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特開2023-142429画像形成装置および画像形成装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142429
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20230928BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049341
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石塚 達雄
(72)【発明者】
【氏名】白熊 拓美
(72)【発明者】
【氏名】泉宮 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小山 弘
(72)【発明者】
【氏名】藤森 春充
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134KA40
2H134KB13
2H134KG08
2H134KH01
2H134LA02
2H270LA19
2H270LA20
2H270LD03
2H270LD11
2H270MA31
2H270MB11
2H270MB25
2H270MB46
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】滑剤塗布ローラーから感光体駆動モーターに加わる負荷の影響によって発生する画像ムラを抑制または解消することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム123と、感光体ドラム123に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラー10と、用紙に形成された画像を読み取る画像読取部260と、画像読取部260で読み取った画像に基づき、滑剤塗布ローラー10の回転速度を変更する制御部200と、を有する、画像形成装置100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーと、
記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部で読み取った画像に基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する制御部と、
を有する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像から画像ムラを検出し、
前記画像ムラに基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像を周波数解析することで前記画像ムラを検出する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を減少させる、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持たない場合に、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断する、請求項3を引用する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持つ場合に、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断する、請求項3を引用する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記感光体の回転を周波数解析した結果、最も大きなピークの周波数を前記特定周波数とする、請求項5または7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、滑剤の残量の減少に対応して前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、請求項1~8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
感光体と、
前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーと、
記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、
を有する画像形成装置の制御プログラムであって、
記録媒体に形成された画像を前記画像読取部に読み取らせる段階(a)と、
読み取った画像に基づき、前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する段階(b)と、
をコンピューターに実行させるための画像形成装置の制御プログラム。
【請求項11】
読み取られた画像から画像ムラを検出する段階(c)を有し、
前記段階(b)は、前記画像ムラに基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する、請求項10に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項12】
前記段階(c)は、読み取られた画像を周波数解析することで前記画像ムラを検出する、請求項11に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項13】
前記段階(b)は、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を減少させる、請求項11または12に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項14】
前記段階(b)は、読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持たない場合に、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断する、請求項12を引用する請求項13に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項15】
前記段階(b)は、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、請求項11または12に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項16】
前記段階(b)は、読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持つ場合に、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断する、請求項12を引用する請求項15に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項17】
前記段階(b)は、前記感光体の回転を周波数解析した結果、最も大きなピークの周波数を前記特定周波数とする、請求項14または16に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項18】
滑剤の残量の減少に対応して前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる段階(d)をさらに有する、請求項10~17のいずれか1つに記載の画像形成装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置は、感光体ドラムを有する。感光体ドラムには、滑剤塗布ローラーによって滑剤が塗布される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-97171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光体ドラムを駆動するための感光体駆動モーターには、様々な負荷が加わっている。感光体駆動モーターに加わる負荷がバラついて、感光体ドラムに回転ムラが発生することがある。感光体ドラムに回転ムラが発生すると、印字された画像にも画像ムラが発生する。
【0005】
しかしながら、これまで滑剤塗布ローラーから感光体駆動モーターに加わる負荷は、考慮されていなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、滑剤塗布ローラーから感光体駆動モーターに加わる負荷の影響によって発生する画像ムラを抑制または解消することのできる画像形成装置および画像形成装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)感光体と、
前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーと、
記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部で読み取った画像に基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する制御部と、
を有する、画像形成装置。
【0009】
(2)前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像から画像ムラを検出し、
前記画像ムラに基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する、上記(1)に記載の画像形成装置。
【0010】
(3)前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像を周波数解析することで前記画像ムラを検出する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0011】
(4)前記制御部は、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を減少させる、上記(2)または(3)に記載の画像形成装置。
【0012】
(5)前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持たない場合に、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断する、上記(3)を引用する上記(4)に記載の画像形成装置。
【0013】
(6)前記制御部は、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、上記(2)または(3)に記載の画像形成装置。
【0014】
(7)前記制御部は、前記画像読取部によって読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持つ場合に、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断する、上記(3)を引用する上記(6)に記載の画像形成装置。
【0015】
(8)前記制御部は、前記感光体の回転を周波数解析した結果、最も大きなピークの周波数を前記特定周波数とする、上記(5)または(7)に記載の画像形成装置。
【0016】
(9)前記制御部は、滑剤の残量の減少に対応して前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0017】
(10)感光体と、
前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーと、
記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、
を有する画像形成装置の制御プログラムであって、
記録媒体に形成された画像を前記画像読取部に読み取らせる段階(a)と、
読み取った画像に基づき、前記感光体に滑剤を塗布する滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する段階(b)と、
をコンピューターに実行させるための画像形成装置の制御プログラム。
【0018】
(11)読み取られた画像から画像ムラを検出する段階(c)を有し、
前記段階(b)は、前記画像ムラに基づき、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を変更する、上記(10)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0019】
(12)前記段階(c)は、読み取られた画像を周波数解析することで前記画像ムラを検出する、上記(11)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0020】
(13)前記段階(b)は、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を減少させる、上記(11)または(12)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0021】
(14)前記段階(b)は、読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持たない場合に、前記画像ムラが発散した画像ムラと判断する、上記(12)を引用する上記(13)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0022】
(15)前記段階(b)は、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断した場合、前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる、上記(11)または(12)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0023】
(16)前記段階(b)は、読み取られた画像の前記周波数解析の結果、特定周波数のピークを持つ場合に、前記画像ムラが偏った画像ムラと判断する、上記(12)を引用する上記(15)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0024】
(17)前記段階(b)は、前記感光体の回転を周波数解析した結果、最も大きなピークの周波数を前記特定周波数とする、上記(14)または(16)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0025】
(18)滑剤の残量の減少に対応して前記滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる段階(d)をさらに有する、上記(10)~(17)のいずれか1つに記載の画像形成装置の制御プログラム。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、印字された画像を読み取って、読み取った画像から画像ムラを判断し、判断した画像ムラに基づいて滑剤塗布ローラーの回転速度を制御する。これにより本発明は、画像ムラの発生を抑制または解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を説明するための概略図である。
図2】画像形成装置の制御系を説明するためのブロック図である。
図3】滑剤塗布ローラーを示す概略断面図である。
図4】発散した画像ムラが発生したときの印字例1を説明するための説明図である。
図5】偏った画像ムラが発生したときの印字例2を説明するための説明図である。
図6】画像のFFT解析結果を示すグラフである。
図7】感光体ドラムのFFT解析結果を示すグラフである。
図8】画像ムラの抑制または解消のための手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0029】
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を説明するための概略図である。図2は、画像形成装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【0030】
画像形成装置100は、電子写真方式により記録媒体にトナー画像を形成する。記録媒体は、たとえば、用紙181である。
【0031】
画像形成装置100は、画像形成部110、搬送路113、操作表示部118、給紙カセット180、および制御部200を有する。また、この画像形成装置100には、画像読取部260を有する画像読み取りユニットが接続されている。
【0032】
画像形成部110は、複数の現像部120、2次転写ベルト130(中間転写体)、定着部140を有する。
【0033】
現像部120は、トナーボトル121、現像器122、感光体ドラム123を有する。現像部120は、イメージングユニットとも称される。複数の現像部120は、シアン(C(Cyan))、イエロー(Y(Yellow))、マゼンタ(M(Magenta))、黒(K(Key plate))のそれぞれに対応している。
【0034】
トナーボトル121は、現像剤であるトナーを収納している。トナーボトル121は、トナーカートリッジとも称される。
【0035】
現像器122は、感光体ドラム123の表面に形成された静電潜像を、現像剤によって現像する。
【0036】
感光体ドラム123は、像担持体である。感光体ドラム表面の現像された画像は、2次転写ベルト130へ転写される。2次転写ベルト130に転写された画像は、用紙181に転写される。
【0037】
感光体ドラム123は、円筒形(ドラム)形状の感光体である。感光体ドラム123は、感光体駆動モーター127(図2参照)によって駆動されて、回転する。また、感光体ドラム123には、感光体ドラム123の回転速度を検出するための感光体用エンコーダー128が取り付けられている。感光体用エンコーダー128からの信号は、制御部200に出力される。
【0038】
感光体ドラム123の回転速度は、2次転写ベルト130、および、搬送路113を搬送される用紙181の搬送速度と同期されている。このため、感光体ドラム123の回転速度は、単独で変更することができない。ただし、印字速度そのものを変更する場合、感光体ドラム123の回転速度は、2次転写ベルト130および用紙搬送速度と同期させて、変更されることもある。
【0039】
感光体ドラム123には、滑剤塗布ローラー10が取り付けられている。滑剤塗布ローラー10の詳細は後述する。
【0040】
定着部140は、2次転写ベルト130から用紙181に転写された未定着画像を加熱加圧して、用紙181に定着させる。
【0041】
操作表示部118は、表示パネルと入力キーを有する。また、操作表示部118は、タッチパネルなどを有してもよい。操作表示部118からは、画像形成装置100の設定が入力される。また、操作表示部118には、現在の動作状況や、警告などが必要に応じて表示される。
【0042】
給紙カセット180は、用紙181を収納している。給紙カセット180は、用紙181を搬送路113へ送り出す。送り出された用紙181は、画像形成部110へ供給される。
【0043】
制御部200は、コンピューターである。制御部200は、図2に示すように、たとえば、CPU(Central Processing Unit)210、RAM(Random Access Memory)220、ROM(Read Only Memory)230、およびHDD(Hard Disk Drive)240を有する。各部は、バス250によって接続されている。また、バス250は、画像形成部110との信号の送受信にも使用される。HDD240は、RAM220、ROM230などとともに記憶部となる。記憶部としては、HDD240に代えて、SSD(Solid State Drive)など半導体不揮発性メモリーが使用されてもよい。
【0044】
また、制御部200は、図示しないが、他のコンピューターなどと通信するための通信インターフェースを備える。
【0045】
制御部200は、画像形成のためのプログラムを実行して、画像形成装置100の各部を制御する。これにより、制御部200は、用紙181に画像を形成(印字)させる。
【0046】
また、制御部200は、後述する手順によるプログラムを実行して、画像形成装置100の各部を制御する。これにより、制御部200は、画像ムラを抑制または解消させる。
【0047】
画像読取部260は、画像形成部110によって画像が印字された用紙181から、画像を読み取る。画像読取部260は、画像形成部110の出力部分に接続されている。このため、画像読取部260は、インラインでの画像読み取りが可能である。読み取られた画像のデータは、制御部200へ出力される。画像読取部260は、たとえば、ICCU(Image Calibration Control Unit)が用いられる。ICCUは、ラインイメージセンサーを有する。ラインイメージセンサーの画素は、用紙搬送方向と直交する方向に並んでいる。ICCUは、搬送される用紙181から画像を読み取る。
【0048】
(滑剤塗布ローラー)
滑剤塗布ローラーについて説明する。
【0049】
図3は、滑剤塗布ローラーを示す概略断面図である。
【0050】
滑剤塗布ローラー10は、感光体ドラム123の下部に取り付けられている。なお、滑剤塗布ローラー10の取り付け位置は、感光体ドラム123の下部に限定されず、画像形成に影響しない位置であれば特に限定されない。
【0051】
滑剤塗布ローラー10は、ハウジング15内に、滑剤11、滑剤押圧部13、滑剤均一化ブレード14、およびクリーニングブレード20とともに収納されている。
【0052】
滑剤塗布ローラー10は、円筒形状表面にブラシを有する。
【0053】
滑剤11は、たとえば、ステアリン酸亜鉛の固形物である。
【0054】
滑剤塗布ローラー10は、ステアリン酸亜鉛の固形物から、ステアリン酸亜鉛をかき取って、感光体ドラム123へ塗布する。滑剤塗布ローラー10は、滑剤塗布ローラー駆動モーター102(図2参照)によって駆動されて、回転する。また、滑剤塗布ローラー10には、滑剤塗布ローラー10の回転速度を検出するための滑剤塗布ローラー用エンコーダー103が取り付けられている。滑剤塗布ローラー用エンコーダー103からの信号は、制御部200に出力される。
【0055】
滑剤塗布ローラー10の回転速度は、感光体ドラム123とは異なり、2次転写ベルト130および搬送路113による用紙搬送速度と同期させる必要がない。このため、滑剤塗布ローラー10の回転速度は、自由に変更可能である。
【0056】
滑剤塗布ローラー10の回転速度には、上限および下限を設定しておくことが好ましい。上限は、滑剤11を感光体ドラム123に最適な厚さで塗布できる限界の回転速度である。滑剤塗布ローラー10の回転速度があまりに速い場合、滑剤11は、感光体ドラム123へ塗布されすぎて、現像剤が付着しにくくなることがある。下限は、回転の停止または滑剤11が塗布できないほどの低速である。滑剤塗布ローラー10が停止または低速の場合、滑剤塗布ローラー10は、固形物から滑剤11をかき取れなくなる。したがって、滑剤塗布ローラー10が停止または低速の場合、滑剤11は、感光体ドラム123へ塗布されなくなる。これら上限および下限は、これまでの経験値や、実験などによってあらかじめ設定される。
【0057】
滑剤押圧部13は、滑剤11および滑剤塗布ローラー10を感光体ドラム123へ押し付ける。滑剤押圧部13は、たとえば、コイルスプリングなどの弾性部材である。滑剤11は、上述のようにステアリン酸亜鉛の固形物である。このような固形物は、使用により、消耗して小さくなる。固形物が小さくなると、押圧力が低下する。押圧力が低下すると、滑剤塗布ローラー10によってかき取られる滑剤11の量が少なくなる。そこで、本実施形態では、滑剤11の残量の減少に対応して滑剤塗布ローラー10の回転速度を増加させる。滑剤塗布ローラー10の回転速度が上がることで、滑剤11のかき取り量が多くなる。このため、滑剤11の押圧力が低下しても、本実施形態では、滑剤11の塗布量を低下させないようにできる。
【0058】
滑剤11の残量は、印字枚数カウンターの値を使用して推定する。印字枚数カウンターは、印字した枚数を継続的にカウントする。
【0059】
たとえば、残量低下を判断するための印字枚数しきい値を設けて、HDD240などの記憶部に記憶させる。制御部200は、印字枚数カウンター値が、印字枚数しきい値以上となった時点で、滑剤塗布ローラー10の回転速度を増加させる。これに代えて、滑剤11の残量は、センサーによって固形物の量を直接検出することによって検出されてもよい。この場合、制御部200は、検出された残量が所定の残量以下になった時点で、滑剤塗布ローラーの回転速度を増加させる。
【0060】
クリーニングブレード20は、たとえば、ウレタンゴムなどの弾性材である。クリーニングブレード20の先端は、感光体ドラム123の回転方向(図中矢印R)に対して逆方向(カウンターという)を向いている。クリーニングブレード20の先端のエッジは、感光体ドラム123に当接している。クリーニングブレード20は、バネ材(不図示)によって、感光体ドラム123に対して一定の力で押圧される。クリーニングブレード20は、感光体ドラム123の表面から不要な現像剤をかき取って、感光体ドラム表面をクリーニングする。
【0061】
(画像ムラの抑制または解消のための制御)
次に、本実施形態によって実施される画像ムラの抑制または解消について説明する。
【0062】
図4は、発散した画像ムラが発生したときの印字例1を説明するための説明図である。図5は、偏った画像ムラが発生したときの印字例2を説明するための説明図である。
【0063】
印字例1および2を印字した元のデータは、いずれも、単色で、全面べた塗りの画像である。
【0064】
印字例1の発散した画像ムラは、図4に示すように、全体的に画像濃度が緩やかに変化している。
【0065】
印字例2の偏った画像ムラは、図5に示すように、図4と比較して、くっきりとした画像濃度の変化が認められる。
【0066】
本実施形態では、これらの画像を画像読取部260によって、印字された用紙181から読み取る。読み取った画像(読み取った画像のデータ、以下同様)を周波数解析することによって、画像ムラのピッチが取得される。周波数解析には、たとえば、高速フーリエ変換(FFT)が用いられる。
【0067】
図6は、画像のFFT解析結果を示すグラフである。図6に示すように、読み取った画像をFFT解析することによって、画像ムラの有無が判別される。感光体ドラムに起因した画像ムラは、感光体ドラムの回転方向、すなわち、用紙搬送方向に沿う方向の画像の濃淡として検出される。
【0068】
図6に示すように、印字例1の解析結果は、大きなピークのない緩やかな曲線を示している。一方、印字例2の解析結果は、大きなピークを有する曲線を示している。印字例2の解析結果として示された曲線におけるピークの頂点の周波数は、36Hzである。このように、画像ムラの状態によって、FFT解析結果のグラフ形状が異なる。
【0069】
そこで、本実施形態では、このような画像ムラのピークを判別するために、画像ムラしきい値を設けている。画像ムラしきい値は、たとえば、これまでの経験や実験などによって設定される。具体的には、たとえば、熟練者が、実際の画像を見て、発散した画像ムラか、偏った画像ムラかを判別し、さらに、判別後の画像をFFT解析することによって得られたグラフから、これらを判別できる画像ムラしきい値を設定する。
【0070】
次に、画像ムラの原因について説明する。
【0071】
図7は、感光体ドラム123のFFT解析結果を示すグラフである。図7に示したグラフは、感光体用エンコーダー128の出力をFFT解析した結果である。なお、図7において、0K(1000枚未満)、500K(50万枚)、1000K(100万枚)、および1500K(150万枚)は、印字枚数である。
【0072】
図7に示すように、FFT解析結果のグラフは、ところどころにピークが認められる。また、各ピークの振幅は、おおむね、印字枚数が増えるに従って大きくなっている。そして、印字枚数1500Kでは、グラフの振幅目盛りを振り切るほど大きなピークが認められる。この大きなピークの周波数は、36.1Hzである。36.1Hzは、感光体駆動モーター127の回転周波数と一致する。
【0073】
感光体駆動モーター127の回転周波数は、感光体用エンコーダー128からの出力値である。
【0074】
印字枚数1500Kにおいて、36.1Hzのピークが極めて大きくなっている原因は、発明者らの研究の結果、感光体駆動モーター127の回転と滑剤塗布ローラー10の回転とが共振しているためであることがわかった。
【0075】
滑剤塗布ローラー10の回転周波数(滑剤塗布ローラー用エンコーダー103の出力値)は、34.1Hzである。したがって、滑剤塗布ローラー10の回転周波数は、感光体駆動モーター127の回転周波数とは異なる。
【0076】
しかも、この共振は、印字枚数が増えるに従って大きくなっている。つまり、印字枚数が少なく、適度に滑剤11が塗布されている間は、大きな共振は発生しない。一方、印字枚数が増えるに従って、ピークが極めて大きくなっているのは、滑剤塗布ローラー10から感光体ドラム123に加わる負荷が大きくなるためであると考えられる。
【0077】
そして、この共振は、前述した画像の周波数解析結果とほぼ一致することがわかった。そこで、本実施形態では、感光体用エンコーダー128の出力をFFT解析した結果、大きなピークを有し、かつ、画像ムラが発生している場合に、当該大きなピークの周波数を特定周波数とする。
【0078】
本実施形態では、特定周波数と画像ムラのピークの周波数がほぼ一致する場合に、滑剤塗布ローラー10による負荷によって画像ムラが発生しているものと判断する。この判断は、制御部200によって行われる。
【0079】
制御部200は、判断の結果に基づき、滑剤ローラーの回転速度を変更する。これにより、感光体ドラム123が滑剤塗布ローラー10から受ける負荷を変えることができる。たとえば、滑剤塗布ローラー10の回転速度を増加させると、感光体ドラム123との間の滑りがよくなるので、負荷が減ることになる。逆に、滑剤塗布ローラー10の回転速度を減少させると、感光体ドラム123との間の滑りがわるくなるので、負荷が増えることになる。
【0080】
特定周波数と画像ムラのピークの周波数が一致するか否かの判断は、ある程度の幅を持たせて実施されてもよい。判断基準となる特定周波数の幅としては、たとえば、特定周波数を割り出したときの最大ピークの幅が設定されてもよい。図7に示した例では、特定周波数とする最大ピークは、36.1Hzである。そこで、特定周波数の幅としては、最大ピークの山の裾野の幅である35.9~36.2Hzが設定される。特定周波数の幅は、HDD240などの記憶部に記憶される。そして、制御部200は、画像の周波数解析の結果、得られたピークが35.9~36.2Hzの範囲内にあれば、滑剤塗布ローラー10による負荷によって画像ムラが発生していると判断する。この判断基準となる特定周波数の幅は、任意に設定されてもよい。
【0081】
次に、制御手順を説明する。
【0082】
図8は、画像ムラの抑制または解消のための手順を示すフローチャートである。制御部200は、この手順に基づいて作成された画像形成装置100の制御プログラムを実行する。また、以下の手順は、C、Y、M、Kの色ごとに実行される。
【0083】
制御部200は、まず、所定の画像が印字された画像を画像読取部260に読み取らせる(S11)。所定の画像は、たとえば、べた塗り画像である。
【0084】
続いて、制御部200は、画像に異常があるか否かを判断する(S12)。たとえば、制御部200は、読み取られた画像の階調値において所定以上の差があるか否かによって、画像に異常があるか否かを判断する。べた塗り画像では、異常がない場合、読み取られた画像の階調値における差は0である。異常と判断する階調値における差の値は、任意に設定され得る。
【0085】
S12のステップにおいて、異常なしの場合(S12:NO)、制御部200は、正常と判断し(S30)、処理を終了(エンド)する。
【0086】
一方、異常ありの場合(S12:YES)、制御部200は、画像を周波数解析する(S13)。周波数解析は、すでに説明したように、読み取った画像のデータを用いたFFT解析である。
【0087】
続いて、制御部200は、画像の周波数解析の結果、特定周波数にピークがあるか否かを判断する(S14)。画像の周波数解析の結果、特定周波数にピークがある場合(S14:YES)、制御部200は、偏った画像ムラが発生しているものと判断する(S15)。
【0088】
続いて、制御部200は、滑剤塗布ローラー10の回転速度が上限以上か否かを判断する(S16)。滑剤塗布ローラー10の回転速度が上限以上ではない場合(S16:NO)、制御部200は、滑剤塗布ローラー10の回転速度を増加させる(S17)。回転速度の増加量は、あらかじめ任意に設定される。たとえば、回転速度の増加量は、現在の速度に対して1%程度として設定されてもよく、10%程度、50%程度などと設定されてもよい。ただし、滑剤塗布ローラー10の回転速度は、あまり急に増加させると、滑剤11の塗布量が急激に増えるため好ましくない。そこで、滑剤塗布ローラー10の回転速度の増加量として、少ない値を設定しておいて、画像を印字させ、S11へ戻り、正常と判断されるまで、この手順を繰り返すことが好ましい。
【0089】
S16のステップにおいて、滑剤塗布ローラー10の回転速度が上限以上の場合(S16:YES)、制御部200は、部品寿命であると判断して(S31)、処理を終了する(エンド)。
【0090】
S31のステップにおいて、制御部200は、部品寿命に到達したことを操作表示部118に表示させる。ここでの部品寿命は、たとえば、印字枚数が感光体ドラム123の寿命に到達している場合は、感光体ドラム123の寿命となる。また、ここでの部品寿命は、たとえば、印字枚数が滑剤11の消耗による寿命に到達している場合は、滑剤11の寿命となる。
【0091】
S14のステップにおいて、画像の周波数解析の結果、特定周波数にピークがない場合(S14:NO)、制御部200は、画像の濃度変化が緩やかか否かを判断する(S18)。濃度変化が緩やかな画像の場合(S18:YES)、制御部200は、発散した画像ムラが発生しているものと判断する(S19)。濃度変化が緩やかな画像とは、上述したように、画像ムラしきい値を超えるピークがない画像である。
【0092】
続いて、制御部200は、滑剤塗布ローラー10の回転速度が下限以下か否かを判断する(S20)。滑剤塗布ローラー10の回転速度が下限以下ではない場合(S20:NO)、制御部200は、滑剤塗布ローラー10の回転速度を減少させる(S21)。回転速度の減少量は、あらかじめ任意に設定される。たとえば、回転速度の減少量は、現在の速度に対して1%程度として設定されてもよく、10%程度、50%程度などと設定されてもよい。ただし、滑剤塗布ローラー10の回転速度は、あまり急に減少させると、滑剤11の塗布量が急激に減ってしまうため好ましくない。そこで、滑剤塗布ローラー10の回転速度の減少量として、少ない値を設定しておいて、画像を印字させ、S11へ戻り、正常と判断されるまで、この手順を繰り返すことが好ましい。
【0093】
S20のステップにおいて、滑剤塗布ローラー10の回転速度が下限以下の場合(S20:YES)、制御部200は、部品寿命であると判断して(S31)、処理を終了する(エンド)。
【0094】
S18のステップにおいて、濃度変化が緩やかな画像ではない場合(S18:NO)、制御部200は、部品寿命であると判断して(S31)、処理を終了する(エンド)。
【0095】
ここで、濃度変化が緩やかな画像ではない場合とは、たとえば、上述した画像ムラしきい値を超えるピークがあるものの、そのピークの周波数が、特定周波数とは異なる画像である。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0097】
上述したように、画像形成装置100では、滑剤塗布ローラー10の回転速度と感光体駆動モーター127の回転速度が共振して、画像ムラが発生することがある。
【0098】
本実施形態は、印字された画像を周波数解析することによって、発生している画像ムラ(画像濃度のムラ)が、滑剤塗布ローラー10の回転と感光体駆動モーター127の回転が共振することによって発生した画像ムラか否かを判断する。そして、本実施形態は、このような共振による画像ムラの発生である場合に、滑剤塗布ローラー10の回転速度を制御する。これにより、本実施形態は、共振現象を少なくして、画像ムラの発生を抑制または解消する。
【0099】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は、説明した実施形態に限定されない。
【0100】
たとえば、上述した実施形態では、画像形成装置100に、画像読取部260を接続して、インラインで画像を読み取るようにした。しかし、本発明は、これに限定されない。画像読取部260は、画像形成装置100とは別に設けられて、印字された用紙181から、画像を読み取るようにしてもよい。また、画像読取部260が、画像形成装置100とは別に設けられた場合、さらに、画像形成装置100の制御部200とは別のコンピューターによって読み取った画像の周波数解析を実行させ、その結果から、滑剤塗布ローラー10の回転速度を変更するようにしてもよい。
【0101】
また、本発明に係るプログラムは、専用のハードウェア回路によって実現することも可能である。また、このプログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリーやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM(Read Only Memory)などのコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供したり、記録媒体によらず、インターネットなどのネットワークを介してオンラインで提供したりすることも可能である。オンラインで提供される場合、このプログラムは、ネットワークに接続されたコンピューター内の磁気ディスクなどの記録媒体に記録される。
【0102】
また、実施形態の説明の中で使用した条件や数値などはあくまでも説明のためのものであり、本発明がこれら条件や数値に限定されるものではない。
【0103】
本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0104】
10 滑剤塗布ローラー、
11 滑剤、
20 クリーニングブレード、
240 HDD、
100 画像形成装置、
102 滑剤塗布ローラー駆動モーター、
103 滑剤塗布ローラー用エンコーダー、
110 画像形成部、
113 搬送路、
118 操作表示部、
120 現像部、
121 トナーボトル、
122 現像器、
123 感光体ドラム、
130 2次転写ベルト、
140 定着部、
127 感光体駆動モーター、
128 感光体用エンコーダー、
180 給紙カセット、
181 用紙、
200 制御部、
210 CPU、
260 画像読取部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8