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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142667
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】管継手の水圧試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20230928BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01M3/28 P
G01M3/26 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049682
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(71)【出願人】
【識別番号】000252207
【氏名又は名称】六菱ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 将吾
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA13
2G067AA16
2G067BB02
2G067BB26
2G067BB34
2G067CC02
2G067DD02
2G067EE08
(57)【要約】
【課題】弾性リングの摩耗を防止して水密性を確保した管継手の水圧試験装置を提供する。
【解決手段】本体部5と、本体部5の管軸方向一端側の外面に設けられ、接続された一方の管2の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第一止水ユニット6と、本体部5の管軸方向他端側の外面に設けられ、接続された他方の管3の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第二止水ユニット7と、管軸方向に沿う押出力を発生する押出装置8と、を有し、両止水ユニット6、7が、本体部5の外面に固定される固定フランジ11と、押出装置8の押出力によって管軸方向に摺動可能な固定フランジ11と管軸方向に離間して設けられる摺動フランジ12と、固定フランジ11と摺動フランジ12を跨ぐように設けられ、固定フランジ11と摺動フランジ12が管軸方向に接近するのに伴って外向きに変形して管2、3の内面に当接する弾性リング13と、を有する構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に沿って延びる本体部(5)と、
前記本体部(5)の管軸方向一端側の外面に設けられ、接続された一方の管(2)の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第一止水ユニット(6)と、
前記本体部(5)の管軸方向他端側の外面に設けられ、接続された他方の管(3)の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第二止水ユニット(7)と、
管軸方向に沿う押出力を発生する押出装置(8)と、
を有し、前記第一止水ユニット(6)および前記第二止水ユニット(7)が、前記本体部(5)の外面に固定される固定フランジ(11)と、前記押出装置(8)の押出力によって前記本体部(5)の外面に沿って管軸方向に摺動可能な前記固定フランジ(11)と管軸方向に離間して設けられる摺動フランジ(12)と、前記固定フランジ(11)と前記摺動フランジ(12)を跨ぐように設けられ、前記固定フランジ(11)と前記摺動フランジ(12)が管軸方向に接近するのに伴って外向きに変形して前記管(2、3)の内面に当接する弾性リング(13)と、を有する管継手の水圧試験装置。
【請求項2】
前記押出装置(8)が前記第一止水ユニット(6)と前記第二止水ユニット(7)の間に設けられている請求項1に記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項3】
前記押出装置(8)がシリンダであって、前記本体部(5)と一体の内筒(26)と、前記内筒(26)の外側に同軸に設けられる外筒(27)と、前記内筒(26)と前記外筒(27)の間に設けられる環状のピストン(28)と、を有する請求項1または2に記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項4】
前記固定フランジ(11)と前記摺動フランジ(12)の間に、両フランジ(11、12)を離間する方向に付勢する付勢部材(24)を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項5】
前記弾性リング(13)が、前記固定フランジ(11)と前記摺動フランジ(12)によって管軸方向に挟み込まれる挟み込み領域よりも前記管(2、3)の内壁に向かって張り出した張り出し部(16)と、前記挟み込み領域内かつ前記張り出し部(16)の管軸心側に形成された凹部(17)と、を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の管継手の水圧試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手の水圧試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダクタイル鉄管等で構築された上下水道や工業用水等の管路においては、継手の接合作業の完了後に、その継手の止水部の健全性(水密性)を確認するために、この継手に水圧を負荷(例えば0.5MPaに加圧)する試験が実施される。呼び径が900以上の大口径管の場合(呼び径が800、700の場合もある)は、例えば下記特許文献1に係る水圧試験装置を採用することができる。
【0003】
この水圧試験装置を用いた試験は、まず、管継手部1の内面に周方向断面がコ字形のシール材5(ゴムリング)を配置し、その内面に止水板8をあてがう。次に、押ねじ22の操作によって管径方向外向きに繰り出される反力板20、21によって止水板8を外向きに押圧し、この押圧力によってシール材5の舌状部7を受口2および挿口3の内面に密着させ、加圧充水するための環状の密閉空間33を管継手部1に形成している(特許文献1の第1図、第7図(b)等参照)。
【0004】
この特許文献1に係る試験は、作業者が管内に入って押ねじ22の操作を行う必要があるため、作業者が入ることができない小口径管には適用することが難しい。このため、小口径管の場合は、管路に直接充水する試験方法が採用されることが多い。しかしながら、大口径管ほどではないにせよ、小口径管でも施工区間の管路長などによっては大量の水を必要とし、コスト面で問題がある。
【0005】
小口径管に対して適用可能性がある試験装置として、例えば下記特許文献2に係る水密性検査装置が提案されている。この水密性検査装置は、接合された管1、5の一方の管1の内周面4に対向して第一シール装置10を配置し、他方の管5の内周面7に対向して第二シール部材20を配置している。このシール装置10、20は、支軸31に挿通された輪体11、12、21、22を有し、この輪体11、12、21、22間にリング状のシール体15、25が設けられている。両輪体11、12、21、22が相対的に接近動するとシール体15、25(弾性リング)が拡径して、内周面4、7に圧接されるようになっている。
【0006】
両シール装置10、20の輪体11、12、21、22は、作動装置40によって接近動するように構成されている。この作動装置は、一方のシール装置10と基板30との間に配設された油圧ジャッキ41と、両シール装置10、20との間に配設された伝動体42などにより構成されている。支軸31の遊端には、輪体22の移動限を規制するピン32が設けられる。
【0007】
油圧ジャッキ41を伸展動させると、第一シール装置10が第二シール装置20側に支軸31に案内されて移動し、まず、第一シール装置10の輪体12が伝動体42に設けられたゴムパッキン43に当接し、この伝動体42が一体的に移動する。次いで、伝動体42の反対側のゴムパッキン44が第二シール装置20の輪体21に当接する。この状態で、油圧ジャッキ41をさらに伸展動させると、両シール装置10、20の一対の輪体11、12、21、22が相対的に接近動し、シール体15、25が拡径されながら外側に移動して、このシール体15、25の外周面18、28が管1、5の内周面4、7に圧接される(特許文献2の段落0011~0022、図1図2などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭63-240号公報
【特許文献2】特開平8-62089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に係る構成においては、第一シール装置10が支軸31によって軸方向に自由に案内されるようになっているため、油圧ジャッキ41の伸展動の速度が大きい場合や、第一シール装置10と支軸31との間の摩擦が大きい場合などに、この第一シール装置10の軸方向への移動中にシール体15が両輪体11、12間に強く挟み込まれて拡径する場合がある。すると、拡径したシール体15が管1の内周面4と摺動して、第二シール装置20側のシール体25と比較して第一シール装置10側のシール体15が摩耗して水密性が損なわれるおそれがある。
【0010】
また、第一シール装置10のシール体15と第二シール装置20のシール体25が、仮に均等に拡径したとしても、各シール体15、25が管1、5の内面に接触してから、止水面圧を得るためにさらにシール体15、25をその内面に押し付ける必要があるため、接触してからの摺動距離がより長い第一シール装置10のシール体15の方が第二シール装置20のシール体25よりも摩耗しやすい傾向にある。
【0011】
そこで、この発明は、弾性リングの摩耗を防止して水密性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明では、
管軸方向に沿って延びる本体部と、
前記本体部の管軸方向一端側の外面に設けられ、接続された一方の管の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第一止水ユニットと、
前記本体部の管軸方向他端側の外面に設けられ、接続された他方の管の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第二止水ユニットと、
管軸方向に沿う押出力を発生する押出装置と、
を有し、前記第一止水ユニットおよび前記第二止水ユニットが、前記本体部の外面に固定される固定フランジと、前記押出装置の押出力によって前記本体部の外面に沿って管軸方向に摺動可能な前記固定フランジと管軸方向に離間して設けられる摺動フランジと、前記固定フランジと前記摺動フランジを跨ぐように設けられ、前記固定フランジと前記摺動フランジが管軸方向に接近するのに伴って外向きに変形して前記管の内面に当接する弾性リングと、を有する管継手の水圧試験装置を構成した。
【0013】
このように、各止水ユニットの一対のフランジの一方を固定フランジとすることにより、押出装置で摺動フランジを移動させても、固定フランジと摺動フランジに跨る弾性リングは管軸方向にほとんど移動しない。このため、弾性リングと管の内面との摺動に伴う摩耗が生じず、水密性を確保することができる。
【0014】
前記構成においては、前記押出装置が前記第一止水ユニットと前記第二止水ユニットの間に設けられている構成とすることができる。このように、両止水ユニットの間に押出装置を設けて、両止水ユニットの摺動フランジの駆動力を両止水ユニットの間に設けた押出装置で共通化することにより、両止水ユニットの弾性リングから管の内面に作用する圧接力を均等化して、より高い水密性を確保することができる。
【0015】
前記各構成においては、前記押出装置がシリンダであって、前記本体部と一体の内筒と、前記内筒の外側に同軸に設けられる外筒と、前記内筒と前記外筒の間に設けられる環状のピストンと、を有する構成とすることができる。このようにすると、シリンダのピストンの受圧面積を大きくすることができるため、このシリンダに供給される作動媒体の圧力が小さくても、摺動フランジに固定フランジに向かう大きな力を作用させることができる。
【0016】
前記各構成においては、前記固定フランジと前記摺動フランジの間に、両フランジを離間する方向に付勢する付勢部材を有する構成とすることができる。このようにすると、水圧試験後に付勢部材の付勢力によって固定フランジと摺動フランジを速やかに離間して、弾性リングを内向きに縮径させることができる。このため、水圧試験装置を次の試験位置(継手)に移動させる際に弾性リングと管の内面が摺動せず、この水圧試験装置をスムーズに移動することができるとともに、弾性リングの摺動に伴う摩耗を防止することができる。
【0017】
前記各構成においては、前記弾性リングが、前記固定フランジと前記摺動フランジによって管軸方向に挟み込まれる挟み込み領域よりも前記管の内壁に向かって張り出した張り出し部と、前記挟み込み領域内かつ前記張り出し部の管軸心側に形成された凹部と、を有する構成とすることができる。このようにすると、固定フランジと摺動フランジが管軸方向に接近した際に、弾性リングが管の内壁に向かって張り出しやすくなるため、この弾性リングと管の内壁との間の密接状態をスムーズに確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、各止水ユニットの一対のフランジの一方を固定フランジとすることにより、押出装置で摺動フランジを移動させても、固定フランジと摺動フランジに跨る弾性リングは管軸方向にほとんど移動しない。このため、弾性リングと管の内面との摺動に伴う摩耗が生じず、水密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係る管継手の水圧試験装置の第一実施形態(水圧試験前の状態)を示す断面図
図2図1の固定フランジおよび摺動フランジと、押出装置との位置関係を示す図
図3図1に示す水圧試験装置による水圧試験中の状態を示す断面図
図4】この発明に係る管継手の水圧試験装置の第二実施形態(水圧試験前の状態)を示す断面図
図5図4の固定フランジおよび摺動フランジと、押出装置および付勢部材との位置関係を示す図
図6図4に示す水圧試験装置による水圧試験中の状態を示す断面図
図7】この発明に係る管継手の水圧試験装置の第三実施形態(水圧試験前の状態)を示す断面図
図8図7に示す水圧試験装置による水圧試験中の状態を示す断面図
図9】この発明に係る管継手の水圧試験装置の第四実施形態(水圧試験前の状態)を示す断面図
図10図9中のX-X線に沿う断面図
図11図9に示す水圧試験装置に用いられるピストンを示す断面図であって、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例
図12図9に示す水圧試験装置による水圧試験中の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る管継手の水圧試験装置1(以下、水圧試験装置1と略称する。)の第一実施形態を図1および図2に示す。この水圧試験装置1は、挿し口が形成された挿し側管体2と、受口が形成された受け側管体3とを止水部材4を介して水密に接合した管継手の止水部の健全性(水密性)を確認するための装置である。
【0021】
この水圧試験装置1は、管軸方向に沿って延びる本体部5と、本体部5の管軸方向一端側の外面に設けられ、接続された挿し側管体2(一方の管)の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第一止水ユニット6と、本体部5の管軸方向他端側の外面に設けられ、接続された受け側管体3(他方の管)の内面に周方向の全周に亘って密接可能な第二止水ユニット7と、管軸方向に沿う押出力を発生する押出装置8と、を主要な構成要素としている。
【0022】
本体部5は、鋼製の円筒状の部材であって、その管軸方向の両端部の内面に径方向内側に向かって起立する内フランジ9が周方向に所定の角度間隔で形成されている。本体部5の管軸方向の両端部には車輪10が設けられている。この車輪10によって、水圧試験装置1を管軸方向に沿って任意の位置に自在に移動させることができる。
【0023】
第一止水ユニット6および第二止水ユニット7は、本体部5の外面に固定される固定フランジ11と、押出装置8の押出力によって本体部5の外面に沿って管軸方向に摺動可能な固定フランジ11と管軸方向に離間して設けられる摺動フランジ12と、固定フランジ11と摺動フランジ12を跨ぐように設けられ、固定フランジ11と摺動フランジ12が管軸方向に接近するのに伴って外向きに変形して挿し側管体2または受け側管体3の内面に当接する弾性リング13と、を有する。
【0024】
固定フランジ11は、本体部5の内径よりも小さな内径の貫通穴が形成された、挿し側管体2および受け側管体3の内径よりも小さい外径の円環板状の部材である。その外周縁には、外周に向かうほど管軸方向の厚みが小さくなる傾斜面が形成されている。第一止水ユニット6の固定フランジ11は、本体部5の一端側(図1では左側)に形成された内フランジ9にボルト14で固定されている。また、第二止水ユニット7の固定フランジ11は、本体部5の他端側(図1では右側)に形成された内フランジ9にボルト14で固定されている。
【0025】
摺動フランジ12は、本体部5の外径よりも若干大きな内径の貫通穴が形成された、挿し側管体2および受け側管体3の内径よりも小さい外径の円環板状の部材である。その外周縁には、外周に向かうほど管軸方向の厚みが小さくなる傾斜面が形成されている。一対の固定フランジ11と摺動フランジ12にそれぞれ形成された傾斜面の傾斜方向は逆向きであって、両傾斜面によって略V字形が構成されている。摺動フランジ12と本体部5の外面との間には、止水材15が設けられている。
【0026】
弾性リング13は、固定フランジ11と摺動フランジ12によって管軸方向に挟み込まれる挟み込み領域(図1中の矢印Aで示した領域)よりも挿し側管体2および受け側管体3の内壁に向かって張り出した張り出し部16と、挟み込み領域内かつ張り出し部16の管軸心側に形成された凹部17とを有する、周方向断面が略コ字形のゴムリングである。
【0027】
この弾性リング13は、その縮径状態において管軸方向の中央部で各管体2、3の内壁に接近し、管軸方向の両端部で各管体2、3の内壁からやや離間した、管軸方向に亘って丸みをもった形状をなしている。また、この弾性リング13の管軸方向の一方の端部は固定フランジ11に、他方の端部は摺動フランジ12に、それぞれ接着などの手段によって固定されている。
【0028】
押出装置8は、本体部5の外面側の第一止水ユニット6と第二止水ユニット7の間に設けられた水圧シリンダである。この押出装置8は、筒状のシリンダ本体18と、シリンダ本体18内に設けられた2個のピストン19とを有している。各ピストン19にはロッド20が連設されており、一方のロッド20は、第一止水ユニット6の摺動フランジ12に、他方のロッド20は、第二止水ユニット7の摺動フランジ12にそれぞれ接続されている。
【0029】
シリンダ本体18内の両ピストン19の間の空間にはシリンダ用配管21が接続されており、このシリンダ用配管21を通って所定の圧力に加圧された作動水が供給される。この実施形態においては、押出装置8が管軸中心の上側と下側にそれぞれ1個ずつ設けられているが、その数や配置は適宜変更することができる。
【0030】
この実施形態においては、押出装置8として水圧シリンダを採用したが、油圧シリンダや空気圧シリンダなどの他の種類のシリンダや、電気モータを用いたねじ式の駆動装置を採用できる可能性もある。
【0031】
第一止水ユニット6と第二止水ユニット7の間の下方側には、本体部5、両止水ユニット6、7、および、接続された挿し側管体2と受け側管体3によって形成される密閉空間に加圧水を供給する充水加圧配管22が、上方側には、前記密閉空間内の空気を排出する空気抜き配管23がそれぞれ設けられている。
【0032】
この実施形態に係る水圧試験装置1による水圧試験中の状態を図3に示す。この水圧試験装置1を両管体2、3の継手部分まで移動させた上で、シリンダ用配管21からシリンダ本体18内(2個のピストン19の間)に作動水を供給する。すると、この作動水の水圧によって両ピストン19は離間するように管軸方向に移動する。
【0033】
ピストン19の移動に伴って、各摺動フランジ12はそれぞれ対をなす固定フランジ11に管軸方向に接近する。すると、固定フランジ11と摺動フランジ12に跨るように設けられた弾性リング13が径方向外向きに張り出すように変形して、両管体2、3の内面に当接する。このとき、弾性リング13は管軸方向にほとんど移動しないため、この弾性リング13と両管体2、3の内面との摺動に伴う摩耗は生じない。
【0034】
この弾性リング13は、張り出し部16と凹部17が形成されていることにより、固定フランジ11と摺動フランジ12が管軸方向に接近した際に小さい力で変形が生じやすく、両管体2、3の内壁に向かって容易に拡径させることができる。このため、この弾性リング13と両管体2、3の内壁との間の密接状態をスムーズに確保することができる。また、弾性リング13の変形は、固定フランジ11と摺動フランジ12が弾性リング13を管軸方向の両側から押しつぶすことによって生じ、弾性リング13を径方向外向きに引き伸ばす力を作用させるものではないため、繰り返し使用に伴う弾性リング13の劣化が生じにくい。また、両止水ユニット6、7の摺動フランジ12の駆動力を両止水ユニット6、7の間に設けた押出装置8で共通化したことにより、両止水ユニット6、7の弾性リング13から両管体2、3の内面に作用する圧接力を均等化して、より高い水密性を確保することができる。
【0035】
第一止水ユニット6の弾性リング13が挿し側管体2の内面に当接するとともに、第二止水ユニット7の弾性リング13が受け側管体3の内面に当接すると、本体部5、両止水ユニット6、7、および、接続された挿し側管体2と受け側管体3によって密閉空間が形成される。この密閉空間に充水加圧配管22から加圧水を供給するとともに、密閉空間の上部に溜まった空気を空気抜き配管23から抜くことにより、この密閉空間を所定圧力(例えば0.5MPa)に加圧された加圧水で満たすことができる。所定圧力への加圧後に所定の時間(例えば5分間)保持し、所定の試験水圧(例えば0.4MPa以上)を保持できているか否かによって水密性の合否を判断する。
【0036】
その継手での水圧試験が完了したら、押圧装置8(水圧シリンダ)への作動水の供給を遮断して、固定フランジ11と摺動フランジ12を離間させて、弾性リング13を縮径させることで、この弾性リング13と両管体2、3の内面を離間させる。これにより、密閉空間に充填されていた加圧水が密閉空間から排水される。この実施形態では、押出装置8として用いた水圧シリンダは、一方側から加圧して内部ピストン(図示せず)を吐出方向に押し出す方向にのみ圧力を加えることが可能な単動式のものを用いたが、内部ピストンを押し出す方向と戻す方向の両方に加圧する配管を備えた複動式のものを用いることにより摺動フランジ12を強制的に元の位置まで戻すことができ、弾性リング13をよりスムーズに縮径することができる。このため、水圧試験装置1を次の試験箇所(継手部分)に速やかに移動させることができ、水圧試験の施工性を向上することができるとともに、弾性リング13が管体2、3の内面に摺動することに伴う摩耗を防止することができる。
【0037】
この弾性リング13は、管軸方向の一方の端部が固定フランジ11に、他方の端部が摺動フランジ12に固定されているため、水圧試験の完了後に固定フランジ11と摺動フランジ12を離間させることによってその両端が管軸方向に強制的に引っ張られ、この弾性リング13をスムーズに縮径させることができる。また、この弾性リング13は、管軸方向に亘って丸みをもった形状をなしているため、その縮径状態で水圧試験装置1を管軸方向に移動させた際に、この弾性リング13の管軸方向の端部が管体2、3の継ぎ目などに引っ掛かる不具合を防止することができる。
【0038】
この発明に係る水圧試験装置1の第二実施形態を図4および図5に示す。この水圧試験装置1は、その基本構成は第一実施形態に係る水圧試験装置1と共通するが、第一止水ユニット6および第二止水ユニット7の固定フランジ11と摺動フランジ12の間に両フランジ11、12を離間する方向に付勢する付勢部材24を設けた点で相違する。この付勢部材24として、ばねなどの弾性体を用いることができる。以下の各実施形態の説明においては、第一実施形態に係る水圧試験装置1と共通する部分についての説明は省略する。
【0039】
この実施形態に係る水圧試験装置1による水圧試験中の状態を図6に示す。この水圧試験装置1を用いた水圧試験においても、上記と同様に、その完了時に押圧装置8(水圧シリンダ)への作動水の供給を遮断して、固定フランジ11と摺動フランジ12を離間させて、弾性リング13を縮径させることで、この弾性リング13と両管体2、3の内面を離間させる。この実施形態においては、両フランジ11、12間に付勢部材24が設けられているため、その付勢力によって固定フランジ11と摺動フランジ12が速やかに離間して弾性リング13が縮径する。このため、水圧試験装置1を次の試験位置(継手)に移動させる際に弾性リング13と両管体2、3の内面が摺動せず、この水圧試験装置1をスムーズに移動することができる。このため、この水圧試験の施工性を向上することができるとともに、弾性リング13の摺動に伴う摩耗を防止することができる。
【0040】
この実施形態では、第一実施形態と同様に単動式の押出装置8を採用したが、複動式の押出装置8を採用することもできる。このようにすれば、付勢部材24の作用が不十分な場合でも、摺動フランジ12を確実に元の位置に戻すことができる。
【0041】
この発明に係る水圧試験装置1の第三実施形態を図7に示す。この水圧試験装置1は、その基本構成は第一実施形態に係る水圧試験装置1と共通するが、第一止水ユニット6と第二止水ユニット7の間に設けられる押出装置8(水圧シリンダ)の両端に、回動軸周りに回動可能なリンク機構25が設けられている点で相違する。
【0042】
この実施形態に係る水圧試験装置1による水圧試験中の状態を図8に示す。この水圧試験装置1を用いた水圧試験においても、押出装置8に供給される作動水の水圧によってピストン(図示せず)を管軸方向に移動させて、各摺動フランジ12を対をなす固定フランジ11に接近させる。この構成によると、リンク機構25が回動軸周りに自由に回動できるため、例えば、挿し側管体2と受け側管体3が管軸方向に相対的に屈曲している場合でも、摺動フランジ12を各管体2、3の管軸方向に沿ってスムーズに移動させることができる。また、押出装置8を本体部5に固定しなくてもよいため、構造を簡素化することができる。
【0043】
この実施形態では、上記の各実施形態と同様に単動式の押出装置8を採用したが、複動式の押出装置8を採用することもできる。このようにすれば、付勢部材24の作用が不十分な場合でも、摺動フランジ12を確実に元の位置に戻すことができる。
【0044】
この発明に係る水圧試験装置1の第四実施形態を図9に示す。この水圧試験装置1は、その基本構成は第一実施形態に係る水圧試験装置1と共通するが、押出装置8の構成が相違している。すなわち、この押出装置8は、本体部5と一体の内筒26と、内筒26の外側に同軸に設けられる外筒27と、内筒26と外筒の間に設けられる環状の2個のピストン28と、を有している。図10に示すように、内筒26と外筒27の間には、両筒26、27を結合する支柱29が周方向の所定角度間隔(本図では90度ごと)で設けられている。
【0045】
図11(a)に示すように、環状のピストン28には、管軸方向に突出するロッド30が周方向の所定角度間隔(本図では90度ごと)に設けられている。この構成の代わりに、図11(b)に示すように、環状のピストン28から管軸方向に環状部材33が突出した構成や、図11(c)に示すように、環状のピストン28として作用するゴムなどの弾性体から管軸方向に環状部材33が突出した構成とすることもできる。
【0046】
この実施形態に係る水圧試験装置1による水圧試験中の状態を図12に示す。この構成によると、第一実施形態から第三実施形態に係る水圧試験装置1と比較して、ピストン28の受圧面積を大きくすることができるため、この押出装置8に供給される作動水の圧力が小さくても、摺動フランジ12に対し、固定フランジ11に向かう大きな力を作用させることができる。
【0047】
この実施形態では、上記の各実施形態と同様に単動式の押出装置8を採用したが、複動式の押出装置8を採用することもできる。このようにすれば、付勢部材24の作用が不十分な場合でも、摺動フランジ12を確実に元の位置に戻すことができる。
【0048】
上記の各実施形態においては、押出装置8を両止水ユニット6、7の間に設け、この押出装置8で両止水ユニット6、7の摺動フランジ12を移動させる構成としたが、例えば、各止水ユニット6、7にそれぞれ押出装置8を設け、各押出装置8で各止水ユニット6、7の摺動フランジ12を個別に移動させる構成や、押出装置8を両止水ユニット6、7の外側に設け、この押出装置8に設けられたリンク機構を介して両止水ユニット6、7の摺動フランジ12を移動させる構成などとすることもできる。
【0049】
なお、第二実施形態から第四実施形態に係る構成においては、固定フランジ11と摺動フランジ12の間に付勢部材24を介在させたが、第一実施形態と同様に、付勢部材24を有さない構成とすることもできる。
【0050】
上記の水圧試験装置1は、特に小口径管の水圧試験に好適であるが、大口径管の水圧試験にも問題なく適用することができる。
【0051】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 管継手の水圧試験装置(水圧試験装置)
2 管(挿し側管体)
3 管(受け側管体)
4 止水部材
5 本体部
6 第一止水ユニット
7 第二止水ユニット
8 押出装置
9 内フランジ
10 車輪
11 固定フランジ
12 摺動フランジ
13 弾性リング
14 ボルト
15 止水材
16 張り出し部
17 凹部
18 シリンダ本体
19 ピストン
20 ロッド
21 シリンダ用配管
22 充水加圧配管
23 空気抜き配管
24 付勢部材
25 リンク機構
26 内筒
27 外筒
28 ピストン
29 支柱
30 ロッド
31 シリンダ用充水加圧配管
32 シリンダ用空気抜き配管
33 環状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12