(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142743
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049797
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】長野 雅実
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA08
2G001HA08
2G001HA13
2G001HA14
2G001JA08
2G001PA12
(57)【要約】
【課題】撮影済みのCT画像からユーザーが所望のオフセット値を設定し、画像間の繋ぎ目の目立たないCT画像を生成することができるX線CT装置を提供する。
【解決手段】回転・昇降機構7は、被検体Wを載置する回転テーブル5を垂直方向に昇降させる。再構成部15は、回転テーブル5の各昇降位置における被検体WのCT画像をそれぞれ再構成する。ズレ量計算部16は、複数のX線透視画像及び/又は複数のCT画像のズレ量を計算する。オフセット値登録部17は、ズレ量計算部16で得られたズレ量に基づいて、FCDオフセット値を算出する。算出したオフセット値を使って、収集済みの透過データからCT画像の再構成をやり直すことで、繋ぎ目の目立たないCT画像を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器と、前記X線発生器から放射されたX線ビームを受光する検出器と、前記X線発生器と前記検出器との間に配置され、被検体を載置する回転テーブルと、
前記回転テーブルを、その軸を中心として回転させると共に、所定の移動量で垂直方向に昇降させる回転・昇降機構と、
前記回転テーブルの各昇降位置における前記検出器からの撮像データに基づいて、各昇降位置における被検体のCT画像をそれぞれ再構成する再構成部と、
前記検出器の検出データに基づいて得られた前記各昇降位置における前記被検体の複数のX線透視画像及び/又は前記複数のCT画像を表示する表示部と、
前記検出器の検出データに基づいて得られた前記複数のX線透視画像及び/又は前記複数のCT画像のズレ量計算部と、
前記ズレ量計算部で得られたズレ量に基づいて、FCDオフセット値を演算するオフセット値登録部と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記ズレ量計算部は、前記複数の画像中の共通する特徴部分を数式化して、その数式に基づいてズレ量を計算する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記X線CT装置は、ユーザーからの指示により、前記表示部に表示された前記複数の画像を、前記表示部上で相対的に移動させる入力部を備え、
前記ズレ量計算部は、前記入力部に入力されたユーザーからの入力値に基づいて、ズレ量を計算する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記X線CT装置は、前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目に欠落部分が存在する場合には、前記オフセット値を変更して、収集済みの透視データから再構成を行いなおすことで、前記欠落部分を埋めた画像を生成し、
前記複数の画像の繋ぎ目にオーバーラップ部分が存在する場合には、オーバーラップする部分を取り除いた画像を生成する請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線CT装置は、前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目部分にオーバーラップ部分が存在するように、あらかじめFCDオフセット値を大き目の値にしておくものであり、
前記ズレ量計算部は、前記複数の画像における共通に撮影されている領域を検出し、この共通した領域の位置関係に基づいてズレ量を計算する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記X線CT装置は、
前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部と、
ユーザーからの指示により、前記表示部に表示された前記複数の画像を、前記表示部上で相対的に移動させる入力部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目部分にオーバーラップ部分が存在するように、あらかじめFCDオフセット値を大き目の値にしておくものであり、
前記ズレ量計算部は、前記入力部に入力されたユーザーからの入力値に基づいて、ズレ量を計算することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マルチコーン型のX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコーン型(マルチスキャン型とも呼ばれる)のX線CT装置は、CTスキャンと試料テーブルの昇降移動を繰り返しながら複数のCT画像を撮影して、これらのCT画像を繋ぎ合わせることで、長尺の被検体をCTスキャンする。
【0003】
この種のX線CT装置においては、CT画像の繋ぎ目が目立たないことが重要である。マルチコーンの繋ぎ目が目立たない条件は、CT画像の1画素サイズが正確なことである。つまり、幾何倍率(FCD/FDD)が正確なことである。FCDは、撮影距離(焦点-回転軸間距離)、FDDは、検出距離(焦点-検出器間距離)である。X線CT装置における機構部位置としてのFCD,FDDは真の値ではなく、FCDの場合は焦点位置、FDDの場合はX線入力面を考慮に入れた値が真のFCD,FDDとなる。機構部位置と真の値との差を、それぞれFCDオフセット、FDDオフセットと呼ぶ。
【0004】
X線検出器には製造時の個体差や、温度などの外部環境による位置の変動があるため、オフセット値にカタログスペックを適用することはできない。そのため、寸法が既知のサンプル(以下、寸法校正ファントム)のCT画像からFCD,FDDオフセット値を求める。これを寸法校正と呼ぶ。寸法校正により、殆ど繋ぎ目の目立たない画像を得ることができる。しかし、寸法校正ファントムのCT画像の画質、また、外部環境の変化により、オフセット値は変動する。上記の理由により、寸法校正を行っても、繋ぎ目が消えるという保証がされているわけではない。寸法校正を行っても、繋ぎ目が目立つ場合は、再寸法校正後、スキャンをしなおす必要がある。これは非常に手間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-125172号公報
【特許文献2】特願2004-260796号公報
【特許文献3】特開2006-003122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の実施形態の目的は、撮影済みのCT画像からユーザーが所望のオフセット値を設定し、画像間の繋ぎ目の目立たないCT画像を生成することができるX線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態のX線CT装置は、次のような構成を有する。
(1)X線発生器と、前記X線発生器から放射されたX線ビームを受光する検出器と、前記X線発生器と前記検出器との間に配置され、被検体を載置する回転テーブル。
(2)前記回転テーブルを、その軸を中心として回転させると共に、所定の移動量で垂直方向に昇降させる回転・昇降機構。
(3)前記回転テーブルの各昇降位置における前記検出器からの撮像データに基づいて、各昇降位置における被検体のCT画像をそれぞれ再構成する再構成部。
(4)前記検出器の検出データに基づいて得られた前記各昇降位置における前記被検体の複数のX線透視画像及び/又は前記複数のCT画像を表示する表示部。
(4)前記検出器の検出データに基づいて得られた前記複数のX線透視画像及び/又は前記複数のCT画像のズレ量計算部。
(5)前記ズレ量計算部で得られたズレ量に基づいて、FCDオフセット値を演算するオフセット値登録部。
【0008】
本発明の実施形態において、次のような構成を有することができる。
(1)前記ズレ量計算部は、前記複数の画像中の共通する特徴部分を数式化して、ズレ量を計算する。
(2)前記X線CT装置は、ユーザーからの指示により、前記表示部に表示された前記複数の画像を、前記表示部上で相対的に移動させる入力部を備え、
前記ズレ量計算部は、前記入力部に入力されたユーザーからの入力値に基づいて、ズレ量を計算する。
(3)前記X線CT装置は、前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目に欠落部分が存在する場合には、前記オフセット値を変更して、収集済みの透視データから再構成を行いなおすことで、前記欠落部分を埋めた画像を生成し、
前記複数の画像の繋ぎ目にオーバーラップ部分が存在する場合には、オーバーラップする部分を取り除いた画像を生成する。
(4)前記X線CT装置は、前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目部分にオーバーラップ部分が存在するように、あらかじめFCDオフセット値を大き目の値にしておくものであり、
前記ズレ量計算部は、前記複数の画像における共通に撮影されている領域を検出し、この共通した領域の位置関係に基づいてズレ量を計算する。
(5)前記X線CT装置は、
前記回転・昇降機構の昇降量、及び前記X線発生器と前記検出器による被検体の透視を制御するスキャン制御部と、
ユーザーからの指示により、前記表示部に表示された前記複数の画像を、前記表示部上で相対的に移動させる入力部を備え、
前記スキャン制御部は、前記複数の画像の繋ぎ目部分にオーバーラップ部分が存在するように、あらかじめFCDオフセット値を大き目の値にしておくものであり、
前記ズレ量計算部は、前記入力部に入力されたユーザーからの入力値に基づいて、ズレ量を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1実施形態のX線CT装置の動作を示すフローチャート。
【
図3】理想的な繋ぎ目を持つCT画像と、繋ぎ目にズレがあるCT画像の一例を示す図。
【
図4】繋ぎ目にズレがあるCT画像から、ズレ量を検出する方法の一例を示す図。
【
図5】計算されたズレ量Xmmから、新たなオフセット値を求める手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1のブロック図に示すように、第1実施形態のX線CT装置は、X線発生器であるX線管1と、X線管1の焦点Fから放射されたX線ビーム2を受光する検出器3とが、被検体Wを挟んで対向して配置される。X線ビーム2は、X線光軸Lを中心とする角錐状のビームである。X線ビーム2の出力を制御するために、X線管1はX線制御部1aが設けられる。このX線制御部1aは、後述するデータ処理部10からの指令に基づく管電流値と、予め被検体Wに応じて設定された管電圧値に基づき、X線管1の陽極電力を制御する。検出器3は、被検体Wを透過したX線ビーム2を2次元の空間分解能をもって検出し、検出器3の出力側に接続されたデータ処理部10に対して透過画像データとして出力する。
【0011】
X線管1及び検出器3は対向してシフト機構4より支持されている。被検体Wは、回転テーブル5上にXY駆動機構6を介して載置される。回転テーブル5は、その下部に配置された回転・昇降機構7により回転軸8を中心として回転する。回転テーブル5は、回転・昇降機構7により垂直方向(Z方向)に昇降する。被検体Wは回転テーブル5上でXY駆動機構6によって水平な2方向(XY方向)に移動される。
【0012】
X線管1、検出器3、シフト機構4、XY駆動機構6及び回転・昇降機構7は、表示部11及び入力部12を備えた機構制御部9に接続される。ユーザーにより入力部12から機構制御部9に入力された指令に基づき、回転テーブル5は、被検体Wと共にシフト機構4によりX線管1と検出器3の間をX線光軸Lに沿って移動され、撮影距離(焦点-回転軸間距離)FCDが変更される。検出器3は、シフト機構4によりX線光軸Lに沿って移動され、検出距離(焦点-検出器間距離)FDDが変更される。これにより撮影倍率FDD/FCDが変更される。
【0013】
機構制御部9は、マルチコーンによるX線撮影を行い、上下方向(Z方向)に連続した複数枚のCT画像を生成するために、回転・昇降機構7の昇降量を制御して、被検体WをZ方向に移動させる。すなわち、機構制御部9は、1回の撮影が終わるごとに、所定量の昇降幅で被検体WをZ方向(上方又は下方)に移動させることを繰り返すことにより、マルチコーンによるX線撮影を可能とする。
【0014】
機構制御部9及びデータ処理部10は、CPU、メモリ、ハードディスク、キーボードやマウスなどの入力部12と、液晶ディスプレイなどの表示部11を備えたコンピュータの一部として構成される。表示部11には、入力部12の入力インターフェース、検出器3からの透過画像データに基づいて生成された複数のCT画像、例えば、
図3に示すような第1回目のCT画像Aと第2回目のCT画像Bが表示される。入力部12としては、キーボード、スライドスイッチ、回転ボリュームスイッチ、タッチパネルなどが使用できるが、本実施形態では、液晶ディスプレイに表示された画像をマウスなどのポインティングデバイスによって操作する入力インターフェースを使用する。
【0015】
本実施形態では、一般的なX線CT装置の表示部11が有する機能に加えて、入力部12の入力インターフェースを用いてズレ量の検出を行うための、ズレ量調整表示部11aが設けられている。また、入力部12の入力インターフェースとしても、ズレ量調整表示部11aに表示されている画像(例えば、1回目のスキャンで得られたCT画像Aと、2回目のスキャンのCT画像B)を、ディスプレイ上で適宜移動することのできるマウスやトラックボール、更にはそれらによって選択、操作されるアイコンやカーソルなどの表示が設けられる。すなわち、入力部12は、ユーザーからの指示により、表示部11に表示された複数の画像を、表示部11上で相対的に移動させる。
【0016】
[1-2.データ処理部10の構成]
データ処理部10は、スキャン制御部13、再構成部15、ズレ量計算部16及びオフセット値登録部17を備える。
【0017】
スキャン制御部13は、回転・昇降機構7の昇降量、及びX線管1と検出器3による被検体Wのスキャン動作を制御する。ユーザーがスキャンを開始させると、スキャン制御部13は、回転テーブル5を所定の速度で回転させ、1回転の間に透過像が収集されスキャンが完了する。
【0018】
スキャン制御部13は、複数の画像の繋ぎ目に欠落部分が存在する場合には、FCDオフセット値を変更し、収集済みの透視データからCT画像再構成をやりなすことで、欠落部分を埋めたズレの無い画像を生成する。一方、複数の画像の繋ぎ目にオーバーラップ部分が存在する場合には、前記と同様にFCDオフセット値を変更し、オーバーラップする部分を取り除いた画像を生成する。
【0019】
再構成部15は、スキャンにより360°方向で得られたビュー数分の透過像に基づいて、X線ビーム2に包含されるCT撮影領域を再構成するものである。再構成部15は回転軸18に直交し、回転軸18方向に等間隔で連続的にならんだ複数の断面像を再構成し、この複数の断面像により3次元データを形成する。スキャンで得られた3次元データはMPR(Multi-planer Reconstruction)表示等で表示部11に表示され得る。
【0020】
ズレ量計算部16は、検出器3の検出データに基づいて得られた複数のX線透視画像及び/又は再構成部15によって得られた複数のCT画像のズレ量を計算する。具体的には、ズレ量計算部16は、複数の画像中の共通する特徴部分を数式化して、この数式の値に従ってズレ量を計算する。また、ズレ量計算部16は、入力部12に入力されたユーザーからの入力値に基づいても、ズレ量を計算する。
【0021】
オフセット値登録部17は、ズレ量計算部16で得られたズレ量に基づいて、FCDオフセット値を演算する。
【0022】
[1-3.実施形態の作用]
第1実施形態の概略的な作用を、
図2のフローチャートを参照して説明する。
(1)1回目のスキャン(ステップS1)
マルチコーンによる1回目のスキャンを行う場合、被検体Wを載置した回転テーブル5は、回転・昇降機構7によって、Z方向の最も低い位置に移動している。その状態で、回転・昇降機構7と検出器3はスキャン制御部13により制御され、断層像撮影が開始される。すると、回転テーブル5は回転・昇降機構7によって回転し、予め設定された回転角度ごとに検出器3は被検査物WのX線透過像をデータ処理部10へ転送する。断層像を再構成するために必要な複数の投影方向からのX線透過像が全て揃い、断層像撮影が終了すると、再構成部15は再構成されたCT画像を表示部11に表示する。再構成部15は、ユーザーが設定した領域を再構成し、X線透過像は全領域保存することで、オフセット値更新後に、保存済みの透過像からCT画像を再構成しなおすことができる。
【0023】
(2)2回目のスキャン(ステップS2)
1回目のスキャンが終了した後は、被検体Wを載置したままの状態で、被検体Wの次の撮影部分がX線ビーム2の照射範囲に入るように、回転・昇降機構7によって回転テーブル5をZ方向に移動させる。その状態で、1回目のスキャンと同様に、被検体Wのスキャン並びにCT画像の再構成を行うと、2回目のスキャンのCT画像が表示部11に表示される。
【0024】
(3)画像の表示(ステップS3)
1回目のスキャンと2回目のスキャンで表示する画像は、3次元データ、XY平面、XZ平面、YZ平面のいずれの画像でも、又、それらの全てでも良い。予め、特定の平面の画像のみを表示するように設定しておいても良い。この状態では、表示形式も特に限定されず、ズレ量の検出に必要な平面の選択が可能であれば良い。
【0025】
(4)ズレ量を検出する平面の選択(ステップS4)
複数のCT画像が表示可能となった状態で、ズレ量を検出する平面(例えば、YZ平面)を選択し、選択された平面における第1回目のスキャンのCT画像Aと第2回目のスキャンのCT画像Bを、
図4の左側に示すように、表示部1に上下に並べて表示する。
【0026】
(5)ズレ量の自動計算(ステップS5)
ズレ量計算部16は、
図4の左側のCT画像A,B中の共通する特徴部分を数式化して、ズレ量を計算する。例えば、ユーザーが、表示部11に表示されているCT画像A,B中の共通する特徴部分、例えば、各図中に斜めの直線AL,BLで表示されている被検体Wの同じ部分の外形線を入力部から指定すると、ズレ量計算部16は、指定した2つの画像の直線AL,BLを表示部11の座標系における線分として数式化する。そして、2つの画像の直線AL,BLを表す数式から、両者の近似直線CL(
図4中点線)を求める。その後、
図4の右側に示すように、この近似直線CLと、1回目と2回目のYZ平面上画像における直線AL,BLとの二乗誤差が最小となるズレ量Xmmを計算で求める。
【0027】
(6)手動調整の有無の選択(ステップS6)
自動計算によるズレ量の計算が終了した後は、ユーザーは、手動によるズレ量の計算が必要か否かを入力部12から指示する。
【0028】
(7)手動調整が有る場合(ステップS7)
ユーザーは、入力部12からのマウスやキーボードを使用した手動操作により、表示部11上において1回目と2回目のCT画像A,Bを相対的に移動させ、目視により直線AL,BLが一直線上に並ぶようにする。直線AL,BLが一直線上に並んだ状態で、CT画像A,Bの間に表示される間隙が求めるズレ量Xmmとなるので、ズレ量計算部16は、その状態に至るまで入力部12に対して入力されたユーザーの操作量、すなわち入力値に基づいて、ズレ量Xmmを計算する。
【0029】
(8)新たなオフセット値を求める(ステップS8)
ステップS6において手動調整がなく自動でズレ量が計算された場合、又はステップS7において手動でズレ量が計算された後、オフセット値登録部17は、計算されたズレ量に基づいて新たなFCDオフセット値を求め、その値を保存する。
【0030】
オフセット値登録部17が、計算されたズレ量Xmmから、新たなオフセット値を求める手法について、
図5を参照して、説明する。すなわち、計算により求めたズレ量Xmmを2で割った値(以下、X’mm)が、1回の再構成におけるZ方向領域の不足分または過剰分となる。つまり、Z方向の再構成領域の設定値は正しいが、再構成に使用する検出器3の領域が異なっている。これは幾何倍率が正しくないために発生する。
【0031】
図5中、L1は理想的なオフセットが求まった場合、L2は求まっていない場合である。両方とも同じ再構成領域(スライスピッチ△Z×スライス枚数K)を再構成しようとしているが、再構成に使用する検出器3の領域が異なる。すなわち、理想的なズレの無いオフセット値が求まっている場合は
図5中W1で示す再構成領域となり、オフセット値にズレがある場合はW2で示す再構成領域となる。このように、FCDオフセット値が異なると、Z方向だけでなくXY方向(スキャンエリア)も異なる。
【0032】
本実施形態では、設定値と実際の再構成領域が一致するようにFCDオフセット値を変更する。このズレ量X’と現在のオフセット込みのFCD値を使って、現在のFCDオフセット値を補正する式を以下の式で求める。
・FCDオフセット補正値=(X’×FCD(オフセット込み))/(X’-設定値)
・新FCDオフセット値=現在のFCDオフセット値+FCDオフセット補正値
【0033】
(9)再々構成(ステップS9)
機構制御部9は、ステップS7で得られた新たなFCDオフセット値を使用し、収集済みの透視データから再構成を再度行うことで、寸法校正のやり直しや、再撮影を行わずとも、繋ぎ目の目立たない、ユーザーの所望するCT画像を生成することができる。
【0034】
[1-4.実施形態の効果]
(1)複数の画像中ズレ量に基づいて補正されたオフセット値を算出するので、寸法校正ファントムを使用したオフセット値の校正に比較して、簡単な操作で、しかも、精度の高いオフセット値を得ることができる。その結果、X線CT装置における幾何倍率(FCD/FDD)が正確になり、マルチコーンにおいて繋ぎ目が目立たないCT画像を得ることができる。
【0035】
(2)複数の画像中の共通する特徴部分を数式化して、ズレ量を計算することで、ズレ量の自動計算が可能になると共に、自動による入力部に入力されたユーザーからの入力値に基づいてもズレ量を計算するので、特徴部分の検出や数式化が難しい画像の場合であっても、ズレ量の検出が可能になる。
【0036】
(3)スキャン制御部13により、複数の画像の繋ぎ目に欠落部分が存在する場合には、FCDオフセット値を変更し、収集済みの透視データからCT画像の再構成をやりなすことで、欠落部分を埋めたズレの無い画像を生成し、複数の画像の繋ぎ目にオーバーラップ部分が存在する場合には、オーバーラップする部分を取り除いた画像を生成することで、繋ぎ目部分に欠落や重複のない綺麗なCT画像を得ることができる。この場合、オフセット値は、CT画像の再構成計算上でのみ使用するので、機構制御部9を利用して回転テーブル5などを移動させて、再スキャンをする必要がなく、再構成されたCT画像を迅速に得ることができる。
【0037】
(4)図示の実施形態は特徴部分として各画像に共通する直線形状を選択したので、近似直線CLと言うような簡単な数式化が可能であり、ズレ量の自動計算が容易に実施できる。
【0038】
[2.第2実施形態]
図5に示す第2実施形態は、マルチコーンがオーバーラップする寸法校正パラメータを意図的に設定するものである。オーバーラップする場合とは、第1実施形態の
図5で示したオフセット値が不正な再構成領域W2が、オフセット値が正しい再構成領域W1よりも図中右側(FCDが大きくなる)になる場合である。この時、真のFCDオフセットは不明なため、オーバーラップさせるためにFCDオフセットを何mmにすればいいかは不明である。そのため、ほぼ確実にオーバーラップさせるには、少なくとも寸法校正後のFCDオフセットにある程度の係数を乗算または加算する必要がある。
【0039】
この状態でマルチコーンを行い、CT画像を生成する。オーバーラップしているため、1,2回目の撮影領域のうち、共通で撮影されている領域がある。その領域について、XZ平面、YZ平面、XY平面で画像処理、または、GUIを使った目視により、オーバーラップ分Xmmを求める。これを2で割った値X’mmがズレ量となる。この時、算出したズレ量をGUI上で手動で微調整してもよい。
【0040】
このズレ量X’と現在のFCD(オフセット込みの値)を使って、現在のFCDオフセット値を補正する式を以下の式で求める。
・FCDオフセット補正値=(X’×FCD(オフセット込み))/(X’-設定値)
・新FCDオフセット値=現在のFCDオフセット値+FCDオフセット補正値
【0041】
第2実施形態では、この新FCDオフセットとFDDオフセットを使用し、収集済みの透視データから再構成を再度行うことで、寸法校正のやり直しや、再撮影を行わずとも、繋ぎ目の目立たないユーザーの所望するCT画像を生成することができる。特に、意図的にオーバーラップさせることにより、第1実施形態と比べ、画像処理によるズレ量の自動設定や目視による設定が容易となる。
【0042】
[3.他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0043】
(1)ズレ量計算部16においてズレ量を計算する場合、YZ平面の画像と連動して、XYとXZ平面の画像表示も行い、それに基づいて、ズレ量を計算することができる。すなわち、YZ方向に構造が一様な被検体Wの場合、YZ平面だけでズレ量を求めることが困難なため、XYとXZ平面の画像も見ながら特徴部分の抽出を行い、それに基づいてズレ量を求める。XYやXZ平面でズレ量を決定する場合も同様である。
【0044】
(2)選択する特徴部分は、図示のような直線部分に限らず、複数の画像中で共通に表示され、他の個所と混同されることのない形状であれば、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
W…被検体
1…X線管
1a…X線制御部
2…X線ビーム
3…検出器
4…シフト機構
5…回転テーブル
6…XY駆動機構
7…回転・昇降機構
8…回転軸
9…機構制御部
10…データ処理部
11…表示部
11a…ズレ量調整表示部
12…入力部
13…スキャン制御部
15…再構成部
16…ズレ量計算部
17…オフセット値登録部