(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142435
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】架橋ポリエチレン管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/12 20060101AFI20230928BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16L9/12
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049351
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB02
3H111CB03
3H111CB14
3H111DB03
4J002BB201
(57)【要約】
【課題】耐クリープ性に優れ、しかも配管施工性に優れる架橋ポリエチレン管を提供する。
【解決手段】密度が0.931~0.938g/cm3であり、ゲル分率が80%以上であり、曲げ弾性率が630MPa以上720MPa未満である架橋ポリエチレンで構成された架橋ポリエチレン管。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.931~0.938g/cm3であり、ゲル分率が80%以上である架橋ポリエチレンで構成されたことを特徴とする、架橋ポリエチレン管。
【請求項2】
前記架橋ポリエチレンの曲げ弾性率が630MPa以上720MPa未満である、請求項1に記載の架橋ポリエチレン管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリエチレン管に関する。
さらに詳しくは、機械的特性、施工性に優れ、水道用あるいは給湯用配管として好適に使用し得る架橋ポリエチレン管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐腐食性、施工性に優れたプラスチック配管材が給水・給湯用の配管として用いられている。特に架橋ポリエチレン管は、耐圧性、高温度域での耐クリープ性に優れているため、広く用いられている。
中でも、樹脂密度が0.938g/cm3以上のポリエチレンを架橋して得られる架橋ポリエチレン管が、優れた耐圧性を備え、より高い水圧に晒される配管に適しているとして提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の架橋ポリエチレン管のように、密度の高いポリエチレンを原料として使用すると、得られた架橋ポリエチレン管は硬く曲がりにくくなり、配管の施工がしにくくなるという問題があった。
一方で、施工しやすくするために密度の低いポリエチレンを原料として使用すると、得られた架橋ポリエチレン管は柔らかく曲がりやすいが、耐圧性が低くなり、給水・給湯用の配管として使用することができない。
そこで、本発明は、耐クリープ性に優れ、しかも配管施工性に優れる架橋ポリエチレン管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、配管施工性を確保するために低密度樹脂を採用した場合でも、高架橋とすることによって耐クリープ性を満たせることを見出し、本発明に至った。本発明は以下のとおりである。
【0006】
[1]密度が0.931~0.938g/cm3であり、ゲル分率が80%以上である架橋ポリエチレンで構成されたことを特徴とする、架橋ポリエチレン管。
[2]前記架橋ポリエチレンの曲げ弾性率が630MPa以上720MPa未満である、[1]に記載の架橋ポリエチレン管。
【発明の効果】
【0007】
本発明の架橋ポリエチレン管は、耐クリープ性に優れ、しかも配管施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】90°曲げ最大荷重の測定に用いたガイドパイプの(a)端面図、(b)側面図である。
【
図2】90°曲げ最大荷重の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
<架橋ポリエチレン>
架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンは、ポリエチレンが架橋されたものである。架橋ポリエチレンは、ポリエチレンを架橋する方法に応じて、ポリエチレン以外の成分を含む。例えば原料のポリエチレンをシラン水架橋法により架橋した架橋ポリエチレンであれば、ポリエチレンに加えて、ビニルシラン化合物及びラジカル発生剤を含む。その他、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0011】
本実施形態の架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンは、密度が0.931~0.938g/cm3である。架橋ポリエチレンの樹脂密度は、0.933~0.936g/cm3であることが好ましい。
樹脂密度が0.931g/cm3以上であることにより、優れた耐クリープ性が得られる。樹脂密度が0.938g/cm3以下であることにより、優れた配管施工性が得られる。
なお、樹脂密度は、JIS K 7112のA法で規定された水中置換法により測定した値である。
【0012】
架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンのゲル分率は80%以上である。ゲル分率は、81~95%であることが好ましく、81~90%であることがより好ましい。
ゲル分率が80%以上であることにより、低密度の架橋ポリエチレンでも、良好な耐クリープ性を得ることができる。
また、ゲル分率が好ましい上限値以下であることにより、樹脂の脆化による性能低下がなく性能バランスの良好な管を得ることができる。
なお、ゲル分率は、JIS K 6796の「不溶解物の質量の百分率」であり、樹脂の架橋度を示す指標である。
【0013】
架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンは、曲げ弾性率が630MPa以上720MPa未満であることが好ましい。架橋ポリエチレン管の曲げ弾性率は、650~700MPaであることがより好ましい。
曲げ弾性率が720MPa未満であることによって、管の柔軟性が高く、より良好な施工性が得られる。曲げ弾性率が630MPa以上であることにより、耐クリープ性がより優れる。
曲げ弾性率は、JIS K7171に準じて求めることができる。
【0014】
曲げ弾性率は、架橋ポリエチレンの密度が低いほど低下させることができる。また、架橋ポリエチレンの結晶化度を低くすることによっても低下させることができる。
架橋ポリエチレンの結晶化度を低くする方法としては、例えば、架橋ポリエチレンのゲル分率を高くすることが挙げられる。また、炭素数が4、又は6のα-オレフィン等を共重合させて樹脂の分岐を多くすることによっても、樹脂の結晶化度を低くすることができる。
【0015】
また、成形時の冷却方法によっても結晶化度を調整できる。冷却処理時の温度が低く急速に冷却するほど、得られる架橋ポリエチレンの結晶化度が低くなる傾向がある。
また、架橋処理後に再溶融(融点以上に加熱)し冷却固化することによっても、得られる架橋ポリエチレンの結晶化度が低くなる傾向がある。
【0016】
<架橋ポリエチレン管>
架橋ポリエチレン管は、円筒状又は多角筒状の管である。架橋ポリエチレン管の大きさは、一般的に使用されている給湯配管等の仕様のものであれば特に限定されないが、通常は、外径が6~200mmであることが好ましく、厚さが1~30mmであることが好ましく、長さが0.3~200mであることが好ましい。
【0017】
架橋ポリエチレン管は、管の内表面及び外表面の少なくとも一方が被覆層で被覆された多層管であってもよい。
被覆層の材質としては、可撓性の熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
架橋ポリエチレン管は、90°曲げ最大荷重が40N以下であることが好ましく、36N以下であることがより好ましい。
90°曲げ最大荷重が40N以下であることによって、より良好な施工性が得られる。
90°曲げ最大荷重は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0019】
<架橋ポリエチレン管の製造方法>
本実施形態の架橋ポリエチレン管は、未架橋のポリエチレンを成形し、架橋処理した後、85℃以上の熱水へ24時間浸漬し、その後冷却することにより得られる。
【0020】
本明細書において未架橋のポリエチレンとは、架橋処理により架橋できるよう、原料のポリエチレンに、架橋させるための成分を配合した樹脂組成物、又は、架橋処理により架橋できるように、予め変性されたポリエチレン、若しくは前記予め変性されたポリエチレンを含む樹脂組成物を意味する。
【0021】
ポリエチレンを架橋する方法としては、特に限定されない。例えば特公昭45-35658号公報等に記載の過酸化物架橋法(エンゲル法)、特公昭48-1711号公報等に記載のシラン架橋法などが挙げられる。これらの中でもシラン架橋法が好ましい。
【0022】
シラン架橋法の中でも、シラン水架橋法が特に好ましい。シラン水架橋法は、ポリエチレンに、ポリエチレンを架橋させるための成分としてビニルシラン化合物とラジカル発生剤を添加し反応させることにより、ビニルシラン化合物をグラフトさせた未架橋のポリエチレンを得、この未架橋のポリエチレンを水存在下でシラノール縮合させる架橋法である。
シラン水架橋法においては、シラノール縮合反応を促進させる目的で、ビニルシラン化合物及びラジカル発生剤に加えて、シラノール縮合触媒を、ポリエチレンを架橋させるための成分として使用してもよい。
【0023】
シラン水架橋法の場合、未架橋のポリエチレンは、原料のポリエチレンにビニルシラン化合物及びラジカル発生剤を配合した樹脂組成物、若しくは、さらにシラノール縮合触媒を配合した樹脂組成物であり得る。又はビニルシラン化合物をグラフトさせたポリエチレン、若しくは、ビニルシラン化合物をグラフトさせたポリエチレンに加えてシラノール縮合触媒を含む樹脂組成物であり得る。
以下、シラン水架橋法で架橋する場合を例にとって、架橋ポリエチレン管の製造方法について詳述する。
【0024】
[原料ポリエチレン]
原料のポリエチレンの密度は特に限定されないが、0.920~0.955g/cm3が好ましく、0.938~0.950g/cm3がより好ましい。原料のポリエチレンの密度が上記範囲内であれば、得られる架橋ポリエチレンの密度を本発明で規定する範囲に調整しやすい。
【0025】
原料のポリエチレンの密度が上記下限値以上であれば、架橋ポリエチレン管の耐水圧性が向上する。密度が上記上限値以下であれば、架橋ポリエチレン管の剛直性が過度に強くなりにくく、施工時に曲げやすく、取り扱いやすい。
原料のポリエチレンの密度は、JIS K 7112のD法で規定された密度勾配管法により測定した値である。
原料ポリエチレンの製造に用いられる触媒の種類としては、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒などが用いられるが、メタロセン触媒を用いて製造された原料ポリエチレンであることが好ましい。
【0026】
原料のポリエチレンの高荷重メルトフローレート(HLMFR)は特に限定されないが、1~100g/10分が好ましい。HLMFRが上記下限値以上であれば、流動性が向上し、成形性が良好になる。HLMFRが上記上限値以下であれば、架橋ポリエチレン管の長期耐久性が向上する。
原料のポリエチレンのHLMFRは、JIS K 7210-1に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定された値である。
【0027】
[ビニルシラン化合物]
ビニルシラン化合物としては、例えばビニルトリスアルコキシラン等が挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシランが好ましい。
また、ビニルシラン化合物としては、上述した以外にも、例えばビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン等を用いてもよい。
ビニルシラン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ビニルシラン化合物の添加量は、原料ポリエチレン100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1.0~10質量部がより好ましい。ビニルシラン化合物の添加量が上記下限値以上であれば、架橋反応が十分に進行する。ビニルシラン化合物の添加量が上記上限値以下であれば、架橋工程において短時間かつ少量の水で十分に架橋処理が行われるので、コストの増大を防げる。
【0029】
[ラジカル発生剤]
ラジカル発生剤としては、例えば有機ペルオキシド、有機ペルエステル等が挙げられ、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3,1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、tert-ブチルペルジエチルアセテート等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルペルオキシドが好ましい。
また、ラジカル発生剤としては、上述した以外にも、例えばアゾビスイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等のアゾ化合物などを用いてもよい。
ラジカル発生剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ラジカル発生剤の添加量は、原料ポリエチレン100質量部に対して0.05~1質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。ラジカル発生剤の添加量が上記下限値以上であれば、架橋反応が十分に進行する。ラジカル発生剤の添加量が上記上限値以下であれば、過剰なラジカル発生によるポリエチレン樹脂の劣化もしくは押出成形時に樹脂架橋による成形不良を抑えて成形することができる。
【0031】
[シラノール縮合触媒]
シラノール縮合触媒としては、シラノール間の脱水縮合を促進する触媒として一般的に用いられる任意の化合物であれば特に限定されず、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジラウリル錫ラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等の化合物;硫酸、塩酸等の無機酸;トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸等の有機酸などが挙げられる。これらの中でも、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートジラウリル錫ラウレートが好ましい。
シラノール縮合触媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
シラノール縮合触媒の添加量は、原料ポリエチレン100質量部に対して0.0005~1質量部が好ましく、0.01~0.5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の添加量が上記下限値以上であれば、架橋反応が十分に進行する。シラノール縮合触媒の添加量が上記上限値以下であれば、押出時に押出機内で触媒が局所的に存在し架橋が局所的に進行することで生じる異物の発生を抑えることができる。
【0033】
[その他の原料]
また、未架橋のポリエチレンには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機充填剤、無機充填剤、顔料、染料、加工助剤等の任意成分を含有させてもよい。
任意成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
[成形・架橋処理]
シラン水架橋法では、ポリエチレン、ビニルシラン化合物及びラジカル発生剤と、必要に応じてシラノール縮合触媒及び任意成分を押出機に供給し、ビニルシラン化合物をグラフトさせた未架橋のポリエチレンを管状に押出成形し、成形管を得る。
【0035】
架橋処理は、得られた成形管を水(水蒸気)の存在下で加熱することにより行う。架橋処理を行う際の温度は、80~125℃が好ましく、95~115℃がより好ましい。架橋処理時の温度が上記下限値以上であることにより、効率的に架橋反応が進行し、架橋時間が短縮する。上記上限値以下であることにより、架橋反応中に成形管が軟化し変形することを防ぐことができる。
なお、被覆層を有する多層管とする場合は、被覆層用の原料と共に多層押出成形をすればよい。
【0036】
[加熱・冷却処理]
架橋処理後の成形管については、さらに、加熱・冷却処理を行ってもよい。
架橋処理後に加熱する場合、その加熱温度は、110~200℃が好ましく、120~180℃がより好ましく、130~160度がより好ましい。
【0037】
架橋処理後の加熱温度が110℃以上であることにより、加熱温度以下で融解する結晶の一部は加熱中に再結晶成長し、融解温度の高い結晶に変化するため、耐クリープ強度が向上する。さらに、降温再結晶時には架橋点が結晶化を阻害することにより架橋ポリエチレン管密度が低下し柔軟性が向上する。また、架橋処理後の加熱温度が200℃以下であることにより、樹脂の酸化劣化を抑制することができる。
架橋処理後の加熱を行う時間は特に限定されないが、0.5~12時間が好ましく、0.5~3時間がより好ましい。
【0038】
架橋処理した成形管を加熱した後に冷却する場合、冷却温度は、0~80℃が好ましく、10~40℃がより好ましい。冷却処理時の温度が低く急速に冷却するほど、得られる架橋ポリエチレンの密度が小さくなる傾向がある。また、水中冷却は空気中冷却よりも冷却速度が速く、密度は空気中冷却よりもより小さくなる傾向がある。
【実施例0039】
次に、本発明を具体的に説明するために、本発明の実施例及びこれとの比較を示すための比較例をいくつか挙げる。なお、部は質量部を意味する。
【0040】
<測定方法>
[密度]
各例で得られた架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンの密度は、得られた架橋ポリエチレン管から長さ50mmに切り出した管を試験片とした。
この試験片を用いて、JIS K 7112のA法で規定された水中置換法により測定することによって密度を求めた。
【0041】
[HLMFR]
JIS K 7210-1のA法で規定された質量測定法により測定することによって求めた。ただし、公称荷重は21.60kg、温度は190℃で行った。
[引張降伏応力]
JIS K 6769により測定することによって求めた。
【0042】
[ビカット軟化点]
JIS K 7206により測定することによって求めた。
[ゲル分率]
JIS K 6796により求めた「不溶解物の質量の百分率」を、各例で得られた架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンのゲル分率とした。
【0043】
[曲げ弾性率]
各例で得られた架橋ポリエチレン管を構成する架橋ポリエチレンの曲げ弾性率は、(株)島津製作所社製のオートグラフを用いて測定した。各例で得られた架橋ポリエチレン管から長さ35mm×幅5mmの粗片を切り出し、この粗片の内面と外面の円弧を研磨することにより平滑にし、長さ35mm×幅5mm×厚さ1.6~1.8mmの試験片を作製した。
曲げ弾性率の測定はJIS K7171(2016)のA法に準じて行った。試験速度は2mm/分とし、支点間距離Lは、[L=16×試験片の厚さh]となるように調節した。
【0044】
[90°曲げ最大荷重]
各例で得られた架橋ポリエチレン管から1m長さを切り出しサンプル管20とした。これを
図1のガイドパイプ10に沿わせて、
図2に示すように、ガイドパイプ10に沿わせて90°曲げた時の最大曲げ荷重を測定した。ただし、曲げ速度は460mm/sec、曲げ長さは400mmとした。荷重の測定には、フォースゲージ(イマダ社製)を用いた。
なお、曲げ速度とは、ガイドパイプ10に沿わせて曲げるサンプル管20先端の移動速度を意味する。
【0045】
なお、ガイドパイプ10は、
図1(a)に示すように円形の管を縦に割った形状とされており、その内面10aにサンプル管20を沿わせることができるようになっている。
また、
図1(b)に示すように、ガイドパイプ10は、長さ方向において曲げられており、曲率半径170mmの1/4円弧状の曲線部11と、その一方の端部から接線方向に伸びる長さ50mmの曲げ先端部12と、その他方の端部から接線方向に伸びる長さ150mmの固定部13とを有している。
【0046】
最大曲げ荷重の測定にあたっては、
図2に示すように、ガイドパイプ10全体が略水平の試験台に接触するように配置し、曲線部11と固定部13との境界部分を、サンプル管20と共に試験台上に固定具30で固定する。そして、サンプル管20をガイドパイプ10に沿って曲げ、ガイドパイプ10の曲線部11の内面10aの全体にサンプル管20が接触するまでに得られた最大荷重を、90°曲げ最大荷重とした。
【0047】
[熱間内圧クリープ]
各例で得られた架橋ポリエチレン管から0.3m長さを切り出しサンプル管とした。このサンプル管を、温度95℃のオーブン内で1時間養生した後、フープストレス4.8MPa、温度95℃で1時間放置し、漏れその他の欠点が生じなければ○、生じた場合は×と評価した。
【0048】
<使用原料>
各例で使用した原料は、下記のとおりである。
・PE1:ポリエチレン。密度0.947g/cm3、HLMFR100g/10min、引張降伏応力19MPa、ビカット軟化点温度123℃。
・PE2:ポリエチレン。密度0.941g/cm3、HLMFR50g/10min、引張降伏応力17MPa、ビカット軟化点温度121℃。
・PE3:ポリエチレン。密度0.938g/cm3、HLMFR76g/10min、引張降伏応力16MPa、ビカット軟化点温度114℃。
・ビニルシラン化合物:トリメトキシビニルシラン(東京化成工業(株)社製)。
・有機過酸化物:パーヘキサ25B(日油(株)社製)。
・シラノール縮合触媒:ジラウリル錫ジラウレート(東京化成工業(株)社製)。
【0049】
<実施例>
[実施例1]
PE2の100部と、ビニルシラン化合物の1.5部と、有機過酸化物の0.3部と、シラノール縮合触媒の0.05部を押出成形し、内径12.8mm、厚さ2.1mmの成形管(呼び径13)を得た。得られた成形管の管内に105℃の蒸気を通気することにより架橋処理を施し、実施例1の架橋ポリエチレン管を作製した。
【0050】
[実施例2]
PE2の100部と、ビニルシラン化合物の2.0部と、有機過酸化物の0.3部と、シラノール縮合触媒の0.05部を押出成形した以外、同様の方法で押出成形し、架橋処理し、実施例2の架橋ポリエチレン管とした。
【0051】
[比較例1]
PE1の100部と、ビニルシラン化合物の1.5部と、有機過酸化物の0.3部と、シラノール縮合触媒の0.05部を、実施例1と同様の方法で押出成形し、架橋処理し、比較例1の架橋ポリエチレン管とした。
【0052】
[比較例2]
PE2の100部と、ビニルシラン化合物の1.0部と、有機過酸化物の0.3部と、シラノール縮合触媒の0.05部を、実施例1と同様の方法で押出成形し、架橋処理し、比較例2の架橋ポリエチレン管とした。
【0053】
[比較例3]
PE3の100部と、ビニルシラン化合物の1.5部と、有機過酸化物の0.3部と、シラノール縮合触媒の0.05部を、実施例1と同様の方法で押出成形し、架橋処理し、比較例3の架橋ポリエチレン管とした。
【0054】
<評価結果>
各例の架橋ポリエチレン管の密度、ゲル分率、曲げ弾性率、熱間内圧クリープ、および90°曲げ最大荷重と曲げ施工性の結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1に示すように、実施例1、2の架橋ポリエチレン管は、曲げ弾性率と90°曲げ最大荷重が十分に低く施工性が良いものであった。また、熱間内圧クリープも良好な結果であった。
これに対して、密度が大きすぎる比較例1、2の架橋ポリエチレン管は、熱間内圧クリープの結果が良好であったが、曲げ弾性率と90°曲げ最大荷重が高く施工性に劣っていた。
また、ゲル分率が低い比較例3の架橋ポリエチレン管は、曲げ弾性率と90°曲げ最大荷重は良好であったが、熱間内圧クリープの結果が劣っていた。