(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142642
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】移動体無線通信特性試験装置及び移動体無線通信特性試験方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/30 20150101AFI20230928BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04B17/30
G01R29/08 A
G01R29/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049637
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
(71)【出願人】
【識別番号】503062345
【氏名又は名称】東京計器アビエーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】幸 嘉平太
(72)【発明者】
【氏名】紺野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝宏
(57)【要約】
【課題】移動体と操縦機との間の無線通信の特性試験を安全に行えるようにすること。
【解決手段】本発明では、操縦機(3)と、操縦機(3)で無線操縦されることで移動する移動体(2)との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験装置(1)及びこれを用いた移動体無線通信特性試験方法において、操縦機(3)からの無線通信が途絶した際に移動体(2)の移動を規制するための移動規制室(4)を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室(4)の内部の移動体(2)と移動規制室(4)の外部の操縦機(3)との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段(5)を設け、減衰手段(5)による電波の減衰を変更することで移動体(2)と操縦機(3)との間で無線通信される電波の特性を試験することにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験装置において、
操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設けたことを特徴とする移動体無線通信特性試験装置。
【請求項2】
前記減衰手段は、移動規制室に形成した貫通孔に電波の波長に応じて電波を減衰させる減衰体を交換可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の移動体無線通信特性試験装置。
【請求項3】
前記減衰手段は、移動規制室の内外にパッシブリピータを電波の減衰率を変更可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の移動体無線通信特性試験装置。
【請求項4】
操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験方法において、
操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設け、減衰手段による電波の減衰を変更することで移動体と操縦機との間で無線通信される電波の特性を試験することを特徴とする移動体無線通信特性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦機と同操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験装置及び移動体無線通信特性試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンに代表される無線操縦可能な移動体は、様々な用途で広く利用されている。
【0003】
この無線操縦可能な移動体は、操縦機との間で無線通信が行われ、操縦機から送信される電波を受信して、遠隔操作される(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線操縦可能な移動体においては、操縦機を操作する操縦者が、移動体を目視することができない遠距離で操作を行ったり、建屋の壁等の障害物が介在する環境下で操作を行う必要もある。
【0006】
そして、移動体と操縦機との間の距離が長くなったり移動体と操縦機との間に障害物が介在していると、操縦機からの無線通信の電波が減衰してしまい、操縦機からの無線通信が途絶し、移動体が落下や暴走する危険がある。
【0007】
そのため、移動体と操縦機との間で無線通信される電波の特性を予め試験しておく必要がある。なお、従来のトランシーバー等の送信機と受信機との間で無線通信される電波の特性を試験する装置やそれを用いた方法では、そのまま移動体と操縦機との間で無線通信される電波の特性試験に適用しても、試験中に操縦機からの無線通信が途絶して、移動体が落下や暴走する危険があるため、安全に試験を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験装置において、操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設けることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記減衰手段は、移動規制室に形成した貫通孔に電波の波長に応じて電波を減衰させる減衰体を交換可能に設けることにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記減衰手段は、移動規制室の内外にパッシブリピータを電波の減衰率を変更可能に設けることにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験方法において、操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設け、減衰手段による電波の減衰を変更することで移動体と操縦機との間で無線通信される電波の特性を試験することにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験装置において、操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設けることにしているために、試験中に操縦機からの無線通信が途絶して移動体が落下や暴走しても、移動規制室の内部で移動体の移動を規制することができるので、安全に移動体と操縦機との間の無線通信の特性試験を行うことができる。
【0014】
特に、前記減衰手段として、移動規制室に形成した貫通孔に電波の波長に応じて電波を減衰させる減衰体を交換可能に設けた場合には、減衰体を交換することによって移動体と操縦機との間の無線通信の特性を容易に試験することができる。
【0015】
また、前記減衰手段として、移動規制室の内外にパッシブリピータを電波の減衰率を変更可能に設けた場合には、パッシブリピータの減衰率を変更することによって移動体と操縦機との間の無線通信の特性を容易に試験することができる。
【0016】
また、操縦機と、操縦機で無線操縦されることで移動する移動体との間で無線通信される電波の特性を試験するための移動体無線通信特性試験方法において、操縦機からの無線通信が途絶した際に移動体の移動を規制するための移動規制室を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室の内部の移動体と移動規制室の外部の操縦機との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段を設け、減衰手段による電波の減衰を変更することで移動体と操縦機との間で無線通信される電波の特性を試験することにした場合には、試験中に操縦機からの無線通信が途絶して移動体が落下や暴走しても、移動規制室の内部で移動体の移動を規制することができるので、安全に移動体と操縦機との間の無線通信の特性試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る移動体無線通信特性試験装置を示す説明図。
【
図2】減衰手段として減衰体を用いた移動体無線通信特性試験装置を示す説明図。
【
図3】減衰手段としてパッシブリピータを用いた移動体無線通信特性試験装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る移動体無線通信特性試験装置及び移動体無線通信特性試験方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、移動体無線通信特性試験装置1は、移動体2と、移動体2を無線操縦するための操縦機3との間で無線通信される電波の特性を試験するための装置である。ここで、移動体2は、操縦機3で無線操縦されることによって移動することができる機器であればよく、ドローンのような飛行体であってもよく、ラジオコントロールカーのような走行体であってもよく、さらには、遠隔操作ロボットのような移動機器(作業機器)などであってもよい。
【0020】
移動体無線通信特性試験装置1は、移動体2の移動を規制することができる移動規制室4と、移動規制室4の内部の移動体2と移動規制室4の外部の操縦機3との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段5とを有している。
【0021】
移動規制室4は、移動体2の移動を規制するとともに、外部からの雑音電波(移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波以外の電波)を遮蔽することができる構造となっている。なお、後述するように、移動規制室7は、減移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波を減衰して通すことができるようになっている。
【0022】
この移動規制室4としては、試験室内等に固定した構造であってもよく、屋内外等に組み立て可能な構造であってもよい。また、移動規制室4は、移動体2が衝突して破損しないように床や天井や周壁に緩衝材を設けてもよい。さらに、移動規制室4は、外部からの雑音電波を遮蔽することができるシールドルーム内に移動体2の移動を規制する箱状又は枠状の囲い(飛行体のように3次元空間を移動する移動体2では箱状の囲いとなり、走行体のように主に2次元平面を移動する移動体2では枠状の囲いとなる。)を設けた構成でもよい。
【0023】
減衰手段5は、移動規制室4の内部の移動体2と移動規制室4の外部の操縦機3との間で無線通信される電波を減衰させることができればよく、異なる素材や厚みや貫通孔のサイズを異ならせた同一素材を用いて電波の減衰率を変更できるようにしてもよく、電波の減衰率を変更可能な機器を用いてもよい。
【0024】
この移動体無線通信特性試験装置1を用いた移動体無線通信特性試験方法では、移動規制室4の内部に移動体2を配置する一方、移動規制室4の外部に操縦機3を配置し、その後、操縦機3によって移動体2を無線操縦して移動体2を移動させ、その際に、移動体2と操縦機3との間の無線通信(操縦機3から移動体2への無線通信に限られず、移動体2から操縦機3への無線通信も含む。)で使われる電波を減衰手段5で減衰させる。
【0025】
そして、移動体無線通信特性試験装置1の減衰手段5による電波の減衰を変更することで、移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波の特性を試験する。
【0026】
特に、移動体無線通信特性試験装置1の減衰手段5によって移動体2と操縦機3との間の無線通信が途絶してしまうまで試験を行うことで、移動体2と操縦機3との間の無線通信が途絶してしまう条件(減衰率)を確認することができる。なお、移動体2と操縦機3との間の無線通信が途絶してしまう減衰率が計測できれば、それを用いて公知の計算式から移動体2と操縦機3との間の無線通信が途絶してしまう距離(移動体2と操縦機3との最大通信可能距離)を算出することができる。
【0027】
ここで、移動体無線通信特性試験装置1の減衰手段5としては、
図2に示すように、移動規制室4に形成した貫通孔6に矩形枠状のホルダー7を取付けるとともに、ホルダー7に電波の波長に応じて電波を減衰させることができる矩形板状の減衰体8を交換可能に設けた構造のものを用いることができる。なお、減衰体8の大きさは、移動体2や操縦機3に設けられた送信装置の3dBビーム幅又はフレネル領域の大きさ以上としている。
【0028】
減衰体8としては、1又は複数の貫通させた開口9を形成した板状体を用いることができる。この場合、移動体2や操縦機3に設けられた送信装置の送信周波数のカットオフ波長以下の寸法とし、開口9の孔径や孔数を変えることで減衰体8の減衰率を公知の計算式から算出することができる。なお、減衰体8の減衰率は、実測によって求めてもよい。また、減衰体8に複数の開口9を形成する場合には、周波数によっては干渉縞が大きくなるように開口ピッチを波長の1/4以下としてもよく、開口9をランダムに配置することで位相面が揃わないようにしてもよい。
【0029】
また、減衰体8としては、減衰率の異なる素材や異なる厚みの板状体を用いることもできる。この場合も、減衰体8ごとの減衰率として理論値から求めてもよく、減衰体8ごとに予め減衰率を実測によって求めてもよい。
【0030】
そして、移動体無線通信特性試験を行う際には、異なる減衰率の複数の減衰体8を交換して用いることで、減衰体8による電波の減衰を変更して、移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波の特性を試験する。
【0031】
また、移動体無線通信特性試験装置1の減衰手段5としては、
図3に示すように、移動規制室4の内外に設けた電波の減衰率が変更可能なパッシブリピータ10を用いることができる。
【0032】
パッシブリピータ10としては、移動規制室4にコネクタ11を設け、移動規制室4の内部側のコネクタ11に、移動体2との間で無線通信可能なアンテナ12を可変減衰器13を介して接続するとともに、移動規制室4の外部側のコネクタ11に、操縦機3との間で無線通信可能なアンテナ14を接続したものを用いることができる。なお、可変減衰器13は、コネクタ11とアンテナ14との間に介設してもよい。また、アンテナ12とアンテナ14との間の経路における損失や利得については、計算又は実測により予め求めておく。
【0033】
そして、移動体無線通信特性試験を行う際には、パッシブリピータ10の可変減衰器13による減衰率を変更することで電波の減衰を変更して、移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波の特性を試験する。
【0034】
以上に説明したように、上記移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法は、操縦機3と、操縦機3で無線操縦されることで移動する移動体2との間で無線通信される電波の特性を試験するものであり、操縦機3からの無線通信が途絶した際に移動体2の移動を規制するための移動規制室4を外部からの雑音電波を遮蔽可能に形成するとともに、移動規制室4の内部の移動体2と移動規制室4の外部の操縦機3との間で無線通信される電波を減衰させるための減衰手段5を設け、減衰手段5による電波の減衰を変更することで移動体2と操縦機3との間で無線通信される電波の特性を試験する構成となっている。
【0035】
そのため、上記構成の移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法では、試験中に操縦機3からの無線通信が途絶して移動体2が落下や暴走しても、移動規制室4の内部で移動体の移動を規制することができるので、移動体2が人や物などに衝突するのを防止することができ、安全に移動体2と操縦機3との間の無線通信の特性試験を行うことができる。
【0036】
また、上記移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法は、減衰手段5として、移動規制室4に形成した貫通孔6に電波の波長に応じて電波を減衰させる減衰体8を交換可能に設け構成とすることができる。
【0037】
そして、上記構成の移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法では、減衰体8を交換することによって移動体2と操縦機3との間の無線通信の特性を容易に試験することができる。
【0038】
また、上記移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法は、減衰手段5として、移動規制室4の内外にパッシブリピータ10を電波の減衰率を変更可能に設けた構成とすることができる。
【0039】
そして、上記構成の移動体無線通信特性試験装置1やこれを用いた移動体無線通信特性試験方法では、パッシブリピータ10の減衰率を変更することによって移動体2と操縦機3との間の無線通信の特性を容易に試験することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 移動体無線通信特性試験装置 2 移動体
3 操縦機 4 移動規制室
5 減衰手段 6 貫通孔
7 ホルダー 8 減衰体
9 開口 10 パッシブリピータ
11 コネクタ 12 アンテナ
13 可変減衰器 14 アンテナ