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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142676
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/38 20060101AFI20230928BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20230928BHJP
   B01F 25/43 20220101ALI20230928BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230928BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230928BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N1/38
B01F23/45
B01F25/43
C02F1/00 W
C02F1/00 K
G01N1/00 101G
G01N33/18 101
G01N33/18 106B
G01N33/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049694
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 光記
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
【テーマコード(参考)】
2G052
4G035
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AB01
2G052AB11
2G052AB16
2G052AB22
2G052AB26
2G052AB27
2G052AC03
2G052AC04
2G052AC05
2G052AC18
2G052AC23
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA17
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA12
2G052FB03
2G052FB07
2G052FD01
2G052GA11
2G052HA19
2G052JA06
2G052JA09
2G052JA11
4G035AB37
4G035AC01
(57)【要約】
【課題】希釈液が供給された汚水の希釈状態を安定させて、光学的測定値を正確に取得することができる測定システムを提供する。
【解決手段】測定システム60は、汚水が流れる測定用移送配管28と、測定用移送配管28に接続され、汚水に希釈液を供給する希釈ライン55と、測定用移送配管28に配置され、汚水と希釈液とを混合する混合流路40と、希釈液と混合された汚水の光学的測定値を取得する光学的測定装置3と、を備え、混合流路40は、希釈液が供給された汚水の流れ方向を変更する屈曲部40aを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水が流れる測定用移送配管と、
前記測定用移送配管に接続され、前記汚水に希釈液を供給する希釈ラインと、
前記測定用移送配管に接続され、前記汚水と前記希釈液とを混合する混合流路と、
前記希釈液と混合された前記汚水の光学的測定値を取得する光学的測定装置と、を備え、
前記混合流路は、前記希釈液が供給された前記汚水の流れ方向を変更する屈曲部を有している、測定システム。
【請求項2】
前記混合流路は、前記希釈ラインと前記測定用移送配管との接続点よりも下流側に配置されている、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記混合流路はL字管である、請求項1または2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記混合流路の出口は下方を向いている、請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記混合流路の内径は、前記測定用移送配管の内径と同じである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
汚水に希釈液を供給する希釈工程と、
前記汚水と前記希釈液とを混合流路により混合する混合工程と、
前記希釈液と混合された前記汚水の光学的測定値を取得する光学的測定工程と、を含み、
前記混合流路は、前記希釈液が供給された前記汚水の流れ方向を変更する屈曲部を有している、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈液と混合された汚水の光学的測定値を取得するための測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理施設や浄水処理施設などの各種施設における汚水処理の適切な運転管理を行うためには、汚水の性状(例えば、色調、濁度、透明度、懸濁物質の濃度、および懸濁物質の凝集状態)を正確に把握する必要がある。そのため、従来から、光学的測定装置を用いて光学的測定値を取得し、該光学的測定値から汚水の性状を示す数値解析値を算出している。例えば、特許文献1には、撹拌機から排出された汚水の光学的測定値を光学的測定装置を用いて取得し、得られた光学的測定値から算出された数値解析値に基づいて凝集剤の適正な注入率を決定する凝集方法が記載されている。
【0003】
懸濁物質の濃度、あるいは凝集剤と混合されることで形成されたフロックの濃度が高い汚水では、例えば、光学的測定値として透過光強度を測定する場合、光学的測定装置により測定される透過光強度がほぼ一定になってしまい、凝集剤の適正な注入率を決定できないことがある。そこで、撹拌機から排出された汚水を希釈液で希釈し、汚水中のフロック間の隙間を増大させることで、フロックが存在する場合の光学的測定値と、フロックが存在しない場合の光学的測定値との差を生じさせることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/6419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、汚水が流れる配管に希釈液を供給すると、汚水と希釈液が十分に混合されず、汚水の希釈状態が安定しないことがある。結果として、測定する汚水に含まれる懸濁物質の濃度、あるいはフロックの濃度が安定せず、光学的測定値を正確に取得することができないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、希釈液が供給された汚水の希釈状態を安定させて、光学的測定値を正確に取得することができる測定システムおよび測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、汚水が流れる測定用移送配管と、前記測定用移送配管に接続され、前記汚水に希釈液を供給する希釈ラインと、前記測定用移送配管に接続され、前記汚水と前記希釈液とを混合する混合流路と、前記希釈液と混合された前記汚水の光学的測定値を取得する光学的測定装置と、を備え、前記混合流路は、前記希釈液が供給された前記汚水の流れ方向を変更する屈曲部を有している、測定システムが提供される。
一態様では、前記混合流路は、前記希釈ラインと前記測定用移送配管との接続点よりも下流側に配置されている。
一態様では、前記混合流路はL字管である。
一態様では、前記混合流路の出口は下方を向いている。
一態様では、前記混合流路の内径は、前記測定用移送配管の内径と同じである。
【0008】
一態様では、汚水に希釈液を供給する希釈工程と、前記汚水と前記希釈液とを混合流路により混合する混合工程と、前記希釈液と混合された前記汚水の光学的測定値を取得する光学的測定工程と、を含み、前記混合流路は、前記希釈液が供給された前記汚水の流れ方向を変更する屈曲部を有している、測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
測定システムは、測定用移送配管に接続された混合流路を備えている。混合流路は、測定する汚水と希釈液とを混合することで、汚水の希釈状態を安定させて、光学的測定値を正確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る測定システムを備えた汚水処理装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す測定システムの構成を示す模式図である。
図3図3は、図2に示す混合流路の一実施形態を模式的に示す拡大図である。
図4図4(a)は、凝集剤の注入率が適正ではないために、フロックが汚水に形成されていない場合の透過光強度の測定例を示し、図4(b)は、凝集剤の注入率が適正であるために、フロックが汚水に形成されている場合の透過光強度の測定例を示す。
図5図5は、図2に示す測定システムが配置された汚水処理装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る測定システムを備えた汚水処理装置の一例を示す概略図である。図1に示す汚水処理装置は、排水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚水を処理するための凝集装置である。後述する測定システムは、汚水の性状(例えば、色調、濁度、透明度、懸濁物質の濃度、および懸濁物質の凝集状態)を示す数値解析値を算出するための光学的測定値を取得するために用いられる。本実施形態では、光学的測定値を数値解析することで得られた数値解析値に基づいて、凝集剤の適正な注入率が決定される。
【0012】
以下では、汚水の一例である懸濁物質を含む汚水を処理する凝集装置が、測定システムを備えた設備の一例として説明される。しかしながら、本実施形態に係る測定システムは、汚水を処理する他の設備に配置されてもよい。例えば、処理される汚水は、排水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚泥、排水処理施設における排水、浄水処理施設における原水などであってもよい。汚泥は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれでもよい。
【0013】
有機性汚泥の例としては、下水処理、し尿処理、各種産業の排水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、有機性汚泥の例として、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥、消化脱離液、凝集沈殿汚泥などを挙げることができる。有機性汚泥は無機物を含んでいてもよい。
【0014】
無機性汚泥の例としては、浄水処理、建設工事の排水処理、各種産業の排水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。無機性汚泥は有機物を含んでもよい。
【0015】
排水処理施設における排水の例としては、下水、食品産業、飲料水産業、化学産業、機械産業など各種産業の排水などが挙げられる。浄水処理施設における原水の例としては、河川水、湖沼の水、地下水などが挙げられる。
【0016】
さらに、処理される汚水は、排水処理や浄水処理などの処理の過程で調製される水であってもよい。排水処理での汚水の例としては、pHを調整した排水、無機凝集剤を注入した排水、有機凝結剤を注入した排水、金属キレート剤を注入した排水などが挙げられる。また、浄水処理での汚水の例としては、pHを調整した原水、無機凝集剤を注入した原水などが挙げられる。
【0017】
図1に示した凝集装置は、汚水貯槽10、撹拌機1、測定システム60がこの順に直列に接続された構成を有している。汚水貯槽10には、懸濁物質を含む汚水が貯留される。撹拌機1は、懸濁物質を含む汚水が供給される撹拌槽2と、懸濁物質を含む汚水を撹拌する撹拌翼8と、撹拌翼8を回転させる駆動装置としてのモーター9とを備える。撹拌機1の撹拌槽2には、汚水貯槽10から延びる供給元管18が接続され、供給元管18には、汚水貯槽10に貯留された汚水を所定の流量で撹拌槽2に供給する供給装置7が配置される。供給装置7は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。一実施形態では、凝集装置は汚水貯槽10を備えることなく、汚水が流れる既設の汚水配管から供給元管18に分岐して汚水が供給されてもよい。
【0018】
一実施形態では、撹拌機1としてラインミキサーを用いてもよい。ラインミキサーとは、配管に組み込まれたミキサーである。ラインミキサーの利点はミキサーが密封されているため、ラインミキサーの上流にある汚水用ポンプ、および凝集剤用ポンプの2台のポンプがあれば、ラインミキサーの下流に汚水を送ることができる点である。一方、撹拌槽2内に撹拌翼8が設置された撹拌機1の場合、撹拌槽上部が開放されているので、撹拌機の下流に液を送るためには、撹拌機の上流にある汚水用ポンプ、および凝集剤用ポンプの他に、もう1台ポンプ或いはポンプ相当の機器が必要である。そのため、通常は、ポンプを設置せず、高低差で下流に液を送るのが一般的である。
【0019】
本実施形態では、撹拌機1は、撹拌翼8の回転速度が300~5000min-1に設定された高速撹拌を行う高速撹拌機として構成されている。この高速撹拌により、汚水内に凝集剤が瞬時に分散させられ、凝集剤は汚水と効率良く均一に混合される。その結果、汚水に含まれる懸濁物質が効率良く凝集させられる。
【0020】
撹拌機1では、撹拌翼8を300~5000min-1の回転速度で回転させることにより、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む汚水を高速撹拌することが重要である。好ましくは、撹拌翼8の回転速度は300~2000min-1である。より好ましくは、撹拌翼8の回転速度は400~1500min-1である。より好ましくは、撹拌翼8の回転速度は500~1200min-1である。
【0021】
このような高速撹拌を行う場合、凝集剤が注入された汚水に高ストレスが負荷されるので、凝集剤が適正な注入率で注入されていないと、フロックが成長する前に破壊されてしまう。したがって、注入される凝集剤が適正な注入率でなければ、フロックが適切に成長しない。本実施形態では、後述する制御装置が、測定システム60に設けられた光学的測定装置3から光学的測定値を取得し、さらに、フロックが適切に成長していることを、光学的測定値を数値解析することで得られた数値解析値から判断する。これにより、凝集剤の適正な注入率を高い精度で決定することができる。その結果、凝集剤の使用量を削減することができる。また、運転員の経験や勘がなくとも、凝集剤の注入率を適正に制御することができる。さらに、懸濁物質を含む汚水の性状(例えば、汚水内における懸濁物質の濃度など)が変化しても、凝集剤の注入率を適正に制御することができる。
【0022】
撹拌翼8の回転速度は、懸濁物質を含む汚水の種類(例えば、排水や汚泥など)、汚水の性状(例えば、SS(Suspended Solids)濃度、粘度など)、および凝集剤の種類(例えば、無機凝集剤、有機凝結剤、高分子凝集剤など)などに基づいて、300~5000min-1で調整する。懸濁物質を含む汚水に注入される凝集剤は、撹拌槽2内に注入されてもよいし、撹拌槽2よりも上流側に配置される供給元管18に注入されてもよい。
【0023】
本実施形態では、凝集剤を貯留する凝集剤貯槽11が設けられ、凝集剤貯槽11から延びる凝集剤供給配管26が撹拌槽2に連結される。凝集剤供給配管26には、凝集剤注入装置4が配置される。凝集剤注入装置4は、懸濁物質を含む汚水に凝集剤を所定の注入率で注入する装置である。凝集剤注入装置4は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。一実施形態では、凝集装置は凝集剤貯槽11を備えることなく、凝集剤が流れる既設の凝集剤配管から凝集剤供給配管26に分岐して凝集剤が供給されてもよい。
【0024】
この凝集装置において、懸濁物質を含む汚水は、供給装置7により汚水貯槽10から撹拌槽2に供給される。凝集剤は、凝集剤注入装置4により撹拌槽2に供給される。撹拌槽2では、撹拌翼8の回転速度が300~5000min-1である高速回転で、汚水と凝集剤とを混合させて、これにより、懸濁物質のフロックが形成される。なお、凝集剤の注入率によっては、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。すなわち、撹拌機1では、懸濁物質のフロックを形成させるために撹拌翼8が高速で回転させられるが、凝集剤の注入率次第で、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。
【0025】
測定システム60は、光学的測定装置3と、撹拌機1から光学的測定装置3に汚水を送る測定用移送配管28と、汚水に希釈液を供給する希釈ライン55と、汚水と希釈液とを混合する混合流路40と、光学的測定装置3で測定された汚水を排出する測定用排出配管29を備えている。測定用移送配管28は、撹拌槽2および光学的測定装置3に連結されている。撹拌機1から排出された汚水は、測定用移送配管28を通じて光学的測定装置3に移送される。測定用排出配管29は、光学的測定装置3に連結されている。光学的測定装置3から排出された汚水は、測定用排出配管29を通じて排出される。
【0026】
光学的測定装置3は、撹拌機1で形成されたフロックを含む汚水に光を照射して、光学的測定値を得るための装置である。本実施形態では、光学的測定装置3は、フロックを含む汚水から出てきた透過光の強度を測定可能な装置である。光学的測定装置3は、透過率、回折光の強度、吸光度、反射光の強度などを測定可能な装置であってもよい。
【0027】
希釈ライン55は、測定用移送配管28に接続されており、希釈液を、撹拌後で光学的測定前の汚水に供給する。希釈ライン55は、希釈液を貯留する希釈液貯槽52と、希釈液貯槽52に貯留された希釈液を撹拌機1で撹拌された汚水に所定の流量で供給する希釈液供給装置53を備える。希釈液貯槽52から延びる希釈液供給配管57は、撹拌機1と光学測定装置3の間の位置で測定用移送配管28に接続される。希釈液供給装置53は、希釈液供給配管57に配置されている。
【0028】
希釈液供給装置53は、撹拌機1で撹拌された汚水が光学測定装置3に供給される前に、該汚水に希釈液を所定の流量で供給する装置である。希釈液供給装置53は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。希釈液が供給された汚水は、測定用移送配管28に接続された混合流路40を通って、光学的測定装置3に供給される。希釈液としては、純水、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水、海水などを用いることができる。一実施形態では、希釈ライン55は希釈液貯槽52を備えることなく、希釈液供給配管57として水道水や処理水等が所定の圧力で流れる既設の配管を用いることにより、希釈液が供給されてもよい。
【0029】
混合流路40は、汚水と希釈液とを混合するための構造体である。混合流路40により希釈液と混合された汚水は、光学的測定装置3に供給され、光学的測定装置3で光学的測定が実施される。
【0030】
図2は、図1に示す測定システム60の構成を示す模式図である。図2に示すように、測定用移送配管28は、混合流路40の入口に連結された一次側移送配管28Aと、混合流路40の出口に連結された二次側移送配管28Bを含む。混合流路40は、希釈ライン55と測定用移送配管28との接続点55aよりも下流側に配置されている。すなわち、希釈ライン55は、接続点55aにおいて、一次側移送配管28Aに接続されている。一実施形態では、測定用移送配管28は、二次側移送配管28Bを有しておらず、混合流路40の出口が光学的測定装置3に連結されていてもよい。
【0031】
図3は、図2に示す混合流路40の一実施形態を模式的に示す拡大図である。混合流路40は、屈曲部40aを有するL字管である。混合流路40の中心軸線に垂直な断面は、円形を有している。一実施形態では、混合流路40の断面は、円形以外の形状(例えば四角形、矩形状)を有してもよい。混合流路40は、屈曲部40aにおいて、希釈液が混合された汚水の流れ方向を変更するように構成されている。混合流路40の入口40bは横方向を向いており、混合流路40の屈曲部40aよりも上流にある上流部40dは、水平方向に延びている。混合流路40の出口40cは下方を向いており、混合流路40の屈曲部40aよりも下流にある下流部40eは、鉛直方向に延びている。
【0032】
本実施形態では、混合流路40の屈曲部40aは直角に屈曲しているが、屈曲部40aの屈曲角度は本実施形態に限定されず、一実施形態では、屈曲部40aの屈曲角度は、45度から135度の範囲内にあってもよい。また、本実施形態では、混合流路40の屈曲部40aよりも下流にある下流部40eは、鉛直方向に延びているが、他の実施形態では、混合流路40の下流部40eは、水平方向に延びていてもよい。すなわち、混合流路40は、希釈液が供給された汚水の流れ方向を水平面内において変更してもよい。さらに他の実施形態では、混合流路40は、屈曲部40aを複数有しており、希釈液が供給された汚水の流れ方向を複数回変更するように構成されていてもよい。
【0033】
混合流路40は、屈曲部40aにより希釈液が供給された汚水の流れ方向を変更し、汚水の乱流を生じさせることにより、汚水と希釈液とを混合することができる。したがって、光学的測定装置3に送られる汚水の希釈状態が安定し、光学的測定装置3は汚水の光学的測定値を正確に取得することができる。特に、混合流路40の全体の内部は中空であり、汚水と希釈液とを混合させるための構造体(例えば邪魔板など)は混合流路40内には存在しなくてもよい。したがって、汚水に含まれるフロックやゴミなどが混合流路40内に詰まりにくい。
【0034】
屈曲部40aよりも上流側に位置する入口40bおよび上流部40dの内径d1と、屈曲部40aよりも下流側に位置する出口40cおよび下流部40eの内径d2とは、同じである。さらに、屈曲部40aの内径d3は、入口40bの内径d1および出口40cの内径d2と同じか、または大きい。混合流路40の内径d1,d2は、測定用移送配管28の内径、すなわち一次側移送配管28Aの内径d4および二次側移送配管28Bの内径d5と同じである。測定用移送配管28と混合流路40の内径を同じにすることにより、汚水に含まれるフロックやゴミが混合流路40の内部で詰まるのを防止することができる。
【0035】
図2に戻り、光学的測定装置3は、二次側移送配管28Bの末端に連結されるノズル30と、測定用排出配管29の先端に連結される受け皿(受液部)32と、を備える。ノズル30は、二次側移送配管28Bを流れてきた希釈液と混合された汚水を下方に向けて流下させる構造体であり、円筒形状を有している。受け皿32は、ノズル30の下方に、該ノズル30から離間して配置されている。受け皿32は、ノズル30から流下された汚水を受け取るための構造体であり、図示した例では、漏斗形状を有している。
【0036】
本実施形態では、ノズル30と受け皿32は、鉛直方向に沿って配列されており、ノズル30の中心軸線は、受け皿32の中心軸線に一致する。ノズル30と受け皿32の間には、汚水が流下する開放空間が形成される。したがって、汚水はノズル30から大気中に流下される。
【0037】
光学的測定装置3は、さらに、ノズル30から流下した希釈液と混合された汚水に光を照射して光学的測定値を取得する光学センサ35を備えている。本実施形態では、光学センサ35は、汚水に向けて光を照射する光源(投光部)35aと、汚水から出てきた光を検出する光検出器(受光部)35bと、を備え、光検出器35bに到達した透過光強度を測定する光学センサである。光源35aから照射され、フロックを含む汚水を透過した光は、光検出器35bによって検出される。この透過光強度を所定の時間の間測定し、測定された透過光強度を光学的測定値とする。
【0038】
光源35aの例としては、各種ランプ(水銀ランプ、キセノンランプ、クリプトンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプなど)、各種レーザ(固体レーザ、半導体レーザ、液体レーザ、気体レーザなど)、各種LEDなどが挙げられる。LEDは、市販の光学センサのうちで比較的高強度の光を照射できる光源であるため、光源35aは、好ましくは、LEDである。光検出器35bの例としては、CCD、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管、光導電素子、赤外線光学センサ、CMOSなどが挙げられる。いずれにしても、光学センサ35として、市販品を用いることができる。
【0039】
光学的測定値である透過光強度の測定は、1回、または凝集剤の注入率を変えながら複数回実行され、これにより、少なくとも1つの光学的測定値が得られる。なお、光検出器35bで検出された透過光強度は、データロガー50に蓄積された後に、後述する数値解析装置5に送られる。数値解析装置5で算出された数値解析値は、制御装置6に送られて、制御装置6は、数値解析値に基づいて、凝集剤の適正な注入率を決定する。データロガー50、数値解析装置5、および制御装置6は、それぞれ別個に設けられていてもよい。あるいは、データロガー50および数値解析装置5は、1台のコンピューター、または1台のプログラマブルロジックコントローラ(例えば、シーケンサー)として構成される制御装置6に組み込まれていてもよい。
【0040】
次に、図4(a)および図4(b)を参照して、光学的測定装置3による懸濁物質を含む汚水の透過光強度の測定例について説明する。図4(a)は、凝集剤の注入率が適正ではないために、フロックが汚水に形成されていない場合の透過光強度の測定例を示し、図4(b)は、凝集剤の注入率が適正であるために、フロックが汚水に形成されている場合の透過光強度の測定例を示す。図4(a)および図4(b)において、横軸は測定時間を表し、縦軸は透過光強度を表す。
【0041】
図4(a)に示すように、フロックが汚水に形成されていないと、光源35aから照射された光は、懸濁物質に遮られて光検出器35bまでほとんど到達しない。その結果、測定される透過光強度は、測定時間の経過と共に低い値で推移する。一方で、フロックが汚水に形成されていると、懸濁物質はフロックとしてまとまっている。したがって、図4(b)に示されるように、透過光強度の測定中、光源35aから照射された光がフロックに遮られて光検出器35bまで到達しない時間と、フロックの隙間から光検出器35bまで到達する時間とが存在する。結果として、透過光強度のピークが複数個計測される。この複数個のピークは、後述する数値解析工程で利用される。
【0042】
希釈ライン55により希釈液を撹拌後の汚水に供給する目的は、撹拌された汚水に含まれる懸濁物質の濃度および/またはフロックの濃度を低減させることである。懸濁物質の濃度が高い汚水では、フロックが形成されたときの光学的測定値とフロックが形成されないときの光学的測定値に差が生じず、その結果、凝集剤の注入率の決定が困難な場合がある。例えば、光学的測定装置3が、懸濁物質の濃度が高い汚水の透過光強度を測定する場合、凝集剤の注入率が適正でフロックが形成されても、フロック間の隙間がほとんど存在せず、図4(a)に示したように、透過光強度がほぼ一定になってしまう場合がある。これに対して、撹拌された汚水を希釈液で希釈する場合、フロック間の隙間を増大させることができるため、フロックの隙間から光が透過し、図4(b)に示されるように、透過光強度のピークが複数個計測される。この結果、フロックが形成されたときの透過光強度とフロックが形成されないときの透過光強度に差が生じ、適正な注入率を決定できる。
【0043】
図1に戻り、光学的測定装置3には、数値解析装置5が電気的に接続され、数値解析装置5には、制御装置6が接続されている。数値解析装置5は、制御装置6内に組み込まれていてもよい。また、制御装置6は、凝集剤注入装置4に接続されている。
【0044】
光学的測定装置3から得られた光学的測定値は、数値解析装置5に送られる。数値解析装置5は、光学的測定値を数値解析して、数値解析値を取得する。得られた数値解析値は、制御装置6に送られる。制御装置6は、数値解析値に基づいて凝集剤の適正な注入率を決定する。
【0045】
数値解析値の例としては、光学的測定値の平均値、分散、標準偏差、ピーク面積、ピーク高さなどが挙げられる。光学的測定値の分散とは、光学的測定値を統計学的に解析した値であり、所定の測定時間の間に得られた光学的測定値の分布の散らばりの程度を示す量である。標準偏差は、分散の平方根の正の値である。ピーク面積は、縦軸が光学的測定値を表し、横軸が測定時間を表すグラフ上に、所定の測定時間の間に得られた光学的測定値をプロットして描かれた曲線と、基準線(例えばベースライン)とで囲まれた領域の面積である。ピーク面積は、例えば、図4(b)でハッチングを付けられた領域の面積に相当する。ピーク高さは、縦軸が光学的測定値を表し、横軸が測定時間を表すグラフ上に、所定の測定時間の間に得られた光学的測定値をプロットして描かれた曲線のピークの横軸からの高さである。
【0046】
ある閾値以上の光学的測定値の個数、あるいは、ある閾値以下の光学的測定値の個数を、数値解析値としてもよい。数値解析装置5で、光学的測定値から、SS濃度、濁度、色度、フロック粒径などを算出し、これらを数値解析値としてもよい。ここで、フロック粒径とは、フロックが球形である場合には、フロックの直径を意味する。フロックが球形でない場合には、フロック粒径は、ストークス径、または各種測定方法によって測定された粒径を意味する。フロック粒径は、フロックの平均粒径であってもよい。平均粒径としては、算術平均径、最多径、中央径などが例示される。また、平均粒径は、個数基準であってもよいし、質量基準であってもよいし、体積基準であってもよい。
【0047】
光学的測定値からSS濃度、濁度を算出する方法として、透過光測定方法などの公知の方法を用いることができる。光学的測定値から色度を算出する方法として、透過光測定方法などの公知の方法を用いることができる。光学的測定値からフロック粒径を算出する方法として、レーザ回折・散乱法、カメラで撮影した画像を画像解析する方法などの公知の方法を用いることができる。フロック粒径は平均フロック粒径でもよいし、フロック粒径の粒径分布でもよい。光学的測定を行うと共に、得られた光学的測定値からSS濃度、濁度、色度、フロック粒径などを算出できる市販の測定装置を用いることができる。
【0048】
制御装置6は、汚水への凝集剤の注入、汚水の撹拌(高速撹拌)、光学的測定値の取得、光学的測定値に基づく数値解析を少なくとも1回行うことによって得られた、少なくとも1つの数値解析値から、凝集剤の適正な注入率を決定する。すなわち、制御装置6は、懸濁物質を含む汚水に凝集剤を注入し、懸濁物質のフロック形成させるために当該汚水を撹拌し、撹拌された汚水に対して光学的測定を実施し、得られた光学的測定値を数値解析して数値解析値を取得する。さらに、制御装置6は、得られた数値解析値に基づき、凝集剤の注入率が適正か否かを判断し、注入率が適正でなければ、凝集剤の注入率を変更して、再度撹拌、光学的測定、および数値解析を繰り返し、適正な注入率を決定する。なお、凝集剤の注入率によっては、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。
【0049】
適正な凝集剤注入率を決定する方法として、予め設定された複数の注入率を用いてもよい。制御装置6は、懸濁物質を含む汚水に予め設定された注入率で凝集剤を注入し、懸濁物質のフロックを形成させるために当該汚水を撹拌し、撹拌された汚水に対して光学的測定を実施し、得られた測定値を数値解析して数値解析値を取得する。これを、予め設定された複数の注入率それぞれについて繰り返し行う。制御装置6は、予め設定された複数の注入率それぞれで取得された複数の数値解析値を比較する。一実施形態では、最大値または最小値が得られた注入率が適正な注入率として決定される。他の実施形態では、最も大きな数値解析値が得られた注入率と2番目に大きな数値解析値が得られた注入率の平均値を適正注入率としてもよいし、あるいは、最も小さな数値解析値が得られた注入率と2番目に小さい数値解析値が得られた注入率の平均値を適正注入率としてもよい。
【0050】
さらに他の実施形態では、制御装置6は、縦軸が数値解析値を表し、横軸が凝集剤の注入率を表すグラフ上に、予め設定された複数の注入率における複数の数値解析値をプロットし、複数の注入率と複数の数値解析値との関係を示す近似式を算出して、得られた近似式に基づいて、凝集剤の適正な注入率を決定してもよい。例えば、数値解析値のピーク値が得られる注入率を近似式から計算し、得られた注入率を凝集剤の適正な注入率とすることができる。
【0051】
測定システム60の光学的測定装置3の構成は、凝集剤の適正な注入率を決定するための測定値を取得できるのであれば、本実施形態に限らない。例えば、一実施形態では、光学的測定装置3は、ノズル30に代えて、撹拌機1から排出された汚水が流れる二次側移送配管28Bに一対の透明窓が設けられており、光学センサ35により、一方の透明窓に向けて光を照射し、他方の透明窓から出てくる光を検出して、光学的測定値を取得するように構成されていてもよい。
【0052】
図5は、図2に示す測定システム60が配置された汚水処理装置の他の例を示す概略図である。図5に示す汚水処理装置は、汚泥などの液体含有物を圧搾して、該液体含有物をろ液とケーキとに分離するスクリュープレス(脱水機)である。
【0053】
図5に示されるスクリュープレスは、円筒状のスクリーンケーシング(ろ過筒)61と、スクリーンケーシング61内で、該スクリーンケーシング61と同心状に配置され、液体含有物である汚泥(汚水)を所定の移送方向Dに移送するスクリュー(図示せず)と、スクリューを回転させる回転機構(図示せず)と、スクリーンケーシング61を通過したろ液を回収するろ液受け68と、ろ液受け68に連結された測定用移送配管28と、を備えている。
【0054】
スクリーンケーシング61は、パンチングメタルなどのスクリーン(多孔板)から形成されている。スクリーンケーシング61に投入された汚泥は、スクリューの回転によってスクリーンケーシング61内を移送される。汚泥は、スクリーンケーシング61内を移送されるに従って圧搾され、脱水される。スクリーンケーシング61のスクリーンを通過したろ液は、スクリーンケーシング61の下方に配置されたろ液受け68によって回収される。
【0055】
本実施形態では、測定システム60の測定用移送配管28は、ろ液受け68に連結されており、測定システム60により回収したろ液(汚水)の光学的測定値を取得するように構成されている。測定用移送配管28を流れるろ液は、希釈ライン55により希釈液が供給され、混合流路40によりろ液(汚水)と希釈液とが混合される。光学的測定装置3は、希釈液が混合されたろ液の光学的測定値を取得する。得られた光学的測定値は、スクリュープレスの制御装置(図示せず)に送られ、制御装置は、送られた光学的測定値に基づいてスクリュープレスの運転を制御する。例えば、制御装置は、適切な含水率を有するケーキを得るために、得られた光学的測定値に基づいてスクリューの回転速度を制御する。
【0056】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 撹拌機
2 撹拌槽
3 光学的測定装置
4 凝集剤注入装置
5 数値解析装置
6 制御装置
7 供給装置
8 撹拌翼
9 モーター
10 汚水貯槽
11 凝集剤貯槽
18 供給元管
26 凝集剤供給配管
28 測定用移送配管
28A 一次側移送配管
28B 二次側移送配管
29 測定用排出配管
30 ノズル
32 受け皿(受液部)
35 光学センサ
35a 光源(投光部)
35b 光検出器(受光部)
40 混合流路
50 データロガー
52 希釈液貯槽
53 希釈液供給装置
55 希釈ライン
57 希釈液供給配管
60 測定システム
61 スクリーンケーシング(ろ過筒)
68 ろ液受け
図1
図2
図3
図4
図5