特開 2023-142560 バレル研磨装置及びバレル研磨方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023142560

(43)【公開日】2023-10-05

(54)【発明の名称】バレル研磨装置及びバレル研磨方法

(51)【国際特許分類】

   B24B 31/02 20060101AFI20230928BHJP

   B24B 31/12 20060101ALI20230928BHJP

【ＦＩ】

B24B31/02 B

B24B31/12 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022049513

(22)【出願日】2022-03-25

(71)【出願人】

【識別番号】000004204

【氏名又は名称】日本精工株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002147

【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】豊田 俊郎

(72)【発明者】

【氏名】金澤 顕禎

(72)【発明者】

【氏名】村田 良太

(72)【発明者】

【氏名】千布 剛敏

(72)【発明者】

【氏名】千賀 学

(72)【発明者】

【氏名】影山 健治

(72)【発明者】

【氏名】中島 勝悟

(72)【発明者】

【氏名】竹内 健司

(72)【発明者】

【氏名】佐藤 昭徳

(72)【発明者】

【氏名】宮崎 裕也

【テーマコード（参考）】

3C158

【Ｆターム（参考）】

3C158AA07

3C158AA11

3C158AA14

3C158AB01

3C158AB04

3C158AB08

3C158AC01

3C158CB03

(57)【要約】

【課題】研磨加工の効率を向上させること。
【解決手段】バレル研磨装置１に、底部１１と、筒状に形成されて底部１１から立設する壁部１２とを有し、壁部１２の内側に砥粒６０が収容されるバレル槽１０と、壁部１２の形状である筒状の中心をバレル槽１０の回転中心であるバレル槽回転中心ＣＢとしてバレル槽１０を回転させるバレル槽回転装置２０と、バレル槽１０に収容される砥粒６０に加工物７０を挿入させて加工物７０を支持する支持部材３０と、バレル槽１０に収容される砥粒６０に挿入され砥粒６０の流れを制御する整流部材４０と、を備え、バレル槽１０は、支持部材３０で支持する加工物７０と整流部材４０とに対して相対回転し、バレル槽１０の回転に伴って回転する砥粒６０が、整流部材４０により、バレル槽回転中心ＣＢを中心とする径方向において加工物７０が位置する側に流れるように整流される。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、
前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持する支持部材と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に挿入され前記砥粒の流れを制御する整流部材と、
を備え、
前記バレル槽は、前記支持部材で支持する前記加工物と前記整流部材とに対して相対回転し、
前記バレル槽の回転に伴って回転する前記砥粒が、前記整流部材により、前記バレル槽回転中心を中心とする径方向において前記加工物が位置する側に流れるように整流されるバレル研磨装置。

【請求項2】

前記整流部材は、前記径方向における前記加工物の位置に対して前記径方向における外側寄りの位置と内側寄りの位置とに配置される請求項１に記載のバレル研磨装置。

【請求項3】

前記整流部材は、前記径方向における前記加工物の位置に対して前記径方向における外側寄りの位置に配置される請求項１に記載のバレル研磨装置。

【請求項4】

前記支持部材は、個別に前記加工物を支持する前記支持部材が複数配置される請求項１から３のいずれか１項に記載のバレル研磨装置。

【請求項5】

前記整流部材は、前記バレル槽の回転方向における前記加工物の上流側で前記加工物の近傍に配置される請求項１から４のいずれか１項に記載のバレル研磨装置。

【請求項6】

前記バレル槽が前記バレル槽回転中心を中心として回転することにより、前記整流部材は、前記バレル槽に対して、前記支持部材で支持する前記加工物と共に相対的に回転する請求項１から５のいずれか１項に記載のバレル研磨装置。

【請求項7】

前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として前記支持部材を回転させる支持部材回転装置を備え、
前記支持部材回転装置は、前記バレル槽に対して前記バレル槽の軸心方向における前記底部が位置する側の反対側に配置されて前記バレル槽の回転時に回転をしない部材である固定部材に取り付けられ、
前記整流部材は、前記固定部材に取り付けられて前記バレル槽の軸心方向における前記底部が位置する側に向かって前記固定部材から延びる請求項１から６のいずれか１項に記載のバレル研磨装置。

【請求項8】

底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、
前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持する支持部材と、
前記バレル槽に収容される前記砥粒に挿入され前記砥粒の流れを制御する整流部材と、
を備え、前記支持部材で支持する前記加工物と前記整流部材とに対して前記バレル槽を相対回転させるバレル研磨装置を用いたバレル研磨方法であって、
前記バレル槽の回転に伴って回転する前記砥粒を、前記整流部材によって、前記バレル槽回転中心を中心とする径方向において前記加工物が位置する側に流れるように整流しながら前記砥粒によって前記加工物の研磨を行うバレル研磨方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、バレル研磨装置及びバレル研磨方法に関する。

【背景技術】

【0002】

金属部品の表面を研磨加工する手法の１つにバレル研磨がある。バレル研磨は、砥粒と水で満たしたバレル槽に加工物を入れ、バレル槽と加工物とを相対回転させる。これにより、バレル槽内で砥粒と加工物とが相対回転をするため、砥粒が加工物に衝突して加工物の表面が加工され、加工物の表面が研磨される。

【0003】

例えば、特許文献１に記載されたバレル研磨装置では、バレル槽に、砥粒を含むメディアと、回転手段のシャフトに接続されたハイポイドピニオンギアとを収容し、ハイポイドピニオンギアをバレル槽内で回転手段によって回転させることにより、ハイポイドピニオンギアの歯面の研磨を行っている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００９－１６６１７９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ここで、バレル槽内で砥粒と加工物と相対回転させることにより加工物の研磨を行う場合、加工物と砥粒との相対速度が速い方が効率的に研磨を行うことができるため、特許文献１のようにバレル槽内で加工物を回転させる際には、加工物を高速で回転させる必要がある。この場合、研磨時の騒音が大きくなったり、発熱が発生し易くなったりする懸念がある。バレル槽内で加工物に対して砥粒を高速で衝突させるための他の手法としては、砥粒を収容するバレル槽内に、加工物をバレル槽の回転中心から離れた位置に収容し、バレル槽を回転させることにより砥粒をバレル槽と共に回転させ、砥粒をバレル槽の回転中心から離れた位置で加工物に対して衝突させる手法が挙げられる。

【0006】

しかし、砥粒を収容したバレル槽に加工物を入れた状態でバレル槽を回転させることによって加工物の加工を行う場合、バレル槽の回転方向における加工物の下流側の位置で、砥粒の表面に窪みが発生することがある。つまり、砥粒が入ったバレル槽を回転させることによって加工物の加工を行う場合、バレル槽と共に回転をする砥粒が、加工物に対してバレル槽の回転方向における上流側から当たった際に、砥粒は加工物により押し退けられる。加工物によって押し退けられた砥粒は、バレル槽の回転方向における加工物の下流側においてもすぐには元の位置に戻らないため、押し退けられた砥粒が存在していた部分では砥粒が少なくなり、窪みとなって表れる。

【0007】

特に、砥粒と共にバレル槽に投入する水の量が少ない場合は、砥粒の流動性が低くなるため、バレル槽の回転方向における下流側では砥粒の表面の窪みが発生し易くなる。砥粒を収容するバレル槽を回転させることによって加工物の研磨を行う際において、砥粒の表面に窪みが発生した場合、窪みはバレル槽の回転に伴ってバレル槽の周方向に移動するため、窪みはバレル槽の回転に伴って１回転をして加工物の位置に戻ってくることがある。または、複数の加工物をバレル槽の周方向に沿って並べて配置し、複数の加工物の研磨を同時に行う際において、砥粒の表面に窪みが発生した場合、バレル槽の回転に伴って窪みが、窪みを発生させた加工物の下流側に位置する加工物の位置の到達することがある。これらのように、バレル槽内における加工物の位置に砥粒の表面の窪みが到達した場合、加工物に当たる砥粒が少なくなるため、砥粒を加工物に衝突させることにより行う加工物の研磨の効率が低下する。

【0008】

一方、砥粒と共にバレル槽に投入する水の量を多くした場合は、砥粒の流動性が高くなる。このため、砥粒を収容するバレル槽を回転させることによって加工物の研磨を行う際に、バレル槽の回転方向における上流側から砥粒が加工物に当たることにより砥粒が押し退けられた場合でも、加工物の下流側では、砥粒が押し退けられた位置に砥粒は容易に流れることができる。これにより、水分量が多いことにより砥粒の流動性が高い場合は、バレル槽の回転方向における下流側においても砥粒の表面の窪みは発生し難くなる。しかし、水分量を増加させた場合、加工物の研磨に用いる砥粒の密度が減少するため、加工物を研磨する際における研磨効率の低下につながる。

【0009】

これらのため、砥粒を収容したバレル槽内で砥粒と加工物とを相対回転させて加工物に砥粒を衝突させることによって加工物の研磨を行う場合、研磨の効率の点で改善の余地があった。

【0010】

本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、研磨加工の効率を向上させることのできるバレル研磨装置及びバレル研磨方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

本開示のバレル研磨装置は、底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持する支持部材と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に挿入され前記砥粒の流れを制御する整流部材と、を備え、前記バレル槽は、前記支持部材で支持する前記加工物と前記整流部材とに対して相対回転し、前記バレル槽の回転に伴って回転する前記砥粒が、前記整流部材により、前記バレル槽回転中心を中心とする径方向において前記加工物が位置する側に流れるように整流される。

【0012】

この構成によれば、整流部材の位置に、バレル槽の回転方向における上流側の加工物によって砥粒に発生した窪みが流れた場合、砥粒は、整流部材により流れの向きが変えられ、バレル槽の径方向において加工物が位置する側に向かって流れる。このため、砥粒に発生した窪みは、窪みに対してバレル槽の径方向における外側または内側に位置する砥粒により埋め戻され、窪みは消滅する。整流部材によって窪みが消滅した砥粒は、バレル槽の回転方向における整流部材の下流側に位置する加工物に向かって流れる。これにより、整流部材に対してバレル槽の回転方向における下流側に位置する加工物には、窪みが消滅した砥粒が衝突するため、加工物は、衝突する砥粒によって表面が加工され、砥粒により表面が研磨される。従って、バレル研磨装置は、砥粒の流動性が低いことにより加工物の研磨時に砥粒の表面に窪みが発生し易い状態においても、砥粒に発生した窪みを消滅させながら加工物の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0013】

望ましい形態として、前記整流部材は、前記径方向における前記加工物の位置に対して前記径方向における外側寄りの位置と内側寄りの位置とに配置される。

【0014】

この構成によれば、整流部材は、バレル槽の径方向において加工物が配置される位置の外側と内側との両側から、バレル槽の径方向における加工物が配置される位置に向けて砥粒を流すことができるため、多くの砥粒を集めて加工物が配置される位置に向けて流すことができる。従って、バレル槽の径方向における加工物が配置される位置に発生した砥粒の窪みを消滅させながら、砥粒を加工物に向けて流すことができ、多くの砥粒によって加工物の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0015】

望ましい形態として、前記整流部材は、前記径方向における前記加工物の位置に対して前記径方向における外側寄りの位置に配置される。

【0016】

この構成によれば、バレル槽の径方向における加工物の位置に対して、バレル槽の径方向における外側寄りの位置に整流部材を配置することにより、遠心力によってバレル槽の径方向における外側に集まる砥粒を、バレル槽の径方向における内側に流すことができる。これにより、バレル槽の径方向における加工物の配置位置に、バレル槽の回転方向における上流側の加工物によって窪みが発生した場合でも、窪みの位置に整流部材によって砥粒を流すことができる。従って、砥粒に発生した窪みを消滅させることができ、窪みを消滅させた砥粒を加工物に流すことができるため、多くの砥粒を衝突させて加工物の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0017】

望ましい形態として、前記支持部材は、個別に前記加工物を支持する前記支持部材が複数配置される。

【0018】

この構成によれば、個別に加工物を支持する支持部材が複数配置されることにより、砥粒に発生した窪みを整流部材によって消滅させながら、１度の研磨の作業で多くの加工物を研磨することができるため、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0019】

望ましい形態として、前記整流部材は、前記バレル槽の回転方向における前記加工物の上流側で前記加工物の近傍に配置される。

【0020】

この構成によれば、整流部材は、バレル槽の回転方向における加工物の上流側で加工物の近傍に配置されるため、加工物の位置に到達する直前の砥粒の流れを制御して、窪みを消滅させた砥粒を加工物に流すことができる。これにより、加工物に砥粒を衝突させて研磨を行う際に、多くの砥粒を衝突させて加工物７０の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0021】

望ましい形態として、前記バレル槽が前記バレル槽回転中心を中心として回転することにより、前記整流部材は、前記バレル槽に対して、前記支持部材で支持する前記加工物と共に相対的に回転する。

【0022】

この構成によれば、砥粒に発生した窪みを、整流部材に対応する加工物ごとに整流部材によって消滅させることができるため、砥粒に発生した窪みを消滅させながら砥粒によって加工物の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0023】

望ましい形態として、前記バレル槽回転中心と略平行な回転中心である支持部材回転中心を中心として前記支持部材を回転させる支持部材回転装置を備え、前記支持部材回転装置は、前記バレル槽に対して前記バレル槽の軸心方向における前記底部が位置する側の反対側に配置されて前記バレル槽の回転時に回転をしない部材である固定部材に取り付けられ、前記整流部材は、前記固定部材に取り付けられて前記バレル槽の軸心方向における前記底部が位置する側に向かって前記固定部材から延びる。

【0024】

この構成によれば、整流部材は、支持部材回転装置が取り付けられる固定部材に取り付けられて固定部材から延びるため、バレル槽に対して相対回転をする整流部材を、容易に配置することができる。これにより、加工物の研磨時に砥粒の表面に発生する窪みを消滅させる構成を容易に実現することができ、砥粒に発生した窪みを消滅させながら砥粒によって加工物の研磨を行うことができるため、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0025】

本開示のバレル研磨方法は、底部と、筒状に形成されて前記底部から立設する壁部とを有し、前記壁部の内側に砥粒が収容されるバレル槽と、前記壁部の形状である筒状の中心を前記バレル槽の回転中心であるバレル槽回転中心として前記バレル槽を回転させるバレル槽回転装置と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に加工物を挿入させて前記加工物を支持する支持部材と、前記バレル槽に収容される前記砥粒に挿入され前記砥粒の流れを制御する整流部材と、を備え、前記支持部材で支持する前記加工物と前記整流部材とに対して前記バレル槽を相対回転させるバレル研磨装置を用いたバレル研磨方法であって、前記バレル槽の回転に伴って回転する前記砥粒を、前記整流部材によって、前記バレル槽回転中心を中心とする径方向において前記加工物が位置する側に流れるように整流しながら前記砥粒によって前記加工物の研磨を行う。

【0026】

この構成によれば、整流部材の位置に、バレル槽の回転方向における上流側の加工物によって砥粒に発生した窪みが流れた場合に、整流部材により砥粒の流れの向きが変え、バレル槽の径方向において加工物が位置する側に向けて砥粒を流す。これにより、砥粒に発生した窪みを、窪みに対してバレル槽の径方向における外側または内側に位置する砥粒により埋め戻して、窪みを消滅させる。整流部材によって窪みを消滅させた砥粒は、バレル槽の回転方向における整流部材の下流側に位置する加工物に向かって流す。これにより、整流部材に対してバレル槽の回転方向における下流側に位置する加工物に、窪みが消滅した砥粒を衝突させることができ、加工物の表面を砥粒によって研磨することができる。従って、砥粒の流動性が低いことにより加工物の研磨時に砥粒の表面に窪みが発生し易い状態においても、砥粒に発生した窪みを消滅させながら加工物の研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。

【発明の効果】

【0027】

本開示に係るバレル研磨装置及びバレル研磨方法は、研磨加工の効率を向上させることができる、という効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0028】

【図1】図１は、実施形態に係るバレル研磨装置の断面模式図である。

【図2】図２は、図１のＡ－Ａ矢視図である。

【図3】図３は、図２のＢ－Ｂ矢視図である。

【図4】図４は、砥粒の流れを制御する整流部材を備えない形態のバレル研磨装置の断面図である。

【図5】図５は、図４のＣ－Ｃ矢視図である。

【図6】図６は、図５のＤ－Ｄ断面図である。

【図7】図７は、図５に示すバレル槽を回転させた状態を示す説明図である。

【図8】図８は、図７のＥ－Ｅ断面図である。

【図9】図９は、整流部材による砥粒の流れの制御についての説明図である。

【図10】図１０は、図９のＦ－Ｆ矢視図である。

【図11】図１１は、実施形態に係るバレル研磨装置の変形例であり、整流部材として外側整流部材のみを配置する形態を示す説明図である。

【図12】図１２は、実施形態に係るバレル研磨装置の変形例であり、整流部材が加工物の下流側に配置される形態を示す説明図である。

【図13】図１３は、実施形態に係るバレル研磨装置の変形例であり、整流部材がバレル槽の周方向に隣り合う加工物同士の中間の位置に配置される形態を示す説明図である。

【図14】図１４は、実施形態に係るバレル研磨装置の変形例であり、整流部材がレーキ状に形成される形態を示す説明図である。

【図15】図１５は、バレル研磨装置により研磨加工を行う加工物の一例を示す説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0029】

以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態（以下、実施形態という）により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。

【0030】

［実施形態]
図１は、実施形態に係るバレル研磨装置１の断面模式図である。図１は、バレル槽１０の回転中心であるバレル槽回転中心ＣＢに沿ってバレル槽１０の断面を見た断面図になっている。実施形態に係るバレル研磨装置１は、加工物７０の表面を研磨するための装置になっている。バレル研磨装置１は、加工物７０の研磨加工に用いる砥粒６０を収容するバレル槽１０と、バレル槽１０を回転させるバレル槽回転装置２０と、加工物７０を支持する支持部材３０と、バレル槽１０に収容される砥粒６０の流れを制御する整流部材４０とを備えている。

【0031】

バレル槽１０は、略円形の板状に形成される底部１１と、筒状に形成されて底部１１から立設する壁部１２とを有しており、筒状の形状で形成される壁部１２は、底部１１の外周部分から立設して形成されている。このためバレル槽１０は、換言すると、一端に底部１１が位置することにより一端が閉塞される、有底の筒状の形状で形成されており、バレル槽１０の他端側は、バレル槽１０の開口部１３として形成されている。バレル研磨装置１は、バレル槽１０が有する壁部１２の形状である筒状の軸心方向が上下方向となり、底部１１が壁部１２に対して下側に位置し、開口部１３が上側に位置する向きで使用される。

【0032】

以下の説明では、バレル研磨装置１の通常の使用形態における上側をバレル研磨装置１における上側として説明し、バレル研磨装置１の通常の使用形態における下側をバレル研磨装置１における下側として説明する。

【0033】

バレル槽１０に収容される砥粒６０は、壁部１２の内側に収容される。即ち、砥粒６０は、バレル槽１０の底部１１における壁部１２が立設する側の面と、筒状の形状で形成される壁部１２の内周面とにより区画される空間に収容される。

【0034】

バレル槽１０に収容される砥粒６０は、粒状の研磨剤になっており、例えば、アルミナや炭化ケイ素などを結合剤で保持したものになっている。バレル槽１０には、粒状に形成される多量の砥粒６０が、少量の水と共に収容される。

【0035】

バレル槽回転装置２０は、壁部１２の形状である筒状の中心をバレル槽１０の回転中心であるバレル槽回転中心ＣＢとして、バレル槽１０を回転させることが可能になっている。詳しくは、バレル槽１０の底部１１における、壁部１２が位置する側の面の反対側の面、即ち、砥粒６０が収容される側の面の反対側の面には、バレル軸１４が配置されている。つまり、バレル軸１４は、バレル槽１０における底部１１の下側の面から下側に向かって延びて配置されている。バレル軸１４は、軸心がバレル槽回転中心ＣＢに一致する位置に配置されており、バレル槽回転中心ＣＢに沿った向きで底部１１から延びて形成されている。バレル軸１４における底部１１が位置する側の端部の反対側の端部には、プーリ１５が取り付けられている。

【0036】

バレル槽回転装置２０は、駆動モータと減速装置とを備える駆動装置２１を有しており、駆動装置２１で発生した駆動力を、バレル軸１４に伝達することにより、バレル槽１０を回転させることが可能になっている。詳しくは、バレル槽回転装置２０が有する駆動装置２１には、出力軸２２にプーリ２３が取り付けられており、駆動装置２１の出力軸２２のプーリ２３と、バレル軸１４のプーリ１５との間には、駆動ベルト２４が巻き掛けられている。これにより、バレル槽回転装置２０は、駆動装置２１で発生した駆動力を、駆動ベルト２４を介してバレル軸１４に伝達し、バレル軸１４を回転させることによってバレル槽回転中心ＣＢを中心としてバレル槽１０を回転させることができる。

【0037】

加工物７０を支持する支持部材３０は、バレル槽１０に収容される砥粒６０に対して加工物７０を挿入させて加工物７０を支持することが可能になっている。つまり、支持部材３０は、支持部材３０で支持する加工物７０をバレル槽１０の開口部１３からバレル槽１０の内側に入り込ませ、バレル槽１０に収容される砥粒６０に対して挿入させることが可能になっている。

【0038】

詳しくは、支持部材３０は、軸状の回転軸３１と、加工物７０を支持する支持部３４とを有している。回転軸３１は、延在方向が上下方向となる向きでバレル槽１０の上側に配置されている。即ち、回転軸３１は、軸心方向がバレル槽回転中心ＣＢに対して略平行になる向きで配置されている。また、回転軸３１は、バレル槽１０の上側の位置で、バレル槽回転中心ＣＢとは異なる位置に配置されている。

【0039】

なお、回転軸３１は、バレル槽回転中心ＣＢに対して僅かに傾いていてもよく、回転軸３１は、例えば、軸心方向がバレル槽回転中心ＣＢに対して５～１０°程度傾いていてもよい。本実施形態では、回転軸３１は、バレル槽回転中心ＣＢに対して実質的に平行な向きで配置されている。

【0040】

上下方向に延在する回転軸３１は、上端が支持部材回転装置３５に連結されている。支持部材回転装置３５は、バレル槽１０の上側に配置されてバレル槽１０の回転時に回転をしない部材である固定部材５に取り付けられている。固定部材５は、バレル槽１０に対して、バレル槽１０の軸心方向における底部１１が位置する側の反対側に配置されており、即ち、固定部材５は、バレル槽１０の上側に配置されている。支持部材回転装置３５は、駆動モータと減速装置とを備えており、駆動モータで発生した駆動力によって回転軸３１を回転させることができる。支持部材回転装置３５に連結される回転軸３１は、支持部材回転装置３５から下側に向かって延在しており、支持部材回転装置３５から伝達される駆動力により、回転軸３１の軸心を中心として回転可能になっている。

【0041】

支持部３４は、回転軸３１における、支持部材回転装置３５に連結される側の反対側の端部に接続されている。即ち、支持部３４は、回転軸３１の下端に接続されている。本実施形態で研磨加工を行う加工物７０は、軸状の加工物７０になっており、支持部３４は、軸状の加工物７０の端部を支持する。その際に、支持部３４は、軸状の加工物７０の軸心方向が、回転軸３１の軸心方向に沿った向きで加工物７０を支持する。つまり、支持部３４は、回転軸３１の延長線上に加工物７０を位置させて、加工物７０の上端を支持する。これにより、支持部３４は、回転軸３１の下端に位置する支持部３４から加工物７０が下側に向かって延びる向きで、軸状の加工物７０を支持する。

【0042】

このように、加工物７０を支持する支持部材３０は、支持部材回転装置３５によって回転軸３１の軸心を中心として回転可能に構成されている。回転軸３１は、軸心方向がバレル槽回転中心ＣＢに対して略平行な向きで配置されるため、支持部材回転装置３５によって回転軸３１が回転をした場合は、支持部材３０は、バレル槽回転中心ＣＢと略平行な回転軸３１を中心として回転をする。つまり、回転軸３１が支持部材回転装置３５によって回転をする支持部材３０は、回転軸３１の軸心を、支持部材３０の回転中心である支持部材回転中心ＣＳとして回転可能になっており、バレル槽回転中心ＣＢと略平行な支持部材回転中心ＣＳを中心として回転することができる。

【0043】

なお、この場合における、バレル槽回転中心ＣＢに対する支持部材回転中心ＣＳの略平行は、バレル槽回転中心ＣＢに対する支持部材回転中心ＣＳが傾斜角が０°の状態のみでなく、バレル槽回転中心ＣＢに対する傾斜角が１０°となる範囲まで含まれる。即ち、支持部材３０は、バレル槽回転中心ＣＢに対する傾斜角が０°以上１０°以下の範囲内となる支持部材回転中心ＣＳを中心として回転可能になっている。本実施形態では、バレル槽回転中心ＣＢに対する支持部材回転中心ＣＳの傾斜角は、実質的に０°になっている。

【0044】

回転軸３１の下端に配置される支持部３４は、軸状の加工物７０の軸心方向が、回転軸３１の軸心方向に沿った向きで加工物７０を支持するため、換言すると、支持部３４は、加工物７０の軸心を、回転軸３１の軸心に対して実質的に一致させて加工物７０を支持している。即ち、支持部材３０は、加工物７０の軸心を支持部材回転中心ＣＳに実質的に一致させて加工物７０を支持している。このため、支持部材回転中心ＣＳを中心として回転することが可能な支持部材３０は、支持部３４で支持する加工物７０を、加工物７０の軸心を中心として回転させることが可能になっている。

【0045】

バレル研磨装置１には、個別に加工物７０を支持する支持部材３０が複数配置されている。複数の支持部材３０は、それぞれ加工物７０の軸心が支持部材回転中心ＣＳに一致する位置で加工物７０を支持し、支持部材回転装置３５で発生する駆動力によって支持部材回転中心ＣＳを中心として回転することにより、それぞれ加工物７０を回転させることが可能になっている。

【0046】

また、整流部材４０は、板状の部材になっており、バレル槽１０に収容される砥粒６０に挿入されることにより、砥粒６０の流れを制御することが可能になっている。整流部材４０は、バレル槽１０の上側に配置されて支持部材回転装置３５が取り付けられる固定部材５に取り付けられており、固定部材５から下側に向かって延びている。即ち、固定部材５に取り付けられる整流部材４０は、バレル槽１０の軸心方向における底部１１が位置する側に向かって固定部材５から延び、バレル槽１０の開口部１３からバレル槽１０の内側に入り込んでいる。整流部材４０は、支持部材３０の近傍に配置されており、下側の端部が、支持部材３０が加工物７０を支持した場合における加工物７０の下側の端部よりも下側に位置している。このため、整流部材４０は、支持部材３０によって支持する加工物７０が配置される上下方向における範囲には、少なくとも配置されている。

【0047】

図２は、図１のＡ－Ａ矢視図である。複数の支持部材３０は、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の周方向において、等間隔に配置されている。本実施形態では、４つの支持部材３０が、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の周方向において等間隔に配置されている。これにより、実施形態に係るバレル研磨装置１は、４つの加工物７０の研磨を同時に行うことが可能になっている。なお、バレル研磨装置１が有する支持部材３０は、４つ以外であってもよく、即ち、バレル研磨装置１によって研磨加工を同時に行うことのできる加工物７０の数は、４つ以外であってもよい。

【0048】

複数の支持部材３０は、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向における位置が、全て同じ位置になっている。これらのバレル槽回転中心ＣＢを中心とする周方向及び径方向における支持部材３０の位置は、それぞれの支持部材３０が有する回転軸３１の位置になっている。つまり、複数の支持部材３０は、それぞれの支持部材回転中心ＣＳの位置が、バレル槽回転中心ＣＢを中心とする周方向において等間隔となり、バレル槽回転中心ＣＢからの支持部材回転中心ＣＳの距離が、支持部材３０同士で等しくなる位置関係で配置されている。

【0049】

これらのように配置される支持部材３０は、加工物７０の軸心が支持部材回転中心ＣＳに一致する位置で加工物７０を支持する。このため、複数の支持部材３０により支持される複数の加工物７０は、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の周方向において等間隔となり、バレル槽回転中心ＣＢからの距離が、加工物７０同士で等しくなる位置関係で配置されている。

【0050】

整流部材４０は、複数の支持部材３０に対応して複数が配置されており、支持部材３０に対応する整流部材４０は、それぞれ支持部材３０の近傍に配置されている。即ち、整流部材４０は、加工物７０ごとに配置されており、各加工物７０の近傍に配置されている。本実施形態では、整流部材４０は、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側で加工物７０の近傍に配置されている。

【0051】

図３は、図２のＢ－Ｂ矢視図である。整流部材４０は、バレル槽１０の径方向における加工物７０の位置に対して、バレル槽１０の径方向における外側と内側とに配置されている。つまり、加工物７０ごとに配置される整流部材４０は、加工物７０ごとに外側整流部材４１と内側整流部材４２とを有している。外側整流部材４１は、加工物７０の近傍でバレル槽１０の径方向において加工物７０の位置に対して外側寄りの位置に配置され、内側整流部材４２は、加工物７０の近傍でバレル槽１０の径方向において加工物７０の位置に対して内側寄りの配置されている。

【0052】

なお、外側整流部材４１と内側整流部材４２とは、バレル槽１０の径方向における位置が、加工物７０の位置と重なる部分を有していてもよい。

【0053】

複数の支持部材３０により支持される複数の加工物７０は、バレル槽回転中心ＣＢからの距離が、加工物７０同士で等しくなる位置関係で配置されているため、加工物７０ごとに配置される整流部材４０も、バレル槽回転中心ＣＢからの距離が整流部材４０同士で等しくなる位置関係で配置されている。つまり、加工物７０ごとに配置される複数の整流部材４０は、バレル槽回転中心ＣＢからの距離が外側整流部材４１同士で等しくなり、バレル槽回転中心ＣＢからの距離が内側整流部材４２同士で等しくなる位置関係で配置されている。

【0054】

これらのように配置される整流部材４０は、いずれも板状の部材になっており、例えば、板の幅が加工物７０の直径と同程度の大きさとなる幅で上下方向に延在している。即ち、外側整流部材４１と内側整流部材４２とは、いずれも板の幅が加工物７０の直径と同程度の大きさとなる幅で形成される板状の部材になっている。

【0055】

また、整流部材４０は、バレル槽１０の回転に伴って回転する砥粒６０を、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に流すことが可能に配置されている。つまり、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側の近傍に配置される整流部材４０は、バレル槽１０の周方向において加工物７０から離れている位置から加工物７０に近付くに従って、バレル槽１０の径方向における加工物７０の配置位置に近付く方向に、バレル槽１０の周方向及び径方向に対して傾斜して配置されている。

【0056】

換言すると、整流部材４０は、バレル槽１０の回転方向における上流側から下流側に向かうに従って、バレル槽１０の径方向において加工物７０が配置される位置から離れた位置から加工物７０が配置される位置に近付く方向に、バレル槽１０の周方向及び径方向に対して傾斜して配置されている。このため、バレル槽１０の回転に伴って回転する砥粒６０は、整流部材４０により、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に流れるように整流される。

【0057】

具体的には、外側整流部材４１は、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側の近傍の位置で、バレル槽１０の周方向において加工物７０から離れている位置から加工物７０に近付くに従って、バレル槽１０の径方向における外側から内側に向かう方向に、バレル槽１０の周方向及び径方向に対して傾斜して配置されている。また、内側整流部材４２は、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側の近傍の位置で、バレル槽１０の周方向において加工物７０から離れている位置から加工物７０に近付くに従って、バレル槽１０の径方向における内側から外側に向かう方向に、バレル槽１０の周方向及び径方向に対して傾斜して配置されている。

【0058】

このため、外側整流部材４１と内側整流部材４２とは、バレル槽回転中心ＣＢの沿った方向、即ち、上下方向に見た場合に、ハの字状に配置されている。ハの字状に配置される外側整流部材４１と内側整流部材４２とは、バレル槽１０の回転方向における下流側がハの字の上側になり、バレル槽１０の回転方向における上流側がハの字の下側になる向きで配置されている。従って、外側整流部材４１と内側整流部材４２とは、バレル槽１０の回転方向における上流側から下流側に向かうに従って、外側整流部材４１と内側整流部材４２との間隔が狭くなる形態で配置されている。整流部材４０は、ハの字を構成する一対の外側整流部材４１と内側整流部材４２とが、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側の位置で加工物７０の近傍に配置されている。

【0059】

次に、バレル研磨装置１を用いた加工物７０のバレル研磨方法について説明する。バレル研磨装置１を用いて加工物７０の研磨を行う際には、バレル研磨装置１が有するバレル槽１０の開口部１３から、バレル槽１０の内側に砥粒６０を少量の水と共に投入する。砥粒６０は、例えば砥粒６０の表面６１からの深さが、研磨加工を行う加工物７０の長さ以上の深さになる量の砥粒６０を投入する。

【0060】

この場合における砥粒６０の表面６１は、バレル槽１０に収容される多量の砥粒６０における、上側に位置する面をいう。即ち、この場合における砥粒６０の表面６１は、１つ１つの砥粒６０の表面ではなく、バレル槽１０に収容される多量の砥粒６０全体の表面を示している。

【0061】

バレル研磨装置１を用いて研磨を行う加工物７０は、支持部材３０が有する支持部３４で支持する。支持部材３０は、複数の支持部材３０によって複数の加工物７０をそれぞれ個別に支持する。複数の支持部材３０で複数の加工物７０を支持したら、支持部材３０で支持する加工物７０をバレル槽１０に収容される砥粒６０に挿入する。バレル槽１０に収容される砥粒６０に加工物７０を挿入する際には、少なくとも、加工物７０における研磨を行う部位が砥粒６０内に入り込むまで、加工物７０を挿入する。

【0062】

バレル槽１０に収容される砥粒６０への加工物７０の挿入は、加工物７０を支持する支持部材３０は砥粒６０に挿入されない程度の深さまで行う。即ち、加工物７０を支持する支持部材３０は、砥粒６０に加工物７０を挿入した状態においても、砥粒６０から露出させる。

【0063】

また、砥粒６０に加工物７０を挿入する際には、支持部材３０の近傍に配置される整流部材４０も、加工物７０と共に砥粒６０に挿入する。これにより、整流部材４０は、砥粒６０内で、加工物７０の近傍に配置される。

【0064】

これらの動作は、例えば、支持部材３０での加工物７０の支持はバレル槽１０の上側で行い、支持部材３０で加工物７０を支持したら、砥粒６０を収容するバレル槽１０に向けて支持部材３０や整流部材４０を下降させることにより、支持部材３０で支持する加工物７０と整流部材４０を、バレル槽１０に収容される砥粒６０に挿入する。

【0065】

砥粒６０に加工物７０と整流部材４０を挿入したら、支持部材３０で支持をする加工物７０と整流部材４０に対してバレル槽１０を相対回転させる。加工物７０と整流部材４０に対してバレル槽１０を相対回転させた場合、バレル槽１０に収容される砥粒６０もバレル槽１０の回転に伴って回転をするため、砥粒６０も加工物７０と整流部材４０に対して相対回転をする。加工物７０は、砥粒６０に挿入されているため、砥粒６０が加工物７０に対して相対回転をした場合、砥粒６０は、加工物７０に衝突をしながら相対回転をする。加工物７０の表面は、加工物７０に対して相対回転する砥粒６０が繰り返し衝突することにより、徐々に加工されて研磨が行われる。

【0066】

詳しくは、バレル槽１０は、バレル槽回転装置２０から伝達される駆動力により、バレル槽回転中心ＣＢを中心として回転をする。これにより、バレル槽１０は、支持部材３０で支持をする加工物７０に対して相対回転をする。また、本実施形態では、バレル槽１０を回転させながら加工物７０の研磨を行う際には、支持部材回転装置３５で発生する駆動力により、加工物７０を支持する支持部材３０を回転させる。これにより、支持部材３０は、支持部材回転中心ＣＳを中心として回転し、支持部材３０によって支持する加工物７０は、支持部材３０と共に支持部材回転中心ＣＳを中心として回転する。

【0067】

バレル槽１０を回転させた場合、バレル槽１０に収容される砥粒６０は、バレル槽１０の回転に伴って、バレル槽１０と共に回転をする。このため、バレル槽１０に収容される砥粒６０は、バレル槽１０と共にバレル槽回転中心ＣＢを中心として回転をし、支持部材３０で支持をする加工物７０に対して相対回転をする。これにより、砥粒６０は、加工物７０に対して繰り返し衝突し、加工物７０は、繰り返し衝突をする砥粒６０により、表面が研磨される。

【0068】

ここで、本実施形態に係るバレル研磨方法では、砥粒６０の密度を確保して加工物７０の研磨の効率を上げるために、砥粒６０と共にバレル槽１０に投入する水の量を少なくしている。これにより、バレル槽１０内における砥粒６０の密度が高まるため、加工物７０に対してバレル槽１０を相対回転させた際に、加工物７０に衝突する砥粒６０の時間当たりにおける量を増加させることができる。従って、加工物７０に砥粒６０を衝突させることによる、加工物７０の研磨の効率を高めることができる。

【0069】

しかし、砥粒６０と共にバレル槽１０に投入する水の量が少ない場合、砥粒６０の流動性は低下する。このため、加工物７０に対してバレル槽１０を相対回転させることにより、砥粒６０によって加工物７０の研磨加工を行う際に、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の下流側に、砥粒６０が加工物７０によって押し退けられることにより発生する窪みが発生し易くなる。

【0070】

ここで、加工物７０に対してバレル槽１０を相対回転させた際における砥粒６０の動きについて説明する。砥粒６０の動きの説明は、本実施形態と対比させるために、バレル槽１０内の砥粒６０に挿入して砥粒６０の流れを制御する整流部材４０を備えない形態における砥粒６０の動きについて説明する。

【0071】

図４は、砥粒６０の流れを制御する整流部材４０を備えない形態のバレル研磨装置１００の断面図である。図５は、図４のＣ－Ｃ矢視図である。図６は、図５のＤ－Ｄ断面図である。図４に示すバレル研磨装置１００は、実施形態に係るバレル研磨装置１と同様に、支持部材１３０が有する回転軸１３１の下端に、加工物７０を支持する支持部１３４が連結されている。また、図４に示すバレル研磨装置１００は、支持部材１３０によって支持する加工物７０の近傍には、図５に示す通り、整流部材４０は配置されていない。砥粒６０の流れを制御する整流部材４０を備えない場合において、バレル研磨装置１００による研磨を行う前、即ち、バレル槽１１０を回転させる前の状態では、図６に示す通り、バレル槽１１０に収容される砥粒６０は、表面６１が平坦な形態になっている。支持部材１３０によって支持される加工物７０は、バレル槽１１０に収容される砥粒６０に挿入される。

【0072】

図７は、図５に示すバレル槽１１０を回転させた状態を示す説明図である。図８は、図７のＥ－Ｅ断面図である。バレル槽１１０内の砥粒６０に加工物７０を挿入して加工物７０の研磨を行う場合は、バレル槽１１０を回転させながら、加工物７０を回転させる。加工物７０の回転は、支持部材回転装置１３５によって支持部材１３０を回転させることにより行う。これにより、加工物７０は、支持部材１３０と共に支持部材回転中心ＣＳを中心として回転をする。支持部材１３０は、加工物７０の軸心を支持部材回転中心ＣＳに実質的に一致させて加工物７０を支持するため、支持部材１３０を回転させた場合、加工物７０は、実質的に加工物７０の軸心を中心として回転をする。

【0073】

バレル槽１１０の回転は、バレル槽回転装置（図１参照）により行う。これにより、バレル槽１１０は、バレル槽回転中心ＣＢを中心として回転する。バレル槽１１０を回転させた場合、バレル槽１１０に収容される砥粒６０は、バレル槽１１０と共に回転をするため、遠心力によってバレル槽１１０の径方向における外側に移動し易くなる。このため、バレル槽１１０内の砥粒６０は、図８に示すように、バレル槽１１０の径方向における外側に偏る状態になる。

【0074】

また、バレル槽１１０を回転させた場合、バレル槽１１０は、加工物７０に対して相対回転をする。つまり、加工物７０を支持する支持部材１３０は、支持部材回転中心ＣＳを中心として回転するものの、バレル槽１１０と一体には回転をしないため、バレル槽１１０を回転させた場合、バレル槽１１０は、支持部材１３０で支持する加工物７０に対して相対回転をする。このため、バレル槽１１０を回転させた場合は、バレル槽１１０に収容される砥粒６０も、支持部材１３０で支持する加工物７０に対して相対回転をする。

【0075】

バレル槽１１０に収容される砥粒６０が加工物７０に対して相対回転をした場合、砥粒６０は加工物７０に対して繰り返し衝突する。これにより、加工物７０は、砥粒６０によって表面が研磨される。このように、加工物７０に対して砥粒６０を相対回転させながら加工物７０の研磨を行う場合、バレル槽１１０の回転方向における下流側には、砥粒６０が加工物７０によって押し退けられることにより窪み６２が発生する。窪み６２は、バレル槽１１０に収容される砥粒６０が加工物７０に押し退けられることにより砥粒６０の表面６１が凹んだ形態で発生する。

【0076】

砥粒６０に発生した窪み６２は、砥粒６０と共にバレル槽１０に投入する水の量が少ないことにより砥粒６０の流動性が低い場合、砥粒６０の流動によって均されることなく、比較的長い時間残り続ける。このため、加工物７０に対して砥粒６０が相対回転をし、砥粒６０が加工物７０に押し退けられることにより発生した窪み６２は、窪み６２を発生させた加工物７０に対して、バレル槽１１０の回転方向における下流側に位置する加工物７０の位置まで到達する。

【0077】

窪み６２は、砥粒６０が存在しない部分になっているため、砥粒６０の窪み６２が加工物７０の位置に到達した場合、加工物７０に砥粒６０が衝突しなくなったり、加工物７０に衝突する砥粒６０の量が少なくなったりする。このため、砥粒６０の窪み６２が到達した加工物７０は、砥粒６０によって研磨され難くなる。

【0078】

砥粒６０の窪み６２は、砥粒６０に対して複数挿入される加工物７０のそれぞれによって発生し、加工物７０で発生した窪み６２は、バレル槽１１０の回転方向における下流側の加工物７０の位置まで到達するため、加工物７０には、砥粒６０の窪み６２が継続的に到達することになる。このため、加工物７０は、砥粒６０による研磨が継続的に行われ難くなる。

【0079】

本実施形態に係るバレル研磨装置１は、バレル槽１０を回転させて砥粒６０によって加工物７０の研磨を行う際に、加工物７０によって砥粒６０の表面６１に発生した窪み６２が、バレル槽１０の回転方向における下流側の加工物７０の位置まで継続する位置関係で、複数の支持部材３０は配置されている。つまり、複数の支持部材３０は、加工物７０によって砥粒６０の表面６１に形成される窪み６２が、窪み６２を形成した加工物７０を支持する支持部材３０に対して、バレル槽１０の回転方向における下流側で隣り合う支持部材３０で支持する加工物７０の位置まで継続する位置関係で配置されている。

【0080】

複数の支持部材３０が、このような位置関係で配置される本実施形態では、バレル研磨装置１に収容される砥粒６０の流れを制御する整流部材４０を備えている。整流部材４０は、バレル槽１０が回転しても回転はせず、支持部材３０との相対的な位置関係を維持したまま、バレル槽１０内に配置される。このため、バレル槽１０が回転をすることによってバレル槽１０内の砥粒６０もバレル槽１０と共に回転をした場合、バレル槽１０や砥粒６０は、整流部材４０に対しても相対回転をする。換言すると、バレル槽１０がバレル槽回転中心ＣＢを中心として回転することにより、整流部材４０は、バレル槽１０に対して、支持部材３０で支持する加工物７０と共に相対的に回転し、バレル槽１０内の砥粒６０に対しても相対的に回転する。

【0081】

整流部材４０は、バレル槽１０の回転に伴って整流部材４０に対して相対回転する砥粒６０を、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に流すことが可能になっている。これにより、バレル槽１０の回転に伴って回転する砥粒６０は、整流部材４０により、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に流れるように整流される。

【0082】

図９は、整流部材４０による砥粒６０の流れの制御についての説明図である。図１０は、図９のＦ－Ｆ矢視図である。バレル槽１０を回転させることによりバレル槽１０と共に砥粒６０が回転した場合、砥粒６０は、整流部材４０に対してバレル槽１０の回転方向における上流側から流れる。整流部材４０は、バレル槽１０の周方向と径方向との双方に対して傾斜する板状の形状で形成されているため、整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、整流部材４０によって流れの方向が変えられる。つまり、整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、板状の形成される整流部材４０に沿って流れることにより、バレル槽回転中心ＣＢを中心とするバレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に導かれる。

【0083】

本実施形態では、整流部材４０は、バレル槽回転中心ＣＢの沿った方向に見た場合に、バレル槽１０の回転方向における下流側がハの字の上側になり、バレル槽１０の回転方向における上流側がハの字の下側になる向きでハの字状に配置される外側整流部材４１と内側整流部材４２とを有している。このため、整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにおける双方の間隔が広い側から外側整流部材４１と内側整流部材４２との間に入り込み、外側整流部材４１と内側整流部材４２との間隔が狭くなる側に流れる。これにより、整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにより、外側整流部材４１と内側整流部材４２との間隔が狭くなる部分に向かって砥粒６０が集められながら流れる。

【0084】

具体的には、外側整流部材４１は、加工物７０の位置に対してバレル槽１０の径方向における外側寄りの位置に配置され、バレル槽１０の回転方向における上流側から下流側に向かうに従って、バレル槽１０の径方向における外側から内側に向かう方向に傾斜している。このため、外側整流部材４１の位置に流れた砥粒６０は、外側整流部材４１に沿ってバレル槽１０の径方向における外側から内側に向かって流れ、これにより砥粒６０は、バレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に向かって流れる。

【0085】

また、内側整流部材４２は、加工物７０の位置に対してバレル槽１０の径方向における内側寄りの位置に配置され、バレル槽１０の回転方向における上流側から下流側に向かうに従って、バレル槽１０の径方向における内側から外側に向かう方向に傾斜している。このため、内側整流部材４２の位置に流れた砥粒６０は、内側整流部材４２に沿ってバレル槽１０の径方向における内側から外側に向かって流れ、これにより砥粒６０は、バレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に向かって流れる。

【0086】

整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、外側整流部材４１の位置に流れた砥粒６０と内側整流部材４２の位置に流れた砥粒６０とのいずれも、バレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に向かって流れる。このため、整流部材４０の位置に流れた砥粒６０は、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにより、双方の間隔が広い側から、双方の間隔が狭くなる部分に向かって砥粒６０が集められながら流れる。

【0087】

従って、整流部材４０の位置に、バレル槽１０の回転方向における上流側の加工物７０によって砥粒６０に発生した窪み６２が流れた場合、砥粒６０は、整流部材４０により流れの向きが変えられ、バレル槽１０の径方向において加工物７０が位置する側に向かって流れる。このため、砥粒６０に発生した窪み６２は、窪み６２に対してバレル槽１０の径方向における外側または内側に位置する砥粒６０により埋め戻され、窪み６２は消滅する。

【0088】

整流部材４０によって流れが変えられて整流されることにより、窪み６２が消滅した砥粒６０は、バレル槽１０の回転方向における整流部材４０の下流側に位置する加工物７０に向かって流れる。つまり、整流部材４０の位置に流れ、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにより、双方の間隔が狭くなる部分に向かって集められた砥粒６０は、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにおける双方の間隔が狭くなっている側から加工物７０に向かって流れる。

【0089】

これにより、整流部材４０に対してバレル槽１０の回転方向における下流側に位置する加工物７０には、窪み６２が消滅した砥粒６０が衝突するため、加工物７０は、衝突する砥粒６０によって表面が加工され、砥粒６０により表面が研磨される。従って、実施形態に係るバレル研磨装置１は、砥粒６０の流動性が低いことにより加工物７０の研磨時に砥粒６０の表面６１に窪み６２が発生し易い状態においても、砥粒６０に発生した窪み６２を消滅させながら加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0090】

また、整流部材４０は、外側整流部材４１と内側整流部材４２とにより、バレル槽１０の径方向における加工物７０の位置に対して、バレル槽１０の径方向における外側寄りの位置と内側寄りの位置とに配置される。これにより、加工物７０に対してバレル槽１０と共に相対回転をする砥粒６０を、バレル槽１０の径方向における加工物７０が配置される位置に向けて、外側整流部材４１と内側整流部材４２とによって流すことができる。

【0091】

このため、整流部材４０は、バレル槽１０の径方向において加工物７０が配置される位置の外側と内側との両側から、バレル槽１０の径方向における加工物７０が配置される位置に向けて砥粒６０を流すことができるため、多くの砥粒６０を集めて加工物７０が配置される位置に向けて流すことができる。従って、バレル槽１０の径方向における加工物７０が配置される位置に発生した砥粒６０の窪み６２を消滅させながら、砥粒６０を加工物７０に向けて流すことができ、多くの砥粒６０によって加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0092】

また、支持部材３０は、個別に加工物７０を支持する支持部材３０が複数配置されるため、砥粒６０に発生した窪み６２を整流部材４０によって消滅させながら、１度の研磨の作業で多くの加工物７０を研磨することができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0093】

また、整流部材４０は、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側で加工物７０の近傍に配置されるため、加工物７０の位置に到達する直前の砥粒６０の流れを制御して、窪み６２を消滅させた砥粒６０を加工物７０に流すことができる。これにより、加工物７０に砥粒６０を衝突させて研磨を行う際に、多くの砥粒６０を衝突させて加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0094】

また、バレル槽１０がバレル槽回転中心ＣＢを中心として回転することにより、整流部材４０は、バレル槽１０に対して、支持部材３０で支持する加工物７０と共に相対的に回転するため、砥粒６０に発生した窪み６２を、整流部材４０に対応する加工物７０ごとに整流部材４０によって消滅させることができる。これにより、砥粒６０の表面６１に窪み６２が発生し易い状態においても、砥粒６０に発生した窪み６２を消滅させながら砥粒６０によって加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0095】

また、整流部材４０は、支持部材３０を回転させる支持部材回転装置３５が取り付けられる固定部材５に取り付けられて固定部材５から延びるため、バレル槽１０に対して相対回転をする整流部材４０を、容易に配置することができる。これにより、加工物７０の研磨時に砥粒６０の表面６１に発生する窪み６２を消滅させる構成を容易に実現することができ、砥粒６０に発生した窪み６２を消滅させながら砥粒６０によって加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0096】

また、バレル槽１０に収容される砥粒６０に加工物７０を挿入する際には、加工物７０を支持する支持部材３０は砥粒６０に挿入せず、支持部材３０は砥粒６０から露出させるため、バレル槽１０や支持部材３０を回転させる際における回転抵抗を抑えることができる。これにより、バレル槽１０を回転させるバレル槽回転装置２０が有する駆動モータや、支持部材３０を回転させる支持部材回転装置３５が有する駆動モータの小型化を図ることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。

【0097】

［変形例]
なお、上述した実施形態では、整流部材４０は、バレル槽１０の径方向における加工物７０の位置に対してバレル槽１０の径方向における外側寄りの位置と内側寄りの位置とに配置されているが、整流部材４０は、加工物７０の位置に対してバレル槽１０の径方向における外側寄りの位置と内側寄りとの両側に配置されていなくてもよい。図１１は、実施形態に係るバレル研磨装置１の変形例であり、整流部材４０として外側整流部材４１のみを配置する形態を示す説明図である。整流部材４０は、例えば、図１１に示すように、バレル槽１０の径方向における加工物７０の位置に対して、バレル槽１０の径方向における外側寄りの位置に配置される外側整流部材４１のみにより構成されていてもよい。

【0098】

バレル槽１０を、バレル槽回転中心ＣＢを中心として砥粒６０を回転させる場合、砥粒６０は、遠心力によって、砥粒６０はバレル槽１０の径方向における外側に集まり易くなる。このため、バレル槽１０の径方向における加工物７０の位置に対して、バレル槽１０の径方向における外側寄りの位置に外側整流部材４１を配置することにより、遠心力によってバレル槽１０の径方向における外側に集まる砥粒６０を、バレル槽１０の径方向における内側に流すことができる。

【0099】

これにより、バレル槽１０の径方向における加工物７０の配置位置に、バレル槽１０の回転方向における上流側の加工物７０によって窪み６２が発生した場合でも、窪み６２の位置に外側整流部材４１によって砥粒６０を流すことができる。従って、砥粒６０に発生した窪み６２を消滅させることができ、窪み６２を消滅させた砥粒６０を加工物７０に流すことができるため、多くの砥粒６０を衝突させて加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0100】

また、上述した実施形態では、整流部材４０は、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の上流側で加工物７０の近傍に配置されているが、整流部材４０は、これ以外の位置に配置されていてもよい。図１２は、実施形態に係るバレル研磨装置１の変形例であり、整流部材４０が加工物７０の下流側に配置される形態を示す説明図である。図１３は、実施形態に係るバレル研磨装置１の変形例であり、整流部材４０がバレル槽１０の周方向に隣り合う加工物７０同士の中間の位置に配置される形態を示す説明図である。整流部材４０は、例えば、図１２に示すように、バレル槽１０の回転方向における加工物７０の下流側でで、加工物７０の近傍に配置されていてもよい。または、整流部材４０は、例えば、図１３に示すように、整流部材４０は、バレル槽１０の周方向において隣り合う加工物７０同士の、中間の位置に配置されていてもよい。

【0101】

つまり、整流部材４０は、加工物７０によって砥粒６０に発生した窪み６２が、窪み６２を発生させた加工物７０と、当該加工物７０に対してバレル槽１０の回転方向における下流側で隣り合う加工物７０との間に配置されていればよい。窪み６２を発生させた加工物７０と、当該加工物７０に対してバレル槽１０の回転方向における下流側で隣り合う加工物７０との間に整流部材４０を配置することにより、下流側で隣り合う加工物７０に砥粒６０の窪み６２が到達する前に、整流部材４０によって窪み６２を消滅させることができる。

【0102】

これにより、加工物７０の研磨時に、加工物７０によって砥粒６０の窪み６２が発生した場合でも、窪み６２を発生させた加工物７０に対してバレル槽１０の回転方向における下流側で隣り合う加工物７０には、窪み６２を消滅させた砥粒６０を流すことができる。従って、窪み６２を発生させた加工物７０の下流側で隣り合う加工物７０に対して多くの砥粒６０を衝突させることができ、多くの砥粒６０によって加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0103】

また、上述した実施形態では、整流部材４０は、板状の形状で形成されているが、整流部材４０は、板状以外の形状で形成されていてもよい。図１４は、実施形態に係るバレル研磨装置１の変形例であり、整流部材４０がレーキ状に形成される形態を示す説明図である。整流部材４０は、単純な板状ではなく、例えば、図１４に示すように、板の幅方向において、歯部４５と間隙部４６とが交互に並ぶレーキ状の形状で形成されていてもよい。即ち、整流部材４０は、整流部材４０の下端寄りの位置に、上下方向に延び、整流部材４０の幅方向に並ぶ複数の歯部４５と、整流部材４０の幅方向に隣り合う歯部４５同士の間に形成される間隙部４６とを有する、櫛状の形状で形成されていてもよい。

【0104】

整流部材４０が、板状以外の形状で形成されている場合でも、バレル槽１０の回転に伴って加工物７０に対して相対回転をする砥粒６０が整流部材４０の位置に到達した場合における、砥粒６０の全体の流れを整流部材４０により制御して整流することができればよい。つまり、整流部材４０が、歯部４５と間隙部４６とを有するレーキ状の形状で形成されていることにより、整流部材４０の位置に到達した砥粒６０の一部が間隙部４６を通過することが可能であったとしても、砥粒６０の多くの流れを整流部材４０により制御することができればよい。

【0105】

整流部材４０は、単純な板状以外の形状で形成される場合でも、整流部材４０の位置に到達した砥粒６０の全体の流れを整流部材４０により制御することにより、バレル槽１０の径方向における加工物７０が配置される位置に発生した砥粒６０の窪み６２を、整流部材４０によって消滅させることができる。これにより、砥粒６０によって加工物７０の研磨を行う際に、加工物７０に対して多くの砥粒６０を衝突させることができ、多くの砥粒６０によって加工物７０の研磨を行うことができる。この結果、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0106】

また、上述した実施形態では、加工物７０は、模式的に棒状の形状で図示をしているが、加工物７０は凹凸がある形状で形成されていてもよい。図１５は、バレル研磨装置１により研磨加工を行う加工物７０の一例を示す説明図である。加工物７０は、例えば、図１５に示すように、棒状の軸部７１にギア７２が設けられたものであってもよい。加工物７０は、ギア７２のような凹凸を有する形状であっても、バレル研磨装置１を用いて研磨を行うことにより、ギア７２における歯と歯の間の谷のように凹んでいる部分にも砥粒６０が入り込み、砥粒６０によって研磨を行うことができる。

【0107】

また、支持部材３０に支持部材回転装置３５を設け、支持部材回転中心ＣＳを中心として加工物７０を回転させながら研磨を行うことにより、ギア７２における谷のように凹んでいる部分に砥粒６０が入った際に、加工物７０が回転することによる遠心力によって、凹んでいる部分から砥粒６０を出すことができる。これにより、加工物７０が、ギア７２における谷のように凹んでいる部分を有して形成される場合でも、凹んでいる部分に砥粒６０が滞留することを抑制でき、加工物７０における凹んでいる部分に対して、砥粒６０を繰り返し衝突させることができる。従って、加工物７０が、ギア７２のような凹凸を有する形状であっても、凹んで形成される部分を含め加工物７０の表面に砥粒６０を満遍なく衝突させて砥粒６０によって研磨を行うことができ、研磨加工の効率を向上させることができる。

【0108】

また、上述した実施形態では、バレル槽１０を回転させるバレル槽回転装置２０は、駆動装置２１からの駆動力を駆動ベルト２４によりバレル槽１０に伝達し、バレル槽１０を回転させているが、バレル槽回転装置２０は、これ以外の構成であってもよい。また、上述した実施形態では、支持部材３０を回転させる支持部材回転装置３５は、支持部材３０ごとに設けられ、支持部材３０ごとに支持部材回転装置３５によって回転をさせているが、支持部材回転装置３５は、これ以外の構成であってもよい。

【0109】

以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。

【符号の説明】

【0110】

１ バレル研磨装置
５ 固定部材
１０ バレル槽
１１ 底部
１２ 壁部
１３ 開口部
１４ バレル軸
１５ プーリ
２０ バレル槽回転装置
２１ 駆動装置
２２ 出力軸
２３ プーリ
２４ 駆動ベルト
３０ 支持部材
３１ 回転軸
３４ 支持部
３５ 支持部材回転装置
４０ 整流部材
４１ 外側整流部材
４２ 内側整流部材
４５ 歯部
４６ 間隙部
６０ 砥粒
６１ 表面
６２ 窪み
７０ 加工物
７１ 軸部
７２ ギア

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】