(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142735
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20230928BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
G01N17/00
G01M17/007 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049786
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】水野 勝則
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA05
2G050EA01
2G050EC10
(57)【要約】
【課題】低温室を備える建物内に設置されたエアコンプレッサの圧縮効率を上げることができる空気供給システムを提供する。
【解決手段】空気を送り出す送風機と、低温室を備える建物内に設置されたエアコンプレッサと、前記空気を前記エアコンプレッサへ導く配管と、を備え、前記配管は、前記低温室の床下に通されている、空気供給システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送り出す送風機と、
低温室を備える建物内に設置されたエアコンプレッサと、
前記空気を前記エアコンプレッサへ導く配管と、を備え、
前記配管は、前記低温室の床下に通されている、
空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサに空気を供給する空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車工場では、エンジン及び車両などについて、各種試験を行う建物(以下、試験棟という)がある。この試験棟は、エンジン及び車両などの性能試験を行う試験室、低温環境下で試験を行う低温室などを備える。低温室の床下には、凍上防止管が設けられている。凍上防止管には、通常、外気が導入される。凍上防止管に導入された外気と、低温室の床から土壌に伝わる冷熱との間で熱交換が行われることよって、土壌に冷熱が伝わり難くなり、凍上が抑制される。凍上とは、土壌が凍結することによって土壌が隆起する現象である。また、この熱交換によって、凍上防止管を通った外気は冷却される。一般に、この冷却された外気は、凍上防止管から屋外にそのまま放出されている。
【0003】
特許文献1には、荷捌き室が付設された冷蔵倉庫において、凍上防止管を通った外気を荷捌き室に導入する管路及び送風機を設けることで、荷捌き室を低温に保持する共に、荷捌き室の陽圧化を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記試験棟には、エアコンプレッサが設置されたコンプレッサ室を備える。上記試験棟は、外気をエアコンプレッサに供給し、エアコンプレッサで圧縮空気を試験室などに送っている。圧縮空気は、試験室などに備えられたエア駆動機器の動力源に使用される。
【0006】
上記試験棟において、エアコンプレッサの圧縮効率を上げることが望まれる。圧縮効率は、エアコンプレッサに供給される空気の温度によって変わる。空気の温度が高いほど、空気の密度が小さい、即ち空気の単位重量あたりの体積が大きいため、圧縮効率が下がる。夏場などの気温が高いときは、圧縮効率が悪くなるため、エアコンプレッサの電力消費量が増える。
【0007】
本発明の目的の一つは、低温室を備える建物内に設置されたエアコンプレッサの圧縮効率を上げることができる空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る空気供給システムは、
空気を送り出す送風機と、
低温室を備える建物内に設置されたエアコンプレッサと、
前記空気を前記エアコンプレッサへ導く配管と、を備え、
前記配管は、前記低温室の床下に通されている。
【発明の効果】
【0009】
上記空気供給システムは、送風機から配管に送られた空気を低温室の床下に伝わる冷熱によって冷却して、温度の低い空気をエアコンプレッサへ供給することができる。したがって、エアコンプレッサの圧縮効率が向上し、エアコンプレッサの電力消費量が削減される。また、配管を通る空気と上記冷熱とが熱交換されることによって、土壌に冷熱が伝わり難くなり、凍上が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気供給システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る空気供給システムの具体例を、図面を参照して説明する。
図1に示す空気供給システム1は、建物100内に設置されたエアコンプレッサ10に空気を供給する。空気供給システム1は、エアコンプレッサ10と、送風機20と、配管30とを備える。空気供給システム1の特徴の一つは、建物100に備える低温室103の床下に配管30が通されている点にある。
以下、空気供給システム1の構成を詳しく説明する。
【0012】
(建物)
本実施形態における建物100は、エンジン及び車両などの各種試験を行う試験棟である。建物100は、コンプレッサ室101と、試験室102と、低温室103とを備える。コンプレッサ室101は、エアコンプレッサ10が設置された部屋である。試験室102は、エンジン及び車両などの性能試験を行う部屋である。試験室102は、例えば、動力計室、シャシダイナモ室、作業室などである。動力計室は、動力計を用いてエンジン単体の出力、トルクを測定する部屋である。シャシダイナモ室は、シャシダイナモメータを用いて自動車の動力性能、燃費性能を測定したり、排気ガスを分析したりする部屋である。作業室は、エンジンを組み立てたり分解したりする部屋である。低温室103は、低温環境下で試験を行う部屋である。低温室103の温度は、例えば-30℃程度に設定されている。建物100は、少なくとも低温室103を備えていればよく、上記試験棟でなくてもよい。
【0013】
試験室102及び低温室103には、試験で使用するエア駆動機器200が設置されている。エア駆動機器200は、圧縮空気を動力源とする機器である。エア駆動機器200は、エア駆動工具、エア駆動バルブなどである。エア駆動機器200は、圧縮空気を動力源としているので、スパークが発生しない。試験室102及び低温室103では、ガソリンなどの可燃物が用いられるため、エア駆動機器200が使用される。
【0014】
建物100は、コンプレッサ室101から試験室102及び低温室103のそれぞれに圧縮空気を送る配管40が設けられている。試験室102及び低温室103に送られた圧縮空気は、各室に備えられたエア駆動機器200の動力源に使用される。
【0015】
(エアコンプレッサ)
エアコンプレッサ10は、後述する配管30から供給された空気を圧縮する。エアコンプレッサ10で圧縮された空気は、配管40を通して試験室102及び低温室103の各室に送られる。エアコンプレッサ10は、1台でも複数でもよい。本実施形態では、複数のエアコンプレッサ10がコンプレッサ室101に設置されている。エアコンプレッサ10は集中管理されている。
【0016】
(送風機)
送風機20は、外気を吸気して配管30に空気を送り出す。送風機20から送り出された空気は、配管30を通ってエアコンプレッサ10に供給される。
【0017】
(配管)
配管30は、送風機20から送られた空気をエアコンプレッサ10へ導く。配管30は、送風機20から空気が送り込まれる導入口31と、送り込まれた空気がエアコンプレッサ10へ送り出される排出口32を有する。配管30は、低温室103の床下に通された後、コンプレッサ室101まで延びている。配管30の排出口32は、エアコンプレッサ10に接続されている。導入口31から送り込まれた空気は、配管30を通って、排出口32からエアコンプレッサ10へ供給される。本実施形態では、配管30は、低温室103の床下の地下に通されている。
【0018】
配管30は、低温室103の床下において、低温室103の冷熱によって配管30内の空気を冷却できる位置に配置されている。配管30は、例えば、送風機20から配管30に送られた空気の温度が25℃以上のとき、配管30内の空気の温度を10℃以上、更に15℃以上下げられる位置に配置されているとよい。配管30を通過した空気の温度は、送風機20から配管30に送られた空気の温度及び湿度などの条件によって異なるが、例えば5℃以上10℃以下程度である。
【0019】
配管30の材質は、塩化ビニルなどの樹脂でもよいし、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属でもよい。配管30が銅又はアルミニウムなどの高熱伝導性を有する金属で構成されていると、配管30内の空気への伝熱性を向上させることができる。また、配管30の外周に複数のフィン(図示せず)が設けられていてもよい。配管30が複数のフィンを備えることで、配管30と配管30の周囲の部材との接触面積が増え、配管30の伝熱性を向上させることができる。
【0020】
本実施形態では、配管30は、低温室103の床下の地面に埋められている。地面の上には、図示しない土間コンクリートが配置され、土間コンクリートの上に低温室103の床が設けられている。低温室103の床と土間コンクリートとの間には、図示しない断熱材が配置されている。配管30の周囲に砕石などを充填してもよい。
【0021】
本実施形態の空気供給システム1の作用効果について説明する。送風機20から配管30に送られた空気は、低温室103の床下に伝わる冷熱によって冷却された後、エアコンプレッサ10へ供給される。夏場などの気温が高いときでも、エアコンプレッサ10に供給される空気を10℃程度まで冷却することが可能である。冷却された空気がエアコンプレッサ10に供給されることで、エアコンプレッサ10の圧縮効率が上がる。よって、エアコンプレッサ10の電力消費量が削減される。また、配管30を通る空気と上記冷熱とが熱交換されることによって、土壌300に冷熱が伝わり難くなり、凍上が抑制される。つまり、配管30は、従来の凍上防止管の機能も兼ねている。空気供給システム1によれば、低温室103の床下に伝わる冷熱エネルギーを有効活用することで、省エネを実現することができる。
【0022】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施形態の空気供給システム1は、自動車工場の試験棟以外の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 空気供給システム
10 エアコンプレッサ
20 送風機
30 配管、31 導入口、32 排出口
40 配管
100 建物
101 コンプレッサ室、102 試験室、103 低温室
200 エア駆動機器
300 土壌