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  • 特開-リーク検知機構 図1
  • 特開-リーク検知機構 図2
  • 特開-リーク検知機構 図3
  • 特開-リーク検知機構 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142454
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】リーク検知機構
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/30 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01M3/30
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049378
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友裕
(72)【発明者】
【氏名】神崎 智哉
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA16
2G067BB02
2G067BB15
2G067BB22
2G067CC04
2G067DD07
(57)【要約】
【課題】殆ど外部への漏洩が生じないバルブや継手からの微量な漏れの検知を行うことができるリーク検知機構を提供する。
【解決手段】流体が流通する内部空間2と、流体が内部空間2から漏洩しないよう、内部空間2との間に第一シール部材S1を配設した密閉空間3とを有する流体機器Rの内部リークを検出するリーク検知機構1であって、密閉空間3と外部を連通するリークポート4と、リークポート4の外部開放端40に着脱可能に取り付ける円筒状のコック10と、コック10の中空部10aに嵌着する透明又は半透明のチューブ11と、チューブ11内で、チューブ径に応じその粘性により自重移動しない量の液体Lとからなる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する内部空間と、
前記流体が内部空間から漏洩しないよう、前記内部空間との間に第一シール部材を配設した密閉空間と、
を有する流体機器の内部リークを検出するリーク検知機構であって、
前記密閉空間と外部を連通するリークポートと、
該リークポートの外部開放端に着脱可能に取り付ける円筒状のコックと、
該コックの中空部に嵌着する透明又は半透明のチューブと、
該チューブ内で、チューブ径に応じその粘性により自重移動しない量の液体とからなるリーク検知機構。
【請求項2】
前記チューブは、リークポートの形成位置に合わせた鉛直部を形成するようにした請求項1に記載のリーク検知機構。
【請求項3】
前記密閉空間と外部との間には第二のシール部材を配設した請求項1又は2に記載のリーク検知機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブや継手に設けられるリークポートから漏洩する内部流体を検知するリーク検知機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なバルブは、弁体が弁座と当接離間する弁室は流入路及び流出路と連通される。弁体は、弁体を作動させるアクチュエータとステムを介して連結され、内部空間となる弁室から外部のアクチュエータと連通するステムが通過する空間から流体が外部に漏洩しないようにシール部材が配設されている。バルブの中で高圧流体、例えば水素を扱うようなバルブの場合、シール部材を増し締めする必要があるが、増し締めに際しては、一旦シール部材を締め付けるボルト等の締結手段を緩め、シール部材が配設される密閉空間に形成されたリークポートまでシール部材を移動させ、内部空間の圧を外部に開放する所謂圧抜きが行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような高圧バルブに設けられるリークポートは、シート部材の増し締めの際に、内部空間の圧抜き以外に、内部空間からの流体の漏れ検知用のポートとしても利用されている。
【0004】
また、配管同士を連結する継手の場合、配管の端面間にガスケット等のシール部材を配設し、締結部材として環状のボルトとナットとを用いて配管を連結する。この際、締結部材である雄ねじ側の環状のボルトにリークポートを形成し、配管からの漏れをチェックする菅継手が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/220963号
【特許文献2】特開2021-143762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2に記載されるバルブや継手のリークポートからの漏れ検知を行うためには内部空間を流通する流体に応じた検知装置を用いるようにしている。
【0007】
しかし、この様な一般的な検知装置を用いた流体の漏洩測定では、通常、殆ど外部への漏洩が生じないバルブや継手からの微量な漏れの検知を行うことは困難である。また、高価な流体に応じた検知装置を準備すると費用が嵩むこととなり、市場では簡易に使用することのできるリーク検知機構が所望されている。
【0008】
本発明は、係る点に鑑みなされたもので、殆ど外部への漏洩が生じないバルブや継手からの微量な漏れの検知を行うことができるリーク検知機構を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるリーク検知機構は、
流体が流通する内部空間と、
前記流体が漏洩しないよう、前記内部空間との間に第一シール部材を配設した密閉空間と、
を有する流体機器の内部リークを検出するリーク検知機構であって、
前記密閉空間と外部を連通するリークポートと、
該リークポートの外部開放端に着脱可能に密着して取り付ける円筒状のコックと、
該コックの中空部に嵌着する透明又は半透明のチューブと、
該チューブ内で、チューブ径に応じその粘性により自重移動しない量の液体とからなる。
【0010】
リークポート内とコックに取り付けられたチューブ内とは連通された連通空間を形成し、自重移動しない液体は、リークポート内に内部空間からリークがあったときに連通空間内の圧力が上昇し、液体が移動することでリークを検知する。液体が自重移動しない条件は、
M×g<πR×γ×cosθ
M:滴質量、g:重力加速度、R:チューブ径、γ:表面張力、θ:液体の接触角
を満たす、滴質量Mで表面張力γの流体である。
【0011】
上記構成において、前記チューブは、リークポートの形成位置に合わせた鉛直部を形成することができる。
【0012】
さらにこれらの場合において、密閉空間と外部との間には第二のシール部材を配設することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態のリーク検知機構によれば、チューブを取り付けた円筒状コックをリークポートの外部開放端に密着して取り付けるだけで、内部からの漏洩があればチューブ内の液体が該法に向かって動き、内部空間を流通する流体の種類に拘わらずその漏れを簡単に検知することができる。
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態によるリーク検知機構を示し、(a)は一部切欠断面の正面図、(b)は(a)のX-X断面図である。
図2】同リーク検知機構を示し、(a)はリーク検知機構のコックが先細の円錐台形状でリークポートの外部開放端内側の周面がコックの傾斜に合わせた円錐台状状、(b)はリーク検知機構のコックが先細の円錐台形状でリークポートの外部開放端内側の周面が円筒状の例を示す。
図3】同リーク検知機構を流体制御機器としてのバルブに取り付けた状態を示し、(a)は正面断面図、(b)はリーク検知機構を取り付けた部分の拡大図である。
図4】同リーク検知機構を流体制御機器としての継手に取り付けた状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1によるリーク検知機構1を示す。このリーク検知機構1は、流体制御機器としてのバルブ5に取り付ける例を示す。
【0017】
本実施形態のリーク検知機構1は、流体が流通する内部空間2と、流体が内部空間2から漏洩しないよう、内部空間2との間に第一シール部材S1を配設した密閉空間3とを有する流体機器Rとしてのバルブ5の内部リークを検出するものであって、密閉空間3と外部を連通するリークポート4と、リークポート4の外部開放端40に着脱可能に取り付ける円筒状のコック10と、コック10の中空部10aに嵌着する透明又は半透明のチューブ11と、チューブ11内で、チューブ径に応じその粘性により自重移動しない量の液体Lとからなる。また、密閉空間3と外部との間に配設する第二のシール部材S2は、内部空間2からの漏れが極微量な場合、密閉空間3と外部との連通を確実に遮断し、漏洩する流体を確実にリークポート4に導く役割を果たすものである。
【0018】
図1図3に示す流体機器Rはバルブ5であって、特にバルブの種類を限定するものではないが、本実施形態ではニードルバルブである。このバルブ5は、例えば高圧水素用の開閉弁として利用され、ボディ50内には、弁室となる内部空間2、この内部空間2と連通する上流側流路20、下流側流路21、上流側流路20の開放端に流入ポート20A、下流側流路21の開放端に流出ポート21A及び内部空間2に形成される弁座51に当接離間する弁体を先端に備えたステム53が挿通される密閉空間3とが形成されている。
【0019】
内部空間2内は、流入ポート20Aから供給され、流出ポート1Aから排出される流体が通過する際に、ステム53が挿通される密閉空間から当該流体が外部に漏洩しないよう第一シール部材S1及び第二シール部材S2が配設されている。この第一シール部材S1及び第二シール部材S2は、ステム53外周面と密閉空間3内周面との隙間を埋める構造であれば、特にその形状、材質等を限定するものではないが、環状の可撓性シール材やガスケット、Oリング等を複数ステム53の軸部に嵌入させ、流体の外部漏洩を抑制している。
【0020】
そして。本実施形態におけるバルブ5は外部への流体の漏れを防止する観点から、定期的にシール部材、特に第一シール部材S1を増し締めする。増し締めに際しては、一旦第一シール部材S1及び第二シール部材S2を締め付ける締結手段54を緩め、第一シール部材S1及び第二シール部材S2が配設される密閉空間3に形成したリークポート4まで第一シール部材S1を移動させ、内部空間2の圧を外部に開放する所謂圧抜きする。
【0021】
リークポート4は、本実施形態おけるバルブ5においては、上述した圧抜きに使用するものであるが、このリークポート4の外部開放端40にリーク検知機構1のコック10を取り付ける取付構造41を形成する。この取付構造41は、例えば、外部開放端40近傍のリークポート4の周面に雌ねじを形成し、コック10の外周面に形成した雄ねじを螺合することで簡易に取り付け取り外しができるように構成することができる。
【0022】
また、図2(a)に示すように、外部開放端40近傍のリークポート4の周面を円錐状の傾斜面41Aとし、コック10の周面も同じ傾斜角度の円錐台形状とすることで、容易に抜き差しができるように構成することもできる。さらに、図2(b)に示すように、コック10の周面は円錐台形状とし、外部開放端40近傍のリークポート4の周面は、傾斜のない円柱形状41Bとすることもできる。図2に示す、リーク検知機構1のコック10は、その材質を弾性部材とすることが好ましい。ただし、図2(a)に示すコック10の材質は、弾性部材でなくともその機能を果たすことはできるが、内部空間2から密閉空間3を経由して漏れ出した流体が、チューブ11に確実に流れるように傾斜面41Aとコック10の周面との隙間を生じさせないという観点から、コック10の材質は弾性部材を使用することが好ましい。なお、図2(b)のチューブ11内の液体Lの位置は、内部空間2から微量な漏洩があり、図2(a)の定常状態より上昇した状態を示している。
【0023】
コック10の中空部10aに嵌着する透明又は半透明のチューブ11は、その材質は特に限定するものではないが、例えば、軟質ポリ塩化ビニル等を使用する。このチューブ11内に適量の液体Lを入れる。液体Lは、外部から目視してチューブ11の鉛直部12の一部となる量を注入し、自重で移動しない量とする。この自重で移動しない量は、液体の滴質量で換算し、M:滴質量、g:重力加速度、R:チューブ径、γ:表面張力、θ:液体の接触角のとき、下記式(1)を満足する滴質量の液体であれば液体Lは自重で移動(落下)しない。
M×g<πR×γ×cosθ・・・(1)
【0024】
チューブ11に注入する液体Lは、外部からの目視が容易にできるよう、赤や青の着色した液体を使うことが好ましい。
【0025】
また、チューブ11には、リークポート4の形成位置に合わせた鉛直部12を形成することが好ましく、例えばリークポート4の外部開放端40が側面にある場合、チューブ11をL字状に屈曲させ、鉛直部12を形成する。外部開放端40が天面にある場合には、チューブ11は曲げ加工を施すことなく使用することができる。鉛直部12を設け、この鉛直部12に液体Lを注入することで漏れが生じたときの液体Lの動きは下方から上方への動きとなり目視が容易となる。また、液体Lを注入後、液体Lの上面に合わせてチューブ11の表面にマーキングを施し液体Lの動き(内部リークの発生)を容易に目視することもできる。
【0026】
このように、本実施形態のリーク検知機構1はリークポート4の外部開放端40に簡単に着脱して使用することができるから、設備稼働時やシール部材の増し締め後の流体の流し始めのとき、また、定期検査の際に目視により容易に流体の漏れを確認することができる。さらに、複数の流体機器Rが配備される現場において、リーク検知機構1を一つ用意しておけば全ての機器のリーク検査を行うことができる。
【0027】
<実施形態2>
図4は、実施形態1によるリーク検知機構1を示す。このリーク検知機構1は、流体制御機器としての継手6に取り付ける例を示す。
【0028】
本実施形態のリーク検知機構1を取り付ける継手6は、第一配管60Aと第二配管60Bとの端面同士を付き合わせ、端面間の密閉空間3に流体が流通する内部空間2からの漏洩を防止する第一シール部材S1を配備し、締結部材として、第一配管60Aに環状のボルト61、第二配管60Bに環状のナット62を嵌装する。そして、ボルト61とナット62とを螺合し、両端面間の第一シール部材S1を押圧変形させて配管60を連結するものである。
【0029】
本実施形態では、締結部材の環状のボルト61の先端と後端側に第二シール部材S2を配備し、密閉空間3と外部とはリークポート4のみを連通するように構成している。
【0030】
リークポート4の開放端40に取り付けるリーク検知機構1の構造は、コック10とコック10の中空部10aにチューブ11を嵌着して構成されている。その他の構成は実施形態1と同様であり説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の実施形態によるリーク検知機構は、現場で簡易的にリーク検査を行うことができるから、リークポートを備えた各種流体機器の内部リーク検査に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 リーク検知機構
10 コック
10a 中空部
11 チューブ
2 内部空間
3 密閉空間
4 リークポート
40 外部開放端
5 バルブ(流体機器)
6 継手(流体機器)
L 液体
S1 第一シール部材
S2 第二シール部材
図1
図2
図3
図4