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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142713
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/06 20060101AFI20230928BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20230928BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20230928BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230928BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F02D41/06
F02D41/14
F02D43/00 301B
F02D43/00 301H
F02D43/00 310A
F02D45/00 360A
F02D45/00 360E
F02D45/00 362
F02D45/00 364D
F02D45/00 364G
F02D45/00 368F
F01N3/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049737
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】辻 達也
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA11
3G091AA17
3G091AA28
3G091AB03
3G091BA03
3G091CB02
3G091CB03
3G091CB05
3G091DC01
3G091EA01
3G091EA06
3G091EA07
3G091EA14
3G091EA16
3G091EA34
3G091EA39
3G091FA02
3G091FB02
3G091FB10
3G091FB12
3G091FC04
3G091HA36
3G091HA37
3G301HA01
3G301HA06
3G301JA25
3G301JA26
3G301KA05
3G301LB02
3G301MA01
3G301ND01
3G301NE11
3G301NE12
3G301NE13
3G301NE15
3G301PA07Z
3G301PA09Z
3G301PA10Z
3G301PA11Z
3G301PD02Z
3G301PE01Z
3G301PE08Z
3G384AA01
3G384AA07
3G384BA09
3G384BA24
3G384CA01
3G384DA14
3G384EA01
3G384EB03
3G384EB04
3G384EB05
3G384EB07
3G384FA04Z
3G384FA08Z
3G384FA28Z
3G384FA42Z
3G384FA52Z
3G384FA56Z
3G384FA85Z
3G384FA86Z
(57)【要約】
【課題】内燃機関の冷間始動直後の時期の触媒の昇温、活性化を促進し、有害物質の排出増を抑制する。
【解決手段】複数の気筒1を包有し各気筒から排出されるガスを排気通路4において合流させて同一の排気浄化用触媒41に流入させる内燃機関を制御するものであり、内燃機関の冷間始動直後の時期に、ある気筒1から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように当該気筒1に対して噴射する燃料の量を調整し、かつ、他の気筒1から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように当該気筒1に対して噴射する燃料の量を調整し、それら気筒1から排出されるガスの総体の空燃比が理論空燃比またはその近傍となるように制御する内燃機関の制御装置を構成した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を包有し各気筒から排出されるガスを、排気通路を通じて同一の排気浄化用触媒に流入させる内燃機関を制御するものであり、
当該内燃機関の冷間始動直後の時期に、
前記複数の気筒における一部の気筒から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように前記一部の気筒に対して噴射する燃料の量を調整し、
かつ、前記一部の気筒とは異なる他の気筒から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように前記他の気筒に対して噴射する燃料の量を調整し、
前記一部の気筒及び前記他の気筒から排出されるガスの総体の空燃比が、理論空燃比またはその近傍となるように制御する内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気浄化用触媒から最も距離の遠い気筒から排出されるガスの空燃比と、前記排気浄化用触媒から最も距離の近い気筒から排出されるガスの空燃比とを異ならせる請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記排気浄化用触媒から最も距離の遠い気筒から排出されるガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチとし、前記排気浄化用触媒から最も距離の近い気筒から排出されるガスの空燃比を理論空燃比よりもリーンとする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の運転を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路には、気筒から排出されるガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。この種の触媒は、空燃比リーンのガスが流入したときに余剰の酸素を吸蔵する能力(O2 Storage Capacity)を有している。そして、空燃比リッチのガスが流入したときに、吸蔵していた酸素を放出する。これにより、空燃比リーンのガスに含まれるNOxを適切に還元処理でき、また空燃比リッチのガスに含まれるHC、COを適切に酸化処理できる。
【0003】
HC、CO、NOxの全てを効率よく浄化するには、ガスの空燃比を理論空燃比近傍の一定範囲に収める必要がある。そのために、内燃機関の排気通路上に空燃比センサを設置して、当該センサが検出する空燃比を所要の目標値に追従させるフィードバック制御を実施することが通例となっている(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-139340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の冷間始動直後は、排気浄化用の触媒の温度も低下している。触媒による有害物質の浄化性能を高く維持するためには、可及的速やかに触媒を昇温させることが望まれる。
【0006】
本発明は、内燃機関の冷間始動直後の時期の触媒の昇温、活性化を促進し、有害物質の排出増を抑制することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、複数の気筒を包有し各気筒から排出されるガスを、排気通路を通じて同一の排気浄化用触媒に流入させる内燃機関を制御するものであり、当該内燃機関の冷間始動直後の時期に、前記複数の気筒における一部の気筒から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように前記一部の気筒に対して噴射する燃料の量を調整し、かつ、前記一部の気筒とは異なる他の気筒から排出されるガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように前記他の気筒に対して噴射する燃料の量を調整し、前記一部の気筒及び前記他の気筒から排出されるガスの総体の空燃比が、理論空燃比またはその近傍となるように制御する内燃機関の制御装置を構成した。
【0008】
より具体的には、前記排気浄化用触媒から最も距離の遠い気筒から排出されるガスの空燃比と、前記排気浄化用触媒から最も距離の近い気筒から排出されるガスの空燃比とを異ならせる。とりわけ、前記排気浄化用触媒から最も距離の遠い気筒から排出されるガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチとし、前記排気浄化用触媒から最も距離の近い気筒から排出されるガスの空燃比を理論空燃比よりもリーンとすることが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内燃機関の冷間始動直後の時期の触媒の昇温、活性化を促進し、有害物質の排出増を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。
図2】同実施形態の内燃機関の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
図3】同実施形態の内燃機関の制御装置による触媒の早期暖機のための空燃比制御の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒エンジン。図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0012】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0013】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。排気通路4における触媒41の上流及び下流には、排気通路4を流通するガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設けている。空燃比センサ43、44はそれぞれ、ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO2センサであってもよく、ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよい。本実施形態では、触媒41の上流の空燃比センサ43、下流の空燃比センサ44ともに、O2センサを想定している。
【0014】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)に接続している。
【0015】
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
【0016】
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速(または、車輪の回転速度)を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、排気浄化用の触媒41の上流側におけるガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側におけるガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
【0017】
ECU0の出力インタフェースからは、内燃機関の点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号k、EGRバルブ23の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号l等を出力する。
【0018】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関及び車両の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0019】
インジェクタ11からの燃料噴射量を決定するにあたり、ECU0は、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数、要求EGR率等から、気筒1に吸入される空気(新気)の量を算出し、これに見合った基本噴射量TPを決定する。基本噴射量TPは、吸入空気量に比例する、目標空燃比を具現するために必要な燃料の量である。目標空燃比は、通常、理論空燃比またはその近傍の値である。但し、後述するように、本実施形態では、各気筒1毎にインジェクタ11から噴射する燃料の量、ひいては各気筒1に充填される混合気の空燃比を不均等に大きくばらつかせることがある。
【0020】
混合気の空燃比をフィードバック制御する際には、上記の基本噴射量TPを、排気通路4における触媒41の上流側及び/または下流側のガスの空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。フィードバック補正係数FAFは、1を中心とする正数であり、空燃比センサ43、44を介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
【0021】
その上で、内燃機関の運転状況や環境条件等に応じて定まる各種補正係数Kや、インジェクタ11の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。ECU0は、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを通電し、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
【0022】
しかして、本実施形態のECU0は、図2に示すように、内燃機関の冷間始動直後であるか、その時期を過ぎて内燃機関及び触媒の暖機がある程度以上完了しているかに応じて(ステップS1)、各気筒1に相対するインジェクタ11から当該気筒1に噴射する燃料の量の制御を変更する(ステップS2、S3)。
【0023】
内燃機関の冷間始動直後の時期、例えば、内燃機関の冷却水の温度が所定値以下の低温である、触媒41の温度が所定値以下の低温である、または冷間始動から経過した時間若しくはサイクル数が所定値以下であるときには(ステップS1)、図3に例示するように、各気筒1に充填される混合気の空燃比を、それら気筒1間で均一化せずに大きくばらつかせる(ステップS2)。
【0024】
燃料としてガソリンを使用する場合、理論空燃比は約14.6である。ステップS2にて、ECU0は、触媒41から最も距離の遠い気筒1における混合気の空燃比を理論空燃比よりも過剰にリッチ化した約12.6とするべく、当該気筒1に対してインジェクタ11から噴射する燃料の量を増量する。対して、触媒41から最も距離の近い気筒1、及び中間の気筒1における混合気の空燃比は、理論空燃比よりも過剰にリーン化した約15.9とするべく、当該気筒1に対してインジェクタ11から噴射する燃料の量を減量する。
【0025】
上掲の各気筒1から排出されるガスの総和の空燃比は、理論空燃比またはその近傍の値、例えば約14.8になるようにする。14.8は、ガソリン燃料の理論空燃比14.6よりも若干リーンであるが、これは、内燃機関の冷間始動直後の時期には有害物質HCが排出されやすいことによる。HCを触媒41において酸化処理して無害化するためには、触媒41内の雰囲気を幾分リーン寄りにする方が有利である。
【0026】
ステップS2にて、点火タイミングは、各気筒1毎に均等としてもよいが、各気筒1間で異ならせてもよい。一般に、内燃機関の冷間始動直後の時期は、気筒1から排出され触媒41に流入するガスの温度を高温化するべく、点火タイミングを平常よりも遅角補正する。が、混合気が燃焼しにくい気筒1は、燃焼しやすい気筒1に比して点火タイミングをより進角してもよい。
【0027】
その後、内燃機関の冷却水の温度が所定値以上に昇温し、触媒41の温度が所定値以上に昇温し、または冷間始動から経過した時間若しくはサイクル数が所定値を超えたならば(ステップS1)、平常の制御、即ち各気筒1に充填される混合気の空燃比を均一化する制御へと移行する(ステップS3)。ステップS3では、例えば、各気筒1における混合気の空燃比をそれぞれ理論空燃比に近い約14.6とするべく、各気筒1に対してインジェクタ11から噴射する燃料の量を制御する。
【0028】
本実施形態によれば、内燃機関の冷間始動直後の時期に、各気筒1から触媒41に順次流れ込むガスの空燃比が大きく増減し、触媒41にて大きな反応熱が発生して、触媒41の早期の昇温が促進される。そして、有害物質の排出量をより一層低減することができる。
【0029】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限定されない。各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
図1
図2
図3