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特開2023-142457電子部品の製造方法および電子部品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142457
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法および電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230928BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230928BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
H01G13/00 391B
H01G13/00 331C
H01G13/00 391Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049381
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE23
5E082EE26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面が平坦で、所望の形状の外部電極を形成する電子部品の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】電子部品の製造方法は、外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する工程と、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体及び液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層に接触させる工程と、導電性ペーストを撥液層に接触させた状態で停止させる工程と、本体部を撥液層から引き離す工程と、を含む。製造装置100は、外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された本体部を保持する保持具20と、その上に、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体及び液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層を形成するための定盤30と、塗工された導電性ペーストを定盤上に形成される撥液層と接触させるため、保持具の移動が可能な移動機構40と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に外部電極が設けられた電子部品の製造方法であって、
外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する工程と、
前記外部電極形成領域に塗工された前記導電性ペーストを、前記導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、前記液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層に接触させる工程と、
前記導電性ペーストを前記撥液層に接触させた状態で停止させる工程と、
前記本体部を前記撥液層から引き離す工程と、
を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記撥液層は、前記液体からなる液体層であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記液体の温度は、10℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記撥液層は、前記液体からなる液体層と、前記液体層よりも深層側に位置し、前記固体からなる固体層とを含み、
前記導電性ペーストを前記撥液層に接触させる工程では、前記導電性ペーストを前記固体層に接触させることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記撥液層は、前記固体からなる固体層であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記導電性ペーストを前記撥液層に接触させる工程の前に、前記液体を凝固させることによって前記固体層を形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記液体は、水または水溶液であることを特徴とする請求項2~6のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品は、積層された複数の内部電極を前記本体部が有する積層セラミック電子部品であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
本体部に外部電極が設けられた電子部品の製造装置であって、
外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された前記本体部を保持するための保持具と、
その上に、前記導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、前記液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層を形成するための定盤と、
前記外部電極形成領域に塗工された前記導電性ペーストを前記定盤上に形成される前記撥液層と接触させるため、前記本体部を保持した前記保持具を移動させることが可能な移動機構と、
を備えることを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項10】
前記撥液層は、前記固体からなる固体層を含み、
前記定盤上に配置される前記液体を冷却して凝固させるための冷却機構をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の電子部品の製造装置。
【請求項11】
前記電子部品は、積層された複数の内部電極を前記本体部が有する積層セラミック電子部品であることを特徴とする請求項9または10に記載の電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に外部電極が設けられた電子部品の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本体部の表面に外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサ等の電子部品が知られている。そのような電子部品を製造するため、特許文献1には、本体部の所定の面に導電性ペーストを塗布し、導電性ペーストが塗布された面(以下、塗布面と呼ぶ)をホットプレートの表面に押さえつけて平坦化する工程を経て、外部電極を形成する方法が開示されている。この外部電極の形成方法によれば、外部電極の表面を平坦化して薄く形成することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-166030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の外部電極の形成方法では、導電性ペーストの塗布面をホットプレートの表面に押さえつけたときに、導電性ペーストの一部がホットプレートの表面に付着するとともに、塗布面の外側に導電性ペーストが広がって固まることによって、所望の形状の外部電極が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、表面が平坦で、所望の形状の外部電極を形成することができる電子部品の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品の製造方法は、本体部に外部電極が設けられた電子部品の製造方法であって、
外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する工程と、
前記外部電極形成領域に塗工された前記導電性ペーストを、前記導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、前記液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層に接触させる工程と、
前記導電性ペーストを前記撥液層に接触させた状態で停止させる工程と、
前記本体部を前記撥液層から引き離す工程と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の電子部品の製造装置は、本体部に外部電極が設けられた電子部品の製造装置であって、
外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された前記本体部を保持するための保持具と、
その上に、前記導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、前記液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層を形成するための定盤と、
前記外部電極形成領域に塗工された前記導電性ペーストを前記定盤上に形成される前記撥液層と接触させるため、前記本体部を保持した前記保持具を移動させることが可能な移動機構と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子部品の製造方法によれば、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層に接触させて停止させた後、本体部を撥液層から引き離すので、表面が平坦で、所望の形状の外部電極を形成することができる。すなわち、導電性ペーストを撥液層に接触させて停止させることによって、表面を平坦化させることができ、本体部を撥液層から引き離すときに、導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができるので、平坦化された状態を維持することができる。
【0009】
本発明の電子部品の製造装置によれば、表面が平坦で、所望の形状の外部電極を形成することができる。すなわち、外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された本体部を保持具によって保持し、導電性ペーストを、定盤上に形成される撥液層と接触させることによって、導電性ペーストの表面を平坦化させることができる。また、移動機構によって、本体部を撥液層から引き離すように保持具を移動させたときに、導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができるので、導電性ペーストが平坦化された状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子部品の一例である積層セラミックコンデンサの構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサをII-II線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサをIII-III線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。
図4】第1の実施形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5】第1の実施形態における電子部品の製造装置の構成を模式的に示す図である。
図6】外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工して外部電極を形成する方法を説明するための図であって、(a)は、保持具で本体部を保持し、定盤上に撥液層を形成した状態を示す図、(b)は、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層に接触させた状態を示す図、(c)は、本体部を撥液層から引き離した状態を示す図である。
図7】(a)は、第1の実施形態における製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサの外部電極の形状を模式的に示す断面図であり、(b)は、本体部を導電性ペーストに浸漬して引き上げた後、乾燥させる工程を経て製造された従来の積層セラミックコンデンサの外部電極の形状を模式的に示す断面図である。
図8】第2の実施形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図9】第2の実施形態における電子部品の製造装置の構成を模式的に示す図である。
図10】外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、撥液層に含まれる固体層に接触させた状態を示す図である。
図11】外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、固体層である撥液層に接触させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0012】
初めに、本発明の電子部品の製造方法によって製造される電子部品の一例として、積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサの構造について説明した後、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置について説明する。積層セラミック電子部品とは、積層された複数の内部電極を本体部が有する電子部品である。ただし、本発明の電子部品の製造方法によって製造される電子部品が積層セラミックコンデンサに限定されることはなく、サーミスタ、インダクタ等、本体部に外部電極が設けられた電子部品であれば、その種類に特に制約はない。
【0013】
(電子部品)
図1は、電子部品の一例である積層セラミックコンデンサ10の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10をII-II線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10をIII-III線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。
【0014】
積層セラミックコンデンサ10は、全体として直方体状の形状を有しており、本体部11と、本体部11の表面に設けられた外部電極とを備える。外部電極には、第1の外部電極14aと第2の外部電極14bが含まれる。
【0015】
ここでは、後述する誘電体層12と内部電極13a、13bとが積層されている方向を積層セラミックコンデンサ10の積層方向Tと定義し、一対の外部電極14a、14bが対向する方向を長さ方向Lと定義し、長さ方向Lおよび積層方向Tのいずれの方向にも直交する方向を幅方向Wと定義する。長さ方向L、積層方向T、および、幅方向Wのうちの任意の2つの方向は、互いに直交する方向である。なお、積層方向Tを厚さ方向と呼ぶこともある。
【0016】
積層セラミックコンデンサ10のサイズは、例えば、長さ方向L、幅方向W、積層方向Tの寸法がそれぞれ、3.2mm、1.6mm、1.6mmである。ただし、積層セラミックコンデンサ10のサイズが上述した数値に限定されることはなく、例えば、0.25mm、0.125mm、0.125mmのように小さいサイズでもよいし、5.7mm、5.0mm、5.0mmのように大きいサイズでもよい。
【0017】
本体部11は、長さ方向Lに相対する第1の端面15aおよび第2の端面15bと、積層方向Tに相対する第1の主面16aおよび第2の主面16bと、幅方向Wに相対する第1の側面17aおよび第2の側面17bとを有する。
【0018】
図2および図3に示すように、本体部11は、積層された複数の誘電体層12と複数の内部電極13a、13bとを含む。内部電極13a、13bには、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが含まれている。より詳細には、本体部11は、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが積層方向Tにおいて、誘電体層12を介して交互に複数積層された構造を有する。
【0019】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、例えば、Ni、Ag、Pd、Au、Cu、Ti、または、Cr等の金属、または、上述した金属を主成分とする合金等を含有している。第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、共材として、誘電体層12に含まれる誘電体セラミックと同じセラミック材料を含むことが好ましい。
【0020】
第1の内部電極13aは、本体部11の第1の端面15aに引き出されている。また、第2の内部電極13bは、本体部11の第2の端面15bに引き出されている。
【0021】
本実施形態において、第1の外部電極14aは、本体部11の第1の端面15aの全体に設けられているとともに、第1の端面15aから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bに回り込むように設けられている。第1の外部電極14aは、第1の端面15aに露出した第1の内部電極13aと電気的に接続されている。
【0022】
本実施形態において、第2の外部電極14bは、本体部11の第2の端面15bの全体に設けられているとともに、第2の端面15bから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bに回り込むように設けられている。第2の外部電極14bは、第2の端面15bに露出した第2の内部電極13bと電気的に接続されている。
【0023】
第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bはそれぞれ、後述するように、外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する工程を経て形成される。例えば、本体部11の外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する工程を経て、第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bを形成する。ただし、第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bが複数層からなる場合、導電性ペーストを塗工する工程は、複数層のうちの任意の層を形成するために行うことが可能である。ここでは、導電性ペーストを塗工する領域を外部電極形成領域と呼ぶ。
【0024】
本実施形態において、第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bはそれぞれ、下地電極層とめっき層とを備える。
【0025】
下地電極層は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au、Ti、および、Cr等の金属、またはそれらの金属を含む合金等を含む。下地電極層は、誘電体層12に含まれる材料と同じまたは類似する材料からなる共材、または、ガラスを含有していてもよい。下地電極層が共材またはガラスを含有する場合、その含有割合は、外部電極全体の30体積%以上70体積%以下であることが好ましい。
【0026】
下地電極層は、導電性ペーストを塗工して焼き付けることによって形成することが可能である。図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10では、第1の端面15aおよび第2の端面15bの全体と、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bの一部の領域とが、外部電極形成領域を構成する。
【0027】
めっき層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ti、Cr、または、Au等の金属、または、それらの金属を主成分とする合金を含む。めっき層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。ただし、めっき層は、Niめっき層とSnめっき層の2層構造とすることが好ましい。Niめっき層は、下地電極層が積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだによって侵食されるのを防止する機能を果たす。また、Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだの濡れ性を向上させる機能を果たす。
【0028】
(電子部品の製造方法)
<第1の実施形態>
図4は、第1の実施形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。ここでは、電子部品の本体部を用意しておき、外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工して外部電極を形成する方法について説明する。本体部は、既知の方法によって作製することができる。
【0029】
ステップS1では、外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工する。電子部品が図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10である場合、外部電極形成領域を構成する本体部11の第1の端面15aの全体と、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bの一部の領域に導電性ペーストを塗工する。本体部11は、焼成後のものであるが、焼成前のものであってもよい。本体部11が焼成前のものである場合、後述する方法で外部電極形成領域に導電性ペーストを塗工して焼き付けるときに、未焼成の本体部11も同時に焼成すればよい。
【0030】
導電性ペーストは、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ti、Cr、または、Au等の金属、または、それらの金属を主成分とする合金の粒子と溶媒とを含む。溶媒は、例えば、ターピネオール等の非水溶性の有機溶媒である。なお、導電性ペーストは、外部電極を形成するために用いられている一般的なものを使用することが可能である。
【0031】
導電性ペーストは、例えば、本体部11を導電性ペーストに浸漬することによって塗工する。ただし、導電性ペーストの塗工方法が浸漬に限定されることはなく、任意の方法で行うことが可能である。
【0032】
ステップS1に続くステップS2では、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、そのような液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層に接触させる。本実施形態において、撥液層は、上述した液体からなる液体層である。液体は、例えば、水または水溶液である。導電性ペーストを撥液層に接触させる方法の一例を以下で説明する。
【0033】
図5は、本発明の第1の実施形態における電子部品の製造装置100の構成を模式的に示す図である。第1の実施形態における電子部品の製造装置100は、保持具20と、定盤30と、移動機構40とを備える。
【0034】
保持具20は、外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された本体部11を保持するためのものである。保持具20は、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを露出させた状態で本体部11を保持する。例えば、上述した積層セラミックコンデンサ10において、本体部11の第1の端面15a側に導電性ペーストが塗工されている場合、保持具20は、図5に示すように、本体部11の第2の端面15bを保持する。保持具20による本体部11の保持は、任意の方法で行うことが可能である。複数の本体部11に対して一度に外部電極を形成するため、保持具20は、図5に示すように、複数の本体部11を保持することが好ましい。なお、図5では、本体部11のうち、導電性ペーストが塗工された外部電極形成領域を黒塗りで示している。
【0035】
定盤30は、その上に、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体、および、そのような液体が固化した固体の少なくとも一方を含む撥液層31を形成するためのものである。定盤30は、例えば、セラミック、御影石、金属等からなる。撥液層31と接する定盤30の定盤面30aは、水平な平面であることが好ましい。
【0036】
移動機構40は、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを定盤30上に形成される撥液層31と接触させるため、本体部11を保持した保持具20を移動させることが可能に構成されている。例えば、移動機構40は、保持具20と接続された移動軸を備えており、移動軸を回転させることによって、保持具20を下降または上昇させることによって、保持具20を定盤30に近づけたり、遠ざけたりすることが可能である。ただし、移動機構40が保持具20を移動させる方法が上述した方法に限定されることはなく、任意の方法で移動させることが可能である。
【0037】
電子部品の製造装置100によって、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させる方法を以下で説明する。
【0038】
まず、図6(a)に示すように、定盤30上に撥液層31を形成するとともに、外部電極形成領域に導電性ペーストが塗工された本体部11を保持具20で保持する。
【0039】
続いて、移動機構40によって保持具20を移動させることによって、図6(b)に示すように、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させる。具体的には、移動機構40によって、本体部11を保持した保持具20を下降させることによって、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させる。ただし、保持具20が撥液層31の上方の位置にいない場合には、撥液層31の上方の位置まで移動させた後、下降させる。本体部11を撥液層31内に突入させるときの速度は、例えば、1μm/s以上1000μm/s以下である。外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させても、導電性ペーストに含まれる溶媒は、撥液層31を構成する液体とは混ざらない。
【0040】
なお、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストは、定盤30の定盤面30aとは接触させない。導電性ペーストを定盤30の定盤面30aと接触させると、定盤面30aに導電性ペーストが付着し、形成する外部電極の平坦化が困難になるからである。
【0041】
ステップS2に続くステップS3では、導電性ペーストを撥液層31に接触させた状態で停止させる。すなわち、図6(b)に示すように、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストが撥液層31に接触した状態を所定時間維持する。所定時間は、例えば、1秒以上5秒以下である。導電性ペーストを撥液層31に接触させた状態で停止させることにより、導電性ペーストには、撥液層31を構成する液体から均一の圧力が加わるため、表面を平坦化させることができる。ここでは、導電性ペーストが溶媒を含むウェットな状態で、導電性ペーストの表面の平坦化を行うことができる。
【0042】
ステップS3に続くステップS4では、図6(c)に示すように、本体部11を撥液層31から引き離す。具体的には、移動機構40によって保持具20を引き上げることによって、撥液層31の外側に本体部11を移動させる。本体部11を撥液層31の外側へと引き上げるときの速度は、例えば、1μm/s以上1000μm/s以下である。
【0043】
上述したように、撥液層31は、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する。したがって、本体部11を撥液層31の外側に引き上げる際、導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができ、導電性ペーストの表面を平坦化した状態を維持することができる。
【0044】
上述したステップS1~S4の工程の処理は、本体部11の第1の端面15aと相対する第2の端面15bについても行う。ただし、撥液層31の粘度が高い等の場合には、第2の端面15bに対する処理を行う前に、スキージ等によって撥液層31の表面を平坦化させることが好ましい。
【0045】
この後、導電性ペーストを乾燥させて焼き付けを行う。導電性ペーストの乾燥過程でも導電性ペーストの形状は維持される。導電性ペーストを焼き付けることによって、外部電極のうちの下地電極層が形成される。外部電極の表面にめっき層が設けられている場合には、下地電極層の形成後にめっき処理を施す。上述した工程により、外部電極形成領域に外部電極が設けられた電子部品が製造される。
【0046】
なお、上述したように、外部電極が複数層からなる場合に、上述した導電性ペーストを塗工する工程を、複数層のうちの任意の層を形成するために行うことが可能である。
【0047】
本実施形態における電子部品の製造方法によれば、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させて停止させた後、本体部11を撥液層31から引き離すので、表面が平坦で、所望の形状の外部電極を形成することができる。すなわち、導電性ペーストを撥液層31に接触させて停止させたときに、導電性ペーストには、撥液層31を構成する液体から均一の圧力が加わるため、表面を平坦化させることができる。また、本体部11を撥液層31から引き離すときに、導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができるので、糸引きに起因して外部電極形成領域を構成する端面の中央部の膜厚が厚く、かつ、角部の膜厚が薄くなることを抑制することができる。これにより、表面が平坦で薄い外部電極を形成することが可能となる。
【0048】
図7(a)は、本実施形態における製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサ10の外部電極14の形状を模式的に示す断面図である。図7(b)は、本体部11Xを導電性ペーストに浸漬して引き上げた後、乾燥させる工程を経て製造された従来の積層セラミックコンデンサ10Xの外部電極14Xの形状を模式的に示す断面図である。なお、図7(a)、(b)では、内部電極は省略している。
【0049】
図7(b)に示すように、従来の積層セラミックコンデンサ10Xは、本体部11Xを導電性ペーストに浸漬して引き上げる際に糸引きが生じるため、外部電極14Xの中央部の膜厚が厚くなり、角部や稜線部等の端部の膜厚が薄くなる。
【0050】
これに対して、本実施形態における電子部品の製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサ10は、上述したように、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストの表面を平坦化して、その状態を維持することができるので、外部電極14の表面の平坦化、および、膜厚の均一化を実現することができる。また、中央部の膜厚の膨らみを抑制することができるので、角部や稜線部等の端部において一定の膜厚を確保しつつ、薄い外部電極14を形成することができる。
【0051】
また、撥液層31を構成する液体の温度を変えて、製造される電子部品の外部電極の形状を確認したところ、液体の温度が10℃以下である場合に、外部電極の膜厚がより平坦化されることが分かった。したがって、撥液層31を構成する液体の温度は、10℃以下であることが好ましい。
【0052】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。図4に示すフローチャートの工程と同じ工程については、同じステップ番号を付して詳しい説明は省略する。図8に示すフローチャートでは、図4に示すフローチャートに対して、導電性ペーストを撥液層に接触させる工程(ステップS2)の前に、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体を凝固させることによって固体層を形成する工程(ステップS11)が追加されている。
【0053】
図9は、本発明の第2の実施形態における電子部品の製造装置100Aの構成を模式的に示す図である。第2の実施形態における電子部品の製造装置100Aは、第1の実施形態における電子部品の製造装置100に対して、定盤30上に配置される液体を冷却して凝固させるための冷却機構50をさらに備える。定盤30上に配置される液体とは、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体である。
【0054】
冷却機構50は、定盤30上に配置される液体の温度を凝固点以下の温度まで冷却できるものであればどのようなものでもよい。冷却機構50は、例えば、ペルチェ素子を備えるものでもよいし、チラー(冷却水循環装置)であってもよい。
【0055】
図9に示すように、本実施形態において、撥液層31は、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体からなる液体層31aと、液体層31aよりも深層側に位置し、液体層31aを構成する液体が固化した固体からなる固体層31bとを含む。液体は、例えば、水または水溶液である。
【0056】
図8に示すフローチャートにおいて、ステップS1に続くステップS11では、定盤30上に配置される液体を凝固させることによって固体層を形成する。すなわち、第1の実施形態と同様に、定盤30上に、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体からなる液体層を形成した後、冷却機構50によって液体層を冷却することによって、液体層の一部を凝固させて固体層31bを形成する。これにより、定盤30側に固体層31bが形成され、固体層31bの上に液体層31aが形成される。
【0057】
なお、ステップS11の工程は、ステップS1の工程よりも前に行ってもよい。
【0058】
ステップS11に続くステップS2では、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させる。本実施形態では、図10に示すように、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを、撥液層31に含まれる固体層31bに接触させる。導電性ペーストを固体層31bに接触させることにより、導電性ペーストの表面をより平坦にすることができる。
【0059】
なお、固体層31bのうち、導電性ペーストと接触した部分は、導電性ペーストからの熱が伝わって、液体となる場合がある。
【0060】
ステップS3およびステップS4の工程は、図4に示すフローチャートのステップS3およびステップS4の工程と同じである。ステップS4で本体部11を撥液層31から引き離したときに、撥液層31の固体層31bに導電性ペーストは付着しないので、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストの表面の形状を維持することができる。また、本実施形態でも、本体部11を撥液層31から引き離すときに導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができるので、導電性ペーストの表面を平坦化した状態を維持することができる。
【0061】
なお、外部電極形成領域である第1の端面15aに塗工されている導電性ペーストを固体層31bに接触させた際、第1の端面15aに塗工されている導電性ペーストの一部が第1の端面15aの外側へとはみ出る場合がある。しかしながら、導電性ペーストは、溶媒を含むウェットな状態であるため、乾燥過程で第1の端面15a側に戻り、はみ出た状態で固まることはない。
【0062】
<第3の実施形態>
第2の実施形態において、撥液層31は、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体からなる液体層31aと、液体層31aよりも深層側に位置し、液体層31aを構成する液体が固化した固体からなる固体層31bとを含む構成である。
【0063】
これに対して、第3の実施形態において、撥液層31は、導電性ペーストに含まれる溶媒に対して撥液性を有する液体が固化した固体からなる固体層である。
【0064】
第3の実施形態における電子部品の製造装置の構成は、図9に示す電子部品の製造装置100Aの構成と同じである。ただし、冷却機構50は、定盤30上に形成される液体層の一部を凝固させるのではなく、全てを凝固させることによって固体層を形成する。
【0065】
第3の実施形態における電子部品の製造方法は、図8に示すフローチャートを用いて説明した第2の実施形態における電子部品の製造方法と同じである。ただし、図8に示すフローチャートのステップS11では、上述したように、定盤30上に形成される液体層の一部を凝固させるのではなく、全てを凝固させることによって固体層を形成する。
【0066】
また、ステップS2では、外部電極形成領域に塗工された導電性ペーストを撥液層31に接触させるが、本実施形態において撥液層31は固体層であるため、図11に示すように、導電性ペーストは、撥液層31の表面に接触させる。
【0067】
本実施形態でも、第2の実施形態と同様、導電性ペーストを固体層である撥液層31に接触させるので、導電性ペーストの表面をより平坦にすることができる。また、本体部11を撥液層31から引き離すときに導電性ペーストの糸引きの発生を抑制することができるので、導電性ペーストの表面を平坦化した状態を維持することができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 電子部品
11 本体部
12 誘電体層
13a 第1の内部電極
13b 第2の内部電極
14a 第1の外部電極
14b 第2の外部電極
20 保持具
30 定盤
31 撥液層
31a 液体層
31b 固体層
40 移動機構
50 冷却機構
100、100A 電子部品の製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11