれ左右方向D3において駆動輪52の幅内に収めるように配置されている。左側繰出部541に対応する駆動輪52を第1駆動輪52A(
図8参照)とし、右側繰出部542に対応する駆動輪52を第2駆動輪52B(
図8参照)とする。
【0068】
ここで、各駆動輪52の外周には、周方向に所定の間隔を空けて複数の開穴部56が設けられている。複数の開穴部56は、側面視において、駆動軸523から放射状に延びる部材である。各開穴部56は、駆動輪52の外周から外方(駆動軸523とは反対側)に突出しており、開穴部56は、駆動輪52の回転に伴って圃場G1の土を後方側へ掬い上げて圃場G1に播種穴G13(
図9参照)を形成するように構成されている。ここで、開穴部56は、
図8に示すように、左右方向D3において第1作溝器514と同位置に配置されており、播種溝G11内に播種穴G13を形成する。すなわち、播種ユニット5は、車両本体2の走行に伴って転動する駆動輪52と、駆動輪52の外周に設けられており播種溝G11内の土を掬って播種溝G11内に播種穴G13を形成する複数の開穴部56と、を含む。
【0069】
ここで、本実施形態では、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとは、同一(単一)の駆動軸523にて一体に連結されている。そのため、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとは、駆動軸523周りの回転角度差を維持したまま、互いに同期して回転する。そして、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとの各々に、複数の開穴部56が設けられているところ、これら複数の開穴部56は、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとで周方向に位相差を有している。
【0070】
具体的に、本実施形態では、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとの各々には、開穴部56が4つずつ設けられている。各駆動輪52における4つの開穴部56は、駆動輪52を中心として、90度の間隔を空けて配置されている。一方、第1駆動輪52Aに設けた開穴部56と、第2駆動輪52Bに設けた開穴部56とは、駆動輪52を中心として、45度の間隔を空けて配置されている。このように、第1駆動輪52Aと第2駆動輪52Bとでは、回転方向において開穴部56が配置される位置(位相)が異なるように設定されている。
【0071】
また、開穴部56には、掬った土の一部を落下させる開口561が形成されている。本実施形態では一例として、開口561は、開穴部56の先端側(駆動軸523とは反対側)に向けて開放された切欠形状に形成されている。このような開口561が設けられることにより、開穴部56で掬われる土の量を適切に調節することが可能である。
【0072】
また、作業装置1は、繰出ロール543を回転駆動するための回転駆動部(動力源)を備えておらず、駆動輪52の回転力を繰出ロール543に伝達することで、繰出ロール543を回転させるように構成されている。そのため、播種ユニット5は、
図8に示すように、駆動輪52の回転力を繰出ロール543に伝達する回転力伝達機構57を有している。具体的に、回転力伝達機構57は、駆動軸523と一体に回転するギヤ、及び従動軸545と一体に回転するギヤを有している。これより、駆動輪52が回転すると、回転力伝達機構57が駆動軸523の回転力を従動軸545に伝達し、一対の繰出ロール543を回転させる。
【0073】
ここで、各繰出ロール543は、その回転速度(回転数)に応じて種子を排出部544から排出するタイミングが決まる。本実施形態では、一対の繰出ロール543は、同一(単一)の従動軸545にてつながっているので、一体となって回転することになる。
【0074】
カバー55は、平面視において左右方向D3に長さを有し、かつ下面が開放された中空直方体状に形成されている。ここで、カバー55は、上述したように、繰出部54(左側繰出部541、右側繰出部542及び排出部544)、並びにホッパ53を保持している。さらに、カバー55は、駆動輪52の駆動軸523、及び繰出部54の従動軸545を回転可能に保持している。要するに、本実施形態ではフロート51を除く播種ユニット5の構成要素は全て、カバー55に保持されている。
【0075】
ここで、カバー55は、支持部7の支持バー72に対して開閉支点551(
図7参照)にて回転可能に支持される。具体的に、カバー55は、その後端部に開閉支点551を有し、その前端部にロック部552(
図7参照)を有している。支持バー72の下面側においては、
図7に示すように、支持バー72の後端位置には後側ステー721が配置され、支持バー72の後側ステー721よりも前方位置には前側ステー722が配置されている。後側ステー721及び前側ステー722は、それぞれ背面視において、下方に開放された矩形状に形成されており、支持バー72に対して固定されている(
図8参照)。そして、カバー55は、開閉支点551において左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で後側ステー721に連結され、かつロック部552において左右方向D3に長さを有するピン等の軸部材で前側ステー722に連結される。そのため、開閉支点551及びロック部552がそれぞれ後側ステー721及び前側ステー722に連結された状態では、カバー55は後側ステー721及び前側ステー722との間に支持バー72を挟むようにして、支持バー72に対して固定される。一方、ロック部552での前側ステー722との連結が解除された状態では、カバー55は、支持バー72に対して、開閉支点551を通り左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に連結されることになる。
図8には、開閉支点551にてカバー55を支持バー72(後側ステー721)に連結する軸部材553を想像線(二点鎖線)で示している。
【0076】
このように、ロック部552がフリーとなる「ロック解除状態」では、カバー55は、その後端部に設けられた開閉支点551を支点として回転可能となるように、支持部7(支持バー72)にて支持されることになる。そして、カバー55が回転することにより、カバー55に保持されている(フロート51を除く)播種ユニット5の構成要素についても、開閉支点551を支点として回転することになる。要するに、支持部7は、播種ユニット5の対象面50(ここではホッパ53の上面)を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、対象面50を水平よりも下方に向けた第2姿勢(
図12及び
図13参照)と、の間で播種ユニット5を回転可能に支持する。一方、ロック部552が支持バー72(前側ステー722)に固定された「ロック状態」では、カバー55の回転が規制され、播種ユニット5は、対象面50を水平よりも上方に向けた第1姿勢に維持される。播種ユニット5にて播種作業を実行する際には、「ロック状態」とすることで、播種ユニット5は第1姿勢を維持する。
【0077】
[3]作業装置の動作
次に、本実施形態に係る作業装置1の動作について、
図9~
図13を参照して説明する。以下ではまず、作業(ここでは播種作業)を実行する際の作業装置1の動作について説明し、その後、播種ユニット5を第2姿勢にする「ホッパオープン動作」について説明する。
【0078】
[3.1]作業時動作
作業車両10の車両本体2の後方側には、連結装置4にて装置本体3が連結されており、車両本体2の走行時には、作業装置1の装置本体3が車両本体2に牽引される。このとき、装置本体3は、少なくとも各播種ユニット5のフロート51及び駆動輪52、並びに車輪跡消し装置6を圃場G1に接地させる姿勢で牽引される(
図1参照)。フロート51の下面側には、一対の第1作溝器514と第2作溝器515とが配置されている。そのため、車両本体2が前進することで、圃場G1には、
図9に示すように、一対の第1作溝器514により車両本体2の進行方向(
図9の縦方向)に沿って一対の播種溝G11が形成され、かつ、第2作溝器515により車両本体2の進行方向(
図9の縦方向)に沿って排水溝G12が形成される。さらに、駆動輪52の外周には複数の開穴部56が設けられているため、車両本体2が前進することで、圃場G1には、複数の開穴部56により車両本体2の進行方向に沿って複数の播種穴G13が形成される。
【0079】
ここで、本実施形態では、左右方向D3において、第1作溝器514、駆動輪52の開穴部56、繰出部54の排出部544が同じ又は略同じ位置に配置されている。これにより、車両本体2が前進走行する際に、左右方向D3において、第1作溝器514にて形成される播種溝G11及び開穴部56にて形成される播種穴G13は、同じ又は略同じ位置に形成される。そして、排出部544から排出される種子についても、左右方向D3において、播種溝G11及び開穴部56と同じ又は略同じ位置に排出(直播)される。
【0080】
より詳細には、圃場G1に対して作用する位置が前方側から、第1作溝器514、駆動輪52の開穴部56、繰出部54の排出部544の順に配置されている。よって、第1作溝器514にて圃場G1に播種溝G11が形成され、その播種溝G11内に、開穴部56にて播種穴G13が形成され、繰出ロール543により排出部544から種子が直播されることになる。さらに、開穴部56は、圃場G1の土を後方側に掬い上げることで、圃場G1に播種穴G13を形成しつつ、播種穴G13の後方に掬い上げた土を堆積させて土手部G14を形成する。これにより、播種溝G11内には、播種溝G11の長手方向に沿って播種穴G13と土手部G14とが交互に形成されることになる。
【0081】
そして、播種溝G11内には繰出ロール543により排出部544から所定のタイミングで種子が排出されることで、播種溝G11内の播種穴G13又は土手部G14に種子を直播することが可能となる。ここで、播種溝G11の長手方向における種子を直播する位置については、繰出ロール543の回転タイミング等を調節することで、適宜調節可能である。このように、間欠的に土手部G14が形成された播種溝G11内に種子が直播されることにより、圃場G1(水田)表面の水によって種子が流されそうになっても、種子が土手部G14に乗り上げるようにして、種子を播種溝G11内における所定の直播位置にとどめやすくなる。
【0082】
ここで、本実施形態では、作業ユニット(播種ユニット5)は、駆動輪52の転動に伴って回転する一対の繰出ロール543と、一対の繰出ロール543の回転に同期するタイミングでそれぞれ排出物(種子)を排出する一対の排出部544と、を含む。一対の繰出ロール543は互いに同期して回転する。これにより、一対の排出部544からは、互いに同期したタイミングで、排出物としての種子が排出されることになる。これにより、一対の排出部544からは、バランスよく種子が排出されることになり、直播される種子の量及び間隔を適切に調節しやすくなる。
【0083】
また、第2作溝器515は、左右方向D3において、一対の第1作溝器514の間に配置されている。特に、本実施形態では、第2作溝器515の左右方向D3の両端部は、前後方向D2において一対の第1作溝器514と重複するように配置されている。そのため、
図9に示すように、一対の播種溝G11の間には、排水溝G12が隙間なく形成されることになる。これにより、排水溝G12は、一対の播種溝G11内の水を排水溝G12の長手方向に沿って排水可能となる。結果的に、圃場G1(水田)表面の水によって種子が流されることを防止しやすくなる。
【0084】
また、本実施形態では、作業ユニット(播種ユニット5)は、駆動輪52として同一の駆動軸523にて連結された第1駆動輪52A及び第2駆動輪52Bを含む。第1駆動輪52A及び第2駆動輪52Bの各々の外周には、周方向における互いに異なる位置に複数の開穴部56が設けられている。したがって、各駆動輪52に設けられる開穴部56の数を少なく抑えつつ、第1駆動輪52A及び第2駆動輪52Bの両方においては、周方向に小刻みに開穴部56が配置されることになる。したがって、排出部544から排出される種子が開穴部56に付着する確率を低減しつつも、駆動輪52を確実に駆動することが可能となる。
【0085】
また、開穴部56には、掬った土の一部を落下させる開口561が形成されているため、開穴部56で掬われる土の量を適切に調節することが可能である。すなわち、開穴部56で掬われる土の量が多過ぎると、開穴部56によって掬われた土によって、播種穴G13の後方に形成される土手部G14が高くなり過ぎることがあるところ、開口561によって開穴部56で掬われる土の量を減らし、土手部G14の高さを適切に調節できる。さらに、開口561があることで、排出部544から排出され部種子が開穴部56に付着する確率を低減することが可能である。
【0086】
続いて、播種ユニット5の前方に配置されている車輪跡消し装置6の動作について説明する。車両本体2が前進走行する場合に、車両本体2に牽引された車輪跡消し装置6は、複数の土寄せ体61の各々にて、後輪23が通過する部分の中央部である基準位置K1側に土を寄せる。このとき、左右方向D3で基準位置K1に最も近い第1組の土寄せ体61aでは、土を砕く度合いが荒いものの、砕いた土を基準位置K1側に寄せることができる。左右方向D3で基準位置K1に2番目に近い第2組の土寄せ体61bでは、土を砕く度合いを細かくしながら基準位置K1側に土を寄せることができる。さらに、左右方向D3で基準位置K1から最も遠い第3組の土寄せ体61cでは、土を砕く度合いを更に細かくしながら基準位置K1側に土を寄せることができる。このように、複数組の土寄せ体61a~61cにて土を砕く度合いを徐々に細かくしながら、基準位置K1側に土を寄せることができる。
【0087】
また、本実施形態では、複数組の土寄せ体61a~61cのうち、後輪23が通過する部分の中央部である基準位置K1に近い位置にある土寄せ体61ほど、前後方向D2における長さが短くなる。これにより、複数の土寄せ体61の各々にて、砕いた土を基準位置K1側に集める状態で適切に寄せることができる。よって、例えば、圃場G1の土が硬い場合でも、その土を複数の土寄せ体61にて十分に砕いた状態で基準位置K1側への土寄せを行うことができる。しかも、複数の土寄せ体61にて土を寄せることから、寄せる土の量としても十分な量を確保することができる。
【0088】
さらに、車輪跡消し装置6は、複数の土寄せ体61だけでなく、整地体62を備えているので、複数の土寄せ体61にて基準位置K1側に寄せた土を、整地体62にて均すことができ、車輪跡を適切に消す(又は目立たなくする)ことができる。しかも、整地体62は、その前方側に傾斜部位621を有するので、整地体62よりも上方側に土が移動するのを抑制して十分な量の土を整地体62の下方側に移動させることができる。これにより、整地体62では、傾斜部位621にて整地体62の下方側に移動させた土を水平部位622にて適切に均すことができ、車輪跡を適切に消す(又は目立たなくする)ことができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る作業装置1においては、装置本体3は、車輪跡消し装置6として、複数の土寄せ体61と、整地体62と、を有している。複数の土寄せ体61は、車両本体2の車輪(主に後輪23)の通過位置に土を寄せる。整地体62は、複数の土寄せ体61にて寄せた土を均す。これにより、作業装置1では、播種ユニット5により播種作業が行われるより前に、車両本体2の車輪(特に後輪23)が通過することで圃場G1に生じる車輪跡(凹凸)を消す(又は目立たなくする)ことで、播種作業に適した状態の圃場G1を準備できる。
【0090】
ところで、本実施形態に係る作業装置1においては、上述したように、装置本体3を車両本体2に連結する連結装置4は、支持機構41を有している。支持機構41は、装置本体3の上下方向D1以外の移動を規制しつつ、外力に応じて装置本体3が上下方向D1に移動可能な状態で装置本体3を支持する。すなわち、
図10及び
図11に示すように、車輪跡消し装置6(複数の土寄せ体61及び整地体62)を含む装置本体3の全体を、外力に応じて上下方向D1に移動させることができる。
【0091】
例えば、装置本体3が、圃場G1の一部に発生した凹み又はぬかるみ等を通過する際には、装置本体3に作用する重力(装置本体3の自重)により、
図10に示すように、装置本体3の可動範囲における上死点から下死点までの範囲で、上下方向D1の下方に装置本体3が移動する。つまり、アーム部材42が第1支点421を中心に、(
図10中の時計回りに)回転することにより、装置本体3全体が、第1支点421に対して相対的に下方に沈み込むように変位(下降)する。
図10の下段の「下死点」では、装置本体3が下降する前の作業装置1を想像線(二点鎖線)で示している。
【0092】
装置本体3が下降する際には、付勢部44としてのコイルばねは圧縮されることになる。これにより、装置本体3が下降する衝撃が付勢部44によって吸収され、装置本体3及び連結装置4に加わる衝撃を緩和することが可能であって、装置本体3の過度の沈み込みを防止できる。さらに、付勢部44としてのコイルばねの圧縮時には、ガイド部材45は第3支点(第1支点421)を中心にして相対的に(
図10中の時計回りに)回転する。これにより、付勢部44としてのコイルばねの座屈を防止し、付勢部44の付勢力を効率的に昇降部材43に作用させることができる。
【0093】
反対に、例えば、圃場G1の一部に発生した凹み又はぬかるみ等から装置本体3が脱出する際には、装置本体3に圃場G1から作用する反力(垂直抗力及び浮力等)により、
図11に示すように、装置本体3の可動範囲における下死点から上死点までの範囲で、上下方向D1の上方に装置本体3が移動する。つまり、アーム部材42が第1支点421を中心に、(
図11中の反時計回りに)回転することにより、装置本体3全体が、第1支点421に対して相対的に上方に持ち上がるように変位(上昇)する。
図11の下段の「上死点」では、装置本体3が上昇する前の作業装置1を想像線(二点鎖線)で示している。
【0094】
装置本体3が上昇する際には、付勢部44としてのコイルばねは伸長することになる。これにより、装置本体3を上昇させる力を付勢部44によってアシストでき、装置本体3をスムーズに持ち上げることが可能であって、装置本体3の過度の沈み込みを防止できる。ここで、装置本体3が圃場G1に対して適切な接地状態となるように、付勢部44からの付勢力が調節されることが好ましい。さらに、付勢部44としてのコイルばねの伸長時には、ガイド部材45は第3支点(第1支点421)を中心にして相対的に(
図11中の反時計回りに)回転する。これにより、付勢部44としてのコイルばねの座屈を防止し、付勢部44の付勢力を効率的に昇降部材43に作用させることができる。
【0095】
結果的に、例えば、圃場G1に凹凸が存在する場合であっても、作業中において、装置本体3が圃場G1を追従するように上下方向D1に適宜移動することで、圃場G1に対する装置本体3の接地状態を適切に維持することが可能となる。したがって、本実施形態に係る作業装置1では、作業の実行中において、圃場G1に対する装置本体3の沈下又は浮きが生じにくくなり、装置本体3による作業(例えば車輪跡消し作業)の信頼性及び効率の低下を抑制しやすい。本実施形態では、装置本体3が車輪跡消し装置6及び複数の播種ユニット5を含むので、車輪跡消し作業だけでなく、播種作業についても信頼性及び効率の低下を抑制しやすい。
【0096】
さらに、本実施形態では、上述したように、それぞれ播種ユニット5に連結されている複数の支持部7の支持バー72が個別に回転(揺動)可能である。そのため、各支持部7の回転に伴って、各播種ユニット5が個別に上下方向D1に移動する。これにより、圃場G1の表面に凹凸が存在する場合でも、各播種ユニット5の上下方向D1の位置が個別に調節され、各播種ユニット5の過度の沈下又は浮きを抑制できる。結果的に、複数の播種ユニット5にて均等に播種作業を行いやすくなる。しかも、装置本体3における複数の作業ユニット(播種ユニット5)が個別に上下方向D1に移動することで、上述したような装置本体3全体の昇降動作がよりスムーズになる。
【0097】
さらに、本実施形態では、装置本体3の上昇に伴って、平面視における第1支点421に対する第4支点434の相対位置が車両本体2側に変位する。すなわち、連結装置4は、ロアリンク24に連結される第1支点421と、アッパリンク25に連結される第4支点434と、を有している。ここで、前後方向D2における第1支点421と第4支点434との相対位置は、装置本体3の上下方向D1への移動に伴って変化する。具体的に、
図11に示すように、装置本体3が上方に持ち上がるように変位(上昇)するに際しては、第4支点434は、前斜め上方に移動することで、第1支点421に対して相対的に車両本体2側(つまり前方)に移動する。これにより、アーム部材42の長さ分だけロアリンク24の合計長さが長くなっても、アッパリンク25の長さが不足しにくくなる。
【0098】
[3.2]ホッパオープン動作
上述したように、播種ユニット5(作業ユニット)は、対象面50を水平よりも上方に向けた第1姿勢と、対象面50を水平よりも下方に向けた第2姿勢と、の間で回転可能に支持部7にて支持される。すなわち、カバー55のロック部552のロック(前側ステー722との連結)を解除して「ロック解除状態」とした上で、開閉支点551を支点としてカバー55を回転させることにより、
図12及び
図13に示すように、播種ユニット5の姿勢は第1姿勢から第2姿勢へ切り替わる。第1姿勢は、作業(ここでは播種作業)時に採用される作業用の姿勢であって、第2姿勢は、非作業時(作業装置1のメンテナンス時等を含む)に採用される非作業用の姿勢である。
【0099】
このように、本実施形態に係る作業装置1では、作業ユニット(播種ユニット5)の姿勢が第1姿勢と第2姿勢との間で切替可能である。そのため、例えば、非作業時においては、作業ユニットの姿勢を作業時の姿勢から適切に切り替えることにより、装置本体3のメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0100】
図12及び
図13では、複数の播種ユニット5のうちの1つ(ここでは左端)の播種ユニット5のみを第2姿勢とした状態を示し、
図13では、第1姿勢にある当該播種ユニット5を想像線(二点鎖線)で示す。すなわち、本実施形態では、播種ユニット5ごとに支持部7が設けられており、複数の播種ユニット5は個別に姿勢を切り替えることが可能である。このように、装置本体3は、作業ユニット(播種ユニット5)を複数有する。これら複数の作業ユニット(播種ユニット5)は、個別に第1姿勢と第2姿勢との間で回転可能な状態で支持部7に支持される。したがって、複数の作業ユニットのうち任意の作業ユニットについてのみメンテナンスを行う場合には、当該作業ユニットのみ姿勢を切り替えることで、不要な作業ユニットの姿勢の切り替えを行う必要がなく、装置本体3のメンテナンス性の向上につながる。
【0101】
また、本実施形態では、作業ユニットは、散布物(ここでは種子)の散布作業(播種作業)を行う散布ユニット(播種ユニット5)を含んでおり、対象面50は、散布物を収容する容器の一面(ここではホッパ53の上面)である。そのため、例えば、播種作業を終えて、ホッパ53内に残った種子をホッパ本体531の開口面(上面)から排出する際において、播種ユニット5を第2姿勢とすることで、ホッパ本体531の開口面から種子をまとめて排出可能となる。つまり、
図12及び
図13に示すように、ホッパ53の上面(対象面50)を下方に向けた第2姿勢とすることで、ホッパ53内の種子をまとめて排出することができ、作業ユニットのメンテナンス性が向上する。
【0102】
また、本実施形態では、
図12に示すように、作業ユニット(播種ユニット5)が第2姿勢にあれば、一対の繰出ロール543は上方に露出する。これにより、播種ユニット5を第2姿勢にすることで、一対の繰出ロール543に付着した種子の除去等のメンテナンスを容易に行うことが可能となる。さらに、一対の繰出ロール543の各々は、その周面に形成された複数の凹部のサイズ(左右方向D3の寸法)を手動で調節可能に構成されている。具体的には、各繰出ロール543に設けられた回転操作部を、従動軸545を中心に手動で回転させることで、「ねじ機構」によって複数の凹部のサイズを変更することが可能である。各繰出ロール543は、凹部のサイズによって1回転で繰り出す種子の量が変わるため、凹部のサイズを調節することで、各繰出ロール543の1回転で排出される種子の量を調節することが可能となる。
【0103】
[4]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0104】
装置本体3及び連結装置4の各部の形状及び寸法等は、実施形態1で説明した態様に限らない。また、実施形態1では、作業装置1は、それぞれ駆動輪52及び排出部544を一対ずつ有する播種ユニット5を5つ有する「10条用」である場合を例示したが、この構成に限らない。例えば、それぞれ駆動輪52及び排出部544を一対ずつ有する播種ユニット5を1つ有する「2条用」、2つ有する「4条用」、3つ有する「6条用」、4つ有する「8条用」、6つ有する「12条用」等であってもよい。さらに、各播種ユニット5は、駆動輪52及び排出部544を1つずつ、又は3つずつ以上有していてもよい。
【0105】
また、作業ユニットは、播種ユニット5に限らず、肥料又は薬液等の散布物を散布する散布ユニットを含んでもよい。あるいは、作業ユニットは、散布ユニット以外の作業ユニットを含んでもよい。
【0106】
また、実施形態1では、車両本体2の後方側に、車輪跡消し装置6だけでなく、播種ユニット5も連結させた例を示したが、車輪跡消し装置6のみを連結して使用することもできる。また、車輪跡消し装置6は、整地体62を有さず、複数の土寄せ体61のみを有していてもよい。
【0107】
実施形態1では、複数の播種ユニット5が個別に上下方向D1に移動可能に構成されているが、この構成は作業装置1に必須の構成ではない。つまり、複数の播種ユニット5は、例えば、連結装置4又は車輪跡消し装置6に直接的に固定されてもよい。
【0108】
また、実施形態1では、支持バー72は、支持部7を構成する取付部71とセットで取り扱われているが、これに限らず、支持バー72と取付部71とは別々に取り扱われてもよい。例えば、支持バー72(後側ステー721及び前側ステー722を含む)が、播種ユニット5(作業ユニット)に付随する部品として提供され、取付部71と組み合わされることによって、支持部7を構成してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 牽引式作業装置
2 車両本体
3 装置本体
5 播種ユニット(作業ユニット、散布ユニット)
7 支持部
10 作業車両
50 対象面
52 駆動輪
52A 第1駆動輪
52B 第2駆動輪
53 ホッパ(容器)
543 繰出ロール
544 排出部
56 開穴部
D1 上下方向