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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142468
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】バレル研磨装置及びバレル研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/02 20060101AFI20230928BHJP
   B24B 31/12 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B24B31/02 B
B24B31/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049400
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】金澤 顕禎
(72)【発明者】
【氏名】村田 良太
(72)【発明者】
【氏名】千布 剛敏
(72)【発明者】
【氏名】千賀 学
(72)【発明者】
【氏名】影山 健治
(72)【発明者】
【氏名】中島 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕也
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA11
3C158AA14
3C158AB01
3C158AB04
3C158AB08
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】研磨加工の効率を向上させること。
【解決手段】バレル研磨装置1に、底部11と、筒状に形成されて底部11から立設する壁部12とを有し、壁部12の内側に砥粒60が収容されるバレル槽10と、壁部12の形状である筒状の中心をバレル槽10の回転中心であるバレル槽回転中心CBとしてバレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20と、バレル槽10に収容される砥粒60に加工物70を挿入させて加工物70を支持すると共にバレル槽回転中心CBと略平行な回転中心である支持部材回転中心CSを中心として回転する複数の支持部材30と、を備え、バレル槽10は、支持部材30で支持をする加工物70に対して相対回転し、複数の支持部材30は、それぞれ加工物70を支持部材30の回転中心CSに対して偏心させて支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、
前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持すると共に前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として回転する複数の支持部材と、
を備え、
前記バレル槽は、前記支持部材で支持をする前記加工物に対して相対回転し、
複数の前記支持部材は、それぞれ前記加工物を前記支持部材回転中心に対して偏心させて支持するバレル研磨装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記バレル槽回転中心を中心とする周方向において隣り合う前記支持部材同士で、前記バレル槽回転中心からの前記加工物の距離が異なる距離となるように前記支持部材回転中心を中心として前記加工物を回転させる請求項1に記載のバレル研磨装置。
【請求項3】
前記支持部材は、1つの前記支持部材で複数の前記加工物を前記支持部材回転中心に対してそれぞれ偏心させて支持する請求項1または2に記載のバレル研磨装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記支持部材回転中心に対して偏心する回転中心である加工物回転中心を中心として前記加工物を回転させる加工物回転装置を備える請求項1または2に記載のバレル研磨装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記支持部材回転中心に対して偏心する回転中心である加工物回転中心を中心として前記加工物を回転させる加工物回転装置を備える請求項3に記載のバレル研磨装置。
【請求項6】
前記支持部材は、軸状の前記加工物を、前記加工物の軸心方向が前記支持部材回転中心に平行になる向きで支持する請求項1または2に記載のバレル研磨装置。
【請求項7】
前記支持部材は、軸状の前記加工物を、前記加工物の軸心方向が前記支持部材回転中心に平行になる向きで支持する請求項4に記載のバレル研磨装置。
【請求項8】
複数の前記支持部材は、前記バレル槽を回転させて前記砥粒によって前記加工物の研磨を行う際に前記加工物によって前記砥粒の表面に形成される窪みが、前記窪みを形成した前記加工物を支持する前記支持部材に対して前記バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う前記支持部材で支持する前記加工物の位置まで継続する位置関係で配置される請求項1または2に記載のバレル研磨装置。
【請求項9】
複数の前記支持部材は、前記バレル槽を回転させて前記砥粒によって前記加工物の研磨を行う際に前記加工物によって前記砥粒の表面に形成される窪みが、前記窪みを形成した前記加工物を支持する前記支持部材に対して前記バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う前記支持部材で支持する前記加工物の位置まで継続する位置関係で配置される請求項4に記載のバレル研磨装置。
【請求項10】
底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、
前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持すると共に前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として回転する支持部材と、
を備え、個別に前記加工物を支持する前記支持部材を複数有するバレル研磨装置を用いたバレル研磨方法であって、
前記加工物は、複数の前記加工物を複数の前記支持部材によりそれぞれ前記支持部材回転中心に対して偏心させて支持させ、
前記支持部材で支持する前記加工物に対して前記バレル槽を相対回転させながら、前記支持部材回転中心を中心として前記支持部材を回転させることにより、前記バレル槽に収容される前記砥粒によって前記加工物の研磨を行うバレル研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バレル研磨装置及びバレル研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の表面を研磨加工する手法の1つにバレル研磨がある。バレル研磨は、砥粒と水で満たしたバレル槽を回転させ、その状態でバレル槽に加工物を入れる。これにより、バレル槽と共にバレル槽内の砥粒と水が回転し、砥粒が加工物に衝突することにより加工物の表面が加工され、加工物の表面が研磨される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された環状ワーク処理装置では、研磨材を収容した研磨タンクに、支持具で支持するワークを埋設させ、駆動モータによって研磨タンクを回転させることによりワークの研磨を行っている。また、特許文献2に記載されたジャイロ加工装置では、工作物保持軸の先端でチャッキングする工作物を、加工槽に装入した研磨材の内部に挿入し、加工槽を回転させると共に工作物を自転及び公転させることにより、工作物の加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62-46307号公報
【特許文献2】特開平3-213262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、砥粒が満たされたバレル槽に加工物を入れた状態でバレル槽を回転させることによって加工物の加工を行う場合、バレル槽の回転方向における加工物の下流側の位置で、砥粒の表面に窪みが発生することがある。つまり、砥粒が入ったバレル槽を回転させることによって加工物の加工を行う場合、バレル槽と共に回転をする砥粒が、加工物に対してバレル槽の回転方向における上流側から当たった際に、砥粒は加工物により押し退けられる。加工物によって押し退けられた砥粒は、バレル槽の回転方向における加工物の下流側においてもすぐには元の位置に戻らないため、押し退けられた砥粒が存在していた部分では砥粒が少なくなり、窪みとなって表れる。
【0006】
特に、砥粒と共にバレル槽に投入する水の量が少ない場合は、砥粒の流動性が低くなるため、バレル槽の回転方向における下流側では砥粒の表面の窪みが発生し易くなる。バレル研磨装置はバレル槽を回転させながら加工物の研磨を行うため、砥粒の表面に窪みが発生した場合、窪みはバレル槽の回転に伴ってバレル槽の周方向に移動し、1回転をして加工物の位置に戻ってくることがある。または、複数の加工物をバレル槽の周方向に沿って並べて配置し、複数の加工物の研磨を同時に行う際において、砥粒の表面に窪みが発生した場合、バレル槽の回転に伴って窪みが、窪みを発生させた加工物の下流側に位置する加工物の位置の到達することがある。これらのように、バレル槽内における加工物の位置に砥粒の表面の窪みが到達した場合、加工物に当たる砥粒が少なくなるため、砥粒を加工物に衝突させることにより行う加工物の研磨の効率が低下する。
【0007】
一方、砥粒と共にバレル槽に投入する水の量を多くした場合は、砥粒の流動性が高くなる。このため、バレル槽の回転方向における上流側から砥粒が加工物に当たることにより砥粒が押し退けられた場合でも、加工物の下流側では、砥粒が押し退けられた位置に砥粒は容易に流れることができる。これにより、水分量が多いことにより砥粒の流動性が高い場合は、バレル槽の回転方向における下流側においても砥粒の表面の窪みは発生し難くなる。しかし、水分量を増加させた場合、加工物の研磨に用いる砥粒の密度が減少するため、加工物を研磨する際における研磨効率の低下につながる。
【0008】
これらのため、砥粒を収容したバレル槽を回転させてバレル槽内で加工物に砥粒を衝突させることによって加工物の研磨を行う場合、研磨の効率の点で改善の余地があった。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、研磨加工の効率を向上させることのできるバレル研磨装置及びバレル研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のバレル研磨装置は、底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持すると共に前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として回転する複数の支持部材と、を備え、前記バレル槽は、前記支持部材で支持をする前記加工物に対して相対回転し、複数の前記支持部材は、それぞれ前記加工物を前記支持部材回転中心に対して偏心させて支持する。
【0011】
この構成によれば、加工物を支持部材回転中心に対して偏心させて支持する支持部材を回転させながら加工物の研磨を行うため、加工物によって砥粒の表面に窪みが発生した場合でも、窪みを発生させた加工物に対してバレル槽の回転方向における下流側に位置する加工物は、砥粒の窪みを避けることができる。これにより、加工物には、窪み以外の位置に存在する砥粒が衝突するため、加工物は、衝突する砥粒によって表面が加工され、砥粒により表面が研磨される。従って、加工物の研磨時に砥粒の表面に窪みが発生し易い状態においても、砥粒の窪みを避けながら加工物の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0012】
望ましい形態として、前記支持部材は、前記バレル槽回転中心を中心とする周方向において隣り合う前記支持部材同士で、前記バレル槽回転中心からの前記加工物の距離が異なる距離となるように前記支持部材回転中心を中心として前記加工物を回転させる。
【0013】
この構成によれば、バレル槽の回転方向における上流側の加工物により発生した砥粒の窪みを、バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う加工物は、バレル槽の径方向に避けることができる。従って、窪みを発生させた加工物に対して、バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う加工物は、窪みに対してバレル槽の径方向における外側または内側に位置する砥粒により研磨を行うことができるため、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0014】
望ましい形態として、前記支持部材は、1つの前記支持部材で複数の前記加工物を前記支持部材回転中心に対してそれぞれ偏心させて支持する。
【0015】
この構成によれば、1つの支持部材によって支持する複数の加工物を、支持部材回転中心周りにそれぞれ回転させながら研磨を行うことができる。このため、加工物の研磨時には、バレル槽の回転方向における上流側の支持部材で支持する複数の加工物によって砥粒に発生した窪みを、バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う支持部材によって支持する複数のそれぞれの加工物で避けることができる。従って、1度の研磨の作業で多くの加工物の研磨を行う際に、多くの加工物の表面を砥粒によって効果的に研磨することができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0016】
望ましい形態として、前記支持部材は、前記支持部材回転中心に対して偏心する回転中心である加工物回転中心を中心として前記加工物を回転させる加工物回転装置を備える。
【0017】
この構成によれば、加工物の研磨時には、支持部材は、加工物を支持部材回転中心の周囲を回転させながら、支持部材回転中心に対して偏心する加工物回転中心を中心として加工物を回転させる。これにより加工物は、バレル槽の回転方向における上流側で隣り合う加工物によって砥粒に発生した窪みを避けることができると共に、加工物における砥粒が衝突する面を順次変化させることができる。従って、加工物の表面を、砥粒によって満遍なく研磨することができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0018】
望ましい形態として、前記支持部材は、軸状の前記加工物を、前記加工物の軸心方向が前記支持部材回転中心に平行になる向きで支持する。
【0019】
この構成によれば、加工物に対して相対回転をする砥粒を、加工物の軸心方向に対して直交する方向から衝突させることができるため、加工物の表面を、砥粒によって効果的に研磨することができる。これにより、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0020】
望ましい形態として、複数の前記支持部材は、前記バレル槽を回転させて前記砥粒によって前記加工物の研磨を行う際に前記加工物によって前記砥粒の表面に形成される窪みが、前記窪みを形成した前記加工物を支持する前記支持部材に対して前記バレル槽の回転方向における下流側で隣り合う前記支持部材で支持する前記加工物の位置まで継続する位置関係で配置される。
【0021】
この構成によれば、複数の支持部材は、バレル槽の周方向における支持部材同士の距離が、比較的近い距離となる位置関係で配置されるため、加工物の研磨時には、1度の研磨の作業で多くの加工物の研磨を行うことができる。これにより、加工物の研磨時に加工物によって砥粒に発生した窪みをバレル槽の回転方向における下流側の加工物で避けながら、1度の研磨の作業で多くの加工物を研磨することができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0022】
本開示のバレル研磨方法は、底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持すると共に前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として回転する支持部材と、を備え、個別に前記加工物を支持する前記支持部材を複数有するバレル研磨装置を用いたバレル研磨方法であって、前記加工物は、複数の前記加工物を複数の前記支持部材によりそれぞれ前記支持部材回転中心に対して偏心させて支持させ、前記支持部材で支持する前記加工物に対して前記バレル槽を相対回転させながら、前記支持部材回転中心を中心として前記支持部材を回転させることにより、前記バレル槽に収容される前記砥粒によって前記加工物の研磨を行う。
【0023】
この構成によれば、加工物を支持部材回転中心に対して偏心させて支持する支持部材を回転させながら加工物の研磨を行うため、加工物によって砥粒の表面に窪みが発生した場合でも、窪みを発生させた加工物に対してバレル槽の回転方向における下流側に位置する加工物は、砥粒の窪みを避けることができる。これにより、加工物には、窪み以外の位置に存在する砥粒が衝突するため、加工物は、衝突する砥粒によって表面が加工され、砥粒により表面が研磨される。従って、加工物の研磨時に砥粒の表面に窪みが発生し易い状態においても、砥粒の窪みを避けながら加工物の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係るバレル研磨装置及びバレル研磨方法は、研磨加工の効率を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態に係るバレル研磨装置の断面模式図である。
図2図2は、図1のA-A矢視図である。
図3図3は、加工物が支持部材の回転中心に対して偏心せずに支持される形態のバレル研磨装置の断面図である。
図4図4は、図3のB-B矢視図である。
図5図5は、図4のC-C断面図である。
図6図6は、図4に示すバレル槽を回転させた状態を示す説明図である。
図7図7は、図6のD-D断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係るバレル研磨装置の断面模式図である。
図9図9は、第3実施形態に係るバレル研磨装置の断面模式図である。
図10図10は、第3実施形態の変形例であり、2つの支持部を有する支持部材に加工物回転装置を配置した形態を示す説明図である。
図11図11は、第1実施形態の変形例であり、支持部材同士で回転方向における位相が同じ位相になる場合の説明図である。
図12図12は、バレル研磨装置により研磨加工を行う加工物の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るバレル研磨装置1の断面模式図である。図1は、バレル槽10の回転中心であるバレル槽回転中心CBに沿ってバレル槽10の断面を見た断面図になっている。第1実施形態に係るバレル研磨装置1は、加工物70の表面を研磨するための装置になっている。バレル研磨装置1は、加工物70の研磨加工に用いる砥粒60を収容するバレル槽10と、バレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20と、加工物70を支持する支持部材30とを備えている。
【0028】
バレル槽10は、略円形の板状に形成される底部11と、筒状に形成されて底部11から立設する壁部12とを有しており、筒状の形状で形成される壁部12は、底部11の外周部分から立設して形成されている。このためバレル槽10は、換言すると、一端に底部11が位置することにより一端が閉塞される、有底の筒状の形状で形成されており、バレル槽10の他端側は、バレル槽10の開口部13として形成されている。バレル研磨装置1は、バレル槽10が有する壁部12の形状である筒状の軸心方向が上下方向となり、底部11が壁部12に対して下側に位置し、開口部13が上側に位置する向きで使用される。
【0029】
以下の説明では、バレル研磨装置1の通常の使用形態における上側をバレル研磨装置1における上側として説明し、バレル研磨装置1の通常の使用形態における下側をバレル研磨装置1における下側として説明する。
【0030】
バレル槽10に収容される砥粒60は、壁部12の内側に収容される。即ち、砥粒60は、バレル槽10の底部11における壁部12が立設する側の面と、筒状の形状で形成される壁部12の内周面とにより区画される空間に収容される。
【0031】
バレル槽10に収容される砥粒60は、粒状の研磨剤になっており、例えば、アルミナや炭化ケイ素などを結合剤で保持したものになっている。バレル槽10には、粒状に形成される多量の砥粒60が、少量の水と共に収容される。
【0032】
バレル槽回転装置20は、壁部12の形状である筒状の中心をバレル槽10の回転中心であるバレル槽回転中心CBとして、バレル槽10を回転させることが可能になっている。詳しくは、バレル槽10の底部11における、壁部12が位置する側の面の反対側の面、即ち、砥粒60が収容される側の面の反対側の面には、バレル軸14が配置されている。つまり、バレル軸14は、バレル槽10における底部11の下側の面から下側に向かって延びて配置されている。バレル軸14は、軸心がバレル槽回転中心CBに一致する位置に配置されており、バレル槽回転中心CBに沿った向きで底部11から延びて形成されている。バレル軸14における底部11が位置する側の端部の反対側の端部には、プーリ15が取り付けられている。
【0033】
バレル槽回転装置20は、駆動モータと減速装置とを備える駆動装置21を有しており、駆動装置21で発生した駆動力を、バレル軸14に伝達することにより、バレル槽10を回転させることが可能になっている。詳しくは、バレル槽回転装置20が有する駆動装置21には、出力軸22にプーリ23が取り付けられており、駆動装置21の出力軸22のプーリ23と、バレル軸14のプーリ15との間には、駆動ベルト24が巻き掛けられている。これにより、バレル槽回転装置20は、駆動装置21で発生した駆動力を、駆動ベルト24を介してバレル軸14に伝達し、バレル軸14を回転させることによってバレル槽回転中心CBを中心としてバレル槽10を回転させることができる。
【0034】
加工物70を支持する支持部材30は、バレル槽10に収容される砥粒60に対して加工物70を挿入させて加工物70を支持することが可能になっている。つまり、支持部材30は、支持部材30で支持する加工物70をバレル槽10の開口部13からバレル槽10の内側に入り込ませ、バレル槽10に収容される砥粒60に対して挿入させることが可能になっている。
【0035】
詳しくは、支持部材30は、軸状の回転軸31と、回転軸31における一端から回転軸31に対して直交する方向に延びる腕部32と、腕部32における回転軸31に接続される側の端部の反対側の端部に接続される支持軸33とを有している。回転軸31は、延在方向が上下方向となる向きでバレル槽10の上側に配置されている。即ち、回転軸31は、軸心方向がバレル槽回転中心CBに対して略平行になる向きで配置されている。また、回転軸31は、バレル槽10の上側の位置で、バレル槽回転中心CBとは異なる位置に配置されている。
【0036】
なお、回転軸31は、バレル槽回転中心CBに対して僅かに傾いていてもよく、回転軸31は、例えば、軸心方向がバレル槽回転中心CBに対して5~10°程度傾いていてもよい。第1実施形態では、回転軸31は、バレル槽回転中心CBに対して実質的に平行な向きで配置されている。
【0037】
上下方向に延在する回転軸31は、上端が支持部材回転装置35に連結されている。支持部材回転装置35は、駆動モータと減速装置とを備えており、駆動モータで発生した駆動力によって回転軸31を回転させることができる。回転軸31は、支持部材回転装置35から伝達される駆動力により、回転軸31の軸心を中心として回転可能になっている。
【0038】
腕部32は、回転軸31の下端に接続され、回転軸31に対して直交する方向に延びている。つまり、回転軸31が上下方向に延びる向きで配置される場合において、腕部32は、水平方向に延びる向きで形成されている。
【0039】
支持軸33は、腕部32における回転軸31に接続される側の端部の反対側の端部に接続され、回転軸31が延びる方向に対して平行な方向に延びている。また、支持軸33は、回転軸31が腕部32から延びる方向と反対方向に、腕部32から延びている。つまり、回転軸31は、腕部32から上側に延びているのに対し、支持軸33は、腕部32から下側に延びて形成されている。換言すると、支持軸33は、回転軸31に対して偏心して腕部32から延びている。
【0040】
支持軸33における腕部32に接続される側の端部の反対側の端部、つまり、支持軸33の下端には、加工物70を支持する支持部34が配置されている。第1実施形態で研磨加工を行う加工物70は、軸状の加工物70になっており、支持部34は、軸状の加工物70の端部を支持する。その際に、支持部34は、軸状の加工物70の軸心方向が、支持軸33の軸心方向に沿った向きで加工物70を支持する。つまり、支持部34は、支持軸33の延長線上に加工物70を位置させて、加工物70の上端を支持する。これにより、支持部34は、支持軸33の下端に位置する支持部34から加工物70が下側に向かって延びる向きで、軸状の加工物70を支持する。
【0041】
このように、加工物70を支持する支持部材30は、支持部材回転装置35によって回転軸31の軸心を中心として回転可能に構成されている。回転軸31は、軸心方向がバレル槽回転中心CBに対して略平行な向きで配置されるため、支持部材回転装置35によって回転軸31が回転をした場合は、支持部材30は、バレル槽回転中心CBと略平行な回転軸31を中心として回転をする。つまり、回転軸31が支持部材回転装置35によって回転をする支持部材30は、回転軸31の軸心を、支持部材30の回転中心である支持部材回転中心CSとして回転可能になっており、バレル槽回転中心CBと略平行な支持部材回転中心CSを中心として回転することができる。
【0042】
なお、この場合における、バレル槽回転中心CBに対する支持部材回転中心CSの略平行は、バレル槽回転中心CBに対する支持部材回転中心CSが傾斜角が0°の状態のみでなく、バレル槽回転中心CBに対する傾斜角が10°となる範囲まで含まれる。即ち、支持部材30は、バレル槽回転中心CBに対する傾斜角が0°以上10°以下の範囲内となる支持部材回転中心CSを中心として回転可能になっている。第1実施形態では、バレル槽回転中心CBに対する支持部材回転中心CSの傾斜角は、実質的に0°になっている。
【0043】
このように、支持部材回転中心CSを中心として回転可能な支持部材30は、回転軸31に対して偏心する支持軸33を有し、支持軸33の延長線上の位置で軸状の加工物70を、加工物70の軸心方向が支持部材回転中心CSに平行になる向きで支持する。このため、支持部材30は、軸状の加工物70を支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持し、支持部材回転中心CSに対して加工物70を偏心させて支持する状態で、支持部材回転中心CSを中心として回転可能になっている。
【0044】
バレル研磨装置1には、個別に加工物70を支持する支持部材30が複数配置されている。複数の支持部材30は、それぞれ加工物70を支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持し、支持部材回転装置35で発生する駆動力によって、それぞれの支持部材回転中心CSを中心として回転可能になっている。
【0045】
図2は、図1のA-A矢視図である。複数の支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において、等間隔に配置されている。第1実施形態では、4つの支持部材30が、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において等間隔に配置されている。これにより、第1実施形態に係るバレル研磨装置1は、4つの加工物70の研磨を同時に行うことが可能になっている。なお、バレル研磨装置1が有する支持部材30は、4つ以外であってもよく、即ち、バレル研磨装置1によって研磨加工を同時に行うことのできる加工物70の数は、4つ以外であってもよい。
【0046】
複数の支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の径方向における位置が、全て同じ位置になっている。これらのバレル槽回転中心CBを中心とする周方向及び径方向における支持部材30の位置は、それぞれの支持部材30が有する回転軸31の位置になっている。つまり、複数の支持部材30は、それぞれの支持部材回転中心CSの位置が、バレル槽回転中心CBを中心とする周方向において等間隔となり、バレル槽回転中心CBからの支持部材回転中心CSの距離が、支持部材30同士で等しくなる位置関係で配置されている。
【0047】
さらに、支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転方向における位相が異なっている。
【0048】
この場合における支持部材30の回転方向における位相は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向における支持部材回転中心CSの位置を、同じ位置にした場合における、支持部材回転中心CSとする支持部材30の回転方向における向きになっている。例えば、任意の2つの支持部材30のそれぞれで支持する加工物70が、支持部材回転中心CSに対して、いずれもバレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の径方向において最も外側に位置する場合は、これらの2つの支持部材30は、回転方向における位相が同じ位相になっている。
【0049】
これらのように定義付けされる支持部材30の回転方向における位相が、第1実施形態では、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で異なっている。換言すると、支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、バレル槽回転中心CBからの加工物70の距離が異なる距離となるように、支持部材回転中心CSを中心として加工物70を回転させる。
【0050】
第1実施形態では、支持部材30は、複数配置される全ての支持部材30で、バレル槽回転中心CBからの加工物70の距離が異なる距離となるように、支持部材回転中心CSを中心として加工物70を回転させる。つまり、支持部材30は、支持部材30の回転方向における位相が、複数の支持部材30の全ての支持部材30で異なっている。
【0051】
次に、バレル研磨装置1を用いた加工物70のバレル研磨方法について説明する。バレル研磨装置1を用いて加工物70の研磨を行う際には、バレル研磨装置1が有するバレル槽10の開口部13から、バレル槽10の内側に砥粒60を少量の水と共に投入する。砥粒60は、例えば砥粒60の表面61からの深さが、研磨加工を行う加工物70の長さ以上の深さになる量の砥粒60を投入する。
【0052】
この場合における砥粒60の表面61は、バレル槽10に収容される多量の砥粒60における、上側に位置する面をいう。即ち、この場合における砥粒60の表面61は、1つ1つの砥粒60の表面ではなく、バレル槽10に収容される多量の砥粒60全体の表面を示している。
【0053】
バレル研磨装置1を用いて研磨を行う加工物70は、支持部材30が有する支持部34で支持する。支持部材30は、複数の支持部材30によって複数の加工物70をそれぞれ個別に支持する。複数の支持部材30で複数の加工物70を支持したら、支持部材30で支持する加工物70をバレル槽10に収容される砥粒60に挿入する。バレル槽10に収容される砥粒60に加工物70を挿入する際には、少なくとも、加工物70における研磨を行う部位が砥粒60内に入り込むまで、加工物70を挿入する。
【0054】
バレル槽10に収容される砥粒60への加工物70の挿入は、加工物70を支持する支持部材30は砥粒60に挿入されない程度の深さまで行う。即ち、加工物70を支持する支持部材30は、砥粒60に加工物70を挿入した状態においても、砥粒60から露出させる。
【0055】
これらの動作は、例えば、支持部材30での加工物70の支持はバレル槽10の上側で行い、支持部材30で加工物70を支持したら、砥粒60を収容するバレル槽10に向けて支持部材30を下降させることにより、支持部材30で支持する加工物70を、バレル槽10に収容される砥粒60に挿入する。
【0056】
砥粒60に加工物70を挿入したら、支持部材30で支持をする加工物70に対してバレル槽10を相対回転させる。加工物70に対してバレル槽10を相対回転させた場合、バレル槽10に収容される砥粒60もバレル槽10の回転に伴って回転をするため、砥粒60も加工物70に対して相対回転をする。加工物70は、砥粒60に挿入されているため、砥粒60が加工物70に対して相対回転をした場合、砥粒60は、加工物70に衝突をしながら相対回転をする。加工物70の表面は、加工物70に対して相対回転する砥粒60が繰り返し衝突することにより、徐々に加工されて研磨が行われる。
【0057】
詳しくは、バレル槽10は、バレル槽回転装置20から伝達される駆動力により、バレル槽回転中心CBを中心として回転をする。これにより、バレル槽10は、支持部材30で支持をする加工物70に対して相対回転をする。また、第1実施形態では、バレル槽10を回転させながら加工物70の研磨を行う際には、支持部材回転装置35で発生する駆動力により、加工物70を支持する支持部材30を回転させる。これにより、支持部材30は、支持部材回転中心CSを中心として回転する。
【0058】
バレル槽10を回転させた場合、バレル槽10に収容される砥粒60は、バレル槽10の回転に伴って、バレル槽10と共に回転をする。このため、バレル槽10に収容される砥粒60は、バレル槽10と共にバレル槽回転中心CBを中心として回転をし、支持部材30で支持をする加工物70に対して相対回転をする。これにより、砥粒60は、加工物70に対して繰り返し衝突し、加工物70は、繰り返し衝突をする砥粒60により、表面が研磨される。
【0059】
ここで、第1実施形態に係るバレル研磨方法では、砥粒60の密度を確保して加工物70の研磨の効率を上げるために、砥粒60と共にバレル槽10に投入する水の量を少なくしている。これにより、バレル槽10内における砥粒60の密度が高まるため、加工物70に対してバレル槽10を相対回転させた際に、加工物70に衝突する砥粒60の時間当たりにおける量を増加させることができる。従って、加工物70に砥粒60を衝突させることによる、加工物70の研磨の効率を高めることができる。
【0060】
しかし、砥粒60と共にバレル槽10に投入する水の量が少ない場合、砥粒60の流動性は低下する。このため、加工物70に対してバレル槽10を相対回転させることにより、砥粒60によって加工物70の研磨加工を行う際に、バレル槽10の回転方向における加工物70の下流側に、砥粒60が加工物70によって押し退けられることにより発生する窪みが発生し易くなる。
【0061】
ここで、加工物70に対してバレル槽10を相対回転させた際における砥粒60の動きについて説明する。砥粒60の動きの説明は、第1実施形態と対比させるために、支持部材30において加工物70を支持する支持部34が回転軸31に対して偏心しておらず、加工物70が支持部材回転中心CSに対して偏心せずに支持される形態での砥粒60の動きについて説明する。
【0062】
図3は、加工物70が支持部材回転中心CSに対して偏心せずに支持される形態のバレル研磨装置100の断面図である。図4は、図3のB-B矢視図である。図5は、図4のC-C断面図である。図3に示すバレル研磨装置100は、支持部材130が有する回転軸131の下端に、加工物70を支持する支持部134が連結されている。これにより、加工物70は、図4に示すように、支持部材回転中心CSに対して偏心せずに支持部材130に支持されている。加工物70が、このように支持部材回転中心CSに対して偏心せずに支持される場合において、バレル研磨装置100による研磨を行う前、即ち、バレル槽110を回転させる前の状態では、バレル槽110に収容される砥粒60は、図5に示すように、表面61が平坦な形態になっている。支持部材130によって支持される加工物70は、バレル槽110に収容される砥粒60に挿入される。
【0063】
図6は、図4に示すバレル槽110を回転させた状態を示す説明図である。図7は、図6のD-D断面図である。バレル槽110内の砥粒60に加工物70を挿入して加工物70の研磨を行う場合は、バレル槽110を回転させながら、加工物70を回転させる。加工物70の回転は、支持部材回転装置135によって支持部材130を回転させることにより行う。これにより、加工物70は、支持部材130と共に支持部材回転中心CSを中心として回転をする。加工物70は、支持部材回転中心CSに対して偏心せずに支持されているため、支持部材130を回転させた場合、加工物70は、実質的に加工物70の軸心を中心として回転をする。
【0064】
バレル槽110の回転は、バレル槽回転装置(図1参照)により行う。これにより、バレル槽110は、バレル槽回転中心CBを中心として回転する。バレル槽110を回転させた場合、バレル槽110に収容される砥粒60は、バレル槽110と共に回転をするため、遠心力によってバレル槽110の径方向における外側に移動し易くなる。このため、バレル槽110内の砥粒60は、図7に示すように、バレル槽110の径方向における外側に偏る状態になる。
【0065】
また、バレル槽110を回転させた場合、バレル槽110は、加工物70に対して相対回転をする。つまり、加工物70を支持する支持部材130は、支持部材回転中心CSを中心として回転するものの、バレル槽110と一体には回転をしないため、バレル槽110を回転させた場合、バレル槽110は、支持部材130で支持する加工物70に対して相対回転をする。このため、バレル槽110を回転させた場合は、バレル槽110に収容される砥粒60も、支持部材130で支持する加工物70に対して相対回転をする。
【0066】
バレル槽110に収容される砥粒60が加工物70に対して相対回転をした場合、砥粒60は加工物70に対して繰り返し衝突する。これにより、加工物70は、砥粒60によって表面が研磨される。このように、加工物70に対して砥粒60を相対回転させながら加工物70の研磨を行う場合、バレル槽110の回転方向における下流側には、砥粒60が加工物70によって押し退けられることにより窪み62が発生する。窪み62は、バレル槽110に収容される砥粒60が加工物70に押し退けられることにより砥粒60の表面61が凹んだ形態で発生する。
【0067】
砥粒60に発生した窪み62は、砥粒60と共にバレル槽10に投入する水の量が少ないことにより砥粒60の流動性が低い場合、砥粒60の流動によって均されることなく、比較的長い時間残り続ける。このため、加工物70に対して砥粒60が相対回転をし、砥粒60が加工物70に押し退けられることにより発生した窪み62は、窪み62を発生させた加工物70に対して、バレル槽110の回転方向における下流側に位置する加工物70の位置まで到達する。
【0068】
窪み62は、砥粒60が存在しない部分になっているため、砥粒60の窪み62が加工物70の位置に到達した場合、加工物70に砥粒60が衝突しなくなったり、加工物70に衝突する砥粒60の量が少なくなったりする。このため、砥粒60の窪み62が到達した加工物70は、砥粒60によって研磨され難くなる。
【0069】
砥粒60の窪み62は、砥粒60に対して複数挿入される加工物70のそれぞれによって発生し、加工物70で発生した窪み62は、バレル槽110の回転方向における下流側の加工物70の位置まで到達するため、加工物70には、砥粒60の窪み62が継続的に到達することになる。このため、加工物70は、砥粒60による研磨が継続的に行われ難くなる。
【0070】
第1実施形態に係るバレル研磨装置1は、バレル槽10を回転させて砥粒60によって加工物70の研磨を行う際に、加工物70によって砥粒60の表面61に発生した窪み62が、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70の位置まで継続する位置関係で、複数の支持部材30は配置されている。つまり、複数の支持部材30は、加工物70によって砥粒60の表面61に形成される窪み62が、窪み62を形成した加工物70を支持する支持部材30に対して、バレル槽10の回転方向における下流側で隣り合う支持部材30で支持する加工物70の位置まで継続する位置関係で配置されている。
【0071】
複数の支持部材30が、このような位置関係で配置される第1実施形態では、支持部材30は、回転軸31と腕部32と支持軸33とを有し、加工物70を、支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持している。このため、支持部材30が支持部材回転装置35によって支持部材回転中心CSを中心として回転した場合、支持部材30により支持される加工物70は、支持部材回転中心CSから離れた位置で支持部材回転中心CS周りを回転する。
【0072】
支持部材回転中心CSに対して偏心して加工物70を支持し、支持部材回転中心CS周りに加工物70を回転させた場合、加工物70は、バレル槽10の径方向に往復移動することになる。つまり、支持部材回転中心CS周りに加工物70を回転させた場合における加工物70の移動方向の成分には、バレル槽10の径方向への移動と、バレル槽10の周方向への移動との双方の方向への成分が含まれている。このため、支持部材回転中心CS周りに加工物70を回転させた場合には、加工物70は、支持部材回転中心CSを中心としてバレル槽10の径方向にも往復移動をする。
【0073】
第1実施形態に係るバレル研磨装置1で加工物70の研磨を行う場合は、このように加工物70を支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持する支持部材30を回転させながら研磨を行うため、加工物70は、バレル槽10に収容される砥粒60内でバレル槽10の径方向に往復移動する。これにより、加工物70に対してバレル槽10を相対回転させることによりバレル槽10に収容される砥粒60が加工物70に対して相対回転し、砥粒60の表面61に窪み62が発生した場合でも、加工物70は砥粒60の窪み62を避けることができる。
【0074】
つまり、砥粒60が加工物70に押し退けられることによって発生した窪み62が、窪み62を発生させた加工物70に対して、バレル槽10の回転方向における下流方向における下流側に位置する加工物70の位置まで到達した場合でも、当該下流側の加工物70は、支持部材30の回転に伴ってバレル槽10の径方向に移動する。このため、バレル槽10の回転方向における上流側に位置する加工物70で砥粒60が押し退けられることにより発生した窪み62が、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70の位置に到達した場合でも、下流側の加工物70は、窪み62をバレル槽10の径方向に避けることができる。
【0075】
これにより、下流側の加工物70には、窪み62以外の位置に存在する砥粒60が衝突するため、加工物70は、衝突する砥粒60によって表面が加工され、砥粒60により表面が研磨される。従って、第1実施形態に係るバレル研磨装置1は、砥粒60の流動性が低いことにより加工物70の研磨時に砥粒60の表面61に窪み62が発生し易い状態においても、砥粒60の窪み62を避けながら加工物70の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0076】
また、支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、バレル槽回転中心CBからの加工物70の距離が異なる距離となるように、支持部材回転中心CSを中心として加工物70を回転させることができる。このため、バレル槽10の回転方向における上流側の加工物70により発生した砥粒60の窪み62を、バレル槽10の回転方向における下流側で隣り合う加工物70は、バレル槽10の径方向に避けることができる。従って、窪み62を発生させた加工物70に対して、バレル槽10の回転方向における下流側で隣り合う加工物70は、窪み62に対してバレル槽10の径方向における外側または内側に位置する砥粒60によって、表面を研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0077】
また、支持部材30は、軸状の加工物70を、加工物70の軸心方向が支持部材回転中心CSに平行になる向きで支持するため、加工物70に対して相対回転をする砥粒60を、加工物70の軸心方向に対して直交する方向から衝突させることができる。これにより、加工物70の表面を、砥粒60によって効果的に研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0078】
また、複数の支持部材30は、加工物70の研磨時に加工物70によって砥粒60の表面61に発生した窪み62が、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70の位置まで継続する位置関係で配置されている。即ち、複数の支持部材30は、バレル槽10の周方向における支持部材30同士の距離が、比較的近い距離となる位置関係で配置されている。このため、加工物70の研磨時に加工物70によって砥粒60に発生した窪み62をバレル槽10の回転方向における下流側の加工物70で避けながら、1度の研磨の作業で多くの加工物70を研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0079】
また、バレル槽10に収容される砥粒60に加工物70を挿入する際には、加工物70を支持する支持部材30は砥粒60に挿入せず、支持部材30は砥粒60から露出させるため、バレル槽10や支持部材30を回転させる際における回転抵抗を抑えることができる。これにより、バレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20が有する駆動モータや、支持部材30を回転させる支持部材回転装置35が有する駆動モータの小型化を図ることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態に係るバレル研磨装置1について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0081】
図8は、第2実施形態に係るバレル研磨装置1の断面模式図である。なお、図8では、バレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20(図1参照)を省略して図示している。第2実施形態においても、バレル研磨装置1は、砥粒60を収容するバレル槽10と、加工物70を支持する支持部材30とを備えている。また、支持部材30は、加工物70を支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持すると共に、支持部材回転中心CSを中心として回転することが可能になっている。
【0082】
さらに、第2実施形態では、支持部材30は、支持部材回転中心CSに対して偏心する回転中心である加工物回転中心CWを中心として加工物70を回転させる加工物回転装置40を備えている。詳しくは、加工物回転装置40は、支持部材30が有する支持軸33の下端に連結されており、加工物70を支持する支持部34は、加工物回転装置40に取り付けられている。
【0083】
加工物回転装置40は、駆動モータと減速装置とを備えており、駆動モータで発生した駆動力によって支持部34を回転させることができる。支持部34は、加工物回転装置40から伝達される駆動力により回転可能になっている。即ち、加工物70を支持する支持部34は、加工物回転装置40から伝達される駆動力により、支持軸33に対して相対回転することが可能になっている。
【0084】
加工物回転装置40が支持部34を相対回転させる際における加工物回転中心CWは、支持部材回転中心CSに平行で支持部材回転中心CSに対して偏心する回転中心になっている。第2実施形態では、加工物回転装置40が支持部34を回転させる際における加工物回転中心CWは、加工物回転装置40が連結される支持軸33の軸心に対して実質的に一致している。
【0085】
第2実施形態では、支持部材30は、このように加工物回転装置40によって、支持軸33に対して支持部34を相対回転させることができるため、支持部34によって支持する加工物70を、支持軸33に対して相対回転させることができる。つまり、支持部材30は、支持部34で支持する加工物70を、支持部材回転中心CSに対して偏心する加工物回転中心CWを中心として、回転させることが可能になっている。
【0086】
これらのように構成される第2実施形態においても、加工物70の研磨を行う際には、砥粒60を収容するバレル槽10を、バレル槽回転中心CBを中心として回転させる。これにより、支持部材30で支持する加工物70に対して、バレル槽10に収容される砥粒60を相対回転させる。
【0087】
また、第2実施形態においても、支持部材回転装置35で発生する駆動力によって、支持部材30を、支持部材回転中心CSを中心として回転させる。これにより、支持部材回転中心CSに対して偏心する位置で支持する加工物70を、支持部材回転中心CS周りで回転させる。これにより、加工物70を、バレル槽10の径方向に往復移動させながら、バレル槽10に収容される砥粒60で研磨を行い、加工物70によって砥粒60の表面61に発生する窪み62を、バレル槽10の径方向に避けながら研磨を行う。
【0088】
さらに、第2実施形態では、加工物70の研磨を行う際には、支持部材30が有する加工物回転装置40によって加工物70を回転させる。加工物回転装置40は、加工物回転装置40で発生した駆動力により、支持軸33に対して支持部34を、加工物回転中心CWを中心として回転させる。これにより、加工物回転装置40は、支持部34により支持する加工物70を、支持部材回転中心CSに対して偏心する加工物回転中心CWを中心として、支持軸33に対して回転させる。
【0089】
第2実施形態では、このように加工物70の研磨時には、加工物70を支持する支持部材30は、加工物70を支持部材回転中心CSの周囲を回転させながら、支持部材回転中心CSに対して偏心する加工物回転中心CWを中心として加工物70を回転させる。これにより加工物70は、バレル槽10の回転方向における上流側で隣り合う加工物70によって砥粒60に発生した窪み62を避けることができると共に、砥粒60が衝突する加工物70における砥粒60が衝突する面を、順次変化させることができる。従って、加工物70の表面を、砥粒60によって満遍なく研磨することができ、加工物70を効果的に研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0090】
[第3実施形態]
次いで、第3実施形態に係るバレル研磨装置1について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0091】
図9は、第3実施形態に係るバレル研磨装置1の断面模式図である。なお、図9では、バレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20(図1参照)を省略して図示している。第3実施形態においても、バレル研磨装置1は、砥粒60を収容するバレル槽10と、加工物70を支持する支持部材30とを備えている。また、支持部材30は、加工物70を支持部材回転中心CSに対して偏心させて支持すると共に、支持部材回転中心CSを中心として回転することが可能になっている。
【0092】
さらに、第3実施形態では、支持部材30は、1つの支持部材30で複数の加工物70を、支持部材回転中心CSに対してそれぞれ偏心させて支持することが可能になっている。詳しくは、第1実施形態では、支持部材30の腕部32は、回転軸31に対して直交する方向に回転軸31から一方向に延びるのに対し、第3実施形態では、腕部32は回転軸31に対して直交する方向に、回転軸31から二方向に延びて形成される。換言すると、第3実施形態では、支持部材30は、回転軸31に対して直交する方向に延びる腕部32に対して、回転軸31が、腕部32の延在方向における中央付近で腕部32に接続されて形成されている。
【0093】
第3実施形態では、1つの支持部材30が2つの支持軸33を有しており、2つの支持軸33は、腕部32の延在方向における両端に、それぞれ接続されている。つまり、第3実施形態では、支持部材30は、腕部32の延在方向における中央付近から回転軸31が上側に延び、腕部32の延在方向における両端から2つの支持軸33が下側に延びて形成されている。
【0094】
腕部32から下側に延びる2つの支持軸33の下端には、加工物70を支持する支持部34がそれぞれ配置されている。即ち、第3実施形態では、1つの支持部材30が2つの支持部34を有しており、このため、支持部材30は、1つの支持部材30で2つの加工物70を支持することが可能になっている。
【0095】
その際に、支持部34がそれぞれ配置される2つの支持軸33は、腕部32の延在方向において回転軸31が腕部32に接続される位置とは異なる位置で腕部32に接続されている。このため、加工物70を支持する支持部34がそれぞれ配置される2つの支持軸33は、支持部材回転中心CSに対して偏心しており、2つの支持部34によって支持される2つの加工物70は、支持部材回転中心CSに対してそれぞれ偏心する位置で支持される。
【0096】
このように構成される第3実施形態においても、加工物70の研磨を行う際には、砥粒60を収容するバレル槽10を、バレル槽回転中心CBを中心として回転させる。これにより、支持部材30で支持する加工物70に対して、バレル槽10に収容される砥粒60を相対回転させる。
【0097】
また、第3実施形態では、支持部材30は、加工物70を支持する支持部34を2つ有しており、2つの加工物70を1つの支持部材30によって支持する。支持部材30は、支持する2つの加工物70を、バレル槽10に収容される砥粒60に挿入し、支持部材回転装置35で発生する駆動力により、1つの支持部材30で支持する2つの加工物70を、支持部材回転中心CS周りにそれぞれ回転させる。これにより、支持部材30によって支持する2つの加工物70を、それぞれバレル槽10の径方向に往復移動させながら、バレル槽10に収容される砥粒60によって研磨を行う。
【0098】
このため、加工物70の研磨時には、バレル槽10の回転方向における上流側の支持部材30で支持する2つの加工物70によって砥粒60に発生した窪み62を、バレル槽10の回転方向における下流側で隣り合う支持部材30によって支持する2つのそれぞれの加工物70で避けることができる。従って、1度の研磨の作業で多くの加工物70の研磨を行う際に、多くの加工物70の表面を砥粒60によって効果的に研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0099】
[変形例]
なお、上述した実施形態は、適宜組み合わせて構成してもよい。図10は、第3実施形態の変形例であり、2つの支持部34を有する支持部材30に加工物回転装置40を配置した形態を示す説明図である。第3実施形態のように、支持部材30が、加工物70を支持する支持部34を2つ有する形態では、第2実施形態のように、加工物回転中心CWを中心として支持部34を回転させる加工物回転装置40を、支持部34に合わせて2つ設けてもよい。即ち、2つの支持部34のそれぞれに対して加工物回転装置40を配置することにより、支持部材30が有する2つの支持部34によって支持する2つの加工物70をそれぞれ、加工物回転中心CWを中心として回転させることができるようにしてもよい。
【0100】
1つの支持部材30によって2つの加工物70を、支持部材回転中心CSに対してそれぞれ偏心させて支持することにより、1度の研磨の作業で多くの加工物70の研磨を行う際に、砥粒60に発生する窪み62を避けながら研磨できるため、多くの加工物70を効果的に研磨することができる。さらに、1つの支持部材30によって支持する2つの加工物70をそれぞれ回転させることにより、砥粒60が衝突する加工物70における砥粒60が衝突する面を順次変化させることができ、加工物70を砥粒60によって満遍なく研磨することができる。これらの結果、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0101】
また、上述した第1実施形態では、支持部材30は、複数の支持部材30同士で、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転方向における位相が異なっているが、支持部材30は、複数の支持部材30同士で、回転方向における位相が異なっていなくてもよい。
【0102】
図11は、第1実施形態の変形例であり、支持部材30同士で回転方向における位相が同じ位相になる場合の説明図である。支持部材30は、図11に示すように、支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転方向における位相が同じ位相であってもよい。つまり、支持部材30は、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、バレル槽回転中心CBからの加工物70の距離が同じ距離となるように、支持部材回転中心CSを中心として加工物70を回転させてもよい。
【0103】
詳しくは、流動性が低い砥粒60によって加工物70の研磨を行う場合、加工物70によって砥粒60に発生した窪み62は、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70の位置まで到達し易くなるが、支持部材30は、支持部材回転中心CSに対して加工物70を偏心させて支持し、支持部材回転中心CSを中心として加工物70を回転させる。
【0104】
このため、バレル槽10の回転方向における上流側の加工物70によって砥粒60に発生した窪み62が、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70の位置に到達した場合、当該下流側の加工物70は、バレル槽10の径方向における位置が、上流側の加工物70が窪み62を発生させた際におけるバレル槽10の径方向における位置から移動することになる。
【0105】
これにより、バレル槽10の回転方向における下流側の加工物70は、上流側の加工物70によって発生した窪み62をバレル槽10の径方向に避けることができ、砥粒60によって表面を研磨することができる。従って、バレル槽回転中心CBを中心とするバレル槽10の周方向において隣り合う支持部材30同士で、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転方向における位相を同じ位相にした場合でも、加工物70を効率良く研磨することができる。
【0106】
バレル槽10の回転方向において隣り合う支持部材30同士の、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転方向における位相は、支持部材30同士の距離と、支持部材回転中心CSを中心とする支持部材30の回転速度とに基づいて、上流側の加工物70で発生した砥粒60の窪み62を、下流側の加工物70が避けることができるように設定するのが好ましい。
【0107】
また、上述した各実施形態では、加工物70は、模式的に棒状の形状で図示をしているが、加工物70は凹凸がある形状で形成されていてもよい。図12は、バレル研磨装置1により研磨加工を行う加工物70の一例を示す説明図である。加工物70は、例えば、図12に示すように、棒状の軸部71にギア72が設けられたものであってもよい。加工物70は、ギア72のような凹凸を有する形状であっても、バレル研磨装置1を用いて研磨を行うことにより、ギア72における歯と歯の間の谷のように凹んでいる部分にも砥粒60が入り込み、砥粒60によって研磨を行うことができる。
【0108】
特に、第2実施形態のように、支持部材30に加工物回転装置40を設け、加工物回転中心CWを中心として加工物70を回転させながら研磨を行う場合、ギア72における谷のように凹んでいる部分に砥粒60が入った際に、加工物70が回転することによる遠心力によって、凹んでいる部分から砥粒60を出すことができる。これにより、加工物70が、ギア72における谷のように凹んでいる部分を有して形成される場合でも、凹んでいる部分に砥粒60が滞留することを抑制でき、加工物70における凹んでいる部分に対して、砥粒60を繰り返し衝突させることができる。従って、加工物70が、ギア72のような凹凸を有する形状であっても、凹んで形成される部分を含め加工物70の表面に砥粒60を満遍なく衝突させて砥粒60によって研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。
【0109】
また、上述した各実施形態では、バレル槽10を回転させるバレル槽回転装置20は、駆動装置21からの駆動力を駆動ベルト24によりバレル槽10に伝達し、バレル槽10を回転させているが、バレル槽回転装置20は、これ以外の構成であってもよい。また、上述した各実施形態では、支持部材30を回転させる支持部材回転装置35は、支持部材30ごとに設けられ、支持部材30ごとに支持部材回転装置35によって回転をさせているが、支持部材回転装置35は、これ以外の構成であってもよい。
【0110】
また、上述した各実施形態では、バレル槽10が回転をすることにより、バレル槽10に収容される砥粒60と、支持部材30に支持される加工物70とは相対回転をするが、バレル槽10に収容される砥粒60に対する加工物70の相対回転は、これ以外の態様により実現してもよい。例えば、加工物70を支持する複数の支持部材30が一体となって構成され、複数の支持部材30が一体で回転をすることにより、支持部材30によって支持する加工物70を、バレル槽10に収容される砥粒60に対して相対回転させてもよい。この場合、バレル槽10は、停止をしていてもよく、複数の支持部材30の回転方向の反対方向に回転していてもよく、複数の支持部材30の回転方向と同じ方向に、複数の支持部材30の回転速度よりも遅い速度で回転していてもよい。支持部材30とバレル槽10とは、支持部材30で支持する加工物70と、バレル槽10に収容される砥粒60とを相対回転させることにより、砥粒60によって加工物70を研磨加工することができるように構成されていれば、双方を相対回転させるための態様は問わない。
【0111】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 バレル研磨装置
10 バレル槽
11 底部
12 壁部
13 開口部
14 バレル軸
15 プーリ
20 バレル槽回転装置
21 駆動装置
22 出力軸
23 プーリ
24 駆動ベルト
30 支持部材
31 回転軸
32 腕部
33 支持軸
34 支持部
35 支持部材回転装置
40 加工物回転装置
60 砥粒
61 表面
62 窪み
70 加工物
71 軸部
72 ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12