(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142604
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレード、並びに風車ブレードの製造方法
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20230928BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20230928BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F03D1/06 A
F03D80/00
B29C70/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049573
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 茂
【テーマコード(参考)】
3H178
4F205
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB75
3H178CC02
3H178DD70X
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AD18
4F205AD24
4F205AG03
4F205AH04
4F205HA06
4F205HA12
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB12
4F205HC02
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HM02
4F205HT12
4F205HT16
(57)【要約】
【課題】
風車ブレード用成形品を精度よく金型上に配列することができ、また樹脂を風車ブレード用成形品間に未含浸なく成形できる風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレード、並びに風車翼の製造法を提供する。
【解決手段】
風車ブレードの翼長方向を長手方向として、かつ前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に複数配列されている、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含み、偏平かつ矩形状の一定断面を有する風車ブレード用成形品であって、部分的に2つ以上の凸部を有することを特徴とする風車ブレード用成形品。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレードの翼長方向を長手方向として、かつ前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に複数配列されている、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含み、偏平かつ矩形状の一定断面を有する風車ブレード用成形品であって、部分的に2つ以上の凸部を有することを特徴とする風車ブレード用成形品。
【請求項2】
偏平矩形断面のうち長辺側の少なくとも一面に前記凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の風車ブレード用成形品。
【請求項3】
偏平矩形断面のうち短辺側の少なくとも一面に前記凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の風車ブレード用成形品。
【請求項4】
前記凸部が前記強化繊維方向に直交する方向に延在することを特徴とする請求項2に記載の風車ブレード用成形品。
【請求項5】
少なくとも2つ以上の請求項1から4のいずれかに記載の風車ブレード用成形品が、互いに隣り合う前記風車ブレード用成形品の凸部同士が当接するよう前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に配列されていることを特徴とする風車ブレード用スパーキャップ。
【請求項6】
隣り合う前記風車ブレード用成形品の凸部同士の当接によって、隣り合う前記風車ブレード用成形品間に一定距離を有するクリアランスが形成され、そのクリアランス間に前記風車ブレード用成形品同士を接合するようマトリックス樹脂が充填されていることを特徴とする請求項5に記載の風車ブレード用スパーキャップ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の風車ブレード用スパーキャップを用いた風車ブレード。
【請求項8】
金型上に繊維基材、サンドイッチコア材およびスパーキャップを構成するよう別体で成形された略偏平かつ矩形の一定断面を有する少なくとも2つ以上の一方向性繊維強化複合材料を含む成形品を前記繊維方向が風車ブレードの長手方向に一致するよう前記風車ブレードの幅および厚み方向に配列し、真空引きしながら液状のマトリックス樹脂を前記繊維基材および前記成形品間に含浸し硬化させる風車ブレードの製造方法であって、前記成形品を金型上に配列する前に、前記成形品上の少なくとも一面上に部分的に2つ以上の凸部を形成することを特徴とする風車ブレードの製造方法。
【請求項9】
前記成形品を前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に複数配列するにあたり、互いに隣り合う前記成形品同士を前記凸部でもって互いに係止することで、前記成形品同士の移動を拘束し、金型上に位置決めすることを特徴とする請求項8に記載の風車ブレードの製造方法。
【請求項10】
前記凸部が前記成形品の前記一方向繊維に直交する方向に延在し、前記風車ブレードの厚み方向に隣り合う前記成形品同士を前記凸部で互いに係止することを特徴とする請求項9に記載の風車ブレードの製造方法。
【請求項11】
前記凸部が成形品の前記一方向繊維に直交する厚み方向に延在し、前記風車ブレードの幅方向に隣り合う前記成形品同士を前記凸部で互いに係止することを特徴とする請求項9または10に記載の風車ブレードの製造方法。
【請求項12】
前記凸部同士の係止によって、互いに隣り合う前記成形品間に一定距離離間したクリアランスを設けることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の風車ブレードの製造方法。
【請求項13】
前記クリアランスにフローメディアを配置し、さらに前記クリアランスに前記液状のマトリックス樹脂を含浸し硬化することで前記成形品同士を一体化し、前記スパーキャップを形成することを特徴とする請求項12に記載の風車ブレードの製造方法。
【請求項14】
前記クリアランスにおける前記液状のマトリックス樹脂の流動抵抗が部分的に異なるようフローメディアを配置することを特徴とする請求項13に記載の風車ブレードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレード、並びに風車ブレードの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの観点から、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーが注目されている。中でも、風力発電は風車ブレード長を大型化することで、一基あたりの発電量が大きくなり、コストパフォーマンスに優れる。そのため、欧州ではブレード長が90mから100mを超える大型風車の採用が拡大する見込みである。
【0003】
風車ブレードは軽量性と高い力学特性が求められるため、全体として繊維強化プラスチック(FRP)から構成され、ブレードの外形形状となるスキン材からなる中空構造の内部に剛性や強度部材となる梁材を配置した構造が採用されている。
図1(a)はスパーキャップ構造と呼ばれる風車ブレードならびにその代表的な断面構造である。風車ブレード10は、ブレードが風を受けた際に正圧側と負圧側となるスキン材11と、風車ブレード10の翼断面厚さが最大となる正圧側と負圧側のスキン材の一部に配置されるスパーキャップ12、スパーキャップ同士を連結するシェアウェブ13、およびスキン材内部に座屈防止を目的として配置されるサンドイッチコア材14を有している。スパーキャップ12は風車ブレードの曲げ荷重を受け持ち、シェアウェブはせん断荷重と一部の曲げ荷重を受け持つ構造となっている。
【0004】
図1(b)は
図1(a)において、スパーキャップ12周辺を表す概略図である。
【0005】
スパーキャップ12には、風車ブレード10の風による曲げ変形を効率的に抑えられるように、一方向に引き揃えた強化繊維内部にマトリックス樹脂が含浸された偏平矩形の一定断面を有する一方向性繊維強化樹脂からなる風車ブレード用成形品15をその強化繊維方向が風車ブレード10の長手方向と一致するように、風車ブレードの幅方向ならびに厚み方向に複数配列された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-287514号公報
【特許文献2】特開2015-116672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような風車ブレード10のスパーキャップ12は金型の上に風車用ブレード用成形品15をフローメディアと呼ばれる樹脂拡散媒体を間に挟みながら配列した後、風車ブレード用成形品15の間にVaRTM(Vacuum Resin Transfer Molding)法によって、液状樹脂を含浸・硬化して一体化することで成形される。
【0008】
図3は本発明の一実施形態に係る風車ブレード用成形品を用いて風車ブレードを成形する際の概略断面図である。なお、
図3は図示の簡略化のため、風車ブレードを平坦な構造として断面図を図示している。
【0009】
スパーキャップとして高い力学特性を発現させるためには、一つひとつの風車ブレード用成形品15の配列には高い位置精度が求められるが、風車ブレード1の複雑な外形状の金型31に風車ブレード用成形品15を多数配列していく際に、自重やフローメディアとの滑り等によって風車ブレード用成形品15が位置にずれが生じてしまう恐れがあり、配列作業を修正する必要が生じるなど、作業性が著しく悪化することにつながる。
【0010】
風車ブレード用成形品15を多数配列した場合、各風車ブレード用成形品15の間に形成される格子状の領域に樹脂を均一に含浸させる必要が生じ、樹脂の未含浸部が生じて、スパーキャップは所定の特性を発現できなくなる恐れがある。
【0011】
本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、風車ブレード用成形品15を精度良く金型31上に配列することができ、また樹脂を風車ブレード用成形品15間に未含浸となりにくく成形できる風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレード、並びに風車翼の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、風車ブレードの翼長方向を長手方向として、かつ前記風車翼の幅方向および厚み方向に複数配列されている、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含み、偏平かつ矩形状の一定断面を有する風車ブレード用成形品であって、部分的に2つ以上の凸部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の風車ブレード用成形品において、偏平矩形断面のうち長辺側の少なくとも一面に前記凸部を有していてもよい。
【0014】
本発明の風車ブレード用成形品において、偏平矩形断面のうち短辺側の少なくとも一面に前記凸部を有していてもよい。
【0015】
本発明の風車ブレード用成形品は、さらに前記凸部が前記強化繊維方向に直交する方向に延在していてもよい。
【0016】
また、本発明は、前記風車ブレード用成形品が、互いに隣り合う前記風車ブレード用成形品の凸部同士が当接するよう前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に配列されていることを特徴とする風車ブレード用スパーキャップである。
【0017】
本発明の風車ブレード用スパーキャップにおいて、隣り合う前記風車ブレード用成形品の凸部同士の当接によって、隣り合う前記風車ブレード用成形品間に一定距離を有するクリアランスが形成され、そのクリアランス間に前記風車ブレード用成形品同士を接合するようマトリックス樹脂が充填されていてもよい。
【0018】
また、本発明は、前記風車ブレード用スパーキャップを用いた風車ブレードである。
【0019】
上記のような、風車ブレード用成形品を用いて、スパーキャップを形成し、風車ブレードとすることで、風車ブレード用成形品を配列させる際に、互いに隣り合う前記風車ブレード用成形品の凸部同士が当接するよう前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に配列されているため、隣り合う風車ブレード成形品同士の位置が固定され、位置ずれを抑制することができる。また、位置ずれが抑制されることにより、全ての風車ブレード成形品の強化繊維が同一方向に揃い、スパーキャップ、そして風車ブレードとして高い力学特性を発現させることができる。
【0020】
本発明における風車ブレードの製造方法は、金型上に繊維基材、サンドイッチコア材およびスパーキャップを構成するよう別体で成形された略偏平かつ矩形の一定断面を有する少なくとも2つ以上の一方向性繊維強化複合材料を含む成形品を前記繊維方向が風車ブレードの長手方向に一致するよう前記風車ブレードの幅および厚み方向に配列し、真空引きしながら液状のマトリックス樹脂を前記繊維基材および前記成形品間に含浸し硬化させる風車ブレードの製造方法であって、前記成形品を金型上に配列する前に、前記成形品上の少なくとも一面上に部分的に2つ以上の凸部を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記成形品を前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に複数配列するにあたり、互いに隣り合う前記成形品同士を前記凸部でもって互いに係止することで、前記成形品同士の移動を拘束し、金型上に位置決めしてもよい。
【0022】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記成形品を前記風車ブレードの幅方向および厚み方向に複数配列するにあたり、互いに隣り合う前記成形品同士を前記凸部でもって互いに係止することで、前記成形品同士の移動を拘束し、金型上に位置決めしてもよい。
【0023】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記凸部が前記成形品の前記一方向繊維に直交する方向に延在し、前記風車ブレードの厚み方向に隣り合う前記成形品同士を前記凸部で互いに係止してもよい。
【0024】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記凸部が成形品の前記一方向繊維に直交する厚み方向に延在し、前記風車ブレードの幅方向に隣り合う前記成形品同士を前記凸部で互いに係止してもよい。
【0025】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記凸部同士の係止によって、互いに隣り合う前記成形品間に一定距離離間したクリアランスを設けてもよい。
【0026】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記クリアランスにフローメディアを配置し、さらに前記クリアランスに前記液状のマトリックス樹脂を含浸し硬化することで前記成形品同士を一体化し、前記スパーキャップを形成してもよい。
【0027】
本発明の風車ブレードの製造方法において、前記クリアランスにおける前記液状のマトリックス樹脂の流動抵抗が部分的に異なるようフローメディアを配置してもよい。
【0028】
上記のような風車ブレードの製造方法を採用することによって、風車ブレード成形品上の少なくとも一面上に部分的に2つ以上の凸部を設け、風車ブレード用成形品を金型上に配列していく際に、隣り合う風車ブレード用成形品の凸部同士を係止することでこれら成形品同士の位置決めを容易にすることができ、配列作業の手間を著しく改善することができる。また、凸部よって、構造的に定まったクリアランスを形成することができ、VaRTM成形時にマトリックス樹脂の含浸流路を設計・確保することできる。また、前記クリアランスにマトリックス樹脂を均一に流動・含浸させるために、流動抵抗が部分的に異なるようにフローメディアを配置すれば、風車ブレード用成形品によって形成された複雑な樹脂流路であっても未含浸の発生しにくい風車ブレードを成形することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレードならびに風車ブレードの製造方法によれば、風車ブレード用成形品を精度良くかつ簡便に金型上に配列することができ、またVaRTM成形で風車ブレードを成形する際に、配列した風車ブレード用成形品間にマトリックス樹脂の未含浸が発生しにくく成形できる風車ブレード用成形品、風車ブレード用スパーキャップおよび風車ブレード、並びに風車ブレードの製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】(a)風車ブレードの全体構成ならびに断面構成を表す概略図である。(b)スパーキャップ周辺部の断面構成を表す概略図である。
【
図2】(a)本発明の一実施形態に係る風車ブレード用成形品の概略図である。(b)本発明の他の実施形態に係る風車ブレード用成形品の概略図である
【
図3】本発明の一実施形態に係る風車ブレード用成形品を用いて風車ブレードを成形する際の概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る風車ブレード用スパーキャップの要部を表す概略図である。
【
図5】
図4の風車ブレード用スパーキャップの要部を上面から見た概略図である。
【
図6】
図5の風車ブレード用スパーキャップの概略図のB-B断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について図を用いて詳細に説明する。但し、実施例として記載されている部品の寸法、材質、形状、これらの相対的な配置などは、特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0032】
(実施形態1)
(風車ブレード用成形品)
図2は、本発明の一実施形態に係る風車ブレード用成形品20の要部を示す斜視図である。風車ブレード用成形品20は、偏平かつ矩形状の一定断面を有し、一定方向に延びる任意の長さを有する基体部21を有する。ここで偏平かつ矩形状の断面とは、寸法が特に限定されるものではないが、長辺と短辺の比であるアスペクト比が凡そ2~50程度の断面を指す。基体部21は一方向(y方向に一致)に引き揃えられた強化繊維基材とマトリックス樹脂からなる一方向繊維強化樹脂材料で構成されている。このような風車ブレード用成形品20は成形方法を特に限定するものでなく様々な手法が取られるが、一方向に引き揃えられた強化繊維に液状のマトリックス樹脂を含浸したものを金型内に引き込んで加熱・硬化する引抜成形法を採用することで、一定断面で、かつ高い強化繊維の直進性を得ることができる。
【0033】
強化繊維、マトリックス樹脂についても特に限定されず、強化繊維基材には炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維など、さらにこれらの混在した強化繊維の使用が可能で、マトリックス樹脂については熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれを用いることが可能である。中でも強化繊維は、高い機械特性の発現やその特性の設計のし易さ等の面からは、炭素繊維を含むことが好ましい。
【0034】
また、マトリックス樹脂の例として、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂ではアクリル系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
【0035】
風車ブレード用成形品20は、さらに基体部21の面上に部分的に少なくとも2か所以上の凸部を有する。
図2においては、基体部21の偏平矩形断面のうち長辺側の面24上に凸部22、短辺側の面25上に凸部23がそれぞれ設けられている。これらの凸部は長辺側ないし短辺側の2面のうち、片面側だけあってもよいし、両面に設けることもできる。また、凸部22ないし23は図示していない領域も含めて、基体部21上に一定間隔で複数設けてもよいし、不定間隔で複数設けることもできる。
【0036】
なお、ここで凸部22および23が延在する方向は特に限定されるものではなく、例えば長辺側の面24においては、風車ブレード用成形品20の長手方向(強化繊維の方向に一致)に対して傾斜して設けたり、途中で屈曲させたりすることもできるが、風車ブレード用成形品20の幅方向(すなわち強化繊維と直交する方向に一致)に延在するように設けることがより好ましい(理由は後述する)。
【0037】
また、凸部22および23は
図2(a)に示されるように風車ブレード用成形品20の長手方向に位置をずらして設けてもよいし、
図2(b)に示されるように凸部22と23を長手方向に対して同じ位置として、基体部21を取り囲むように凸部を設けてもよい。
【0038】
さらに、凸部22または凸部23は、基体部21の成形と同時に成形してもよいが、一定断面を有する長尺の基体部21を成形した後に凸部を設けたほうが、一定断面の成形品を連続的に成形することができる引抜成形法との相性が良く好ましい。基体部21とは別体で凸部22または凸部23を設ける方法としては、特に限定されるものではないが、例えば3Dプリンティングに代表される付加造形法は比較的簡便かつ高速で凸部を設けることができ好ましい。
【0039】
加えて、凸部22または23を構成する材料は特に限定されるものではなく、基体部31と同じマトリックス樹脂を用いてもよいし、例えば基体部21を熱硬化性樹脂、凸部22および23には熱可塑性樹脂を選択することもできる。さらに材質としては樹脂単体ではなく、これら樹脂と上述の強化繊維とで複合化し、凸部を強化することも可能である。
【0040】
(実施形態2)
(風車ブレード)
図3は本発明の第1実施例に示した風車用ブレード用成形品を用いて、風車用ブレードを成形する際の要部断面図である。
【0041】
本発明の風車ブレードは、まず風車ブレードのスキン材の外形形状を有する金型31の上にスキン材用の繊維基材32とPVCなどの樹脂の発泡体やバルサなどの木材などからなるサンドイッチコア材33、さらにフローメディア35を間に挿入しながら風車ブレード用成形品20を配列しスパーキャップ部30を形成した後、全体を真空引きしながら、液状マトリックス樹脂34を繊維基材32と配列した風車ブレード用成形品20の間に含浸し硬化させるVaRTM(Vacuum Resin Transfer Molding)によって、正圧側と負圧側の2つのスキン部材を個別に成形する。そして、別体で成形されたシェアウェブと2つのスキン材を接着剤により接着することで、風車ブレード10は製造される。ここで、繊維基材は32や液状マトリックス樹脂34は特に限定されるものではなく、前述の風車用ブレード成形品20において挙げられた材料から適宜選択される。
【0042】
図4は風車ブレード用成形品20を配列する際のスパーキャップ部30の要部を示す斜視図あり、
図5(a)は
図4のスパーキャップ部30をz方向から見た上面図、
図5(b)および(c)は
図5(a)のA1およびA2部の拡大図、さらに
図6は
図5のB-B断面図である。
【0043】
風車ブレード用成形品20を配列し、スパーキャップ部30を形成する際、配列する風車ブレード用成形品20の凸部22あるいは凸部23が先に配列されている風車ブレード成形品20の凸部22あるいは23に当接するように風車ブレード用成形品20を配列する。その結果、当接部51、52、53、54、61、62、63、64によって、新たに配列する風車ブレード用成形品20は先に配列されている風車ブレード用成形品20に対して位置決めされると共に、これらの当接部によって、配列された風車用ブレード用成形品20はその隣り合う風車ブレード成形品20に対して係止されて、摩擦力で位置ずれを拘束することができる。
【0044】
また、凸部22あるいは23が延在する方向を
図2に示すように風車ブレード用成形品20の幅方向(すなわち強化繊維と直交する方向に一致)に延在するように設けた場合、風車ブレード用成形品20の長手方向の移動拘束を最も容易に成しえることが可能になる。
【0045】
以上のような実施形態を取ることにより、風車用ブレード用成形品20を配列作業時に、成形品同士の位置決めを容易にすることができ、配列作業の手間を著しく改善することができる。
【0046】
ここで、凸部同士は点接触、線接触、面接触のいずれかで当接することになるが、少ない凸部で風車ブレード用成形品を位置決めするためには、凸部同士を線ないし面で接触させて当接することが好ましい。凸部同士を点で当接する場合、少なくとも3点以上の接触点を設ける必要があり、その結果、凸部を多くのスポットで設ける必要があり、凸部の成形性の面で劣ることになる。線接触ないし面接触で当接した場合、摩擦力による係止効果を高めることができる。なお、摩擦力だけでなく、例えば、凸部を熱可塑性樹脂で形成し、当接部を熱溶着する方法を採用すれば、さらに位置決めの信頼性を高めることも可能になる。
【0047】
さらに、当接部51、52、53、54、61、62、63、64の形成によって、互いに隣り合う風車ブレード成形品20の間にはクリアランス55、56、65、66が形成される。これらのクリアランスは、凸部の幾何形状に基づいて間隔が定まるため、風車ブレード用成形品20を配列していく際に、より金型に近い下部において、上に配列される風車ブレード用成形品の重みによってクリアランスが狭まりにくく、VaRTM成形時に樹脂の含浸流路を確実に確保することできる。
【0048】
なお、風車ブレード用成形品20の凸部22または凸部23の形状(特に高さ)によって、クリアランス55、56、65、66の間隔は決定されるが、クリアランスを大きく設定すると液状マトリックス樹脂が含浸し易く一方で、風車用ブレード成形品と比較して、強度的かつ構造的に弱い箇所となるため、樹脂含浸に影響しない程度にクリアランス量は薄くすることが好ましい。風車ブレード用成形品の凸部の高さを概ね0.1~1mm程度としておけば、樹脂含浸性と力学特性を両立することができる。
【0049】
加えて、このクリアランス55、56、65、66には流動抵抗が異なるフローメディア35が配置される。係るフローメディア35は全てのクリアランスにおいて、同一のフローメディアを配置することもできるが、当接部51、52、53、54、61、62、63、64が仕切りの役割を果たすことによって、クリアランス55、56、65、66が構造的に区切られることになるため、各クリアランスにおける流動抵抗を変えることができるため、スパーキャップ部30内部の樹脂含浸速度を均一にし、未含浸しにくくスパーキャップ部を成形することが可能になる。
【0050】
ここで、フローメディア35は風車ブレードを成形するにあたり、繊維基材32や液状マトリックス樹脂34、さらには成形条件により適切に選定することができる。フローメディア35の材質としては、ナイロンやポリエステル、ポリプロピレンなど樹脂、ステンレスなどの金属など、形態についてはメッシュ状、パンチング状、不織布状などのものを適宜選択できる。
【0051】
流動抵抗を変えるためには、上記に挙げたフローメディア35から材質や目付、メッシュ状の場合はメッシュの間隔、挿入枚数を変更・組み合わせるなど任意の手法を採用することができ、その設定は風車ブレードの大きさや風車ブレード用成形品の配置、樹脂注入箇所や方法によって適宜CAEなどを用いて設計することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 風車ブレード
11 スキン材
12 スパーキャップ
13 シェアウェブ
14 サンドイッチコア材
15、20 風車ブレード用成形品
21 基体部
22、23 凸部
30 スパーキャップ部
31 金型
32 繊維基材
33 サンドイッチコア材
34 液状マトリックス樹脂
35 フローメディア
51、52、53、54、61、62、63、64 当接部
55、56、65、66 クリアランス