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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142752
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ジャケット構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 49/00 20060101AFI20230928BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20230928BHJP
   F16L 59/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16K49/00 B
F16L59/065
F16L59/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049810
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】592050814
【氏名又は名称】株式会社中北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 直人
【テーマコード(参考)】
3H036
3H066
【Fターム(参考)】
3H036AA02
3H036AA07
3H036AB33
3H036AC01
3H036AD03
3H066AA01
3H066BA36
(57)【要約】
【課題】配管や流体機器のメンテナンス性を向上させると共に、移送する流体を効率良く保冷、保温又は加熱することが可能なジャケット構造を提供する。
【解決手段】ジャケット構造1は、配管2に配される弁本体11に一端側又は中間部が接続され、他端側が開放された筒部20と、少なくとも配管2の外側を覆うジャケット部30と、筒部20の他端側に着脱可能に設けられ、当該他端側を封止する蓋体40と、を有している。ジャケット部30は、筒部20の外側の一部又は全部を覆う筒部側被覆部32を有し、蓋体40は、裏面側から筒部20の内側に向けて突出する突出部42を有し、突出部42は、筒部20の内部に嵌め込み可能であると共に、突出部42の内部に中空の隔室43を有しており、隔室43は、内部が減圧可能である。また、隔室43は、内部に熱媒体を導入することも可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管、又は前記配管に配される流体機器に一端側又は中間部が接続され、他端側が開放された筒部と、
少なくとも前記配管の外側を覆うジャケット部と、
前記筒部の前記他端側に着脱可能に設けられ、当該他端側を封止する蓋体と、を有し、
前記ジャケット部は、前記筒部の外側の一部又は全部を覆う筒部側被覆部を有し、
前記蓋体は、裏面側から前記筒部の内側に向けて突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、当該突出部の内部に中空の隔室を有しており、
前記隔室は、内部が減圧可能であること、を特徴とするジャケット構造。
【請求項2】
配管、又は前記配管に配される流体機器に一端側又は中間部が接続され、他端側が開放された筒部と、
少なくとも前記配管の外側を覆うジャケット部と、
前記筒部の前記他端側に着脱可能に設けられ、当該他端側を封止する蓋体と、を有し、
前記ジャケット部は、前記筒部の外側の一部又は全部を覆う筒部側被覆部を有し、
前記蓋体は、裏面側から前記筒部の内側に向けて突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、内部に中空の隔室を有しており、前記隔室に対して熱媒体を導入可能であること、を特徴とするジャケット構造。
【請求項3】
前記隔室は、少なくとも一部が、前記筒部側被覆部と重なるように形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のジャケット構造。
【請求項4】
前記隔室の内壁の一部または全面が低輻射性の断熱シート、もしくは低輻射性の断熱シートとスペーサー材とからなる多層断熱材の少なくともいずれか1つで被覆されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のジャケット構造。
【請求項5】
前記筒部の前記一端側における内壁と前記突出部の外壁との間にシール部が形成されていること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジャケット構造。
【請求項6】
前記シール部は、配管側の圧力が筒部側の圧力より高まったときにはシール性が高まるものであり、前記筒部側の圧力が前記配管側の圧力より高まったときには、シール性が減じられるものであること、を特徴とする請求項5に記載のジャケット構造。
【請求項7】
前記流体機器は、バルブ、流量計、及びストレーナの一又は複数の組み合わせであること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジャケット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管やバルブ(弁)等のジャケット構造に関する。さらに詳しくは、低温や高温の流体を移送する配管やバルブ等に適したジャケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の流体を移送するために各種のバルブが利用されている。前記バルブは、点検や清掃、あるいは、動作不具合等の発生の際に、メンテナンスする必要がある。前記メンテナンスの際、バルブを接続されている配管等から取り外す必要がある。そのため、メンテナンス性に劣る問題があった。
【0003】
そこで、メンテナンス用の開口部を備え、メンテナンス性を向上させるスイング式逆止弁(以下、バルブと称する)が知られている(例えば、特許文献1)。前記特許文献1に記載のバルブは、メンテナンス用の開口部が、弁体の上部に設けられており、当該開口部の上部に開閉可能なメンテナンスカバーを有するものとされている。従って、前記特許文献1に記載のバルブは、配管から取り外すことなくメンテナンスを行うことを可能としている。
【0004】
ところで、液体水素(沸点:-253℃)や液体ヘリウム(沸点:-269℃)等の極低温流体を移送する場合は、流体が気化するのを防止するため、バルブや配管(バルブ等と称する)の外側に断熱用の真空ジャケットを設けて、外気から流体への入熱を小さくする必要がある。しかしながら、バルブ等の外側に真空ジャケットを設けた場合であっても、バルブ等の外表面のうち、液体酸素の沸点(-183℃)以下となる部分が外気に曝されていると、空気中の酸素が液化し、液体酸素が生成される懸念がある。そのため、液体酸素の沸点以下になる可能性がある部位は、真空ジャケットを取り付け、外気と隔離する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57-80769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のバルブを、ジャケットで覆ってしまうと、メンテナンス用の開口部やメンテナンスカバーも覆われてしまうため、メンテナンスができなくなる問題があった。かかる問題を解決するには、図8に示すように、バルブ80のメンテナンス用開口83やメンテナンスカバー84等の部位をジャケット85と共に、液体酸素が生成しない位置まで延長する必要がある。そのため、メンテナンス用開口83は、弁本体81の開口部82から上方に大きく離間した位置に設ける必要がある。
【0007】
そこで、図8に示すように弁本体81を上方に延長した場合は、延長部分の内部に流体が侵入し、上部側からの入熱により、気化した低温の気体が、図示破線矢印のごとく対流しやすくなる問題がある。このように、気化した低温の流体が対流することにより、メンテナンスカバー84等が冷却され、メンテナンスカバー84等の外部に液体酸素が生成する懸念があった。そのため、対流の影響を受けない非常に高い位置(弁体86や配管87から大きく離間した位置)に、メンテナンス用開口83やメンテナンスカバー84等を設ける必要があった。その結果、メンテナンス性が悪くなるという問題があった。このように、従来の配管やバルブ等においては、メンテナンス性を維持しながら、移送する流体を効率良く保冷するという相反する課題を解決することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、配管や流体機器のメンテナンス性を向上させると共に、移送する流体を効率良く保冷するだけでなく、保温又は加熱することが可能なジャケット構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のジャケット構造は、配管、又は前記配管に配される流体機器に一端側又は中間部が接続され、他端側が開放された筒部と、少なくとも前記配管の外側を覆うジャケット部と、前記筒部の前記他端側に着脱可能に設けられ、当該他端側を封止する蓋体と、を有し、前記ジャケット部は、前記筒部の外側の一部又は全部を覆う筒部側被覆部有し、前記蓋体は、裏面側から前記筒部の内側に向けて突出する突出部を有し、前記突出部は、前記筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、当該突出部の内部に中空の隔室を有しており、前記隔室は、内部が減圧可能であること、を特徴とするものである。
【0010】
上述したジャケット構造は、配管又は流体機器(単に、流体機器等とも称する)に一端側又は中間部が接続された筒部を有しており、当該筒部は、他端側が開放されている。また、筒部の他端側は、着脱可能な蓋体で封止されている。従って、上述したジャケット構造は、蓋体を取り外すことで、筒部を介して流体機器等の内部にアクセスすることが可能である。そのため、上述したジャケット構造は、流体機器等のメンテナンス(例えば、清掃、補修、点検等)性を向上させることができる。
【0011】
また、上述したジャケット構造は、蓋体の裏面側に突出部を有しており、当該突出部が、筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、内部に中空の隔室を有するものとされている。また、隔室は、内部が減圧可能なものとされている。ここで、上述した減圧は、例えば、隔室内部が断熱状態(真空状態)となるまで減圧されているとよい。これにより、上述したジャケット構造は、筒部の他端側(例えば、上部側)からの入熱を遮蔽することができるので、筒部(蓋体)の高さを低く設定できる。その結果、流体機器の内部(例えば、弁体のシール)へのアクセスが容易となり、メンテナンス性の向上と、流体機器の小型化と、が期待できる。
【0012】
また、上述したジャケット構造は、蓋体(隔室)と、ジャケット部とにより、外気に対して確実に断熱できる。そのため、本発明のジャケット構造は、例えば、液体水素、液体ヘリウム及び液体窒素のような極低温流体を移送する場合であっても、液体酸素の生成を抑制できる。また、本発明のジャケット構造は、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。なお、隔室内の減圧は、例えば、隔室に吸引口を設けておき、当該吸引口から隔室内の空気を真空ポンプ等により排気すればよい。また、上述したジャケット構造は、流体機器(配管を含む)側のジャケット部及び蓋体側の隔室が、それぞれ独立しているので、流体機器側のジャケット部及び蓋体側の隔室の圧力(例えば、真空度)を維持したまま、蓋体を取り外してメンテナンスすることが可能である。
【0013】
(2)上述した課題を解決すべく提供される本発明のジャケット構造は、配管、又は前記配管に配される流体機器に一端側又は中間部が接続され、他端側が開放された筒部と、少なくとも前記配管の外側を覆うジャケット部と、前記筒部の前記他端側に着脱可能に設けられ、当該他端側を封止する蓋体と、を有し、前記ジャケット部は、前記筒部の外側の一部又は全部を覆う筒部側被覆部を有し、前記蓋体は、裏面側から前記筒部の内側に向けて突出する突出部を有し、前記突出部は、前記筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、内部に中空の隔室を有しており、前記隔室に対して熱媒体を導入可能であること、を特徴とするものである。
【0014】
上述したジャケット構造は、配管又は流体機器(単に、流体機器等とも称する)に一端側又は中間部が接続された筒部を有しており、当該筒部は、他端側が開放されている。また、筒部の他端側は、着脱可能な蓋体で封止されている。従って、上述したジャケット構造は、蓋体を取り外すことで、筒部を介して流体機器等の内部にアクセスすることが可能である。そのため、上述したジャケット構造は、流体機器等のメンテナンス(例えば、清掃、補修[内部部品の交換を含む]、点検等)性を向上させることができる。
【0015】
また、上述したジャケット構造は、蓋体の裏面側に突出部を有しており、当該突出部が、筒部の内部に嵌め込み可能であると共に、内部に中空の隔室を有するものとされている。また、隔室は、熱媒体を導入可能なものとされている。上述した熱媒体は、例えば、蒸気や熱媒体油が利用できる。従って、上述したジャケット構造によれば、メンテナンス性を確保しながら、流体機器等を効率良く保温又は加熱することができる。ここで、熱媒体の導入は、例えば、隔室に導入口を設けて、隔室内に熱媒体を導入口から封入するものや、導入口とは別に排出口を設け、熱媒体を隔室内において循環させるものなど、各種の手段を採用することができる。
【0016】
(3)上述した本発明のジャケット構造において、前記隔室は、少なくとも一部が、前記筒部側被覆部と重なるように形成されているとよい。
【0017】
上述したジャケット構造は、かかる構成とすることにより、流体(気化した気体を含む)を確実に保冷、保温又は加熱することができる。すなわち、上述したジャケット構造は、例えば、流体(例えば、液体水素、液体ヘリウム、液体窒素)の温度が、配管や流体機器を介して外気に伝達されることを抑制できる。これにより、上述したジャケット構造は、液体酸素の生成を抑制できる。また、上述したジャケット構造は、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。
【0018】
(4)上述した本発明のジャケット構造は、前記隔室の内壁の一部または全面が低輻射性の断熱シート、もしくは低輻射性の断熱シートとスペーサー材とからなる多層断熱材の少なくともいずれか1つで被覆されているとよい。
【0019】
上述したジャケット構造は、かかる構成とすることにより、輻射による伝熱を抑制できるので、より一層、断熱性を向上できる。
【0020】
(5)上述した本発明のジャケット構造は、前記筒部の前記一端側における内壁と前記突出部の外壁との間にシール部が形成されているとよい。
【0021】
上述したジャケット構造は、かかる構成とすることにより、筒部の一端側における内壁と突出部の外壁との間にできる隙間をシール(封止)することができる。そのため、突出部(隔室)の下方と、弁本体との間の空間に侵入した流体(例えば、液体水素、液体ヘリウム、液体窒素)は、気体となって当該空間内に保持される。ここで、気体は、液体よりも熱伝導率及び熱伝達率が小さいため、前記空間内の断熱効果が高められる。従って、上述したジャケット構造は、ジャケット部との相乗効果により、筒部の高さをより低く設定することが可能である。これにより、上述したジャケット構造は、メンテナンス性を向上させることができる。また、上述したジャケット構造は、筒部内への低温の液体の浸入を抑制できるので、蓋部が冷却されることを抑制できる。そのため、上述したジャケット構造は、液体酸素の生成を抑制できる。また、上述したジャケット構造は、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。
【0022】
(6)上述した本発明のジャケット構造において、前記シール部は、配管側の圧力が筒部側の圧力より高まったときにはシール性が高まるものであり、前記筒部側の圧力が前記配管側の圧力より高まったときには、シール性が減じられるものであるとよい。
【0023】
上述したジャケット構造は、かかる構成とすることにより、配管側の内圧が高まった場合にはシール性が高まり、蓋体と筒部との間の隙間を確実にシールすることができる。そのため、上述したジャケット構造は、筒部内へ低温の液体が浸入して蓋部が冷却されることを抑制できるので、液体酸素の生成を抑制できる。一方、万が一流体がシール部を通過し、蓋体と筒部の間の隙間に浸入し、前記流体が気化して前記筒部における内圧が高まった場合には、シール性が減じられ、圧力を配管側に逃がすことができるため、シール部を設けたことにより発生する異常昇圧を防止することができる。また、上述したジャケット構造は、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。
【0024】
(7)上述した本発明のジャケット構造は、前記流体機器が、バルブ、流量計、及びストレーナの一又は複数の組み合わせであるとよい。
【0025】
上述したジャケット構造は、バルブ、流量計、及びストレーナを含めた流体機器のメンテナンス性を向上させると共に、これらの流体機器を効率良く保冷、保温又は加熱できる。そのため、上述したジャケット構造では、バルブ、流量計、及びストレーナの汎用性を高める効果が期待できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、配管や流体機器のメンテナンス性を向上させると共に、移送する流体を効率良く保冷、保温又は加熱することが可能なジャケット構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第一実施形態に係るジャケット構造の側面方向断面図である。
図2図1におけるシール部周辺の拡大図である。
図3】本発明の第二実施形態に係るジャケット構造の側面方向断面図である。
図4図3のA-A方向矢視断面図である。
図5】本発明の第三実施形態に係るジャケット構造の側面方向断面図である。
図6図5における弁本体上部の拡大図である。
図7】本発明の変形例に係るジャケット構造の側面方向断面図である。
図8】従来の逆止弁におけるジャケット構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪第一実施形態≫
以下、本発明の第一実施形態に係るジャケット構造1A(総称してジャケット構造1とも称する)について、図1を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態では、本発明のジャケット構造1Aが、流体機器としてのスイング式逆止弁10A(単に逆止弁10Aとも称し、総称してバルブ10とも称する)に採用される場合について説明する。また、配管2及び逆止弁10Aで移送される流体が、極低温流体としての液体水素、液体ヘリウム又は液体窒素である場合について説明する。
【0029】
図1に示すように、ジャケット構造1Aを採用する逆止弁10Aは、ハウジングとしての弁本体11と、弁本体11に接続された配管2と、弁本体11の上部に配された筒部20と、弁本体11及び配管2等を覆うジャケット部30と、筒部20の上部を封止する蓋体40等を備えている。
【0030】
弁本体11は、内部空間を有するハウジングとして形成されている。弁本体11は、下端側における水平方向(図示横方向)両端に配管2が、溶接等により接続されている。弁本体11は、内部に弁体12と、弁体12を揺動させる揺動アーム13等を備えている。
【0031】
弁本体11は、上端側にメンテナンス用の開口部14が形成されている。開口部14の下方側には、弁体12や揺動アーム13等が設けられており、開口部14は、これらのアクセスを可能とするものである。従って、作業者は、開口部14を介して、逆止弁10Aや配管2の点検、補修(内部部品の交換を含む)等を容易に行うことができる。
【0032】
また、開口部14上には、揺動アーム13を取り付けるためのフランジ15が固定されている。フランジ15は、開口部14と連通する開孔を有している。また、フランジ15は、下面側に開口部14の開口縁に沿って下方に延びるアーム支持部15Aが形成されている。
【0033】
揺動アーム13は、基端側が、弁体12の上方に位置するアーム支持部15Aに対して回動可能に支持されている。揺動アーム13は、流体の圧力を受けた弁体12と共に、上下方向への回転が可能である。
【0034】
弁体12は、弁本体11の流路を閉塞可能な大きさの円板状部材として形成され、弁体12及び弁本体11の当接面にシール(図示せず)が設けられている。なお、シールは、独立した部品として設けられるものや、弁体12及び/又は弁本体11に表面処理を施したもの、あるいは、弁体12及び/又は弁本体11に機械加工面を形成したものなど、各種の形態のものを採用できる。また、弁体12は、裏面側(弁本体11の内部側)に揺動アーム13の先端が接続されている。従って、弁体12が流体の圧力を受け、揺動アーム13が回転することにより、弁体12が、弁本体11を閉塞する閉塞位置と、弁本体11の流路を開放する開放位置との間で揺動するものとされている。
【0035】
筒部20は、基端となる一端側が、弁本体11の上部に接続され、他端側が弁本体11の外部に向けて開放されている。筒部20は、円筒状に形成されており、弁本体11の開口部14を囲むように配されている。従って、作業者は、筒部20を介して、弁本体11の内部にアクセスすることが可能である。筒部20の他端側(上端側)には、後述する蓋体40を固定するためのネジ穴が形成されている。また、筒部20は、内部に、後述する蓋体40の突出部42を嵌め込み可能である。
【0036】
ジャケット部30は、内部空間を有しており、少なくとも配管2の外側を覆うものとされている。ジャケット部30は、本実施形態では、配管2の他、弁本体11と、筒部20と、を外側から覆うものとされている。また、ジャケット部30は、筒部20の外側を覆う筒部側被覆部32を有している。
【0037】
ジャケット部30は、適宜、設けられた吸引口(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されており、当該真空ポンプを駆動することにより、内部を減圧することが可能である。ここで、上述した減圧は、例えば、ジャケット部30の内部空間が断熱状態(真空状態)となるまで減圧されているとよい。なお、ジャケット部30は、真空ポンプに接続されているものだけではなく、予め断熱状態となるように減圧状態で封止されていてもよい。
【0038】
筒部側被覆部32は、本実施形態では、筒部20の外側において、筒部20の一端側(基端側)を起点として他端側に向けて延びるように形成されている。筒部側被覆部32は、本実施形態では、筒部20と一体的に形成されている。筒部側被覆部32における内部空間は、本実施形態では、配管2や弁本体11におけるジャケット部30の内部空間に連通している。なお、筒部側被覆部32は、筒部20と一体的に形成されているものだけではなく、筒部20とは独立して形成されていてもよい。また、配管2を、筒部20の中間部に接続する場合は、筒部側被覆部32に開口を設け、当該開口を介して、配管2と筒部20及び配管2側のジャケット部30と筒部側被覆部32を接続すればよい。詳細は後述するが、筒部側被覆部32における内部空間は、蓋体40における隔室43と、少なくとも一部が重なる高さに形成すればよい。
【0039】
蓋体40は、板状の蓋部41と、筒部20の内部に嵌め込み可能な突出部42と、突出部42の内部に形成される隔室43等を備えている。蓋体40は、筒部20の他端側(開放端側)を封止するものとされている。すなわち、蓋体40は、閉止フランジ(メンテナンスカバー)としての機能も有するものである。
【0040】
蓋部41は、円板形状に形成されており、筒部20の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。蓋部41の外周部分は、複数のネジ部材41Aによって、筒部20に固定されている。すなわち、蓋体40は、ネジ部材41Aによって、着脱可能に筒部20に固定されている。従って、蓋体40を取り外すことにより、作業者が、弁本体11の内部にアクセスすることが可能である。蓋部41及び筒部20は、後述するシール部50等によって密閉されており、蓋部41を筒部20に固定することにより、筒部20の他端側(開放端側)が封止される。また、蓋部41には、後述する隔室43と連通する吸引口41Bが形成されている。
【0041】
突出部42は、蓋部41の裏面側から筒部20の内部に向けて突出形成されている。突出部42は、円形状に形成され、筒部20の内径と同等、又は筒部20の内径よりも僅かに小さい径を有するものとされている。従って、突出部42は、筒部20の内部に嵌め込み可能である。また、突出部42の内部には、中空の隔室43が形成されている。突出部42は、上記のように構成されているので、極低温流体や高温流体が、蓋部41に接触することを抑制できる。これにより、極低温流体や高温流体と蓋部41との断熱が確実に行われる。なお、突出部42の形状や大きさは、流体の組成や温度等に応じて、各種の形状や大きさに形成することができる。
【0042】
また、突出部42の下端側における外壁と、筒部20の一端側(弁本体11側)における内壁との間には、シール部50が形成されている。
【0043】
シール部50は、突出部42と筒部20の内壁との隙間をシールし、移送する流体が、外部に漏出することを抑制するものとされている。シール部50は、突出部42の外周を囲むように配されている。図2は、シール部50の周辺の拡大図である。図2に示すように、シール部50は、U字状部材51と、U字状部材51に嵌め込まれたスプリング52と、を備えている。
【0044】
スプリング52は、取り付け時に圧縮され、U字状部材51のシール面に対して、一定の荷重を与えている。シール部50は、配管2側、すなわち、逆止弁10A側の圧力(内圧)が高まったときには、圧力が、U字状部材51を開く方向に作用しシール面圧が増加し、シール性が高められる。一方、筒部20側、すなわち、筒部20の開放端側(他端側)の圧力が高まったときには、圧力が、U字状部材51を閉じる方向に作用し、シール性が減じられる。なお、本実施形態ではU字状部材51の開放側が突出部42を向くように水平方向に配されているが、U字状部材51は、圧力に応じて、各種の方向や場所に配することができる。例えば、U字状部材51が、上下方向に沿うように逆U字状に配されていてもよい。また、シール部50は、突出部42と、筒部20との間をシールできるものであれば、各種の形態のものを利用できる。
【0045】
このように、ジャケット構造1Aは、シール部50を有するので、配管2(逆止弁10Aを含む)を通る流体の圧力が高まった場合であっても、蓋体40と筒部20との隙間を確実にシールすることができる。そのため、ジャケット構造1Aは、筒部20内へ低温の液体が浸入して蓋部41が冷却されることを抑制できるので、液体酸素の生成を抑制できる。また、本発明のジャケット構造1Aは、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。
【0046】
次に、突出部42に形成される隔室43について、図1を参照しながら説明する。隔室43は、突出部42の外壁の厚みを残し、突出部42の径方向内側に沿って円形状に形成されている。従って、隔室43は、筒部20の径方向内側の略全域を上方側から覆うことができる。隔室43は、蓋部41に形成された吸引口41Bと連通している。吸引口41Bには、着脱可能又は溶接等により接続したポート44を介して真空ポンプ(図示せず)が接続される。
【0047】
隔室43内の減圧は、前記真空ポンプにより吸引口41Bから隔室43内の空気を排気することで行われる。ここで、減圧度(真空度)は、例えば、断熱効果を発揮できる真空状態とすればよい。ポート44は、減圧の終了後に、吸引口41Bをシールすることが可能である。これにより、隔室43の内部が真空状態に保たれる。なお、隔室43は、移送する流体の温度に応じて断熱効果を発揮可能な厚みに形成すればよい。
【0048】
隔室43は、少なくとも一部が、ジャケット部30における筒部側被覆部32と重なるように形成されている。従って、弁本体11は、外側の全域に亘って、ジャケット部30に覆われる。これにより、弁本体11の内部は、保冷状態とされる。なお、隔室43の内壁の一部または全面は、低輻射性の断熱シート、もしくは低輻射性の断熱シートとスペーサー材とからなる多層断熱材の少なくともいずれか1つで被覆されているとよい。これにより、上述したジャケット構造1は、輻射による伝熱を抑制できるので、より一層、断熱性を向上できる。
【0049】
上記は、極低温流体を送流する場合を例示したが、上述したジャケット構造1Aは、例えば溶融ワックスのような高温流体に対しても適用することが可能である。かかる場合は、上述のように隔室43の内部を断熱状態とするか、あるいは、隔室43に対して熱媒体を導入可能とすればよい。前記熱媒体は、例えば、蒸気や熱媒体油が利用できる。このように、上述したジャケット構造1Aは、隔室43内に熱媒体を導入することにより、隔室43内を高温状態に保温又は加熱することができる。ここで、熱媒体の導入は、例えば、隔室43に導入口を設けて、隔室内に熱媒体を導入口から封入するものや、導入口とは別に排出口を設け、熱媒体を隔室内において循環させるものなど、各種の手段を採用することができる。
【0050】
以上が、本発明のジャケット構造1Aの第一実施形態に係る構成であるが、本発明のジャケット構造1Aは、上述した構成を採用することにより、例えば、以下のような効果を奏する。
【0051】
ジャケット構造1Aは、流体機器としての逆止弁10Aに筒部20の一端側が接続されており、筒部20の他端側が開放されている。また、筒部20の他端側は、着脱可能な蓋体40で封止されている。従って、ジャケット構造1Aは、蓋体40を取り外すことで、筒部20を介して逆止弁10Aや配管2の内部にアクセスすることが可能である。そのため、本発明のジャケット構造1Aによれば、逆止弁10A及び配管2等のメンテナンス(例えば、清掃、補修、点検、内部部品の交換等)性が向上する。
【0052】
また、上述したように、ジャケット構造1Aは、蓋体40が、裏面側に突出部42を有しており、突出部42が、筒部20の内部に嵌め込み可能であると共に、内部に中空の隔室43を有するものとされている。また、隔室43は、内部が減圧可能なものとされている。従って、ジャケット構造1Aは、筒部20の他端側(例えば、上部側)からの入熱を遮蔽することができるので、筒部20(蓋体40)の高さを低く設定できる。その結果、逆止弁10Aの内部(例えば、弁体12のシール)へのアクセスが容易となり、メンテナンス性の向上と、逆止弁10Aの小型化と、が期待できる。
【0053】
また、上述したジャケット構造1Aは、蓋体40(隔室43)と、ジャケット部30とにより、逆止弁10Aや配管2等と外気とを確実に断熱できる。そのため、ジャケット構造1Aは、例えば、液体水素、液体ヘリウム及び液体窒素のような極低温流体を移送する場合であっても、液体酸素の生成を抑制できる。また、ジャケット構造1Aは、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを抑制できる。
【0054】
また、上述したジャケット構造1Aは、隔室43の少なくとも一部が、筒部側被覆部32と重なるように形成されているので、流体(気化した気体を含む)を確実に保冷、保温又は加熱することができる。すなわち、上述したジャケット構造1Aは、例えば、流体の温度が、配管2や逆止弁10A等の流体機器を介して外気に伝達されることを、より一層抑制できる。
【0055】
また、上述したジャケット構造1Aは、筒部20の一端側における内壁と突出部42の外壁との間にシール部50が形成されているので、筒部20の一端側における内壁と突出部42の外壁との間にできる隙間をシール(封止)することができる。そのため、突出部42(隔室43)の下方と、弁本体11との間の空間に侵入した極低温流体は、気体となって当該空間内に保持される。
【0056】
ここで、気体は、液体よりも熱伝導率及び熱伝達率が小さいため、前記空間内の断熱効果が高められる。従って、上述したジャケット構造1Aは、ジャケット部30との相乗効果により、筒部20の高さをより低く設定することが可能である。これにより、上述したジャケット構造1Aは、メンテナンス性を向上させることができる。また、上述したジャケット構造1Aは、筒部20内への低温の液体の浸入を抑制できるので、蓋部41が冷却されることを抑制できる。そのため、上述したジャケット構造1Aは、液体酸素の生成を効果的に抑制できる。また、上述したジャケット構造1Aは、高温流体を移送する場合であっても、高温部分が直接的に外部に曝されることを効果的に抑制できる。
【0057】
次に、第二実施形態に係るジャケット構造1Bについて、図3及び図4を参照しながら詳細を説明する。
【0058】
≪第二実施形態≫
第二実施形態では、長尺の弁棒60を有するバタフライ弁10B(総称してバルブ10とも称する)にジャケット構造1B(総称してジャケット構造1とも称する)が採用される場合について説明する。なお、第一実施形態と同様の部材については、説明を省略する。また、第一実施形態と同様の部材については、同一の符号を用いていることに留意されたい。また、第二実施形態においても、第一実施形態と同様に流体として極低温流体である液体水素、液体ヘリウム又は液体窒素が移送されるものとして説明する。
【0059】
図3は、ジャケット構造1Bの側面方向から見た断面図であり、図4は、図3のA-A方向矢視断面図である。図3及び図4に示すように、バタフライ弁10Bは、ハウジングとしての弁本体11と、弁体12と、弁体12に接続された弁棒60と、弁棒60の外周に配されるボンネット65等を備えている。弁本体11には、配管2が水平方向の両側に接続されている。
【0060】
第二実施形態では、開口部14が、弁体12の真上ではなく、弁本体11の配管2側にずれた上面側に形成されている。また、弁本体11における開口部14の上方には、筒部20の一端側が接続されている。従って、作業者は、筒部20の他端側(上端側)から、開口部14を介して弁本体11の内部にアクセスすることができる。また、第二実施形態では、筒部20が、弁体12と隣接する上方に設けられているので、シール12Aの交換が容易である。また、弁本体11と併せて弁体12のメンテナンス(例えば、清掃、補修、点検等)も可能である。筒部20の詳細については、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
筒部20の他端側(開放端側)には、蓋体40が着脱可能に固定されている。筒部20を覆うように設けられるジャケット部30や、筒部20の他端側に固定される蓋体40の構成は、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
弁体12は、上端側が、弁棒60に接続されている。弁体12は、弁本体11に回動可能に支持されている。また、弁体12の外周部及び弁本体11の内周部の間にシール12Aが取り付けられており、弁体12を閉じることにより、弁本体11を閉塞することができる。なお、シール12Aは、弁体12側に設けるものや弁本体11側に設けるもの、あるいは、弁体12及び弁本体11の双方に設けるものなど、各種の形態のものを採用できる。
【0063】
弁棒60は、ベアリング16Aを介して弁本体11に回転可能に支持されている。また、弁棒60は、上端側にギヤ、シリンダ又はモータ等の駆動部66が接続されている。従って、弁棒60が駆動部66によって回転駆動されることにより、弁体12が、弁本体11を閉塞する閉塞位置と、弁本体11の流路を開放する開放位置との間で回動するものとされている。なお、弁体12が上下に昇降するゲート弁やグローブ弁の場合は、駆動部66により弁棒60を介して弁体12を上下に往復動させればよい。
【0064】
また、弁棒60の外周を覆うようにボンネット65が上方に延びるように立設されている。ボンネット65は、適宜のベアリング(図示せず)を介して弁棒60を回動可能に保持している。
【0065】
ジャケット部30は、第一実施形態と同様に配管2、筒部20、及び弁本体11を覆うように設けられている。また、第二実施形態では、前記の他、ジャケット部30が、ボンネット65の基端側(弁本体11側)を起点として、上方に延びるように配されている。従って、ボンネット65の外周に設けられたジャケット部30は、ボンネット65の下部での液体酸素の生成を抑制できる。以上が、本発明の第二実施形態に係るジャケット構造1Bの構成であるが、第二実施形態に係るジャケット構造1Bにおいても、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
また、第一実施形態に係るジャケット構造1A及び第二実施形態に係るジャケット構造1Bは、上述した構成を採用することにより、各種の配管2や流体機器(各種のバルブ、流量計、ストレーナ等)の各所に搭載することができる。これにより、配管2や流体機器の断熱性が向上すると共に、メンテナンス性が向上する。
【0067】
次に本発明の第三実施形態に係るジャケット構造1Cについて、図5を参照しながら以下に詳細を説明する。
【0068】
≪第三実施形態≫
第三実施形態では、第二実施形態に係るバタフライ弁10Bと同様にボンネット65を有するバタフライ弁10C(総称してバルブ10とも称する)にジャケット構造1C(総称してジャケット構造1とも称する)が採用される場合について説明する。また、第三実施形態は、隔室43が、弁体12の上方に配されている点と、弁棒60が第一弁棒61及び第二弁棒62に分割形成されている点が第二実施形態との主な相違点である。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様の部材については説明を省略する。また、第一実施形態及び第二実施形態と同様の部材については、同一の符号を用いていることに留意されたい。また、第三実施形態においても、第一実施形態及び第二実施形態と同様に流体として極低温流体である液体水素、液体ヘリウム又は液体窒素が移送されるものとして説明する。
【0069】
図5に示すように、バタフライ弁10Cは、ハウジングとしての弁本体11と、弁体12と、筒部20と、弁体12に接続された弁棒60と、弁棒60の外周に配されるボンネット65等を備えている。弁本体11には、配管2が水平方向の両側に接続されている。
【0070】
第三実施形態では、開口部14が、弁本体11上に形成されている。また、弁本体11における開口部14の上方には、筒部20の一端側(基端側)が接続されている。また、筒部20の開放端となる他端側(上端側)には、蓋体40が設けられており、筒部20の他端側を閉塞している。
【0071】
また、第三実施形態では、蓋体40の突出部42の下方にベアリングホルダ16が設けられている。図6は、弁本体11の上部周辺の拡大図である。ベアリングホルダ16は、開孔を有しており、当該開孔にはベアリング16Aが嵌め込まれている。また、ベアリングホルダ16は、板状に形成されており、開口部14の開口縁にボルト等で着脱可能に固定されている。ベアリングホルダ16の上面側(突出部42側)と下面側(弁体12側)とは、連通しており、弁本体11の内部から気化した流体(気体)は、突出部42側に流入可能である。
【0072】
図5に示すように、バタフライ弁10Cは、弁棒60を回動可能に保持する筒状のボンネット65を有している。第三実施形態では、ボンネット65が、蓋体40と一体的に形成されている。従って、ボンネット65は、蓋体40と一体的に弁本体11に対して着脱可能なものとされている。また、ボンネット65が、蓋体40と一体的に取り外し可能であるので、メンテナンスの際に、弁本体11の内部に容易にアクセスすることが可能である。これにより、メンテナンス性が向上する。また、ボンネット65は、上方に延びるように形成されており、弁棒60を、ベアリング65Aを介して回動可能に保持している。
【0073】
また、弁棒60を取り囲むように突出部42には、内管45が形成されている。内管45は、ボンネット65を下方に延長することにより、ボンネット65と一体的に形成されている。これにより、内管45は、ボンネット65の内部と連通されている。また、内管45は、隔室43を仕切る仕切壁としての役割を果たすものとされている。従って、第三実施形態では、隔室43が、ドーナツ形状をなしている。なお、内管45は、ボンネット65と一体的に形成されているものだけではなく、分割形成されたボンネット65を内管45の上端側に接続したものでもよい。
【0074】
弁棒60は、蓋体40を貫通するように立設されている。弁棒60は、下方側(弁体12側)に位置する第一弁棒61と、第一弁棒61の上方側に位置する第二弁棒62とに分割形成されている。第一弁棒61及び第二弁棒62は、互いにキーやピン等の適宜の手段で着脱可能に連結されており、一体的な回動が可能である。従って、駆動部66が駆動されると、弁棒60が回動し、弁体12が開閉される。
【0075】
第一弁棒61は、下端側が弁体12の上端側に接続されている。第一弁棒61は、第二弁棒62よりも短尺に形成されている。また、第一弁棒61は、上端側がベアリングホルダ16のベアリング16Aに回動可能に支持されている。また、第一弁棒61は、上端側がベアリング16Aを介して上方に突出している。第一弁棒61の上端側は、上述したように、第二弁棒62の下端側に着脱可能に連結されている。また、第一弁棒61の上端側は、隔室43の内管45に収容されている。
【0076】
第二弁棒62は、伝熱面積が小さくなるよう下端側から上端側に向けて中空部62Aが形成されている。中空部62Aは、弁本体11の内部と連通しており、弁本体11の内部で気化した流体(気体)の流入を許容している。従って、中空部62Aは、気体の流入により、熱伝達率の大きい低温の液体の流入を抑制することができる。これにより、中空部62Aは、第二弁棒62のグランドパッキン部67における凍結を抑制することができる。また、第二弁棒62は、下端側が内管45に収容されると共に、蓋体40よりも上端側が、ボンネット65の内部に回動可能に保持されている。なお、第二弁棒62は、ボンネット65に対して着脱可能である。
【0077】
上述したように、第三実施形態に係るジャケット構造1Cは、弁棒60が第一弁棒61及び第二弁棒62に分割形成されているので、例えば、ベアリングホルダ16のベアリング16Aに対して、第一弁棒61単独で芯出しを行うことができる。すなわち、ジャケット構造1Cは、蓋体40やボンネット65を取り外した状態で、第一弁棒61の芯出しを行うことができる。そのため、ジャケット構造1Cによれば、組み立て性やメンテナンス性が向上する。なお、第三実施形態のように、第一弁棒61を第二弁棒62よりも短尺に形成しておくことにより、第一弁棒61の芯出しが容易となる。第一弁棒61及び第二弁棒62の連結や蓋体40(ボンネット65)の取り付けは、第一弁棒61の芯出し後に行えばよい。また、上述した第三実施形態に係るジャケット構造1Cは、ボンネット65を蓋体40と共に取り外し、弁本体11からベアリングホルダ16を取り出すことにより、弁本体11の内部にある弁体12、シール12A等の全ての部品を取り出すことができるので、メンテナンス性を向上させることができる。
【0078】
また、第三実施形態に係るジャケット構造1Cは、弁本体11のジャケット部30及びボンネット65の隔室43が、それぞれ独立しているので、弁本体11のジャケット部30の圧力(例えば、真空度)を維持したまま、ボンネット65を取り外してメンテナンスすることが可能である。そのため、本発明のジャケット構造1Cを採用することで、バルブ10のメンテナンス性が向上する。
【0079】
また、第三実施形態に係るジャケット構造1Cは、弁棒60を分割できるので、ボンネット65を取り外す際のクレーン等の吊り代を低く設定できる。そのため、メンテナンス性が向上する。また、弁本体11の上方のメンテナンススペースを最小限に留めることができるので、メンテナンス性を維持しつつ、バルブ10の設置スペースをコンパクトに形成することができる。その他の作用効果は、第一実施形態及び第二実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0080】
以上が、本発明の第三実施形態に係るジャケット構造1Cの構成であり、次に、第三実施形態の変形例に係るジャケット構造1Dについて、図7を参照しながら、詳細を説明する。
【0081】
≪変形例≫
変形例では、第三実施形態に係るバタフライ弁10Cと同様にボンネット65を有するバタフライ弁10D(総称してバルブ10とも称する)にジャケット構造1D(総称してジャケット構造1とも称する)が採用される場合について説明する。変形例に係るジャケット構造1Dは、ボンネット65の外周に沿って延びるように第二隔室43Bが配されている以外の構成は、第三実施形態と同様であるので、同様部分の説明は省略する。また、第一実施形態及び第二実施形態と同様の部材については、同一の符号を用いていることに留意されたい。また、第三実施形態の変形例においても、第一実施形態及び第二実施形態と同様に流体として極低温流体である液体水素、液体ヘリウム又は液体窒素が移送されるものとして説明する。
【0082】
図7に示すように、第二隔室43Bは、蓋体40の上面側から上方に向けて延びるように形成されると共に、ボンネット65の外周に沿って延びるように形成されている。すなわち、第二隔室43Bは、ボンネット65の外周の少なくとも一部を覆うように配されている。また、第二隔室43Bは、蓋体40の下面側に形成された隔室43(第一隔室43Aとも称する)と連通している。また、第二隔室43Bの上部には、着脱可能又は溶接等によりポート44を接続することができる。従って、第一隔室43A及び第二隔室43Bは、ポート44を介して、適宜の真空ポンプ(図示せず)で吸引することにより、それぞれの内部を減圧状態(例えば、真空状態)とすることができる。このように、変形例に係るジャケット構造1Dは、ボンネット65の外周も含めて断熱性を向上させることができる。そのため、ジャケット構造1Dでは、外気から流体への入熱をより小さくすることができ、流体の気化を抑制可能である。
【0083】
以上が、本発明に係るジャケット構造1の各種の実施形態及び変形例であるが、本発明のジャケット構造1は、上述した実施形態に係るものに限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0084】
本実施形態では、流体機器として、バルブ10(配管2を含む)を例示したが、本発明のジャケット構造1は、様々な流体機器に利用することができる。例えば、ジャケット構造1は、流量計等の流体の状態を計測する計測機器やストレーナ等の配管部品にも利用することができる。また、本発明のジャケット構造1は、各種の流体機器の一又は複数の組み合わせに対して利用することができる。このように、本発明のジャケット構造1は、バルブ10、流量計、及びストレーナを含めた各種の流体機器のメンテナンス性を向上させると共に、これらの流体機器を効率良く保冷、保温又は加熱できる。そのため、本発明のジャケット構造1では、バルブ10、流量計、及びストレーナ等の汎用性を高める効果が期待できる。また、本発明のジャケット構造1では、バルブ10が、バタフライ弁である場合を例示したが、本発明のジャケット構造1は、例えば、回転型のボール弁や、弁体が上下に昇降するゲート弁やグローブ弁等の各種のバルブを利用できる。なお、バルブ10として、ゲート弁やグローブ弁を採用する場合は、駆動部66により弁棒60を介して弁体12を上下に往復動させればよい。
【0085】
本実施形態では、筒部20が弁本体11や配管2と一体的に形成されたものを例示したが、筒部20は、弁本体11や配管2と一体的に形成されたものだけではなく、弁本体11や配管2と独立して形成されていてもよい。かかる場合は、筒部20を溶接等により弁本体11や配管2等と接合すればよい。また、筒部20は、円筒状のものだけではなく、弁本体11の形状に合わせて、適宜、形状や大きさを変更することが可能である。例えば、筒部20は、楕円形状や矩形状に形成されていてもよい。
【0086】
本実施形態では、ジャケット部30が、少なくとも配管2を覆うように配されているが、ジャケット部30を形成する部分は、ジャケット構造1を適用する流体機器や移送する流体の温度等に応じて、各種の部位に配することが可能である。また、ジャケット部30の形状や大きさは、適用する流体機器や移送する流体の温度等に応じて、各種の形状や大きさのものを採用することができる。また、本実施形態では、ジャケット部30が、筒部20の外側を覆うように筒部20の一端側(基端側)を起点として他端側に向けて延びる筒部側被覆部32を有するものとしたが、筒部側被覆部32は、筒部20の形状や大きさに合わせて、各種の形状や長さ(大きさ)に形成することができる。なお、筒部側被覆部32を形成する場合は、ジャケット部30と連通させることが望ましいが、筒部側被覆部32が独立して形成されていてもよい。かかる場合は、筒部20の基端側が、外気に曝されることを抑制するために、筒部20の一端側(基端側)を起点として筒部側被覆部32を形成することが望ましい。また、配管2を、筒部20の中間部に接続する場合は、筒部側被覆部32に開口を設け、当該開口を介して、配管2と筒部20及び配管2側のジャケット部30と筒部側被覆部32を接続すればよい。また、筒部側被覆部32は、筒部20の一部又は全部を覆うものとすればよく、筒部20に接続される流体機器や配管2等の構造に応じて、各種の形態のものが利用できる。
【0087】
また、蓋体40(突出部42及び隔室43を含む)の形状や大きさは、筒部20に嵌まり込む形状であれば、各種の形状や大きさのものを採用することができる。また、隔室43は、内部が予め真空状態とされたものや、本実施形態のように真空ポンプにより、適時、減圧を行うものなど、各種の形態のものを採用することができる。
【0088】
本実施形態では、流体として極低温流体である液体水素、液体ヘリウム又は液体窒素を移送する場合を例示したが、本発明のジャケット構造1は、各種の流体に対して利用することができる。本発明のジャケット構造1は、例えば、高温のワックスやオイル等の移送にも利用することができる。かかる場合は、隔室43に対して熱媒体を導入することが望ましい。このように、本発明のジャケット構造1は、高温の流体の移送においても、効果的に流体の保温や加熱が可能であり、高温部分の直接的な露出も抑制できる。また、隔室43に熱媒体を導入する場合は、熱媒体導入用の導入口と、熱媒体排出用の排出口と、を設けてもよい。これにより、ジャケット構造1は、熱媒体を隔室43の導入口から排出口に向けて連続的に導入させることができるので、流体の保温や加熱を効果的に行うことができる。
【0089】
本実施形態では、隔室43の少なくとも一部が、ジャケット部30における筒部側被覆部32と重なるように形成されているが、隔室43は、筒部側被覆部32と重なるものだけではなく、各種の形態のものを採用できる。例えば、隔室43が、筒部側被覆部32と重ならないように形成されていてもよい。
【0090】
本実施形態では、筒部20の一端側(基端側)における内壁と突出部42の外壁との間にシール部50が形成されているが、シール部50は、必要に応じて設ければよく、シール部50を設けない構成とすることもできる。また、シール部50は、本実施形態のごとく、内圧及び外圧の変化に応じてシール性が変化するものだけではなく、各種の形態のシール部材を採用することができる。例えば、シール部50が、一定のシール性を有するものでもよい。
【0091】
本実施形態では、バルブ10の弁棒60を第一弁棒61及び第二弁棒62に分割形成されたものを例示したが、弁棒60は、分割されていないものや2つ以上に分割形成されたものなど各種の形態や長さの弁棒60を用いることが可能である。また、第一弁棒61及び第二弁棒62の長さは、適宜変更できるものであり、第二弁棒62に設けられる中空部62Aも必要に応じて設ければよい。
【0092】
本実施形態では、ベアリングホルダ16を設けたバルブ10を例示したが、ベアリングホルダ16は、必要に応じて設ければよく、ベアリングホルダ16を設けない構成としてもよい。また、本実施形態では、ボンネット65が蓋体40と一体的に形成されているバルブ10を例示したが、ボンネット65は、必要に応じて蓋体40と一体形成すればよい。例えば、ボンネット65が、蓋体40と独立して形成されていてもよい。
【0093】
以上が、本発明に係るジャケット構造1の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のジャケット構造は、各種の配管や配管に設けられるバルブ、流量計、ストレーナ等の各種の流体機器の保冷用、保温用又は加熱用ジャケットとして利用することができる。また、本発明のジャケット構造は、バタフライ弁、ボール弁、チェッキ弁(逆止弁)、ゲート弁、グローブ弁等の各種のバルブの保冷用、保温用又は加熱用ジャケットとして利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 :ジャケット構造
1A:ジャケット構造
1B:ジャケット構造
1C:ジャケット構造
1D:ジャケット構造
10 :バルブ
10A:スイング式逆止弁
10B:バタフライ弁
10C:バタフライ弁
10D:バタフライ弁
11 :弁本体
12 :弁体
14 :開口部
16 :ベアリングホルダ
16A:ベアリング
20 :筒部
30 :ジャケット部
32 :筒部側被覆部
40 :蓋体
42 :突出部
43 :隔室
45 :内管
50 :シール部
60 :弁棒
61 :第一弁棒
62 :第二弁棒
62A:中空部
65 :ボンネット
66 :駆動部
67 :グランドパッキン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8