IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

特開2023-142406皮膚貼付用粘着剤組成物、その硬化物および皮膚貼付用粘着テープ
<>
  • 特開-皮膚貼付用粘着剤組成物、その硬化物および皮膚貼付用粘着テープ 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142406
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】皮膚貼付用粘着剤組成物、その硬化物および皮膚貼付用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20230928BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230928BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J7/38
C09J7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049315
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA14
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA09
4J040EF131
4J040EF282
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040LA01
4J040MA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長時間の貼付においても優れた低角質剥離性、基材密着性および皮膚接着性を有し、かつ耐水性とはみ出し加工性が付与された皮膚貼付用粘着剤および皮膚貼付用粘着テープを提供する。
【解決手段】ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)との反応物であるウレタンポリオール(C)と、ポリイソシアネート(B2)とを含み、ポリオール(A)が3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)を含み、ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド鎖由来の構造の含有率が30質量%以下であり、ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む皮膚貼付用粘着剤組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)との反応物であるウレタンポリオール(C)と、ポリイソシアネート(B2)とを含み、
ポリオール(A)が3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)を含み、
ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド鎖由来の構造の含有率が30質量%以下であり、
ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項2】
3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)が、エチレンオキシド鎖またはプロピレンオキシド鎖のいずれか由来の構造を含み、かつ数平均分子量が1,500~20,000であることを特徴とする、請求項1記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート(B2)が含有する全イソシアネート基と、ウレタンポリオール(C)が含有する全水酸基とのモル当量比[NCO/OH]が、0.25~0.95であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項4】
ウレタンポリオール(C)とポリイソシアネート(B2)の合計100質量%中、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群の少なくとも1か¥20131由来の構造を1~15質量%含む、請求項1~3いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
ゲル分率が20~60%であることを特徴とする請求項5記載の硬化物。
【請求項7】
23℃、相対湿度50%環境下におけるプローブタックが0.5~4.0N/cmである、請求項5または6記載の硬化物。
【請求項8】
支持体上に、請求項5~7のいずれか1項に記載の硬化物からなる粘着層を備えた皮膚貼付用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚貼付用粘着剤組成物、前記皮膚貼付用粘着剤組成物を硬化させてなる硬化物、および支持体上に前記硬化物からなる粘着層を備えた皮膚貼付用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤および粘着テープは自動車内装材固定用などの工業分野、偏光板固定用などの光学分野等、幅広い分野に粘着剤は使用されている。その中で皮膚貼付用粘着テープは絆創膏、サージカルテープ等の医療分野、アイメイク用やかつらずれ防止用等といった化粧品分野など広く使用されている。
【0003】
皮膚貼付用粘着テープは、用途によっては一週間以上の長期間貼付する場合もある。その場合、経時で粘着剤が皮脂や汗等を吸収し、基材との密着性が低下し、剥離時に皮膚面に糊残りが発生する場合があった。
特許文献1には、ガラス温度が0度以下のポリウレタン重合体を含む粘着剤であって、その重量の少なくとも20%の平衡における水分吸収を示し、かつ巾1cmあたり約0.3~4Nの皮膚粘着力であることを特徴とする皮膚粘着剤が開示されている。この皮膚粘着剤を使用することで、優れた透湿性が付与された皮膚貼付材ができる。
特許文献2には、特定の単量体混合物から得られるアクリル系共重合体と、室温で液状またはぺースト状のカルボン酸エステルとを含有する粘着剤組成物であって、アクリル系共重合体の一部が不溶化していることを特徴とする皮膚貼付用粘着剤組成物が開示されている。この皮膚貼付用粘着剤組成物を使用することで、優れた皮膚接着性が発現できる。
特許文献3には、数平均分子量が5000以上かつ平均官能基数が2以上のポリエーテルポリオールと、数平均分子量が1,500~5,000かつ平均官能基数が1のポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させてなるポリウレタン系粘着剤を含む皮膚貼付材であって、ポリオール成分中のエチレンオキシド鎖の含有量が3~8%であることを特徴とする皮膚貼付材が開示されている。この皮膚貼付材を使用することで優れた粘着特性と透湿性が付与された皮膚貼付材ができる。
特許文献4には、平均分子量が12,000以上かつ平均官能基数が3のポリエーテルポリオールと、平均分子量が1,000以上かつ平均官能基数が2のポリエーテルポリオールと、平均官能基数が2のポリイソシアネートと、を反応させてなる粘着剤であり、全ポリオールを100重量%としたときに、成分平均官能基数が3のポリオールが40~90%重量%であることを特徴とする無溶剤型のポリウレタン粘着剤が開示されている。このポリウレタン系粘着剤を用いることで、優れた粘着特性と透湿性が付与することができる。
しかし、特許文献1の皮膚貼付用粘着剤は高親水性であり、汗やシャワーによって剥がれが発生し、耐水性に問題がある。特許文献2~4の粘着剤は物理的に皮膚へ接着するための高いタック性のため、凝集力が低くロール状態での保管時に糊のはみ出しが発生する。さらに、これらの粘着剤は角質剥離を抑えるために粘着力が低く、基材との密着性が不十分で、剥離時の糊残りの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-310066号公報
【特許文献2】特開2002-65841号公報
【特許文献3】国際公開第2010/137699号
【特許文献4】国際公開第2014/148582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた低角質剥離性と基材密着性、および皮膚接着性を有し、かつ耐水性とはみ出し加工性が付与された皮膚貼付用粘着テープを得るための皮膚貼付用粘着剤組成物、その硬化物および皮膚貼付用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)との反応物であるウレタンポリオール(C)と、ポリイソシアネート(B2)とを含み、ポリオール(A)が3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)を含み、ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド鎖由来の構造が30質量%以下であり、ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、皮膚貼付用粘着剤組成物に関する。
【0007】
又、本発明は、ポリエーテルポリオール(A1)が、エチレンオキシド鎖またはプロピレンオキシド鎖のいずれかの構造を含み、かつ数平均分子量が1,500~20,000であることを特徴とする、前記皮膚貼付用粘着剤組成物に関する。
【0008】
又、本発明は、ポリイソシアネート(B2)が含有する全イソシアネート基と、ウレタンポリオール(C)が含有する全水酸基とのモル当量比[NCO/OH]が、0.25~0.95であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚貼付用粘着剤組成物に関する。
【0009】
又、本発明は、ウレタンポリオール(C)とポリイソシアネート(B2)の合計100質量%中、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群の少なくとも1つに由来の構造を1~15質量%有する、前記皮膚貼付用粘着剤組成物に関する。
【0010】
又、本発明は、前記皮膚貼付用粘着剤組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【0011】
又、本発明は、ゲル分率が20~60%であることを特徴とする前記硬化物に関する。
【0012】
又、本発明は、23℃、相対湿度50%環境下におけるプローブタックが0.5~4.0N/cmである、前記硬化物に関する。
【0013】
又、本発明は、支持体上に、前記硬化物からなる粘着層を備えた皮膚貼付用粘着テープに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、優れた低角質剥離性と基材密着性を有し、かつ耐水性とはみ出し加工性が付与された皮膚貼付用粘着テープを得るための皮膚貼付用粘着剤組成物、その硬化物を提供することができる。また本発明の実施形態によれば、優れた低角質剥離性および基材密着性かつはみ出し加工性が付与された皮膚貼付用粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の皮膚貼付用粘着テープを部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
なお、本明細書で粘着テープとは、支持体と、本発明の粘着剤組成物の硬化物からなる粘着層とを含む。本明細書で「テープ」、「フィルム」、および「シート」は同義である。
【0017】
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0018】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の質量平均分子量である。「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
これら質量平均分子量、数平均分子量、および硬化物のプローブタックは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0019】
<ポリオール(A)>
本発明におけるポリオール(A)は、3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)を含む。3官能以上のポリエーテルポリオールとは、3つ以上の水酸基と2つ以上のエーテル結合とを有する化合物である。
ポリオール(A)としては、ポリエーテルポリオール(A1)と、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのその他ポリオール(A2)が挙げられる。
【0020】
(ポリエーテルポリオール(A1))
ポリエーテルポリオール(A1)は、3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)と、2官能のポリエーテルポリオール(A1-2)に分けられる。
ポリオール(A)100質量%中、ポリエーテルポリオール(A1)の含有率が55~100質量%であることが好ましく、65~100質量%であることがより好ましい。ポリオール(A)100質量%中、ポリエーテルポリオール(A1)が55質量%以上であると粘着剤のガラス転移温度(Tg)が低下して室温での粘着性が上がり、物理的なアンカー効果による接着性が向上することで皮膚貼付性が良化する。
【0021】
(3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1))
3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)は、公知のポリエーテルポリオールが用いることができる。3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)は、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られる。ポリエーテルポリオール(A1)として、グリセリンを開始剤としたエチレンオキシド(以下EO)の共重合体、グリセリンを開始剤としたプロピレンオキシド(以下PO)の共重合体(「ADEKA社製:GB-3000/Mn:3,000」等)、グリセリンを開始剤としたEOとPOの共重合体(「AGC社製:プレミノール7012/Mn:10,000」等)、ペンタエリスリトールを開始剤としたPOの共重合体等が挙げられる。
特に、POを主成分としたポリエーテルポリオールであることが好ましい。このようなポリエーテルポリオールを用いることで、柔軟性および耐水性に優れたポリウレタン硬化物を得ることができ、より優れた皮膚接着性や低角質剥離性・耐水性を示すことができる。
【0022】
3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)は、数平均分子量が1,500~20,000であることが好ましい。より好ましくは、1,500~15,000である。数平均分子量が上記範囲にあることで、良好な皮膚接着性およびはみ出し加工性を付与することができる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(A1)100質量%中、3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)が40~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)が40質量%以上であることで皮膚に対する粘着力が下がり、角質剥離性が良化する。
【0024】
ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド(EO)鎖由来の構造の含有率は30質量%以下であり、25質量%以下であることがより好ましい。EO鎖由来の構造が30質量%以下であることで、耐水性が向上し長期貼付性が良化する。
【0025】
(2官能ポリエーテルポリオール(A1-2))
2官能のポリエーテルポリオール(A1-2)は、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。
例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、又はポリテトラメチレングリコールなどの、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体;ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール又はこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類;水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2官能の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させて得られるポリオールが挙げられる。2官能のポリエーテルポリオールとして、耐水性に優れることから、ポリプロピレングリコールが好ましい。
【0026】
(その他ポリオール(A2))
本明細書において、その他ポリオール(A2)とは、ポリエーテルポリオール(A1)以外のポリオールを指す。
その他ポリオール(A2)は、例えば、ポリエステルポリオール、低分子量ポリオール、ポリブタジエン変性ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、またはひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらの中でもポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールが好ましい。濡れ性に優れ、皮膚への追従性に優れることから、ポリエステルポリオール、またはポリカーボネートポリオールがより好ましい。
【0027】
ポリエステルポリオールは、公知のポリエステルポリオールが用いられる。ポリエステルポリオールは、例えば、酸成分およびグリコール成分を必須とし、必要に応じてポリオール成分を用いてエステル化反応により合成できる。酸成分としてコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。また、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオール成分として、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0028】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、特に制限無く使用できるが、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量500~5,000を使用すると適度な反応性が得られ、凝集力がより良好な樹脂が得やすい。
ポリエステルポリオールの含有率は、ポリオール(A)100質量%中、0~45質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましい。
【0029】
低分子量ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール等のグリコール類等の分子量500未満、かつ、末端に2つ以上の水酸基を有する化合物である。上記低分子量ポリオールを使用することで、粘着剤中のウレタン結合が増加し、適度な凝集力と良好な基材密着性を付与することができる。
【0030】
低分子量ポリオールの含有率は、ポリオール成分(A)100質量%中、0~10質量%が好ましく、0~6質量%がより好ましい。含有率を前記範囲にすることで、糊残りの改善や基材密着性を向上が可能となる。
【0031】
ポリブタジエン変性ポリオールは、例えば、末端に2つ以上の水酸基を有し、1,2-ビニル部位、1,4-シス部位、1,4-トランス部位またはそれらが水素化された構造を有し、直鎖状若しくは分岐状のポリブタジエンである。
【0032】
ポリブタジエン変性ポリオールの数平均分子量は、500~6,000が好ましく、800~6,000がより好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。
【0033】
ポリブタジエン変性ポリオールを水素化する程度は、水素化する前に存在する二重結合部位の全てが水素化されていることが好ましいが、本発明においては、若干の二重結合部位が残存していても良い。
【0034】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオール等が好ましい。
【0035】
ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量は、特に制限無く使用できるが、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、皮膚接着性と凝集力をさらに向上できる。
ポリカプロラクトンポリオールの含有率は、ポリオール成分(A)100質量%中、0~75質量%が好ましく、0~65質量%がより好ましい。
【0036】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類をエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、特に制限無く使用できるが、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。
ポリカーボネートポリオールは、ポリオール成分(A)100質量%中、0~75質量%が好ましく、0~65質量%がより好ましい。
【0038】
本発明において、その他ポリオール(A2)は、2~6個の水酸基を有するポリオールであることが好ましく、水酸基を2~4個有することが特に好ましい。
上記範囲のその他ポリオール(A2)を用いることで、ポリウレタン系樹脂(C)の架橋密度や水酸基価を適切にコントロールすることができ、優れた皮膚接着性や初期硬化性を発現することが可能となる。
【0039】
<ポリイソシアネート(B)>
本明細書におけるポリイソシアネート(B)は、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のものを使用でき、芳香族イソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート(B1)は、ポリオール(A)と反応させてウレタンポリオール(C)を得る為に使用する。一方、ポリイソシアネート(B2)は、皮膚貼付用粘着剤組成物中に含まれる。ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。(B1)と(B2)は、同一でも、異なっていても良く、それぞれ独立でも、2種以上を併用しても良い。
本願明細書において、ジフェニルメタンジイソシアネートの3種の異性体(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート)をMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートをポリメリックMDIと記載することがある。
【0040】
本願発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、MDIおよびポリメリックMDIに由来する構造を含むことで、基材に対する密着性および加工性が良好となる。
【0041】
MDIおよびポリメリックMDI以外のポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-フェニレンビスメチレンジイソシアナート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,2’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。ポリオールとの反応性や基材に対する密着性の観点から2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0043】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。ポリオールとの反応性の観点からヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。ポリオールとの反応性や低角質剥離性の観点から3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネートが好ましい。
【0045】
以上に例示したポリイソシアネートはジイソシアネートであるが、上記イソシアネートを変性したトリイソシアネート、テトライソシアネートなどの、分子内にイソシアネート基を3つ以上有するイソシアネートも使用することができる。トリイソシアネートとしては、上記記載のイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、ヌレート体やポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートなどの縮合体などが挙げられる。テトライソシアネートとして、ヌレート体オリゴマー、ヌレート体のアルファネート変性体などが挙げられる。ポリオールとの反応性、基材密着性、低悪質剥離性の観点から4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が特に好ましい。
【0046】
<ウレタンポリオール(C)>
ウレタンポリオール(C)はポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)の反応によって得ることができる。得られるウレタンポリオール(C)は、反応性官能基として水酸基を有する。ウレタンポリオール(C)は、ポリイソシアネート(B1)が含有する全イソシアネート基と、ポリオール(A)が含有する全水酸基とのモル当量比[NCO/OH]が1未満となるように反応させることで得ることができる。[NCO/OH]として0.25~0.95であることが好ましく、0.30~0.90であることがより好ましい。[NCO/OH]が上記範囲であることで硬化時の初期硬化性および凝集力を付与することができる。
【0047】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)の反応によって得られるウレタンポリオール(C)の質量平均分子量は、2.5万~30万であることが好ましく、3.0万~30万であることがより好ましい。この範囲であることではみ出し加工性と皮膚接着性を付与することができる。
【0048】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)の反応によって得られるウレタンポリオール(C)の水酸基価は、2.0~45mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が2.0mgKOH/g以上であることで、粘着剤の凝集力が増加し剥離時の糊残りが抑制し、また、反応点の増加により良好な初期硬化性を発現できる。水酸基価が45mgKOH/g以下であることで粘着剤が柔軟になり、角質剥離性が向上するとともに、皮膚への追従性が向上し皮膚接着性が良化する。
【0049】
[触媒]
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)を反応させる際、必要に応じて触媒を使用することができる。触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
【0050】
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0051】
有機金属系化合物としては、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。
錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0052】
非錫系化合物としては、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛、カルボン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートおよびジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等のジルコニウム系が挙げられる。
【0053】
ウレタンポリオール(C)を合成する際、反応性の異なる複数種のポリオール成分(A)を併用する場合、これらの反応性の相違により、単一触媒の系では重合安定性の不良または反応溶液の白濁が生じやすくなる場合がある。この場合、2種以上の触媒を用いることにより、反応(例えば反応速度等)を制御しやすくすることができる。そのため、反応性の異なる複数種のポリオール(A)を併用する系では、2種以上の触媒を用いることが好ましい。2種以上の触媒の組合せは特に制限されず、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、および錫系/錫系、等が挙げられる。
2-エチルヘキサン酸錫とジブチル錫ジラウレートとの質量比(2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレート)は特に制限されず、好ましくは0を超えて1未満であり、より好ましくは0.2~0.6である。当該質量比が1未満であれば、触媒活性のバランスが良好で、反応溶液のゲル化および白濁を効果的に抑制し、重合安定性がより向上する。
【0054】
触媒の使用量は特に制限されず、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)との合計量100質量部に対して、好ましくは0.005~0.1質量部である。上記範囲であることで、優れた反応性を示し、また、触媒由来の皮膚刺激性を抑制することができる。
【0055】
[溶剤]
ウレタンポリオール(C)の合成の際、必要に応じて1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤としては公知のものを使用でき、例えば、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ウレタンポリオール(C)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、酢酸エチルが特に好ましい。
【0056】
[ウレタンポリオール(C)の製造方法]
ウレタンポリオール(C)の製造方法としては特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知重合方法を適用することができる。
製造手順は特に制限されず、
手順1)ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B1)、必要に応じて触媒、および/または溶剤等を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)ポリオール(A)、必要に応じて触媒、および/または溶剤等をフラスコに仕込み、これにポリイソシアネート(B1)を滴下添加する手順が挙げられる。
反応を制御しやすいことから、手順2)が好ましい。
【0057】
触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは90℃未満、より好ましくは40~80℃である。反応温度を90℃未満にすることで、重合の制御が可能となり、所望の分子量を有するポリウレタン系樹脂(C)を得ることができる。
触媒を使用しない場合の反応温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。触媒を使用しない場合の反応時間は、好ましくは3時間以上である。
【0058】
≪皮膚貼付用粘着剤組成物≫
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B1)との反応物であるウレタンポリオール(C)と、ポリイソシアネート(B2)とを含み、 ポリオール(A)が3官能以上のポリエーテルポリオール(A1-1)を含み、ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド鎖由来の構造が30質量%以下であり、ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)が、MDIおよびポリメリックMDIからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
ポリオール(A)100質量%中、エチレンオキシド鎖由来の構造が30質量%以下であることで耐水性が向上し長期貼付性を付与することができる。
また、ポリイソシアネート(B1)および/またはポリイソシアネート(B2)が、MDIおよびポリメリックMDIからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことで、基材に対する密着性が優れた硬化物となる皮膚貼付用粘着剤組成物を提供することができる。
【0059】
皮膚貼付用粘着剤組成物のポリイソシアネート(B2)が含有する全イソシアネート基と、ウレタンポリオール(C)が含有する全水酸基とのモル当量比[NCO/OH]は0.25~0.95であることが好ましく、0.30~0.90であることがより好ましい。NCO/OHが上記範囲であることで硬化物の皮膚接着性が良化する。
【0060】
皮膚貼付用粘着剤組成物は、ウレタンポリオール(C)とポリイソシアネート(B2)の合計100質量%中、MDIおよびポリメリックMDIからなる群に由来の構造を1~15質量%含むことが好ましい。1.3~13質量%であることがより好ましい。1質量%以上であることで基材に対する密着性および加工性が良化し、15質量%以下であることで粘着剤に柔軟性が付与され、皮膚への接着性が良化する。
本願において、ポリイソシアネート(B1)および、ポリイソシアネート(B2)として用いるMDIおよびポリメリックMDIの量の合計が、皮膚貼付用粘着剤組成物中のMDIおよびポリメリックMDIからなる群に由来する成分の割合である。
【0061】
[硬化触媒]
皮膚貼付用粘着剤組成物は、必要に応じてウレタンポリオール(C)の合成の際に用いる触媒と同様の触媒を硬化触媒として使用することができる。
硬化触媒の使用量は特に限定されず、皮膚貼付用粘着剤組成物100質量部に対して、好ましくは0.005~0.1質量部である。上記範囲であることで、優れた反応性を示し、また触媒由来の皮膚刺激性を抑制することができる。
【0062】
[β-ジケトン化合物]
触媒、または硬化触媒を使用する場合、ポットライフを向上させる目的で、β-ジケトン化合物を併せて使用することが好ましい。
β-ジケトン化合物としては特に制限されず、例えば2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、2,4-ヘキサンジオン、1,3-シクロヘキサンジオン、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,3-シクロヘプタンジオン、2,4-オクタンジオン、2,2,7-トリメチル-3,5-オクタンジオン、2,4-ノナンジオン、3-メチル-2,4-ノナンジオン、2-メチル-4,6-ノナンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、およびスピロデカンジオン等が挙げられる。中でも、2,4-ペンタンジオンおよび2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン等が好ましい。
【0063】
β-ジケトン化合物の配合量は、触媒および硬化触媒の合計の1質量部に対して、好ましくは2~1000質量部、より好ましくは3~500質量部である。
β-ジケトン化合物の配合量が上記範囲であることで、ポットライフと硬化性を両立することができる。
【0064】
[可塑剤(D)]
ポリウレタン硬化物をより柔軟にし、テープ剥離時の痛み低減や角質剥離性を良化させる目的で、任意の1種以上の可塑剤(D)を使用することができる。使用する可塑剤(D)としては特に制限されないが、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤、およびリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
皮膚への刺激性と、ポリウレタン硬化物との相溶性の点から、可塑剤(D)は脂肪酸エステル系可塑剤であることが好ましい。
【0065】
脂肪酸エステル系可塑剤としては、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ステアリン酸や各種脂肪酸とアルキルアルコールとのエステル類、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールとのエステル類などを用いることができる。より具体的には、1価のアルコールのエステルとしては、ジブチルフタレート、ジ2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルアジペート、ジ2エチルヘキシルセバケート、ジブチルマレエート、ミリスリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、2-エチルへキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、コハク酸ジオクチル等が挙げられる。また、2価以上のアルコールのエステルとしては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0066】
ポリエーテルエステル系可塑剤としては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸ブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、およびo-アセチルクエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0068】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、およびトリクレジルホスフェート等が挙げられる。
【0069】
また、可塑剤(D)は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを縮合させたソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル等の、脂肪酸エステル構造とポリエーテル構造とを含む化合物であってもよい。例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0070】
可塑剤(D)の配合量は特に制限されないが、皮膚貼付用粘着剤組成物100質量%、可塑剤は10~70質量%が好ましく、より好ましくは15~50質量部である。可塑剤(D)の配合量がこの範囲であることで、糊残りをしない程度に凝集力を担保しつつ、角質剥離性を更に向上させることが可能となるために好ましい。また粘着力を大きく下げることができるため、本願の皮膚貼付用粘着剤組成物を使用した粘着テープは、傷口に直接テープを貼り付ける医療用途にも好適に使用することができる。
【0071】
[その他任意成分]
本発明の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他任意成分を含むことができる。任意成分としては、樹脂、充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、導電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、消泡剤、および滑剤等が挙げられる。
【0072】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、および酸化チタン等が挙げられる。
【0073】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤;硫黄系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤等の過酸化物分解剤等が挙げられる。
【0074】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、およびステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、および3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0075】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0076】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0077】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0078】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、およびビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0079】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’,-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、および[2(2’-ヒドロキシ-5’-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0080】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、およびp-オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0081】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、およびエチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0082】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線安定剤等が挙げられる。
【0083】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、[ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート]、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、およびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0084】
紫外線安定剤としては、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、およびニッケル-ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0085】
≪硬化物≫
本発明でいう硬化物とは、皮膚貼付用粘着剤中のウレタンポリオール(C)とポリイソシアネート(B2)を反応させ、赤外線吸収スペクトル(IR)測定においてイソシアネート基のIRピークが観察されなくなった状態のことをいう。
【0086】
硬化物のゲル分率は、20~60質量%であることが好ましく、25~55質量%であることがより好ましい。ゲル分率が20質量%以上であることで、糊残りや剥離時の痛み低減が可能となり、ゲル分率が60質量%以下であることで、粘着テープの皮膚からの剥がれを抑制できるために好ましい。
ゲル分率の測定方法は、実施例の欄に詳細に記載する。
【0087】
23℃、相対湿度50%環境下における硬化物のプローブタックは、好ましくは0.5~4.0N/cmであり、特に好ましくは0.7~3.5N/cmである。プローブタックが0.5N/cm以上であることで、皮膚貼付用粘着テープの皮膚からの剥がれを抑制でき、プローブタックが4.0N/cm以下であることで、粘着テープ剥離時の痛みや角質の剥離量を低減できるために好ましい。
【0088】
≪皮膚貼付用粘着テープ≫
皮膚貼付用粘着テープは、支持体上に、慣用の手法を用いて、皮膚貼付用粘着剤組成物の硬化物からなる粘着層を設けることで得ることができる。
【0089】
粘着テープを皮膚から剥がした際の角質剥離量が減少する点、皮膚と粘着層の間に貯留した水分による固定性の低下を抑制する点から、皮膚貼付用粘着テープの透湿度は1,000g/m・24hr以上、好ましくは2,000g/m・24hr以上であることが好ましい。透湿度は高ければ高いほど好ましく、上限値は特に制限されない。
【0090】
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、医療分野やスポーツ分野、美容分野などに用いることができ、特に救急絆創膏や巻絆、パッド付き大型絆創膏、ドレッシング材などの医療用途で皮膚に貼着して用いることができる。
なかでも、皮膚への刺激性が少なく、また、長時間の貼り付けに耐えられるため、医療用でも好適に用いることができ、同じ部位に繰り返し貼付して使用する場合のあるドレッシング材にも、好適に用いることができる。
【0091】
<皮膚貼付用粘着テープの製造方法>
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、通常の粘着テープの製造方法に従って製造することができる。具体的には剥離体に粘着剤を塗工して、乾燥させることで硬化物とし、粘着剤層を形成させ、その粘着剤層を支持体に転写させることで製造する方法(転写塗工)や、支持体に直接粘着剤を塗工し、乾燥させることで硬化物とし、粘着剤層を形成させる方法(直塗工)が挙げられる。
【0092】
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、担持体及び/又は剥離体を備えてもよい。担持体は、支持体の粘着層が設けられた面とは反対側の面に剥離可能な状態で設けられる。剥離体は、粘着層の支持体が設けられた面とは反対側の面に剥離可能な状態で設けられる。すなわち、本発明の皮膚貼付用粘着テープは、担持体、支持体、粘着層、及び剥離体を、この順序で、備えていてもよい(図1)。また、本発明では、担持体と支持体との間、支持体と粘着層との間、及び/又は粘着層と剥離体との間に、他の層を一層以上介在させてもよい。例えば、接着性や剥離性を高めるため、下塗剤層や接着剤層、又は剥離剤層を設けてもよいし、あるいはフィルム、不織布、織布、又はそれらの積層体を介在させてもよい。
また、本発明の皮膚貼付用粘着テープは、血液や浸潤液の吸収等を目的に、粘着層と剥離体の間にパッドを備えてもよい。
【0093】
<粘着層>
粘着層は、本発明の皮膚貼付用粘着剤を硬化させてなる硬化物である。
粘着層は、支持体にパターンコーティング、例えば格子状やダイヤモンド等の形状でコーティングされて設けられてもよいが、皮膚への固定性を向上させるために、該粘着層が支持体の1面全体を本質的に覆った状態にあることが好ましい。
【0094】
本発明の皮膚貼付用粘着テープの粘着層の厚さは、特に制限されないが、皮膚への固定性を担保し、支持体厚みとのバランスの点から5μm以上、特に10μm以上が好ましく、粘着層が厚くなりすぎると透湿度と皮膚への追従性が低下する点から200μm以下、特に150μm以下が好ましい。
【0095】
<支持体>
本発明の支持体は、皮膚に貼付するために適度な伸縮性、柔軟性、強度等を備えるものであれば特に限定されないが、透湿性の高い支持体が適している。支持体の透湿度は、3,000g/m・24hr以上、特に4,000g/m・24hr以上が好ましい。また、支持体の透湿度の上限は、特に制限されないが、通常、約10,000g/m・24hr以下、好ましくは約8,000g/m・24hr以下である。例えば、3,000g/m・24hr~約10,000g/m・24hr、特に4,000g/m・24hr~約8,000g/m・24hrが好ましい。このような透湿度を有する支持体は、不織布、編布では容易に達成されるが、特にドレッシング材として有用なウレタン樹脂の支持体はそれ自体公知であり(例えば、特開平7-231910号公報)、市販されている。
【0096】
本発明の皮膚貼付用粘着テープを医療用テープに使用する場合、支持体は、透湿度が3,000g/m・24hr以上、特に4,000g/m・24hr以上であれば好ましく、伸縮性または非伸縮性のものを用いることもできる。例えば織布、不織布、編布、フィルムなどであり、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート等、またはそれらの複合素材から選択することができ、積層とすることもできる。そのままでは透湿性が低いフィルムについては、炭酸カルシウム等を含有した多孔質フィルムや、穿孔等をして加工して用いることもできる。透湿度が高い粘着テープが得られる点で、支持体として、不織布、織布、及び編布などが好ましい。
【0097】
本発明の支持体として、特にドレッシング材用の支持体として、ウレタン樹脂から製造する支持体、例えばフィルムなどが好適であり、柔軟で適度な強度を持ち、特に皮膚への粘着テープの固定性を高めたり貼付中の違和感を減らしたりする観点から好ましくは水膨潤性が低いものが使用される。
【0098】
本発明において、支持体をウレタン樹脂から製造する場合は、上述の透湿度を有している限り、特に制限されず、エーテル系ウレタン樹脂及びエステル系ウレタン樹脂など例示されるが、水膨潤性が低い点からエーテル系ウレタン樹脂が好ましく選択される。
これら所定の透湿度のエーテル系ウレタン樹脂は、BASF社等で入手可能である。エーテル系ウレタン樹脂を製造するには、例えば、従来から用いられてきたワンショット法又はプレポリマー法を用いて重合することができる。また、溶剤を使用しないバルク重合であっても、粘度低減のために溶液中で重合を行ってもよい。これらの重合法により作製されたフィルムは、DINTEX FT1080-PE、DINTEX FT1881-PE(日本ユニポリマー製)、サンプレンHMP-17A(三洋化成製)等があり、それぞれ入手可能である。
【0099】
本発明の支持体には、必要に応じて通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などが添加され得る。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0100】
本発明の支持体の厚みは、粘着テープとしての取り扱い性を高める点から、10μm以上、特に15μm以上が好ましく、また、高透湿の支持体が製造し易くなる点から、50μm以下、特に40μm以下が好ましい。10μm以下、特に5~10μmの場合は、支持体として非常に薄く取り扱い性が困難になるため、担持体の工夫、例えば担持体の剛性を支持体より高めたり、口取り片などを設けたりすることが必要となる。
【0101】
<担持体>
担持体は、支持体を補強して、本発明の皮膚貼付用粘着テープの製造性や操作性を向上させる役割を果たす。また、この担持体は貼付時に貼付部位が確認できるような視認性を考慮すると、透明もしくは半透明であることが望ましい。さらに、この担持体は、支持体に対して相対的に高い弾性率を有して、支持体に対し、3~20倍程度の弾性率であるものが好ましい。また、担持体を支持体に積層させる面には、支持体と適度な接着性を保って積層される必要があるため、各種処理を行っておくことが適切である。このような処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、マット処理などが例示される。
【0102】
担持体が支持体から剥離しにくい場合は、担持体の中央部付近に切れ目を設けてもよく、担持体同士の切れ目間隔を空けて担持体を2枚としてもよい。また、さらに担持体の切れ目上部にテープ又はフィルムを積層して、掴み片として口取り部を設けてもよい。口取り部はフィルム、不織布、織布、又はそれらの積層体としてもよいし、皮膚貼付用粘着テープとしてもよく、着色も可能である。担持体の端部分は波形或いは複数の切り込みを入れた状態としても良く、支持体より大きく形成したものを使用してもよい。これらは、皮膚貼付用粘着テープをロール状とした場合においても、担持体を剥ぎ取りやすくし、取り扱い性を向上させるのに有効である。
【0103】
上記の担持体として用いられるのは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。また、これらの単体の担持体だけでなく、紙、不織布、織布、編布、金属箔と積層した複合体の担持体であっても差し支えないが、このような担持体には、視認性やコストなどの観点からポリオレフィン及びポリエステルフィルムが用いられることが好ましい。
【0104】
<剥離体>
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、取扱いの簡便さのため、剥離体を設けることができるが、剥離体は、皮膚貼付用粘着テープの製造においても有用である。すなわち、転写塗工、直塗工どちらの場合でも、粘着剤組成物内のポリイソシアネート(B2)の反応が終了する前に離型処理剤と接触する可能性があるため、シリコーン系処理剤等の、イソシアネートと反応しない処理剤を用いた剥離体は都合がよい。
【0105】
剥離体は、粘着テープの分野で慣用のものを用いることができる。例えば、シリコーン離型処理した上質紙、グラシン紙等の紙基材やポリエステルフィルム等を用いることができる。また、剥離体の目付けは、限定はされないが、通常、50~150g/m程度が好ましく、60~100g/m程度がより好ましい。剥離体の略中心部に、その外形を分断する線状の剥離ライナー分断部を1本もしくは2本以上設けることによって、一方の剥離体を剥がしても、他方の剥離体が残り、粘着面に触れることなく貼付作業ができるようになり、作業性が向上する。皮膚貼付用粘着テープをロール状とした場合においては、特に剥離体を剥ぎ取りやすくし、取り扱い性を向上させるのに有効である。また、2枚以上の剥離体を粘着剤から剥離しやすいように、剥離体を一方に覆い被さるか又は折り返すように配置しても、取り扱い性を向上させるのに有効である。
【0106】
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、パッドを使用することもできる。パッドは、ガーゼやレーヨン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンの不織布などで目付が2~100g/m程度のものを使用することができ、好適には粘着剤塗布面の中央部に置くことができる。
【実施例0107】
以下、合成例、本発明に係る実施例、および比較例について説明する。なお、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。特に明記しない限り、表中の配合量の単位は「質量部」である。特に明記しない限り、溶剤以外の成分の配合量は、不揮発分換算値である。
【0108】
<質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定>
質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りとした。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
[測定条件]
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.5mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.1%、
試料注入量:100μL
【0109】
<水酸基価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、ピリジンを100ml加えて溶解した。さらに、アセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、1時間攪拌した後、フェノールフタレイン溶液数敵を指示薬として加え、0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時を終点とした。水酸基価(単位:KOHmg/g)は次式により求めた。水酸基価は乾燥した試料の数値とした。
水酸基価=[{(b-a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
D:酸価(mgKOH/g)
【0110】
実施例および比較例に用いた材料を下記に示す。
《材料》
<ポリオール(A)>
用いたポリオールの構造および物性値等を表1に記載した。
【0111】
【表1】
【0112】
<ポリイソシアネート(B)>
(B1-1):ミリオネートMT(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート):
東ソー社製
(B1-2):IPDI、イソホロンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールI」
(B1-3):ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、
(B2-1):HDIアダクト体(ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、イソシアナト基数=3、NCO価=12.6%、不揮発分=75.0%)
(B2-2):XDIアダクト体(1,3-フェニレンビスメチレンジイソシアネートのアダクト体、イソシアナト基数=3、NCO価=7.7%、不揮発性分=50.0%)
(B2-3):ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)
【0113】
<可塑剤(D)>
(D-1)トリカプリル酸グリセリル(脂肪酸エステル系可塑剤)
【0114】
<ウレタンポリオール(C)の合成>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下ロートを備えた4口フラスコに、ポリオール(A1-1-1)を100.0質量部、酢酸エチル70部、および触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.020質量部を仕込み混合した。その後、内容液を60℃まで徐々に昇温した。
滴下ロートにポリイソシアネート(B1-1)3.6質量部および酢酸エチル24.5質量部を仕込み混合し、この混合液を4口フラスコ内に1時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間反応させた。
赤外分光分析(IR分析)にて残存イソシアネート基の消滅を確認した上で、内容液を40℃まで冷却し、反応を終了させた。
以上のようにして、ウレタンポリオール(C-1)を得た。(C-1)の水酸基価は、16.9mgKOH/g、質量平均分子量は8.0万であった。
【0115】
<ウレタンポリオール(C-2~22)、(C’-1~2)の合成>
ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)の種類、およびこれらの配合量(質量部)を表3、4記載のように変更した以外はポリウレタン系樹脂(C-1)と同様にしてポリウレタン系樹脂(C-2~22)、(C’-1~2)を得た。得られたウレタンポリオール(C-2~22、C’1~2)の水酸基価と質量平均分子量を測定し、その結果を表2、3に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
<積層フィルムの製造>
ポリエーテルポリウレタン(大日精化工業(株)製、レザミンP-210)を、2軸スクリュー型の混練機で樹脂を加熱溶融させた後、T-ダイ式の押出し機で厚みが30μmになるように押出し、支持体(エラストマーフィルム)を成型した。次に、担持体として、濡れ指数液による測定で表面張力が420N/mmとなるように調整しておいた延伸ポリプロピレンフィルム(グンゼ(株)製、シルファンMT厚み40μm)にコロナ処理を行い、該コロナ処理面に、上記エラストマーフィルムをゴムロールを用いて密着させて、支持体(エラストマーフィルム)と担持体の積層フィルムを得た。
【0119】
<実施例1>
[皮膚貼付用粘着剤組成物の製造]
ウレタンポリオール(C-1)を100質量部、ポリイソシアネート(B2-1)を0.95質量部、溶剤として酢酸エチルを20質量部配合し、ディスパーで撹拌し、均一の皮膚貼付用粘着剤を得た。
[皮膚貼付用粘着テープの製造]
剥離シート上に、乾燥後の粘着層の厚みが30μmになるように皮膚貼付用粘着剤を塗工し、100℃で2分間乾燥して、粘着層を形成した。次にこの粘着層と、支持体と担持体の積層フィルムの支持体(エラストマーフィルム)面をゴムロール用いて貼り合わせた後、23℃-50%RHで1週間養生し、剥離シート付きの皮膚貼付用粘着テープを得た。
【0120】
<実施例2~25、比較例1~4>
粘着剤の配合組成、および配合量(質量部)を表4、5に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~25、比較例1~4の皮膚貼付用粘着剤およびこれを用いた皮膚貼付用粘着テープを製造した。
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
[粘着剤組成物の物性評価]
実施例及び比較例により得られた粘着剤組成物のゲル分率、プローブタックを測定した。
【0124】
<ゲル分率>
硬化物のゲル分率は、皮膚貼付用粘着剤を硬化させ、イソシアネート基の消失した(IR測定において、イソシアネート基のIRピークが観察されない)硬化物からなるPET基材付粘着テープを所定の大きさに切り取り、それをSUS200メッシュ(目開き:0.077mm、線径:0.05mm)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、下記数式(1)で算出した数値である。
式(1) ゲル分率(質量%)=(G2-G3-G4)/(G1-G3-G4)×100
G1:SUSメッシュ+PET基材付き粘着テープの質量
G2:酢酸エチルで抽出・乾燥後のSUSメッシュ+PET基材付き粘着テープの質量
G3:PET基材の質量
G4:SUSメッシュの質量
【0125】
<プローブタック>
皮膚貼付用粘着テープから幅30mm・長さ30mmの試験片を切り出した。次いで、23℃-50%RH雰囲気下にて、試験片から剥離紙を剥離し、露出した粘着層の表面のプローブタックを、JIS Z0237に準拠して測定した。装置として、プローブタック測定装置(テスター産業株式会社製)を用いた。粘着層の表面に対して直径5mmφのステンレス製プローブ(20g)を接触荷重1.0N/cmで1秒間接触させた後、プローブを10mm/秒の速度で粘着層の表面から離した。このときのプローブの剥がれる力を測定した。測定は3回実施し、その平均値を求めた。
[粘着剤組成物、硬化物および粘着テープの評価方法]
実施例及び比較例により得られた粘着剤組成物、硬化物、および粘着テープについて評価した。なお試験片は、特に記載していない場合、粘着テープを元巻きの流れ方向が長辺(MD方向)となるようにカットして作製した。また、粘着テープから担持体と剥離紙を剥がして測定した。
【0126】
<加工性>
25℃雰囲気下でアルミ箔の上に大きさが2cm×8cmの皮膚貼付用粘着テープをプレス機用いて一定圧力を加え、アルミ箔上にはみ出した糊の重さを測定し、糊全体に対するはみ出し割合を計算し、加工性を評価した。評価基準は以下の通りである。
(式) はみ出し割合(%)=(G4-G1)/(G2-G3)×100
G1:アルミ箔の質量
G2: 基材+剥離紙+糊の質量
G3:基材+剥離紙の質量
G4:プレス後のアルミ箔+はみ出した糊の質量
[評価基準]
◎:はみ出し量1%未満、非常に良好
○:はみ出し量1%以上3%未満、良好。
△:はみ出し量3%以上10%未満、実用可。
×:はみ出し量10%以上、実用不可。
【0127】
≪耐水性≫
皮膚貼付用粘着テープ(全て同一のポリエーテル系ウレタン基材を使用した貼付材)を、ベークライト板に横25mm、縦80mm試験片を貼付し、2kgのゴムロールを用いて圧着した。次いで、水中で30分放置し、ベークライト板からの貼付材の剥がれを以下の基準で評価した。
◎:剥がれた面積2%未満、非常に良好。
○:剥がれた面積2%以上5%未満、良好。
△:剥がれた面積5%以上15%未満、実用可。
×:剥がれた面積15%以上、実用不可。
【0128】
《皮膚接着性と角質剥離性》
23℃-50%RH雰囲気下で成人男女計10名の前腕内側をエタノールで軽くふいた後、10分間風乾し、そこに12mm幅の試験片を貼付した。貼付36時間後に、剥がれ、剥離時の痛み、剥離後の皮膚への粘着剤の残留(糊残り)があるか否かを観察し、以下の基準に従って評価した。また、剥離後の粘着テープを観察し、角質剥離性を以下の基準に従って評価した。
【0129】
<皮膚接着性;剥がれ>
貼付36時間後の粘着テープの付着状態を下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
○:9~10名が試験片全面に渡って良く付着していた、良好。
△:4~8名が試験片全面に渡って良く付着していた、実用可。
×:0~3名が試験片全面に渡って良く付着していた、実用不可。
【0130】
<皮膚接着性;痛み>
試験片剥離時の痛みを下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:9~10名が痛みを感じなかった、非常に良好。
○:6~8名が痛みを感じなかった、良好。
△:3~5名が痛みを感じなかった、実用可。
×:0~2名が痛みを感じなかった、実用不可。
【0131】
<皮膚接着性;糊残り>
試験片剥離後の皮膚への粘着剤の残留(ベタつき)の程度を下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
○:9~10名に糊残り(ベタつき)が見られなかった、良好。
△:6~8名に糊残り(ベタつき)が見られなかった、実用可。
×:0~5名に糊残り(ベタつき)が見られなかった、実用不可。
【0132】
<角質剥離性>
剥離後の試験片を以下の染色液に24時間浸漬して染色し、蒸留水で軽く洗浄・乾燥した。試験片の粘着面に移行した角質量を光学顕微鏡にて観察し、角化細胞の剥離量を全体に占める面積(%)で計測した。角質剥離量が100%の場合は、角化細胞が粘着剤全面に付着していることを示す。10名の測定結果の平均を算出し、以下基準に従って評価した。
染色液組成:GentianViolet1.0%、BrillianGreen0.5%、蒸留水98.5%
[評価基準]
◎:角質剥離量が0%以上、10%未満、非常に良好。
○:角質剥離量が10%以上、30%未満、良好。
△:角質剥離量が30%以上、50%未満、実用可。
×:角質剥離量が50%以上、100%以下、実用不可
【0133】
<基材密着性>
皮膚接着性の評価の際、試験片剥離時の支持体からの粘着層の剥がれについて、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:9~10名で剥がれが無かった、非常に良好。
○:7~8名で剥がれが無かった、良好。
△:4~6名で剥がれが無かった、実用可。
×:0~3名で剥がれが無かった、実用不可。
【0134】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)またはポリウレタン系樹脂(C)とポリイソシアネート(B)からなる皮膚貼付用粘着剤を使用した皮膚貼付用粘着テープである実施例1~25は、いずれの評価項目についても評価結果が良好であった。
【0135】
その一方、請求項の範囲外であるウレタン樹脂を使用した粘着テープ比較例1~4では、全ての評価項目をクリアするものは無かった。
【0136】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも長時間皮膚に貼付したとしても良好な皮膚接着性を有し、剥離した際の糊残りや角質の剥離を抑制することが可能な粘着剤、およびこれを用いた皮膚貼付用粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 担持体
2 支持体
3 粘着層
4 剥離体
図1