(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142449
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230928BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230928BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/68 N
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
H01L21/306 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049369
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 博
(72)【発明者】
【氏名】立花 慎
(72)【発明者】
【氏名】グエン タン ザン
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043BB02
5F043BB27
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043GG10
5F131AA02
5F131BA37
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5F157AB02
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5F157AB35
5F157AB90
5F157AC01
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5F157BB66
5F157CF02
5F157CF62
5F157CF92
5F157CF93
5F157DB02
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】基板上に処理液を溜めた状態で基板が回転可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、前記基板Wを保持する基板保持部11と、前記基板保持部を回転させる基板回転手段12と、前記基板上に前記処理液を吐出する処理液供給部13と、平面視において内側に囲む形状が前記基板の外形より小さく、前記基板の外周部に載置して、前記基板とともに前記処理液の貯留部を形成可能な枠部材20と、前記枠部材を保持または開放可能で、前記基板保持部と上下方向に相対的に可動な枠部材保持手段30とを有する基板処理装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる基板回転手段と、
前記基板上に前記処理液を吐出する処理液供給部と、
平面視において内側に囲む形状が前記基板の外形より小さく、前記基板の外周部に載置して、前記基板とともに前記処理液の貯留部を形成可能な枠部材と、
前記枠部材を保持または開放可能で、前記基板保持部と上下方向に相対的に可動な枠部材保持手段と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
処理液を用いて円板状の基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる基板回転手段と、
前記基板上に前記処理液を吐出する処理液供給部と、
前記基板とともに前記処理液の貯留部を形成する枠部材と、
前記枠部材を支持し、前記枠部材を回転させる枠部材回転手段を備え、前記枠部材の内径が前記基板の直径より小さい場合は、該枠部材の下面が前記基板の上面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、前記枠部材の内径が前記基板の直径より大きい場合は、該枠部材の内壁面が前記基板の外周端面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、前記基板保持部と上下方向に相対的に可動な枠部材支持手段と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて半導体ウェハ等の基板を処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業における枚葉式プロセスでは、半導体ウェハを略水平に保持して回転させながら、その表面に処理液を供給することにより、エッチングや洗浄などの各種の処理が実施される。ウェハ上に供給された処理液は遠心力によってウェハの外縁に向かって移動してウェハ外縁から排出され、ウェハ表面には、供給量と排出量が釣り合う厚さの処理液膜が形成される。このように、従来の枚葉式処理方法では、処理液を掛け流しながら基板を処理するので、多量の処理液を使用する必要があった。
【0003】
これに対して、特許文献1には、半導体ウェハ径の大きさでリング状の薬液ストッパーをウェハに密着させて、薬液をウェハ上に溜め、マイクロ波発生器や昇温ランプで薬液を昇温する半導体ウェハ洗浄装置が記載されている。また、特許文献2には、液溜まり部形成部材を設け、当該液溜まり部の底部を基板の表面にて形成した状態で、液溜まり部に溜められた液体で基板の表面を処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-357836号公報
【特許文献2】特開平9-162153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または2に記載された装置または方法によれば、基板上に処理液を溜めて基板を処理するため、処理液の使用量を低減できる。しかし、特許文献1および2に記載された装置または方法では、基板上に処理液を貯留させる段階で、基板を回転させることができないため、処理液に泡を巻き込む恐れもあり、処理液の拡がりが好ましくない。また、ウェハ表面状態にムラがある場合、その部分で処理液の拡がりが悪くなる場合がある。さらに、基板上に処理液を溜めた状態で基板を回転させることができないため、基板処理時の反応速度が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、基板上に処理液を溜めて基板を処理する装置であって、処理液を溜めた状態で基板が回転可能な基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる基板回転手段と、前記基板上に前記処理液を吐出する処理液供給部と、平面視において内側に囲む形状が前記基板の外形より小さく、前記基板の外周部に載置して、前記基板とともに前記処理液の貯留部を形成可能な枠部材と、前記枠部材を保持または開放可能で、前記基板保持部と上下方向に相対的に可動な枠部材保持手段とを有する。
【0008】
本発明の他の基板処理装置は、処理液を用いて円板状の基板を処理するための基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる基板回転手段と、前記基板上に前記処理液を吐出する処理液供給部と、前記基板とともに前記処理液の貯留部を形成する枠部材と、前記枠部材を支持し、前記枠部材を回転させる枠部材回転手段を備え、前記枠部材の内径が前記基板の直径より小さい場合は、該枠部材の下面が前記基板の上面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、前記枠部材の内径が前記基板の直径より大きい場合は、該枠部材の内壁面が前記基板の外周端面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、前記基板保持部と上下方向に相対的に可動な枠部材支持手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の基板処理装置によれば、枠部材によって基板上に処理液を溜めて基板を処理することによって処理液の使用量を削減できる。また、処理液を溜めた状態で基板が回転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の基板処理装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の枠部材の形状を示す図である。A:平面図、B:
図2AのXX断面図、C:
図2Bの破線円に囲まれた部分の拡大図。
【
図3】第1実施形態の枠部材保持手段の構成を示す図である。A:平面図、B:側面図。
【
図4】第1実施形態の基板処理装置の使用方法の工程フロー図である。
【
図5】A~F:第1実施形態の基板処理装置の使用方法を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態の基板処理装置の構成を示す図である。
【
図7】第2実施形態の枠部材の形状を示す図である。A:平面図、B:
図2AのXX断面図(内径がウェハより小さい場合)、C:
図2AのXX断面図(内径がウェハより大きい場合)、D:
図2CのY矢視図。
【
図8】第2実施形態の枠部材支持手段の構成を示す図である。A:ケース内部の平面図、B:一部の断面を示す側面図。
【
図9】第2実施形態の基板処理装置の使用方法の工程フロー図である。
【
図10】A~F:第2実施形態の基板処理装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
基板処理装置の第1実施形態を
図1~5に基づいて説明する。
【0012】
図1を参照して、本実施形態の基板処理装置10は、ウェハ(基板)Wを保持する基板保持部11と、基板保持部11を回転させる基板回転手段12と、ウェハW上に処理液を吐出する複数のノズル(処理液供給部)13と、枠部材20と、枠部材保持手段30とを有する。
【0013】
基板保持部11は、ウェハWを真空吸着することや、外周数か所を保持ピンで支持することによって、ウェハを略水平に保持する。基板保持部は、ウェハを水平に保持するだけでなく、水平からわずかに傾いた角度、例えば水平から10度以内の範囲の角度で保持できることが好ましい。基板回転手段12は、ウェハがその面内で中心の周りに自転するように、基板保持部を回転させる。ノズル13は、ウェハ上に処理液を吐出する。ノズルの数は特に限定されない。
【0014】
ノズル13からウェハW上に供給される処理液の種類は特に限定されない。処理液の例としては、各種洗浄処理に用いられるアンモニア過酸化水素水混合液、硫酸過酸化水素水混合液、塩酸過酸化水素水混合液、希フッ酸やオゾン水、各種エッチング処理に用いられるフッ酸、硝酸、酢酸、リン酸及びそれらを混合した混酸、リンス処理に用いられる純水、乾燥処理に用いられるIPAなどが挙げられる。処理液ごとにノズルを設けることによって、異なる処理液を用いる一連の処理、例えば、薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理およびIPAによる乾燥処理を連続して行うことができる。
【0015】
図2を参照して、枠部材20はリング状の部材である。枠部材の内径はウェハWの直径よりわずかに小さい。枠部材20の下部には、下面の内壁面21側に凹部22が形成され、ウェハWの外周と凹部22が嵌合可能であり、これにより、枠部材をウェハの外周部に載置できる。枠部材をウェハの外周部に載置した状態では、枠部材の内壁面21とウェハWの上面とで、処理液を溜めることができる貯留部24が形成される。また、枠部材の外周にはつば部23が形成され、枠部材保持手段30がつば部を把持することで枠部材20を保持できる。
【0016】
枠部材20の内径は、ウェハWの直径をdとして、好ましくはd-20mm以上、より好ましくはd-6mm以上であって、d未満である。ウェハに結晶方位を示すための切り欠き(オリエンテーションフラットやノッチ)がある場合は、枠部材の平面視における形状をウェハの外形に合わせる。基板が長方形などで円形でない場合は、平面視において枠部材内側に囲む形状を基板の外形より小さくする。言い換えると、枠部材の大きさは、枠部材を基板の外周部に重ねたときに、平面視において基板の輪郭が枠の内部に現れない大きさとする。このとき、枠部材が隠す基板外周部の領域が、基板の外周から10mm以内の領域であることが好ましく、3mm以内の領域であることがより好ましい。
【0017】
枠部材20は、耐薬品性のあるPFA/PTFE等のフッ素樹脂、寸法精度のよいPEEKなどのエンジニアリングプラスチック、溶出/パーティクルの少ない石英などのガラス材、サファイヤなどの結晶材等を用いて作製することができる。枠部材は、好ましくはフッ素樹脂、石英を用いて作製される。
【0018】
図3を参照して、枠部材保持手段30は、垂直に立つ旋回軸31と、旋回軸31の周りに旋回可能なアーム32と、アーム32の先端に設けられた保持部33を有する。保持部33は枠部材20を保持し、開放することが可能である。アーム32は、旋回軸31の周りに旋回することによって、枠部材を、側方の待機位置(
図2Aの破線の位置)と基板保持部11の真上との間で往復させることができる。アーム32は旋回軸31に沿って昇降可能で、枠部材20をウェハW上に置いたり、ウェハ上から持ち上げたりすることができる。あるいは、アーム32と旋回軸31が一体となって昇降可能であってもよい。なお、枠部材保持手段30と基板保持部11は上下方向に相対的に可動であればよいので、基板保持部を昇降可能としてもよい。旋回軸31は、基板保持部11からの距離を変えられるように水平方向(
図3AおよびBの左右方向)にも移動可能である。
【0019】
次に、本実施形態の基板処理装置の使用方法を、半導体ウェハのRCA洗浄処理を例に、
図4の工程の流れに沿って、
図5を参照して説明する。
【0020】
(S1)ウェハWが基板保持部11に固定され、回転していない状態で、枠部材保持手段30によって、枠部材20をウェハW上にセットする(
図5A)。詳しくは、枠部材保持手段30の保持部33で待機位置にある枠部材20を保持し、アーム32を旋回軸31の周りに旋回させて枠部材20をウェハWの直上まで移動させ、アーム32を降下させて枠部材20をウェハ外周に嵌合させてウェハの外周部に載置し、保持部33が枠部材を開放してアームを上昇させることで、枠部材のセットが完了する。枠部材20がウェハWに正しく載置されたかどうかは、例えば位置センサによって確認できる。
【0021】
(S2)ノズル13aからウェハ上に、70℃のSC-1液(アンモニア過酸化水素水混合液)を0.9L/分で20秒間、所定の量(0.3L)を吐出する(S2a、
図5B)。SC-1液の吐出を停止した後、ウェハWを30rpm程度の低速で約10秒間回転させて、SC-1液を貯留部24の全体にまんべんなく行きわたらせる。なお、SC-1液の吐出は、ウェハを回転させながら行ってもよい。
【0022】
SC-1液の供給を止めた状態で、ウェハWの回転を止めて、あるいはウェハWを回転させながら120秒程度洗浄処理を行う(S2b、
図5C)。好ましくは、ウェハを低速回転させながら洗浄処理を行うことによって、処理液の循環性が高まり、洗浄処理時の反応速度を高くすることができる。SC-1液を基板上に溜めて処理を行うことで、処理液を掛け流して処理を行う従来の方法と比べて、SC-1液の使用量を大幅に低減できる。
【0023】
洗浄処理が完了したら、枠部材20を枠部材保持手段30で保持して、50mm程度持ち上げる。ウェハWを600rpmで回転させて、SC-1液をウェハ外周からふり払う(S2c、
図5D)。
【0024】
(S3)ウェハWの回転数を30rpmに下げ、枠部材20を、ウェハとの距離が約1mmになるまで降下させる。ノズル13bからウェハ上に、25℃の純水(DIW)を例えば1L/分で60秒吐出する(S3a、
図5E)。純水はウェハ表面をリンスするとともに、枠部材表面に残留するSC-1液を洗い流す。純水の供給量は、好ましくは、純水が枠部材上端を超えてあふれ出すほどの大きさとする。これにより、枠部材の表面全体をまんべんなく洗うことができる。枠部材20の全体をウェハの上面より高い位置に上げることで、枠部材の表面全体を容易に洗浄できる。
【0025】
リンス処理が完了したら、枠部材20を枠部材保持手段30で保持して50mm程度持ち上げ、ウェハWを600rpmで回転させて、純水をウェハ外周からふり払う(S3b、
図5F)。
【0026】
(S4)ウェハWの回転を止めて、工程S1と同様に、再度枠部材20をセットする。なお、枠部材20はSC-1洗浄で用いた枠部材と同じものを用いても良いが、枠部材の汚染を考慮して、別の枠部材を用いることが好ましい。
(S5)ノズル13aからウェハ上にSC-2液(塩酸過酸化水素水混合液)を吐出し、以後工程S2と同様にSC-2洗浄を行う。
(S6)工程S3と同様にリンス処理を行う。
(S7)リンス処理の完了後に乾燥処理を行って、RCA洗浄を終了する。
【0027】
基板処理装置の第2実施形態を
図6~10に基づいて説明する。本実施形態の基板処理装置は円板状の基板を処理するための装置であって、第1実施形態が枠部材を基板上に載置するのに対して、枠部材を基板に近接させた状態で基板を処理する。
【0028】
図6を参照して、本実施形態の基板処理装置40は、ウェハ(基板)Wを保持する基板保持部11と、基板保持部11を回転させる基板回転手段12と、ウェハW上に処理液を吐出する複数のノズル(処理液供給部)13と、枠部材50と、枠部材支持手段60とを有する。
【0029】
基板保持部11は第1実施形態と同じである。ただし、ウェハWに結晶方位を示すための切り欠きがある場合は、基板保持部11としてウェハと同じ直径の円形の真空吸着テーブルであって、ウェハの切り欠かれた部分に吸引孔が現れないものを用いる。基板回転手段12およびノズル13は第1実施形態と同じである。また、処理液の種類も第1実施形態と同じく、特に限定されない。
【0030】
図7を参照して、枠部材50はリング状の部材である。枠部材の内径はウェハWの直径とほぼ同じである。枠部材50の外周にはつば部53が形成され、つば部が枠部材支持手段60に連結されることで、枠部材が支持される。
【0031】
図7Bを参照して、枠部材50の内径がウェハWの直径より小さい場合は、枠部材の下面52を、ウェハWの上面との間に隙間Gを残して、ウェハの上面に近接させることによって、枠部材の内壁面51とウェハの上面とで処理液を溜める貯留部54を形成できる。このときの隙間Gの大きさは、処理液の供給量や粘度、さらにはウェハの回転数によって選択されるが、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。隙間Gが狭いほど、貯留部から処理液が漏れる量を少なくできるからである。一方、後述するように、本実施形態の枠部材50はウェハとは独立して回転可能であるので、枠部材を回転させる場合、隙間Gの大きさは、好ましくは1μm以上である。枠部材を回転させたときにウェハとの干渉を避けるためである。また、枠部材50の内径は、ウェハWの直径をdとすると、好ましくはd-20mm以上、より好ましくはd-6mm以上であって、d未満である。なお、ウェハに結晶方位を示すための切り欠きがある場合は、基板保持部11としてウェハと同じ直径の円形の真空吸着テーブルであって、ウェハの切り欠かれた部分に吸引孔が現れないものを用いる。これにより、ウェハ上面および基板保持部のテーブル上面が貯留部54の底面を構成する。
【0032】
図7Cを参照して、枠部材50の内径がウェハWの直径より大きい場合は、枠部材の内壁面51を、ウェハの外周端面との間に隙間Hを残して、ウェハの外周端面に近接させることによって、枠部材の内壁面51とウェハの上面とで処理液を溜める貯留部54を形成できる。このときの隙間Hの大きさは、
図7Bの場合と同じ理由から、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.1mm以下であり、好ましくは1μm以上である。枠部材50の内径は、ウェハWの直径をdとすると、dに隙間Hの2倍を足した大きさであるから、枠部材50の内径の好ましい範囲は、隙間Hの好ましい範囲に応じて定まる。なお、ウェハに結晶方位を示すための切り欠きがある場合は、基板保持部11としてウェハと同じ直径の円形の真空吸着テーブルであって、ウェハの切り欠かれた部分に吸引孔が現れないものを用いる。これにより、ウェハ上面および基板保持部のテーブル上面が貯留部54の底面を構成する。
【0033】
また、
図7Dを参照して、枠部材50の内径がウェハWの直径より大きい場合は、枠部材に、貯留部54から処理液が流れ出るための流出孔55が形成されていることが好ましい。後述するように、基板処理時の処理液の流れを安定させるためである。
【0034】
図8を参照して、枠部材支持手段60は、垂直に立つ2本の支柱61と、ケース62と、支持部材65とを有する。ケース62は、2本の支柱に対応する2か所に、天面と底面にガイド穴が設けられており、支柱をガイド穴に挿通することで支柱によって支持される。ケース62のウェハW上方にあたる部分には、ウェハとほぼ同じ大きさの穴63が上下に貫通し、穴63の内壁面にはボールベアリング64が装着されている。ボールベアリング64としては、耐酸性、耐薬品性に優れるセラミックボールベアリングを好適に用いることができる。
【0035】
支持部材65は略円筒形で、上部がボールベアリング64に内接して、ケースから吊り下げられている。支持部材の下端部には、支持部材と枠部材50が同心になるように、枠部材50のつば部53が連結されている。支持部材65の略円筒形の内部には、処理液を供給するためのノズル13や、各種センサの配線などを挿通させることができる。
【0036】
ケース62の内部にはモーター66が設置され、モーターの軸と支持部材上部に掛けまわされたベルト67によって、支持部材がその中心軸の周りに回転可能となっている。支持部材を回転させることによって、支持部材下端部に連結された枠部材50が回転する。本実施形態では、モーター66が枠部材回転手段である。
【0037】
また、モーター66やベルト67がケース62内に収容されることによって、ベルト等からの発塵によるウェハの汚染を防止することができる。好ましくは、ケース62に設けられた排気口68から内部の空気を吸引して、ケース内部を負圧にすることで、ケース外に塵やパーティクルが漏れることをより確実に防止できる。
【0038】
ケース62、支持部材65および枠部材50は、支柱61に沿って昇降可能である。あるいは、ケース62、支持部材65、枠部材50および支柱61の全体が昇降可能であってもよい。枠部材50の内径がウェハWの直径より小さい場合は(
図7B)、枠部材50の下面52がウェハ上面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、枠部材を昇降可能とする。枠部材50の内径がウェハWの直径より大きい場合は(
図7C)、枠部材50の内壁面51がウェハの外周端面に近接する位置を少なくとも含む範囲で、枠部材を昇降可能とする。なお、枠部材支持手段60と基板保持部11は上下方向に相対的に可動であればよいので、基板保持部11を昇降可能としてもよい。
【0039】
基板保持部11がウェハWを水平から傾斜させて保持可能な場合は、枠部材支持手段60も、例えば支柱61を傾けることによって、支持部材65を基板保持部11と同軸に保ちながら、基板保持部11の傾きに合わせて傾斜可能とする。
【0040】
次に、本実施形態の基板処理装置の使用方法を、シリコンウェハのフッ酸エッチングを例に、
図9の工程の流れに沿って、
図10を参照して説明する。以下においては、枠部材の内径がウェハの直径より大きい場合(
図7C)を例に説明する。
【0041】
(S8)ウェハWが基板保持部11に固定され、回転していない状態で、枠部材50の内壁面51とウェハの外周端面が近接する位置まで枠部材50を降下させる(
図10A)。このとき、枠部材50に形成された流出孔55がウェハの上面より下に隠れる位置まで枠部材を降下させる(
図10B)。
【0042】
(S9)ノズル13aからウェハ上に、HF液を所定の流量で吐出する(S9a、
図10C)。ウェハWと枠部材50を、同方向に30rpm程度の低速で約10秒間回転させて、HF液を貯留部54の全体にまんべんなく行きわたらせる。
【0043】
ウェハWと枠部材50の回転を止めて、そのまま60秒程度停止させてエッチング処理を行う(S9b)。ウェハWと枠部材50を約60rpmで回転させ、ノズル13aからHF液を所定の流量で供給しながら、枠部材50を少し上昇させて、流出孔55がウェハの上面より上に出す(
図10D)。これにより、貯留部54のHF液は、隙間Hに加えて流出孔55からもウェハ外へ流れ出す。HF液を流出孔55からも流出させる理由は、処理液の流れを安定させるためである。また、枠部材50の高さ方向の位置を数十μm単位で制御することで、流出孔55がウェハより上に出る量に応じて貯留部54からのHF液の流出量を調節できる。HF液供給量と流出量が釣り合って、ウェハ面上のHF液の膜厚が一定になった状態でさらに60秒間エッチング処理を行う(S9b)。
【0044】
エッチング処理が完了したら、HF液の供給を停止する(S9c)。なお、エッチング処理中に、液温、液膜厚、液のHF濃度、ケイフッ化水素酸濃度、ウェハのシリコン酸化膜の膜厚などをウェハ上部に設置しているセンサで測定して、所定の値を閾値として、回転とHF液吐出の時間を延長または停止してもよく、回転数を変更してもよく、センサの値に応じた制御を実施してもよい。
【0045】
(S10)HF液の供給を停止すると同時に、ノズル13bから純水の吐出を開始して、ウェハおよび枠部材50を洗浄する(S10a、
図10E)。次いで、枠部材50をウェハ上面から50mmの高さまで上昇させて枠部材の回転を停止し、ウェハを約500rpmで回転させて、純水をウェハ外周からふり払う(S10b、
図10F)。
【0046】
(S11)リンス処理の完了後に乾燥処理を行って、HFエッチング処理を終了する。
【0047】
本実施形態ではHF液の供給を続けながら基板の処理を行うが、枠部材50によってウェハの外周から排出されるHF液の流量が従来の掛け流し方式より少ないので、HF液の使用量を低減できる。
【0048】
なお、上記方法では、ウェハWと枠部材50を常に同方向に同速度で回転させたが、ウェハと枠部材の回転方向および回転速度は同じであっても異なっていてもよい。
【0049】
また、上記方法では、枠部材50の内径がウェハWの直径より大きい場合について説明したが、枠部材50の内径がウェハWの直径より小さい場合も同様に行うことができる。
【0050】
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、ウェハを水平に保持して処理を行ったが、ウェハを水平からわずかに傾斜させて処理を行ってもよい。その場合は、貯留部24、54内に、ウェハ上に液がある状態とない状態を回転周期毎に作り出すことができるので、洗浄条件を多様にすることができる。また、ウェハの傾斜角度を変えながら処理を行うこともできる。
【符号の説明】
【0052】
10 基板処理装置
11 基板保持部
12 基板回転手段
13 ノズル(処理液供給部)
20 枠部材
21 内壁面
22 凹部
23 つば部
24 貯留部
30 枠部材保持手段
31 旋回軸
32 アーム
33 保持部
40 基板処理装置
50 枠部材
51 内壁面
52 下面
53 つば部
54 貯留部
55 流出孔
60 枠部材支持手段
61 支柱
62 ケース
63 穴
64 ボールベアリング
65 支持部材
66 モーター
67 ベルト
68 排気口
G、H 隙間
W ウェハ(基板)