(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142430
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】パラ型全芳香族コポリアミド積層多孔質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/36 20060101AFI20230928BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230928BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
C08J9/36 CES
H01M50/423
H01M50/403 D
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/417
H01M50/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049343
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
【テーマコード(参考)】
4F074
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA24
4F074CE16
4F074CE65
4F074CE98
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA49
5H021BB12
5H021CC02
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE16
5H021EE21
5H021EE23
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
(57)【要約】
【課題】溶媒への高い溶解性と塗工液の安定性、さらには、得られた積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されたパラ型全芳香族コポリアミドからなる積層多孔質膜を得る。
【解決手段】構成するジアミン成分に3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)等の第三成分を含むパラ型全芳香族コポリアミド100重量部に対し、0.05~50重量部の、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のうちの一つもしくはそれらの混合物、および10~9900部の無機粒子を含有する塗工液を用いて、ポリオレフィン多孔膜上に積層膜を形成させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)に記載のパラ型全芳香族コポリアミドを用い、下記(b)及び(c)の工程を逐次的に実施することを特徴とするパラ型全芳香族コポリアミド積層多孔質膜の製造方法。
(a)パラ型全芳香族コポリアミド
酸クロライド成分とジアミン成分から構成されるパラ型全芳香族コポリアミドであって、酸クロライド成分としてテレフタル酸クロライド(以下第一成分という)を含み、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(以下第二成分という)及び3,3’オキシジフェニレンジアミン、または3,4’オキシジフェニレンジアミン、または4,4’オキシジフェニレンジアミン、もしくはそれらの混合物(以下第三成分という)を含んでなり、該ジアミン成分における第二成分と第三成分とのモル比率が20/80~80/20であり、且つ、該パラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量が5000~150,000である
(b)パラ型全芳香族コポリアミド塗工液の製造
(a)に記載のパラ型全芳香族コポリアミドを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN-エチル-2-ピロリドン(NEP)のいずれか一つの溶媒もしくはそれらの混合溶媒に、0.5~12質量%の比率で溶解させ、かつ溶解助剤を0.05~20質量%含有させたパラ型全芳香族コポリアミド溶液とした後、さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のうちの一つもしくはそれらの混合物を、パラ型全芳香族コポリアミドに対して0.05~50重量部混合させ、さらに平均粒径が0.01~10μmの無機粒子を該パラ型全芳香族コポリアミド樹脂に対して10~9900重量部を混合させ、樹脂塗工液とする
(c)積層多孔質膜の製造
(b)で得られた樹脂塗工液を、ポリオレフィン多孔膜の上に0.5~15μmの厚さでコーティングする
【請求項2】
前記ポリオレフィン多孔膜が、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはその混合物からなる不織布、または、多孔質フィルムである請求項1に記載の積層多孔質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ型全芳香族コポリアミドからなる積層多孔質膜の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、パラ型全芳香族コポリアミドと無機塩、溶媒で構成する積層膜製造用の溶液に、無機粒子とリチウム系制電剤を添加して塗工液とし、該塗工液をポリオレフィン多孔膜に積層する積層多孔質膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーに用いられるセパレータにはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの多孔膜が用いられる。電池に何らかの異常が発生した場合には電池内部の温度が上昇することがある。ポリオレフィン多孔膜は温度上昇に伴い多孔が閉塞し電池をシャットダウンさせる(シャットダウン機能)。
【0003】
更に温度が上昇し、ポリオレフィンの融点を超えると、多孔膜が収縮し、電池が短絡しショートする。その後、電解液や正極の分解反応を伴い、熱暴走反応を引き起こし発火する。この熱暴走反応を防御するためにポリオレフィン多孔膜に耐熱性を持たせることが種々提案されている。
【0004】
例えば、ポリフッ化ビニリデンや水系アクリル樹脂などをアルミナ等の無機粒子と共にコーティングする技術で耐熱性が高められてきた。しかしより短時間での充電など、電池に求められる耐熱性は年々高まってきている。そこでこれらの樹脂の代わりにアラミド樹脂が使用されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、ポリパラフェニレンテレフタルアミドを代表とするアラミド樹脂をコーティングするためには樹脂を溶媒に溶解させる必要があり、低分子量化する必要があった。しかしながら、アラミド樹脂は分子間の相互作用が強いため、結晶が析出しやすく、塗工液の安定性が悪く、生産性が悪い。
【0006】
そこで、パラ型アラミドの繊維を微細化あるいはフィラーを形成させ、塗工液に混ぜこむ手法が提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、この手法はアラミド繊維を含むため繊維径より薄い薄膜にすることが難しく、実現性に欠ける。
【0007】
そこで、耐熱性樹脂を使用せずに、ガラス転移温度の低い樹脂を用いて、電極との接着性を高めて収縮を抑制する方法が実施されている(特許文献4)。しかしながら、この方法は、樹脂のガラス転移温度が低いために、さらなる高温に達した時に、急激な劣化が起こるため、好ましくない。
【0008】
そこでメタアラミド樹脂とパラアラミド樹脂を共重合する案が提案されている(特許文献5)。しかしながら、メタアラミド樹脂とパラアラミド樹脂を共重合した場合は得られる樹脂の伸度が低くなるため、基材となるポリエチレンやポリプロピレン樹脂の伸長に追随することができず、製造工程で耐熱層が剥落することがあった。また、共重合した場合は、その溶液の安定性が十分ではなく、メタアラミド、パラアラミド樹脂の比率によっては重合後に沈降するなど、取り扱い性が限定されるという問題があった。
【0009】
さらに、メタアラミド樹脂とパラアラミド樹脂を共重合した樹脂を用いて積層多孔質膜を製造した場合、電池組立時の注液工程において、積層多孔質膜への電解液の浸透性が悪く、リードタイムが長くなるなどの欠点があった。このため、積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されたアラミド積層多孔質膜の開発が切望されて来た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-299612号公報
【特許文献2】中国特許第109321127号公報
【特許文献3】特開2019-79807号公報
【特許文献4】特開2016-32934号公報
【特許文献5】国際公開第2019/176421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、溶媒への高い溶解性と塗工液の安定性、さらには、得られた積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されたパラ型全芳香族コポリアミドからなる積層多孔質膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、特定の分子量のパラ型全芳香族コポリアミド樹脂に第三成分として、3,3’オキシジフェニレンジアミン、または3,4’オキシジフェニレンジアミン、または4,4’オキシジフェニレンジアミン、もしくはそれらの混合物を含んだパラ型全芳香族コポリアミドを溶剤に溶解させた樹脂溶液に、リチウム塩を溶解させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明によれば、
1.下記(a)に記載のパラ型全芳香族コポリアミドを用い、下記(b)及び(c)の工程を逐次的に実施することを特徴とするパラ型全芳香族コポリアミド積層多孔質膜の製造方法。
(a)パラ型全芳香族コポリアミド
酸クロライド成分とジアミン成分から構成されるパラ型全芳香族コポリアミドであって、酸クロライド成分としてテレフタル酸クロライド(以下第一成分という)を含み、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(以下第二成分という)及び3,3’オキシジフェニレンジアミン、または3,4’オキシジフェニレンジアミン、または4,4’オキシジフェニレンジアミン、もしくはそれらの混合物(以下第三成分という)を含んでなり、該ジアミン成分における第二成分と第三成分とのモル比率が20/80~80/20であり、且つ、該パラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量が5000~150,000である、
(b)パラ型全芳香族コポリアミド塗工液の製造
(a)に記載のパラ型全芳香族コポリアミドを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN-エチル-2-ピロリドン(NEP)のいずれか一つの溶媒もしくはそれらの混合溶媒に、0.5~12質量%の比率で溶解させ、かつ溶解助剤を0.05~20質量%含有させたパラ型全芳香族コポリアミド溶液とした後、さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のうちの一つもしくはそれらの混合物を、パラ型全芳香族コポリアミドに対して0.05~50重量部混合させ、さらに平均粒径が0.01~10μmの無機粒子を該パラ型全芳香族コポリアミド樹脂に対して10~9900重量部を混合させ、樹脂塗工液とする
(c)積層多孔質膜の製造
(b)で得られた樹脂塗工液を、ポリオレフィン多孔膜の上に0.5~15μmの厚さでコーティングする、そして、
2.前記ポリオレフィン多孔膜が、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはその混合物からなる不織布、または、多孔質フィルムである上記1に記載の積層多孔質膜の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶媒への高い溶解性と塗工液の安定性、さらには、得られた積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されたパラ型全芳香族コポリアミドからなる積層多孔質膜が得られるので、リチウムイオンバッテリーに用いられるセパレータなどの用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0016】
<パラ型全芳香族コポリアミド>
本発明におけるパラ型全芳香族コポリアミドは、酸クロライド成分とジアミン成分から構成され、化学式(1)に示す如く、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。そして、本発明におけるパラ型全芳香族コポリアミドは、酸クロライド成分としてテレフタル酸クロライド(以下第一成分という)を含み、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(以下第二成分という)及び化学式(2)であらわされる、3,3’オキシジフェニレンジアミン、または3,4’オキシジフェニレンジアミン、または4,4’オキシジフェニレンジアミン、もしくはそれらの混合物(以下第三成分という)を含んでなり、該ジアミン成分における第二成分と第三成分とのモル比率が20/80~80/20である。
【0017】
【0018】
【0019】
<パラ型全芳香族コポリアミドの製造方法>
本発明におけるパラ型全芳香族コポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライド(以下「酸クロライド」ともいう)成分と芳香族ジアミン成分とを低温溶液重合、または界面重合などにより反応せしめることにより得ることができる。
【0020】
[パラ型全芳香族コポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
パラ型全芳香族コポリアミドの製造において使用される芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、上記化学式(1)を満たすものとして、テレフタル酸ジクロライドがあげられる。その他に2-フルオローテレフタル酸クロライド、2―クロローテレフタル酸ジクロライド、2-シアノーテレフタル酸ジクロライドなど官能基のついたものでも構わない。経済合理性の観点から、テレフタル酸ジクロライドが好適である。これを第一成分とする。
【0021】
(芳香族ジアミン成分)
パラ型全芳香族コポリアミドの製造において使用される芳香族ジアミン成分としては、上記化学式(1)を満たすものとして、p-フェニレンジアミンを用いる。また他の芳香環としては2―フルオローパラフェニレンジアミン、2ークロローパラフェニレンジアミン、2ーシアノーパラフェニレンジアミンなどを用いても構わない。経済合理性の観点から、p-フェニレンジアミンが好適である。これを第二成分とする。
【0022】
また、上記化学式(2)を満たすものとして、第二成分以外の芳香族ジアミン成分として、3,3’オキシジフェニレンジアミン、または3,4’オキシジフェニレンジアミン、または4,4’オキシジフェニレンジアミン、のうちのいずれか一つもしくは混合物を第三成分とする。
【0023】
第三成分は第二成分と混合して用いる。該ジアミン成分における第二成分と第三成分とのモル比率は20/80~80/20、より好ましくは30/70~70/30である。第二成分の比率が80より大きい場合にはポリマーの結晶が析出し、溶液が不安定となる。また、第二成分の比率が20より小さい場合には得られる積層膜の強度が低下するため好ましくない。
【0024】
[重合溶媒]
パラ型全芳香族コポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましく、水分率が500ppm未満であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドの製造においては、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族コポリアミドに対する溶解性等の観点から、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)を用いることが好ましい。
【0026】
[重合体の分子量]
パラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量(Mw)は5,000~150,000であることが必要である。重量平均分子量(Mw)が5,000以下の場合には無機粒子と混合した後、ポリオレフィン膜に塗工した後に樹脂が無機粒子を担持することができず粉落ちとなる。一方、重量平均分子量が150,000を超える場合には、塗工液の粘度が高くなりすぎて、生産性が悪化する。
【0027】
[重合体の吸光度の比]
パラ型全芳香族コポリアミドの、赤外分光測定により得られる赤外吸収スペクトルの波長1318cm-1の吸光度Aに対する波長1650cm-1の吸光度Bの比(B/A)は0.95~2.5であることが好ましい。この比が0.95より小さい場合は、第三成分の比率が高くなり、強度が低下する。一方、この比が2.5を越える場合は、第三成分の比率が少なくなり、重合後沈降しやすくなるため好ましくない。
【0028】
[その他重合条件等]
上述の重合溶媒のいずれか一つもしくはそれらの混合溶媒における、パラ型全芳香族コポリアミド重合体の濃度は0.5~12質量%であることが好ましい。濃度が0.5%未満の場合には粘度が低すぎ、のちに凝固しポリマーを単離する際に工程が安定せず好ましくない。また12質量%を超えるとポリマーが溶解しきれずに析出するため好ましくない。
【0029】
生成する全芳香族コポリアミド重合体の溶解性を向上させるため、重合前、途中、終了時のいずれかに、一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属の塩化物、および塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物が挙げられる。このうち塩化リチウム、塩化カルシウムが好ましい。
【0030】
また、パラ型全芳香族コポリアミドの末端は、封止することもできる。末端封止剤を用いて末端を封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体等を末端封止剤として用いることができる。
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩等を併用することもできる。
【0031】
反応の終了後は、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加し、中和反応を実施してもよい。
中和反応後、析出した塩はフィルトレーションのプロセスを経由し除去することが好ましい。
【0032】
上記方法により得られたパラ型全芳香族コポリアミド重合体溶液は0~80℃で溶液状態を維持するため、そのまま、ポリオレフィン多孔膜への塗工液とすることも可能である。また、本発明で得られた、重合体溶液を貧溶媒中に浸漬し、凝固することで、例えば繊維状や他の形状の固形物とすることも可能である。
固形物とする場合には以下の凝固方法により、固形物とし、溶剤に再溶解させる。
【0033】
[凝固方法]
パラ型全芳香族コポリアミド、および溶媒を含む重合体溶液(ドープ)を調整する方法は、貧溶媒への浸漬により凝固させることができる。
重合体溶液(ドープ)の調製に用いられる溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)等を挙げることができる。また、用いられる溶媒は1種単独であっても、2種以上を混合した混合溶媒であってもよい。さらには、パラ型全芳香族コポリアミドの重合に用いた溶媒を、そのまま使用してもよい。
【0034】
なお、重合体溶液(ドープ)におけるポリマー濃度、すなわちパラ型全芳香族コポリアミドの濃度は、0.5質量%以上12質量%以下の範囲とすることが好ましい。重合体溶液(ドープ)におけるポリマー濃度が0.5質量%未満の場合には、ポリマーの絡み合いが少ないため、凝固時に必要な粘度が得られず、吐出安定性が低下してしまう。一方で、ポリマー濃度が12質量%を超える場合には、ドープの粘性が急激に増加するため、吐出安定性が低下し、凝固が困難となりやすい。
【0035】
[凝固浴]
本発明における凝固方法は、上記のように重合体を湿式凝固するのであるが、その凝固液の組成としてはパラ型全芳香族コポリアミドの貧溶媒であることが好ましい。凝固液の組成は必ずしも単一である必要はなく、例えばNMPと水との混合溶媒でもよい。溶剤回収の効率性の観点から凝固浴組成(NMP/水)としてはNMP濃度が高い方が好ましく、NMP濃度は30%以上が好ましい。より好ましくは35%以上である。
【0036】
[その他の工程]
凝固液から凝固物を引き上げた後は、凝固浴中で凝固して形成した凝固物を水洗して溶媒を徐々に除去する。そのために水洗浴の温度は60℃以下が好ましい。
水洗後は100℃以上の温度で乾燥後、糸条をカットしてもよいし、糸条のままとしてもよい。
【0037】
[パラ型全芳香族コポリアミド塗工液の製造]
上記重合体溶液或いは凝固物は、そのまま、あるいはカットした状態で溶媒に溶解し、再溶解する。使用する溶媒は特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)等を挙げることができる。また、用いられる溶媒は1種単独であっても、2種以上を混合した混合溶媒であってもよい。これらの内、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。
【0038】
再溶解には、公知のミキサーを使用することができる、1軸のミキサー、リボンミキサー、プラネタリーミキサーなどを使用することができる。その中でも、プラネタリーミキサーを選定するのが好ましい。溶解にあたっては、溶媒をミキサー内に投入後、糸条あるいはカットされた糸条、粉末状の重合体を溶媒に分散させる。分散させながら、加温を行う。温度は60℃以上が好ましい。溶解時間を早めることが可能なことから、80℃以上がなお好ましい。昇温後、さらなる溶解性を高めるために、溶解助剤として塩化リチウム、塩化カルシウム、臭化リチウムなどのハロゲン化金属塩を混ぜ合わせる。
【0039】
溶解助剤の濃度は溶媒に対し0.05~20.0質量%であることが必要である。該濃度が0.05質量%未満の場合には溶解助剤として能力が不足しポリマーが溶解しなくなる。一方、該濃度が20.0質量%を越える場合には得られた溶液の粘度が高くなりすぎる。また、重合体溶液をそのまま塗工液とする場合にも溶液を安定に保つため、ハロゲン化金属塩を加えることが好ましい。
【0040】
パラ型全芳香族コポリアミド樹脂溶液の重合体濃度は0.5質量%以上12質量%以下である必要がある。重合体の濃度が0.5質量%以下の場合には重合体の量が少なく、粉落ちが発生する恐れがある。一方、重合体濃度が12質量%を越える場合には塗工液の粘度が高くなりすぎて、生産性が悪化する。
【0041】
重合後の溶液もしくは重合後、ポリマーを単離したのち再度溶剤に溶解させたパラ型全芳香族コポリアミド樹脂溶液に、さらに以下の工程を行い、ポリオレフィン多孔膜に塗工可能な樹脂塗工液を得ることができる。
【0042】
従来、パラ型全芳香族アラミドをコーティングする際には専らポリパラフェニレンテルフタルアミド(PPTA)が用いられてきた(特許文献1)。その際、重合時に溶媒に溶解できる状態とするためには低重合度として使用されてきたが、該溶液の安定性は悪く、アラミド樹脂溶液作成後すぐに塗工する必要があった。そのため、溶液の安定性を阻害する他の成分等を混合することは困難であった。またPPTA繊維を使用する場合には、パルプ状やショートカットファイバーなどの形状としたりし、さらに微細化するなどの処置が必要であり、あるいはフィラーを形成するなどの処置が必要であった。さらにこれらをつなぎとめるためにバインダー樹脂が用いられたが、薄膜にすることが困難であった。
【0043】
本発明で用いた溶剤に可溶なパラ型全芳香族コポリアミド樹脂を使用すれば、溶剤に溶解しているため、薄膜化することが可能である。また基材の生産工程でのライン方向への張力にも追随し、積層された耐熱層の脱落も発生しにくい。
【0044】
本発明においては、該パラ型全芳香族コポリアミド溶液に、さらに六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のうちの一つもしくはそれらの混合物を混ぜ合わせることで電池組立時の電解液浸透時間が短縮される。
【0045】
リチウムイオンは非常に強いルイス酸(電化密度が高い)であるため、解離させるには対イオンとなるアニオンは比較的サイズが大きく電子が非局在化するような構造をもったルイス塩基性の低いものを用いる必要がある。そのようなリチウム塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)やホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が挙げられ、これらのうち一つもしくは混合物をパラ型全芳香族コポリアミド樹脂100重量部に対して0.05~50重量部添加することが必要である。また、必要に応じて、合成ラテックスなどの電極との接着性を上げる剤を添加しても構わない。
【0046】
このパラ型全芳香族コポリアミド樹脂とリチウム塩の混合溶液に無機粒子を混ぜ合わせて、塗工液とする。無機粒子としては湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化セリウム、二酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム及びフッ化カルシウムなどが挙げられる。無機粒子の平均径は0.01μm~10μmである。0.01μm以下の場合には取り扱性が困難となり好ましくない。10μm以上の場合には塗工膜を薄くすることができにため、好ましくない。無機粒子の含有量は重合体100重量部に対して10~9900重量部であることが必要である。無機粒子の含有量が10重量部より少ないと、ポリオレフィン多孔膜が収縮する際の収縮応力に抵抗する粒子間の衝突が起こりにくく好ましくない。一方、無機粒子の含有量が9900重量部を越える場合には無機粒子に対する重合体の量が少なすぎるため、粒子が担持されずに脱落する、所謂粉落ちが発生するため、好ましくない。
【0047】
[積層多孔質膜の製造]
次に、上記の塗工液を、ポリオレフィン多孔膜の上に0.5~15μmの厚さでコーティングし、積層多孔質膜を得る、ポリオレフィン多孔膜への塗工量は20~80g/m2程度が好ましい。
該塗工量が20g/m2未満の場合には、電池が過熱した際にポリオレフィン多孔膜の収縮力に抵抗することができず、積層多孔質膜の収縮率が低下するため好ましくない。該塗工量が80g/m2を超える場合には、塗工層が厚くなりすぎて、透気度が低下するため、電池の抵抗が高くなり好ましくない。
塗工する方法はドクターナイフ法、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコーター法、コンマコーター法、マイヤーバー法などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、表面に芳香族コポリアミド重合体が塗工された積層多孔質膜を乾燥機で乾燥させる。乾燥温度は50~100℃が好ましい。より好ましくは60~80℃である。100℃以上の場合にはポリオレフィン多孔膜の多孔が溶融し閉孔する可能性があり、好ましくない。50℃以下の場合には、生産速度が低下するため好ましくない。乾燥後、残留する溶剤を除去するために、貧溶剤の凝固液に浸漬しても構わない。凝固の方法としては凝固液をスプレーする方法や凝固液に浸漬する方法などが挙げられる。凝固液は前記重合体組成物を凝固することのできる液体であればよいが、本発明では水が好ましい。この純水の導電率が1.0μS/cmのものが好ましい。溶剤回収の観点からまた、積層膜の構造を形成する観点から水に重合体組成物に使用している溶剤を0~30質量%含有しているものが好ましい。凝固時間は10~300秒が好ましい。10秒以下の場合には凝固が不十分となるため、好ましくない。300秒以上の場合は生産速度が低下し、工業化には適さないため、好ましくない。
【0049】
このようにして得られた積層多孔質膜は、溶媒への高い溶解性と塗工液の安定性を有しており、さらには、積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されている。
また、このようにして得られた積層多孔質膜において、積層膜とポリオレフィン多孔膜との透気度の差(Δ透気度)は25~120秒/100ccであることが好ましい。該透気度の差(Δ透気度)が25秒/100ccより小さい場合は、積層膜の構造がルーズになり低収縮が達成できないばかりか、粉落ちが発生し、セパレータとして不適である。一方、該透気度の差(Δ透気度)が120秒/100ccより大きい場合は、低収縮かつ粉落ちの無いセパレータを得ることができるが、正極と負極間のリチウムイオンの移動を阻害し、電池性能を低下させる。
【0050】
また、得られた積層多孔質膜の150℃での熱収縮率は10%以下であることが好ましい。該熱収縮率が10%を越える場合は、寸法変化が大きくなり過ぎ、正極と負極が短絡するため、セパレータとして不適となる場合がある。
【実施例0051】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。また、実施例中の各物性は以下の方法により測定した。
【0052】
(1)分子量
重量平均分子量(Mw)および分子量多分散度(Mw/Mn)を、以下の測定条件によりゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
装置名 :高速液体クロマトグラフ LC-20Aシリーズ
カラムオーブン :CTO-20A
移動相 :NMP
オートサンプラ :SIL-20AHT
LCワークステーション:LC solution
流量 :0.3ml/分
示差屈折計検出器 :RID-10A
オーブン温度 :60℃
分子量標準試料 :ポリスチレン
【0053】
(2)粘度
ブルックフィールド社のDV2T型粘度計を用いて粘度を測定した。
【0054】
(3)積層膜の厚さ
基材となるポリオレフィン多孔膜と積層多孔質膜とをそれぞれ10cm×10cmのサイズに打ち抜き、それぞれの厚さを9点測定し平均値を算出し、以下の計算式より、積層膜の厚さを算出した。
積層膜の厚み=(積層多孔質膜の厚さの平均値)-(ポリオレフィン多孔膜の厚さの平均値)
【0055】
(4)150℃熱収縮率
得られた積層多孔質膜を一定寸法で切り出し、その切片を紙に挟んで150℃の温度に設定した乾燥機に60分入れ、加熱乾燥前後の寸法変化から熱収縮率を測定した。尚、収縮率測定は、基材送り出し方向と平行方向(MD)と、垂直方向(TD)の2方向でそれぞれ実施し、その平均値を熱収縮率とした。
【0056】
(5)浸透性
得られた積層多孔質膜をガラス板上に置き、垂直方向1cmの高さから10μLのガンマバレロラクトンを滴下する。滴下1分後の液滴の落下地点から最も遠い浸透場所までの長さを測定する。5点の測定を行い、その平均値を算出する。
【0057】
(6)重合体の吸光度の比
積層多孔質膜の表面に形成された積層膜について、下記の方法で赤外分光測定を行った。得られた赤外吸収スペクトルから、波長1318cm-1の吸光度A、及び波長1650cm-1の吸光度Bを求め、吸光度比(B/A)を算出した。
装置:サーモサイエンティフィック製、ニコレ6700
測定法:ATR法(1回反射ATR法)
プリズム:ダイアモンド
入射角:45°
測定波長:4000-400cm-1
積算回数:32回
【0058】
<実施例1>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)200g、パラフェニレンジアミン2.2822g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)4.2259gを、常温下で反応容器に入れ、窒素雰囲気中で溶解混合した後、攪拌しながらテレフタル酸クロリド8.9378gを添加した。引き続き、85℃で60分間重合反応せしめることにより、透明で粘稠なポリマー溶液を得た。次いで、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を12.17g添加し、中和反応を行うことにより重合を終了させ、パラ型全芳香族コポリアミド樹脂溶液を得た。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
【0059】
得られたパラ型全芳香族コポリアミド樹脂溶液をそのまま用い、紡糸口金(孔径0.3mmφ、ホール数200)から、紡糸口金面と凝固浴との距離10mmのエアーギャップを介して、NMP水溶液(NMP濃度:40質量%、温度;20℃)を凝固液とする凝固浴中に紡出して凝固させ(半乾半湿式)、引き続き、引き上げられた凝固糸を45℃で水洗し、170℃の乾燥ローラー上で25秒間接触させて乾燥し、繊維状のパラ型全芳香族コポリアミドを得た。
得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、総繊度1540dtexであった。得られたパラ系共重合芳香族ポリアミド繊維を40mmにカットし、カットファイバーを得た。
【0060】
[塗工液の作成]
得られたカットファイバーをポリマー濃度が4質量%になるようにNMPを加え、攪拌しながら、80℃まで加温した。80℃に到達後、溶解助剤として塩化カルシウムを8質量%となるように加え、60分間攪拌し、パラ型全芳香族コポリアミド樹脂溶液を得た。
次に、ポリマー量100重量部に対し、20重量部のリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を樹脂溶液に攪拌しながら加えた。均一に攪拌した後、ポリマー100重量部に対し900重量部となるよう平均粒径0.3μmのアルミナを添加し、積層用の塗工液を作成した。
【0061】
[塗工液のコーティング]
膜厚が10μmで通気度が170秒/100ccのポリオレフィン多孔膜(上海エナジー製)の上にマイヤーバーを使用して片面にコーティングした。コーティング後、水に浸漬し、凝固、乾燥させ、積層多孔質膜を得た。得られた積層多孔質膜の厚さは14μmであった。
【0062】
<実施例2>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン3.0429g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)5.6345g、テレフタル酸クロリド9.7117gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を14.08g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は5000であった。
【0063】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を10質量%、塩化カルシウム濃度を10質量%とする以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0064】
<実施例3>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
テレフタル酸クロリド8.4834gを加えて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を12.30g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は150000であった。
【0065】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を1質量%、塩化カルシウム濃度を2質量%とする以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0066】
<実施例4>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
溶解助剤として塩化リチウム0.075質量%を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0067】
<実施例5>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン4.0446g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)1.8723g、テレフタル酸クロリド9.3017gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を13.49g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は82000であった。
【0068】
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0069】
<実施例6>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン0.8320g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)6.1625g、テレフタル酸クロリド7.6539gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を11.10g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は79000であった。
【0070】
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0071】
<実施例7>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)の代わりに4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4-DAPE)を使用する以外は実施例6と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
【0072】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を6%にする以外は実施例2と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
以上、実施例1~7の評価結果を表1に示す。
【0073】
<実施例8>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
使用する溶媒をN-エチル-2-ピロリドン(NEP)に変更する以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0074】
<実施例9>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
平均粒径3μmのアルミナを使用する以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0075】
<実施例10>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
50重量部のリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を添加する以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0076】
<実施例11>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
0.05重量部のリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を添加する以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
【0077】
<実施例12>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン4.0446g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)1.8723g、テレフタル酸クロリド9.3967gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を13.62g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は150000であった。
【0078】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を5質量%、添加するアルミナを10重量部とする以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。得られた積層多孔質膜の厚さは25μmであった。
【0079】
<実施例13>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン0.8320g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)6.1625g、テレフタル酸クロリド7.7320gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を11.21g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は150000であった。
【0080】
[塗工液の作成]
添加するアルミナを9900重量部とする以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。得られた積層多孔質膜の厚さは25μmであった。
【0081】
<実施例14>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
片面の厚さを0.5μmとして、両面にコーティングする以外は実施例1と同様に実施した。
以上、実施例8~14の評価結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
<比較例1>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン2.2822g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)4.2259g、テレフタル酸クロリド6.4269gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を9.32g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は1200であった。
【0085】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を15質量%とする以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
ポリマー濃度が高すぎるため、塗工できなかった。
【0086】
<比較例2>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン2.2822g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)4.2259g、テレフタル酸クロリド8.5520gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を12.40g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は300000であった。
【0087】
[塗工液の作成]
ポリマー濃度を0.5質量%とする以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
塗工液の粘度が低すぎて塗工できなかった。
【0088】
<比較例3>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン4.7195g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)0.9710g、テレフタル酸クロリド9.6479gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を13.99g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は83000であった。
[塗工液の作成]
重合後、ポリマーが析出し沈降したため、塗工液を作成することができなかった。
【0089】
<比較例4>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
パラフェニレンジアミン0.4041g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)6.7340g、テレフタル酸クロリド7.4344gにて重合反応を行い、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を10.78g添加して中和する以外は、実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は79000であった。
【0090】
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
結果、収縮率が高く、不適であった。
【0091】
<比較例5>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
溶解助剤として塩化リチウムを0.01質量%にする以外は実施例1と同様に実施しようとしたが、ポリマーが溶解しきらず、塗工液を作成できなかった。
【0092】
<比較例6>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
溶解助剤として塩化リチウムを25質量%にする以外は実施例1と同様に実施しようとしたが、室温に静置後、塩化リチウムが析出し、塗工液を作成できなかった。
【0093】
<比較例7>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
平均粒径20μmのアルミナを使用する以外は実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施したが、表面の凹凸が激しく、セパレータとして不適なものとなった。
【0094】
<比較例8>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
実施例1において、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を添加しない以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施した。
結果、溶媒浸透性が悪く、不適であった。
【0095】
<比較例9>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
実施例1において、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を80重量部加える以外は、実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
実施例1と同様に実施しようとしたが、粘度が高くなりすぎ、塗工できなかった。
【0096】
<比較例10>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
コーティング厚さを0.4μmとする以外は実施例14と同様に実施した。
【0097】
<比較例11>
[パラ型全芳香族コポリアミドの重合]
実施例1と同様に実施した。得られたパラ型全芳香族コポリアミドの重量平均分子量は81000であった。
[塗工液の作成]
実施例1と同様に実施した。
[塗工液のコーティング]
コーティング厚さを20μmとする以外は実施例1と同様に実施した。
結果、塗工層が厚いため、溶媒浸透性が悪く、不適であった。
実施例及び比較例により得られた積層多孔質膜の物性を表1に示す。
以上、比較例1~11の評価結果を表3に示す。
【0098】
溶媒への高い溶解性と塗工液の安定性、さらには、得られた積層多孔質膜への電解液の浸透性が可及的に改善されたパラ型全芳香族コポリアミドからなる積層多孔質膜が得られるので、その工業的価値は極めて大きい。