(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142470
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】配線部材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230928BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049406
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬一
(57)【要約】
【課題】基板への実装を容易にすることが可能な配線部材を提供する。
【解決手段】基板3上に設けられた回路パターン5及び半導体素子7に対して積層され、回路パターン5及び半導体素子7間を接続する配線部材11であって、接続用の積層の方向の凸部19及びこの凸部19に対する凹部21を有する折返し形状の複数の板片からなる第1金属層13と、第1金属層13上に積層され前記第1金属層の複数の板片を一体化する樹脂層15と、樹脂層15上に積層された第2金属層17と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた回路パターン及び半導体素子に対して積層され前記回路パターン及び前記半導体素子間を接続する配線部材であって、
前記積層の方向の前記接続用の凸部及び該凸部に対する凹部を有する折返し形状の複数の板片からなる第1金属層と、
前記第1金属層上に積層され、前記第1金属層の前記複数の板片を一体化する樹脂層と、
前記樹脂層上に積層された第2金属層と、を備えた、
配線部材。
【請求項2】
請求項1の配線部材であって、
前記樹脂層を貫通し前記第1金属層及び前記第2金属層を接続する接続部を備える、
配線部材。
【請求項3】
請求項2の配線部材であって、
前記樹脂層又は前記第2基板上に配置され前記第2金属層に接続された電子部品を備える、
配線部材。
【請求項4】
請求項3の配線部材であって、
前記電子部品は、前記半導体素子に対する抵抗器又は制御用素子である、
配線部材。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項の配線部材であって、
前記樹脂層又は前記第2金属層上に配置されると共に前記第2金属層に接続され前記積層の方向の上方に突出する端子部を備えた、
配線部材。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項の配線部材であって、
前記樹脂層及び前記第2金属層は、前記第1金属層に沿った折返し形状を有する、
配線部材。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項の配線部材を用いた半導体装置であって、
回路パターンを有する基板と、
前記基板上に配置された半導体素子と、を備え、
前記配線部材が、前記回路パターン及び前記半導体素子に対して積層され、前記回路パターン及び前記半導体素子に前記第1金属層の前記板片の前記凸部が接続される、
半導体装置。
【請求項8】
請求項7の半導体装置であって、
前記半導体素子は、電力用半導体素子である、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール等の半導体装置に供される配線部材及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置としては、特許文献1の電力用半導体装置がある。この電力用半導体装置では、基板上に設けられた電力用半導体素子とこれに対向するように配設されたプリント基板とを、両者間に配置された波形の配線部材である主回路用ばねによって接続している。
【0003】
かかる技術では、主回路用ばねを用いることで、信頼性が高い電力用半導体装置を得ることができるとしているが、主回路用ばねの実装が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、配線部材の実装が困難であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板上に設けられた回路パターン及び半導体素子に対して積層され前記回路パターン及び前記半導体素子間を接続する配線部材であって、前記積層の方向の前記接続用の凸部及び該凸部に対する凹部を有する折返し形状の複数の板片からなる第1金属層と、前記第1金属層上に積層され、前記第1金属層の前記複数の板片を一体化する樹脂層と、前記樹脂層上に積層された第2金属層と、を備えた配線部材を提供する。
【0007】
また、本発明は、配線部材を用いた半導体装置であって、回路パターンを有する基板と、前記基板上に配置された半導体素子と、を備え、前記配線部材が、前記回路パターン及び前記半導体素子に対して積層され、前記回路パターン及び前記半導体素子に前記第1金属層の前記板片の凸部が接続される、半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基板上の回路パターン及び半導体素子に積層して配線部材を容易に実装することができながら、配線部材の第2金属層により放熱性を確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る配線部材を適用した半導体装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の半導体装置の配線部材の一部を省略した斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に係る半導体装置の断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5の配線部材の一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の変形例に係る配線部材の一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2に係る配線部材の一部を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施例2の変形例に係る配線部材の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、配線部材の実装を容易にするという目的を、基板上の回路パターン及び半導体素子に対して積層されて、これら回路パターン及び半導体素子間を接続する配線部材によって実現した。
【0011】
配線部材11は、第1金属層13と、樹脂層15と、第2金属層17とを備える。第1金属層13は、積層の方向の凸部19及びこの凸部19に対する凹部21を有する折返し形状に形成された複数の板片13aからなる。樹脂層15は、第1金属層13上に積層され、複数の板片13aを一体化する。第2金属層17は、樹脂層15上に積層されている。
【0012】
配線部材11は、樹脂層15を貫通し、第1金属層13及び第2金属層17を接続する接続部31を備えてもよい。
【0013】
この場合、配線部材11は、樹脂層15又は第2金属層17上に配置され、第2金属層17に接続された電子部品23を備えてもよい。電子部品23は、半導体素子7に対する抵抗器又は制御用素子としてもよい。
【0014】
また、配線部材11は、樹脂層15又は第2金属層17上に配置されると共に第2金属層17に接続され、積層の方向の上方に突出する端子部37を備えてもよい。
【0015】
樹脂層15及び第2金属層17は、第1金属層13に沿った折返し形状を有してもよい。
【0016】
かかる配線部材11を用いた半導体装置1は、回路パターン5を有する基板3と、基板3上に配置された半導体素子7とを備える。配線部材11は、回路パターン5及び半導体素子7に対して積層され、回路パターン5及び半導体素子7に第1金属層13の複数の板片13aの凸部19が接続される。
【0017】
半導体素子7は、電力用半導体素子であってもよい。
【実施例0018】
[半導体装置の構成]
図1は、本発明の実施例1に係る配線部材を適用した半導体装置の斜視図である。
図2は、
図1の半導体装置の配線部材の一部である樹脂層及び第2金属層を省略した斜視図である。
図3は、
図1の半導体装置の平面図である。
図4は、
図2の半導体装置の平面図である。
図5は、
図3のV-V線に係る断面図である。
【0019】
半導体装置1は、
図1~
図5のように、基板3と、回路パターン5と、半導体素子7と、外部端子9と、配線部材11とを備え、パワーモジュールを構成する。なお、パワーモジュールである半導体装置1は、樹脂モールド品として構成されるが、モールド樹脂の図示は省略している。半導体装置1は、樹脂ケース内にシリコーンゲル等のゲルを充填し封止するものであってもよい。また、半導体装置1は、パワーモジュールに限られず、各種の半導体デバイスとすることが可能である。
【0020】
基板3は、本実施例において、セラミック基板であり、矩形板状に形成されている。なお、基板3の材質や形状は、特に限定されるものではなく、半導体装置1の回路構成に応じたものとすればよい。
【0021】
この基板3上(上面)には、回路パターン5が形成されている。なお、基板3の下面には、金属層又は放熱板を接合してもよい。上下とは、半導体装置1の厚み方向での上下をいう。
【0022】
回路パターン5は、銅やアルミニウム等の金属材料からなる薄板である。回路パターン5は、半導体素子7の回路構成に応じた適宜の厚み、パターンで配策されている。
【0023】
本実施例の回路パターン5は、複数の分離部5a、5b、5c及び5dによって構成されている。分離部5a~5dは、相互間が隙間によって不連続なものとなっており、電気的に分離している。この回路パターン5上には、半導体素子7及び外部端子9が適宜取り付けられている。
【0024】
半導体素子7は、薄板状の電力用半導体素子であり、分離部5b及び5c上に配置されている。半導体素子7は、分離部5b及び5cに対してはんだ等の適宜の手段によって取り付けられている。これにより、半導体素子7は、基板3上に設けられる。
【0025】
外部端子9は、半導体装置1を外部装置に接続するための端子である。この外部端子9は、半導体装置1の回路構成に応じて適宜設けることが可能である。本実施例において、外部端子9は、クランク状に折り曲げられた金属板片であり、分離部5a、5c、及び5dにそれぞれ取り付けられている。外部端子9の取付けは、はんだ等によって行えばよい。
【0026】
図6は、
図5の半導体装置1の一部を拡大して示す断面図である。
図7は、
図5の配線部材11の一部を拡大して示す断面図である。
【0027】
配線部材11は、
図1~
図7のように、基板3上に設けられた回路パターン5及び半導体素子7に対して積層され、回路パターン5及び半導体素子7間を電気的及び物理的に接続する。なお、配線部材11の積層の方向(積層方向)は、本実施例において半導体装置1の厚み方向である。
【0028】
この配線部材11は、全ての半導体素子7及び回路パターン5に対して積層され、それら回路パターン5及び半導体素子7間を一括して接続する。ただし、配線部材11は、各半導体素子7及び回路パターン5間を個別に接続するものであってもよい。この場合、複数の配線部材が用いられる。
【0029】
配線部材11は、第1金属層13と、樹脂層15と、第2金属層17とを備えている。
【0030】
第1金属層13は、積層方向の接続用の凸部19及びこの凸部19に対する凹部21を有する折返し形状に形成されている。半導体装置1の使用時においては、熱による膨張収縮を第1金属層13の折返し形状によって吸収でき、耐久性を向上できる。
【0031】
折返し形状は、板材の湾曲又は折り曲げによって折り返された形状であればよく、少なくとも回路パターン5及び半導体素子7に接続可能な二つの凸部19及び凸部19間の凹部21を含むようにする。なお、凸部19及び凹部21は、回路パターン5及び半導体素子7に対する凸形状及び凹形状を有する。
【0032】
本実施例の折返し形状は、折り曲げによって折り返された角波形状である。折返し形状としては、各種の波形又は波形の一部とすることが可能である。波形の一部としては、少なくとも二つの凸部19及び凹部21を有する範囲において、波形の一波長に満たない形状とすることも可能である。つまり、折返し形状は、必ずしも波形である必要はない。
【0033】
本実施例の第1金属層13は、複数の板片13aからなる。複数の板片13aは、樹脂層15によって一体化され、半導体素子7に対応して配置される。これにより、第1金属層13は、各半導体素子7に対する回路を構成する。
【0034】
各板片13aは、厚みが0.1mm以上の矩形状の金属板を折返し形状にしたものであり、凸部19及び凹部21を有する。ここでの板片13aの厚みは、半導体素子7が電力用半導体素子である場合のものである。なお、複数の板片13aは、一部又は全部が異なる厚みを有してもよい。また、第1金属層13の板片13aには、一般的な板状の板片だけでなく、箔状の極薄い板片も含まれる。第2金属層17も同様である。
【0035】
本実施例において、板片13aは、回路パターン5及び複数の半導体素子7に当接する複数の凸部19を有している。なお、板片13aの大きさ、折返し形状、板厚、凸部19の数等は、半導体装置1の回路構成に応じて適宜設定可能である。
【0036】
各板片13aの凸部19は、回路パターン5及び半導体素子7に当接してはんだ等によって電気的及び物理的に接続される。本実施例の凸部19は、板片13aの折返し形状に応じて平坦に形成され、回路パターン5及び半導体素子7に対して面で結合される。
【0037】
なお、凸部19は、回路パターン5及び半導体素子7に当接可能であればよいので、回路パターン5及び半導体素子7に向けて突出する形状であればよい。このため、凸部19は、鋭角状又は円弧状の頂部であってもよく、平坦である必要はない。
【0038】
各板片13aは、折返し形状によって柔軟性を有する。この柔軟性は、回路パターン5及び半導体素子7に対して凸部19を当接させることができるように、誤差等を吸収できる範囲のものであればよい。
【0039】
複数の板片13aの半導体素子7に対応した配置は、各板片13aがその凸部19を半導体素子7及び回路パターン5に当接させるように配置されることをいう。このため、第1金属層13の複数の板片13aの凸部19を、一括して回路パターン5及び半導体素子7に対して当接させることができる。
【0040】
本実施例の板片13aの配置は、各板片13aの長手方向が基板3の長手方向に沿っており、2つの板片13aが長手方向に隣接すると共に3つ板片13aが幅方向に並列になっている。各板片13aは、他の板片13aに対して接触しないように分離されている。
【0041】
樹脂層15は、第1金属層13上に積層された樹脂からなる板状の層である。この樹脂層15は、第1金属層13全体を覆う形状となっており、第1金属層13の複数の板片13aを一体化している。
【0042】
本実施例の樹脂層15は、第1金属層13に沿った折返し形状を有する。具体的には、樹脂層15は、平面視において第1金属層13と同一かやや大きく形成された矩形板状であり、全体として第1金属層13に沿った折返し形状を有する。樹脂層15の板厚は、本実施例において、第1金属層13の板厚よりも薄く、第2金属層17の板厚よりも厚い。
【0043】
なお、樹脂層15の板厚や平面形状等は、半導体装置1の回路構成に応じて適宜設定可能である。例えば、樹脂層15は、第1金属層13を部分的に覆う形状であってもよい。この場合、樹脂層15は、複数の板片13aの相互間に設けられた複数の樹脂片を有する構成としてもよい。
【0044】
樹脂層15上には、第2金属層17が積層されている。これにより、第2金属層17は、第1金属層13上に樹脂層15を介して配置され、樹脂層15及びその下の第1金属層13に沿った折返し形状を有する。
【0045】
本実施例の第2金属層17は、複数セットの板片17a及び17bによって構成されている。板片17a及び17bのセットは、それぞれ第1金属層13の板片13a上に樹脂層15を介して積層方向で重なるように配置されている。
【0046】
ただし、板片17a及び17bは、積層方向で第1金属層13の板片13aに重ならないように配置されてもよい。また、板片17a及び17bの一方のみが第1金属層13の板片13aに重なってもよい。また、一部セットの板片17a及び17bの一方又は双方が第1金属層13の板片13aに重なってもよい。
【0047】
板片17a及び17bは、第1金属層13の板片13aよりも板厚が0.1mm程度の金属板からなり、幅方向においても板片13aよりも細く形成されている。なお、第2金属層17は、第1金属層13と同一か、第1金属層13よりも薄く形成されるのが好ましい。これら板片17a及び17bは、板片13aに沿って長手方向に延びると共に幅方向に間隔をあけて配置されている。
【0048】
一方の板片17a上には、電子部品23が配置されている。本実施例において、電子部品23の位置は、第1金属層13の板片13aの凹部21上となっている。電子部品23は、半導体素子7に対するチップ抵抗器や制御系素子等とすることが可能である。なお、電子部品23は、複数設け、それぞれチップ抵抗器や半導体素子等としてもよい。
【0049】
本実施例の電子部品23は、板片17aに電気的及び物理的に接続されている。従って、抵抗器や制御系素子である電子部品23は、第2金属層17上に配置されると共に第2金属層17に接続された構成となっている。これにより、基板3に直に実装されるべき電子部品23を配線部材11上に実装し、基板3の平面視における小型化を図ることができる。
【0050】
なお、電子部品23は、樹脂層15上に配置し、板片17aに接続することも可能である。また、電子部品23は、配線部材11上ではなく、基板3上に配置してもよい。電子部品23は、省略することも可能である。
【0051】
板片17a及び17bの一端部は、平面視で円形に膨出している。これら一端部には、他の電子部品、配線部材、半導体装置等を接続することが可能である。なお、板片17a及び17bの一端部の平面形状は任意であり、相互に同一又は異なる平面形状としてもよい。
【0052】
板片17a及び17bの他端部は、板片17a及び17b間の間隔を狭くする方向に屈曲している。これら他端部には、下方に位置する第1金属層13の板片13aが接続部31により電気的及び物理的に接続されている。
【0053】
従って、第2金属層17は、第1金属層13と共に回路を構成する。また、第2金属層17は、放熱板としても機能し、第1金属層15と接続されることによって放熱性が向上している。
【0054】
なお、第2金属層17の構成は、半導体装置1の回路構成に応じて適宜変更することが可能である。例えば、第2金属層17は、板片17a及び17bの一方のみ備えてもよい。また、各セットの帯片の数は増加させてもよい。また、第2金属層17は、板片17a及び17bに代えて、第1金属層13の板片13aと同様の板片を備えてもよい。第2金属層17は、単一の板材又は板片によって構成してもよい。また、第2金属層17は、第1金属層13に接続しなくてもよい。
【0055】
接続部31は、樹脂層15を貫通し、第1金属層13及び第2金属層17を接続する。本実施例の接続部31は、スルーホールであり、樹脂層15に設けられた貫通孔33内に銅めっき等によって形成された筒状体として設けられる。ただし、接続部31は、スルーホールに限らず、貫通孔33内に導体を配置したものであればよい。
【0056】
かかる接続部31は、第1金属層13から第2金属層17へ熱を伝達可能とすると共に第1金属層13及び第2金属層17を接続した回路を形成する。この回路形成により、第1金属層13及び第2金属層17間でインターリーブ回路を構成すれば、インダクタンスの低減も可能である。この場合、樹脂層15は、できるだけ薄い方がよい。
【0057】
なお、接続部31は、熱の伝達のみを考慮した場合、熱伝導率が樹脂層よりも高い材質であればよく、導体である必要はない。接続部31は、回路構成等に応じて省略することも可能である。
【0058】
かかる配線部材11は、第3金属板や第4金属板を備え、金属板が3層以上積層された構成としてもよい。この場合、各金属板間には、絶縁層を介在させ、適宜接続部を設ける。また、配線部材11は、複数積層して用いてもよい。
【0059】
[配線部材の実装]
本実施例の半導体装置1は、回路パターン5を有する基板3上に複数の半導体素子7を取り付けた状態で配線部材11を実装する。
【0060】
実装される配線部材11は、第1金属層13及び第2金属層17をそれぞれプレスやエッチングにより配線形状に形成した後、樹脂層15によって接合して形成すればよい。これに代えて、第1金属層、樹脂層、及び第2金属層を積層したフラットな半製品に対して、プレスやエッチングを行うことで配線部材11を形成してもよい。接続部31は、事前に樹脂層15に形成しておけばよい。本実施例の配線部材11には、電子部品23も適宜取り付けられる。
【0061】
配線部材11の実装は、配線部材11を複数の半導体素子7及び回路パターン5に被せるようにして基板3上に積層し、複数の半導体素子7に対して配線部材11の第1金属層13の凸部19を一括して接合する。
【0062】
これにより、配線部材11の実装を容易に行うことができると共に高い実装精度が実現できる。
【0063】
すなわち、配線部材11を基板3上に被せ、基板3や外枠に対してねじ等で取り付ける。このとき、配線部材11は、第1金属層13の板片13aの凸部19が半導体素子7及び回路パターン5に位置決められつつ弾接する。これにより、第1金属層13の板片13aの凸部19を半導体素子7及び回路パターン5に対して誤差等を吸収しつつ確実に接合できる。
【0064】
また、第1金属層13及び第2金属層17が配線部材11の骨格としても機能する。第1金属層13が0.5mm以上とする場合は、大電流に対応できながら骨格として確実に機能する。このため、配線部材11の不用意な撓みを抑制し、作業性を向上できる。
【0065】
なお、第1金属層15と第2金属層17は、板厚を調整し、配線部材11の骨格としての機能を調整することも可能である。
【0066】
こうして、半導体素子7及び回路パターン5に配線部材11の凸部19を当接により接合させた後は、凸部19と半導体素子7に固定する。この固定は、例えば、はんだペーストによって行えばよい。
【0067】
この場合、はんだペーストを事前に半導体素子7及び回路パターン5又は凸部19に塗布して半導体素子7及び回路パターン5と凸部19との接合が行われる。この状態で、配線部材11を積層した基板3をリフロー炉により加熱し、半導体素子7と凸部19との間を固定できる。なお、リフローはんだや導電性接着剤等によっても半導体素子7と凸部19との間を固定可能である。
【0068】
こうして固定された後は、樹脂モールディングによって封止して半導体装置1が完成する。これに代えて、樹脂ケース内にシリコーンゲル等のゲルを充填して封止することで半導体装置1を完成させてもよい。
【0069】
このように、本実施例では、事前に回路構成した配線部材11を基板3上に被せ、配線部材11の第1金属層13の凸部19を複数の半導体素子7及び回路パターン5に対して接合することで、高い精度で容易且つ確実に配線部材11を基板3に実装することができる。
【0070】
[変形例]
図8は、実施例1の変形例に係る配線部材11の一部を拡大して示す断面図である。
【0071】
図8の変形例は、樹脂層15及び第2金属層17を折返し形状ではない構成としたものである。すなわち、樹脂層15は、第1金属層13に面した一側面15が第1金属層13に沿った形状の面からなり、第1金属層13に対する反対側の他側面がフラットな面からなる。第2金属層17は、樹脂層15の他側面上に配置され、他側面に沿ってフラットに形成されている。
端子部37は、第2金属層17に一体に設けられ、第2金属層17から上方に突出している。従って、端子部37は、第2金属層17上に配置されると共に第2金属層17に接続された構成となっている。
なお、端子部37は、第2金属層17とは別体で形成し、溶接やはんだ等によって第2金属層17に取り付けてもよい。また、端子部37は、樹脂層15から立設した状態で、第2金属層17に溶接やはんだ等によって接続してもよい。
かかる実施例2及び変形例では、端子部37を放熱用のフィンとして用い、又は放熱機構に接続することができ、放熱性を向上することができる。また、端子部37は、他の回路との接続用としても用いることができる。