(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142612
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】加工アユ食品の製造方法及び加工アユ食品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20230928BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L17/00 E
A23B4/06 501D
A23B4/06 501E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049592
(22)【出願日】2022-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】520332933
【氏名又は名称】岩本 博
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】岩本 博
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AD39
4B042AE10
4B042AG15
4B042AH01
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP18
4B042AP30
4B042AW10
(57)【要約】
【課題】本発明は、より魅力的で美味となりうる加工アユ食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る加工アユ食品の製造方法は、(S1)アユから内臓を取り除く内蔵除去する内蔵除去ステップ、(S2)アユの魚体表面を被っている皮膚粘膜を取り除く皮膚粘膜除去ステップ、(S3)アユを焼き調理する焼き調理ステップ、(S4)焼き調理されたアユを真空包装袋内に収容して凍結する凍結ステップ又は凍結して真空包装袋内に収容する凍結ステップ、(S5)凍結されたアユに対して加熱するステップを有するものであり、本発明の他の一観点に係る加工アユ食品は、内臓及び皮膚粘膜が除去され焼き調理がなされた後に、冷凍された加工アユと加工アユを真空保存する真空包装袋を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アユから内臓を取り除く内蔵除去する内蔵除去ステップと、
前記アユの魚体表面を被っている皮膚粘膜を取り除く皮膚粘膜除去ステップと、
前記アユを焼き調理する焼き調理ステップと、
焼き調理された前記アユを真空包装袋内に収容して凍結する冷凍ステップ又は凍結して真空包装袋内に収容する凍結ステップと、を有する加工アユ食品の製造方法。
【請求項2】
取り除かれた前記アユの内蔵のあった部分に、調味食材を挿入する食材挿入ステップと、を有する請求項1記載の加工アユ食品の製造方法。
【請求項3】
前記調味食材は、ペースト状又は液状のソースを、シート状の食材により包んだものである請求項2記載の加工アユ食品の製造方法。
【請求項4】
凍結された前記アユに対して加熱する加熱ステップ、を有する請求項1記載の加工アユ食品の製造方法。
【請求項5】
内臓及び皮膚粘膜が除去され焼き調理がなされた後に冷凍された加工アユと、
前記加工アユを真空保存する真空包装袋と、を有する加工アユ食品。
【請求項6】
除去された前記加工アユの前記内蔵のあった位置に挿入される調味食材を有する請求項5記載の加工アユ食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工アユ食品の製造方法及び加工アユ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類は我々の食生活において欠かすことができない重要な食物であって、その中でも川魚は日本の伝統食として古くから親しまれている。川魚の加工方法に関しては、例えば下記特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、川魚のうち、アユは、藻や苔を食べて育つため、臭みが少なく味が良いといった特徴がある。またアユは養殖も可能であり、宿泊施設で郷土料理として提供可能であることはもちろん、一般家庭料理としても提供が可能である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、粘膜及び内臓を取り除いた後冷凍するものであって、解凍の方法によってはその味に大きな影響が生じてしまう。特に、解凍後に焼き調理を行うような場合、解凍した魚体から漏出する水分によって身が崩れて味が悪くなってしまうといった課題がある。すなわち、十分に魅力的な加工アユ食品とするためには課題が残る。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より魅力的で美味となりうる加工アユ食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る加工アユ食品の製造方法は、アユから内臓を取り除く内蔵除去する内蔵除去ステップと、アユの魚体表面を被っている皮膚粘膜を取り除く皮膚粘膜除去ステップと、アユを焼き調理する焼き調理ステップと、焼き調理されたアユを真空包装袋内に収容して凍結する凍結ステップ又は凍結して真空包装袋内に収容する凍結ステップと、を有するものである。
【0008】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、取り除かれたアユの内蔵のあった部分に、調味食材を挿入する食材挿入ステップと、を有することが好ましい。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、調味食材は、ペースト状又は液状のソースを、シート状の食材により包んだものであることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、凍結されたアユに対して加熱する加熱ステップ、を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係る加工アユ食品は、内臓及び皮膚粘膜が除去され、焼き調理がなされた後に、冷凍された加工アユと、
加工アユを真空保存する真空包装袋と、を有する。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、除去されたアユの内蔵のあった位置に挿入される調味食材を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によって、より魅力的で美味となりうる加工アユ食品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る加工アユ食品の製造方法のフローを示す図である。
【
図2】本実施形態に係る加工アユ食品の製造方法の内蔵除去ステップのイメージを示す図である。
【
図3】本実施形態に係る加工アユ食品の製造方法の食材挿入ステップのイメージを示す図である。
【
図4】本実施形態に係る加工アユ食品の製造方法の凍結ステップのイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載の具体的な例示にのみ限定されるわけでは無い。
【0016】
図1は、本実施形態に係る加工アユ食品の製造方法(以下「本製造方法」という。)のフローの概略を示す図である。本図で示すように、本製造方法は、(S1)アユから内臓を取り除く内蔵除去する内蔵除去ステップと、(S2)アユの魚体表面を被っている皮膚粘膜を取り除く皮膚粘膜除去ステップと、(S3)アユを焼き調理する焼き調理ステップと、(S4)焼き調理されたアユを真空包装袋内に収容して凍結する凍結ステップ又は凍結して真空包装袋内に収容する凍結ステップと、を有するものである。
【0017】
本製造方法では、上記の通り(S1)アユから内臓を取り除く内蔵除去する内蔵除去ステップを有する。
【0018】
本製造方法においてアユは、キュウリウオ目に分類される淡水の川魚である。アユの餌は上記の通り藻や苔等が主であり、特に水質の良い川で育ったアユは香りがよく美味である。
【0019】
本ステップにおいては、まず、内臓を取り除く。内臓の取り除き方については特に限定されるものではないが、アユの腹部を包丁等の刃物により切り裂き開腹し、内臓を取り出して廃棄する作業が該当する。この場合のイメージ図を
図2に示しておく。内臓はアユの体内に残っていると長期保存を行った際に不快臭を発生させる原因となるため、内臓を除去する必要がある。また、後述のステップから明らかなように、この内臓を除去した部分に調味食材を挿入することでアユの形状を大きく変更させることなく加工アユ食品とすることが可能となる。なお、本ステップにおいては、その前後にアユを水で洗浄することが好ましい。これは汚れや除去された内臓がアユ本体に残ってしまうのを防止するために有用である。
【0020】
また本製造方法では、(S2)アユの魚体表面を被っている皮膚粘膜を取り除く皮膚粘膜除去ステップを有する。
【0021】
アユの魚体表面は、皮膚粘膜によっておおわれている。この皮膚粘膜は上記内蔵と同様、魚体表面に残っていると長期保存を行った際に不快臭を発生させる原因となるため、焼き調理ステップの前に除去しておくことが好ましい。なお本ステップにおいて、皮膚粘膜だけでなく鱗を除去することとしてもよい。
【0022】
本ステップの具体的な皮膚粘膜除去方法としては、これを十分に除去することができる限りにおいて限定されるわけでは無いが、市販されている「うろこ取り具」を用いて鱗ごと皮膚粘膜を除去することが好ましい。なおこの際、必要以上に鱗の下にある魚肉を傷つけないように注意する必要がある。また本ステップにおいても、上記内蔵除去ステップと同様、このステップの前後にアユを水で洗浄することが好ましい。これは表面の汚れや除去されきれていない鱗や皮膚粘膜がアユ本体に残ってしまうのを防止するために有用である。
【0023】
なお、本製造方法では、各ステップを説明する観点から、内蔵除去ステップを説明した後で、皮膚粘膜除去ステップについて説明しているが、実際に本製造方法では、この皮膚粘膜除去ステップの後に内蔵除去ステップを実行することが可能であり、順番は容易に交換可能である。また、これらをほぼ同時に一連の作業として行うことも好ましい。
【0024】
また本製造方法では、(S3)アユを焼き調理する焼き調理ステップを有する。本ステップは、上記内蔵除去ステップ、皮膚粘膜除去ステップの後に行うステップである。
【0025】
アユに対して焼き調理を行う方法としては、特に限定されるわけでは無く、アユの口から細棒(串)を刺して炭火等周囲に配置して焼き調理を行う方法であってもよく、また、アユを金網の上に横に載せて火で焼く方法であってもよい。ただしいずれの場合でも十分にアユに火が通ることが肝心である。冷凍前に焼き調理を行うことで、解凍後に水っぽくなり味が落ちてしまう懸念を防ぐことが可能となるとともに、焼いた場合の身崩れ等を防止することができる。
【0026】
また、本ステップにおいては、焼き調理に先立ち、取り除かれたアユの内蔵のあった部分(腹腔内)に、調味食材を挿入する食材挿入ステップと、を有することが好ましい。なおこの場合は、アユを金網の上に載せて火で焼く方法を採用する方が、アユの内蔵のあった部分に調味食材を詰めた場合にこの調味食材の漏出を防ぐことができるようになるといった利点がある。
【0027】
またここで、調味食材としては、いわゆるペースト状又は液状のソースであることが好ましい。焼き調理においてソースを添加することで、焼き調理においてソースによる味付けや香りづけが可能となるとともに、アユを食する際、深い味わいを得ることができるようになる。またここでソースとしては、アユに味をつけることができるものである限りにおいて限定されるわけでは無いが、バジルソース、トマトソース、オイスターソース、梅肉ソース等、食材をペースト状又は液体状にしたソース等であってもよく、また、野菜や果物にスパイスや酢等を加えて熟成したいわゆる液状のウスターソース等であってもよく、更には、ミソ等のペーストであってもよい。ペースト状又は液状とすることで、加工アユ食品を食する際、アユの外見を残し、アユの香りを生かしつつ魚肉とソースが絡み合い非常に美味となる。
【0028】
さらに、ここで、このペースト状又は液状のソースを、シート状の食材により包んだものであることがより好ましい。ペースト状又は液状のソースは、焼き調理によってより粘度が低くなり、アユの内蔵のあった部分から溶けだしやすくなる。そのため、シート状の食材により包むことで、この漏出を防ぐことが可能となる。この場合における調理のイメージ図を
図3に示しておく。ここで「シート状の食材」としては、特に限定されるわけでは無いが、餃子の皮や春巻きの皮等小麦粉等の粉を練って平板状にしたものや、野菜などをペースト状にして薄くした状態で乾燥させて平板状にしたいわゆる野菜シートであることが好ましい。
【0029】
なお、本ステップでは、調味食材は、焼き調理を行う際に既にアユの内臓があった部分に入れた上で焼き調理を行った方が好ましいが、焼き調理を行った後に調味食材を挿入させることとしてもよい。本実施形態に係る加工アユ食品(以下「本加工アユ食品」という。)は、後述のように、凍結するものであるが、これには解凍作業が必要であり、解凍作業は例えば湯煎や電子レンジ等の加熱による解凍作業となる。そしてこの解凍作業が加熱調理ともなり、この加熱調理によって、調味食材が魚肉に対する味付け処理や香りづけ処理が可能となるといった利点がある。
【0030】
以上のステップにより、本製造方法では、内蔵及び皮膚粘膜が除去された焼きアユ食品を得ることができ、更には、内臓があった部分に調味食材を挿入することで、アユの形を残しつつ、アユの香りを生かして味わいのある焼きアユ食品を得ることができるようになる。また、本製造方法では、後述のステップを踏むことにより、さらなる調理が行われ、通常の焼きアユでは味わうことができない加工アユ食品となる。
【0031】
また本製造方法では、(S4)焼き調理されたアユを真空包装袋内に収容して凍結する凍結ステップ又は凍結して真空包装袋内に収容する凍結ステップを有する。本ステップでは焼き調理されたアユを凍結することにより、長期保存が確保できるとともに熟成され、後述のように加熱するステップを介することで、蒸し魚料理としての側面を持たせることが可能となる。本ステップのイメージ図について
図4に示しておく。
【0032】
本ステップでは、焼き調理されたアユを真空包装袋内に収容することができる限りにおいて限定されるわけでは無いが、真空包装袋としてナイロンやポリエチレン等の透過性及び柔軟性のある袋を用いることが好ましく、具体的には、焼き調理されたアユを収容し、真空に引きながら閉じ、冷凍処理を施すことが好ましい。このようにすることで長期保存が可能となる。なお、後述のように、焼き調理を行った後、内臓のあった位置に調味食材を挿入することとした場合、この焼き調理されたアユを袋に入れる直前に挿入することとしてもよい。本ステップでは、凍結しているとはいえ、密封状態で調味食材と焼き調理されたアユが密着することとなるため、徐々にではあるが調味食材の風味をアユの魚肉に映すことが可能となる。なお、本ステップでは、上記に記載の通り、焼き調理されたアユを冷凍処理し、真空に引きながら閉じることとしてもよい。
【0033】
また、この結果、本製造方法によって、内臓及び皮膚粘膜が除去されて焼き調理がなされた後に冷凍された加工アユと、加工アユを真空保存する真空包装袋と、を有する加工アユ食品を得ることが可能となる。また、除去されたアユの内蔵のあった位置に調味食材を挿入することで、調味食材を有する加工アユ食品となる。
【0034】
また、本製造方法において、限定されるわけでは無いが、(S5)凍結されたアユに対して加熱する加熱ステップ、を有することも好ましい。上記(S1)から(S4)の工程によって加工アユ食品を得ることができるが、これを実際に食する場合、上記(S5)のステップを加えることで蒸し調理を加えることができる。具体的には、凍結されたアユは真空包装袋内に密封されるため、アユそのものの中に含まれる水分はその真空包装袋内に閉じ込められ、蒸し魚のような蒸し処理をされることになる。すなわち、本製造方法では、魚を焼いて余分な水分を除去することで生臭さを落とし、その後密封した状態にて蒸し処理を行うことで単なる焼き魚ではなく焼き蒸し魚とすることが可能となる。特に、内臓のあった部分に調味食材を挿入して焼く、又は焼いてから調味食材を内蔵のあった部分に挿入することで、より深い味をアユ食品に加えることが可能となる。なお、真空包装袋は密封した状態で行うこととしてもよいが、完全に密封した状態では水蒸気による膨張によって袋が破裂してしまう恐れがあるため、少なくとも一部に切れ込みを入れた状態としてもよい(この意味で、本明細書でいう「密封」には、真空包装袋に一部切込みを入れた状態も「密封」に含ませる。)。
【0035】
以上、本方法によると、より魅力的で美味となりうる加工アユ食品、具体的にはアユの生臭さを抑えるだけでなく、焼き調理及び蒸し調理を行うことによるより味の良い加工アユ食品を得ることが可能となる。
【実施例0036】
ここで、実際に上記実施形態に係る加工アユ食品の製造方法及び加工アユ食品について製造し、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0037】
まず、同じ程度の重さ、大きさのアユを5匹準備し、そのそれぞれに対し、うろこ取り器により皮膚粘膜及び鱗を丁寧にとり、また、包丁により開腹して内臓を除去し、十分に水洗いした。
【0038】
(例1)
そして、1匹のアユに対し、バジルソースを野菜シートに包み、アユの内蔵のあった部分に挿入した後、焼き調理を行い、焼き調理された加工アユを作成した。また、この加工アユについては、真空包装袋内に挿入し、真空に引いた後密封し、冷凍庫により冷凍保存した。この結果「例1」の加工アユ食品を製造した。
【0039】
(例2)
また、他の1匹のアユに対し、上記例1とは異なり、内臓のあった部分にソースを挿入することなくそのまま焼き調理を行い、焼き調理された加工アユを作成した。また、この加工アユについては、真空包装袋内に挿入し、真空に引いた後密封し、冷凍庫により冷凍保存した。この結果「例2」の加工アユ食品を製造した。
【0040】
(例3)
また、他の1匹のアユに対し、上記例1とは異なり、内臓のあった部分にソースを挿入することなくそのまま焼き調理を行い、焼き調理された加工アユを作成した。その後、バジルソースを野菜シートに包み、加工アユの内蔵のあった部分に挿入した後、真空包装袋内に挿入し、真空に引いた後密封し、冷凍庫により冷凍保存した。この結果「例3」の加工アユ食品を製造した。
【0041】
(例4)
また、他の1匹のアユに対し、内臓のあった部分に、バジルソースを野菜シートに包んだ調味食材を挿入し、焼き調理を行わない状態でそのまま真空包装袋内に挿入し、真空に引いた後密封し、冷凍庫により冷凍保存した。この結果「例4」の加工アユ食品を製造した。
【0042】
(例5)
また、他の1匹のアユに対し、焼き調理もソースの挿入もせずそのまま真空包装袋内に挿入し、真空に引いた後密封し、冷凍庫により冷凍保存した。この結果「例5」の加工アユ食品を製造した。
【0043】
(結果)
上記例1乃至例5の加工アユ食品に対し、3日ほど冷凍保存したのち解凍を行い、その味について評価を行った。なお、上記いずれの加工アユ食品に対しても、解凍は湯煎にて行い、十分に温まった後、開封して加工アユ食品を皿に取り出し、その味について評価を行った。ただし、焼き調理を行っていない例4及び例5については、その後焼き調理を行って加工アユ食品とした。
【0044】
例1の加工アユ食品は、調味食材を挿入した後で焼き調理を行っており、焼きとともに風味付けを行ったのち、冷凍したことにより熟成され、非常に美味であった。特に、湯煎加熱によって蒸し処理と同様の処理を行うことができたため、焼き蒸し魚としての風味がまし、非常に美味であった。特に、外見においてアユの形状をそのまま残しており、アユ料理としての視覚的価値は十分に維持できていた。
【0045】
例2の加工アユ食品は、調味食材を用いていないため、例1よりも味が薄いという特徴があったが、湯煎加熱によって蒸し処理と同様の処理を行うことができたため、他の調味料をかけることなどで味付けをすることが好ましかったが、焼き蒸し魚として美味であった。
【0046】
例3の加工アユ食品は、焼き調理を行った後で調味食材を挿入したものであるため、焼き調理の際に風味付けを行うことができなかったためその分味は薄くなってしまっていたが、冷凍して保存されたことにより熟成され、非常に美味であった。特に、湯煎加熱によって蒸し処理と同様の処理を行うことができたため、焼き蒸し魚としての風味が増し、非常に美味であった。
【0047】
例4の加工アユ食品は、調味食材を挿入したものであるが、焼き調理を行っておらずその際の風味付けを行うことはできなかった。冷凍して保存された状態では調味食材と保存され、その後解凍加熱によって多少の風味を感じることができたが、蒸した後で焼き処理を行うこととなったため身崩れも生じ、焼き具合もあまり好ましくなく、また蒸し処理を行ったため野菜シートがふやけて膨張しソースが漏れ出す等十分効果的な味付けとはいかなかった。
【0048】
例5の加工アユ食品は、焼き調理を行っておらず、また、調味食材も挿入していなかったため、風味付けは行われていなかった。また、解凍して水っぽくなった状態になった後で焼き処理を行うこととなったため、身崩れも生じ、焼き具合もあまり好ましくなく、生臭さも残りおいしい焼き魚とは言えなかった。
【0049】
以上の通り、例1~例3については、焼き調理を行った後に真空包装袋により密封することで熟成させて味を良くすることができ、特に例1、例3においては調味食材を挿入することで味を十分になじませることができた。一方、例4、5については、焼く前に真空包装袋に入れてしまったため焼き調理に好ましい状態ではなく、特に例5については、何も処理していない状態に比べると非常に生臭さを抑えることはできていたものの、それでも生臭さが残ってしまっているといった課題があることを確認した。以上の通り、本発明の効果について確認することができた。