(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142679
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】システムまたは方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20230928BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20230928BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20230928BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20230928BHJP
H02H 3/34 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01R31/08
G01R31/58
G01R31/50
G01R31/52
H02H3/34 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049697
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144108
【氏名又は名称】株式会社三英社製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 久征
(72)【発明者】
【氏名】絹村 拓也
【テーマコード(参考)】
2G014
2G033
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AA04
2G014AA19
2G014AB33
2G014AC02
2G033AA01
2G033AB01
2G033AC02
2G033AD01
2G033AE01
2G033AF05
2G033AG14
(57)【要約】
【課題】送電線を監視する新たなシステムまたはプログラムを提供する。
【解決手段】送電線の線間電圧及び相電流を計測する2以上の計測器を有するシステムであって、前記制御部は、前記線間電圧を取得する処理と、前記線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理と、を実行するシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の線間電圧及び相電流を計測する2以上の計測器を備えたシステムであって、
前記線間電圧を取得し、
前記線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理と、を実行するシステム。
【請求項2】
前記短絡判断処理において短絡事故が発生したと判断した場合、
短絡事故が発生したと判断した時点までの相電流のサージ電流波形を保存する処理をさらに実行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記相電流のサージ波形において第1所定値以上の周波数成分を低減させる第1フィルタ処理と、
前記第1フィルタ処理後の前記相電流のサージ波形に基づき短絡事故の発生を計測した時刻を短絡計測時刻として計測する処理と、をさらに実行し、
前記第1所定値は1メガヘルツ以上10メガヘルツ未満の範囲で設定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1以上の計測器は、第1計測器と第2計測器とを含み、
前記第1計測器及び前記第2計測器それぞれで計測された前記相電流のサージ波形を用い、短絡事故の発生地点を算出する処理をさらに実行する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記線間電圧時刻歴において過電流を検出する処理と、
前記過電流が検出された場合に、短絡事故の発生を報知する処理と、をさらに実行する請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記1以上の計測器は前記送電線の零相電圧をさらに計測し、
前記零相電圧を取得する処理と、
前記零相電圧が設定値以上となった状態が設定時間以上継続した場合、地絡事故が発生したと判断する地絡判断処理と、をさらに実行する、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記地絡判断処理において地絡事故が発生したと判断した場合、
地絡事故が発生したと判断した時点までの零相電流のサージ波形を保存する処理をさらに実行する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記零相電流のサージ波形において第2所定値以上の周波数成分を低減させる第2フィルタ処理と、
前記第2フィルタ処理後の前記零相電流のサージ波形に基づき地絡事故の発生を計測した時刻を地絡計測時刻として計測する処理と、をさらに実行し、
前記第2所定値は10キロヘルツ以上1メガヘルツ未満の範囲で設定される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記1以上の計測器は、第1計測器と第2計測器とを含み、
前記第1計測器及び前記第2計測器それぞれで計測された前記地絡計測時刻から、地絡事故の発生地点を算出する処理をさらに実行する、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記零相電圧が設定電圧以上となった状態が所定周期以上継続した場合、地絡事故が発生したと判断する追加処理と、
前記地絡判断処理及び前記追加処理の両方において地絡事故が発生したと判断した場合、地絡の発生を報知する処理と、をさらに実行する請求項6から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
送電線の線間電圧を計測する2以上の計測器を備えるシステムに対して、
前記線間電圧を取得する処理と、
前記線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムまたは方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線において零相電圧(V0)を計測し、地絡の発生を検知する装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、配電線において被覆電線が採用されていることもあり、地絡のみの標定を行ってきた。
【0005】
しかし、送電線用故障点標定システムにおいては、送電線が裸電線を使用しており鉄塔間におけるギャロッピングなどによる短絡時の標定が必要となる。しかし、短絡時には送電線にV0が発生しないため新たな検出手法が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を考慮し、本発明は、一態様として送電線の線間電圧及び相電流を計測する1以上の計測器を備えたシステムであって、前記線間電圧を取得する処理と、前記線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理と、を実行するシステム提供する。
【0007】
また、本発明は一態様として、送電線の線間電圧及び相電流を計測する2以上の計測器を有するシステムに対して、前記線間電圧を取得する処理と、前記線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理と、を実行させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たなシステムまたはプログラムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る故障点標定システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る送電線及び計測器の構成を示す図である
【
図3】実施形態に係る装置の(a)ハードウェア構成及び(b)機能構成を示す図である。
【
図4】装置が取得または保存する線間電圧時刻歴に基づき作成された電流波形の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
(概要)
図1~
図7を参照しつつ、本発明の1つの実施形態である、監視システム1について説明する。
【0011】
監視システム1は、
図1、
図2に示すように、三相交流の送電を行う送電線2を監視するシステムである。監視システム1は、計測器10、11、装置20、及びネットワーク5を備える。装置20及び計測器10、11はネットワーク5によって通信可能に接続される。
【0012】
ネットワーク5は、無線方式または有線方式の通信手段であり、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、公衆通信網、専用線などである。なお、本実施形態による監視システム1は上記複数の情報管理装置によって構成されているが、本発明はこれらの装置の数を限定するものではない。そのため、監視システム1は、以下のような機能を備えるものであれば、1以上の装置によって構成することができる。
【0013】
計測器10、11は、送電線2の送電端変電所と受電端変電所との構内にそれぞれ設置され、送電線2の零相電圧、及び、U、V、W各相間の線間電圧を計測する機能を有する(
図1、
図2)。計測器10、11は、計測して得られた線間電圧、零相電圧、相電流及び零相電流を、ネットワーク5を介して装置20へ送信する機能を有する。計測器10、11は、GPS衛星と通信し、一定期間ごとにGPS時刻信号時間を受信し、各計測器で使用される時刻の同期を取っている。
【0014】
装置20は、計測器10、11から送電線2の線間電圧(U-V間、V-W間、W-U間の各相間)零相電圧、相電流及び零相電流を取得し、遠隔地点から送電線2に異常の発生が無いか監視する装置である。
【0015】
図3(a)は、計測器10、11、及び装置20の実現に用いるハードウェア(処理装置100とする)の一例である。同図に示すように、処理装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、出力装置105、および通信装置106を備える。これらは図示しないバス等の通信手段を介して互いに通信可能に接続されている。
【0016】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等を用いて構成される。プロセッサ101が、主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、処理装置100の機能が実現される。
【0017】
主記憶装置102は、プログラムやデータを記憶する装置であり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性半導体メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。補助記憶装置103は、SSD(Solid State Drive)、SDメモリカード等の各種不揮発性メモリ(NVRAM:Non-volatile memory)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、クラウドサーバの記憶領域等である。
【0018】
入力装置104は、情報の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、音声入力装置(マイクロフォン等)、音声認識装置等である。処理装置100が通信装置106を介して他の装置との間で情報の入力を受け付ける構成としてもよい。
【0019】
出力装置105は、各種の情報を出力するインタフェースであり、例えば、画面表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、印字装置等)、音声出力装置(スピーカ等)、音声合成装置等である。処理装置100が通信装置106を介して他の装置との間で情報の出力を行う構成としてもよい。
【0020】
通信装置106は、ネットワーク5を介した他の装置との間の通信を実現する有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Interface)モジュール、シリアル通信モジュール等である。
【0021】
〔機能構成〕
処理装置100が備える主な機能構成を
図3(b)に示す。同図に示すように、装置20は保存領域114及び管理部120を備える。
【0022】
保存領域114は、主記憶装置102または補助記憶装置103に形成される。保存領域114には、取得した線間電圧及び零相電圧の時刻歴が、計測器10、11のそれぞれについて保存される。
【0023】
管理部120の機能は、プロセッサ101が主記憶装置102または補助記憶装置103に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。管理部120は、線間電圧、零相電圧、相電流及び零相電流の解析等の処理を行う。詳細は後述する。
【0024】
〔処理〕
監視システム1において実行される処理の一例について、
図5から
図7のフローチャートを用いて以下に説明する。
【0025】
まず計測器10、11及び装置20のそれぞれにおいて、プロセッサ101によって主記憶装置102または補助記憶装置103に保存されたプログラムが起動され、監視システム1の処理が以下のように実行される。
【0026】
監視システム1において実行される処理は、大別して短絡検出フロー(
図5、
図7)と、地絡検出フロー(
図6、
図7)との2つである。
【0027】
(短絡検出フロー)
短絡検出フロー(
図5)において計測器10、11は、送電線2の線間電圧を取得し、線間電圧が設定割合低下した状態が設定周期分継続したか、確認する(S1)。ここで、設定割合及び設定周期は予め設定された値である。線間電圧(及び後述の零相電圧)は、任意のサンプリングレートで取得されるが、例えば10kHz以上1000kHz(キロヘルツ)以下の範囲でレートが設定される。
【0028】
例えば、U-V間、V-W間、W-U間のいずれかの線間電圧が設定%(例えば10%など)低下した状態が予め設定したサイクル数以上続いた場合、計測器10、11は、S2へ処理を進める(S1:YES)。S1での条件が満たされない場合(S1:NO)、計測器10、11は、ステップS1の処理を継続する。
【0029】
計測器10、11は、ステップS2において、事故検出処理を行い線間電圧の低下が認められた時点までの相電流のサージ波形を自身の保存領域114に保存する。ステップS2における事故検出処理の詳細は後述する。
【0030】
さらに計測器10、11は、過電流が検出されたかどうかを確認する(S4)。過電流が検出された場合(S4:YES)、短絡事故の発生を発呼し、ユーザに出力装置105、通信装置106などにより報知する(S5)。また、過電流が検出なかった場合には事故の発生を発呼しない(S6)。以降、装置20は、停電判定などの後処理を継続する。
【0031】
(地絡検出フロー)
計測器10、11及び装置20は、短絡事故の検出とは独立して、地絡の検出処理も行う(
図6)。地絡の検出処理では、S8、S10、S12、S2のレベル検出処理と、S13~S18の地絡判定処理が並行して実行される。
【0032】
計測器10、11は、ステップS8で計測器10、11におけるレベル検出用の残留電圧をキャンセルし1サイクルごとの零相電圧の変化量を取得して、ステップS10以下の処理を行う。
【0033】
ステップ10で計測器10、11は、零相電圧の変化量を取得し、さらに零相電圧の変化量が設定V0の設定割合(例えば50%)以上となっているか(S10)、その状態が設定時間以上継続したか(S12)確認する。なお、設定V0は予め設定された値である。
【0034】
ステップS10、S12の条件がいずれも満たされる場合(S10:YESかつS12:YES)、事故検出処理(S2)が実行される。計測器10、11は、ステップS2において、設定していた零相電圧の変化が認められた時点(すなわちステップS10、S12の条件が満たされた時点)までの零相電流のサージ電流波形を保存する。
【0035】
ステップS10、S12のいずれかが満たされない場合(S10:NOまたはS12:NO)、計測器10、11は、処理をS8に戻す。
【0036】
一方、地絡判定処理(
図6右側)において計測器10、11は、ステップS13で計測器10、11における事故判定用の残留電圧をキャンセルし1サイクルごとの零相電圧の変化量を取得して、ステップS15以下の処理を行う。
【0037】
計測器10、11は、計測された零相電圧が設定V0以上となっているか(S15)、その状態が設定サイクル数以上継続したか(S17)確認する。
【0038】
ステップS15、S17の条件がいずれも満たされる場合(S15:YESかつS17:YES)、計測器10、11は、地絡事故が確定したと判断する(S18)。
【0039】
一方、ステップS15、S17のいずれかが満たされない場合(S15:NOまたはS17:NO)、計測器10、11は、処理をS13に戻す。
【0040】
ステップS19は、地絡発生に際して報知や何らかの措置が必要か判断する処理である。処理がS2及びS18の両方を経てステップS19に至ると、計測器10、11は、事故の検出がされたことを出力装置105、通信装置106などにより報知する(S19)。以降、装置20は、停電判定等の後処理を行う。
【0041】
なお、一定期間経過しても処理がS2及びS18の両方を経てステップS19に至らない場合、監視システム1は処理過程をステップS8に戻す。
【0042】
図7では、計測器10、11は、事故検出処理が短絡検出、地絡検出のどちらの検出フローによって発生したか判断するフローチャートを示す(S21)。
【0043】
短絡検出による場合(S21:短絡)、計測器10、11は、取得した相電流のサージ電流波形に対してローパスフィルタ(LPF)をかけ、フィルタ処理の結果を自身の保存領域114に保存し、装置20へ送信する(S22)。ステップS22においてLPFは、第1所定値以上の周波数の時刻歴波形を低減またはカットする。第1所定値は、1MHz以上10MHz(メガヘルツ)未満の範囲内において予め設定される。なお、計測器10、11と装置20との通信は、パケット通信で行われる。
【0044】
事故検出処理が地絡検出によって発生した場合(S21:地絡)、計測器10、11は、取得した零相電流のサージ電流波形に対してLPFをかけ、自身の保存領域114に保存し、装置20へ送信する(S23)。ステップS23においてLPFは、第2所定値以上の周波数の時刻歴波形を低減またはカットする。第2所定値は、10kHz以上1MHz未満の範囲内において予め設定される。
【0045】
ステップS24において装置20は、計測器10、11から受信したLPF処理後のサージ電流波形を用い、これらの時刻歴に基づき、事故が発生した地点を算出する。
【0046】
詳細に述べると装置20は、
図4に示すように、サージ電流波形を計測した時刻、すなわち計測中のサージ電流が急激に変化した時刻を、計測器10、11のそれぞれにつき、短絡または地絡の発生時刻として計測する。次に装置20は、各計測器10、11で取得された短絡または地絡の発生時刻と、各計測器10、11の位置とに基づいて、送電線2のどの地点において短絡事故または地絡事故が発生したかを算出する。
【0047】
次に装置20は、算出した短絡事故または地絡事故の発生地点を、出力装置105に表示するなどの方法により、ユーザに知らせる(S25)。
【0048】
<変形例>
実施形態において監視システム1は計測器10、11の2つを備えているが、計測器の数は2以上において任意である。したがって、監視システム1を、計測器を3つ以上備える構成としてもよい。また、装置20と計測器10、11が一体であってもよい。計測器10、11が実行する処理の一部または全部を装置20が実行してもよい。また、装置20が実行する処理の一部または全部を計測器10、11が実行してもよい。
【0049】
<効果>
実施形態及び変形例において監視システム1は、送電線2の線間電圧及び相電流を計測する2以上の計測器10、11を備える。監視システム1は、線間電圧を取得し、線間電圧の低下率が閾値以上となった状態が設定周期以上継続した場合、短絡事故が発生したと判断する短絡判断処理(S1)とを実行する。
【0050】
上記の構成では、送電線2において短絡発生時に線間電圧が低下することを利用している。線間電圧の低下を検出する上記処理を行うことで、短絡事故を検出することができる。
【0051】
監視システム1は、短絡判断処理(S1)において短絡事故が発生したと判断した場合、短絡事故が発生したと判断した時点までの相電流のサージ波形を記憶部に記憶させる処理(S2)をさらに実行する。
【0052】
上記構成では、短絡事故が発生したと判断した時点以降の相電流のサージ波形の保存をしないことにより、記憶部に保存されるデータ量を低減することができる。そのため、記憶部の容量を節約することができるし、相電流のサージ波形取得時のサンプリングレートを数十MHzにすることが可能となる。例えば、保存する相電流のサージ波形の長さ1ミリ秒以下とすることも可能である。保存したデータに対する解析等の処理を迅速に行うことができる。
【0053】
監視システム1は、相電流のサージ波形において第1所定値以上の周波数成分を低減させるフィルタ処理(S22)と、フィルタ処理後の相電流のサージ波形に基づき短絡事故の発生を計測した時刻を判定する処理(S24)と、をさらに実行する。この第1所定値は、1メガヘルツ以上10メガヘルツ未満の範囲で設定される。
【0054】
上記構成では、LPFによってノイズを除去することができる。このため、相電流のサージ波形の計測時刻を正確に取得することができる。
【0055】
監視システム1は、計測器10、11のそれぞれから取得された相電流のサージ波形を用い、短絡事故の発生地点を算出する処理(S24)を実行する。
【0056】
上記構成では、2つの計測点における短絡事故の相電流のサージ波形を用いて、短絡事故の発生地点を正確に計測することができる。特に、LPFによって高周波数のノイズ除去がなされた時刻歴を用いているため、正確な時刻及び正確な発生地点の割り出しが可能となる。
【0057】
監視システム1は、線間電圧時刻歴において過電流を検出する処理(S4)と、過電流が検出された場合に(S4:YES)、短絡事故の発生を報知する処理(S5)を実行する。
【0058】
上記構成では、短絡が発生した場合、短絡箇所より電源側において大きな過電流が流れることを利用している。過電流の検出を用いることにより、短絡事故の発生の判断を正確に行うことができる。特に、線間電圧の低下による判断(S1)と併用する場合には、ノイズ誤検出および計画停電による誤報の可能性を高い確率で排除することができる。
【0059】
監視システム1は送電線2の零相電圧を計測する。また、監視システム1は、零相電圧を取得する処理(S10)と、零相電圧が設定値以上となった状態が設定時間以上継続した場合、地絡事故が発生したと判断する地絡判断処理(S10、S12)と、を実行する。
【0060】
上記の構成では、送電線2において地絡発生時に零相電圧が増加することを利用している。上記処理を行うことで零相電圧の変化を検出し、地絡事故を検出することができる。
【0061】
監視システム1は、地絡判断処理において地絡事故が発生したと判断した場合(S10:YESかつS12:YES)、地絡事故が発生したと判断したときまでの零相電流のサージ波形を保存する処理(S2)を実行する。
【0062】
上記構成では、地絡事故が発生したと判断したときまでの零相電流のサージ波形を保存することにより、記憶部に保存されるデータ量を低減することができる。そのため、記憶部の容量を節約することができるし、零相電流サージ波形取得時のサンプリングレートを数十MHz単位まで増やすことが可能となる。例えば、保存する零相電流のサージ波形の長さを
図4に示すように、1ミリ秒以下とすることも可能である。また、保存したデータに対する解析等の処理を迅速に行うことができる。
【0063】
監視システム1は、零相電流のサージ波形において第2所定値以上の周波数成分を低減させるフィルタ処理(S23)と、フィルタ処理後の零相電流のサージ波形に基づき地絡事故の発生を計測した時刻を地絡計測時刻として計測する処理(S24)と、をさらに実行する。ここで、第2所定値は10キロヘルツ以上1メガヘルツ未満の範囲で設定される。
【0064】
上記構成では、LPFによってノイズを除去することができる。このため、サージ電流波形の変化点(サージ到達時刻)を正確に計測することができる。
【0065】
監視システム1は、計測器10、11それぞれから計測された地絡計測時刻から、地絡事故の発生地点を算出する処理を実行する(S24)。
【0066】
上記構成では、2つの計測点における地絡事故の計測時刻に基づいて、地絡事故の発生地点を正確に計測することができる。特に、LPFによって高周波数のノイズ除去がなされた零相電流のサージ波形を用いているため、正確な地絡発生時刻及び正確な地絡発生地点の割り出しが可能となる。
【0067】
監視システム1は、零相電圧が設定電圧以上となった状態が所定周期以上継続した場合(S15:YESかつS17:YES)、地絡事故が発生したと判断する地絡判定処理(S15からS18、追加処理に相当)を行う。また、レベル検出(地絡判断処理の一例)及び地絡判定の両方において地絡事故が発生したと判断した場合、地絡事故の発生を報知する処理(S19)を実行する。
【0068】
上記構成では、追加処理(S18)を加えることにより、地絡事故の発生の判断を正確に行うことができる。特に、零相電圧の上昇による判断(S2、S10、S12)と併用する場合には、ノイズ誤検出による誤報の可能性を高い確率で排除できる。また、微地絡など、報知する必要のない状態をふるい分けることができる。
【符号の説明】
【0069】
監視システム1
送電線2
計測器10、11
装置20