IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水ing株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図1
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図2
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図3
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図4
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図5
  • 特開-凝集装置および凝集方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142678
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】凝集装置および凝集方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20230928BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20230928BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230928BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230928BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/00 B ZAB
B01D21/01 C
B01D21/01 D
C02F1/52 Z
C02F1/52 C
C02F11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049696
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 光記
(72)【発明者】
【氏名】板山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015CA01
4D015CA04
4D015CA11
4D015CA14
4D015DB01
4D015EA03
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA06
4D059AA23
4D059BE55
4D059BE56
4D059BJ01
4D059EA20
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】光学的測定装置が設けられ、かつ装置全体の設置スペースを削減し、測定後の汚水を廃棄するための追加の設備を必要としない凝集装置を提供する。
【解決手段】凝集装置は、懸濁物質を含む第1汚水を凝集処理するための凝集撹拌機41と、懸濁物質を含む第2汚水の光学的測定値を取得するための測定システム60と、を備え、測定システム60は、凝集剤が注入された第2汚水を撹拌する撹拌機61と、撹拌された第2汚水の光学的測定値を取得する光学的測定装置3と、光学的測定装置3から第2汚水を排出するドレイン管70と、を備え、撹拌機61および光学的測定装置3は、凝集撹拌機41の上部に配置されており、ドレイン管70の出口70aは、凝集撹拌機41の内部に位置しており、ドレイン管70から排出された第2汚水が凝集撹拌機41に流入するように構成されている
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含む第1汚水を凝集処理するための凝集撹拌機と、
懸濁物質を含む第2汚水の光学的測定値を取得するための測定システムと、を備え、
前記測定システムは、
凝集剤が注入された前記第2汚水を撹拌する撹拌機と、
前記撹拌された前記第2汚水の前記光学的測定値を取得する光学的測定装置と、
前記光学的測定装置から前記第2汚水を排出するドレイン管と、を備え、
前記撹拌機および前記光学的測定装置は、前記凝集撹拌機の上部に配置されており、
前記ドレイン管の出口は、前記凝集撹拌機の内部に位置しており、前記ドレイン管から排出された前記第2汚水が前記凝集撹拌機に流入するように構成されている、凝集装置。
【請求項2】
前記ドレイン管は、鉛直方向に延びている、請求項1に記載の凝集装置。
【請求項3】
前記光学的測定装置は、
前記第2汚水を下方に向けて大気中に流下させるノズルと、
前記ノズルから流下された前記第2汚水に光を照射して前記光学的測定値を取得する光学センサと、を備え、
前記測定システムは、前記ノズルの出口、前記光学センサ、および前記ドレイン管の入口を囲う箱をさらに備え、
前記ドレイン管の入口は、前記ノズルの出口の下方に位置しており、前記ノズルから前記第2汚水を前記ドレイン管に流入させることで、前記箱の内部に負圧を形成するように構成されている、請求項1または2に記載の凝集装置。
【請求項4】
前記ドレイン管の入口は、前記ノズルの出口よりも大きい、請求項3に記載の凝集装置。
【請求項5】
前記凝集撹拌機は、
前記第1汚水が供給される凝集撹拌槽と、
前記凝集撹拌槽の上部を覆う上蓋と、を備え、
前記ドレイン管は、前記上蓋に設けられた開口部を通じて前記凝集撹拌槽の内部まで延びており、
前記測定システムは、前記ドレイン管と前記開口部との隙間を封止するシール部材を有している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の凝集装置。
【請求項6】
懸濁物質を含む第1汚水を凝集撹拌機により凝集処理する凝集撹拌工程と、
懸濁物質を含む第2汚水の光学的測定値を取得する測定工程と、を含み、
前記測定工程は、
凝集剤が注入された前記第2汚水を撹拌機により撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌された前記第2汚水の前記光学的測定値を光学的測定装置により取得する光学的測定工程と、を含み、
前記撹拌機および前記光学的測定装置は、前記凝集撹拌機の上部に配置されており、
前記測定工程後の前記第2汚水を前記凝集撹拌機に流入させる、凝集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含む汚水を凝集処理するための凝集装置および凝集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理施設や浄水処理施設などの各種施設における汚水処理の適切な運転管理を行うためには、汚水の性状(例えば、色調、濁度、透明度、懸濁物質の濃度、および懸濁物質の凝集状態)を正確に把握する必要がある。そのため、従来から、光学的測定装置を用いて光学的測定値を取得し、該光学的測定値から汚水の性状を示す数値解析値を算出している。例えば、特許文献1には、撹拌機から排出された汚水の光学的測定値を光学的測定装置を用いて取得し、得られた光学的測定値から算出された数値解析値に基づいて凝集剤の適正な注入率を決定する凝集方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/6419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような凝集装置は、従来の凝集撹拌機などの他に光学的測定値を測定する汚水を撹拌するための撹拌機や光学的測定装置を備えている。そのため、従来の凝集装置よりも装置全体が大型化し、広い設置スペースを確保する必要がある。さらに、凝集装置は、光学的測定装置により測定された汚水を廃棄するために、追加の廃棄設備を設ける必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、光学的測定装置が設けられ、かつ設置スペースを削減し、測定後の汚水を廃棄するための追加の設備を必要としない凝集装置および凝集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、懸濁物質を含む第1汚水を凝集処理するための凝集撹拌機と、懸濁物質を含む第2汚水の光学的測定値を取得するための測定システムと、を備え、前記測定システムは、凝集剤が注入された前記第2汚水を撹拌する撹拌機と、前記撹拌された前記第2汚水の前記光学的測定値を取得する光学的測定装置と、前記光学的測定装置から前記第2汚水を排出するドレイン管と、を備え、前記撹拌機および前記光学的測定装置は、前記凝集撹拌機の上部に配置されており、前記ドレイン管の出口は、前記凝集撹拌機の内部に位置しており、前記ドレイン管から排出された前記第2汚水が前記凝集撹拌機に流入するように構成されている、凝集装置が提供される。
【0007】
一態様では、前記ドレイン管は、鉛直方向に延びている。
一態様では、前記光学的測定装置は、前記第2汚水を下方に向けて大気中に流下させるノズルと、前記ノズルから流下された前記第2汚水に光を照射して前記光学的測定値を取得する光学センサと、を備え、前記測定システムは、前記ノズルの出口、前記光学センサ、および前記ドレイン管の入口を囲う箱をさらに備え、前記ドレイン管の入口は、前記ノズルの出口の下方に位置しており、前記ノズルから前記第2汚水を前記ドレイン管に流入させることで、前記箱の内部に負圧を形成するように構成されている。
一態様では、前記ドレイン管の入口は、前記ノズルの出口よりも大きい。
一態様では、前記凝集撹拌機は、前記第1汚水が供給される凝集撹拌槽と、前記凝集撹拌槽の上部を覆う上蓋と、を備え、前記ドレイン管は、前記上蓋に設けられた開口部を通じて前記凝集撹拌槽の内部まで延びており、前記測定システムは、前記ドレイン管と前記開口部との隙間を封止するシール部材を有している。
【0008】
一態様では、懸濁物質を含む第1汚水を凝集撹拌機により凝集処理する凝集撹拌工程と、懸濁物質を含む第2汚水の光学的測定値を取得する測定工程と、を含み、前記測定工程は、凝集剤が注入された前記第2汚水を撹拌機により撹拌する撹拌工程と、前記撹拌された前記第2汚水の前記光学的測定値を光学的測定装置により取得する光学的測定工程と、を含み、前記撹拌機および前記光学的測定装置は、前記凝集撹拌機の上部に配置されており、前記測定工程後の前記第2汚水を前記凝集撹拌機に流入させる、凝集方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
凝集装置は、測定システムの撹拌機および光学的測定装置が凝集撹拌機の上部に配置されているため、装置全体の設置スペースを削減することができる。
さらに、凝集装置は、光学的測定装置から汚水を排出するドレイン管の出口が凝集撹拌機の内部に位置しているため、測定後の汚水を廃棄するための追加の設備を必要とせず、測定後の汚水を凝集撹拌機内に流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る測定システムを備えた汚水処理装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す測定システムの構成を示す概略図である。
図3図3は、凝集撹拌機および測定システムを示す側面図である。
図4図4は、凝集撹拌機および測定システムを示す上面図である。
図5図5は、ドレイン管および上蓋の開口部を示す拡大断面図である。
図6図6は、一実施形態に係る測定システムの光学的測定装置を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る測定システムを備えた汚水処理装置の一例を示す概略図である。図1に示す汚水処理装置は、排水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚水を処理するための凝集装置である。後述する測定システムは、汚水の性状(例えば、色調、濁度、透明度、懸濁物質の濃度、および懸濁物質の凝集状態)を示す数値解析値を算出するための光学的測定値を取得するために用いられる。本実施形態では、光学的測定値を数値解析することで得られた数値解析値に基づいて、凝集剤の適正な注入率が決定される。
【0012】
以下では、汚水の一例である懸濁物質を含む汚水を処理する凝集装置が、測定システムを備えた設備の一例として説明される。しかしながら、本実施形態に係る測定システムは、汚水を処理する他の設備に配置されてもよい。例えば、処理される汚水は、排水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚泥、排水処理施設における排水、浄水処理施設における原水などであってもよい。汚泥は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれでもよい。
【0013】
有機性汚泥の例としては、下水処理、し尿処理、各種産業の排水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、有機性汚泥の例として、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥、消化脱離液、凝集沈殿汚泥などを挙げることができる。有機性汚泥は無機物を含んでいてもよい。
【0014】
無機性汚泥の例としては、浄水処理、建設工事の排水処理、各種産業の排水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。無機性汚泥は有機物を含んでもよい。
【0015】
排水処理施設における排水の例としては、下水、食品産業、飲料水産業、化学産業、機械産業など各種産業の排水などが挙げられる。浄水処理施設における原水の例としては、河川水、湖沼の水、地下水などが挙げられる。
【0016】
さらに、処理される汚水は、排水処理や浄水処理などの処理の過程で調製される水であってもよい。排水処理での汚水の例としては、pHを調整した排水、無機凝集剤を注入した排水、有機凝結剤を注入した排水、金属キレート剤を注入した排水などが挙げられる。また、浄水処理での汚水の例としては、pHを調整した原水、無機凝集剤を注入した原水などが挙げられる。
【0017】
図1に示した凝集装置は、汚水貯槽10、第1供給装置14、凝集剤貯槽11、第1凝集剤注入装置24、および凝集撹拌機41を備えている。汚水貯槽10には、懸濁物質を含む汚水が貯留される。凝集撹拌機41は、懸濁物質を含む汚水を凝集処理するための装置である。凝集撹拌機41は、懸濁物質を含む汚水が供給される凝集撹拌槽42と、懸濁物質を含む汚水を撹拌する撹拌翼48と、撹拌翼48を回転させる駆動装置としてのモーター49とを備える。本実施形態では、凝集撹拌機41は、撹拌翼48の回転速度が10~300min-1程度に設定されている。凝集撹拌機41の凝集撹拌槽42には、汚水貯槽10から延びる第1供給元管18が接続され、第1供給元管18には、汚水貯槽10に貯留された汚水を所定の流量で凝集撹拌槽42に供給する第1供給装置14が配置される。第1供給装置14は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。
【0018】
一実施形態では、凝集撹拌機41としてラインミキサーを用いてもよい。ラインミキサーとは、配管に組み込まれたミキサーである。ラインミキサーの利点はミキサーが密封されているため、ラインミキサーの上流にある汚水用ポンプ、および凝集剤用ポンプの2台のポンプがあれば、ラインミキサーの下流に汚水を送ることができる点である。一方、凝集撹拌槽42内に撹拌翼48が設置された凝集撹拌機41の場合、撹拌槽上部が開放されているので、撹拌機の下流に液を送るためには、撹拌機の上流にある汚水用ポンプ、および凝集剤用ポンプの他に、もう1台ポンプ或いはポンプ相当の機器が必要である。そのため、通常は、ポンプを設置せず、高低差で下流に液を送るのが一般的である。
【0019】
凝集剤貯槽11には、凝集剤が貯留される。凝集剤貯槽11から延びる第1凝集剤供給配管26は、凝集撹拌槽42に連結されている。第1凝集剤供給配管26には、第1凝集剤注入装置24が配置される。第1凝集剤注入装置24は、懸濁物質を含む汚水に凝集剤を所定の注入率で注入する装置である。第1凝集剤注入装置24は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。
【0020】
懸濁物質を含む汚水は、第1供給装置14により汚水貯槽10から凝集撹拌槽42に供給される。以下、凝集撹拌槽42に供給される汚水を第1汚水と称する。凝集剤は、第1凝集剤注入装置24により所定の注入率で凝集撹拌槽42に供給される。凝集撹拌槽42では、撹拌翼48により第1汚水と凝集剤とを混合させて、これにより、懸濁物質のフロックが形成される。凝集撹拌槽42から排出された第1汚水が流れる排出配管28は、凝集撹拌槽42に接続されており、排出配管28の下流側には、脱水機90が接続されている。脱水機90は、フロックが形成された第1汚水を脱水し、ろ液とケーキとに分離する。ケーキは、脱水機90から回収される。
【0021】
凝集装置は、懸濁物質を含む汚水の光学的測定値を取得するための測定システム60をさらに備えている。図2は、図1に示す測定システム60の構成を示す概略図である。測定システム60は、凝集撹拌機41とは別の撹拌機61と、撹拌機61で撹拌された汚水の光学的測定値を取得する光学的測定装置3を備えている。
【0022】
撹拌機61は、懸濁物質を含む汚水が供給される撹拌槽62と、懸濁物質を含む汚水を撹拌する撹拌翼68と、撹拌翼68を回転させる駆動装置としてのモーター69とを備える。撹拌機61の撹拌槽62には、汚水貯槽10から延びる第2供給元管19が接続され、第2供給元管19には、汚水貯槽10に貯留された汚水を所定の流量で撹拌槽62に供給する第2供給装置15が配置される。第2供給装置15は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。一実施形態では、撹拌機61としてラインミキサーを用いてもよい。
【0023】
本実施形態では、撹拌機61は、撹拌翼68の回転速度が300~5000min-1に設定された高速撹拌を行う高速撹拌機として構成されている。この高速撹拌により、汚水内に凝集剤が瞬時に分散させられ、凝集剤は汚水と効率良く均一に混合される。その結果、汚水に含まれる懸濁物質が効率良く凝集させられる。
【0024】
撹拌機61では、撹拌翼68を300~5000min-1の回転速度で回転させることにより、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む汚水を高速撹拌することが重要である。好ましくは、撹拌翼68の回転速度は300~2000min-1である。より好ましくは、撹拌翼68の回転速度は400~1500min-1である。より好ましくは、撹拌翼68の回転速度は500~1200min-1である。
【0025】
このような高速撹拌を行う場合、凝集剤が注入された汚水に高ストレスが負荷されるので、凝集剤が適正な注入率で注入されていないと、フロックが成長する前に破壊されてしまう。したがって、注入される凝集剤が適正な注入率でなければ、フロックが適切に成長しない。本実施形態では、後述する制御装置が、光学的測定装置3から光学的測定値を取得し、さらに、フロックが適切に成長していることを、光学的測定値を数値解析することで得られた数値解析値から判断する。これにより、凝集剤の適正な注入率を高い精度で決定することができる。その結果、凝集剤の使用量を削減することができる。また、運転員の経験や勘がなくとも、凝集剤の注入率を適正に制御することができる。さらに、懸濁物質を含む汚水の性状(例えば、汚水内における懸濁物質の濃度など)が変化しても、凝集剤の注入率を適正に制御することができる。
【0026】
撹拌翼68の回転速度は、懸濁物質を含む汚水の種類(例えば、排水や汚泥など)、汚水の性状(例えば、SS(Suspended Solids)濃度、粘度など)、および凝集剤の種類(例えば、無機凝集剤、有機凝結剤、高分子凝集剤など)などに基づいて、300~5000min-1で調整する。懸濁物質を含む汚水に注入される凝集剤は、撹拌翼68内に注入されてもよいし、撹拌槽62よりも上流側に配置される第2供給元管19に注入されてもよい。
【0027】
本実施形態では、凝集剤貯槽11から延びる第2凝集剤供給配管27は、撹拌槽62に連結されている。第2凝集剤供給配管27には、第2凝集剤注入装置25が配置される。第2凝集剤注入装置25は、懸濁物質を含む汚水に凝集剤を所定の注入率で注入する装置である。第2凝集剤注入装置25は、例えば、ポンプ、またはバルブ、またはポンプとバルブの組み合わせである。
【0028】
懸濁物質を含む汚水は、第2供給装置15により汚水貯槽10から撹拌槽62に供給される。以下、撹拌槽62に供給される汚水を第2汚水と称する。凝集剤は、第2凝集剤注入装置25により撹拌槽62に供給される。撹拌槽62では、撹拌翼68の回転速度が300~5000min-1である高速回転で、第2汚水と凝集剤とを混合させて、これにより、懸濁物質のフロックが形成される。なお、凝集剤の注入率によっては、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。すなわち、撹拌機61では、懸濁物質のフロックを形成させるために撹拌翼68が高速で回転させられるが、凝集剤の注入率次第で、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。
【0029】
撹拌機61から排出される第2汚水が流れる測定用移送配管72は、撹拌槽62および光学的測定装置3に連結されている。光学的測定装置3は、撹拌機61で形成されたフロックを含む第2汚水に光を照射して、光学的測定値を得るための装置である。本実施形態では、光学的測定装置3は、フロックを含む第2汚水から出てきた透過光の強度を測定可能な装置である。光学的測定装置3は、透過率、回折光の強度、吸光度、反射光の強度などを測定可能な装置であってもよい。測定システム60は、光学的測定装置3から第2汚水を排出するドレイン管70を備えている。
【0030】
図3は、凝集撹拌機41および測定システム60を示す側面図である。図4は、凝集撹拌機41および測定システム60を示す上面図である。図4は、説明のために一部の構成が省略されている。凝集撹拌機41は、凝集撹拌槽42の上部を覆う上蓋43、撹拌翼48とモーター49とを連結するシャフト45をさらに備えている。シャフト45は、上蓋43を貫通して延びており、モーター49により撹拌翼48とともに回転される。シャフト45の中心軸線は、凝集撹拌槽42の中心軸線と一致している。
【0031】
図3に示すように、測定システム60の光学的測定装置3および撹拌機61は、凝集撹拌機41の上部に配置されている。より具体的には、光学的測定装置3および撹拌機61は、凝集撹拌機41の上蓋43の上部に配置されている。このような配置により、凝集装置は、光学的測定装置3および撹拌機61を配置するスペースを別途設けることなく、装置全体の設置スペースを削減することができる。
【0032】
光学的測定装置3および撹拌機61は、上蓋43の半径方向において、シャフト45の外側に配置されている。撹拌機61は、上蓋43の半径方向において、光学的測定装置3の外側に配置されている。光学的測定装置3と撹拌機61の配置は、本実施形態に限定されない。一実施形態では、光学的測定装置3は、上蓋43の半径方向において、撹拌機61の外側に配置されてもよい。
【0033】
光学的測定装置3に連結されたドレイン管70は、凝集撹拌機41の上蓋43を貫通して鉛直方向に延びている。ドレイン管70の出口70aは、凝集撹拌機41の内部に位置している。上蓋43には、開口部43aが形成されており、ドレイン管70は、開口部43aを通じて凝集撹拌槽42の内部まで延びている。ドレイン管70から排出された第2汚水は、凝集撹拌機41に流入し、凝集撹拌槽42内の第1汚水に合流する。このような構成により、凝集装置は、光学的測定装置3による測定後の第2汚水を廃棄するための追加の設備を必要とせず、測定後の第2汚水を凝集撹拌機41に流入させることができる。
【0034】
図5は、ドレイン管70および上蓋43の開口部43aを示す拡大断面図である。開口部43aの直径d1は、ドレイン管70の外径d2よりも大きい。測定システム60は、ドレイン管70と開口部43aとの隙間を封止するシール部材75を有している。シール部材75は、例えば、Oリングなどの円環形状を有する部品である。測定システム60は、シール部材75を備えることにより、凝集撹拌槽42から外部に汚水や臭気が漏洩するのを防ぐことができる。
【0035】
図6は、一実施形態に係る測定システム60の光学的測定装置3を示す拡大模式図である。光学的測定装置3は、測定用移送配管72の末端に連結されるノズル30と、ノズル30から流下した第2汚水に光を照射して光学的測定値を取得する光学センサ35を備えている。ノズル30は、測定用移送配管72を流れてきた第2汚水を下方に向けて流下させる構造体であり、円筒形状を有している。
【0036】
ドレイン管70の入口70bは、ノズル30の出口30aの下方に位置している。ドレイン管70は、ノズル30から離間して配置されている。ノズル30とドレイン管70は、鉛直方向に沿って配列されており、ノズル30の中心軸線は、ドレイン管70の中心軸線に一致する。ノズル30とドレイン管70の間には、第2汚水が流下する開放空間が形成される。したがって、第2汚水はノズル30からドレイン管70に向けて大気中に流下される。
【0037】
ドレイン管70の入口70bは、ノズル30の出口30aよりも大きい。より具体的には、ノズル30およびドレイン管70の中心軸線に垂直な方向から見たときに、ドレイン管70の入口70bの内径は、ノズル30の出口30aの内径よりも大きい。本実施形態のドレイン管70は、流入部70c、第1中間部70d、第2中間部70e、および流出部70fを有している。流入部70cは、ドレイン管70の入口70bを含み、ドレイン管70の最上部に位置している。漏斗形状を有する流入部70cは、その内径が下方に向かって小さくなっており、縮径部として機能する。第1中間部70dは、流入部70cの下端に接続されている。第1中間部70dは、一定の内径を有する円筒形状を有しており、流入部70cから流れる第2汚水を下方に導くように構成されている。
【0038】
第2中間部70eは、第1中間部70dの下端に接続されている。逆漏斗形状を有する第2中間部70eは、その内径が下方に向かって大きくなっており、拡径部として機能する。流出部70fは、第2中間部70eの下端に接続されている。流出部70fは、ドレイン管70の出口70aを含み、ドレイン管70の最下部に位置している。流出部70fは、一定の内径を有する円筒形状を有している。ドレイン管70を流れる第2汚水は、ドレイン管70の出口70aから凝集撹拌機41に供給される。ドレイン管70の形状は、本実施形態に限定されない。一実施形態では、ドレイン管70は、第1中間部70dおよび第2中間部70eを有しておらず、流入部70cの下端に流出部70fが接続されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、光学センサ35は、第2汚水に向けて光を照射する光源(投光部)35aと、第2汚水から出てきた光を検出する光検出器(受光部)35bと、を備え、光検出器35bに到達した透過光強度を測定する光学センサである。光源35aから照射され、フロックを含む第2汚水を透過した光は、光検出器35bによって検出される。この透過光強度を所定の時間の間測定し、測定された透過光強度を光学的測定値とする。
【0040】
光学的測定値である透過光強度の測定は、1回、または凝集剤の注入率を変えながら複数回実行され、これにより、少なくとも1つの光学的測定値が得られる。なお、光検出器35bで検出された透過光強度は、データロガー50に蓄積された後に、後述する数値解析装置5に送られる。数値解析装置5で算出された数値解析値は、制御装置6に送られて、制御装置6は、数値解析値に基づいて、凝集剤の適正な注入率を決定する。データロガー50、数値解析装置5、および制御装置6は、それぞれ別個に設けられていてもよい。あるいは、データロガー50および数値解析装置5は、1台のコンピューター、または1台のプログラマブルロジックコントローラ(例えば、シーケンサー)として構成される制御装置6に組み込まれていてもよい。
【0041】
光源35aの例としては、各種ランプ(水銀ランプ、キセノンランプ、クリプトンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプなど)、各種レーザ(固体レーザ、半導体レーザ、液体レーザ、気体レーザなど)、各種LEDなどが挙げられる。LEDは、市販の光学センサのうちで比較的高強度の光を照射できる光源であるため、光源35aは、好ましくは、LEDである。光検出器35bの例としては、CCD、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管、光導電素子、赤外線光学センサ、CMOSなどが挙げられる。いずれにしても、光学センサ35として、市販品を用いることができる。
【0042】
図6に示すように、測定システム60は、ノズル30の出口30a、光学センサ35、およびドレイン管70の入口70bを囲う箱78をさらに備えている。ノズル30から吐出された第2汚水は、ドレイン管70に到達するまで大気中を流下する。ノズル30から第2汚水をドレイン管70に流入させることで、第2汚水の周囲の大気も第2汚水とともにドレイン管70に流入する。したがって、ベルヌーイの定理により、箱78の内部に負圧が形成される。箱78の内部に負圧が形成されることによって、第2汚水の臭気が箱78の外部に拡散することが防止される。さらに、このような構成によれば、光学センサ35が箱78に囲われているため、自然光、および風などの光学的測定値に影響を及ぼす外乱を排除することができる。
【0043】
図1に戻り、光学的測定装置3には、数値解析装置5が電気的に接続され、数値解析装置5には、制御装置6が接続されている。数値解析装置5は、制御装置6内に組み込まれていてもよい。また、制御装置6は、第1凝集剤注入装置24および第2凝集剤注入装置25に接続されている。
【0044】
光学的測定装置3から得られた光学的測定値は、数値解析装置5に送られる。数値解析装置5は、光学的測定値を数値解析して、数値解析値を取得する。得られた数値解析値は、制御装置6に送られる。制御装置6は、数値解析値に基づいて凝集剤の適正な注入率を決定する。数値解析値の例としては、光学的測定値の平均値、分散、標準偏差、ピーク面積、ピーク高さなどが挙げられる。
【0045】
ある閾値以上の光学的測定値の個数、あるいは、ある閾値以下の光学的測定値の個数を、数値解析値としてもよい。数値解析装置5で、光学的測定値から、SS濃度、濁度、色度、フロック粒径などを算出し、これらを数値解析値としてもよい。ここで、フロック粒径とは、フロックが球形である場合には、フロックの直径を意味する。フロックが球形でない場合には、フロック粒径は、ストークス径、または各種測定方法によって測定された粒径を意味する。フロック粒径は、フロックの平均粒径であってもよい。平均粒径としては、算術平均径、最多径、中央径などが例示される。また、平均粒径は、個数基準であってもよいし、質量基準であってもよいし、体積基準であってもよい。
【0046】
光学的測定値からSS濃度、濁度を算出する方法として、透過光測定方法などの公知の方法を用いることができる。光学的測定値から色度を算出する方法として、透過光測定方法などの公知の方法を用いることができる。光学的測定値からフロック粒径を算出する方法として、レーザ回折・散乱法、カメラで撮影した画像を画像解析する方法などの公知の方法を用いることができる。フロック粒径は平均フロック粒径でもよいし、フロック粒径の粒径分布でもよい。光学的測定を行うと共に、得られた光学的測定値からSS濃度、濁度、色度、フロック粒径などを算出できる市販の測定装置を用いることができる。
【0047】
制御装置6は、第2汚水への凝集剤の注入、第2汚水の撹拌(高速撹拌)、光学的測定値の取得、光学的測定値に基づく数値解析を少なくとも1回行うことによって得られた、少なくとも1つの数値解析値から、凝集剤の適正な注入率を決定する。すなわち、制御装置6は、懸濁物質を含む第2汚水に凝集剤を注入し、懸濁物質のフロック形成させるために当該第2汚水を撹拌し、撹拌された第2汚水に対して光学的測定を実施し、得られた光学的測定値を数値解析して数値解析値を取得する。さらに、制御装置6は、得られた数値解析値に基づき、凝集剤の注入率が適正か否かを判断し、注入率が適正でなければ、凝集剤の注入率を変更して、再度撹拌、光学的測定、および数値解析を繰り返し、適正な注入率を決定する。なお、凝集剤の注入率によっては、懸濁物質のフロックが形成されない場合がある。
【0048】
適正な凝集剤注入率を決定する方法として、予め設定された複数の注入率を用いてもよい。制御装置6は、懸濁物質を含む第2汚水に予め設定された注入率で凝集剤を注入し、懸濁物質のフロックを形成させるために当該第2汚水を撹拌し、撹拌された第2汚水に対して光学的測定を実施し、得られた測定値を数値解析して数値解析値を取得する。これを、予め設定された複数の注入率それぞれについて繰り返し行う。制御装置6は、予め設定された複数の注入率それぞれで取得された複数の数値解析値を比較する。一実施形態では、最大値または最小値が得られた注入率が適正な注入率として決定される。他の実施形態では、最も大きな数値解析値が得られた注入率と2番目に大きな数値解析値が得られた注入率の平均値を適正注入率としてもよいし、あるいは、最も小さな数値解析値が得られた注入率と2番目に小さい数値解析値が得られた注入率の平均値を適正注入率としてもよい。
【0049】
さらに他の実施形態では、制御装置6は、縦軸が数値解析値を表し、横軸が凝集剤の注入率を表すグラフ上に、予め設定された複数の注入率における複数の数値解析値をプロットし、複数の注入率と複数の数値解析値との関係を示す近似式を算出して、得られた近似式に基づいて、凝集剤の適正な注入率を決定してもよい。例えば、数値解析値のピーク値が得られる注入率を近似式から計算し、得られた注入率を凝集剤の適正な注入率とすることができる。
【0050】
決定された注入率は、制御装置6から第1凝集剤注入装置24に送られる。第1凝集剤注入装置24は、決定された注入率で凝集撹拌機41に凝集剤を注入する。凝集撹拌機41に供給された第1汚水と凝集剤は、凝集撹拌槽42内で撹拌され、第1汚水中にフロックが形成される。フロックを含む第1汚水は、脱水機90に送られ、脱水機90により脱水される。
【0051】
図6に示すように、測定システム60は、必要に応じて、撹拌された汚水に希釈液を供給する希釈ライン55を含んでいてもよい。図6に示す希釈ライン55は、測定用移送配管72に接続されており、希釈液を、撹拌後で光学的測定前の第2汚水に供給する。希釈ライン55には、図示しない希釈液供給バルブが配置されており、制御装置6が必要に応じて希釈液供給バルブの開閉動作を操作することで、撹拌後の第2汚水への希釈液の供給を制御する。
【0052】
希釈液を撹拌後の第2汚水に供給する目的は、撹拌された第2汚水に含まれる懸濁物質の濃度および/またはフロックの濃度を低減させることである。懸濁物質の濃度が高い第2汚水では、フロックが形成されたときの光学的測定値とフロックが形成されないときの光学的測定値に差が生じず、その結果、凝集剤の注入率の決定が困難な場合がある。例えば、光学的測定装置3が、懸濁物質の濃度が高い第2汚水の透過光強度を測定する場合、凝集剤の注入率が適正でフロックが形成されても、フロック間の隙間がほとんど存在せず、透過光強度がほぼ一定になってしまう場合がある。これに対して、撹拌された第2汚水を希釈液で希釈する場合、フロック間の隙間を増大させることができるため、フロックの隙間から光が透過し、透過光強度のピークが複数個計測される。この結果、フロックが形成されたときの透過光強度とフロックが形成されないときの透過光強度に差が生じ、適正な注入率を決定できる。希釈液としては、純水、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水、海水などを用いることができる。
【0053】
測定システム60の光学的測定装置3の構成は、凝集剤の適正な注入率を決定するための測定値を取得できるのであれば、本実施形態に限らない。例えば、一実施形態では、光学的測定装置3は、ノズル30に代えて、撹拌機61から排出された第2汚水が流れる測定用移送配管72に一対の透明窓が設けられており、光学センサ35により、一方の透明窓に向けて光を照射し、他方の透明窓から出てくる光を検出して、光学的測定値を取得するように構成されていてもよい。
【0054】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0055】
3 光学的測定装置
5 数値解析装置
6 制御装置
10 汚水貯槽
11 凝集剤貯槽
14 第1供給装置
15 第2供給装置
18 第1供給元管
19 第2供給元管
24 第1凝集剤注入装置
25 第2凝集剤注入装置
26 第1凝集剤供給配管
27 第2凝集剤供給配管
28 排出配管
30 ノズル
35 光学センサ
35a 光源(投光部)
35b 光検出器(受光部)
41 凝集撹拌機
42 凝集撹拌槽
43 上蓋
45 シャフト
48 撹拌翼
49 モーター
50 データロガー
55 希釈ライン
60 測定システム
61 撹拌機
62 撹拌槽
68 撹拌翼
69 モーター
70 ドレイン管
72 測定用移送配管
75 シール部材
78 箱
90 脱水機
図1
図2
図3
図4
図5
図6