(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142722
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20230928BHJP
B60N 2/803 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
B60N2/879
B60N2/803
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049755
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 親典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】乗員の乗り物酔いを効果的に抑制できる車両用シートを得る。
【解決手段】ヘッドレストが、着座乗員の頭部の一部であり後頭骨と対応する部位である被支持部が進入可能な凹部27が前面に形成された硬質ウレタンからなる第1構成部25と、硬質ウレタンより硬度が低い軟質ウレタンからなり、凹部に設けられ、被支持部によって変形させられる第2構成部と、を備え、凹部の底面である第1構成部の一部が、被支持部を支持し且つ直線状の接続部位において互いに接続される左右一対の頭部支持面であり、接続部位に直交する平面で切断された左右の頭部支持面の断面同士がなす角度である第1角度が37.2°~143°の範囲に設定され、シート左右方向に見たときに、接続部位に対して直交する方向とシート前後方向がなす角度である第2角度が12.8°~68.7°の範囲に設定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、
前記着座乗員の背部を支持するシートバックと、
前記着座乗員の頭部を支持するヘッドレストと、
を備え、
前記ヘッドレストが、
前記着座乗員の前記頭部の一部であり後頭骨と対応する部位である被支持部が進入可能な凹部が前面に形成された、硬質ウレタンからなる第1構成部と、
前記硬質ウレタンより硬度が低い軟質ウレタンからなり、前記凹部に設けられ、前記被支持部によって変形させられる第2構成部と、
を備え、
前記凹部の底面である前記第1構成部の一部が、変形させられた前記第2構成部を介して前記被支持部を支持し且つ直線状の接続部位において互いに接続される左右一対の頭部支持面であり、
前記接続部位に直交する平面で切断された左右の前記頭部支持面の断面同士がなす角度である第1角度が37.2°~143°の範囲に設定され、
シート左右方向に見たときに、前記接続部位に対して直交する方向とシート前後方向がなす角度である第2角度が12.8°~68.7°の範囲に設定された車両用シート。
【請求項2】
前記第1角度が70.5°~124.5°の範囲に設定され、且つ、前記第2角度が31.1°~56.6°の範囲に設定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記頭部支持面が平面である請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、着座乗員の頭部を支持するヘッドレストと、を備える車両用シートが開示されている。このヘッドレストは、金属製のステーと、ステーの周囲に設けられた硬質発泡体と、硬質発泡体の前面に固定された軟質発泡体と、を備える。シートの着座乗員の頭部は軟質発泡体によって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された車両用シートは、乗員の乗り物酔いを効果的に抑制することに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の乗り物酔いを効果的に抑制できる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、前記着座乗員の背部を支持するシートバックと、前記着座乗員の頭部を支持するヘッドレストと、を備え、前記ヘッドレストが、前記着座乗員の前記頭部の一部であり後頭骨と対応する部位である被支持部が進入可能な凹部が前面に形成された、硬質ウレタンからなる第1構成部と、前記硬質ウレタンより硬度が低い軟質ウレタンからなり、前記凹部に設けられ、前記被支持部によって変形させられる第2構成部と、を備え、前記凹部の底面である前記第1構成部の一部が、変形させられた前記第2構成部を介して前記被支持部を支持し且つ直線状の接続部位において互いに接続される左右一対の頭部支持面であり、前記接続部位に直交する平面で切断された左右の前記頭部支持面の断面同士がなす角度である第1角度が37.2°~143°の範囲に設定され、シート左右方向に見たときに、前記接続部位に対して直交する方向とシート前後方向がなす角度である第2角度が12.8°~68.7°の範囲に設定された。
【0007】
第1の態様の車両用シートでは、着座乗員がシートに着座したときに、着座乗員の頭部の一部であり後頭骨と対応する部位である被支持部が第2構成部を変形させながら第1構成部に接近する。このとき被支持部が、変形させられた第2構成部を介して、第1構成部の左右の頭部支持面によって支持される。これにより、着座乗員の頭部の揺動が抑制され、当該着座乗員の乗り物酔いが抑制される。
【0008】
第1の態様の車両用シートでは、接続部位に直交する平面で切断された左右の頭部支持面の断面において、左右の頭部支持面がなす角度である第1角度が37.2°~143°の範囲に設定される。さらにシート左右方向に見たときに、接続部位に対して直交する方向とシート前後方向がなす角度である第2角度が12.8°~68.7°の範囲に設定される。これにより、第1角度及び第2角度が上記範囲外に設定されている構成に比べて、着座乗員の乗り物酔いがより効果的に抑制される。
【0009】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記第1角度が70.5°~124.5°の範囲に設定され、且つ、前記第2角度が31.1°~56.6°の範囲に設定されている。
【0010】
第2の態様の車両用シートでは、第1角度が70.5°~124.5°の範囲に設定され、且つ、第2角度が31.1°~56.6°の範囲に設定されている。これにより、第1角度及び第2角度が上記範囲外に設定されている構成に比べて、着座乗員の乗り物酔いがより効果的に抑制される。
【0011】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様の車両用シートにおいて、前記頭部支持面が平面である。
【0012】
第3の態様の車両用シートでは、様々な大きさの頭部(被支持部)を有する複数の着座乗員の乗り物酔いが効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用シートは、乗員の乗り物酔いを効果的に抑制できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】ヘッドレストと着座乗員の頭部を示す側面図である。
【
図9】車両用シート及び着座乗員を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート10(以下、シート10)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRはシート前方向を示し、矢印UPはシート上方向を示し、矢印LHはシート左右方向(シート幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向の左右、シート上下方向の上下を示す。
【0016】
図1に示されたシート10は、車両(図示省略)の車室の床面に設けられている。シート10は、床面にスライドレール装置(図示省略)を介して支持されたシートクッション11と、シートクッション11の後端部に下端部が接続されたシートバック15と、シートバック15の上端部に支持されたヘッドレスト20と、を備える。シートクッション11は、着座乗員P(
図6~
図8参照)の臀部を下方から支持する。シートバック15は、着座乗員Pの背部を後方から支持する。ヘッドレスト20は、着座乗員の頭部P1を後方から支持する。なお、シートバック15はシートクッション11に対して前後方向へリクライニング可能である。
【0017】
ヘッドレスト20は、ヘッドレストフレーム21、第1構成部25、第2構成部45及び後述するカバー部材(図示省略)を有する。
【0018】
図1に示されたように、ヘッドレスト20の内部にはヘッドレストフレーム21が設けられている。ヘッドレストフレーム21は、金属製のパイプによって構成されている。ヘッドレストフレーム21の正面形状は略U字形である。ヘッドレストフレーム21は、左右方向に延びる上端構成部22と、上端構成部22の左右両端部から下方に延びる左右一対の側部構成部23と、を備える。左右の側部構成部23の下端部がシートバック15の上端部に固定されている。なお、左右の側部構成部23の下端部がシートバック15の上端部によって、側部構成部23の延長方向にスライド可能に支持されてもよい。ヘッドレスト20の左右方向の中心を通り且つ上下方向に延びる中心線AXを定義した場合、正面視においてヘッドレスト20は中心線AXに関して左右対称である。なお、以下の説明では左右の側部構成部23が鉛直方向と平行であるものとする。即ち、シート上下方向が鉛直方向と一致しているものとする。
【0019】
ヘッドレスト20は、ヘッドレストフレーム21の周囲に位置し且つヘッドレストフレーム21に固定された第1構成部25を有する。第1構成部25は硬質ウレタン製の一体成形品である。この硬質ウレタンの硬度は、例えば20N(ニュートン)である。例えば、第1構成部25は金型(図示省略)を利用して製造される。
【0020】
第1構成部25の前面26には凹部27が形成されている。正面視において凹部27は中心線AXに関して左右対称である。凹部27の底面(内面)は、左右一対の側面30と、左右一対の上部構成面35と、左右一対の頭部支持面40と、を備える。左右の側面30は、左右方向に対して直交する平面である。但し、左右の側面30は曲面であってもよい。
図3に示されたように、各側面30の下縁部31は、側面視において前後方向及び上下方向に対して傾斜する。
【0021】
左右の上部構成面35は、凹部27の底面の上部を構成する。正面視において左右の上部構成面35は中心線AXに関して左右対称である。各上部構成面35の下縁部36は、正面視において左右方向及び上下方向に対して傾斜する。さらに
図4に示されたように、左右の上部構成面35は平面視において互いに傾斜する。
図4に示されたように、左右の上部構成面35の接続部位と第1構成部25の前面26との間の前後方向の距離(凹部27の最大深さ)はDP1である。距離DP1は50mm以上であるのが好ましい。
【0022】
左右の頭部支持面40は、凹部27の底面の下部を構成する。左右の頭部支持面40は平面である。
図1に示されたように、正面視において左右の頭部支持面40は中心線AXに関して左右対称である。さらに左右の頭部支持面40の各頭部支持面40に対して直交する方向から見たときの形状は略平行四辺形である。左側の頭部支持面40の右側縁部と、右側の頭部支持面40の左側縁部とは、直線状の接続部位41を介して互いに接続されている。左側の頭部支持面40の左側縁部及び右側の頭部支持面40の右側縁部は、左右の側面30の下縁部31にそれぞれ接続されている。左右の頭部支持面40の上縁部は、左右の上部構成面35の下縁部36にそれぞれ接続されている。
【0023】
図5に示されたように、
図2の5-5矢線に沿って左右の頭部支持面40を切断したときの左右の頭部支持面40の切断面同士は第1角度θ1で交差する。換言すると、接続部位41に直交する平面CS(
図3参照)で切断された左右の頭部支持面40同士がなす角度が第1角度θ1である。
【0024】
図3に示されたように、左右方向に沿ってヘッドレスト20を見たとき、接続部位41に対して直交する方向PDとシート前後方向(水平面HS)がなす角度が第2角度θ2である。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、ヘッドレスト20は第2構成部45を有する。第2構成部45の形状は、第1構成部25の凹部27の形状と実質的に同一である。第2構成部45は凹部27に嵌められている。従って、第1構成部25及び第2構成部45からなる一体物の全体形状は略直方体形状である。第2構成部45は軟質ウレタン製の一体成形品である。この軟質ウレタンの硬度は、上記硬質ウレタンの硬度より小さく、例えば4N(ニュートン)以下の硬度である。例えば、第2構成部45は金型(図示省略)を利用して製造される。
【0026】
図示は省略されているが、一体化された第1構成部25及び第2構成部45の外周面には、可撓性材料からなるカバー部材が装着される。このカバー部材によって、第1構成部25と第2構成部45の一体化状態が維持される。
【0027】
ここで着座乗員Pがシート10に着座すると、
図6~
図8に示されるように、着座乗員Pの頭部P1において後頭骨P2と対応する部位である被支持部PSが、カバー部材及び第2構成部45を変形させながら(後方に凹ませながら)第1構成部25の左右の頭部支持面40に接近する。さらにシート側面視において、左右の頭部支持面40が着座乗員Pの被支持部PSと左右方向に重なる。さらに左右の頭部支持面40が、着座乗員Pの頭部P1における乳様突起P3よりも後方側の部位のみを支持するように、左右の頭部支持面40の形状及び寸法等が設定されている。
【0028】
また被支持部PSが左右の頭部支持面40の間に配置され、且つ、変形したカバー部材及び第2構成部45を介して左右の頭部支持面40によって支持されたときに、被支持部PSの右側部位P4Rが、右側の頭部支持面40からカバー部材及び第2構成部45を介して受ける圧力が高くなり且つ被支持部PSの左側部位P4Lが、左側の頭部支持面40からカバー部材及び第2構成部45を介して受ける圧力が高くなるように、第1角度θ1及び第2角度θ2の角度範囲が設定されている。なお、右側部位P4R及び左側部位P4Lは、後頭骨P2の下端部の左右の両側部分とそれぞれ対応する部位である。なお、後頭骨P2の下端部とは、当該後頭骨P2において上項線P5よりも下方側の部分のことである。また、着座乗員Pの頭部P1が正面を向いている状態では、右側部位P4Rと左側部位P4Lとは同じ高さに位置している。また、右側部位P4Rと左側部位P4Lとの左右方向への間隔Wは、着座乗員Pの頭部の大きさによるが、概ね約90mm~120mmを想定しておけばよい。この間隔Wを想定して、左右一対の頭部支持面40の形状及び寸法を設定しておけば、成人の男性及び成人の女性のほぼ全ての体格の着座乗員Pに対応させることが可能となる。
【0029】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
以上説明した本実施形態のシート10では、着座乗員Pの臀部、背部及び頭部P1が、シートクッション11、シートバック15及びヘッドレスト20によって支持される。また、着座乗員Pの頭部P1の被支持部PSが、カバー部材及び第2構成部45を変形させながら第1構成部25に接近する。このとき被支持部PSが、変形させられたカバー部材及び第2構成部45を介して、第1構成部25の左右の頭部支持面40によって支持される。より詳細には、被支持部PSが、左右の頭部支持面40によってシート左右方向から支持されると共にシート後方側から前方向かつシート斜め上方向に向けて支持される。これにより、着座乗員Pの頭部P1の揺動が抑制され、着座乗員P1の乗り物酔いが抑制される。
【0031】
さらに頭部支持面40が形成された部位が可動式ではないので、第1構成部25(ヘッドレスト20)を安価に製造できる。
【0032】
さらに頭部支持面40が形成された部位が第2構成部45によって覆われるので、ヘッドレスト20(カバー部材)の前面に凹凸ができにくい。換言すると、ヘッドレスト20の意匠性が損なわれ難い。
【0033】
さらに左右の上部構成面35の接続部位と第1構成部25の前面26との間の前後方向の距離DP1が50mm以上に設定されることにより、被支持部PSが変形させられたカバー部材及び第2構成部45を介して左右の頭部支持面40によって支持される前に、頭部P1が変形させられたカバー部材及び第2構成部45を介して左右の上部構成面35によって支持され難い。即ち、距離DP1が50mm以上に設定されると、被支持部PSと左右の頭部支持面40との距離が適正距離より長くなり難く、被支持部PSが左右の頭部支持面40によって支持されなくなるおそれが小さくなる。
【0034】
ところで、近年、車両の自動運転化に伴い、車両の自動運転時における乗り物酔いが深刻化するのではないか、という懸念が高まっている。この乗り物酔いは、乗員の頭部の揺動時における前庭器官と視覚との間の感覚矛盾により発生することが知られている。これに加えて、この乗り物酔いは、乗員の前庭器官と視覚との間の感覚のズレ量を少なくすることで低減できることが知られている。そこで、乗り物酔いの原因である頭部の揺動を抑制するために、左右の頭部支持面40の第1角度θ1及び第2角度θ2を適切な大きさに設定することが重要である。そこで本出願人は、着座乗員Pが不快感を伴うことなくシート10を使用可能になる第1角度θ1及び第2角度θ2の範囲を得るために、以下の試験を行った。
【0035】
この試験ではシート10を上下方向に対して左側へ10°傾いた位置と右側へ10°傾いた位置との間で繰り返し左右に加振する。この加振の周波数は0.1Hzである。また、この試験は、
図9に示されたアップライト姿勢において行った。なお、アップライト姿勢とは、着座乗員Pが車両の前方を視認できる乗車姿勢のことである。一例として、本試験では、シートバック15のリクライニング角度θsを23.2°に設定した。
図9に示された一点鎖線L1は、リクライニング角度θsの基準線である。この一点鎖線L1は、シートバック15を構成するバックレスト表面と対応している。ここでバックレスト表面とは、シートバック15において着座乗員Pの腰部をシート後方側から支持する面のシート幅方向の中央部のことである。リクライニング角度θsは、乗員がシート10に着座していない状態で測定される。
【0036】
この試験を行った被験者は10名であり、10名の体格を表すBMIは18.7~29.4であった。なお、BMI(Body Mass Index)とは、体重と身長から算出される体格指数のことであり、体重をM(kg)、身長をL(m)とした場合に、M/(L2)で計算される値のことである。
【0037】
そして、この試験では、被験者10名がそれぞれ以下の(1)、(2)、(3)と感じた際の第1角度θ1及び第2角度θ2の範囲を測定した。
(1)左右一対の頭部支持面40による頭部P1の支持は、最適である。
(2)左右一対の頭部支持面40による頭部P1の支持は、適当であると共に不快ではない。
(3)左右一対の頭部支持面40による頭部P1の支持は、ほとんど得られない
【0038】
図10には、被験者10人が、それぞれ上記の(1)~(3)と感じた際の第1角度θ1及び第2角度θ2がプロットされたグラフが示されている、そして、被験者10人が上記の(1)と感じた際の第1角度θ1及び第2角度θ2の範囲を「最適範囲」に決定した。また、被験者10人が上記の(2)と感じた際の第1角度θ1及び第2角度θ2の範囲を「許容範囲」に決定した。なお、
図10に記載されたグラフにおいては、最適範囲を線L3で囲っており、許容範囲を線L4で囲っている。ここで、四角形状のプロットは、各被験者が上限角度(これ以上第1及び第2角度が広がると支持されない)と評価した位置である。また、丸形状のプロットは、各被験者が最適な角度と評価した位置である。さらに、三角印のプロットは、下限角度(これ以上第1及び第2角度が閉じると不快に感じる)である。許容範囲の線L4で囲まれた範囲の外側は、被験者10人が上記の(3)と感じる範囲である。ここで、最適範囲及び許容範囲は、上記試験で測定された第1角度θ1及び第2角度θ2の平均値に対して-3σから+3σの範囲としている。なお、σは上記試験で測定された第1角度θ1及び第2角度θ2から得られた標準偏差である。
【0039】
以上の試験の結果をまとめると、第1角度θ1及び第2角度θ2の最適範囲及び許容範囲は、以下の表1の通りになる。
【表1】
【0040】
以上より、第1角度θ1を37.2°~143°の範囲に設定し、且つ、第2角度θ2を12.8°~68.7°の範囲に設定することで、左右の頭部支持面40によって頭部P1を支持された着座乗員Pが不快感を覚え難くなる。これにより、着座乗員Pの乗り物酔いを効果的に抑制できる。
【0041】
また、第1角度θ1を70.5°~124.5°の範囲に設定し、且つ、第2角度θ2を31.1°~56.6°の範囲に設定することで、左右一対の頭部支持面40によって頭部P1を支持された着座乗員Pが不快感をより覚え難くなる。これにより、着座乗員Pの乗り物酔いをより一層効果的に抑制できる。
【0042】
さらに第1構成部25の左右の頭部支持面40が共に平面である。そのため左右の頭部支持面40は様々な大きさ(形状)の頭部(被支持部)を支持可能であり、且つ、頭部を支持された着座乗員に不快感を与え難い。そのためシート10は、様々な大きさの頭部(被支持部)を有する複数の着座乗員の乗り物酔いを効果的に抑制できる。なお、仮に頭部支持面40が曲面によって形成された場合は、この頭部支持面40が特定の大きさ(形状)の頭部(被支持部)を支持したときは、頭部を支持された着座乗員が不快感を覚え難くなることがある。しかし頭部支持面40が曲面によって形成された場合は、頭部支持面40が別の大きさ(形状)の頭部(被支持部)を支持したときに、頭部を支持された着座乗員が不快感を覚えるおそれが、頭部支持面40が平面の場合より大きくなる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0044】
頭部支持面40が平面でなくてもよい。
【0045】
平面視において左右の上部構成面35が一直線状に並ぶように第1構成部25が構成されてもよい。この場合の上部構成面35と第1構成部25の前面26との間の前後方向の距離(凹部27の深さ)は50mm以上であるのが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用シート(シート)
11 シートクッション
15 シートバック
20 ヘッドレスト
25 第1構成部
26 前面
27 凹部
40 頭部支持面
41 接続部位
45 第2構成部
θ1 第1角度
θ2 第2角度
P 着座乗員
PS 被支持部