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  • 特開-リヤエンジンバスのフレーム構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142466
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】リヤエンジンバスのフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230928BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20230928BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B62D25/20 A
B62D25/08 A
B62D25/20 K
B62D25/08 M
B62D21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049393
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】橋場 裕之
(72)【発明者】
【氏名】羽嶋 謙一郎
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA19
3D203BA03
3D203BA07
3D203CA53
3D203CB19
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】リヤエンジンバスのフレーム構造において、エンジンリッドの閉じ動作に起因するバンパの変形を抑制する。
【解決手段】エンジンリッド2及びバンパ3が車体の後面部に配置されたリヤエンジンバスのフレーム構造1は、エンジンリッド2のストライカが取り付けられるリンフォース5と、バンパ3が取り付けられるエンドメンバ6とを備えている。エンドメンバ6は、リンフォース5とは別体であって、リンフォース5よりも車体後方に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンリッド及びバンパが車体の後面部に配置されたリヤエンジンバスのフレーム構造であって、
前記エンジンリッドのストライカが取り付けられるリンフォースと、
前記リンフォースとは別体であって、前記リンフォースよりも車体後方に配置され、前記バンパが取り付けられるエンドメンバと、を備えた
ことを特徴とする、リヤエンジンバスのフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車体の後部にエンジンが搭載されたリヤエンジンバスのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤエンジンバスでは、エンジンにアクセスするための開口部を閉鎖するエンジンリッドが車体の後面部に設けられる。一般に、エンジンリッドをロックするロック装置のストライカは、車体の後端部に配置されたフレームに取り付けられる。
また、車体の後面部には、緩衝性を高めるためのバンパ(リヤバンパ)も配置される。通常、バンパも、ストライカが取り付けられたフレームに取り付けられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-96278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにストライカ及びバンパが同一のフレームに取り付けられた構造では、エンジンリッドの閉じ動作によりストライカに伝わる衝撃が、フレームを通じてバンパにも伝達される。このため、エンジンリッドの開閉が繰り返されると、ストライカからフレームを通じてバンパに伝わる衝撃により、バンパが変形して表面の塗装に亀裂が入る虞がある。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、リヤエンジンバスのフレーム構造において、エンジンリッドの閉じ動作に起因するバンパの変形を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係るリヤエンジンバスのフレーム構造は、エンジンリッド及びバンパが車体の後面部に配置されたリヤエンジンバスのフレーム構造であって、前記エンジンリッドのストライカが取り付けられるリンフォースと、前記リンフォースとは別体であって、前記リンフォースよりも車体後方に配置され、前記バンパが取り付けられるエンドメンバと、を備えている。
【0007】
本適用例によれば、バンパの取り付けられるエンドメンバが、ストライカの取り付けられるリンフォースとは別体であって、リンフォースよりも車体後方に配置されるため、エンジンリッドの閉じ動作によりストライカに伝わる衝撃が、リンフォースからエンドメンバに伝わりにくくなっている。したがって、エンジンリッドの開閉が繰り返されたとしても、エンジンリッドの閉じ動作に起因するバンパの変形を抑制できる。これにより、バンパの表面の塗装に亀裂が入ることを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、リヤエンジンバスのフレーム構造において、エンジンリッドの閉じ動作に起因するバンパの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るリヤエンジンバスの後面図である。
図2図1のリヤエンジンバスに適用されたフレーム構造の斜視図である。
図3図2のフレーム構造のリンフォース及びエンドメンバを分解した斜視図である。
図4図2のフレーム構造のリンフォースとストライカとの取り付け構造を示す断面図(図1のA-A矢視断面図)である。
図5図2のフレーム構造のエンドメンバとバンパとの取り付け構造を示す断面図(図1のB-B矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0011】
[1.構成]
図1に示すように、本実施形態に係るリヤエンジンバスのフレーム構造1(以下、単に「フレーム構造1」ともいう)は、車体10の後部に図示しないエンジンが搭載されたリヤエンジンバス11に適用される。リヤエンジンバス11の車体10の後面部12には、エンジンリッド2及びバンパ3が配置されている。なお、ここでいう上下及び左右といった方向は、車体10を基準としている。以下、車体下方,車体前方などの方向は、「車体」という文言を省略して単に下方,前方などという。図面では、前方(車体前方)を「FR」で示し、右方(車体右方)を「RH」で示し、上方(車体上方)を「UP」で示す。
【0012】
エンジンリッド2は、後面部12に形成された開口部13を閉鎖するドアであって、開閉可能に設けられる。本実施形態のエンジンリッド2は、略矩形状をなし、その上端部に設けられた図示しないヒンジ部を軸にして回動することで開閉される。したがって、エンジンリッド2の開閉時には、エンジンリッド2の下端部が後面部12に対して離隔,接近する。
【0013】
開口部13は、エンジンにアクセスするための窓である。例えばエンジンの点検時には、作業者がエンジンリッド2を開くことで、開口部13を通じてエンジンにアクセス可能となる。
バンパ3は、後面衝突の際の緩衝性を高めるためのものであって、車幅方向(左右方向)D2に延設される。バンパ3は、エンジンリッド2の下方に配置される。バンパ3は、例えば樹脂製である。
【0014】
車体10の後部には、図2に示すように各種フレーム4~8が設けられる。これらのフレーム4~8はいずれも、エンジンリッド2よりも下方であって、バンパ3よりも前方に配置される。フレーム4~8は、具体的には、車長方向(前後方向)D1に延びる一対のサイドレール4と、一対のサイドレール4の後端部から車幅方向D2の外側へそれぞれ延びる一対のリヤフレーム8と、一対のリヤフレーム8の間で車幅方向D2に延びるリンフォース5,エンドメンバ6及びロアメンバ7とである。
【0015】
一対のサイドレール4は、車幅方向D2に互いに離隔して配置される。サイドレール4の間であってリンフォース5,エンドメンバ6及びロアメンバ7よりも前方のスペースには、エンジンが搭載される。
一対のリヤフレーム8は、一対のサイドレール4の後端部にそれぞれ結合されている。各リヤフレーム8における車幅方向D2の内側の端部には、リンフォース5,エンドメンバ6及びロアメンバ7を締結するための締結部8aが設けられている。
【0016】
本実施形態のリンフォース5,エンドメンバ6及びロアメンバ7はいずれも、車高方向D3よりも車幅方向D2に長い矩形状をなす。リンフォース5及びエンドメンバ6は、ロアメンバ7よりも上方に配置される。また、エンドメンバ6は、リンフォース5と車長方向D1に重なるように配置されるものの、リンフォース5とは別体(別の要素)であって、リンフォース5よりも後方(バンパ3側)に配置される。
【0017】
図3に示すように、リンフォース5の車幅方向D2の両端部5aと、エンドメンバ6の車幅方向D2の両端部6aとは、互いに重ねられ、リヤフレーム8の締結部8aの上部に共締めされる。このように、リヤフレーム8に対するリンフォース5の固定と、リヤフレーム8に対するエンドメンバ6の固定とには、共通の締結具が用いられている。
【0018】
また、ロアメンバ7の車幅方向D2の両端部は、リヤフレーム8の締結部8aの下部に締結される。ロアメンバ7は、リンフォース5及びエンドメンバ6の各々と隙間をあけて配置される。なお、本実施形態ではリヤフレーム8がサイドレール4に結合されていることから、リヤフレーム8に固定されるリンフォース5,エンドメンバ6及びロアメンバ7は、リヤフレーム8を介してサイドレール4(シャシフレーム)に結合されているともいえる。
【0019】
リンフォース5及びエンドメンバ6は、上記のとおり両端部5a,6aが互いに重ねられて配置されるものの、両端部5a,6aの間に延びる中間部5b,6bは、互いに非接触となるように配置される。すなわち、リンフォース5の両端部5aの間に延びる中間部5bと、エンドメンバ6の両端部6aの間に延びる中間部6bとは、互いに隙間をあけて配置される。
【0020】
リンフォース5の中間部5bには、二つのストライカブラケット21が取り付けられている。一方、エンドメンバ6の中間部6bには、二つのバンパブラケット22が取り付けられている。ストライカブラケット21及びバンパブラケット22は、車幅方向D2において互いに重ならない(車幅方向D2の位置が互いにずれる)ように配置される。
【0021】
図4に示すように、本実施形態のリンフォース5には、略L字状の断面をなす上記のストライカブラケット21と、ストライカブラケット21よりも小さい略L字状の断面をなす補助ストライカブラケット23とを介して、エンジンリッド2のストライカ9が取り付けられている。ストライカ9は、エンジンリッド2をロックするロック装置に含まれる車体側部品である。本実施形態では、リンフォース5においてチャネル形状をなす中間部5bから上方へ突出するように、ストライカブラケット21が固定されている。また、ストライカブラケット21の上面に補助ストライカブラケット23が固定され、補助ストライカブラケット23にストライカ9が固定されている。
【0022】
このように、リンフォース5の中間部5bには、ストライカブラケット21等を介してストライカ9が取り付けられているものの、バンパ3は取り付けられていない。すなわち、フレーム構造1では、ストライカ9が取り付けられるリンフォース5に、バンパ3が取り付けられていない。
【0023】
一方、図5に示すように、本実施形態のエンドメンバ6には、略L字状の断面をなす上記のバンパブラケット22と、クランク形状(略Z字状)の断面をなす補助バンパブラケット24とを介して、バンパ3が取り付けられている。本実施形態では、エンドメンバ6において略L字状の断面をなす中間部6bの上面に、バンパブラケット22が固定されている。また、バンパブラケット22には、ボルト25及びナット26で補助バンパブラケット24が締結されており、補助バンパブラケット24には、例えば接着剤でバンパ3が取り付けられている。なお、バンパ3は、図示しないブラケットを介してリヤフレーム8にも取り付けられる。
【0024】
このように、エンドメンバ6の中間部6bには、バンパブラケット22等を介してバンパ3が取り付けられているものの、ストライカ9は取り付けられていない。すなわち、フレーム構造1では、バンパ3が取り付けられるエンドメンバ6に、ストライカ9が取り付けられていない。
【0025】
[2.作用及び効果]
(1)上記のフレーム構造1によれば、バンパ3の取り付けられるエンドメンバ6が、ストライカ9の取り付けられるリンフォース5とは別体であって、リンフォース5よりも後方(車体後方)に配置されている。このため、エンジンリッド2の閉じ動作によりストライカ9に伝わる衝撃が、リンフォース5からエンドメンバ6に伝わりにくくなっている。
【0026】
詳細にいえば、エンジンリッド2の閉じ動作によりストライカ9には前方向の衝撃が入力されるものの、この衝撃はストライカ9の取り付けられたリンフォース5やリンフォース5が結合されたサイドレール4で吸収される。そして、リンフォース5とは独立してリンフォース5よりも後方に配置されたエンドメンバ6には、リンフォース5を介して前方向に加えられる衝撃が伝達されにくくなっている。このため、ストライカ9からリンフォース5に伝わった衝撃が、エンドメンバ6を通じてバンパ3まで伝達されることを抑制できる。
したがって、エンジンリッド2の開閉が繰り返されたとしても、エンジンリッド2の閉じ動作に起因するバンパ3の変形を抑制できる。また、このようにバンパ3の変形が抑制されることで、バンパ3の表面の塗装に亀裂が入ることを防止できる。
【0027】
(2)リンフォース5及びエンドメンバ6がリヤフレーム8に共締めされれば、上記のようにリンフォース5からエンドメンバ6への衝撃伝達を抑制しつつも、リンフォース5及びエンドメンバ6の取り付け性及び取り外し性を高められる。例えば、大規模な点検時には、エンジンを車外に運ぶためにリンフォース5及びエンドメンバ6を取り外す作業が必要となるが、本実施形態のようにリンフォース5及びエンドメンバ6が共締めされていれば、共通の締結具を外すだけでリンフォース5及びエンドメンバ6を取り外せる。このため、リンフォース5及びエンドメンバ6が個々に独立してリヤフレーム8に締結されている場合と比べて、リンフォース5及びエンドメンバ6の取り外しが容易となる。よって、エンジンの点検作業性を高められる。
【0028】
また、上記のようにリンフォース5及びエンドメンバ6の両端部5a,6aを共締めする場合であっても、リンフォース5及びエンドメンバ6の中間部5b,6b同士の間には隙間をあけておくことで、エンジンリッド2の閉じ動作による衝撃がリンフォース5を介してサイドレール4で吸収されるため、リンフォース5からエンドメンバ6への衝撃伝達を抑制できる。したがって、上記のとおりエンジンリッド2の閉じ動作に起因するバンパ3の変形を抑制できる。
【0029】
[3.変形例]
上記の各種ブラケット21~24は一例である。ストライカ9は、ストライカブラケット21及び補助ストライカブラケット23の一方又は両方を介さずに、リンフォース5に取り付けられてもよい。同様に、バンパ3は、バンパブラケット22及び補助バンパブラケット24の一方又は両方を介さずに、エンドメンバ6に取り付けられてもよい。なお、ブラケット21~24の形状や個数や固定手法は、適宜変更されてよい。
上記のリンフォース5及びエンドメンバ6の各形状も一例である。リンフォース5及びエンドメンバ6は、互いに異なる締結具を用いてリヤフレーム8に締結されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 フレーム構造(リヤエンジンバスのフレーム構造)
2 エンジンリッド
3 バンパ
4 サイドレール
5 リンフォース
5a 端部
5b 中間部
6 エンドメンバ
6a 端部
6b 中間部
7 ロアメンバ
8 リヤフレーム
8a 締結部
9 ストライカ
10 車体
11 リヤエンジンバス
12 後面部
13 開口部
21 ストライカブラケット
22 バンパブラケット
23 補助ストライカブラケット
24 補助バンパブラケット
25 ボルト
26 ナット
D1 車長方向(前後方向)
D2 車幅方向(左右方向)
D3 車高方向(上下方向)
図1
図2
図3
図4
図5