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特開2023-142493食材充填装置、食材吐出ノズル、食品製造装置、食材充填方法及び食品製造方法
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  • 特開-食材充填装置、食材吐出ノズル、食品製造装置、食材充填方法及び食品製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142493
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】食材充填装置、食材吐出ノズル、食品製造装置、食材充填方法及び食品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23P 20/20 20160101AFI20230928BHJP
   A21C 11/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A23P20/20
A21C11/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049441
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】栗山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 透
【テーマコード(参考)】
4B031
4B048
【Fターム(参考)】
4B031CB05
4B031CG11
4B031CG14
4B048PE08
4B048PM04
4B048PM14
4B048PS11
(57)【要約】
【課題】簡素な装置構成によって、内側食材(充填食材)を外側食材(ベース食材)の内部の所望箇所に精度良く局在させるのに有利な技術を提供する。
【解決手段】食材充填装置は、ベース食材を保持するベース食材保持部と、充填食材を吐出する吐出口を有し且つ第1方向に延在する食材吐出ノズルであって、前記吐出口が前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズルと、ベース食材保持部が保持するベース食材の内部に位置する吐出口から充填食材を吐出した後、ベース食材が吐出口に対して第1方向へ相対的に移動するように、ベース食材保持部が保持するベース食材と食材吐出ノズルとを相対的に移動させる移動部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース食材を保持するベース食材保持部と、
充填食材を吐出する吐出口を有し且つ第1方向に延在する食材吐出ノズルであって、前記吐出口が前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズルと、
前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の内部に位置する前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させる移動部と、を備える食材充填装置。
【請求項2】
前記第2方向は、前記第1方向と垂直を成す方向である請求項1に記載の食材充填装置。
【請求項3】
前記ベース食材保持部は、前記第1方向に延び且つ前記ベース食材が充填される中空部を有する食材ガイド部を含み、
前記食材吐出ノズルのうちの少なくとも前記吐出口を含む部分は、前記中空部に設けられ、
前記移動部は、前記中空部における前記ベース食材を前記第1方向に移動させる請求項1又は2に記載の食材充填装置。
【請求項4】
前記移動部は前記食材吐出ノズルを前記第1方向に移動させて、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の内部に前記吐出口が位置づけられる吐出位置と、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の外部に前記吐出口が位置づけられる退避位置と、に前記食材吐出ノズルを位置づける請求項1又は2に記載の食材充填装置。
【請求項5】
前記食材吐出ノズルは、前記ベース食材が前記食材吐出ノズルに対して相対的に停止している状態で、前記吐出口から前記ベース食材の内部に前記充填食材を吐出する請求項1~4のいずれか一項に記載の食材充填装置。
【請求項6】
前記食材吐出ノズルのうち前記吐出口を区画する開口縁部の少なくとも一部は先鋭形状を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の食材充填装置。
【請求項7】
前記食材吐出ノズルは複数設けられる請求項1~6のいずれか一項に記載の食材充填装置。
【請求項8】
前記複数の食材吐出ノズルのうちの少なくとも2以上の前記食材吐出ノズルの前記吐出口から吐出される前記充填食材が前記ベース食材の内部で合流するように、前記複数の食材吐出ノズルは前記吐出口から前記ベース食材の内部に前記充填食材を吐出する請求項7に記載の食材充填装置。
【請求項9】
ベース食材の内部に充填食材を吐出するための食材吐出ノズルであって、
前記充填食材を吐出する吐出口を有し、且つ、第1方向に延在し、
前記吐出口は、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズル。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の食材充填装置と、
前記食材充填装置から送られてくる前記ベース食材及び前記充填食材の成形を行って、前記ベース食材と当該ベース食材の内部に位置する前記充填食材とを含む成形食品を作る成形装置と、を備える食品製造装置。
【請求項11】
第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、前記吐出口から充填食材を吐出する工程と、
前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が、前記ベース食材の内部に位置している前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させる工程と、を含む食材充填方法。
【請求項12】
第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、前記吐出口から充填食材を吐出する工程と、
前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が、前記ベース食材の内部に位置している前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させて、前記ベース食材と、当該ベース食材の内部に位置する前記充填食材とを有する封入食品を生成する工程と、を含む食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食材充填装置、食材吐出ノズル、食品製造装置、食材充填方法及び食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある食材の内部に他の食材が封入されている封入食品を製造する装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、高粘度液体材料等の内層食材を高粘度液体材料等の外層食材の内部に充填することで、内層食材が外層食材により包まれた多層食品を製造する装置を開示する。当該装置は、長手方向に延在する二重管構造の吐出ノズルを備え、外側管の先端開口から長手方向に外層食材を吐出しつつ、内側管の先端開口から長手方向に内層食材を吐出することで、内層食材が外層食材により包まれた多層食品を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-233138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封入食品を製造するためにノズルから吐出される内側食材(充填食材)を外側食材(ベース食材)の内部に封入する際に、内側食材がノズルから切断されずに伸びてしまい、外側食材の内部の所望箇所に内側食材を局在させられないことがある。
【0006】
その結果、本来であれば外側食材の内部に封入されるべき内側食材が、意図せずに外側食材の表面に露出してしまうことがある。また外側食材の内部のうち本来予定されていない外側食材の表面近くに内側食材が存在する場合、その後の調理等の処理において加熱されたり圧力が加えられたりすることで、外側食材に穴が空いてしまったり、内側食材が外側食材から漏れ出したりすることがある。
【0007】
上述のような内側食材の意図しない伸びを防ぐために、内側食材を切断可能なシャッターなどの特殊な切断機構を、内側食材を吐出するノズル吐出口の近傍に設けることも考えられる。しかしながら、そのような特殊な切断機構を設けることは、装置構成の複雑化及び大型化を招き、装置コストが増大し、切断機構のメンテナンスも必要になる。
【0008】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡素な装置構成によって、内側食材(充填食材)を外側食材(ベース食材)の内部の所望箇所に精度良く局在させるのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、ベース食材を保持するベース食材保持部と、充填食材を吐出する吐出口を有し且つ第1方向に延在する食材吐出ノズルであって、吐出口が第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズルと、ベース食材保持部が保持するベース食材の内部に位置する吐出口から充填食材を吐出した後、ベース食材が吐出口に対して第1方向へ相対的に移動するように、ベース食材保持部が保持するベース食材と食材吐出ノズルとを相対的に移動させる移動部と、を備える食材充填装置に関する。
【0010】
本開示の他の態様は、ベース食材の内部に充填食材を吐出するための食材吐出ノズルであって、充填食材を吐出する吐出口を有し、且つ、第1方向に延在し、吐出口は、第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズルに関する。
【0011】
本開示の他の態様は、上記の食材充填装置と、食材充填装置から送られてくるベース食材及び充填食材の成形を行って、ベース食材と当該ベース食材の内部に位置する充填食材とを含む成形食品を作る成形装置と、を備える食品製造装置に関する。
【0012】
本開示の他の態様は、第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、吐出口から充填食材を吐出する工程と、吐出口から充填食材を吐出した後、ベース食材が、ベース食材の内部に位置している吐出口に対して第1方向へ相対的に移動するように、ベース食材と食材吐出ノズルとを相対的に移動させる工程と、を含む食材充填方法に関する。
【0013】
本開示の他の態様は、第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、吐出口から充填食材を吐出する工程と、吐出口から充填食材を吐出した後、ベース食材が、ベース食材の内部に位置している吐出口に対して第1方向へ相対的に移動するように、ベース食材と食材吐出ノズルとを相対的に移動させて、ベース食材と、当該ベース食材の内部に位置する充填食材とを有する封入食品を生成する工程と、を含む食品製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、簡素な装置構成によって、内側食材(充填食材)を外側食材(ベース食材)の内部の所望箇所に精度良く局在させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、封入食品の一例を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す断面線II-IIに沿った封入食品の断面図である。
図3図3は、図1に示す断面線III-IIIに沿った封入食品の断面図である。
図4図4は、食材充填装置の一例を示す上面図である。
図5図5は、図4に示す食材ガイド部の内側の装置構成を示す側方図である。
図6図6は、図4に示す食材ガイド部の内側の装置構成を示す側方図である。
図7図7は、食材ガイド部の内側の装置構成を示す側方図であり、各食材吐出ノズルから吐出された充填食材の経時的な状態変化を示す。
図8図8は、食材ガイド部の内側の装置構成を示す側方図であり、各食材吐出ノズルから吐出された充填食材の経時的な状態変化を示す。
図9図9は、食材ガイド部の内側の装置構成を示す側方図であり、各食材吐出ノズルから吐出された充填食材の経時的な状態変化を示す。
図10図10は、食品製造装置の一例を示す部分断面図である。
図11図11は、食品製造装置の一例を示す部分断面図である。
図12図12は、食品製造装置の一例を示す部分断面図である。
図13図13は、第1変形例に係る食材充填装置の一例の概略構成を示す図である。
図14図14は、第1変形例に係る食材充填装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本開示の典型的な実施形態について説明する。
【0017】
以下の実施形態では、一例として、内部にチーズが封入されたハンバーグ(すなわちチーズインハンバーグ)を封入食品として製造するための装置及び方法について説明する。ただし本開示の装置及び方法を適用可能な食品は限定されず、任意の食品に対して本開示の装置及び方法を適用可能である。
【0018】
以下の説明において、特に断りがない限り、「上流」及び「下流」の用語は、通常の装置稼働時における食材(ベース食材及び充填食材)及び食品(封入食品)の移動方向(搬送方向)を基準とする。また「高さ方向」は重力が作用する鉛直方向に沿う方向であり、「水平方向」は高さ方向と垂直を成す方向である。
【0019】
[封入食品]
図1は、封入食品F0の一例を示す平面図である。図2は、図1に示す断面線II-IIに沿った封入食品F0の断面図である。図3は、図1に示す断面線III-IIIに沿った封入食品F0の断面図である。
【0020】
封入食品F0は、ベース食材Fbと、ベース食材Fbの内部に位置する充填食材Fcとを有する。封入食品F0がチーズインハンバーグである場合、例えばペースト状の混合練り肉がベース食材Fbとして用いられ、ペースト状のチーズが充填食材Fcとして用いられる。
【0021】
封入食品F0を製造するためにベース食材Fbの内部に充填食材Fcを充填する際、充填食材Fcをベース食材Fbの内部の所望箇所に局在させることが求められる。図1図3に示す例では、ベース食材Fbの内部の中央部にのみ、充填食材Fcが局在させられる。
【0022】
そのため、ベース食材Fbの外部に充填食材Fcが露出しないように、ベース食材Fbの内部の所望箇所に充填食材Fcを精度良く充填することが求められる。
【0023】
しかしながらペースト状チーズのような充填食材Fcが用いられる場合、ベース食材Fbの内部に吐出された充填食材Fcが伸びて、ノズルから適切に分離されないことがある。その結果、伸びた充填食材Fcがベース食材Fbの内部の意図しない箇所にも存在したり、ベース食材Fbの表面に充填食材Fcが出現したりすることがある。
【0024】
以下に説明する本実施形態の食材吐出ノズルによれば、シャッターなどの特殊な切断機構を用いることなく、簡素な構造で充填食材Fcを適切に切断して、ベース食材Fbの内部の所望箇所に充填食材Fcを精度良く封入することができる。
【0025】
[食材吐出ノズル、食材充填装置及び食材充填方法]
図4は、食材充填装置10の一例を示す上面図である。図5及び図6は、図4に示す食材ガイド部11の内側の装置構成を示す側方図である。
【0026】
図5では、紙面奥側に位置する食材吐出ノズル12が、紙面手前側に位置する食材吐出ノズル12と重なって隠れているため、示されていない。図6では、紙面手前側に位置する食材吐出ノズル12の図示が省略されており、紙面奥側に位置する食材吐出ノズル12が示されている。
【0027】
図4図6に示す食材充填装置10は、長手方向(第1方向)Dに延び且つ中空部Sを有する食材ガイド部11と、中空部Sに設けられ長手方向Dに延在する複数の(本例では4つの)食材吐出ノズル12と、を備える。
【0028】
食材ガイド部11は、中空部Sに充填されるベース食材Fbを保持するベース食材保持部として働く。本実施形態の食材ガイド部11は、後述のように、中空部Sにおけるベース食材Fbを、食材ガイド部11の吐出開口部25に向かう方向(図5及び図6の上方向)に案内する。
【0029】
各食材吐出ノズル12は、長手方向Dとは異なる方向(第2方向)に開口する吐出口20を有する。図4図6に示す各食材吐出ノズル12の吐出口20は、長手方向Dと垂直を成す方向に開口する。吐出口20の開口には、シャッターなどの開閉機構は設けられていない。
【0030】
各食材吐出ノズル12は、吐出口20よりも先端側に位置し且つ吐出口20に隣り合って設けられる閉塞部21を有する。すなわち、各食材吐出ノズル12は、先端側部分で長手方向Dに開口していない。閉塞部21は、対応の食材吐出ノズル12によって長手方向Dに案内される充填食材Fcの移動をブロックして、対応の吐出口20からの充填食材Fcの吐出を促す。
【0031】
このように充填食材Fcが充填される各食材吐出ノズル12の内部通路は、長手方向Dの先端側部分で閉塞部21により閉塞され、対応の食材吐出ノズル12の側部において開口する吐出口20につながる。
【0032】
各食材吐出ノズル12は、図5及び図6において矢印で示すように、充填食材Fcを長手方向Dに案内した後、長手方向Dと垂直を成す方向に開口する吐出口20から充填食材Fcを吐出する。このように長手方向Dと垂直を成す方向に開口する吐出口20からの充填食材Fcの主たる吐出方向は、長手方向Dとは異なる方向である。
【0033】
実際には、中空部Sにベース食材Fbが充填されている状態で、吐出口20から充填食材Fcが吐出される。したがって各食材吐出ノズル12は、吐出口20からベース食材Fbの内部に向かって、長手方向Dと垂直を成す方向へ充填食材Fcを吐出する。
【0034】
なお各食材吐出ノズル12は、必ずしも全体が中空部Sに位置している必要はない。各食材吐出ノズル12のうち少なくとも吐出口20を含む部分(本例では各食材吐出ノズル12の先端部を含む部分)が、中空部Sに設けられていればよい。
【0035】
各食材吐出ノズル12の吐出口20の具体的な開口方向は限定されない。食材ガイド部11によって案内されるベース食材Fbの内部において充填食材Fcを局在させたい箇所に応じて、各食材吐出ノズル12の吐出口20の具体的な開口方向が決められる。
【0036】
本例では、全ての食材吐出ノズル12の吐出口20が、食材ガイド部11の中心軸線Axに向かう内向きに開口する。これにより、後述のように、それぞれの食材吐出ノズル12の吐出口20から吐出される充填食材Fcが、ベース食材Fbの内部(特に長手方向Dと垂直を成す方向に関するベース食材Fbの中央部)で合流して一体の塊を形成しうる。
【0037】
なお図5に示されている紙面手前側に位置する食材吐出ノズル12の吐出口20は、紙面の奥側に向かって開口するため、図5に示されていない。一方、図6に示されている紙面奥側に位置する食材吐出ノズル12の吐出口20は、紙面手前側に向かって開口する。
【0038】
図7図9は、食材ガイド部11の内側の装置構成を示す側方図であり、各食材吐出ノズル12から吐出された充填食材Fcの経時的な状態変化を示す。図7図9では、図6と同様に、紙面手前側に位置する食材吐出ノズル12の図示が省略されている。
【0039】
中空部Sにベース食材Fbが充填されている状態で、各食材吐出ノズル12の吐出口20から充填食材Fcが吐出される(図7参照)。
【0040】
本例では、内向きに開口する各吐出口20から、ベース食材Fbの内部に向かって充填食材Fcが吐出される。そのため、それぞれの吐出口20から吐出された充填食材Fcがベース食材Fbの内部で合流して、全ての吐出口20によって囲まれる範囲において一体的な充填食材Fcの塊を形成しうる。
【0041】
また本例では、中空部Sに充填されるベース食材Fbの送り出しが停止している状態で、各吐出口20から充填食材Fcが吐出される。すなわち各食材吐出ノズル12は、ベース食材Fbが各食材吐出ノズル12に対して相対的に停止している状態で、各吐出口20からベース食材Fbの内部に充填食材Fcを吐出する。
【0042】
その結果、各吐出口20から吐出される充填食材Fcは、長手方向Dへの広がりが抑えられ、ベース食材Fbの内部の所望箇所において精度良く局在することができる。
【0043】
そして各食材吐出ノズル12から所望量の充填食材Fcがベース食材Fbの内部に吐出された後、図8に示すように各食材吐出ノズル12からの充填食材Fcの吐出が停止している状態で、中空部S内のベース食材Fbが長手方向Dに移動させられる。
【0044】
すなわち食材ガイド部11が保持するベース食材Fbの内部に各吐出口20から充填食材Fcが吐出された後、ベース食材移動部(後述の図10の符号「33」参照)が、中空部Sにおけるベース食材Fbを長手方向Dに移動させる。これにより、ベース食材Fbが各吐出口20に対して長手方向Dへ相対的に移動するように、食材ガイド部11が保持するベース食材Fbと各食材吐出ノズル12とが相対的に移動させられる。
【0045】
その結果、図9に示すように、ベース食材Fbの内部に吐出された充填食材Fcの塊が、ベース食材Fbとともに、吐出開口部25に向かって長手方向Dに移動される。
【0046】
この際、各食材吐出ノズル12(特に各閉塞部21)が、充填食材Fcの塊を各食材吐出ノズル12から切断する切断デバイスとして働く。そのため充填食材Fcの塊は、ベース食材Fbとともに長手方向Dへ移動することで、各食材吐出ノズル12から切断分離される。なお、各食材吐出ノズル12において吐出口20から外部に露出しているが吐出口20から吐出されていない充填食材Fcは、吐出口20から吐出された充填食材Fcから切断分離され、対応の食材吐出ノズル12に留まる。
【0047】
各食材吐出ノズル12における充填食材Fcの切断性能を向上させる観点から、各食材吐出ノズル12のうち吐出口20を区画する開口縁部の少なくとも一部は、先鋭形状を有していてもよい。そのような先鋭形状の具体的な形状や、開口縁部のうち先鋭形状を有する範囲は限定されない。
【0048】
典型的には、当該開口縁部のうち、ベース食材Fbとともに充填食材Fcが送られる方向の側(すなわち下流側)の部分が、当該充填食材Fcが送られる方向と逆向き(すなわち図7図9の下向き)に尖った先鋭形状を有することが好ましい。したがって本例では、各食材吐出ノズル12の閉塞部21のうち吐出口20を区画する部分が、先鋭形状を有していてもよい。
【0049】
その後、充填食材Fcの塊は、ベース食材Fbとともに、食材ガイド部11の下流側に設けられる成形装置(後述の図10の符号「2」参照)に送られて成形され、成形食品(封入食品)に加工される。
【0050】
上述の一連の処理(図7図9参照)を繰り返すことで、ベース食材Fbの内部への充填食材Fcの充填と、ベース食材Fb及び充填食材Fcの成形装置への送り出しとが、断続的(間欠的)に行われる。
【0051】
以上説明したように本実施形態によれば、各食材吐出ノズル12の吐出口20の開口方向が、ベース食材Fbの移動方向(すなわち各食材吐出ノズル12とベース食材Fbとの間の相対移動方向)とは異なる方向に向けられている。そのため充填食材Fcは、吐出口20から吐出された後にベース食材Fbとともに長手方向Dへ移動させられることで、各食材吐出ノズル12(特に吐出口20を区画する開口縁部)によって切断され、糸引きとも呼ばれうる充填食材Fcの伸びが抑制される。
【0052】
このようにして充填食材Fcの伸びが抑制されることで、充填食材Fcをベース食材Fbの内部の所望箇所に高精度に局在させることができる。また充填食材Fcの伸びが抑制されることで、各食材吐出ノズル12の外壁に対する充填食材Fcの付着及び滞留が低減し、各食材吐出ノズル12を衛生的に保つのに有利である。
【0053】
このように本実施形態では、充填食材Fcを吐出する食材吐出ノズル12が充填食材Fcを切断する切断デバイスとしても機能するため、専用の特殊な切断機構が不要であり、装置構成を簡素化できる。専用の切断機構が設けられないので、そのような切断機構によってもたらされるような充填食材Fc及び/又はベース食材Fbに対するダメージがなく、充填食材Fc及びベース食材Fbの品質を良好に維持できる。
【0054】
また充填食材Fcの長手方向Dへの送り出し処理が、充填食材Fcの各食材吐出ノズル12からの切断分離処理も兼ねているため、処理が簡素化され、処理の高速化を促進できる。例えば、単位時間当たりのベース食材Fbの内部への充填食材Fcの吐出数(充填数)を増大させて、歩留まりの向上を促すことが可能である。
【0055】
また食材ガイド部11においてベース食材Fbを送り出すタイミングと、各食材吐出ノズル12から充填食材Fcが吐出されるタイミングとが、互いにずらされている。これにより、静止状態のベース食材Fbの内部に充填食材Fcを吐出でき、充填食材Fcをベース食材Fbの内部の所望箇所に精度良く吐出することができる。また各食材吐出ノズル12から充填食材Fcが吐出されていない状態で、ベース食材Fb及び充填食材Fcが長手方向Dの下流に搬送されるため、充填食材Fcの長手方向Dへの伸びを抑制することができる。
【0056】
ただし各食材吐出ノズル12から充填食材Fcを吐出する際に、食材ガイド部11内のベース食材Fbは必ずしも静止状態に置かれていなくてもよい。すなわち各食材吐出ノズル12は、中空部Sにおいてベース食材Fbが長手方向Dに移動している状態で、充填食材Fcを吐出してもよい。この場合、意図的に、食材ガイド部11内のベース食材Fbの内部において充填食材Fcを長手方向Dへ所望距離にわたって延在させることが可能であり、吐出口20の長手方向サイズよりも広い範囲に充填食材Fcを局在させることができる。このような場合であっても、各吐出口20からの充填食材Fcの吐出が停止している状態で、ベース食材Fbを長手方向Dに移動させることで、ベース食材Fb内の充填食材Fcの伸びを抑制しつつ当該充填食材Fcを適切に切断できる。
【0057】
また本実施形態の食材充填装置10は簡素な構成を有し、部品点数も少ない。そのため食材充填装置10の小型化を促して、食材充填装置10の省スペース設計も可能である。
【0058】
また食材充填装置10の分解、洗浄及び組み立ての処理を簡単に行うことができ、それらの処理に要する人員を削減したり、それらの処理に要する時間を短縮したりすることができる。
【0059】
またベース食材Fbを送り出すベース食材移動部(図10の符号「33」参照)及び充填食材Fcを送り出す充填食材移動部(図10の符号「34」参照)の駆動条件に応じて、ベース食材Fbの量に対する充填食材Fcの充填量の割合を高精度に制御できる。またベース食材Fbの量に対する充填食材Fcの充填量の割合の変更に対しても、ベース食材移動部及び充填食材移動部の駆動条件を変更することで、柔軟に対応することが可能である。なお、ベース食材Fbに対する充填食材Fcの充填重量割合は限定されず、例えば15%以下であってもよいし、10%以下であってもよい。
【0060】
上述の例では4つの食材吐出ノズル12が設けられているが、食材吐出ノズル12の数は限定されない。食材吐出ノズル12が1つのみ設けられてもよいし、2つ以上の任意の数(例えば2つ~8つ)の食材吐出ノズル12が設けられてもよい。
【0061】
複数の食材吐出ノズル12が設けられる場合、隣り合う食材吐出ノズル12(特に吐出口20)は互いに離れて位置づけられていてもよく、例えば2mm以上の間隔を有する。隣り合う食材吐出ノズル12間の間隔は一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0062】
複数の食材吐出ノズル12から吐出される充填食材Fcをベース食材Fbの内部で合流させる場合、例えば円周上に等角度間隔で複数の食材吐出ノズル12が配置されてもよい。また各食材吐出ノズル12の吐出口20が他の食材吐出ノズル12の吐出口20に対向するように配置され、各食材吐出ノズル12から吐出される充填食材Fc同士の合流が促されてもよい。この場合、複数の食材吐出ノズル12は、吐出口20が互いに向かい合って配置される食材吐出ノズル12のペアを1又は複数含み、偶数本の食材吐出ノズル12によって構成されてもよい。
【0063】
ただし複数の食材吐出ノズル12から吐出される充填食材Fcは、必ずしも互いに合流しなくてもよく、ベース食材Fbの内部のうちのお互いに離れた箇所で分散的に配置されてもよい。この場合、例えば、1以上の食材吐出ノズル12の吐出口20の開口方向は、食材ガイド部11(特に中空部Sを区画する内壁面)に向けられてもよい。
【0064】
このように食材吐出ノズル12の吐出口20の開口方向は、吐出口20が食材吐出ノズル12の長手方向Dと垂直を成す方向に開口していれば、限定されない。
【0065】
上述のように食材吐出ノズル12の設置数及び設置位置、及び吐出口20の開口方向を調整することで、ベース食材Fbの内部のうちの所望の1又は複数の箇所に、充填食材Fcを精度良く充填することができる。すなわち充填食材Fcを、ベース食材Fbの内部において1箇所に局在させたり、複数箇所に分散配置させたりすることができる。
【0066】
また各食材吐出ノズル12の吐出口20と、食材ガイド部11の吐出開口部25との間の長手方向Dの距離は限定されない。ただし当該距離が長い方が、各食材吐出ノズル12からの充填食材Fcの吐出間隔の変更に対して柔軟に適応させやすい。
【0067】
また各食材吐出ノズル12の吐出口20の長手方向Dのサイズは限定されない。短時間で大量の充填食材Fcを各食材吐出ノズル12から吐出する観点からは、吐出口20の開口面積は大きい方が好ましい。ただし吐出口20の長手方向Dのサイズは、ベース食材Fbにおいて封入される充填食材Fcの長手方向Dのサイズに応じて決められ、典型的には後述の成形後の成形食品(封入食品)の厚みの1/2以下である。
【0068】
また上述の例では各食材吐出ノズル12が1つの吐出口20を有しているが、各食材吐出ノズル12は2以上の吐出口20を有してもよい。
【0069】
また各食材吐出ノズル12の外径(すなわち各食材吐出ノズル12のうち中空部Sに位置する部分の、長手方向Dと垂直を成す方向の外径)は小さい方が好ましく、典型的には6mm~10mm程度である。
【0070】
また食材ガイド部11の中空部Sの「長手方向Dと垂直を成す方向の断面積」に対する、全ての食材吐出ノズル12の「長手方向Dと垂直を成す方向の断面積」の合計の割合は、小さい方が好ましく、典型的には22%以下である。
【0071】
またベース食材移動部(図10の符号「33」参照)によって食材ガイド部11内(すなわち中空部S)に供給されるベース食材Fbの圧力(供給圧力)は限定されない。ただしベース食材Fbの供給圧力は、各食材吐出ノズル12から吐出される充填食材Fcの圧力(吐出圧力;充填食材移動部(図10の符号「34」参照)によって各食材吐出ノズル12に供給される充填食材Fcの圧力)よりも十分に小さいことが好ましい。
【0072】
[食品製造装置及び食品製造方法]
次に、上述の食材充填装置10から送られてくるベース食材Fb及び充填食材Fcの成形を行って成形食品(すなわち上述の封入食品)を製造する食品製造装置及び食品製造方法の一例について説明する。
【0073】
図10図12は、食品製造装置1の一例を示す部分断面図である。
【0074】
図10図12に示す食品製造装置1は、食材充填装置10、成形装置2として働くカッター部45(食品切断部)、及び搬送部50(食品搬送部)を備える。
【0075】
食材充填装置10は、支持フレーム40の一方側(図10図12の上側)に位置づけられつつ、支持フレーム40によって固定的に支持される。食材充填装置10は、上述の食材ガイド部11及び複数(4つ)の食材吐出ノズル12に加え、食材ガイド部11に接続されるベース食材移動部33と、各食材吐出ノズル12に接続される充填食材移動部34とを具備する。
【0076】
ベース食材移動部33は食材ガイド部11にベース食材Fbを送り出し、充填食材移動部34は各食材吐出ノズル12に充填食材Fcを送り出す。ベース食材移動部33及び充填食材移動部34の具体的な構成は限定されない。例えば、ベース食材移動部33及び充填食材移動部34は、ベース食材Fb及び充填食材Fcを送り出すためのポンプや弁を具備しうる。
【0077】
食材ガイド部11の吐出開口部25は、下方向に向けられた状態で支持フレーム40のフレーム開口部41に対面しており、食材ガイド部11の中空部S及びフレーム開口部41は連続した一体空間を構成する。食材ガイド部11のうち吐出開口部25を形成する端部が、支持フレーム40に取り付けられる。吐出開口部25の直径(水平方向サイズ)はフレーム開口部41の直径以下のサイズを有し、吐出開口部25の全体が、支持フレーム40によって覆われることなく、フレーム開口部41に対して露出される。
【0078】
カッター部45及び搬送部50は、支持フレーム40の他方側(図10図12の下側)に位置づけられ、食材充填装置10よりも下方に配置される。
【0079】
カッター部45は、食材充填装置10から送られてくるベース食材Fb及び充填食材Fcの成形を行って、ベース食材Fbと、当該ベース食材Fbの内部に位置する充填食材Fcとを含む封入食品F0を作る。すなわち本例のカッター部45は、食材充填装置10から送られてくる食材(特にベース食材Fb)を切断することで、ベース食材Fb及び充填食材Fcの成形を行う成形装置2として働く。
【0080】
本例のカッター部45は、開閉孔45cを有するカッター本体部45aと、カッター本体部45aにより支持され開閉孔45cを開閉する開閉カッター45bと、を有する。カッター本体部45aは、支持フレーム40に対して固定的に取り付けられる。開閉孔45cは、支持フレーム40のフレーム開口部41に対面しており、開閉孔45cの直径(水平方向サイズ)はフレーム開口部41の直径以上のサイズを有する。
【0081】
開閉カッター45bは、カッター本体部45aからの水平方向への突出量が変えられ、その突出量に応じて、開閉孔45cを完全に閉じる閉状態と、開閉孔45cを開く開状態とに置かれる。開閉カッター45bが開状態に置かれている間の開閉孔45cの実質的な開口直径(すなわち開閉カッター45bにより区画される開口の水平方向サイズ)は、フレーム開口部41の直径以上のサイズを有する。これにより開閉カッター45bが開状態に置かれている間、フレーム開口部41の全体が、開閉カッター45bによって覆われることなく、搬送部50に対して露出される。開閉カッター45bは、開状態から閉状態に置かれることによってベース食材Fbを切断可能な形状を有するが、開閉カッター45bの具体的な形状や開閉駆動方式は限定されない。
【0082】
搬送部50は、カッター部45によって作り出される封入食品F0を後段に送る装置である。本例の搬送部50は、食材充填装置10及びカッター部45の下方において水平方向に移動する搬送移動部(例えば無端状ベルト)を具備する。カッター部45によって作り出された封入食品F0は、搬送部50の搬送移動部に載せられ、当該搬送移動部とともに後段に向けて移動する。
【0083】
なお上述の食材充填装置10(例えばベース食材移動部33及び充填食材移動部34)、カッター部45(例えば開閉カッター45b)、及び搬送部50は相互に連関しながら動作し、例えば、図示しない制御装置の制御下で駆動されてもよい。
【0084】
次に、上述の食品製造装置1によって行われる食品製造方法の一例を説明する。
【0085】
まず図10に示すように、ベース食材Fbの内部に所望量の充填食材Fcが充填される。すなわち食材ガイド部11の中空部Sの全体がベース食材Fbで満たされており、当該ベース食材Fbの内部に各食材吐出ノズル12の吐出口20が位置している状態で、各吐出口20から所望量の充填食材Fcが吐出される。各吐出口20から充填食材Fcが吐出されている間、ベース食材移動部33から食材ガイド部11の中空部Sにベース食材Fbは供給されておらず、食材ガイド部11の中空部Sにおいてベース食材Fbは静止している。
【0086】
そして各吐出口20から充填食材Fcが吐出された後、ベース食材Fbが、ベース食材Fbの内部に位置している各吐出口20に対して長手方向Dへ相対的に移動するように、ベース食材Fbと充填食材Fcとが相対的に移動させられる。これによりベース食材Fbと、当該ベース食材Fbの内部に位置する充填食材Fcとを有する封入食品F0が生成される。
【0087】
すなわち、各吐出口20から所望量の充填食材Fcがベース食材Fb内に吐出された後、ベース食材移動部33から食材ガイド部11の中空部Sに所定量の新たなベース食材Fbが供給される。その結果、ベース食材Fb内に吐出された充填食材Fcは、ベース食材Fbとともに吐出開口部25に向かって移動し、各食材吐出ノズル12から適切に切り離される。
【0088】
このようにしてベース食材移動部33から食材ガイド部11の中空部Sに新たなベース食材Fbが供給される間、開閉カッター45bは開状態に置かれている。そのため図11に示すように、食材ガイド部11の吐出開口部25から吐出されるベース食材Fb及び充填食材Fcは、支持フレーム40のフレーム開口部41及びカッター部45の開閉孔45cを貫通するように垂れ下がる。
【0089】
そしてベース食材移動部33から食材ガイド部11の中空部Sに所定量のベース食材Fbが供給されると、ベース食材移動部33からのベース食材Fbの供給は停止され、開閉カッター45bは開状態から閉状態に置かれる。これにより図12に示すように、食材ガイド部11の中空部Sから垂れ下がるベース食材Fbの先端部分が、開閉孔45cを内側に含んだ状態で開閉カッター45bにより切り離されて、搬送部50の搬送移動部上に着地する。
【0090】
この際、ベース食材Fbとともに下流に送られる充填食材Fcの全体が、開閉カッター45bよりも低い位置(すなわち開閉カッター45bよりもベース食材Fbの先端側に近い位置)に移動した後に、開閉カッター45bは開状態から閉状態に変更される。これにより開閉カッター45bは、充填食材Fcの全体がベース食材Fbの内部に位置している状態で、封入食品F0(ベース食材Fb及び充填食材Fc)を切り離すことができる。なお開閉カッター45bにより切り離されたベース食材Fb及び充填食材Fcが搬送部50の搬送移動部に着地する際に、当該搬送移動部は一時的に停止していてもよいし、継続的に後段に向けて移動していてもよい。
【0091】
このようにして搬送部50上に着地したベース食材Fb及び充填食材Fcは、封入食品F0(成形食品)として、搬送部50によって後段に送られる。
【0092】
上述の一連の処理を繰り返し行うことで、食材充填装置10は、ベース食材Fbの内部に充填食材Fcが封入された封入食品F0を連続的に作り出して、下流に送ることができる。
【0093】
[実施例]
本件発明者は、実際に、上述の食品製造装置1及び食品製造方法を使って様々な封入食品F0を試作した。
【0094】
本件発明者が試作した代表的な封入食品F0を、以下の実施例1~実施例3において示す。
【0095】
[実施例1]
本例では、ベース食材Fbとして牛肉及び豚肉を含むペースト状の混合練り肉を使用し、充填食材Fcとしてペースト状のチーズを使用し、106~107g(グラム)のベース食材Fbの内部に11~12gの充填食材Fcが封入された封入食品F0を作った。
【0096】
当該条件下で食品製造装置1により作られた全ての封入食品F0を、本件発明者が確認した。その結果、いずれの封入食品F0の断面においても、充填食材Fcの糸引き(伸び)が目視では確認されず、ベース食材Fbの内部に吐出された充填食材Fcの実質的に全てが、ベース食材Fbの内部の所望箇所に適切に位置していた。
【0097】
[実施例2]
本例では、ベース食材Fbとして豆腐ハンバーグ用のペースト状の練り豆腐を使用し、充填食材Fcとしてペースト状のチーズを使用し、106~107gのベース食材Fbの内部に11~12gの充填食材Fcが封入された封入食品F0を作った。
【0098】
当該条件下で食品製造装置1により作られた全ての封入食品F0を、本件発明者が確認した。その結果、いずれの封入食品F0の断面においても、充填食材Fcの糸引き(伸び)が目視では確認されず、ベース食材Fbの内部に吐出された充填食材Fcの実質的に全てが、ベース食材Fbの内部の所望箇所に適切に位置していた。
【0099】
[実施例3]
本例では、ベース食材Fbとして、牛肉及び豚肉を含むペースト状混合練り肉を使用し、充填食材Fcとして、ベース食材Fbと同じペースト状混合練り肉に植物油を添加したものを使用した。具体的には、106~107g(グラム)のベース食材Fbの内部に11~24gの充填食材Fcが封入された封入食品F0を作った。
【0100】
当該条件下で食品製造装置1により作られた全ての封入食品F0を本件発明者が確認した。その結果、いずれの封入食品F0の断面においても、充填食材Fcの糸引き(伸び)が目視では確認されず、ベース食材Fbの内部に吐出された充填食材Fcの実質的に全てが、ベース食材Fbの内部の所望箇所に適切に位置していた。
【0101】
本例において、充填食材Fc(混合練り肉)は多量の油脂分を含み且つ固形材料を含有していたが、充填食材Fcとしてペースト状チーズを用いた上述の実施例1及び実施例2の封入食品F0と同様に、良好な品質を有する封入食品F0が得られた。
【0102】
[第1変形例]
上述の実施形態では各食材吐出ノズル12がベース食材Fbを搬送する食材ガイド部11内に設置されているが、食材充填装置10は当該構成には限定されない。
【0103】
例えば、各食材吐出ノズル12がベース食材Fbに対して移動させられることで、ベース食材保持部が保持するベース食材Fbと各食材吐出ノズル12とを相対的に移動させてもよい。
【0104】
図13及び図14は、第1変形例に係る食材充填装置10の一例の概略構成を示す図である。
【0105】
図13及び図14に示す例では、搬送ベルト150(食品搬送部)によってベース食材Fbの塊が間欠的に搬送される。
【0106】
本変形例においても、各食材吐出ノズル12は長手方向Dに延在し、長手方向Dと垂直を成す方向に各吐出口20が開口する。
【0107】
各食材吐出ノズル12及び充填食材移動部34は、ノズル駆動部160(移動部)によって、食材吐出ノズル12の長手方向Dへ移動可能に設けられ、退避位置(図13参照)及び吐出位置(図14参照)に配置される。
【0108】
図13及び図14に示す例において、食材吐出ノズル12の長手方向Dは、高さ方向に一致している。ノズル駆動部160は、ノズル駆動部160の本体部からの高さ方向(特に下方向)への突出量が可変な伸縮ロッド161を有する。充填食材移動部34及び各食材吐出ノズル12は伸縮ロッド161に取り付けられ、伸縮ロッド161の突出量に応じて高さ方向(すなわち長手方向D)に移動させられて退避位置及び吐出位置に配置される。
【0109】
図13に示すように各食材吐出ノズル12が退避位置に配置されることで、ベース食材保持部として働く搬送ベルト150が保持するベース食材Fbの外部(本例では上方)に、各食材吐出ノズル12の吐出口20が位置づけられる。一方、図14に示すように各食材吐出ノズル12が吐出位置に配置されることで、搬送ベルト150が保持するベース食材Fbの内部に各食材吐出ノズル12の吐出口20が位置づけられる。
【0110】
上述の構成を有する食材充填装置10において、搬送ベルト150はベース食材Fbを下流に向けて間欠的に搬送し、退避位置に配置されている各食材吐出ノズル12の真下にベース食材Fbが到達したタイミングで、ベース食材Fbの搬送を間欠的に停止する。
【0111】
そしてベース食材Fbの搬送が間欠的に停止している間に、伸縮ロッド161が伸長されて各食材吐出ノズル12が退避位置から吐出位置に配置され、各食材吐出ノズル12の吐出口20がベース食材Fbの内部に位置づけられる。
【0112】
そしてベース食材Fbの搬送が間欠的に停止している間に、吐出位置に配置されている各食材吐出ノズル12の吐出口20からベース食材Fbの内部に充填食材Fcが吐出される。そして各食材吐出ノズル12からの充填食材Fcの吐出が完了した後、ベース食材Fbの搬送が間欠的に停止している間に、伸縮ロッド161が短縮されて各食材吐出ノズル12が吐出位置から退避位置に配置される。
【0113】
このように、各食材吐出ノズル12の吐出口20がベース食材Fbの内部に位置している状態で、各吐出口20から充填食材Fcが吐出される。そして各吐出口20から充填食材Fcが吐出された後、ベース食材Fbが、ベース食材Fbの内部に位置している吐出口20に対して長手方向Dへ相対的に移動するように、ベース食材Fbと各食材吐出ノズル12とが相対的に移動させられる。
【0114】
上述のようにして各食材吐出ノズル12が退避位置に配置された後、搬送ベルト150が再び間欠的に走行することで、ベース食材Fbの内部に充填食材Fcが封入された封入食品F0は下流に送られる。そして、搬送ベルト150により搬送される新たなベース食材Fbが、退避位置に配置されている各食材吐出ノズル12の真下に到達して間欠的に停止させられる。
【0115】
上述の一連の処理を繰り返し行うことで、本変形例の食材充填装置10は、ベース食材Fbの内部に充填食材Fcが封入された封入食品F0を連続的に作り出して、下流に送ることができる。
【0116】
上述のように本変形例では、ノズル駆動部160が「ベース食材Fbと各食材吐出ノズル12とを相対的に移動させる移動部」として機能する。すなわち搬送ベルト150が保持するベース食材Fbの内部に位置する各吐出口20から充填食材Fcを吐出した後、ノズル駆動部160が各食材吐出ノズル12を長手方向Dに移動させる。その結果、ベース食材Fbが、各吐出口20に対して長手方向Dへ相対的に移動させられる。
【0117】
したがって本変形例においても、各食材吐出ノズル12自身が、吐出口20から吐出された充填食材Fcを切断する切断機構として機能し、各食材吐出ノズル12の長手方向Dへの移動処理が、充填食材Fcの切断分離処理も兼ねる。そのため本変形例の食材充填装置10及び各食材吐出ノズル12も、簡素な装置構成によって、充填食材Fcをベース食材Fbの内部の所望箇所に精度良く局在させるのに有利である。
【0118】
[他の変形例]
上述の実施形態では、ベース食材Fb及び充填食材Fcを図10図12に示す食品製造装置1(特にカッター部45(成形装置2))によって成形して所望形状の封入食品F0を作り出すが、封入食品F0の成形は任意の成形装置及び成形方法を利用しうる。
【0119】
上述の図10図12に示す食品製造装置1では、食品切断装置であるカッター部45が成形装置2として設けられているが、成形装置2は任意の構成を有しうる。例えば、成形型(図示省略)を具備する成形装置2が、カッター部45とともに又はカッター部45の代わりに設けられていてもよい。
【0120】
また上述の図10図12に示す食品製造装置1では、ベース食材Fb及び充填食材Fcが食材ガイド部11の吐出開口部25から下方に向けて吐出されるが、吐出開口部25からのベース食材Fb及び充填食材Fcの吐出方向は限定されない。したがって食材ガイド部11の吐出開口部25は、例えば上方向又は水平方向に向けられていてもよい。
【0121】
本開示は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また上述の実施形態及び変形例の構成が、全体的に又は部分的に組み合わせられてもよい。
【0122】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0123】
[適用例]
上述の装置及び方法を適用可能なベース食材Fb、充填食材Fc及び封入食品F0は限定されない。例えば、流動性を有する食材全般をベース食材Fb及び充填食材Fcとして使用可能であり、ベース食材Fb及び充填食材Fcの各々は、固形物を全く含んでいなくてもよいし、固形物を含んでいてもよい。
【0124】
ベース食材Fbとして、例えばポンプや他の移送手段(「ベース食材移動部33」参照)により案内路(「食材ガイド部11」参照)において下流へ送り出されることが可能な流動性を有し且つ充填食材Fcの全体又は一部を包囲可能な任意の食材を使用しうる。典型的には、ベース食材Fbとして、例えば、米粉、小麦粉、豆腐、豆類或いは野菜類から作られる生地、ペースト状の肉、ペースト状の魚介類、餅、その他のペースト状食材、粘性を有する液状食材に和えられた細切れ食材、及び液状食材を使用しうる。
【0125】
充填食材Fcとして、例えばポンプや他の移送手段(「充填食材移動部34」参照)により案内路(「食材吐出ノズル12」参照)において下流へ送り出されることが可能な流動性を有し且つベース食材Fbの内部に充填可能な任意の食材を使用しうる。典型的には、充填食材Fcとして、例えばペースト状のチーズクリーム、肉、餡子、その他のペースト状食材、粘性を有する液状食材に和えられた細切れ食材、調味素材や野菜類や果実類を含むたれ類(例えばソース)、及び液状食材を使用しうる。
【0126】
封入食品F0として、例えばハンバーグ、饅頭、餅食品、及び液状食品を使用しうる。
【0127】
[付記]
上述からも明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0128】
[態様1]
ベース食材を保持するベース食材保持部と、
充填食材を吐出する吐出口を有し且つ第1方向に延在する食材吐出ノズルであって、前記吐出口が前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズルと、
前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の内部に位置する前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させる移動部と、を備える食材充填装置。
【0129】
[態様2]
前記第2方向は、前記第1方向と垂直を成す方向である態様1に記載の食材充填装置。
【0130】
[態様3]
前記ベース食材保持部は、前記第1方向に延び且つ前記ベース食材が充填される中空部を有する食材ガイド部を含み、
前記食材吐出ノズルのうちの少なくとも前記吐出口を含む部分は、前記中空部に設けられ、
前記移動部は、前記中空部における前記ベース食材を前記第1方向に移動させる態様1又は2に記載の食材充填装置。
【0131】
[態様4]
前記移動部は前記食材吐出ノズルを前記第1方向に移動させて、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の内部に前記吐出口が位置づけられる吐出位置と、前記ベース食材保持部が保持する前記ベース食材の外部に前記吐出口が位置づけられる退避位置と、に前記食材吐出ノズルを位置づける態様1又は2に記載の食材充填装置。
【0132】
[態様5]
前記食材吐出ノズルは、前記ベース食材が前記食材吐出ノズルに対して相対的に停止している状態で、前記吐出口から前記ベース食材の内部に前記充填食材を吐出する態様1~4のいずれかに記載の食材充填装置。
【0133】
[態様6]
前記食材吐出ノズルのうち前記吐出口を区画する開口縁部の少なくとも一部は先鋭形状を有する態様1~5のいずれかに記載の食材充填装置。
【0134】
[態様7]
前記食材吐出ノズルは複数設けられる態様1~6のいずれかに記載の食材充填装置。
【0135】
[態様8]
前記複数の食材吐出ノズルのうちの少なくとも2以上の前記食材吐出ノズルの前記吐出口から吐出される前記充填食材が前記ベース食材の内部で合流するように、前記複数の食材吐出ノズルは前記吐出口から前記ベース食材の内部に前記充填食材を吐出する態様7に記載の食材充填装置。
【0136】
[態様9]
ベース食材の内部に充填食材を吐出するための食材吐出ノズルであって、
前記充填食材を吐出する吐出口を有し、且つ、第1方向に延在し、
前記吐出口は、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する、食材吐出ノズル。
【0137】
[態様10]
態様1~8のいずれかに記載の食材充填装置と、
前記食材充填装置から送られてくる前記ベース食材及び前記充填食材の成形を行って、前記ベース食材と当該ベース食材の内部に位置する前記充填食材とを含む成形食品を作る成形装置と、を備える食品製造装置。
【0138】
[態様11]
第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、前記吐出口から充填食材を吐出する工程と、
前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が、前記ベース食材の内部に位置している前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させる工程と、を含む食材充填方法。
【0139】
[態様12]
第1方向に延在する食材吐出ノズルのうち、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に開口する吐出口がベース食材の内部に位置している状態で、前記吐出口から充填食材を吐出する工程と、
前記吐出口から前記充填食材を吐出した後、前記ベース食材が、前記ベース食材の内部に位置している前記吐出口に対して前記第1方向へ相対的に移動するように、前記ベース食材と前記食材吐出ノズルとを相対的に移動させて、前記ベース食材と、当該ベース食材の内部に位置する前記充填食材とを有する封入食品を生成する工程と、を含む食品製造方法。
【符号の説明】
【0140】
1 食品製造装置、2 成形装置、10 食材充填装置、11 食材ガイド部、12 食材吐出ノズル、20 吐出口、21 閉塞部、25 吐出開口部、33 ベース食材移動部、34 充填食材移動部、40 支持フレーム、41 フレーム開口部、45 カッター部、45a カッター本体部、45b 開閉カッター、45c 開閉孔、50 搬送部、150 搬送ベルト、160 ノズル駆動部、161 伸縮ロッド、Ax 中心軸線、D 長手方向、F 食品、F0 封入食品、Fb ベース食材、Fc 充填食材、S 中空部
図1
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