(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014246
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】認知機能改善剤、認知機能維持剤、海馬機能改善剤及び海馬機能維持剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20230119BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230119BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P25/28
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A23L33/135
C12N1/20 A
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192039
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2022532341の分割
【原出願日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020105650
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】清水 金忠
(72)【発明者】
【氏名】勝又 紀子
(72)【発明者】
【氏名】大野 和也
(57)【要約】
【課題】認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤若しくは認知機能維持剤、又は海馬機能改善剤若しくは海馬機能維持剤の提供。
【解決手段】 ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能改善剤、認知機能維持剤、海馬機能改善剤及び海馬機能維持剤に関する。
本願は、2020年6月18日に、日本に出願された特願2020-105650号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは歳を重ねるにつれ学習能力や記憶力といった脳機能が徐々に低下していき、物忘れや不安障害、意欲の低下、睡眠の質の低下などを引き起こしやすくなる。この自然の摂理に加えて、認知症に罹患したときには、ヒトの尊厳までも脅かされる深刻な事態を招く場合がある。現在、認知症の予防と治療の研究が精力的に進められている。
【0003】
認知症とは、種々の原因で脳細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることにより起こる様々な障害が原因となり、物事の判断ができなくなったり、記憶力の急速な低下が生じたりすることで継続的に生活に支障が出ている状態を指す。認知症を発症する要因は、神経変性疾患がもっとも多く、次いで脳血管型認知症である。神経変性疾患は、長い時間をかけて脳の神経細胞に異常が蓄積し、最終的に細胞死に至るものであり、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症等が挙げられる。また、脳血管型認知症は、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などが引き金となって脳の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れたりしてしまうことにより起こる。
【0004】
特許文献1には、認知症患者のための脳機能改善剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、健常者ではあるが、認知機能の低下が起きている状態である。MCIは可逆的な状態であり、認知機能が正常な状態へと回復しうる。そのため、MCIと診断された場合であっても、認知機能の改善又は維持ができれば認知症への移行を遅らせたり、予防したりできる可能性がある。
【0007】
一方、アルツハイマー型認知症は、認知症のうち半数近くを占める。アルツハイマー型認知症では、発症の20年以上前から神経細胞の変性が認められ、神経細胞が脱落して海馬の萎縮が生じ、海馬機能の低下が起こるとされている。そのため、海馬機能の改善又は維持ができれば、アルツハイマー型認知症の発症を遅らせたり、予防したりできる可能性がある。
【0008】
本発明は、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤若しくは認知機能維持剤、又は海馬機能改善剤若しくは海馬機能維持剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤。
[2] 前記認知症を発症していない対象が、認知症を発症していないが、加齢に伴う脳の認知機能の低下が気になる対象である、[1]に記載の認知機能改善剤。
[3] 前記認知症を発症していない対象が、認知症を発症していないが、加齢に伴う複合的な認知機能の低下が気になる対象である、[1]に記載の認知機能改善剤。
[4] 前記認知症を発症していない対象が、健常者からなる群、軽度認知障害者からなる群並びに健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される、[1]に記載の認知機能改善剤。
[5] 前記認知症を発症していない対象が、MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象である、[1]に記載の認知機能改善剤。
[6] ビフィドバクテリウム・ブレーベを1×106~1×1012CFU/g含む、[1]~[5]のいずれかに記載の認知機能改善剤。
[7] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を含む、認知症を発症していない対象のための認知機能改善用飲食品。
[8] 認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方の使用。
【0010】
[9] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能維持剤。
[10] 前記認知症を発症していない対象が、認知症を発症していないが、加齢に伴う脳の認知機能の低下が気になる対象である、[9]に記載の認知機能維持剤。
[11] 前記認知症を発症していない対象が、認知症を発症していないが、加齢に伴う複合的な認知機能の低下が気になる対象である、[9]に記載の認知機能維持剤。
[12] 前記認知症を発症していない対象が、健常者からなる群、軽度認知障害者からなる群並びに健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される、[9]に記載の認知機能維持剤。
[13] 前記認知症を発症していない対象が、MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象である、[9]に記載の認知機能維持剤。
[14] ビフィドバクテリウム・ブレーベを1×106~1×1012CFU/g含む、[9]~[13]のいずれかに記載の認知機能維持剤。
[15] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を含む、認知症を発症していない対象のための認知機能維持用飲食品。
[16] 認知症を発症していない対象に投与するための認知機能維持剤の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方の使用。
【0011】
[17] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、海馬機能改善剤。
[18] 認知症を発症していない対象に投与するための、[17]に記載の海馬機能改善剤。
[19] 前記認知症を発症していない対象が、健常者からなる群、軽度認知障害者からなる群並びに健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される、[18]に記載の海馬機能改善剤。
[20] 前記認知症を発症していない対象が、MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象である、[18]に記載の海馬機能改善剤。
[21] ビフィドバクテリウム・ブレーベを1×106~1×1012CFU/g含む、[17]~[20]のいずれかに記載の海馬機能改善剤。
[22] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を含む、海馬機能改善用飲食品。
[23] 海馬機能改善剤の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方の使用。
【0012】
[24] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする、海馬機能維持剤。
[25] 認知症を発症していない対象に投与するための[24]に記載の海馬機能維持剤。
[26] 前記認知症を発症していない対象が、健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される、[25]に記載の海馬機能維持剤。
[27] 前記認知症を発症していない対象が、MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象である、[25]に記載の海馬機能維持剤。
[28] ビフィドバクテリウム・ブレーベを1×106~1×1012CFU/g含む、[24]~[27]のいずれかに記載の海馬機能維持剤。
[29] ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を含む、海馬機能維持用飲食品。
[30] 海馬機能維持剤の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、認知症を発症していない対象に投与するための認知機能改善剤若しくは認知機能維持剤、又は海馬機能改善剤若しくは海馬機能維持剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、試験前後におけるRBANSスコアを表すグラフである。
【
図2】
図2は、試験前後におけるRBANSスコアの変動値を表すグラフである。
【
図3】
図3は、試験前後におけるあたまの健康チェック(JMCIS)のスコア及び変動値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「~」により表される数値範囲は、「~」の両側の数値を含む。
MMSEスコアは、MMSE(Mini Mental State Examination;ミニメンタルステート検査)によって算出されるスコアである。MMSEは、臨床および研究において国際的に広く用いられている認知機能障害のスクリーニング法である。見当識、言語性記憶、全般性注意・計算、言語、図形模写に関する検査で、30点満点である。MMSEスコアが低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
RBANSスコアは、RBANS(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status;アーバンス)によって算出されるスコアである。RBANSは、1998年にRandolphにより開発され、全米で標準化された神経心理学検査で、即時記憶、遅延記憶、視空間・構成、言語、注意の5つの認知領域を評価する。12個の試験から構成されており、各試験の粗点から年齢等を加味した換算表により各認知領域の評価点を算出する(レジリオ株式会社より提供)。RBANSスコアが低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
あたまの健康チェック(JMCIS)(登録商標)は、健常者~境界域~MCI領域の微細な認知機能の変化を10分程度の対話式チェックで簡易に高い精度で定量表現することが出来る検査である。対象者の性別、年齢、学習年数、人種などの情報を基に、独自のアルゴリズムとデータベースを用いて認知機能指数を算出する(株式会社ミレニアより提供)。あたまの健康チェックにより評価、算出される個人の認知機能を客観的に示す指数であるMPI(Memory Performance Index:認知機能指数)スコア(以下「MPIスコア」又は「あたまの健康チェックのスコア」という。)が低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
FERMは、NITE特許生物寄託センター(NITE-IPOD;NITE Internatinal Patent Organism Depositary)を示す記号である。なお、NITEは、National Institute of Technology and Evaluation(独立行政法人製品評価技術基盤機構)の略称である。
【0016】
[認知機能改善剤]
本発明の認知機能改善剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする認知機能改善剤である。
【0017】
〈投与対象〉
本発明の認知機能改善剤の投与の対象は、認知症を発症していない対象である。
前記対象は、通常ヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ等の家畜に投与することも可能である。以下では、対象がヒトである場合について説明する。
【0018】
前記認知症を発症していない対象は、以下の(1)~(4)のいずれかの対象が好ましい。
(1)認知症を発症していないが、加齢に伴う脳の認知機能の低下が気になる対象。
(2)認知症を発症していないが、加齢に伴う複合的な認知機能の低下が気になる対象。
(3)健常者からなる群、軽度認知障害者からなる群並びに健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される対象。
(4)MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象。前記RBANS合計スコアは、41以下が好ましい。前記あたまの健康チェックのスコアは50.2以下が好ましい。
【0019】
〈投与経路〉
本発明の認知機能改善剤の投与経路は、例えば、経口投与、腹腔内投与、筋肉内投与、経粘膜投与、鼻腔内投与、直腸内投与等が挙げられるが、特に、経口投与が好ましい。
【0020】
〈認知機能の改善〉
本発明において、認知機能の改善は、本発明の認知機能改善剤の投与の前後で、MMSEスコア、RBANS合計スコア及びあたまの健康チェックのうち1つ以上にスコア増加が認められることを意味する。認知機能の改善としては、特に、RBANSにおいて、即時記憶、視空間・構成及び遅延記憶の各領域並びに総合評価点のうち1つ以上においてスコア増加が認められることが好ましく、視空間・構成及び遅延記憶のうち少なくとも一方の領域においてスコア増加が認められることがより好ましい。また、あたまの健康チェックにおいてMPIスコアの増加が認められることが望ましい。
【0021】
〈有効成分〉
本発明の認知機能改善剤の有効成分は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方である。
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方は、本発明の認知機能改善剤の製造のために使用される。
【0022】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)とは、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の1種である。ビフィドバクテリウム・ブレーベは、主に乳幼児の大腸内に多く住みついており、ビフィドバクテリウム属に属する菌種の中でもビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)等とともに、乳幼児型のビフィドバクテリウム属細菌として知られている。
【0023】
本技術の認知機能改善剤は、その有効成分が、主に乳幼児の大腸内に多く住みついている、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及びビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物のいずれか一方又は両方であることから、安全性に優れ、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も低く、非常に有用である。さらに、他の薬剤との併用においても安全性が高い。
【0024】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175に代えて、同等の菌株を使用してもよい。同等の菌株とは、同一の分離株に由来する菌株を意味する。例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175と同等の菌株として、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274が挙げられる。ここで、MCCは、Morinaga Culture Collection(Morinaga Milk Industry Co.,Ltd.)を意味する。
【0025】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の分譲株を培養することにより容易に取得できる。培養する方法は特に限定されず、本細菌の性質に応じた適当な条件下で培養を行うことができる。
具体的には、例えば、培養温度は、通常、25~50℃であり、35~42℃が好ましい。また、培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養できる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0026】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の培養に、通常用いられる培地を用いることができる。
【0027】
すなわち、炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、スクロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。
【0028】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175は、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。
【0029】
また、本発明の認知機能改善剤では、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175のみならず、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を含む培養物や培養上清も有効成分として用いることができる。
なお、前記培養物としては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を培養して増殖した後、細菌体以外を極力除去したものが好ましく、実質的に細菌体のみからなるものがより好ましい。ここで、「実質的に細菌体のみからなる」とは、湿質量で、培養物の全質量の95質量%以上が細菌体であることを意味する。
培養上清とは、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を培養した際に得られる培養液部分、又はその上澄み溶液であり、培養上清は、フィルタリングにより除菌処理されたものであることが好ましい。
【0030】
本発明の認知機能改善剤は、前記有効成分のみからなるものであってもよく、前記有効成分と前記有効成分以外の任意成分とを配合した組成物であってもよい。
前記任意成分は、特に限定されず、従来、医薬品に配合されている添加剤(例えば、後述する製剤担体など)を配合できる。
【0031】
本発明の認知機能改善剤におけるビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の含有量は特に制限されないが、効果的な認知機能改善効果のための1日当たりの投与量を無理なく摂取できる程度のビフィドバクテリウム・ブレーベを含むことが好ましく、1×106~1×1012CFU/g含むことがより好ましい。
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を1×106~1×1012CFU/g含む本発明の認知機能改善剤を、1日当たり1~3g投与することが好ましい。なお、CFUは、コロニー形成単位(Colony Forming Unit)を表す。
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を1×106~1×1012CFU/g含む本発明の認知機能改善剤は、1日あたり1回の投与でも良いが、1日あたり2回以上に分けて投与されることが好ましい。
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175を1×106~1×1012CFU/g含む本発明の認知機能改善剤は、毎日継続して投与されることが好ましく、例えば12週間以上毎日投与されることがより好ましい。
【0032】
〈製剤化〉
本発明の認知機能改善剤は、経口投与や非経口投与等の投与方法に応じて適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、座剤、噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等に製剤化することができる。本技術では、経口投与の剤形に製剤化することが好ましい。
なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
【0033】
製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、本発明の認知機能改善剤のほか、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。さらに、公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0034】
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。
固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0035】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0036】
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0037】
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0038】
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0039】
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0040】
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の認知機能改善剤は、公知の又は将来的に見出される認知機能改善作用を有する薬、抗認知症作用を有する薬、抗うつ病作用を有する薬、抗統合失調症作用を有する薬、抗せん妄作用を有する薬等と併用することも可能である。
【0042】
[認知機能改善用飲食品]
本発明の認知機能改善用飲食品は、認知症を発症していない対象のための認知機能改善用飲食品であり、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を含む。
認知症を発症していない対象、有効成分であるビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物については、上述した本発明の認知機能改善剤と同様である。
【0043】
飲食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品等が挙げられる。
【0044】
乳製品としては、例えば、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、加糖れん乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調整粉乳、クリーム、チーズ、バター、アイスクリーム類等が挙げられる。
小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
前記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等が挙げられる。
【0045】
また、本発明の認知機能改善用飲食品としては、これらの中でも特に、乳製品とすることが好ましく、発酵乳とすることが特に好ましい。これにより、認知機能改善効果に加え、乳製品の有する高い栄養価をも享受できる。
【0046】
本発明の認知機能改善用飲食品は、認知機能改善効果を表示する機能性表示食品に応用できる。
【0047】
[認知機能維持剤]
本発明の認知機能維持剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする認知機能維持剤である。
【0048】
本発明の認知機能維持剤の投与対象、投与経路、有効成分及び製剤化は、上述した本発明の認知機能改善剤と同様である。
【0049】
〈認知機能の維持〉
本発明において、認知機能の維持は、本発明の認知機能維持剤の投与の前後で、MMSEスコア、RBANS合計スコア及びあたまの健康チェックのうち1つ以上に有意なスコア減少が認められないことを意味する。認知機能の維持としては、特に、RBANSにおいて、即時記憶、視空間・構成及び遅延記憶の各領域並びに総合評価点のうち1つ以上において有意なスコア減少が認められないことが好ましく、視空間・構成及び遅延記憶のうち少なくとも一方の領域において有意なスコア減少が認められないことがより好ましい。また、あたまの健康チェックにおいてMPIスコアの有意な減少が認められないことが望ましい。
【0050】
[認知機能維持用飲食品]
上述した本発明の認知機能改善用飲食品と同様である。
本発明の認知機能維持用飲食品は、認知機能維持効果を表示する機能性表示食品に応用できる。
【0051】
〔機能性表示飲食品〕
また、本技術で定義される飲食品等は、特定の用途(特に保健の用途)や機能が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0052】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0053】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0054】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、機能性表示食品制度、これらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。より具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、機能性表示食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を挙げることができる。この中でも典型的な例としては、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、食品表示法(平成25年法律第70号)に定められた機能性表示食品としての表示及びこれらに類する表示である。
【0055】
なお、上述したような表示を行うために使用する文言は、認知機能向上・改善・予防等の文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、認知や学習に関連する各種疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を表す文言であれば、本技術の範囲に包含されることは言うまでもない。そのような文言としては、例えば、「記憶力の低下が気になる方へ」「認知機能を向上させたい方へ」「認知機能が気になる方へ」「将来アルツハイマー型認知症になるのを予防したい方へ」「認知の精度を高めたい方へ」「数・言葉・図形・状況等の情報をサポートしたい方へ」「認知機能の一部である記憶の精度や判断の正確さを向上させたい方へ」「記憶力を維持したい方へ」「健常な中高年の方で認知機能の維持をサポートしたい方へ」「もの忘れや軽度認知障害(MCI)が気になる方へ」「もの忘れが気になる中高年の方へ」、「軽度認知障害(MCI)が気になる中高年の方へ」等、需要者に対して認知・学習機能の維持・促進・制度改善の効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。
【0056】
[海馬機能改善剤]
本発明の海馬機能改善剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする海馬機能改善剤である。
【0057】
海馬は、大脳辺縁系の一部である海馬体の一部であり、脳の記憶や空間学習能力に関わる。海馬は、アルツハイマー型認知症における主な病変部位として知られている。海馬機能の改善は、特に、アルツハイマー型認知症の発症を防止したり、遅延させたりする上で、意義を有する。
【0058】
本発明の海馬機能改善剤の投与対象は、特に限定されないが、認知症を発症していない対象が好ましい。
前記認知症を発症していない対象は、上述した本発明の認知機能改善剤の投与対象と同様である。
【0059】
また、本発明の海馬機能改善剤の投与経路、有効成分及び製剤化は、上述した本発明の認知機能改善剤と同様である。
【0060】
〈海馬機能の改善〉
本発明において、海馬機能の改善は、本発明の海馬機能改善剤の投与の前後で、RBANSにおいて、海馬が司る即時記憶、視空間・構成及び遅延記憶の各領域並びに総合評価点のうち1つ以上においてスコア増加が認められることが好ましく、視空間・構成及び遅延記憶のうち少なくとも一方の領域においてスコア増加が認められることが好ましい。
【0061】
[海馬機能改善用飲食品]
上述した本発明の認知機能改善用飲食品と同様である。
本発明の海馬機能改善用飲食品は、海馬機能改善効果を表示する機能性表示食品に応用できる。
【0062】
[海馬機能維持剤]
本発明の海馬機能維持剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175の培養物のいずれか一方又は両方を有効成分とする海馬機能改善剤である。
【0063】
本発明の海馬機能維持剤の投与対象、投与経路、有効成分及び製剤化は、上述した本発明の海馬機能改善剤と同様である。
【0064】
〈海馬機能の維持〉
本発明において、海馬機能の維持は、本発明の海馬機能改善剤の投与の前後で、RBANSにおいて、海馬が司る即時記憶、視空間・構成及び遅延記憶の各領域並びに総合評価点のうち1つ以上において有意なスコア減少が認められないことが好ましく、視空間・構成及び遅延記憶のうち少なくとも一方の領域において有意なスコア減少が認められないことがより好ましい。
【0065】
[海馬機能維持用飲食品]
上述した本発明の認知機能改善用飲食品と同様である。
本発明の海馬機能維持用飲食品は、海馬機能維持効果を表示する機能性表示食品に応用できる。
【実施例0066】
以下に、実施例を用いて本発明を詳述する。なお、これら実施例は、本発明の代表的な一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0067】
軽度認知障害の疑いのある方を対象としたプロバイオティクス摂取による高次脳機能改善効果の試験例-プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験
50歳以上80歳未満の日本国籍の男性及び女性をボランティアバンクから集め、選択基準を満たし、除外基準に抵触しない方の中で、MMSEとRBANSのスコアに基づいて80名を選抜した。
被験者の選択基準は下記の3つである。
(1)50歳以上80歳未満の日本国籍の男性または女性
(2)MMSEのスコアが22点以上の方
(3)インフォームドコンセントを取得できた方
被験者の除外基準は下記の17個である。
(1)認知症と診断されている方
(2)現在、医師の管理下において、運動または食事療法を行っている方
(3)試験食品によりアレルギー発症のおそれがある方
(4)薬物依存、アルコール依存の現病または既往のある方
(5)精神障害(うつ病など)や睡眠障害等で通院中、または過去に精神疾患の既往がある方
(6)夜間勤務または交代制勤務の方
(7)食事、睡眠等の生活習慣が極度に不規則な方
(8)極端な偏食をしている方
(9)糖尿病、肝疾患(肝炎)、腎疾患、心疾患等の重篤な疾患、甲状腺疾患、副腎疾患、その他代謝性の重篤な疾患の現病、既往又は合併症を有する方
(10)認知機能に影響を及ぼす健康食品、サプリメント、及び医薬品を使用している方
(11)消化管の手術を受けたことのある方(虫垂炎を除く)
(12)同意取得日から遡って3ヵ月以内に他の臨床試験(研究)に参加していた方、あるいは試験期間中に他の臨床試験(研究)に参加する計画がある方
(13)同意取得日から遡って1ヵ月以内に200mLあるいは3ヵ月以内に400mLを超える採血、成分献血を行った方
(14)現在、妊娠又は授乳をしている、又は、試験期間中にその可能性のある方
(15)各種調査票への記録遵守が困難な方
(16)スクリーニング時の臨床検査値及び計測値から、被験者として不適当と判断された方
(17)その他、試験責任医師が被験者として不適当と判断した方
【0068】
MMSEのスコアを22点以上に設定することで認知症の疑いがある方を除いた。MMSEのスコアは、一般的に23点以下を認知症の疑いとするカットオフ値が用いられているが、カットオフ値を22点以下とすることで特異度をあげた。
その上で、RBANSのスコアが低い方を中心に選抜し、軽度認知障害(MCI)の疑いがある方80名を選抜した。
選抜した80名は、あたまの健康チェックを実施した後、性別・年齢・RBANSのスコアを割付因子とした層別ランダム化により、プロバイオティクス群(ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175摂取群)とプラセボ群の2群に均等に分けられた。試験食品として、表1に示す2種類のカプセル食品を作製した。プロバイオティクス群はプロバイオティクスカプセル(ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175をカプセル1個あたり100億個以上含む)を16週間、2個/日摂取し、プラセボ群はプラセボカプセル(デンプンをカプセルに含む)を16週間、2個/日摂取した。16週間後、再度RBANS及びあたまの健康チェックを実施し、摂取前後の点数を比較した。
【0069】
【0070】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175摂取群とプラセボ群のRBANSの評価点合計ならびに下位5つの認知領域の実測値の前後比較より、評価点合計、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶の領域において、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175摂取群の改善が認められた(
図1)。
RBANSの変動値に関しても、評価点合計、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶の領域において、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175摂取群が改善した(
図2)。
また、あたまの健康チェックも同様にビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175摂取群の改善が前後比較ならびに変動値において認められた(
図3)。
【0071】
RBANSならびにあたまの健康チェックの結果より、ビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175は加齢に伴い低下する認知機能を維持・改善する効果が認められた。
なお、RBANSで改善が認められた即時記憶、視空間・構成、遅延記憶の領域はいずれも海馬が機能を担うことが知られている。そのためビフィドバクテリウム・ブレーベ FERM BP-11175は海馬の機能を改善したことが示唆される。
【0072】
あたまの健康チェック(JMCIS)は、健常者~境界域~MCI領域の微細な認知機能の変化を10分程度の対話式チェックで簡易に高い精度で定量表現することが出来る検査である。対象者の性別、年齢、学習年数、人種などの情報を基に、独自のアルゴリズムとデータベースを用いて認知機能指数を算出する(株式会社ミレニアより提供)。