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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142447
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】後方カメラを備えた作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230928BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20230928BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20230928BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/24 A
B60R1/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049367
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 知之
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA01
2D015GB00
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】スペースがほとんど無くても後方カメラを適切な位置に設置できるようにする。
【解決手段】上部旋回体3は、キャブ10と、ブラケット40を介して後部機械室20rの上に取り付けられる後方カメラ30とを備える。後部機械室20rは、開閉可能なボンネット22bで覆われている後方に面した開口23を有している。ブラケット40が、ボンネット22bの周囲の隙間を通じて後部機械室20rの内部に取り付けられる機内部40aと、機内部40aに連なって後部機械室20rの上に配置される機外部40bとを有し、機外部40bの上に後方カメラ30が取り付けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が設置されている上部旋回体を下部走行体の上に搭載した作業機械であって、
前記上部旋回体は、
内部で前記作業装置の操作が行われるキャブと、
前記上部旋回体の後部に位置する後部機械室と、
前記上部旋回体の後方を撮影するために、ブラケットを介して前記後部機械室の上に取り付けられる後方カメラと、
を備え、
前記後部機械室は、外装材で覆われている後方に面した開口を有し、
前記ブラケットが、
前記外装材の周囲の隙間を通じて前記後部機械室の内部に取り付けられる機内部と、
前記機内部に連なって前記後部機械室の上に配置される機外部と、
を有し、
前記機外部の上に前記後方カメラが取り付けられている、作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記機外部に、前記後方カメラの側方および上方を覆うカメラカバーが設けられている、作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記機外部に、前記後方カメラの後方への引き出しを阻止する引出阻止部が更に設けられ、
前記カメラカバーが前記キャブの後方に位置することにより、当該キャブと前記カメラカバーとの間から前記後方カメラが引き出せないように構成されている、作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記機外部に、下方から取付具を差し込むことによって前記後方カメラを取り付けるカメラ取付部が設けられ、
前記カメラ取付部が前記外装材の上に位置するように構成されている、作業機械。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の作業機械において、
前記カメラカバーの上に電装品が設置されている、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、後方カメラを備えた油圧ショベルなどの作業機械に関し、その中でも特に後方小旋回型の小型機種に関する。
【背景技術】
【0002】
後方カメラを備えた作業機械は、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、上部旋回体の後端部分の上に後方カメラを取り付けた、比較的大型の油圧ショベルが開示されている。このような機種であれば、上部旋回体の後端部分の上に後方カメラを設置できるスペースが十分に有る。従って、撮影に適した車幅方向の中央部などの特定の位置でも、支障無く後方カメラを設置できる。
【0004】
それに対し、小型機種、特に後方小旋回型の小型機種では、上部旋回体の後端部分は狭く、後方カメラを設置できるスペースはほとんど無い。従って、撮影に適した位置に後方カメラを設置することは難しい。特許文献2には、そのような機種での後方カメラの設置例が開示されている。
【0005】
すなわち、特許文献2のミニショベルでは、車幅方向の中央部にキャブの支柱が位置している。その支柱の中間部分にバックミラーの取付座が設けられている。その取付座にボルト止めすることにより、後方カメラが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-212344号公報
【特許文献2】特開2020-7759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バランスのよい撮影視野を確保する観点からは、後方カメラは車幅方向の中央部に配置するのが好ましい。それに対し、上述したように、作業機械の小型機種、特に後方小旋回型の機種では、上部旋回体の後端部分が狭く、後方カメラを設置できるスペースはほとんど無い。
【0008】
そのため、特許文献2のミニショベルでは、車幅方向の中央部に位置するキャブの支柱に有ったバックミラーの取付座を利用し、そこに後方カメラを設置している。しかし、後方カメラをキャブの支柱に設置すると、キャブ内で操作するオペレータが上部旋回体の後方を視る時に、その視野を妨げるおそれがある。
【0009】
更に、後方カメラは取付座にボルト止めしただけであるので、工具さえあれば、後方カメラを容易に取り外して持ち出すことができる。従って、後方カメラは盗難されるおそれがある。
【0010】
そこで開示する技術では、後方カメラを設置できるスペースがほとんど無い機種でも、作業視野を妨げることなく後方カメラを適切な位置に設置できるようにする。更には、後方カメラの盗難を防止できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、作業装置が設置されている上部旋回体を下部走行体の上に搭載した作業機械に関する。
【0012】
前記上部旋回体は、内部で前記作業装置の操作が行われるキャブと、前記上部旋回体の後部に位置する後部機械室と、前記上部旋回体の後方を撮影するために、ブラケットを介して前記後部機械室の上に取り付けられる後方カメラと、を備える。前記後部機械室は、外装材で覆われている後方に面した開口を有している。前記ブラケットが、前記外装材の周囲の隙間を通じて前記後部機械室の内部に取り付けられる機内部と、前記機内部に連なって前記後部機械室の上に配置される機外部と、を有し、前記機外部の上に前記後方カメラが取り付けられている。
【0013】
すなわち、この作業機械によれば、上部旋回体の後方を撮影するために、上部旋回体の後部に位置する後部機械室の上に、後方カメラがブラケットを介して取り付けられている。後部機械室の上に取り付けるので、撮影に適するとともにキャブからの後方視野を妨げ難い、適度な高さを確保できる。従って、後方カメラによる間接的な後方確認とオペレータの目視による直接的な後方確認の双方を適切に行うことができる。
【0014】
後方カメラと後部機械室との間に介在するブラケットのうち、ブラケットを上部旋回体に取り付けるための機内部が、外装材の周囲の隙間を通じて後部機械室の内部に取り付けられる。それにより、後部機械室の上部に後方カメラを設置する十分なスペースが無い場合であっても、後方カメラを最適な位置に設置できる。機内部が後部機械室の内部に位置しているので、機外部を最小限にでき、ブラケットの後方への突出量を小さくできる。
【0015】
前記機外部に、前記後方カメラの側方および上方を覆うカメラカバーが設けられている、としてもよい。
【0016】
後方カメラの周囲をこのようなカメラカバーで覆うことで、後方カメラを障害物から保護でき、雨による水濡れも抑制できる。
【0017】
前記機外部に、前記後方カメラの後方への引き出しを阻止する引出阻止部が更に設けられ、前記カメラカバーが前記キャブの後方に位置することにより、当該キャブと前記カメラカバーとの間から前記後方カメラが引き出せないように構成されている、としてもよい。
【0018】
後方カメラは、高額なため、盗難されるおそれがある。それに対し、機外部に引出阻止部が設けられていれば、後方カメラをブラケットから取り外すことができても、後方カメラを後方に引き出すことはできない。更に、カメラカバーがキャブの後方に位置することにより、キャブとカメラカバーとの間から後方カメラが引き出せないように構成されているので、後方カメラを前方に引き出すこともできない。
【0019】
加えて、機内部が後部機械室の内部に有るので、ボンネットを開かなければブラケットを取り外すこともできない。従って、後方カメラは持ち出せない。後方カメラの盗難を確実に防止できる。
【0020】
また、これとは別に、前記機外部に、下方から取付具を差し込むことによって前記後方カメラを取り付けるカメラ取付部が設けられ、前記カメラ取付部が前記外装材の上に位置するように構成されている、としてもよい。
【0021】
この場合も、後方カメラの盗難を確実に防止できる。すなわち、カメラ取付部が外装材の上に位置するので、ボンネットが閉じた通常の状態では、その取付具を抜き差しできないようにすることで、後方カメラを取り外せないようにできる。従って、この場合でも、後方カメラの持ち出しを阻止できる。
【0022】
前記カメラカバーの上に電装品が設置されている、としてもよい。
【0023】
そうすれば、ブラケットを後方カメラと電装品の双方で共用できる。限られたスペースを有効活用でき、部材点数の削減にもなる。
【発明の効果】
【0024】
開示する技術によれば、後方カメラを設置できるスペースがほとんど無い機種でも、作業視野を妨げることなく後方カメラを適切な位置に設置できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】開示する技術を適用した油圧ショベルを斜め後方から見た図である。
図2】油圧ショベルを後方から見た図である。
図3】油圧ショベルを上方から見た図である。
図4】ブラケットを説明するための図である。
図5】ボンネットを省略した状態の後部機械室を示す図である。
図6】ブラケットに後方カメラが設置されている通常の使用状態を示す図である。
図7】通常の使用状態の概略断面図である。
図8図2における要部を拡大した図である。
図9】後方カメラの取り付けの別形態(第2実施形態)を説明するための図である。
図10】第2実施形態における図6相当図である。
図11】第2実施形態における図7相当図である。
図12】第2実施形態における図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、開示する技術について説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎない。説明で用いる前後、左右、および上下の方向は各図に矢印で示すように、上部旋回体を基準とする。
【0027】
図1から図3に、開示する技術を適用した油圧ショベル1(作業機械の一例)を示す。図1は、油圧ショベル1を斜め後方から見た図である。図2は、油圧ショベル1を後方から見た図である。図3は、油圧ショベル1を上方から見た図である。
【0028】
油圧ショベル1は、大略、下部走行体2と、その上に旋回自在に搭載された上部旋回体3とで構成されている。下部走行体2は、その左右に一対のクローラ2a,2aを有している。油圧ショベル1は、これらクローラ2a,2aを回転させることによって走行する。
【0029】
この油圧ショベル1は、機体質量が6t未満の小型機種である。詳細は後述するように、上部旋回体3ではキャブ10が相対的に大きく構成されている。この油圧ショベル1はまた、後方小旋回型である。すなわち、上部旋回体3の後部は、上方から見て、旋回中心に対応した円弧状に形成されており、旋回時に、車幅方向の外側(クローラ2aよりも外側)にはみ出さないように構成されている。
【0030】
上部旋回体3は、基台3a、アタッチメント4、キャブ10、機械室20などによって構成されている。基台3aは、上部旋回体3の下部を構成しており、下部走行体2に旋回自在に支持されている。アタッチメント4、キャブ10、機械室20は、この基台3aの上に設置されている。
【0031】
なお、この油圧ショベル1では、油圧ショベル1の後方全域に対するオペレータの作業視野をアシストするために、上部旋回体3の後方を撮影する後方カメラ30が上部旋回体3に装備されている。開示する技術では、その後方カメラ30の取り付けが工夫されているので、これらについては別途後述する。
【0032】
アタッチメント4は、オペレータの操作に応じて掘削等の作業を行う装置(作業装置)である。詳細には図示しないが、アタッチメント4は、バケット、アーム、ブームなどで構成されている。
【0033】
アタッチメント4は、前方に向かって傾動自在な状態で、上部旋回体3の前部に軸支されている。アタッチメント4の軸支部位は、図2図3に示すように、上部旋回体3の車幅方向における中央から僅かに右方に偏った位置に配置されている。
【0034】
キャブ10は、オペレータが搭乗する箱形の運転室である。キャブ10の内部で、クローラ2aやアタッチメント4等、油圧ショベル1の操作が行われる。キャブ10は、アタッチメント4の左側に隣接するように、上部旋回体3に配置されている。
【0035】
キャブ10の前部、側部、後部などには、作業視野を確保するために、大型の窓11が設けられいている。キャブ10の左側部には、揺動するドア13によって開閉される乗降口12が設けられている。キャブ10の上部はパネル14で覆われている。キャブ10には、その強度および剛性を確保するために、これら窓11、乗降口12、パネル14の周囲に沿って延びるピラー15が設けられている。
【0036】
図3に破線で示すように、キャブ10の内部の後側には、キャブ10の床面よりも高くする台状のシートスタンド16が設けられている。そのシートスタンド16の上にオペレータが着座するシート17が設置されている。そして、図示しないが、そのシート17の周囲を囲むように、操作レバー、走行レバー、コンソールボックス、エアコン等、各種機器がキャブ10の内部に設置されている。
【0037】
オペレータが快適で安全な操作を行うためには、オペレータがシート17に着座した状態で余裕をもって操作できるスペースを、キャブ10の内部に確保する必要がある。従って、キャブ10は小さくするにしても限界がある。
【0038】
そのため、小型機種では、上部旋回体3に対してキャブ10が大きくなり、その大半を占めるようになる。この油圧ショベル1の場合、図2に示すように、上下方向では、キャブ10は上部旋回体3の略二倍の大きさである。そして、図3に示すように、前後方向では、キャブ10と上部旋回体3とで略同じ大きさであり、左右方向では、キャブ10は上部旋回体3の略半分の大きさである。
【0039】
すなわち、上方から見て、上部旋回体3のほぼ左半分の領域は、キャブ10によって占められた状態となっている。ドア13によって構成されているキャブ10の左側部は、車幅方向の外側にはみ出さないように、上方から見て、旋回中心に対応した円弧状の曲面に形成されている。キャブ10の後部も同様に、上方から見て、旋回中心に対応した円弧状の曲面に形成されている。キャブ10の右側部は、上部旋回体3の左右方向の中央よりも僅かに右側に位置している。
【0040】
機械室20は、鋼板のカバー(外装材)で周囲を覆うことによって構成された収容スペースであり、上部旋回体3の後部から右側部に至る範囲に配置されている。図示しないが、上部旋回体3の右側部に位置する機械室20(側部機械室20s)には、作動油タンク、燃料タンクなどの機器が設置されていて、上部旋回体3の後部に位置する機械室20(後部機械室20r)には、エンジン、油圧ポンプなどの機器が設置されている。
【0041】
基台3aの後端部分には、アタッチメント4との間で前後のバランスを確保するために、高重量のカウンタウエイト21が設けられている。後部機械室20rは、このカウンタウエイト21とその上に設けられた後部カバー22などで構成されている。後部機械室20rは、図2に破線で示すように、後方に面したメンテナンス用の開口23を有している。
【0042】
後部カバー22は、左右両側を覆う一対のサイドパネル22a,22aと、これらサイドパネル22a,22aの間を覆うボンネット22bと、ボンネット22bの上側を覆うトップパネル22cと、を有している。これらサイドパネル22aおよびボンネット22bは、旋回中心に対応した円弧状の曲面に形成されている。トップパネル22cは、上方から見て、その曲面に対応した細長い弓形に形成されている。
【0043】
通常、開口23はボンネット22bによって覆われている。ボンネット22bは、ヒンジ部材24を介して左側のサイドパネル22aに取り付けられている。それにより、ボンネット22bは、その左側を支点に揺動することによって開閉可能であり、ボンネット22bを開くことで開口23を通じて後部機械室20rの内部にアクセスできるようになる。ボンネット22bの右側には、ボンネット22bを閉じた状態にロックする施錠部25が設けられている。
【0044】
(後方カメラ30の取り付け)
上述したように、この油圧ショベル1では、上部旋回体3の後方を撮影するために、上部旋回体3に後方カメラ30が装備されている。キャブ10の内部で操作するオペレータの作業視野を邪魔することなく撮影するためには、上部旋回体3の後部、つまり後部機械室20rの上部に後方カメラ30を配置するのが好ましい。更に、上部旋回体3の後方を左右両側にバランスよく撮影するためには、後部機械室20rの上部における左右方向の中央に後方カメラ30を配置するのが好ましい。
【0045】
しかしながら、後方小旋回型の小型機種であるこの油圧ショベル1では、後部機械室20rの上部に、後方カメラ30を設置する十分なスペースが無い。詳細には、キャブ10の後部が後部機械室20rの上部の上側に重なるように位置しており、後部機械室20rの上部における左右方向の中央で、キャブ10の右後隅部が僅かに前方に大きく曲がり込むことにより、トップパネル22cの右側部分が露出した状態となっているだけである。
【0046】
すなわち、後部機械室20rの上部における左右方向の中央には、キャブ10の右後隅部の後方に僅かに拡がるトップパネル22cの右側部分しかない。後部機械室20rの上部における中央よりも右側は、側部機械室20sの上部を覆うサイドカバー27が延設されているため、後方カメラ30の設置は可能であるが、右側に寄るほど撮影が偏った状態になる。
【0047】
(ブラケット40)
そこで、この油圧ショベル1では、後部機械室20rの上部における左右方向の中央に後方カメラ30が位置するように、所定のブラケット40を介して後方カメラ30が後部機械室20rの上に取り付けられている。
【0048】
図4に、そのブラケット40を示す。ブラケット40は、プレス加工によって得た金属鋼板を曲げ加工や接合(溶接)することによって形成されている。ブラケット40は、設置する後方カメラ30のサイズおよび仕様に合わせて形成されている。
【0049】
ブラケット40は、大略、機内部40aと機外部40bとで構成されている。機内部40aは、ボンネット22bの周囲の隙間を通じて後部機械室20rの内部に取り付けられる部分であり、機外部40bは、後部機械室20rの上に配置される部分である。機内部40aおよび機外部40bは、互いに連なった矩形板状の部分からなる。これらは、境界部分で曲げることによってL形状に形成されている。
【0050】
そして、機外部40bの前部にカメラカバー41が設けられている。カメラカバー41は、機外部40bの両側から上方に向かって延設された一対の壁板41a,41aと、これら壁板41a,41aの上部に架設された屋根板41bと、を有している。各壁板41aには、互いに対向するボルト孔42が形成されている。屋根板41bの両側には、壁板41aよりも側方に下り傾斜した状態で延出した庇部43が設けられている。
【0051】
屋根板41bは、壁板41aよりも前後方向に大きく形成されていて、屋根板41bの前端部および後端部は、壁板41aから前後に突出している。更に、機外部40bの突端部には、邪魔板44(引出阻止部の一例)が設けられている。邪魔板44は、所定の高さを有する帯板状の部分からなり、壁板41aの間に架設されている。そして、このような形状のブラケット40が、後部機械室20rの上部における左右方向の中央に取り付けられている。
【0052】
図5に、ボンネット22bを省略した状態の後部機械室20rを示す。この油圧ショベル1では、上述したように、キャブ10の後部が上部旋回体3の後部に重なるように位置している。そのため、後部機械室20rは、シートスタンド16の後部が入り込んだ状態で構成されている。それにより、開口23の周囲には、シートスタンド16の剛性を強化する補強部材(スタンドサポート26)の後部が露出した状態で位置している。
【0053】
スタンドサポート26は、肉厚な鋼材などで高剛性に形成された門形の構造体からなり、基台3aの上に設置されている。機内部40aは、機外部40bを後方に向け、かつ、トップパネル22cよりも上方に位置させた状態で、このスタンドサポート26に、ボルト45で締結することによって取り付けられている(図6図7参照)。従って、ブラケット40を強固に支持することができ、高い剛性を確保できる。
【0054】
図6図7に、ブラケット40に後方カメラ30が設置されている通常の使用状態を示す。機内部40aの上部が、閉じられた状態のボンネット22bの周囲の隙間を通じて外部に露出している。その隙間はシール材(弾性部材)によって封止されている。機外部40bは、ボンネット22bの中間部の上方を通って後方に向かって延びている。
【0055】
詳細には、ボンネット22bの上部は、トップパネル22cに連なって後方に張り出すように形成されている。ボンネット22bの上部は、トップパネル22cに沿って延びる細長い弓形状をしており、左右両端部よりも中間部の方が幅が広い。
【0056】
それにより、後部機械室20rの上部に後方カメラ30を設置する十分なスペースが無い場合であっても、このようなブラケット40を設けることにより、後方カメラ30を最適な位置に設置できる。機内部40aが後部機械室20rの内部に位置しているので、機外部40bの後方への突出量を小さくできる。従って、後方小旋回型の機種にとって有利である。
【0057】
後方カメラ30は、その側方および上方がカメラカバー41で覆われた状態で、機外部40bの上に配置される。カメラカバー41は、後方カメラ30の周囲を覆う必要最小限の大きさに形成されている。つまり、ブラケット40と後方カメラ30との間の上下および左右の隙間は小さく、ブラケット40は後方カメラ30の周囲に近接している。
【0058】
レンズを備えた撮影部30aを後方に向けた状態で、左右のボルト孔42を通じて後方カメラ30の側部に取付ボルト31を締結することで、後方カメラ30はブラケット40に支持される。後方カメラ30の周囲をこのようなカメラカバー41で覆うことで、後方カメラ30を障害物から保護でき、雨による水濡れも抑制できる。
【0059】
キャブ10の内部から後方カメラ30に接続される電線32は、図7にも示すように、後部機械室20rを通り、ブラケット40に沿って配線されている。つまり、ブラケット40は、後方カメラ30の電線32を保護かつ案内するケーブルガイドとしても利用されている。
【0060】
更に、ブラケット40は、電装品の支持にも利用できる。例えば、図1~3、8に示すように、カメラカバー41の上に、旋回時に点灯する旋回灯50を取り付けることができる。従って、カメラカバー41は、旋回灯50を配置するスペースとしても利用でき、省スペース化を図ることができる。旋回灯50の電線も後方カメラ30の電線と合わせて配線できる。
【0061】
更にこのブラケット40では、機外部40bに邪魔板44が設けられている。邪魔板44は、カメラカバー41と協働して、後方カメラ30を後方へ引き出すことを阻止するために設けられている。具体的には、図8に二点鎖線で示すように、カメラカバー41の邪魔板44の上の開口部分から後方カメラ30が引き出せないように構成されている。
【0062】
後方カメラ30は、高額であるため、盗難されるおそれがある。すなわち、例示の後方カメラ30の場合、左右の取付ボルト31を取り外せば、後方カメラ30をブラケット40から分離できる。
【0063】
それに対し、この油圧ショベル1では、機外部40bに邪魔板44が設けられているので、後方カメラ30をブラケット40から分離しても、後方カメラ30を後方に引き出すことはできない。更に、この油圧ショベル1では、機外部40bがキャブ10の直ぐ後方に位置していることを利用して、前方にも引き出すことができないように構成されている。
【0064】
すなわち、図2図6に示すように、キャブ10の直ぐ後方にカメラカバー41が位置している。従って、図7に二点鎖線で示すように、左右の取付ボルト31を取り外したとしても、キャブ10が邪魔になってカメラカバー41とキャブ10との間から後方カメラ30を引き出せない。後方カメラ30をブラケット40から取り外しても持ち出すことはできない。
【0065】
しかも、機内部40aは、閉じた状態のボンネット22bで覆われている。従って、ボンネット22bを開かなければ、ブラケット40を取り外すこともできない。従って、この油圧ショベル1では、後方カメラ30は持ち出せない。後方カメラ30の盗難を確実に防止できる。
【0066】
<後方カメラ30の取り付けの別形態>
上述した実施形態の油圧ショベル1の場合、機外部40bがボンネット22bよりも後方に延出されているため、後方カメラ30およびブラケット40が旋回半径の外側にはみ出した状態となっている。
【0067】
後方カメラ30のサイズや仕様にもよるが、後方カメラ30およびブラケット40を旋回半径の内側に配置することも可能である。図9図10図11、および図12に、そのような実施形態(第2実施形態)を例示する。
【0068】
そのブラケット40(以下、第2ブラケット40Aとする)の基本的な構造は、上述した実施形態のブラケット40(以下、第1ブラケット40とする)と同じである。すなわち、第2ブラケット40Aも、第1ブラケット40と同様、大略、機内部40aと機外部40bとで構成されている。便宜上、基本的構成が同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、異なる構成について説明する。
【0069】
第2ブラケット40Aの機外部40bは、第1ブラケット40の機外部40bと異なり、前後長さが短く形成されている。そうして、トップパネル22cの僅かな上面のスペースを利用し、図9に示すように、旋回半径の内側に機外部40bが収まるように、第2ブラケット40Aは配置されている。
【0070】
第2ブラケット40Aのカメラカバー41は、第1ブラケット40のカメラカバー41と同様に、一対の壁板41a,41aと屋根板41bを有しているが、図10図11に示すように、機外部40bの前部だけでなく、機外部40bの前後方向の略全域に設けられている。後方カメラ30は、その側方および上方がカメラカバー41で覆われた状態で、その機外部40bの上に配置される。
【0071】
そして、第2ブラケット40Aでは、各壁板41aにボルト孔42は形成されていない。また、機外部40bに邪魔板44は設けられていない。第2ブラケット40Aでは、図11図12に示すように、ボルト孔42の代わりに、機外部40bに、後方カメラ30の下面に締結されるカメラ取付部48が設けられている。
【0072】
カメラ取付部48は、機外部40bを貫通する挿通孔48aと、その挿通孔48aに挿通される取付具48bとで構成されている。取付具48bは、薄型の頭部を有するネジ部材からなる。頭部の天面に溝が形成されていて、その溝に工具を差し込むことで取付具48bの回転が可能になる。取付具48bのネジ部を、下方から後方カメラ30の下面に差し込んで締結することで、後方カメラ30は機外部40bの上に取り付けられる。
【0073】
そして、図11図12に示すように、カメラ取付部48はボンネット22bの上に位置するように構成されている。従って、通常の状態では、取付具48bを回すことができないので、後方カメラ30は取り外せない。取付具48bを抜き差しするために必要な間隔よりも機外部40bとボンネット22bとの間の隙間の方が小さいので、取付具48bを回すことができても、後方カメラ30は取り外せない。
【0074】
ボンネット22bを開くことで、取付具48bを回すことが可能になり、後方カメラ30の取り外しが可能になる。従って、この第2ブラケット40Aの場合、邪魔板44が無くても後方カメラ30の持ち出しを阻止することができる。
【0075】
なお、第1ブラケット40と同様に、後方カメラ30がその両側で締結するタイプであれば、第2ブラケット40Aでも、各壁板41aにボルト孔42を形成し、機外部40bに邪魔板44を設けてもよい。キャブ10によって後方カメラ30の前方への引き出しが阻止できない場合には、機外部40bの前端部分に第2の邪魔板(第2の引出阻止部)を設けて、後方カメラ30の前方への引き出しを阻止すればよい。そうすれば、確実に後方カメラ30の盗難を防止できる。
【0076】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、上述した実施形態では、主に建設作業に用いられる油圧ショベルを示したが、作業機械は油圧ショベルに限らない。アタッチメントを交換することで、リサイクル作業や林間作業などにも使用できる。
【0077】
邪魔板44は、引出阻止部の一例である。後方カメラ30の引き出しを阻止できれば、その構成は任意に設定できる。例えば、複数の突起を設けてもよいし、棒状の部材を格子状に設けてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 アタッチメント(作業装置)
10 キャブ
16 シートスタンド
17 シート
20 機械室
20s 側部機械室
20r 後部機械室
21 カウンタウエイト
22 後部カバー
22a サイドパネル
22b ボンネット(外装材)
22c トップパネル
23 開口
25 施錠部
26 スタンドサポート
30 後方カメラ
40 ブラケット
40a 機内部
40b 機外部
41 カメラカバー
44 邪魔板(引出阻止部)
50 旋回灯(電装品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12