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特開2023-142475運行支援方法、運行支援システム及びサーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142475
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】運行支援方法、運行支援システム及びサーバ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/30 20120101AFI20230928BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230928BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230928BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20230928BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20230928BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20230928BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/30
G06Q50/10
G16Y10/40
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049414
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 奈桜
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】三幣 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】栗山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公則
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】事故リスクの予測を高精度で行って、運転者に理解が得られるような情報を提示する。
【解決手段】車両の運行を支援する運行支援方法は、前記計算機が、前記車両を運転中の運転者の生体情報を取得する第1のステップと、前記運転者の環境情報を取得する第2のステップと、前記運転者の業務情報を取得する第3のステップと、前記生体情報から生体指標データを生成する第4のステップと、前記生体指標データと環境情報と業務情報の時系列を揃えて結合して統合情報を生成する第5のステップと、予め設定された事故リスク予測モデルに前記統合情報を入力して、所定時間後の事故リスク情報を算出する第6のステップと、前記事故リスクと前記統合情報と予め設定された事故判定情報を、予め設定された要因算出モデルに入力して、前記事故リスクの要因情報を算出する第7のステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリを有する計算機が、車両の運行を支援する運行支援方法であって、
前記計算機が、前記車両を運転中の運転者の生体情報を取得する第1のステップと、
前記計算機が、前記運転者の環境情報を取得する第2のステップと、
前記計算機が、前記運転者の業務情報を取得する第3のステップと、
前記計算機が、前記生体情報から生体指標データを生成する第4のステップと、
前記計算機が、前記生体指標データと環境情報と業務情報の時系列を揃えて結合して統合情報を生成する第5のステップと、
前記計算機が、予め設定された事故リスク予測モデルに前記統合情報を入力して、所定時間後の事故リスク情報を算出する第6のステップと、
前記計算機が、前記事故リスク情報と前記統合情報と予め設定された事故判定情報を、予め設定された要因算出モデルに入力して、前記事故リスク情報の要因情報を算出する第7のステップと、
を含むことを特徴とする運行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の運行支援方法であって、
前記計算機が、前記事故リスク情報が所定の条件を満たしている場合には、前記事故リスク情報と前記要因情報を出力する第8のステップをさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【請求項3】
請求項2記載の運行支援方法であって、
前記計算機が、前記出力した要因情報に対する要因ラベルを受信した場合には、前記要因ラベルで前記要因情報を更新する第9のステップをさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【請求項4】
請求項3記載の運行支援方法であって、
前記計算機が、前記要因情報を更新した要因ラベルを前記事故判定情報に反映させて、前記要因ラベルを反映した前記事故判定情報で前記事故リスク予測モデルの学習を行う第10のステップをさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【請求項5】
請求項1記載の運行支援方法であって、
前記第5のステップは、
前記生体情報と前記環境情報と前記業務情報を統合する際には、前記生体情報の算出間隔を基準にして前記環境情報と前記業務情報の値を取得することを特徴とする運行支援方法。
【請求項6】
プロセッサとメモリを有するサーバと、
前記サーバに接続されて運転者の生体情報を取得する生体情報収集装置と、
前記サーバに接続されて前記運転者の環境情報を取得する環境情報収集装置と、
前記サーバに接続されて前記運転者の業務情報を取得する業務情報収集装置と、
前記サーバに接続されてメッセージを出力する端末と、を含んで車両の運行を支援する運行支援システムであって、
前記サーバは、
前記生体情報収集装置から前記車両を運転中の運転者の生体情報を取得し、前記環境情報収集装置から前記運転者の環境情報を取得し、前記業務情報収集装置から前記運転者の業務情報を取得し、前記生体情報から生体指標データを生成し、前記生体指標データと前記環境情報と前記業務情報の時系列を揃えてから結合して統合情報を生成する統合情報生成部と、
前記統合情報を予め設定された事故リスク予測モデルに入力して、所定時間後の事故リスク情報を算出する事故リスク予測部と、
前記事故リスク情報と前記統合情報と予め設定された事故判定情報を、予め設定された要因算出モデルに入力して、前記事故リスク情報の要因情報を算出する要因算出部と、
を有することを特徴とする運行支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の運行支援システムであって、
前記サーバは、
前記事故リスク情報が所定の条件を満たしている場合には、前記事故リスク情報と前記要因情報を前記端末に出力する提示部をさらに有することを特徴とする運行支援システム。
【請求項8】
請求項7記載の運行支援システムであって、
前記提示部は、
前記出力した要因情報に対する要因ラベルを受信した場合には、前記要因ラベルで前記要因情報を更新することを特徴とする運行支援システム。
【請求項9】
請求項8記載の運行支援システムであって、
前記サーバは、
前記要因情報を更新した要因ラベルを前記事故判定情報に反映させて、前記要因ラベルを反映した前記事故判定情報で前記事故リスク予測モデルの学習を行う訓練部をさらに有することを特徴とする運行支援システム。
【請求項10】
請求項6記載の運行支援システムであって、
前記統合情報生成部は、
前記生体情報と前記環境情報と前記業務情報を統合する際には、前記生体情報の算出間隔を基準にして前記環境情報と前記業務情報の値を取得することを特徴とする運行支援システム。
【請求項11】
プロセッサとメモリを有して、車両の運行を支援するサーバであって、
前記サーバは、
車両を運転中の運転者の生体情報を取得し、前記運転者の環境情報を取得し、前記運転者の業務情報を取得し、前記生体情報から生体指標データを生成し、前記生体指標データと前記環境情報と前記業務情報の時系列を揃えてから結合して統合情報を生成する統合情報生成部と、
前記統合情報を予め設定された事故リスク予測モデルに入力して、所定時間後の事故リスク情報を算出する事故リスク予測部と、
前記事故リスク情報と前記統合情報と予め設定された事故判定情報を、予め設定された要因算出モデルに入力して、前記事故リスク情報の要因情報を算出する要因算出部と、
を有することを特徴とするサーバ。
【請求項12】
請求項11に記載のサーバであって、
前記事故リスク情報が所定の条件を満たしている場合には、前記事故リスク情報と前記要因情報を出力する提示部をさらに有することを特徴とするサーバ。
【請求項13】
請求項12記載のサーバであって、
前記提示部は、
前記出力した要因情報に対する要因ラベルを受信した場合には、前記要因ラベルで前記要因情報を更新することを特徴とするサーバ。
【請求項14】
請求項13記載のサーバであって、
前記要因情報を更新した要因ラベルを前記事故判定情報に反映させて、前記要因ラベルを反映した前記事故判定情報で前記事故リスク予測モデルの学習を行う訓練部をさらに有することを特徴とするサーバ。
【請求項15】
請求項11記載のサーバであって、
前記統合情報生成部は、
前記生体情報と前記環境情報と前記業務情報を統合する際には、前記生体情報の算出間隔を基準にして前記環境情報と前記業務情報の値を取得することを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故のリスクを予測して交通機関の運行を支援する運行支援方法、運行支援システム及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラックやバス等の運送業において運転者の健康に起因する事故の予防へ向けて、生体状態の定量評価が行われている。例えば、特許文献1では、生体状態のうち、計測が簡便な各種形態の心拍センサによる、心拍間隔データの計測に基づく自律神経機能の評価が知られている。
【0003】
特許文献1には、生体データ等から運転者の心理状態を推定し、運転者の運転に関して心理データを生成して運転者の状態の適、不適を推定することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、生体データの心拍間隔データから運転者の自律神経機能指標を推定し、自律神経機能指標に基づいて所定時間後の事故リスクを予測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-37033号公報
【特許文献2】特開2021-196625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
業務中の運転者の事故のリスクを予測するには、近い将来の事故リスクをリアルタイムで予測することが必要である。業務中は運転者の生体状態が逐次変化し、事故リスクの要因としては、生体情報の他に環境情報、業務情報などが存在するが、走行状態等の環境情報と、作業内容などの業務情報は運転者ごとに異なる。
【0007】
しかしながら、前記従来例では生体情報に環境情報や業務情報を正確に反映させて運転者の個人ごとの事故リスクを高精度で予測するのは難しいという問題があった。また、前記従来例では事故リスクが高くなると警告を出力するが、単に警告を提示するだけでは運転者の理解が得られない場合があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、事故リスクの予測を高精度で行って、運転者に理解が得られるような情報を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プロセッサとメモリを有する計算機が、車両の運行を支援する運行支援方法であって、前記計算機が、前記車両を運転中の運転者の生体情報を取得する第1のステップと、前記計算機が、前記運転者の環境情報を取得する第2のステップと、前記計算機が、前記運転者の業務情報を取得する第3のステップと、前記計算機が、前記生体情報から生体指標データを生成する第4のステップと、 前記計算機が、前記生体指標データと環境情報と業務情報の時系列を揃えて結合して統合情報を生成する第5のステップと、前記計算機が、予め設定された事故リスク予測モデルに前記統合情報を入力して、所定時間後の事故リスク情報を算出する第6のステップと、前記計算機が、前記事故リスクと前記統合情報と予め設定された事故判定情報を、予め設定された要因算出モデルに入力して、前記事故リスクの要因情報を算出する第7のステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明は、所定時間後の事故リスク情報を予測するのに加えて、事故リスクの要因情報を出力することで、運転者にとって違和感のない情報を提示することが可能となる。
【0011】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例を示し、運行支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例を示し、運行支援システムで行われる処理の概要を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施例を示し、生体情報の一例を示す図である。
図4】本発明の実施例を示し、環境情報の一例を示す図である。
図5】本発明の実施例を示し、業務情報を構成する勤怠データの一例を示す図である。
図6】本発明の実施例を示し、業務情報を構成する配送データの一例を示す図である。
図7】本発明の実施例を示し、時系列生体-環境-業務情報生成部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施例を示し、心拍データの一例を示すグラフである。
図9】本発明の実施例を示し、心拍変動の一例を示すグラフである。
図10】本発明の実施例を示し、心拍変動のスペクトルパワー密度の一例を示すグラフである。
図11】本発明の実施例を示し、時系列生体-環境-業務情報生成部で行われるデータの整形の一例を示す図である。
図12】本発明の実施例を示し、時系列生体-環境-業務情報の一例を示す図である。
図13】本発明の実施例を示し、事故リスク予測モデル訓練部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施例を示し、事故判定情報の一例を示す図である。
図15】本発明の実施例を示し、事故リスク予測部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図16】本発明の実施例を示し、事故リスク情報の一例を示す図である。
図17】本発明の実施例を示し、事故リスク要因算出部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図18】本発明の実施例を示し、事故リスク要因情報の一例を示す図である。
図19】本発明の実施例を示し、予測結果提示部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図20】本発明の実施例を示し、予測結果を出力する一例を示す図である。
図21】本発明の実施例を示し、予測結果表示端末の画面の一例を示す図である。
図22】本発明の実施例を示し、予測結果表示端末の画面の一例を示す図である。
図23】本発明の実施例を示し、事故判定情報に登録されたデータの一例を示すグラフである。
図24】本発明の実施例を示し、事故リスク予測モデルの訓練の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
<システム構成>
図1は、本発明の実施例を示し、運行支援システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施例の運行支援システムは、1以上の車両8の運転情報と、車両8の運転者の生体情報と、車両8又は運転者の環境情報と、運転者の業務情報をネットワーク19を介して収集して、運転者の交通事故のリスク(以下、事故リスク)を予測し、事故リスクの予測値が閾値を超える場合には運転者へ通知する運行支援サーバ1を含む。
【0015】
ネットワーク19には、車両8の運転情報を取得する運転情報収集装置10と、運転者の生体情報を取得する生体情報収集装置60と、車両8を運転する運転者の環境に関する情報を取得する環境情報収集装置70と、運転者の業務に関する情報を取得する業務情報収集装置80と、運行支援サーバ1からの通知を出力する予測結果表示端末90が接続されて運行支援サーバ1と通信を行うことができる。
【0016】
運転情報収集装置10は、車両8の位置情報を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)11と、先行車両との距離を検出する車間距離センサ12と、車両8の速度を検出する速度センサ13と、車両8の動きを検出する加速度センサ14と、車両8の周囲を撮影するカメラ15から情報を収集して運行支援サーバ1へ送信する。
【0017】
運転情報収集装置10は、上記のセンサに限定されるものではなく、車両8の周囲の物体及び距離を検出する測距センサや、運転操作を検出する操舵角センサ等を用いることができる。また、運転情報収集装置10は、運転者を特定するため運転者の識別子を記録した媒体を読み込む運転者ID読取り装置(図示省略)を設けることができる。
【0018】
生体情報収集装置60は、心拍データを検出する心拍計61と、運転者の体温を検出する体温計62と、運転者の血圧を検出する血圧計63のセンサを含む。生体情報収集装置60は、運転者が装着可能なウェアラブルデバイスの他、ハンドル、シート、シートベルト等、車両8の内部に付属したセンシングデバイスや、運転者の表情や挙動を撮像して画像を解析する画像認識システム等を用いることができる。
【0019】
生体情報収集装置60のセンサは、上記に限定されるものではなく、発汗量や、体温、まばたき、眼球運動あるいは脳波等を検出するセンサを採用することができる。また、生体情報収集装置60は、運転者を特定する識別子を設定して各種センシングデータに識別子を付加することができる。
【0020】
環境情報収集装置70は、気温計71と、気圧計72を含む。環境情報収集装置70は、車両8に取り付けられてもよいし、生体情報収集装置60と同様に運転者に装着されてもよい。
【0021】
業務情報収集装置80は、運転者の業務内容を入力する業務内容入力部81を有する。運転者は業務内容入力部81から業務の種類や、業務の開始、終了、休憩、配送業務の内容等の情報を入力することができる。業務情報収集装置80は、車両8に搭載されてもよいし、運転者が所持する携帯端末であってもよいし、事務所などに設置されてリモートで操作可能な端末であってもよい。
【0022】
予測結果表示端末90は、要因ラベル入力部91と、出力部92を含む。要因ラベル入力部91は、事故リスクの警告が発生した要因について運転者が選択又は入力した要因ラベルを受け付けて運行支援サーバ1へ送信する。出力部92は、表示装置やスピーカで構成されて運行支援サーバ1から送信された事故リスクの警告や注意喚起の通知を出力する。なお、要因ラベル入力部91は、テキストデータの他に音声の入力を受け付けることができる。
【0023】
予測結果表示端末90は、運転者が所持する携帯端末であってもよいし、車両8に装着されたカーナビゲーション装置であってもよいし、事務所などに設置された計算機であってもよい。
【0024】
運行支援サーバ1は、プロセッサ2と、メモリ3と、補助記憶装置4と、通信インターフェース5と、入力装置6と、出力装置7を含む計算機である。メモリ3は、時系列生体-環境-業務情報生成部(又は統合情報生成部)31と、事故リスク予測モデル訓練部32と、事故リスク予測部33と、事故リスク要因算出部34と、予測結果提示部35の各機能部をプログラムとしてロードする。各プログラムはプロセッサ2によって実行される。なお、各機能部の詳細については後述する。
【0025】
プロセッサ2は、各機能部のプログラムに従って処理を実行することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、プロセッサ2は、事故リスク予測プログラムを実行することで事故リスク予測部33として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、プロセッサ2は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。計算機及び計算機システムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0026】
補助記憶装置(ストレージ装置)4は、上記各機能部が使用するデータを格納する。補助記憶装置4は、生体情報41と、環境情報42と、業務情報43と、運転情報44と、事故リスク情報45と、事故リスク要因情報46と、時系列生体-環境-業務情報47と、事故リスク予測モデル48と、事故リスク要因算出モデル49と、事故リスク予測モデル訓練データ50と、提示内容辞書53と、事故リスク要因ラベル54を格納する。
【0027】
なお、事故リスク予測モデル訓練データ50は、過去の時系列生体-環境-業務情報51と、過去の事故判定情報52を含む。各データの詳細については後述する。
【0028】
入力装置6は、マウスやキーボードあるいはタッチパネル等を含む。出力装置7は、ディスプレイやスピーカ等を含む。通信インターフェース5はネットワーク19に接続されて車両8や生体情報収集装置60や環境情報収集装置70、業務情報収集装置80、予測結果表示端末90と通信を行う。
【0029】
<ソフトウェア構成>
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、車両8から運転情報を取得して運転情報へ格納し、生体情報収集装置60から生体情報を取得して生体情報41に格納し、環境情報収集装置70から環境情報を取得して環境情報42へ格納し、業務情報収集装置80から業務情報を取得して業務情報43に格納する。
【0030】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、生体情報41の心拍計61のデータ(以下、心拍データ)から心拍データのR波の間隔(RRI=R-R Interval)を算出し、RRIデータ(又は心拍間隔データ)から自律神経機能(ANF:Autonomic Nervous Function)指標を算出して生体情報41へ格納する。
【0031】
さらに、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、後述するように自律神経機能指標の粒度(算出間隔又は解析窓幅)と環境情報42の粒度(測定間隔)と、業務情報43の粒度(収集間隔)と、運転情報44の粒度(測定間隔)を自律神経機能指標の粒度に併せて結合し、時系列生体-環境-業務情報47を生成する。
【0032】
事故リスク予測モデル訓練部32は、予め収集しておいた事故リスク予測モデル訓練データ50を用いて、機械学習モデルの事故リスク予測モデル48の学習を実施して事故リスク予測モデル48の生成又は更新を行う。
【0033】
事故リスク予測部33は、学習済みの事故リスク予測モデル48を用いて、車両8や運転者から収集した時系列生体-環境-業務情報47を入力として、所定時間後の運転者の事故発生確率を示す事故リスク情報45を出力する。
【0034】
事故リスク要因算出部34は、予め設定され機械学習モデルの事故リスク要因算出モデル49を用いて、時系列生体-環境-業務情報47と事故リスク情報45を入力として、関連性の高い要因を事故リスク要因情報46として算出する。
【0035】
予測結果提示部35は、算出された事故リスク情報45が所定の条件を満たす場合(事故発生確率が予め設定された閾値Th1を超える場合)には、当該事故リスク情報45に対応する事故リスク要因情報46を取得して、予め設定された提示内容辞書53から事故リスク要因情報46に対応するメッセージ(又は警告)を取得して予測結果表示端末90へ送信する。
【0036】
予測結果提示部35は、後述するように、送信した警告に対して運転者が要因ラベル入力部91で入力したラベルを受け付けて、当該ラベルを事故リスク要因ラベル54に格納する。
【0037】
なお、本実施例では車両8の運転者から計測した生体情報を対象とした場合を例示するが、車両8を操縦する運転者のみに限定されるものではなく、例えば、飛行機や列車といった移動体を操縦する者を対象としてもよい。
【0038】
<処理の概要>
図2は、運行支援システムで行われる処理の概要を示すフローチャートである。まず、事故リスク予測モデル訓練部32は、予め設定された事故リスク予測モデル訓練データ50を用いて事故リスク予測モデル48を訓練して更新する。
【0039】
本実施例の運行支援システムでは、過去の運転情報と過去の生体情報から事故リスクを推定する機械学習のモデルを事故リスク予測モデル48として予め生成しておき、この事故リスク予測モデル48に事故リスク予測モデル訓練データ50を入力して学習させ、機械学習モデルの訓練を実施する(S1)。
【0040】
事故リスク予測モデル48の生成又は訓練については前記特許文献2と同様にしてもよく、例えば、過去の走行データと危険発生データを入力として、車両8の走行状態から事故リスクを推定する定義モデルを生成する。次に、定義モデルに対して過去に収集した走行データを入力して事故リスクが発生する確率を事故リスクの推定データを生成する。そして、過去の生体情報から、運転者の生体指標データを算出して、事故リスクの推定データと生体指標データを入力として、走行中の車両8の生体指標データから所定時間後の事故リスク(確率)を出力する機械学習のモデルを事故リスク予測モデルとして生成しておくことができる。
【0041】
本実施例の生体指標データとしては、例えば、運転者の心拍データから算出したパワースペクトル密度(後述)や、時間領域解析から算出されるNN間隔(R波とR波の間隔の差)に基づく自律神経指標等(後述)を用いることができる。また、自律神経指標等から分析・算出される結果を用いても良い。
【0042】
事故リスク予測モデル48を訓練するための事故リスク予測モデル訓練データ50は、過去の時系列生体-環境-業務情報51と、過去の事故判定情報52で構成される。過去の時系列生体-環境-業務情報51は、過去に収集した運転者の生体情報と、生体情報を収集した際の環境情報及び業務情報(運転情報)を後述するように時系列の粒度を揃えて結合したデータである。
【0043】
事故リスク予測モデル訓練部32は、新たに収集された時系列生体-環境-業務情報47を時系列生体-環境-業務情報51に追加することができる。また、事故リスク予測モデル訓練部32は、事故リスク要因ラベル54が更新されて場合には、事故判定情報52にフィードバックすることができる。
【0044】
事故判定情報52は、後述するように、過去に発生した事故やヒヤリハットなどのインシデントを収集しておいたデータで、過去の時系列生体-環境-業務情報51の時系列と同じ時系列である。
【0045】
事故リスク予測モデル48を過去の事故リスク予測モデル訓練データ50で訓練した後に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、生体情報41と、環境情報42と、業務情報43と、運転情報44を取得する(S2)。
【0046】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、車両8の運転者の生体情報41と、生体情報41の時系列に対応する環境情報42と業務情報43と運転情報44について所定の前処理を実施して時系列生体-環境-業務情報47を生成する(S3)。
【0047】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、生体情報41の前処理として、心拍データ(RRIデータ)の欠損区間の除外又は補間を実施する。時系列生体-環境-業務情報生成部31は、欠損区間の長さが所定の閾値Thfを超える長さの場合には当該区間の心拍データを除外し、欠損区間の長さが所定の閾値Thf以下の場合には補間処理を行うことができる。次に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、前処理を行った心拍データから後述するように自律神経機能指標(ANF情報)を算出する。
【0048】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、環境情報42、業務情報43、運転情報44についても、生体情報41と同様に欠損区間の除外又は補間処理を行ってそれぞれ前処理済みの情報を生成する。
【0049】
そして、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、後述するようにANF情報の時系列に対応する前処理済みの環境情報42、業務情報43、運転情報44を結合して時系列生体-環境-業務情報47を生成する。
【0050】
次に、事故リスク予測部33は、生成された時系列生体-環境-業務情報47過去の事故判定情報52を訓練済みの事故リスク予測モデル48へ入力して事故リスク情報45を算出する(S4)。
【0051】
次に、事故リスク要因算出部34は、事故リスク予測部33が算出した事故リスク情報45と時系列生体-環境-業務情報47を予め設定された事故リスク要因算出モデル49へ入力して事故リスク要因情報46を算出する(S5)。事故リスク要因情報46は、事故リスク予測モデル48が予測した事故リスク情報45の要因の推定結果となる。
【0052】
次に、予測結果提示部35は、事故リスク予測部33が算出した予測結果(確率)が所定の閾値Th1を超えていれば、事故リスク要因情報46に基づいて提示内容辞書53に設定されたメッセージを取得して、事故リスク情報45と事故リスク要因情報46を含む警告のメッセージを該当する運転者の予測結果表示端末90へ送信する(S6)。なお、予測結果提示部35は、事故リスク予測部33で算出された予測結果(事故リスク情報45の確率)が所定の閾値Th1を超えていれば、運行支援サーバ1の管理者や利用者などにもメッセージを通知することができる。
【0053】
事故リスク情報45が閾値Th1を超えた場合の通知には、事故リスク情報45の内容に加えて、事故リスク情報45に警告を発した根拠をメッセージに含めることで、運転者にとって納得しやすい警告を通知することができる。
【0054】
予測結果提示部35は、予測結果表示端末90に送信した事故リスク要因情報46について、運転者が認識する要因について入力を促すメッセージを予測結果表示端末90に送信して、予測結果表示端末90の要因ラベル入力部91から運転者の入力(要因ラベル)を受け付けることができる(S7)。
【0055】
運行支援サーバ1が通知した警告について運転者が認識した要因を入力させて要因ラベルとして事故リスク要因情報46に蓄積することで、運行支援サーバ1が出力する警告が運転者にとって違和感のない情報とすることができる。なお、要因ラベル入力部91からの要因ラベルの入力は、運転終了後又は業務終了後に行ってもよい。また、要因ラベル入力部91からの要因ラベルの入力は、運転者に代わって運行管理者等が実施することができる。
【0056】
予測結果提示部35は、予測結果表示端末90から要因ラベルの入力を受け付けた場合には、受け付けた要因ラベルを事故リスク要因情報46に設定して更新する。事故リスク予測モデル訓練部32は、要因ラベルが更新された事故リスク要因情報46の内容を事故判定情報52にフィードバックして事故リスク予測モデル48と事故リスク要因算出モデル49に反映することができる。
【0057】
事故リスク予測モデル訓練部32は、事故リスク予測モデル48又は事故リスク要因算出モデル49を訓練する際には、要因ラベルが更新された事故判定情報52を用いることで、運転者が実際に遭遇した事故リスクを事故リスク予測モデル48へフィードバックすることができる。なお、事故リスク予測モデル訓練部32は、所定のタイミング(例えば、毎月)で事故リスク予測モデル48と事故リスク要因算出モデル49の訓練を実施する。
【0058】
図21は、運行支援サーバ1からの警告を予測結果表示端末90の音声で出力する例を示す図である。図示の例では、予測結果表示端末90から音声で、30分以内にインシデント(図中ヒヤリハット)が発生する確率が80パーセントであるという警告メッセージ901と、警告を発した要因として連続出勤日数が6日で、かつ現在の天候が雨天であるという要因メッセージ902がそれぞれ出力される。
【0059】
運転者は警告メッセージ901で注意喚起の原因が要因メッセージ902であることを理解することができ、運転中に通知された警告に対して違和感を抱くことなく注意を喚起することが可能となる。また、警告と併せてリスク低減につながる提案を付け加えても良い。
【0060】
図21は、予測結果表示端末90に表示される要因ラベルを入力する画面の一例を示す図である。画面910は予測結果表示端末90の表示装置に出力された要因ラベルの入力画面である。この画面910は、予測結果表示端末90の要因ラベル入力部91が出力する。
【0061】
画面910は、時刻と事故発生確率からなる事故リスク情報45のグラフ911と、生体情報41(体調・疲労の推移)916と、業務情報43と環境情報42の推移を表示する領域(連続出勤回数912、天候913、遅延状況914)と、要因ラベルの入力部915が含まれる。
【0062】
図示の例では、事故発生確率が所定の閾値Th1を超えた時刻Txにおける事故リスク要因の名称を入力するよう促している。運転者は、予測結果表示端末90の入力デバイス(図示省略)で要因ラベルを入力する。要因ラベル入力部91は、入力された要因ラベルを運行支援サーバ1に送信する。
【0063】
なお、要因ラベルはテキストを入力部915へ入力するだけではなく、図22で示すように、複数の要因ラベルをボタン940として表示して、これらのボタン940から要因ラベルを選択するようにしてもよい。
【0064】
なお、図22の画面910では、図21の要素に加えて、上記ボタン940の他に、事故リスク情報45が閾値Th1を超える前の運転状態を示す動画ウインドウ930を含む。動画ウインドウ930には、車両8のカメラ15で撮影された動画のうち、事故リスク情報45が閾値Th1を超えた時刻(事故リスク情報45の発生時刻)から所定の時間まで遡った動画を再生することができる。なお、カメラ15が撮影した動画は、運転情報44に含めて補助記憶装置4に蓄積されている。
【0065】
なお、事故リスク情報45の発生時刻から所定時間まで遡った運転者の動画は事故リスク要因情報46として提供するようにしてもよい。
【0066】
本実施例の運行支援サーバ1は、生体情報41と、環境情報42と、業務情報43と、運転情報44の測定間隔の粒度を生体情報41(ANF情報)の算出間隔に合わせて統合して時系列生体-環境-業務情報47とすることにより、生体情報41(ANF情報)と運転情報44から事故リスク情報45の背景を提示することが可能となる。
【0067】
すなわち、運行支援サーバ1は、事故リスク情報45の事故発生確率が増大した場合には、その要因となる業務情報43や環境情報42を事故リスク要因算出モデル49に予測させて、警告を通知する際に警告の要因を通知することで、運転者にとって納得できる警告を実施することができる。
【0068】
運転者は、車両8の運転中に事故リスクの発生確率が増大したことのみを突然通知された場合、なぜ警告が発せられたかを即座に理解するのは難しい。そこで、本実施例の運行支援サーバ1は、警告を発する際には、警告の要因となった背景である業務情報43や環境情報42を提示することで運転者にとって納得しやすい情報を通知することが可能となる。
【0069】
<データの詳細>
次に運行支援サーバ1で利用するデータの詳細について説明する。
【0070】
図3は、生体情報収集装置60で測定した生体情報41の一例を示す図である。生体情報41は、ユーザID411と、日時412と、心拍間隔データ413と、血圧414と、体温415と、問診結果416をひとつのレコードに含む。
【0071】
ユーザID411は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報収集装置60に予め設定された識別子を用いるものとする。日時412は、生体情報収集装置60でデータを測定した日時を格納する。
【0072】
心拍間隔データ413は心拍計61で測定した心拍間隔(RRIデータ)を格納する。血圧414は、血圧計63で測定した血圧を格納する。体温415は体温計62で測定した体温を格納する。問診結果416は、始業時などの問診の結果を格納する。なお、データが測定されなかった項目には「計測なし」が格納される。
【0073】
図4は、環境情報収集装置70で測定した環境情報42の一例を示す図である。環境情報42は、エリアID421と、日付422と、曜日423と、時間帯424と、天候425と、気温426と、気圧427をひとつのレコードに含む。
【0074】
エリアID421は、データを取得した地域(都道府県など)の識別子を格納する。日付422は、データを取得した年月日を格納する。曜日423は、データを取得した曜日を格納する。時間帯424は、データを取得した時間の始点と終点を格納する。
【0075】
天候425は、エリアごとに取得した天候を格納する。気温426は、気温計71で測定した気温を格納する。気圧427は、気圧計72が測定した気圧を格納する。
【0076】
図5は、業務情報収集装置80で受け付けた業務情報43のうち勤怠データ431の一例を示す図である。勤怠データ431は、ユーザID4311と、出勤日時4312と、前回退勤日時4313と、連続出勤日数4314と休憩時間4315をひとつのレコードに含む。
【0077】
ユーザID4311は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。出勤日時4312と前回退勤日時4313は、出勤及び退勤の日時を格納する。連続出勤日数4314は、連続して勤務を行った日数を格納する。休憩時間4315は、運転者が取得した休憩時間を格納する。
【0078】
図6は、業務情報収集装置80で受け付けた業務情報43のうち配送データの一例を示す図である。配送データ432は、ユーザID4321と、日時4322と、エリアID4323と、運搬物4324と、配送ルート4325と、遅延の有無4326をひとつのレコードに含む。
【0079】
ユーザID4321は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。日時4322は配送を開始した日時を格納する。運搬物4324は配送する物品の種類を格納する。配送ルート4325は配送する経路を格納する。遅延の有無4326は、配送の際に遅延が報じたか否かを格納する。
なお、車両8の位置情報又は走行経路を含む運転情報44は、配送データ432に含めて業務情報43として扱うようにしてもよい。
【0080】
図12は、時系列生体-環境-業務情報生成部31が生成する時系列生体-環境-業務情報47の一例を示す図である。なお、過去の時系列生体-環境-業務情報51も同様の構成である。
【0081】
時系列生体-環境-業務情報47は、ユーザID471と、日時472と、自律神経LF/HF473と、体温474と、気温475と、連続出勤日数476と、遅延477と、走行状態478をひとつのレコードに含む。
【0082】
ユーザID471は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。日時472は、生体情報41を構成する自律神経LF/HF473の解析窓の起点となる心拍データを生体情報収集装置60で測定した日時を格納する。
【0083】
自律神経LF/HF473は、後述するように、心拍データのR波の間隔(RRI)のパワースペクトル密度の低周波(LF:Low Frequency)成分と高周波(HF:High Frequency)成分の比率で、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを示す値として格納する。なお、低周波成分は交感神経の活動指標を示し、高周波成分は副交感神経の活動指標を示す。
【0084】
体温474は、生体情報収集装置60が測定した体温を格納する。気温475は、環境情報42の気温を格納する。連続出勤日数476は、業務情報43の勤怠データ431の連続出勤日数4314の値を格納する。
【0085】
遅延477は、業務情報43の配送データ432の遅延の有無4326の値を格納する。走行状態478は、運転情報44の速度と位置に基づく走行状態を格納する。本実施例では、走行中であれば道路の種類が格納され、停止中であれば「停車中」が格納される。
【0086】
なお、運行支援サーバ1が車両8の走行状態にかかわらず、運転者の生体情報41と環境情報42と業務情報43に基づいて事故リスクの予測を行う場合では、運転情報44の値を時系列生体-環境-業務情報47に結合しなくてもよい。
【0087】
図14は、事故判定情報52の一例を示す図である。事故判定情報52は、過去に発生した事故又はインシデントの情報が蓄積される。事故判定情報52は、ユーザID521と、検出日時522と、車速523と、加速度524と、車間距離525と、カメラ情報526と、インシデント有無527と、インシデント要因528をひとつのレコードに含む。
【0088】
ユーザID521は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。検出日時522は、事故又はインシデントが発生した日時を格納する。車速523加速度524と車間距離525は事故又はインシデントが発生したときの車速と加速度と車間距離の検出値をそれぞれ格納する。カメラ情報526は、事故又はインシデントが発生したときの画像情報を示す。
【0089】
インシデント有無527は、インシデント(又は事故)の有無を格納する。インシデント(又は事故)がある場合には「1」を格納し、無い場合には「0」を格納する。インシデント要因528は、インシデント(又は事故)が発生した要因のラベルを格納する。
【0090】
インシデント(又は事故)の検出は、車両8に搭載した車間距離センサ12、速度センサ13、加速度センサ14等の運転情報44から、急ブレーキなどインシデント(又は事故)の可能性が高い時刻の情報を図示しないプログラムや機械学習モデル等により自動で行われてもよい。
【0091】
検出されたインシデント(又は事故)について、例えば、運行支援サーバ1の管理者等は検出日時522の前後のカメラ情報を参照してインシデント有無527の設定と、インシデント要因528を判定してラベルをテキストなどで入力する。なお、インシデント有無527の設定と、インシデント要因528の判定及び設定は予め設定された機械学習モデルが実施してもよい。
【0092】
なお、インシデント(又は事故)の判定は、図23で示すように、車速S1に対応する車間距離D1が所定の閾値未満又は加速度A1が閾値未満の減速状態の場合に、インシデントの発生が検出される。運行支援サーバ1は、インシデントの発生が検出された時刻の前後について運転情報44からカメラ15が撮影した動画を取得して出力装置7に表示する。運行支援システムの管理者は、出力装置7からインシデントの前後の動画からインシデント(又は事故)の要因を判定して入力装置6から要因ラベルを入力する。
【0093】
図16は、事故リスク情報45の一例を示す図である。事故リスク情報45は、事故リスク予測部33が算出した予測結果を格納する。事故リスク情報45は、ユーザID451と、計測時刻452と、時系列生体-環境-業務情報453と、予測対象時間帯454と、事故発生確率455をひとつのレコードに含む。
【0094】
ユーザID451は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。計測時刻452は、予測を行った日時を格納する。時系列生体-環境-業務情報453は、予測で使用した時系列生体-環境-業務情報47を特定するポインタを格納する。
【0095】
予測対象時間帯454は、事故リスクを予測する時刻の始点と終点を格納する。終点は事故リスク予測モデル48が予測する所定時間後となる。事故発生確率455は、事故又はインシデントが発生する確率を百分率で表した値を格納する。
【0096】
図18は、事故リスク要因情報46の一例を示す図である。事故リスク要因情報46は、事故リスク要因算出部34で算出した要因を格納する。事故リスク要因情報46は、ユーザID461と、事故リスク462と、第1事故リスク要因463と、第2事故リスク要因464と、要因ラベル465をひとつのレコードに含む。
【0097】
ユーザID461は、運転者の識別子を格納する。本実施例では、生体情報41の識別子を用いるものとする。事故リスクは、対応する事故リスク情報45のポインタを格納する。第1事故リスク要因463は、事故リスク要因算出モデル49が出力した事故又はインシデントの最大の要因となった要素を格納する。第2事故リスク要因464は、事故リスク要因算出モデル49が出力した2番目の要因となった要素を格納する。要因ラベル465は、予測結果報知装置9から受け付けた要因ラベルを格納する。
【0098】
事故リスク要因算出モデル49は、事故リスク情報45を算出した運転者の環境情報42と業務情報43から事故発生確率455の要因となる項目と値を抽出して第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464を出力する。
【0099】
また、第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464の区別は、例えば、事故発生確率455の要因となる確率が最大の項目を第1事故リスク要因463とし、次点の項目を第2事故リスク要因464とすることができる。
【0100】
なお、事故リスク要因算出部34の項目は図示の項目に限定されるものではなく、生体情報41と環境情報42と業務情報43及び運転情報44に含まれる項目であればよく、時系列生体-環境-業務情報47として統合する項目を予め設定しておけばよい。
【0101】
なお、提示内容辞書53について図示はしないが、運転者に通知するメッセージのテンプレートなどで構成され、事故発生確率455の大きさと、第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464の内容に応じた文例が予め設定される。
【0102】
また、事故リスク要因ラベル54について図示はしないが、要因ラベルと第1事故リスク要因463又は第2事故リスク要因464を関連付けた情報であればよい。
【0103】
<処理の詳細>
以下、図2に示した処理の詳細について説明する。図7は、時系列生体-環境-業務情報生成部31で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図2のステップS3で行われる処理である。
【0104】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、まず、図2のステップS2で取得した生体情報41から心拍間隔データ413を抽出する(S11)。なお、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、生体情報41の心拍間隔データ413に対応する血圧414や体温415のデータも抽出しておいてもよい。
【0105】
次に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、抽出した心拍間隔データ413と、ステップS2で取得した環境情報42と、業務情報43と、運転情報44のそれぞれについて欠損区間の除外又は補間等の前処理を実施して前処理済データ450を生成する(S12)。前処理済データ450は、前処理済心拍間隔データ413Aと、前処理済環境情報42Aと、前処理済業務情報43Aと、前処理済運転情報44Aで構成される。
【0106】
なお、欠損区間の判定は、生体情報41~運転情報44では、それぞれデータの測定(又は取得)間隔が異なるので、欠損区間を判定するための閾値Thfは、心拍間隔データ413と、環境情報42と、業務情報43と、運転情報44のそれぞれで異なる値を設定することができる。
【0107】
次に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、後述するように前処理済心拍間隔データ413Aから所定の解析窓(時間幅)で自律神経機能指標として自律神経機能LF/HFを算出してANF情報473として前処理済データ450に蓄積する(S13)。
【0108】
ANF情報473の算出は次のように行われる。時系列生体-環境-業務情報生成部31は、図8に示す前処理済心拍間隔データ413Aから解析窓(所定期間)ΔTwの心拍間隔データ(RRIデータ)を心拍変動時系列データとして算出し、さらに心拍変動時系列データからゆらぎを算出する。図9は、時系列生体-環境-業務情報生成部31が算出した心拍間隔データのゆらぎ(心拍変動)の一例を示すグラフである。心拍間隔データのRRIは一定ではなく、自律神経の活動等によって変動している。
【0109】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、心拍変動時系列データについて周波数スペクトル解析を行って、パワースペクトル密度(PSD:Power Spectral density)を算出する。パワースペクトル密度の算出は、周知の手法を適用すればよい。
【0110】
次に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、パワースペクトル密度の低周波成分の強度LFと高周波成分の強度HFを算出する。図10は、心拍変動のパワースペクトル密度の周波数領域の一例を示すグラフである。
【0111】
時系列生体-環境-業務情報生成部31は、図10のように、パワースペクトルの低周波成分の領域(0.05Hz~0.15Hz)の強度(積分値)LFと、高周波成分の領域(0.15Hz~0.40Hzまで)の強度(積分値)HFを合計(LF+HF)した値を自律神経トータルパワーとして算出する。
【0112】
また、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、パワースペクトルの低周波成分の強度LFと高周波成分の強度HFの比(自律神経LF/HF)をANF情報473として算出する。
【0113】
上記処理によって、運行支援サーバ1では生体情報41の心拍間隔データから、解析窓ΔTwごとに心拍変動時系列データを算出して、さらに低周波成分と高周波成分の強度の比をANF情報473として算出する。
【0114】
ANF情報473の高周波成分は、副交感神経が活性化(緊張)している場合に心拍変動に出現し、低周波成分は交感神経が活性化(緊張)しているときも、副交感神経が活性化(緊張)しているときも心拍変動に出現する。
【0115】
交感神経が活性化している場合はストレス状態であり、副交感神経が活性化している場合はリラックス状態にあることが知られているので、低周波成分の強度LFと高周波成分の強度HFから、運転者がストレス状態であるかリラックス状態であるかを判定することができる。
【0116】
次に、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、ANF情報473と前処理済環境情報42Aと前処理済業務情報43Aと前処理済運転情報44Aの時間幅を揃えて、これらを結合した時系列生体-環境-業務情報47を生成する(S14)。
【0117】
ANF情報473は、前処理済心拍間隔データ413Aを取得した所定の解析窓ΔTwごとに生成され、解析窓ΔTwの時間間隔は例えば1分である。一方、前処理済環境情報42Aは1時間ごとなどの時間間隔で取得され、前処理済運転情報44Aは車両8のセンサの測定間隔(例えば、1秒間隔)でデータが収集され、前処理済業務情報43Aは運転者の業務の区切りに応じて記録されるので不定期である。
【0118】
図11で示すように、ANF情報473の算出間隔(解析窓ΔTw)に対して前処理済環境情報42A~前処理済運転情報44Aの測定(又は取得)タイミングはそれぞれ異なり、また、測定間隔(取得間隔)の粒度もそれぞれ異なる。
【0119】
そこで、時系列生体-環境-業務情報生成部31は、警告を発する監視対象の生体情報41であるANF情報473の算出間隔に合わせて前処理済環境情報42A~前処理済運転情報44Aのデータを整形してから結合してひとつのレコードの時系列生体-環境-業務情報47を生成する。
【0120】
ANF情報473の算出間隔(解析窓ΔTw)よりも時間間隔の短い前処理済運転情報44Aの場合は、解析窓ΔTwの時間間隔内の平均値等の代表値をANF情報473に対応する値として時系列生体-環境-業務情報生成部31が算出する。
【0121】
一方、ANF情報473の算出間隔(解析窓ΔTw)よりも時間間隔の長い前処理済環境情報42Aや前処理済業務情報43Aの場合は、解析窓ΔTwの直近(又は直前)のデータをANF情報473に対応するデータとして取得する。
【0122】
以上のように時系列生体-環境-業務情報生成部31は、前処理済環境情報42Aと前処理済業務情報43Aと前処理済運転情報44AのデータをANF情報473の解析窓ΔTwの間隔に合わせてからひとつのレコードに結合して時系列生体-環境-業務情報47を生成する。
【0123】
これにより、時系列生体-環境-業務情報47は、心拍間隔データ413を取得する解析窓ΔTwごとに算出したANF情報473の時間間隔を基準として、ANF情報473の時系列に対応する前処理済環境情報42A、前処理済業務情報43A及び前処理済運転情報44Aを結合して、時系列方向でずれのない時系列生体-環境-業務情報47を図12で示すように生成することができる。
【0124】
なお、時系列生体-環境-業務情報47に蓄積されたデータは、所定のタイミングで過去の事故リスク予測モデル訓練データ50に反映される。
【0125】
図13は、事故リスク予測モデル訓練部32で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図2のステップS1で行われる処理である。
【0126】
事故リスク予測モデル訓練部32は、訓練に使用するデータの指定期間を受け付けて、事故リスク予測モデル訓練データ50のうち過去の時系列生体-環境-業務情報51から指定期間内のデータを抽出してモデル入力データ500として生成する(S21)。
【0127】
なお、指定期間は、入力装置6や外部の計算機から受け付けることができ、運行支援システムの利用者又は管理者が入力する。また、指定期間は、2分~数時間の時間幅であることが望ましい。
【0128】
次に、事故リスク予測モデル訓練部32は、管理者又は計算機が実際の事故や事故に繋がる事象(インシデント)を判定した過去の情報を予め設定した事故判定情報52を取得して、指定期間内の過去の時系列生体-環境-業務情報51から事象発生の有無情報を抽出して教師ラベル55とする(S22)。
【0129】
この処理は、過去の時系列生体-環境-業務情報51から事象を予測する未来は指定期間以内又は指定期間と同程度の期間を意味する。例えば、指定期間が30分である場合、事故判定情報52の事象発生の時刻が、時系列生体-環境-業務情報51の開始時刻から30分以内の事象であれば、当該時刻に事象発生のラベルを付与して教師ラベル55とする。すなわち、事故判定情報52に登録されているインシデント有無527に対応するインシデント要因528が、事故リスク予測モデル48の教師ラベルとして、対応する時刻から任意の時間幅(30分等)を遡った区間の過去の時系列生体-環境-業務情報51と紐づけられる。
【0130】
次に、ステップS21で抽出したモデル入力データ500とステップS22で生成した教師ラベル55を用いて、将来(所定時間後:例えば30分後)の事故リスクを出力する事故リスク予測モデル48を訓練する(S28)。
【0131】
事故リスク予測モデル48の訓練の一例を図24に示す。教師ラベル55に対応するインシデント有無が「0」又は「1」の2値であるのに対し、事故リスク予測モデル48が出力する値は0~1などの範囲に収まる連続値である。事故リスク予測モデル48の適用時には予測された連続値をそのまま用いる、もしくは閾値を設定して変換するなどの処理を行い、0~100%の事故発生確率を算出する。
【0132】
上記の訓練には、過去の時系列生体-環境-業務情報51に、新たな時系列生体-環境-業務情報47を追加し、また、事故リスク要因ラベル54を追加した事故判定情報52を用いることで、事故リスク予測モデル48の予測精度を向上させることができる。
【0133】
図15は、事故リスク予測部33で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図2のステップS4で行われる処理である。事故リスク予測部33は、時系列生体-環境-業務情報47を取得して、訓練済の事故リスク予測モデル48へ時系列生体-環境-業務情報47を入力して運転者の所定時間後の事故リスクを予測させる。事故リスク予測部33は、事故リスク予測モデル48が出力した事故発生確率を事故リスク情報45へ格納する(S31)。
【0134】
事故リスク予測部33は、時系列生体-環境-業務情報47のユーザID471を事故リスク情報45のユーザID451に格納し、同様に時系列生体-環境-業務情報47の日時472を計測時刻451に格納し、時系列生体-環境-業務情報47のレコードを特定するポインタを時系列生体-環境-業務情報453に格納し、事故リスク予測モデル48が出力した予測時刻の範囲を予測対象時間帯454に格納し、事故リスク予測モデル48が出力した事故発生確率を事故発生確率455へ格納する。
【0135】
なお、事故リスク予測部33が事故リスク予測モデル48へ入力する処理対象のデータは、時系列生体-環境-業務情報47のうち未処理のデータである。
【0136】
上記処理によって、時系列生体-環境-業務情報47のデータが訓練済みの事故リスク予測モデル48へ入力されて運転者ごとに所定時間後の事故リスク情報45が出力される。
【0137】
なお、事故リスク予測部33は、事故リスク予測モデル48が出力する事故発生確率が所定の閾値Th2(例えば、5%)以下の場合には、事故リスク情報45の生成を省略してもよい。
【0138】
図17は、事故リスク要因算出部34で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図2のステップS5で行われる処理である。
【0139】
事故リスク要因算出部34は、事故リスク予測部33が出力した事故リスク情報45と、過去の事例を収集した事故判定情報52と、事故リスク予測部33へ入力した時系列生体-環境-業務情報47を取得して、予め設定された事故リスク要因算出モデル49へ入力して事故リスク要因情報46を生成する(S41)。
【0140】
事故リスク要因算出部34は、事故リスク情報45のユーザID451を事故リスク要因情報46のユーザID461に格納し、事故リスク情報45のレコードを特定するポインタを事故リスク462へ格納し、事故リスク予測モデル48が出力した第1及び第2の事故リスク要因をそれぞれ第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464に格納し、事故判定情報52のインシデント要因528を要因ラベル465に格納する。
【0141】
上記処理によって、事故リスク情報45が生成された運転者について、現在の時系列生体-環境-業務情報47と過去の事故判定情報52のインシデント要因528から事故リスク要因算出モデル49が予測した要因が第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464及び要因ラベル465として生成される。
【0142】
なお、事故リスク要因算出部34は、事故判定情報52のインシデント要因528が空欄のデータについては事故リスク要因情報46の要因ラベル465に「無し」を設定する。また、第1事故リスク要因463は事故リスクが発生した主な要因を示し、第2事故リスク要因464は事故リスクが増大した背景となる要因が提示される。
【0143】
図18の事故リスク要因情報46では、第1事故リスク要因463が業務情報43に基づいて「連続出勤日数が6日を超えている」ことが主な要因として推定され、第2事故リスク要因464が環境情報42に基づいて雨天であることが背景となる要因として推定される例を示している。
【0144】
図19は、予測結果提示部35で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図2のステップS6、S7で行われる。
【0145】
予測結果提示部35は、事故リスク情報45から予測対象時間帯454と事故発生確率455を取得し、事故発生確率455が所定の閾値Th1を超えていれば以下の処理を実施する。
【0146】
予測結果提示部35は、事故リスク情報45に対応する事故リスク要因情報46から第1事故リスク要因463と第2事故リスク要因464及び要因ラベル465を取得する。予測結果提示部35は、事故発生確率455と第1事故リスク要因463又は第2事故リスク要因464で提示内容辞書53を検索して文章のテンプレートを取得する。予測結果提示部35は、取得したテンプレートに事故発生確率455と予測対象時間帯454及び第1事故リスク要因463又は第2事故リスク要因464を挿入して警告又は注意喚起のメッセージを生成して運転者又は管理者が利用する予測結果表示端末90に送信する(S51)。
【0147】
また、予測結果提示部35は、メッセージに加えて要因ラベルを受け付ける情報を送信し、予測結果表示端末90で運転者又は管理者等が入力した要因ラベルを受信した場合には、事故リスク要因情報46の要因ラベル465を更新(又は追加)する(S52)。
【0148】
予測結果提示部35は、事故リスク要因情報46が更新された場合には事故判定情報52にフィードバックしてインシデント要因528に要因ラベル465の内容を加えることができる。これにより、事故リスク予測モデル48を訓練する際に、運転者などが設定したインシデント要因528を反映させることができる。そして、運行支援サーバ1は、運転者にとって違和感のないメッセージを生成して送信することができる。
【0149】
以上のように、本実施例の運行支援サーバ1は、環境情報42や業務情報43や運転情報44等の測定間隔や取得間隔が異なる情報を結合する際に生体情報41を算出する時間間隔に合わせてから、これらの情報を結合して時系列生体-環境-業務情報47を生成し、時系列で格納する。そして、運行支援サーバ1は、生体情報41の算出間隔に合わせた時系列生体-環境-業務情報47で所定時間後(未来)の事故発生確率455(事故リスク情報45)の予測を行って、事故発生確率455が閾値Th1を超えた場合には警告又は注意喚起のメッセージを送信する。
【0150】
これにより、事故発生確率455に影響を与える環境情報42と業務情報43及び運転情報44を生体情報41の算出間隔に合わせた情報に統合しておくことで、事故又はインシデントの予測精度を向上させることができる。
【0151】
また、予測結果の事故リスク情報45と、過去の事故判定情報52と、新たな時系列生体-環境-業務情報51を事故リスク要因算出モデル49へ入力して事故リスク要因情報46を算出し、事故リスクの要因をメッセージに含めることで、運転者に警告又は注意喚起の理由を提示することができる。警告や注意喚起に加えて事故リスクの要因を加えることで、違和感のないメッセージを通知することができる。
【0152】
また、環境情報42と業務情報43及び運転情報44の時系列の粒度を生体情報41の算出間隔に合わせてデータを統合した時系列生体-環境-業務情報47を事故リスク要因算出モデル49へ入力することにより、時系列的にずれのない事故リスク要因情報46を算出することができる。
【0153】
また、運行支援サーバ1は、予測結果表示端末90へ送信した事故リスク情報45に対して、予測結果表示端末90から事故リスクの要因に対するラベルを受け付けて、事故リスク予測モデル48と事故リスク要因算出モデル49へフィードバックすることができる。これにより、運転者にとって違和感のない警告を行うことができる。
【0154】
また、運行支援サーバ1は、事故リスク要因情報46として、事故リスク情報45の発生時刻以前の運転状態の動画を提供することで、運転者に違和感のない通知を行うことができる。
【0155】
<結び>
以上のように、上記実施例は以下のような構成とすることができる。
【0156】
(1)プロセッサ(2)とメモリ(3)を有する計算機(運行支援サーバ1)が、車両(8)の運行を支援する運行支援方法であって、前記計算機(1)が、前記車両(8)を運転中の運転者の生体情報(41)を取得する第1のステップ(生体情報収集装置60)と、前記計算機が、前記運転者の環境情報(42)を取得する第2のステップ(環境情報収集装置70)と、前記計算機が、前記運転者の業務情報(43)を取得する第3のステップ(業務情報収集装置80)と、前記計算機が、前記生体情報(41)から生体指標データを生成する第4のステップ(S31)と、前記計算機が、前記生体指標データ(ANF情報473)と環境情報(42)と業務情報の時系列を揃えて結合して統合情報(時系列生体-環境-業務情報47)を生成する第5のステップ(時系列生体-環境-業務情報生成部31)と、前記計算機が、予め設定された事故リスク予測モデル(48)に前記統合情報(31)を入力して、所定時間後の事故リスク情報(45)を算出する第6のステップ(S4)と、前記計算機が、前記事故リスク情報(45)と前記統合情報(31)と予め設定された事故判定情報(52)を、予め設定された要因算出モデル(事故リスク要因算出モデル49)に入力して、前記事故リスク情報(45)の要因情報(事故リスク要因情報46)を算出する第7のステップ(事故リスク要因算出部34)と、を含むことを特徴とする運行支援方法。
【0157】
上記構成により、運行支援サーバ1は、所定時間後の事故リスク情報45を予測するのに加えて、事故リスク要因情報46を出力することで、運転者にとって違和感のない情報を提示することが可能となる。
【0158】
(2)上記(1)に記載の運行支援方法であって、前記計算機が、前記事故リスク情報(45)が所定の条件(閾値Th1を超える)を満たしている場合には、前記事故リスク情報(45)と前記要因情報(46)を出力する第8のステップ(S6)をさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【0159】
上記構成により、運行支援サーバ1は、所定時間後の事故リスク情報45が所定の条件を満たす場合には事故リスク情報45と事故リスク要因情報46を予測結果表示端末90へ出力することで、運転者に対して事故リスクが増大したことに加えて、事故リスクの要
【0160】
(3)上記(2)に記載の運行支援方法であって、前記計算機が、前記出力した要因情報(46)に対する要因ラベルを受信した場合には、前記要因ラベルで前記要因情報(46)を更新する第9のステップ(S7)をさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【0161】
上記構成により、運転者又は管理者が設定した要因ラベルで事故判定情報52を更新することで、運転者が実際に遭遇した事故リスクを反映することができる。
【0162】
(4)上記(3)に記載の運行支援方法であって、前記計算機が、前記要因情報(46)を更新した要因ラベルを前記事故判定情報(52)に反映させて、前記要因ラベルを反映した前記事故判定情報(52)で前記要因算出モデル(49)の学習を行う第10のステップ(S48)をさらに含むことを特徴とする運行支援方法。
【0163】
上記構成により、事故リスク予測モデル48を再度訓練する際には、要因ラベルが更新された事故判定情報52を用いることで、運転者が実際に遭遇した事故リスクを事故リスク予測モデル48へフィードバックすることができる。
【0164】
(5)上記(1)に記載の運行支援方法であって、前記第5のステップは、前記生体情報(41)と前記環境情報(42)と前記業務情報を統合する際には、前記生体情報(41)の算出間隔を基準にして前記環境情報(42)と前記業務情報の値を取得することを特徴とする運行支援方法。
【0165】
上記構成により、時系列生体-環境-業務情報47を生体情報41から算出される情報(例えば、ANF情報473)の算出間隔に合わせて環境情報42と業務情報43を取得することで、時系列生体-環境-業務情報47は時系列の粒度が揃った情報となる。これにより、時系列生体-環境-業務情報47を用いる事故リスク予測モデル48と事故リスク要因算出モデル49の算出精度を向上させることができる。
【0166】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を含むものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換のいずれもが、単独で、又は組み合わせても適用可能である。
【0167】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0168】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0169】
1 運行支援サーバ
2 プロセッサ
3 メモリ
4 補助記憶装置
10 運転情報収集装置
31 時系列生体-環境-業務情報生成部
32 事故リスク予測モデル訓練部
33 事故リスク予測部33
34 事故リスク要因算出部
35 予測結果提示部
41 生体情報
42 環境情報
43 業務情報
44 運転情報
45 事故リスク情報
46 事故リスク要因情報
47、51 時系列生体-環境-業務情報
48 事故リスク予測モデル
49 事故リスク要因算出モデル
50 事故リスク予測モデル訓練データ
52 事故判定情報
53 提示内容辞書
54 事故リスク要因ラベル
60 生体情報収集装置
61 心拍計
70 環境情報収集装置
80 業務情報収集装置
90 予測結果表示端末
図1
図2
図3
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図5
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